特許第6206998号(P6206998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6206998
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】フォークリフトの荷役装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/22 20060101AFI20170925BHJP
   B66F 9/20 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B66F9/22 S
   B66F9/20 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-225620(P2016-225620)
(22)【出願日】2016年11月21日
【審査請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】ニチユ三菱フォークリフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正人
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−229791(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02617676(EP,A1)
【文献】 特開2014−159321(JP,A)
【文献】 特開2002−274795(JP,A)
【文献】 特開2002−274796(JP,A)
【文献】 特開平07−025599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00 − 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役具と、前記荷役具を操作するための操作レバーと、前記操作レバーが操作されたとき前記荷役具を油圧によって動作させるための油圧駆動手段と、前記操作レバーの中立位置からの操作量を検出するための操作量検出手段と、前記操作レバーの操作速度を検出するための操作速度検出手段と、を備え、
前記操作レバーの操作範囲のうち、前記中立位置を含む所定の範囲は、前記操作レバーが操作されても前記荷役具が動作されない不感帯となり、前記不感帯を超える範囲は、前記操作レバーが操作されると前記荷役具が動作される操作帯となっており、さらに、
前記操作帯における前記操作量に対する前記油圧駆動手段への指令量が定められた第1主レバー特性ないし第n主レバー特性が記憶された特性記憶手段を備え(nは2以上の自然数)、
前記第1主レバー特性ないし前記第n主レバー特性は、それぞれ、前記指令量が前記操作量に比例して大きくなる特性を有し、前記操作量が小さい範囲での前記操作量の変化に対する前記指令量の変化の割合は、前記第(k−1)主レバー特性が第k主レバー特性よりも小さく、前記操作量が大きい範囲での前記変化の割合は、前記第k主レバー特性が前記第(k−1)主レバー特性よりも小さくなっており(kは2≦k≦nを満たす自然数)、
前記操作レバーが前記中立位置から前記不感帯を超えて前記操作帯へ操作されるときの前記不感帯での前記操作速度が大きいほど、前記操作量が大きい範囲での前記変化の割合がより小さい主レバー特性が設定されるフォークリフトの荷役装置であって、
前記不感帯での前記操作速度が所定未満の場合において、
前記操作レバーの前記中立位置に向けた反転時の前記指令量としての反転時指令量が所定未満のとき、設定された前記主レバー特性が維持され、
前記反転時指令量が所定以上のとき、前記操作レバーの反転時に前記主レバー特性に代えて第1副レバー特性が設定され、前記第1副レバー特性は、前記操作レバーの反転時の前記操作量までの範囲において、前記操作量が大きい範囲での前記変化の割合がその前に設定されていた前記主レバー特性よりも小さいものであり、
前記不感帯での前記操作速度が所定以上の場合において、
前記反転時指令量が所定未満のとき、前記操作レバーの反転時に前記主レバー特性に代えて第2副レバー特性が設定され、前記第2副レバー特性は、前記操作レバーの反転時の前記操作量までの範囲において、前記操作量が小さい範囲での前記変化の割合がその前に設定されていた前記主レバー特性よりも小さいものであり、
前記反転時指令量が所定以上のとき、設定された前記主レバー特性は維持される、
ことを特徴とするフォークリフトの荷役装置。
【請求項2】
前記第1副レバー特性または前記第2副レバー特性が設定されてから前記操作レバーが前記不感帯内のリセット位置に戻されるまでの間は、設定された前記第1副レバー特性または前記第2副レバー特性は維持され、前記操作レバーが前記リセット位置に戻されると、設定された前記第1副レバー特性または前記第2副レバー特性はリセットされる、ことを特徴とする請求項1に記載のフォークリフトの荷役装置。
【請求項3】
前記リセット位置は、前記中立位置から離れかつ前記不感帯と前記操作帯との境界から離れた位置にある、ことを特徴とする請求項2に記載のフォークリフトの荷役装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役具を動作させるためのフォークリフトの荷役装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトは、荷役作業のために荷役装置を備える。荷役装置は、ワークを支持するフォーク、フォークをリフト動作、ティルト動作、リーチ動作等させるための油圧駆動手段、フォークの動作のためにオペレータに操作される操作レバー等を備える。油圧駆動手段は、油圧回路、油圧モータ、比例電磁弁、油圧シリンダ等を含む。
【0003】
フォークリフトには、操作レバーの中立位置からの傾倒角に対する油圧駆動手段への指令量を定めたレバー特性が記憶されている。油圧駆動手段への指令量とは、例えば油圧モータの指令トルク、比例電磁弁の励磁電流(比例電磁弁の開口量)等である。レバー特性は、傾倒角に比例して指令量が大きくなる特性を、即ち傾倒角に比例してフォークの動作速度が速くなる特性を有する。操作レバーが操作されたとき、設定されたレバー特性に従い、その時の傾倒角から指令量が決定される。そして、油圧駆動手段は、決定された指令量で駆動制御される。
【0004】
特許文献1−3に開示された通り、フォークリフトには、互いに特性が異なる複数のレバー特性が記憶されている。各レバー特性には、一長一短がある。例えば、あるレバー特性は、フォークの低速での速度調整はしやすいが高速での速度調整はしにくい特性を有し、別のレバー特性は、フォークの低速での速度調整はしにくいが高速での速度調整はしやすい特性を有する。
【0005】
オペレータは、複数のレバー特性の中から1つのレバー特性を設定してフォークを操作する。例えば、特許文献2、3では、フォークリフトの運転席にボタンまたはスイッチが設けられており、操作レバーを操作する前に、ボタンまたはスイッチによって適切なレバー特性を予め設定することができる。
【0006】
また、特許文献1では、操作レバーを中立位置から倒したときの操作レバーの速度に基づき、適切なレバー特性が自動設定される。この構成によれば、特許文献2、3に開示のボタン操作またはスイッチ操作の負担は軽減される。
【0007】
特許文献1の実施例によれば、一旦レバー特性が設定されると、操作レバーが中立位置に戻されるまでは、設定されたレバー特性が維持される。つまり、操作レバーが中立位置から倒されるとき(フォークの加速時)と、中立位置に戻されるとき(フォークの減速時)とで、フォークは同じレバー特性に従って動作される。この構成によれば、操作レバーを中立位置から倒す際に最適な操作性をオペレータに提供することができるが、操作レバーを中立位置へ戻す際に最適な操作性をオペレータに提供できるとは限らない。
【0008】
特許文献1の追加の実施例によれば、操作レバーが中立位置から倒されてレバー特性が設定された後、操作レバーが中立位置へ反転されると、この反転時に新たなレバー特性が設定される。つまり、操作レバーが中立位置から倒されるときと、中立位置に戻されるときとで、フォークは異なるレバー特性に従って動作される。しかしながら、操作レバーの反転時に新たなレバー特性が設定されることが、オペレータの操作状況によっては好ましくないときもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−199695号公報
【特許文献2】特開2002−274795号公報
【特許文献3】特開2014−159321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、さらに操作性の高いフォークリフトの荷役装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、フォークリフトの荷役装置に関するものであり、前記荷役装置は、荷役具と、前記荷役具を操作するための操作レバーと、前記操作レバーが操作されたとき前記荷役具を油圧によって動作させるための油圧駆動手段と、前記操作レバーの中立位置からの操作量を検出するための操作量検出手段と、前記操作レバーの操作速度を検出するための操作速度検出手段と、を備え、
前記操作レバーの操作範囲のうち、前記中立位置を含む所定の範囲は、前記操作レバーが操作されても前記荷役具が動作されない不感帯となり、前記不感帯を超える範囲は、前記操作レバーが操作されると前記荷役具が動作される操作帯となっており、さらに、
前記操作帯における前記操作量に対する前記油圧駆動手段への指令量が定められた第1主レバー特性ないし第n主レバー特性が記憶された特性記憶手段を備え(nは2以上の自然数)、
前記第1主レバー特性ないし前記第n主レバー特性は、それぞれ、前記指令量が前記操作量に比例して大きくなる特性を有し、前記操作量が小さい範囲での前記操作量の変化に対する前記指令量の変化の割合は、前記第(k−1)主レバー特性が第k主レバー特性よりも小さく、前記操作量が大きい範囲での前記変化の割合は、前記第k主レバー特性が前記第(k−1)主レバー特性よりも小さくなっており(kは2≦k≦nを満たす自然数)、
前記操作レバーが前記中立位置から前記不感帯を超えて前記操作帯へ操作されるときの前記不感帯での前記操作速度が大きいほど、前記操作量が大きい範囲での前記変化の割合がより小さい主レバー特性が設定されるフォークリフトの荷役装置であって、
前記不感帯での前記操作速度が所定未満の場合において、
前記操作レバーの前記中立位置に向けた反転時の前記指令量としての反転時指令量が所定未満のとき、設定された前記主レバー特性が維持され、
前記反転時指令量が所定以上のとき、前記操作レバーの反転時に前記主レバー特性に代えて第1副レバー特性が設定され、前記第1副レバー特性は、前記操作レバーの反転時の前記操作量までの範囲において、前記操作量が大きい範囲での前記変化の割合がその前に設定されていた前記主レバー特性よりも小さく、
前記不感帯での前記操作速度が所定以上の場合において、
前記反転時指令量が所定未満のとき、前記操作レバーの反転時に前記主レバー特性に代えて第2副レバー特性が設定され、前記第2副レバー特性は、前記操作レバーの反転時の前記操作量までの範囲において、前記操作量が小さい範囲での前記変化の割合がその前に設定されていた前記主レバー特性よりも小さく、
前記反転時指令量が所定以上のとき、設定された前記主レバー特性は維持される、
ことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記第1副レバー特性または前記第2副レバー特性が設定されてから前記操作レバーが前記不感帯内のリセット位置に戻されるまでの間は、設定された前記第1副レバー特性または前記第2副レバー特性は維持され、前記操作レバーが前記リセット位置に戻されると、設定された前記第1副レバー特性または前記第2副レバー特性はリセットされる。
【0013】
好ましくは、前記リセット位置は、前記中立位置から離れかつ前記不感帯と前記操作帯との境界から離れた位置にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記構成を備えることにより、さらに操作性が高いフォークリフトの荷役装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例の荷役装置を備えるフォークリフトを示す側面図である。
図2図1の荷役装置を示すブロック図である。
図3】荷役装置の複数の主レバー特性を示す説明図である。
図4図4A図4Bは、操作レバーを反転させた時の制御を示す説明図である。
図5図5A図5Bは、操作レバーを反転させた時の制御を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下で、本発明に係るフォークリフトの荷役装置の一例が説明される。図1を参照して、フォークリフトは、車両本体1と、走行用の車輪2と、荷役作業をするための荷役装置3とを備える。なお、フォークリフトは、この実施例ではリーチ式であるが、カウンタバランス式等でもよい。
【0017】
図1図2を参照して、荷役装置3は、ワークを支持するための荷役具4を備える。荷役具4は、実施例ではフォークであるが、フォークに代えて取り付けられる他のアタッチメント等でもよい。
【0018】
荷役装置3は、荷役具4の動作のためにオペレータに操作される操作レバー5を備える。操作レバー5は、中立位置から前方及び後方に傾倒可能に車両本体1に設けられる。なお、実施例では、操作レバー5として、リフトレバーと、ティルトレバーと、リーチレバーとがある。
【0019】
図2の通り、荷役装置3は、ポテンショメータ6を備える。ポテンショメータ6は、操作レバー5の中立位置からの傾倒角(即ち、操作量)に比例して高い電力を出力するように操作レバー5の基端側に設けられる。ポテンショメータ6は、操作レバー5の中立位置からの操作量を検出するための操作量検出手段7として機能し、さらに操作レバー5の操作速度を検出するための操作速度検出手段8として機能する。操作レバー5の傾倒角及び傾倒方向(操作方向)は、ポテンショメータ6から出力される電圧によって得られる。操作レバー5の操作速度は、ポテンショメータ6から出力される電圧の時間変化によって得られる。
【0020】
図2の通り、荷役装置3は、制御手段9を備える。制御手段9は、コントローラである。ポテンショメータ6は、制御手段9に接続される。
【0021】
荷役装置3は、操作レバー5が操作されたときに荷役具4を油圧によって動作させるための油圧駆動手段10を備える。油圧駆動手段10は、作動油の貯留タンク、油圧回路、油圧シリンダ、油圧モータ11、比例電磁弁12等を備える。この実施例では、油圧シリンダは、リフトシリンダ、ティルトシリンダ、リーチシリンダを含む。
【0022】
油圧駆動手段10は、制御手段9によって駆動制御される。油圧モータ11及び比例電磁弁12が駆動されると、油圧シリンダに対して作動油が給排されて、油圧シリンダが伸縮する。その結果、荷役具4が動作する。即ち、実施例では、フォークが、リフト動作し、ティルト動作し、またはリーチ動作する。なお、フォークの各動作のために、荷役装置3は、図1の通り、マスト14、ストラドルレッグ15等を備えるが、これらの構成は周知であるためその説明は省略される。
【0023】
なお、荷役具4の動作方向は、操作レバー5の傾倒方向によって決定される。荷役具4の動作方向とは、この実施例では、リフトアップかリフトダウンか、前傾ティルトか後傾ティルトか、または、リーチインかリーチアウトかである。
【0024】
制御手段9は、傾倒角に対する油圧駆動手段10への指令量を定めたレバー特性に従って、操作量検出手段7により検出される傾倒角から指令量を決定する。そして、制御手段9は、決定された指令量で油圧駆動手段10を駆動制御する。ここで、指令量とは、油圧モータ11の指令トルクであり、比例電磁弁12の励磁電流(これによって比例電磁弁12の開口量が決まる)である。即ち、この指令量が大きくなると、荷役具4の動作速度が大きくなる。また、後述するように、レバー特性には、主レバー特性と副レバー特性とがある。
【0025】
図3は、傾倒角に対する油圧駆動手段10への指令量の関係を示す。横軸は、操作レバー5の傾倒角であり、原点は、中立位置(θ=0)である。図3において、中立位置から右方への傾倒角の増加は操作レバー5の前傾を意味し、中立位置から左方への傾倒角の増加は操作レバー5の後傾を意味する。縦軸は、指令量である。
【0026】
制御手段9は、操作レバー5の操作範囲(0≦θ≦θmax)のうち、中立位置を含む所定の範囲(0≦θ<θ)では、操作レバー5が操作されても、その傾倒角に関係なく指令量はT=0とし、荷役具4を動作させない。これにより、中立位置を含む所定の範囲(0≦θ<θ)は、不感帯となる。
【0027】
制御手段9は、操作レバー5が不感帯を超えて操作されたとき、操作レバー5の傾倒角に応じて油圧駆動手段10を駆動制御して荷役具4を動作させる。これにより、不感帯を超えた最大傾倒角までの範囲(θ≦θ≦θmax)は、操作レバー5が操作されると荷役具4が動作される操作帯となる。
【0028】
荷役装置3は、操作帯における傾倒角に対する指令量が定められた第1主レバー特性ないし第n主レバー特性が記憶された特性記憶手段13(図2)を備える(但し、nは2以上の自然数)。特性記憶手段13は、周知の記憶媒体からなる。図3に、主レバー特性が示されている。主レバー特性は、テーブルや演算式として記憶されている。この実施例では、n=4であり、第1主レバー特性(A)、第2主レバー特性(B)、第3主レバー特性(C)、および、第4主レバー特性(D)が特性記憶手段13に記憶されている。
【0029】
この実施例では、傾倒角(操作量)に対する指令量の関係は、前傾および後傾で同じなので、前傾の場合のみが説明され、後傾の場合の説明は省略される。なお、この関係は、前傾と後傾とで互いに異なっていてもよいし、さらに、図3図5の例示に当然ながら限定されるものではない。さらに、この実施例では、4つの主レバー特性が設けられるが、2つ、3つ、または、5つ以上の主レバー特性が設けられてもよい。
【0030】
図3の各主レバー特性(A)−(D)は以下のような特性を有する。
各主レバー特性(A)−(D)では、指令量Tは、傾倒角θ=θでT=0であり、傾倒角に比例して連続的に増加し、傾倒角θ=θmaxでT=Tmaxになる。指令量Tは、θ<θ<θmaxの範囲での任意の傾倒角において、第k主レバー特性のほうが第(k−1)主レバー特性よりも大きい(但し、kは自然数であり、2≦k≦4)。また、傾倒角が小さい範囲での傾倒角の変化に対する指令量の変化の割合(即ち、特性曲線の接線の傾き)は、第(k−1)主レバー特性のほうが第k主レバー特性よりも小さい。一方、傾倒角が大きい範囲での傾倒角の変化に対する指令量の変化の割合は、第k主レバー特性のほうが第(k−1)主レバー特性よりも小さい。
【0031】
従って、指令量が任意の値T(0<T<Tmax)未満である傾倒角の範囲を低速帯とし、所定値T以上である傾倒角の範囲を高速帯とすると、低速帯は、第(k−1)主レバー特性のほうが第k主レバー特性よりも大きく、高速帯は、第k主レバー特性のほうが第(k−1)主レバー特性よりも大きい。
【0032】
つまり、第(k−1)主レバー特性は、第k主レバー特性よりも、荷役具4の低速での速度調整はしやすい(即ち、荷役具4を微操作しやすい)が、高速での速度調整はしにくい。一方、第k主レバー特性は、第(k−1)主レバー特性よりも、荷役具4の低速での速度調整はしにくいが、高速での速度調整はしやすい。
【0033】
次に、主レバー特性の設定について説明される。
操作レバー5がオペレータにより中立位置から不感帯を超えて操作帯へ操作されるとき、制御手段9は、操作量検出手段7及び操作速度検出手段8によって、そのときの不感帯での操作レバー5の操作速度Vを取得する。この操作速度Vは、操作レバー5が不感帯を通過するときの平均速度でもよく、不感帯を移動するときに検出される速度のうちの最高速度としてもよいし、不感帯内の所定位置を通過するときの速度としてもよい。
【0034】
制御手段9は、第1主レバー特性(A)から第4主レバー特性(D)のうち、いずれか1つの主レバー特性を不感帯での操作速度Vに基づき設定する。制御手段9は、操作速度Vが大きいほど、傾倒角が大きい範囲において変化の割合がより小さい主レバー特性を、即ち高速帯がより大きい主レバー特性を設定する。より具体的には、制御手段9は、0<V<Vのとき第1主レバー特性(A)を、V≦V<Vのとき第2主レバー特性(B)を、V≦V<Vのとき第3主レバー特性(C)を、V≦Vのとき第4主レバー特性(D)を設定する。
【0035】
制御手段9は、上記のように設定された主レバー特性に従い油圧駆動手段10を駆動制御して荷役具4を動作させる。
【0036】
一般的に、オペレータは、荷役具4を低速で動作させたいとき操作レバー5を中立位置からゆっくり倒すが、このようなときには、第1主レバー特性(A)や第2主レバー特性(B)のような、荷役具4の低速での速度調整が比較的にしやすい主レバー特性が自動的に設定される。また、オペレータは、荷役具4を高速で動作させたいとき操作レバー5を中立位置から勢いよく倒すが、このようなときには、第3主レバー特性(C)や第4主レバー特性(D)のような、荷役具4の高速での速度調整が比較的にしやすい主レバー特性が自動的に設定される。
【0037】
次に、上記のように主レバー特性が設定された後、操作レバー5を中立位置に向けて反転させる(荷役具4を減速させる)ときの制御について説明される。この時の制御は、低速での速度調整がしやすい主レバー特性が設定された場合と、高速での速度調整がしやすい主レバー特性が設定された場合とで異なる。即ち、不感帯での操作速度Vが所定未満の場合と所定以上の場合とで異なる制御がなされる。なお、制御手段9は、ポテンショメータ6(操作量検出手段7および操作速度検出手段8)からの出力に基づいて操作レバー5の反転を検出する。
【0038】
この実施例では、低速での速度調整がしやすい第1主レバー特性(A)、第2主レバー特性(B)が設定された場合と、高速での速度調整がしやすい第3主レバー特性(C)、第4主レバー特性(D)が設定された場合とで、制御が異なる。即ち、操作速度Vが、V<Vの場合と、V≧Vの場合とで異なる制御がなされる。
【0039】
まず、V<Vの場合として、第1主レバー特性(A)が設定されたときの例が説明される。図4の通り、制御手段9は、第1主レバー特性(A)を設定してから操作レバー5が中立位置に向けて反転されたことを検出すると、この反転時の指令量(以下、反転時指令量T)が所定未満か所定以上かを判定する。
【0040】
図4Aの通り、反転時指令量Tが所定の閾値T未満の場合(T<T)、制御手段9は、設定された第1主レバー特性(A)を維持し、これに従って油圧駆動手段10を駆動制御して荷役具4を動作させる。
【0041】
一方、図4Bの通り、反転時指令量Tが閾値T以上の場合(T≧T)、制御手段9は、設定された第1主レバー特性(A)に代えて第1副レバー特性(X)を設定する。即ち、制御手段9は、操作レバー5の反転時に、レバー特性を、第1主レバー特性(A)から第1副レバー特性(X)に切り替える。
【0042】
この第1副レバー特性(X)は、操作レバー5の反転時の傾倒角(以下、反転時傾倒角θ)までの範囲において、即ちθ≦θ≦θにおいて、次のような特性を有する。図4Bの通り、第1副レバー特性(X)の指令量Tは、傾倒角θ=θでT=0であり、傾倒角に比例して連続的に増加し、傾倒角θ=θで指令量T=Tになる。指令量Tは、θ<θ<θの任意の傾倒角において、第1副レバー特性(X)のほうがその前に設定されていた第1主レバー特性(A)よりも大きい。操作角が小さい範囲での操作角の変化に対する指令量の変化の割合は、第1副レバー特性(X)のほうがその前に設定されていた第1主レバー特性(A)よりも大きく、操作角が大きい範囲での当該変化の割合は、第1副レバー特性(X)のほうがその前に設定されていた第1主レバー特性(A)よりも小さい。つまり、θ≦θ≦θにおいて、高速での速度調整は、第1副レバー特性(X)のほうが第1主レバー特性(A)よりもしやすい。
【0043】
このようなθ≦θ≦θにおける第1副レバー特性(X)は、例えば、その前に設定されていた第1主レバー特性(A)よりも高速での速度調整がしやすい他の主レバー特性(B)−(D)のいずれかを用いて制御手段9によって演算される。この実施例では、制御手段9は、第1副レバー特性(X)の特性曲線が点(θ、0)と点(θ、T)とを通りかつ図3の第3主レバー特性(C)の特性曲線(θ≦θ≦θmax、0≦T≦Tmax)をθ≦θ≦θ、0≦T≦Trの領域に縮小したもとのなるように、第1副レバー特性(X)を演算する。即ち、制御手段9は、操作レバー5が反転されたときに、第3主レバー特性(C)および所定の演算式を用いて上記のような第1副レバー特性(X)を演算し、設定する。なお、第1副レバー特性(X)の演算は、これに限らず他の方法が採用されても当然よい。
【0044】
θ<θ≦θmaxにおける第1副レバー特性(X)の指令量Tは、例えば、その前に設定されていた第1主レバー特性(A)と同じとしてもよいし、T=Tの一定としてもよい。
【0045】
そして、制御手段9は、第1副レバー特性(X)に従って油圧駆動手段10を駆動制御して荷役具4を動作させる。
【0046】
<Vの場合として、第2主レバー特性(B)が設定されたときも、上記の第1主レバー特性(A)が設定されたときと同様の制御が行なわれる。
【0047】
以上のように、低速での速度調整がしやすい主レバー特性が設定されている場合において、反転時指令量Tが所定未満であれば(図4A)、設定中の主レバー特性が維持される。即ち、オペレータが操作レバー5によって荷役具4を低速で操作しているときに、操作レバー5を反転させたとしても、低速での速度調整(微操作)がしやすい状態が続く。
【0048】
一方、低速での速度調整がしやすい(高速での速度調整がしにくい)主レバー特性が設定されている場合において、反転時指令量Tが所定以上であれば(図4B)、上記の第1副レバー特性(X)に切り換えられる。この第1副レバー特性(X)は、上記の通りθ≦θ≦θにおいて、高速での速度調整がその前に設定されていた主レバー特性よりもしやすい。例えば、オペレータが操作レバー5をゆっくり倒して荷役具4を緩やかに加速させて高速動作させ、それから操作レバー5を戻して荷役具4を減速させようとしたとき、高速での速度調整がしにくい主レバー特性が維持されたままだと荷役具4を操作しづらい。この荷役装置3では、高速での速度調整がしやすい第1副レバー特性(X)に切り替わるので、このようなときでも荷役具4を操作(減速)しやすい。
【0049】
次に、V≧V場合として、第4主レバー特性(D)が設定されたときの例が説明される。図5の通り、制御手段9は、第4主レバー特性(D)を設定してから操作レバー5が中立位置に向けて反転されたことを検出すると、先と同様に、反転時指令量Tが所定未満か所定以上かを判定する。
【0050】
図5Aの通り、反転時指令量Tが閾値T未満の場合(T<T)、制御手段9は、設定された第4主レバー特性(D)に代えて第2副レバー特性(Y)を設定する。即ち、制御手段9は、操作レバー5の反転時に、レバー特性を、第4主レバー特性(D)から第2副レバー特性(Y)に切り替える。
【0051】
この第2副レバー特性(Y)は、反転時操作角θまでの範囲において、即ちθ≦θ≦θにおいて、次のような特性を有する。図5Aの通り、第2副レバー特性(Y)の指令量Tは、傾倒角θ=θでT=0であり、傾倒角に比例して連続的に増加し、傾倒角θ=θで指令量T=Tになる。指令量Tは、θ<θ<θの任意の傾倒角において、第2副レバー特性(Y)のほうがその前に設定されていた第4主レバー特性(D)よりも小さい。操作角が小さい範囲での操作角の変化に対する指令量の変化の割合は、第2副レバー特性(Y)のほうがその前に設定されていた第4主レバー特性(D)よりも小さく、操作角が大きい範囲での当該変化の割合は、第2副レバー特性(Y)のほうがその前に設定されていた第4主レバー特性(D)よりも大きい。つまり、θ≦θ≦θにおいて低速での速度調整は、第2副レバー特性(Y)のほうが第4主レバー特性(D)よりもしやすい。
【0052】
このようなθ≦θ≦θにおける第2副レバー特性(Y)は、例えば、その前に設定されていた第4主レバー特性(D)よりも低速での速度調整がしやすい他の主レバー特性(A)−(C)のいずれかを用いて制御手段9によって演算される。この実施例では、制御手段9は、第2副レバー特性(Y)の特性曲線が点(θ、0)と点(θ、T)とを通りかつ図3の第1主レバー特性(A)の特性曲線(θ≦θ≦θmax、0≦T≦Tmax)をθ≦θ≦θ、0≦T≦Trの領域に縮小したもとのなるように、第2副レバー特性(Y)を演算する。即ち、制御手段9は、操作レバー5が反転されたときに、第1主レバー特性(A)および所定の演算式を用いて上記のような第2副レバー特性(Y)を演算し、設定する。なお、第2副レバー特性(Y)の演算は、これに限らず他の方法が採用されても当然よい。
【0053】
θ<θ≦θmaxにおける第2副レバー特性(Y)の指令量Tは、例えば、その前に設定されていた第4主レバー特性(D)と同じとしてもよいし、T=Trの一定としてもよい。
【0054】
そして、制御手段9は、第2副レバー特性(Y)に従って油圧駆動手段10を駆動制御して荷役具4を動作させる。
【0055】
一方、図5Bの通り、反転時指令量Tが所定の閾値T以上の場合(T≧T)、制御手段9は、設定された第4主レバー特性(D)を維持し、これに従って油圧駆動手段10を駆動制御する。
【0056】
≧Vの場合として、第3主レバー特性(C)が設定されたときも、上記の第4主レバー特性(D)が設定された場合と同様の制御が行なわれる。
【0057】
以上のように、高速での速度調整がしやすい(低速での速度調整がしにくい)主レバー特性が設定されている場合において、反転時指令量Tが所定未満であれば(図5A)、上記の第2副レバー特性(Y)に切り替えられる。この第2副レバー特性(Y)は、上記の通りθ≦θ≦θにおいては低速での速度調整がその前に設定されていた主レバー特性よりもしやすい。例えば、オペレータは操作レバー5を勢いよく倒したものの実際には荷役具4を低速で操作したくて操作レバー5を戻した場合、低速での速度調整がしにくい主レバー特性が設定されたままでは、微操作しづらい。この荷役装置3では、低速での速度調整がしやすい第2副レバー特性(Y)に切り替わるので、このようなときでも荷役具4を微操作しやすくなる。
【0058】
一方、高速での速度調整がしやすい主レバー特性が設定されている場合において、反転時指令量Tが所定以上であれば(図5B)、設定中の主レバー特性は維持される。即ち、オペレータが操作レバー5によって荷役具4を高速で操作しているときに、操作レバー5を反転したとしても、高速での速度調整がしやすい状態が続く。
【0059】
このように本発明の荷役装置3によれば、操作レバー5を中立位置へ反転させるときの反転時指令量Tが所定未満か所定以上かにより、主レバー特性(A)〜(D)が維持されるか、上述の第1副レバー特性(X)または第2副レバー特性(Y)へ切り替わるかが決定される。これにより、本発明の荷役装置3は、操作レバー5を中立位置へ戻す際に常に最適な操作性をオペレータに付与することができ、操作性がより高いものとなっている。
【0060】
それから、制御手段9は、操作レバー5が不感帯内のリセット位置にまで戻されたことを検出すると、設定中のレバー特性(主レバー特性または副レバー特性)をリセットする。なお、副レバー特性が設定されてからは、操作レバー5を再び反転させて指令量を大きく増やす(荷役具4の速度を大きく増やす)ことはあまりしない。そのため、制御手段9は、上記の第1副レバー特性(X)または第2副レバー特性(Y)を設定してからは、たとえ操作レバー5が再び中立位置から離れる方向に倒されたとしても、リセット位置まで戻されるまでの間は、設定された第1副レバー特性(X)または第2副レバー特性(Y)を維持する。制御手段9は、操作レバー5がリセット位置まで戻されたことを検出すると、設定された第1副レバー特性(X)または第2副レバー特性(Y)をリセットする。
【0061】
なお、リセット位置は、不感帯内に設定されるものであるが、中立位置から離れ、かつ、不感帯と操作帯との境界(θ=θ)から離れた位置であることが好ましい。
【0062】
オペレータは、操作レバー5を、中立位置にまで完全に戻さずに再び操作帯まで操作することがある。リセット位置を中立位置から離れた位置に設定することにより、このようなときでも、次の操作に適したレバー特性が自動的に設定されるようになる。なお、当然ながら、リセット位置を中立位置に設定してもよい。オペレータは、荷役具4の位置調整ために、操作レバー5を操作帯内の傾倒角が小さい範囲で細かく操作することがあり、その際に操作レバー5を、操作帯から不感帯へ僅かに移動させてしまうことがある。中立位置を、不感帯と操作帯との境界からある程度離れた位置に設定することにより、このようなときでも、レバー特性がリセットされずに維持され、オペレータが荷役具4の微操作を続けることができる。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。なお、図4で説明された第1副レバー特性(X)に切り替えるかを決定するための閾値Tと、図5で説明された第2副レバー特性(Y)に切り換えるかを決定するための閾値Tとは同じ値でもよく異なる値でもよい。また、この閾値Tは、主レバー特性(A)−(D)毎に決められてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 車両本体
2 車輪
3 荷役装置
4 荷役具
5 操作レバー
6 ポテンショメータ
7 操作量検出手段
8 操作速度検出手段
9 制御手段
10 油圧駆動手段
11 油圧モータ
12 比例電磁弁
13 特性記憶手段
14 マスト
15 ストラドルレッグ
(A) 第1主レバー特性
(B) 第2主レバー特性
(C) 第3主レバー特性
(D) 第4主レバー特性
(X) 第1副レバー特性
(Y) 第2副レバー特性
【要約】
【課題】操作性がより高いフォークリフトの荷役装置を提供する。
【解決手段】操作レバーを中立位置から操作帯まで操作したとき、不感帯における操作レバーの操作速度が大きいほど、高速での速度調整がよりしやすいレバー特性が設定される。不感帯における操作速度が小さいほど、低速での速度調整がよりしやすいレバー特性が設定される。それから、操作レバーが中立位置に向けて反転されたとき、その時の油圧駆動手段への指令量に基づいてレバー特性を維持するか別のレバー特性に切り換えるかが決定される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5