【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼発行日:平成24年9月4日 刊行物名:「人間活動のための支援技術・システムに関する研究会」予稿集 発行者:大阪工業大学・大阪市立大学・関西学院大学・摂南大学合同研究会 ▲2▼発行日:平成24年9月25日 刊行物名:平成24年度 卒業研究中間発表会予稿集 発行者:大阪市立大学工学部機械工学科 ▲3▼開催日:平成24年11月27日 集会名:第1回サステナブルストックマネジメントに関するシンポジウム 開催場所:大阪市立大学 学術情報総合センター 10F
【文献】
So-Ryeok Oh他,Autonomous Helicopter Landing on a Moving Platform Using a Tether,Proceedings of the 2005 IEEE International Conference on Robotics and Automation,米国,IEEE,2005年 4月,pages 3960-3965
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記飛行体の現在位置と前記飛行体の目標位置とに基づく差分値と、前記ケーブルの前記張力とに基づいて、前記飛行体の位置を制御する、請求項1に記載の飛行体システム。
前記制御部は、前記飛行体に対する重力と前記ケーブルの前記張力との合力の方向に基づいて、前記飛行体の姿勢角度を制御する、請求項1又は請求項2に記載の飛行体システム。
前記制御部は、前記ケーブルの前記張力により生ずる前記飛行体の水平方向の位置ずれを補正するように前記姿勢角度の目標角度を制御する、請求項3に記載の飛行体システム。
前記制御部は、前記飛行体に対する重力と前記ケーブルの前記張力との合力の大きさに基づいて、前記飛行体の推力を制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の飛行体システム。
前記制御部は、前記飛行体に対する重力と前記ケーブルの前記張力との合力を補償可能な前記飛行体の補償推力を算出し、前記補償推力によって前記飛行体の前記推力を補償する、請求項6に記載の飛行体システム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるヘリコプタシステム及びヘリコプタ制御方法の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。本発明の実施形態はヘリコプタ以外にも飛行機等の飛行体全般に適用され得る。
【0024】
[実施形態1:基本原理]
図1(a)は、本発明の実施形態1におけるヘリコプタシステム100を示す模式図である。以下、
図1(a)を参照して、ヘリコプタシステム100を説明する。
【0025】
ヘリコプタシステム100は、ヘリコプタ110と、ヘリコプタ110に曳航されたケーブル120と、ヘリコプタ110の位置を制御する制御部130とを備える。
【0026】
ケーブル120は、ヘリコプタ110に電力を供給するあるいは信号を伝達する電線ケーブルである。ケーブル120は、ヘリコプタ110の飛行中は、ケーブル120の自重により垂下している。
【0027】
制御部130は、ヘリコプタ110に作用するケーブル120の張力に基づいて、ヘリコプタ110の位置を制御する。例えば、制御部130は、ヘリコプタ110を目標位置に飛行させるように制御する。本実施形態において、ヘリコプタ110の重量を軽減させること、及び信号やデータをリアルタイムで確実にヘリコプタ110に伝達させることを考慮し、制御部130は、ヘリコプタ110から離れた位置に設置される。制御部130とヘリコプタ110とはケーブル120を介して回転自由に連結されている。制御部130は、ケーブル120を利用してヘリコプタ110と信号を伝達したり、データを交換したりすることができる。
【0028】
制御部130は、例えば、ヘリコプタ110の現在位置とヘリコプタ110の目標位置とに基づく差分値(位置ずれ)と、ケーブル120の張力とに基づいて、ヘリコプタ110の位置を制御する。制御部130は、ヘリコプタ110の現在位置を示すデータや、ヘリコプタ110に作用するケーブル120の張力T
c(例えば張力T
cの大きさや張力T
cが作用する方向)を示すデータを取得することができる。
【0029】
ヘリコプタシステム100は、電源Eを備え得る。電源Eは蓄電所として飛行時のヘリコプタ110の下方に設置されている。ヘリコプタ110と電源Eとは、ケーブル120を介して連結されている。電源Eは、ケーブル120を通じて、ヘリコプタ110に電力を供給する。なお、電源Eは、商用電源として、電源コンセントによりヘリコプタ110に電力を供給してもよい。
【0030】
以下、
図1(b)を参照して、実施形態1におけるヘリコプタシステム100の原理を説明する。ここで、ヘリコプタシステム100は、本来3次元的なものであるが、簡潔のため、ヘリコプタシステム100のモデルを2次元的に示す。ヘリコプタ110のロール運動とピッチ運動の両方を制御することにより、2次元モデルから3次元モデルに拡張可能である。
【0031】
図1(b)は、ヘリコプタ110に作用する力を示す模式図である。
図1(b)において、推力F
h、重力m
hg、張力T
c、姿勢角度θ
h、角度θ
cが示される。推力F
hはヘリコプタ110の推力を示し、重力m
hgはヘリコプタ110に作用する重力を示し、張力T
cはヘリコプタ110に作用するケーブル120の張力を示す。更に姿勢角度θ
hは水平面に対するヘリコプタ110の飛行姿勢角度を示し、角度θ
cは鉛直方向に対する張力T
cの角度を示す。
【0032】
ヘリコプタ110に作用する力Fのx成分F
xとy成分F
yとは、それぞれ、
【0036】
また、ヘリコプタ110の移動距離のx成分xとヘリコプタ110に作用する力Fのx成分F
xとの関係、及びヘリコプタ110の移動距離のy成分yとヘリコプタ110に作用する力Fのy成分F
yとの関係は、それぞれ、
【0040】
ここで、質量m
hはヘリコプタ110の質量を示し、加速度a
xはヘリコプタ110の加速度aのx成分を示し、加速度a
yはヘリコプタ110の加速度aのy成分を示す。
【0041】
式1から式4を参照して理解できるように、ヘリコプタ110の水平方向に沿った移動距離の成分x及びヘリコプタ110の鉛直方向に沿った移動距離の成分yは、いずれも、ヘリコプタ110の推力F
hとケーブル120の張力T
cとにより決定される。従来技術のように、ケーブル120の張力T
cを考慮せずにヘリコプタ110を制御すると、ケーブル120の張力T
cの影響により位置ずれが大きくなる。一方、本発明の実施形態によれば、ケーブル120の張力T
cに基づく影響が考慮され、ヘリコプタ110が目標位置に飛行できるように、ヘリコプタ110を制御することができる。
【0042】
制御部130は、式1及び式2に示される原理に基づいて、予め設定した目標位置の情報及び取得した張力T
cの情報により、ヘリコプタ110を目標位置に飛行させるようにヘリコプタ110の推力F
hの大きさ及び向きを決定する。続いて、制御部130は、決定された推力F
hが出力されるようにヘリコプタ110のモータを制御し、ヘリコプタ110が推力F
hで目標位置に飛行する。
【0043】
なお、制御部130は、ヘリコプタ110と離れた位置に設置されているが、制御部130の設置位置は特に限定されず、例えば、制御部130の構成の全部又は一部をヘリコプタ110内に設置可能である。
【0044】
なお、本実施形態において、ヘリコプタ110は、ケーブル120を介して電源Eに接続されているが、本発明は、本実施形態に限定されず、ヘリコプタ110は、例えば、データを処理したり貯蔵したりする他の遠隔装置に接続されてもよい。
【0045】
以下、
図1と
図2とを参照して、実施形態1におけるヘリコプタ110の制御方法を説明する。
図2は、ヘリコプタ110の制御方法を示すフローチャートである。ヘリコプタ110の制御方法は、ケーブル120を曳航するヘリコプタ110を制御する制御方法であって、ステップS110とステップS120とを実行することにより実現される。
【0046】
ステップS110において、制御部130は、ヘリコプタ110に作用するケーブル120の張力T
cを取得する。次に、ステップS120において、制御部130は、ケーブル120の張力T
cに基づいて、ヘリコプタ110の位置を制御する。
【0047】
ステップS120において、例えば、制御部130は、ヘリコプタ110の現在位置とヘリコプタ110の目標位置とに基づく差分値(位置ずれ)と、ケーブル120の張力とに基づいて、ヘリコプタ110の位置を制御する。制御部130は、ヘリコプタ110の現在位置及び姿勢を示すデータ、ケーブル120の張力T
c(例えば張力T
cの大きさや張力T
cが作用する方向)を示すデータを取得することができる。ヘリコプタ110の目標位置は予め制御部130に設定されている。
【0048】
以上、
図1と
図2とを参照して、実施形態1におけるヘリコプタ110の制御方法を説明した。実施形態1におけるヘリコプタ110の制御方法によれば、ステップS110及びステップS120を実行することによって、ヘリコプタ110を目標位置に飛行させることができる。
【0049】
[実施形態2]
図3から
図7を参照して、本発明の実施形態2におけるヘリコプタシステム200を説明する。
図3(a)は、ヘリコプタシステム200の2次元モデルを簡略的に示す模式図である。
【0050】
ヘリコプタシステム200は、ヘリコプタ210と、ヘリコプタ210に曳航されたケーブル220と、ヘリコプタ210の位置を制御する制御装置260と、長さ調整器250とを備える。制御装置260は、制御部230と外力情報取得装置240とを含む。
【0051】
ヘリコプタ210は、例えば、マルチロータヘリコプタとして、第1ロータ212aと第2ロータ212bとを有する。図示されていない第3ロータ及び第4ロータを用いると、ヘリコプタ210の紙面外の運動を独立に制御可能であるため、
図3(a)に示す2次元モデルを3次元モデルに容易に拡張可能である。
【0052】
長さ調整器250は、例えば、地上又は地上を走行する台車上に設置され、ケーブル220の長さを調整する。例えば、長さ調整器250は、ケーブル220の張力が最小になるように、ケーブル220の長さを調整する。
【0053】
ヘリコプタ210の運動方程式は、次のように与えられる。
【0057】
ここで、位置x及び位置yは長さ調整器250に対するヘリコプタ210の位置を示し、距離rはヘリコプタ210の重心からロータ212までの距離を示し、慣性モーメントIはヘリコプタ210の慣性モーメントを示し、推力F
1及び推力F
2は第1ロータ212aの推力及び第2ロータ212bの推力を示す。
【0058】
図4は、ヘリコプタシステム200の各構成部分間の制御関係を示す模式図である。
図5は、目標角度の補正と推力のフィードフォワード補償との制御ブロック図である。以下、
図4及び
図5を参照して、制御部230によるヘリコプタシステム200の制御を説明する。
【0059】
制御部230は、角度制御部231と位置制御部232と外力補償部233とを有している。
【0060】
角度制御部231は、ヘリコプタ210が姿勢角度θ
hで傾斜して飛行するようにモータ211を制御する。位置制御部232は、予め設定された位置x
ref及びy
refを目標位置にしてヘリコプタ210が飛行するようにモータ211を制御する。
【0061】
外力補償部233は、外力情報取得装置240により取得した外力の情報に基づいて、外力により生じる位置ずれを補償するように、角度制御部231とモータ211が出力する推力F
1及びF
2に対して補償値を与える。これらの補償値を用いて制御することによって、ヘリコプタ210の飛行位置は、目標位置に修正される。その結果、制御部230は、ヘリコプタ210が目標位置に移動するようヘリコプタ210を制御できる。
【0062】
なお、ヘリコプタ210の飛行位置は、目標角度指令の補正及び推力のフィードフォワード補償のうちの少なくとも一方によって、目標位置に修正される。以下、
図3から
図6を参照して、目標角度指令の補正及び推力のフィードフォワード補償の詳細を説明する。
【0063】
<目標角度指令の補正>
始めに目標角度指令の補正を説明する。目標角度指令の補正では、推力F
1及び推力F
2が外力と対向する方向を向くように推力F
1及び推力F
2を制御することによって、張力により生じる位置ずれが補正される。角度制御部231は、算出した回転速度となるように推力F
1及び推力F
2を制御する。角度制御部231は、ヘリコプタ210の姿勢角度を変更させ、推力F
1及び推力F
2の方向が補正される。以下、外力情報取得装置240により取得した外力の情報に基づいて、推力F
1及びF
2の向きの姿勢角度θ
hを決定することについて説明する。
【0064】
ケーブル220は、剛性を考慮せず、自重により理想的に弛んでおり、一定の長さLcを有するものとする。また、目標位置への移動は、例えば、壁面検査時の移動として想定されている。ヘリコプタ210の飛行が十分遅く、ヘリコプタ210が静的に移動することを仮定可能である。そのため、ケーブル220はカテナリー(懸垂線)形状であるとみなすことができる。
【0065】
実施形態2において、外力情報取得装置240は、ケーブル220の両端部の相対位置(Δx、Δy)と、ケーブル220の長さL
cとに基づき、カテナリーの理論から、張力T
cの情報を算出し、取得する。
図3(b)は、カテナリーの理論に基づくケーブル220のモデルを示す。
図3(b)に示されるモデルに基づくケーブル220のカテナリー曲線による方程式は、
【0074】
ここで、距離x
vはケーブル220の最下点から長さ調整器250までの水平距離を示し、水平分力Hはケーブル220両端の水平分力を示し、質量wはケーブル220の単位長質量を示し、角度θ
rは長さ調整器250とケーブル220との角度を示し、張力T
rは長さ調整器250に作用するケーブル220の張力を示す。
【0075】
式8〜式14に基づいて、外力情報取得装置240は、張力T
cの情報を取得する。
【0076】
外力情報取得装置240は、相対位置(Δx、Δy)及び長さL
cの情報を取得する。ケーブル220の両端部の相対位置(Δx、Δy)は、ヘリコプタ210と長さ調整器250との相対位置に相当しており、ヘリコプタ210の内部に搭載しているGPSや気圧計などのセンサにより検出することが可能である。また、ケーブル220の長さL
cは、長さ調整器250により繰出し量を積算するなどの方法で検出可能である。なお、ケーブル220の両端部の相対位置(Δx、Δy)の検出方法は、本実施形態に限定されず、例えば、ヘリコプタ210を外部から撮像して画像処理することにより検出することが可能である。
【0077】
外力情報取得装置240は、張力算出部241を有する。張力算出部241は、入力された相対位置(Δx、Δy)及び長さL
cを式8及び式9に代入して、距離x
v及びカテナリー数Cを算出し、ケーブル220のカテナリー曲線の形状を決めることができる。
【0078】
さらに、張力算出部241で算出された距離x
v及びカテナリー数Cを式11及び式12に代入することにより、ケーブル220の両端における張力T
cの向き及び張力T
rの向きを算出する。また、張力T
cの大きさ及び張力T
rの大きさを算出する。このように、張力算出部241は、ヘリコプタ210に作用するケーブル220の張力T
cを測定することができる。
【0079】
次に、取得した張力T
cの情報は、外力情報取得装置240から、外力補償部233に入力される。外力補償部233は、ケーブル220の張力T
cを考慮した上で、ヘリコプタ210の目標角度θ
FFを算出する。その後、算出した目標角度θ
FFの情報は、外力補償部233から、角度制御部231に入力されると共に、位置制御部232から入力された情報に加算されることにより、ヘリコプタ210の姿勢角度の目標値θ
REFが算出される。さらに、角度制御部231は、ヘリコプタ210がθ
REFで飛行するようにモータ211を制御する。その結果、ヘリコプタ210は、姿勢角度の目標値θ
REFで飛行することにより、ケーブル220の張力T
cを相殺する方向に推力の方向を向けることができる。
【0080】
以下、
図3(c)を参照して、外力補償部233が張力T
cに基づいて目標角度θ
FFを算出する原理について説明する。
【0081】
図3(c)は、ヘリコプタ210に作用する力を示す模式図である。ヘリコプタ210にかかる外力は、ヘリコプタ210に加わる重力mgとケーブル220の張力T
cとの合力である。そのため、目標角度θ
FFは、合力の方向と推力の方向が正反対になるように、式15に基づいて算出することができる。
【0083】
ここで、角度θ
resは、重力mgと合力T(重力mgと張力T
cとの合力)のベクトルが成す角度を示す。
【0084】
なお、本発明に係る外力補償部233は、ケーブル220の張力T
cに起因する水平方向における位置ずれを補正するように、ヘリコプタ210の目標角度θ
FFを制御する。ヘリコプタ210の目標角度θ
FFの制御は、ヘリコプタ210の角度を直接制御するため、ヘリコプタ210の位置制御の水平方向の応答速度が向上する。
【0085】
<推力のフィードフォワード補償>
次に推力のフィードフォワード補償を説明する。推力のフィードフォワード補償によって、推力F
1及び推力F
2の大きさが補正され、張力により生じる位置ずれが補正される。以下、外力情報取得装置240により取得した外力の情報に基づく推力のフィードフォワード補償について説明する。
【0086】
外力補償部233は、張力T
cと重力mgとの合力を補償可能な補償推力F
FFを算出する。制御部230は、位置制御部232からの出力に補償推力F
FFが加算された上でロータ212が出力するように、モータ211を制御する。
【0087】
図6は、フィードフォワード補償の概念図を示す。ヘリコプタ210の姿勢角度θ
hとヘリコプタ210の目標角度θ
FFとは一致していないため、推力ベクトル方向における重力mgと張力T
cとの成分をフィードフォワード補償することにより、張力T
cと重力mgとによる影響を低減する。
【0088】
外力補償部233は、フィードフォワード補償の推力F
FFを式16により算出することができる。ここで、係数K
FFは、フィードフォワード係数を示す。
【0090】
さらに、目標角度θ
FFと補償推力F
FFとの両方を補償することができる。係数K
FFを1とし、ヘリコプタ210の姿勢角度θ
hが目標角度θ
FFに一致しているとき、張力T
cと重力mgとの合力は完全に補償される。その結果、ヘリコプタ210は、張力T
cによる影響を受けず、目標位置に飛行することができる。
【0091】
なお、本実施形態において、外力情報取得装置240は、ケーブル220の長さL
c及びヘリコプタ210の相対位置に基づいて、張力T
cを算出しているが、本発明は、本実施形態に限定されず、例えば、ケーブル220の張力を測定する張力測定部を備える。張力測定部は、ヘリコプタ210とケーブル220との間に設けることにより張力Tcを測定することができる。この場合、張力測定部は、例えばロードセル又は歪みゲージであり得る。また、ケーブル220とヘリコプタ210とが相対的に回転自由な場合、回転した角度を測定することにより、張力T
cの角度θ
cを測定することができる。
【0092】
<長さ調整器によるケーブルの張力制御>
長さ調整器250は、ケーブル220を巻き取ったり、繰出したりするために設けられている。長さ調整器250は、ヘリコプタ210の飛行距離に応じて、必要な長さでケーブル220を繰出すことができると共に、ヘリコプタ210に連結していないケーブル220の一端部を固定することができる。
図3(a)に示すモデルでは、長さ調整器250は、電源Eと同じ位置に設置されている。
【0093】
以下、長さ調整器250を利用して張力Tcを間接的に調整する一例を説明する。始めに、制御部230はヘリコプタ210の位置情報を取得する。次に、制御部230は、カテナリーの理論に基づいて、張力算出部241がヘリコプタ210の位置に対し最小張力となる場合のケーブル220の長さL
cmを算出する。さらに、制御部230は、算出されたケーブル220の長さL
cmを繰出すように、長さ調整器250を制御する。その結果、長さ調整器250から繰出すケーブル220の長さを調整することができ、張力T
cを最小にすることができる。
【0094】
なお、張力算出部241は、最小張力となるケーブル220の長さL
cmを算出する場合、ケーブル220の最下点の高さなどの拘束条件を考慮しても良い。
【0095】
なお、制御部230は、長さ調整器250とケーブル220とが成す角度θ
rが0度となるように、長さ調整器250を制御しても良い。
【0096】
以上、長さ調整器250によるケーブル220の張力制御を説明した。
【0097】
以下、
図3〜
図7を参照して、実施形態2におけるヘリコプタ210の制御方法を説明する。
図7は、ヘリコプタ210の制御方法を示すフローチャートである。ヘリコプタ210の制御方法は、ケーブル220を曳航するヘリコプタ210を制御する制御方法であって、ステップS210とステップS220とを実行することにより実現される。
【0098】
まず、ステップS210において、外力情報取得装置240は、ヘリコプタ210に作用するケーブル220の張力T
cを取得する。
【0099】
ステップS210は、ステップS211及びステップS212により実行される。ステップ211において、外力情報取得装置240は、ケーブル220の両端部の相対位置(Δx,Δy)の情報を取得する。さらに、ステップS212において、外力情報取得装置240は、取得したケーブル200の両端部の相対位置(Δx,Δy)及びケーブル220の長さL
cに基づいて、張力T
cの大きさ及び方向を算出する。
【0100】
次に、ステップS220において、制御部230は、ケーブル220の張力T
cに基づいて、ヘリコプタ210の位置を制御する(ヘリコプタ210を目標位置に移動させる)。
【0101】
ステップS220は、ステップS221及びステップS222のうちの少なくとも一方と、ステップS223とにより実行される。ステップS221において、外力補償部233は、取得した張力T
cに基づいて、目標角度θ
FFを算出する。ステップS222において、外力補償部233は、取得した張力T
cに基づいて、フィードフォワード補償推力F
FFを算出する。さらに、ステップS223において、算出した目標角度θ
FF及び算出したフィードフォワード補償推力F
FFのうち少なくとも一方に基づいて、ヘリコプタ210を目標位置に移動させる。
【0102】
以上、
図3〜
図7を参照して、本発明の実施形態2を説明した。実施形態2において制御装置260は制御部230と外力情報取得装置240とを含むが、制御装置260は、制御部230と外力情報取得装置240とのうち制御部230のみを含み得る。制御部230と外力情報取得装置240とは、別々の装置として機能し得る。
【0103】
[実施例]
以下、
図8から
図12を参照して、本発明の実施例を説明する。本実施例に係るヘリコプタ210の飛行制御においては、姿勢角度制御を内側ループとし、水平方向の位置制御の操作量が姿勢角度制御の目標値となる外側ループを構成する。位置制御と姿勢角度制御とは、それぞれPID制御とする。第1ロータ212a及び第2ロータ212bへの制御入力信号の算出方法を次に示す。
【0111】
ここで、位置x
ref及び位置y
refはヘリコプタ210の位置の目標値を示し、角度θ
refはヘリコプタ210の姿勢角度の目標値を示す。関数G
x、関数G
y、関数GθはPID制御関数を示し、操作量θ
refは水平方向の誤差に基づく姿勢角度への操作量を示す。更に信号u
yは垂直方向の制御入力信号を示し、信号uθは、姿勢角度の制御信号を示し、信号u
1及び信号u
2は、第1ロータ212a及び第2ロータ212bへの制御入力信号を示す。
【0112】
本発明の実施例は、式1から式14に基づいて、ヘリコプタ210とケーブル220の物理モデル及び飛行制御モデルをMATLAB−Simulink上に作成することにより行われた。本発明の実施例を確立するために、最初に同定実験を行った。
【0113】
<同定実験>
本モデルにおいて、ロータ212の推力は、推力指令値から、むだ時間+1次遅れで遅れるものと仮定し、以下のモデルを用いた。
【0115】
ここで、係数Kは比例ゲインを示し、定数Tは時定数を示し、時間Lはむだ時間を示す。
【0116】
また、その係数は12Aモータと9×5の3ブレードプロペラの組み合わせによる同定実験によって求めた以下の表1の値を用いた。
【0118】
表2は、シミュレーションモデルの詳細を示す。
【0120】
表3は、式17及び式18に基づくPID制御の各制御ゲインを示す。
【0122】
図8は、ヘリコプタ210の移動の一例の模式図である。ヘリコプタ210の目標位置は、壁面検査時の移動を想定して徐々に移動するように設定された。位置(−5m,5m)から位置(−7m,5m)まで、開始点及び終点での速度と加速度とを0とする5次多項式に沿って30秒間かけて移動させた。ケーブル220の長さL
cは一定とした。
【0123】
位置(−5m,5m)から位置(−7m,5m)まで直線で移動した場合の張力T
cの変化を式8から式14に基づいて求めた。
図9は、張力T
cの変化を示す模式図である。横軸はヘリコプタ210のx位置を示し、縦軸は張力T
cの大きさを示す。
図9から、ヘリコプタ210が右から左に移動し、長さ調整器250から離れるに従って、張力T
cが増加することを理解できる。
【0124】
本実施例では、(1)従来制御、(2)K
FF=0として目標角度補正を行った目標角度補正制御、(3)推力フィードフォワード補償制御、及び(4)目標角度補正と推力フィードフォワード補償との制御を行った。各制御の結果を以下に示す。
【0125】
<目標角度補正制御>
図10は、目標角度補正制御のみを行った結果(各変数の時刻歴応答)を示す。
図10(a)及び
図10(b)において、横軸は時間を示し、縦軸は、それぞれ、ヘリコプタ210の水平方向の位置誤差(位置ずれ)、鉛直方向の位置誤差(位置ずれ)を示す。また、
図10において、実線は目標角度補正のみの制御の結果を示し、破線は従来制御の結果を示す。
【0126】
図10(a)において、目標角度補正制御は、ケーブル220の張力と釣り合うためのヘリコプタ210の姿勢角度が直接求められるため、従来制御と比較して目標位置が移動した時の水平方向の応答速度が向上した。
図10(b)において、目標角度補正制御は、従来制御と比較して鉛直方向の応答はそれ程変わっていない。
【0127】
図10に示された結果から理解できるように、目標角度補正制御のみでヘリコプタ210を制御する場合、従来制御と比較して、特に水平方向において応答速度が向上した。
【0128】
<推力フィードフォワード補償制御>
図11は、推力フィードフォワード補償制御のみを行った結果(各変数の時刻歴応答)を示す。
図11において、実線は推力フィードフォワード補償のみ制御の結果を示し、破線は従来制御の結果を示す。
【0129】
図11(a)は、水平方向における時刻歴応答を示す。
図11(a)において、横軸は時間を示し、縦軸は水平方向における位置を示す。推力フィードフォワード補償制御を行っても、従来制御と比較して水平方向の応答はそれ程変わっていない。
【0130】
図11(b)は、鉛直方向における時刻歴応答を示す。
図11(b)において、横軸は時間を示し、縦軸は鉛直方向における位置誤差(位置ずれ)を示す。推力フィードフォワード補償制御のみを行った場合、従来制御と比較して、鉛直方向における目標値に対する誤差が低減された。
【0131】
<目標角度補正と推力フィードフォワード補償との制御>
図12は、目標角度補正制御及び推力フィードフォワード補償制御の両方を行った結果(各変数の時刻歴応答)を示す。
図12において、実線は目標角度補正制御及び推力フィードフォワード補償制御の両方を行った結果を示し、破線は従来制御の結果を示す。
【0132】
図12(a)及び
図12(b)は、ヘリコプタ210の各変数の時刻歴の応答状況を示しており、横軸は時間を示す。
【0133】
図12(a)は、水平方向における時刻歴の応答状況を示し、縦軸はヘリコプタ210の水平方向の位置誤差(位置ずれ)を示す。目標角度補正制御及び推力フィードフォワード補償制御の両方を行う場合、従来制御と比較して、目標位置が移動した時の水平方向の応答速度が向上した。従来制御の場合における水平方向の誤差の最大値は0.385mであるのに対して、目標角度補正制御及び推力フィードフォワード補償制御の両方を行う場合における誤差の最大値は0.013mであった。すなわち、目標角度補正制御及び推力フィードフォワード補償制御によれば、軌跡の誤差の最大値を約30分の1に低減することができた。
【0134】
図12(b)は、鉛直方向における時刻歴応答を示す。
図12(b)において、横軸は時間を示し、縦軸はヘリコプタ210の鉛直方向の位置誤差(位置ずれ)を示す。目標角度補正制御及び推力フィードフォワード補償制御の両方を行う場合、従来制御と比較して、鉛直方向における目標値に対する誤差が低減された。従来制御の場合における垂直方向の誤差の最大値は0.064mであるのに対して、目標角度補正制御及び推力フィードフォワード補償制御の両方を行う場合における誤差の最大値は0.0013mであった。すなわち、目標角度補正制御及び推力フィードフォワード補償制御によれば、軌跡の誤差の最大値を約50分の1に低減することができた。
【0135】
図12に示された結果から理解できるように、目標角度補正制御及び推力フィードフォワード補償制御の両方を行った場合、従来制御に対して、飛行経路の精確性と、水平方向及び鉛直方向における時刻歴の応答速度はいずれも向上した。