特許第6207009号(P6207009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6207009-架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207009
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20170925BHJP
   C08J 9/10 20060101ALI20170925BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08J9/04 101
   C08J9/10CES
   C09J7/02 Z
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-114086(P2013-114086)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-28925(P2014-28925A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2016年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-149526(P2012-149526)
(32)【優先日】2012年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】正木 克枝
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−239632(JP,A)
【文献】 特開平10−139910(JP,A)
【文献】 特開2012−107222(JP,A)
【文献】 特開2003−073494(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0183408(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−42
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂組成物を架橋、発泡してなる電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートであって、
前記ポリオレフィン樹脂組成物が、相対的に密度が高いポリオレフィン樹脂(A)と、相対的に密度が低いポリオレフィン樹脂(B)とを含有し、前記ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の加重平均密度が0.900g/cm3以下である電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)が、いずれもポリエチレン系樹脂である請求項1に記載の電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
【請求項3】
ポリオレフィン樹脂(B)に対するポリオレフィン樹脂(A)の質量比(A/B)が、85/15〜40/60である請求項1又は2に記載の電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)が、いずれも重合触媒としてメタロセン化合物を用いて得たものである請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂(A)が、密度0.900g/cm3以上のポリオレフィン樹脂から選択されるとともに、前記ポリオレフィン樹脂(B)が、密度0.890g/cm3未満のポリオレフィン樹脂から選択される請求項1〜4のいずれかに記載の電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
【請求項6】
厚みが0.05〜2.0mmである請求項1〜5のいずれかに記載の電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
【請求項7】
密度が0.04〜0.8g/cm3である請求項1〜6のいずれかに記載の電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
【請求項8】
複数の気泡を備え、前記気泡が独立気泡である請求項1〜7のいずれかに記載の電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
【請求項9】
電子機器用の衝撃吸収材である請求項1〜8のいずれかに記載の電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載された電子機器用架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を設けた粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状に加工されたポリオレフィン樹脂に気泡が形成され、架橋されてなる架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートに関し、特に衝撃吸収材として好適に使用可能な架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂層の内部に多数の孔が形成された発泡樹脂シートは、緩衝性に優れるため、各種電気機器の衝撃吸収材等に広く使用されている。衝撃吸収材は、例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、電子ペーパー等に用いられる表示装置において、装置表面を構成するガラス板と画像表示部材との間に配置されて使用される。このような用途で使用される発泡樹脂シートとしては、ポリオレフィン系樹脂が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−277339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、電気機器の小型化に伴い、電気機器用途で使用される発泡樹脂シートも薄層化されつつあり、薄い発泡樹脂シートであっても、高い衝撃吸収性と耐衝撃性を有することが求められつつある。発泡樹脂材料の衝撃吸収性や耐衝撃性を向上させるためには、例えば、発泡倍率を上昇させて柔軟性を向上させることや、架橋度を高めて剛性を上げることが考えられる。しかし、薄厚の発泡樹脂シートは、単純に発泡倍率や架橋度を調整したのみでは、十分な衝撃吸収性や耐衝撃性を得ることができず、更なる改良が望まれている。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みて成されたものであり、本発明の課題は、薄厚の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの衝撃吸収性及び耐衝撃性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、樹脂成分として密度が異なる少なくとも2種のポリオレフィン樹脂をブレンドして使用することで、発泡シートの機械強度や柔軟性を向上させ、それにより、薄厚の発泡シートの衝撃吸収性及び耐衝撃性が高められることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供するものである。
(1)ポリオレフィン樹脂組成物を架橋、発泡してなる架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートであって、ポリオレフィン樹脂組成物が、相対的に密度が高いポリオレフィン樹脂(A)と、相対的に密度が低いポリオレフィン樹脂(B)とを含有し、前記ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の加重平均密度が0.900g/cm3以下である架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
(2)前記ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)が、いずれもポリエチレン系樹脂である上記(1)に記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
(3)ポリオレフィン樹脂(B)に対するポリオレフィン樹脂(A)の質量比(A/B)が、85/15〜40/60である上記(1)又は(2)に記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
(4)前記ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)が、いずれも重合触媒としてメタロセン化合物を用いて得たものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
(5)前記ポリオレフィン樹脂(A)が、密度0.900g/cm3以上のポリオレフィン樹脂から選択されるとともに、前記ポリオレフィン樹脂(B)が、密度0.890g/cm3未満のポリオレフィン樹脂から選択される上記(1)〜(4)のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
(6)厚みが0.05〜2.0mmである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
(7)密度が0.04〜0.8g/cm3である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
(8)複数の気泡を備え、前記気泡が独立気泡である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載された架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を設けた粘着テープ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの衝撃吸収性及び耐衝撃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】破壊強度の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態を参照しつつ説明する。
本発明に係る架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、ポリオレフィン樹脂組成物を架橋、発泡してなるものであって、上記ポリオレフィン樹脂組成物が、相対的に密度が高いポリオレフィン樹脂(A)と、相対的に密度が低いポリオレフィン樹脂(B)とを含有するものである。
【0010】
[ポリオレフィン樹脂]
ポリオレフィン樹脂(A)は、密度が0.900g/cm3以上のポリオレフィン樹脂から選択される1種又は2種以上であることが好ましく、密度が0.900〜0.930g/cm3のものから選択されることがより好ましく、0.900〜0.910g/cm3のものから選択されることが更に好ましい。
ポリオレフィン樹脂(B)は、ポリオレフィン樹脂(A)よりも密度が低いものであって、密度0.900g/cm3未満のポリオレフィン樹脂から選択される1種又は2種以上であるが、密度0.890g/cm3未満のものから選択されることが好ましく、密度0.865〜0.885g/cm3のものから選択されることがより好ましい。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、これら密度の異なる2種のポリオレフィン樹脂(A)、(B)が混合されていることにより、破壊強度等の各種機械強度や柔軟性が向上し、薄厚であっても、衝撃吸収性及び耐衝撃性が良好になる。
【0011】
本発明において、ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の加重平均密度は、0.900g/cm3以下である。本発明では、加重平均密度が0.900g/cm3より大きいと、密度が互いに異なる樹脂(A)と樹脂(B)の混合物を使用しても、機械強度、柔軟性等が十分に向上しないおそれがある。加重平均密度は、機械強度及び柔軟性をより良好にするために、好ましくは0.900〜0.870g/cm3、より好ましくは0.895〜0.880g/cm3である。なお、加重平均密度とは、ポリオレフィン樹脂組成物に含有される量(質量部)を重みとしたポリオレフィン樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の加重平均密度である。
【0012】
ポリオレフィン樹脂(A)は、相対的に高密度であるため、融点が比較的高くなり、ポリオレフィン樹脂(A)の融点は、特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂(B)の融点より高いことが好ましい。具体的には、ポリオレフィン樹脂(A)の融点は、80℃以上が好ましく、90〜110℃がより好ましい。これにより、ポリオレフィン樹脂組成物の熱安定性を高めて、発泡シート製造中のべたつきやブロッキングを防止し、加工性を良好にしやすくなる。一方、ポリオレフィン樹脂(B)の融点は、80℃未満が好ましく、40〜70℃がより好ましい。なお、本明細書において、融点は、示差走査熱量分析(DSC)法により測定されたものである。
【0013】
ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)としては、ポリエチレン系樹脂が挙げられ、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂が好ましく、特に好ましくは、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂が用いられる。ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)のいずれもが、メタロセン化合物の重合触媒を用いて得たものであると、各種機械強度等が良好になり、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの各種性能を高めつつ薄肉化することが可能になる。
【0014】
そして、上記ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)として用いられるポリエチレン系樹脂としては、エチレンと必要に応じて少量のエチレン以外のα−オレフィンとを共重合することにより得られる直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
ここで、α−オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4〜10のα−オレフィンが好ましく、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。
ただし、ポリオレフィン樹脂(A)として用いられるポリエチレン系樹脂は、高圧下、 ラジカル重合触媒で製造された低密度ポリエチレン(LDPE)であってもよく、またLDPEと上記した直鎖状低密度ポリエチレンとが併用されてもよい。
【0015】
ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)は、互いに結晶度が異なることにより、密度及び融点が互いに異なることが好ましい。例えば、樹脂(A)及び樹脂(B)は、いずれもが直鎖状低密度ポリエチレンで、かつ樹脂(A)と樹脂(B)のコモノマーであるα−オレフィンが互いに同種である場合でも、樹脂(A)と樹脂(B)の結晶度が互いに異なると、樹脂(A)及び樹脂(B)の密度及び融点は、互いに異なるものとなる。
【0016】
本発明において、ポリオレフィン樹脂(B)に対するポリオレフィン樹脂(A)の質量比(A/B)は、95/5〜20/80であることが好ましい。質量比がこの範囲内となると、発泡シートの柔軟性を良好に維持しつつ各種機械強度を高めて、耐衝撃性及び衝撃吸収性を良好にしやすくなる。上記質量比(A/B)は、85/15〜40/60であることがより好ましい。質量比が40/60以上であると、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの圧縮強度等の物性を高めるとともに、加工時のべたつきやブロッキング等を防止し発泡シートの加工性を良好にしやすくなる。また、質量比が85/15以下となると、引張強度、引裂き強度、破壊強度等の各種機械強度が向上し、耐衝撃性及び衝撃吸収性がより優れたものとなる。
【0017】
<メタロセン化合物>
本発明において好適なメタロセン化合物の例としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物が挙げられる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、及び白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物が挙げられる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高いため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。均一に架橋されたシートは、均一に延伸できるため、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚みを均一にできる。
【0018】
リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環等が挙げられる。これらの環式化合物は、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素−置換メタロイド基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種アミル基、各種ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種セチル基、フェニル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n−、sec−、tert−、iso−を含む各種異性体を意味する。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素や臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
【0019】
四価の遷移金属やリガンドを含むメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、等が挙げられる。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10〜100万モル倍が好ましく、50〜5,000モル倍がより好ましい。
【0020】
<チーグラー・ナッタ化合物>
チーグラー・ナッタ化合物は、トリエチルアルミニウム−四塩化チタン固体複合物であって、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物と、芳香族カルボン酸エステルとを組み合わせる方法(特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及びハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させる担持型触媒の方法(特開昭57−63310号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号の各公報参照)等で製造されたものが好ましい。
【0021】
<その他のポリオレフィン樹脂>
また、上記したように、ポリオレフィン樹脂(A)は、直鎖状低密度ポリエチレン、LDPE、又はこれらの混合物のみからなり、また、ポリオレフィン樹脂(B)は直鎖状低密度ポリエチレンのみからなったほうが良いが、これらポリオレフィン樹脂(A)および(B)それぞれには、その他のポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
その他のポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレンを50質量%以上含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体等の他のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンを50質量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられ、これらの中では、炭素数6〜12のα−オレフィンが好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)及び(B)が、他のポリオレフィン樹脂を含む場合、直鎖状低密度ポリエチレンに対する他のポリオレフィン樹脂の割合は、質量比で0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下が更に好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物は、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの性能を損なわない範囲で、ポリオレフィン樹脂(A)及び(B)以外の樹脂を含んでいてもよいが、含まないほうがよい。ポリオレフィン樹脂(A)及び(B)の合計量は、ポリオレフィン樹脂組成物における樹脂全量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0022】
ポリオレフィン樹脂(A)の具体的な市販品としては、メタロセン化合物の重合触媒を用いて得られたエチレン−1−ヘキセン共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(例えば、日本ポリエチレン株式会社製の商品名「カーネルKF370」、密度:0.905g/cm3、融点(DSC法)Tm:97℃)、高圧下ラジカル重合触媒で製造された低密度ポリエチレン(LDPE)(例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製の商品名「サンテック−LD L2340」、密度0.923g/cm3、融点(DSC法)Tm:112℃)等が挙げられる。
また、ポリオレフィン樹脂(B)の具体的な市販品としては、メタロセン化合物の重合触媒を用いて得られたエチレン−1−オクテン共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンが挙がられ、具体的には、ダウケミカル社製の商品名.アフィニティーEG8200(密度:0.870g/cm3、融点(DSC法)Tm:63℃);ダウケミカル社製の商品名.アフィニティーKC8852(密度:0.875g/cm3、融点(DSC法)Tm:66℃);ダウケミカル社製の商品名.アフィニティーPF1140G(密度:0.897g/cm3、融点(DSC法)Tm:96℃);ダウケミカル社製、商品名.アフィニティーPF8770G1(密度:0.885g/cm3、融点(DSC法)Tm:82℃)が例示され、また、メタロセン化合物の重合触媒を用いて得られたエチレン−1−ヘキセン共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられ、具体的には、日本ポリエチレン株式会社製の商品名:カーネルKF650T(密度:0.888g/cm3、融点(DSC法)Tm:55℃);日本ポリエチレン株式会社製の商品名:カーネルKS240T(密度:0.880g/cm3、融点(DSC法)Tm:60℃、MFR:2.2);日本ポリエチレン株式会社製の商品名:カーネルKS340T(密度:0.880g/cm3、融点(DSC法)Tm:60℃、MFR:3.5)が例示される。
【0023】
[架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート]
<密度>
本発明において、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの密度は0.04〜0.8g/cm3であることが好ましく、密度が上記下限値以上となることで、樹脂発泡シートの耐衝撃性をより高めやすくなる。また、上記上限値以下とすることで、衝撃吸収性を十分に高めることができる。架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの密度は、より好ましくは0.05〜0.6g/cm3である。
【0024】
<厚み>
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚みは、0.05〜2.0mmであることが好ましい。厚みが0.05mm以上であると、高い機械強度を確保でき、優れた耐衝撃性と衝撃吸収性を得やすくなる。また、2.0mm以下とすることで、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを小型化された電子機器に使用しやすくなる。本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚みは、より好ましくは0.06〜1.0mmである。この範囲内であると、十分な耐衝撃性や衝撃吸収性を確保しつつ、小型化された各種電子機器に使用することが可能になる。
【0025】
<ゲル%(架橋度)>
ゲル%は、後述する測定方法で測定され、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの架橋度を示すものである。本発明においてゲル%(架橋度)は、2〜45質量%であることが好ましく、20〜45質量%であることがより好ましい。ゲル%が上記下限値以上となると、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートにおいて十分な架橋が形成されて、衝撃吸収性と耐衝撃性の両者を高めることが可能になる。また、上記上限値以下とすることで、樹脂発泡シートの柔軟性を確保し、適切な衝撃吸収性を得ることが可能になる。
【0026】
<独立気泡>
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、多数の気泡を有し、その気泡は独立気泡であることが好ましい。なお、本明細書において、気泡が独立気泡であるとは、全気泡に対する独立気泡の割合(独立気泡率という)が70%以上であることを意味する。
独立気泡率は、JIS K7138(2006)やASTM D2856(1998)に準拠して求める。市販の測定器では、Beckman社製空気比較比重計MODEL930、乾式自動密度計アキュピック1330などが挙げられる。
独立気泡率は、例えば、下記の要領で測定される。架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートから一辺が5cmの平面正方形状で、且つ一定厚みの試験片を切り出す。試験片の厚みを測定し、試験片の見掛け体積V1を算出するとともに試験片の重量W1を測定する。次に、気泡の占める見掛け体積V2を下記式に基づいて算出する。なお、試験片を構成している樹脂の密度は、1g/cm3とする。
気泡の占める見掛け体積V2=V1−W1
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。水中で圧力を解放後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去し、試験片の重量W2を測定し、下記式に基づいて連続気泡率F1及び独立気泡率F2を算出する。
連続気泡率F1(%)=100×(W2−W1)/V2
独立気泡率F2(%)=100−F1
【0027】
<破壊強度>
本発明において、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの破壊強度は、2N/5mm以上であることが好ましく、より好ましくは4.2N/5mm以上である。
本明細書において破壊強度とは、厚み方向(Z方向)の引張強度を示す値であって、後述する測定方法により測定されるものである。本発明のように薄厚の発泡シートに衝撃が与えられると、その衝撃力により大きな厚み方向の応力が作用される。そのため、破断強度を上記下限値以上とすることで、ずりせん断に対する強度を高め、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの耐衝撃性を良好にしやすくなる。また、破壊強度は、30N/5mm以下であることが好ましく、25N/5mm以下であることがより好ましい。破壊強度をこれら上限値以下とすることで、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの柔軟性を維持し、衝撃吸収性の高い架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを得やすくなる。
【0028】
<25%圧縮強度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの25%圧縮強度は、特に限定されないが、30〜〜1500kPaが好ましく、40〜1000kPaであることがより好ましい。25%圧縮強度を1500kPa以下とすることで、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの柔軟性が高められ、衝撃吸収性が良好になりやすい。また、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、25%圧縮強度が30kPa以上となると、テープにした際に被着体への追従性が良好となり電子機器内部に水や空気が侵入しにくいという利点がある。なお、25%圧縮強度は、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートをJIS K6767に準拠して測定したものをいう。
【0029】
[架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの製造方法]
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、特に制限はないが、ポリオレフィン樹脂組成物を架橋した後、発泡することにより製造するものであり、例えば、以下の工程(1)〜(3)を含む製造方法により製造するのが工業的に有利である。
工程(1):ポリオレフィン樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、熱分解型発泡剤、及びその他の添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによってシート状にされたポリオレフィン樹脂組成物を得る工程
工程(2):シート状にされたポリオレフィン樹脂組成物を架橋する工程
工程(3):架橋させたシート状のポリオレフィン樹脂組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させて、好ましくはMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方に延伸する工程
なお、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの製造方法としては、この方法のほかに、WO2005/007731に記載された方法により製造することも可能である。
【0030】
熱分解型発泡剤としては、特に制限はなく、例えば、アゾジカルボンアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これらの中では、アゾジカルボンアミドが好ましい。なお、熱分解型発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン樹脂組成物中における熱分解型発泡剤の含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜12質量部が好ましく、1〜8質量部がより好ましい。熱分解型発泡剤の含有量が上記範囲内であると、ポリオレフィン樹脂組成物の発泡性が向上し、所望の発泡倍率を有する架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを得やすくなるとともに、引張強度及び圧縮回復性が向上する。
ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させる方法としては、特に制限はなく、例えば、ポリオレフィン樹脂組成物を熱風により加熱する方法、赤外線により加熱する方法、塩浴による方法、オイルバスによる方法等が挙げられ、これらは併用してもよい。
なお、ポリオレフィン樹脂組成物の発泡は、熱分解型発泡剤を用いる例に限定されず、ブタンガス等による物理発泡を用いてもよい。
【0031】
ポリオレフィン樹脂組成物を架橋する方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂組成物に電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法、ポリオレフィン樹脂組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、ポリオレフィン樹脂組成物を加熱して有機過酸化物を分解させる方法等が挙げられ、これらの方法は併用されてもよい。これらの中では、電離性放射線を照射する方法が好ましい。
電離性放射線の照射量は、ゲル%が1〜45質量%となるように、0.5〜10Mradが好ましく、3〜6Mradがより好ましい。
【0032】
架橋に使用する有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機過酸化物の添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。有機過酸化物の添加量が上記範囲内であると、ポリオレフィン樹脂組成物の架橋が進行しやすく、また、得られる架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート中に有機過酸化物の分解残渣の量を抑制する。
【0033】
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、上記したように、延伸されていることが好ましい。延伸はポリオレフィン樹脂組成物を発泡させて発泡シートを得た後に行ってもよいし、ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させつつ行ってもよい。なお、ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させて発泡シートを得た後、発泡シートを延伸する場合には、発泡シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡シートを延伸したほうがよいが、発泡シートを冷却した後、再度、発泡シートを加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡シートを延伸してもよい。
【0034】
また、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートのMD方向における延伸倍率は、1.1〜3.0倍が好ましく、1.7〜2.8倍がより好ましい。架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートのMD方向における延伸倍率を上記下限値以上とすると、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が良好になりやすくなる。一方、上限値以下とすると、発泡シートが延伸中に破断したり、発泡中の発泡シートから発泡ガスが抜けて発泡倍率が低下したりすることが防止され、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの柔軟性や引張強度が良好になり、品質も均一なものとしやすくなる。また、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、CD方向にも上記範囲の延伸倍率で延伸されてもよい。
【0035】
ポリオレフィン樹脂組成物には、必要に応じて、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等の酸化防止剤、酸化亜鉛等の発泡助剤、気泡核調整材、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の各種添加剤が、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの物性を損なわない範囲で添加されていてもよい。これら添加剤は、通常工程(1)において、樹脂(A)および樹脂(B)とともに混練されるものである。
【0036】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、本発明に係る架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを基材として用いて、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を設けたものである。
本発明の粘着テープを構成する粘着剤層の厚みは、5〜200μmであることが好ましい。粘着剤層の厚みは、より好ましくは7〜150μmであり、更に好ましくは10〜100μmである。粘着テープを構成する粘着剤層の厚みが5〜200μmの範囲であると、粘着テープを用いて固定した構成体の厚みを薄くできる。
【0037】
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの一面又は両面に積層される粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一面に粘着剤を塗布して粘着剤層を積層させる方法としては、例えば、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一面にコーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一面にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの少なくとも一面に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法等が挙げられる。
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを用いた粘着テープは、携帯型電話機やビデオカメラ等の電子機器本体内に内装される電子部品に衝撃が加わるのを防止する衝撃吸収材や、電子機器本体内に埃や水分等が進入するのを防止するシール材として用いることができる。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0039】
[測定方法]
本明細書における各物性の測定方法は、次の通りである。
<加重平均密度>
ポリオレフィン樹脂(A)を構成する各ポリオレフィン樹脂、及びポリオレフィン樹脂(B)を構成する各ポリオレフィン樹脂の密度を、各ポリオレフィン樹脂の質量部を重みとして加重平均し、ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の加重平均密度とした。
なお、各ポリオレフィン樹脂の密度はASTM D792に準拠して測定したものである。
<架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの密度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの密度を、JIS K7222に準拠して測定した。なお、発泡倍率は、密度の逆数である。
<架橋度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出する。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
【0040】
<引張強度、伸度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートをJIS K6251 4.1に規定されるダンベル状1号形にカットした。これを試料として用い、測定温度23℃で、JIS K6767に準拠してMD方向における引張強度及び伸度を測定した。
<25%圧縮強度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの25%圧縮強度をJIS K6767に準拠して測定した。
<引裂き強度>
JIS K 6767に準拠して、測定装置ORIENTEC社製TENSILON RTG-1250、引張速度500mm/minでMD方向の引裂き強度を測定した。
<加熱寸法変化>
まず、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートから150mm(MD方向)×150mm(CD方向)の試験片を切り出した。その試験片において、MD方向に沿う100mm間隔をマークし、70℃で22時間放置し、さらに23℃で1時間放置した後、マークした間隔の距離を測定し、MD方向における寸法変化率を測定した。収縮は“−”で、膨張は“+”で示す。
【0041】
<破壊強度>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートにアクリル系粘着剤(商品名NA、積水化学工業株式会社製)を両面塗工し、40℃で48時間養生して粘着剤を架橋させ、その後、5mm幅10cm長さにカットした。このとき、シートの長さ方向は、MD方向に一致するようにした。そのカットした架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの一方の面をSUS板に貼付し、他方の面を25μm厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼付し、破壊強度測定用サンプルを得た。その破壊強度測定用サンプルは、40℃で48時間養生した。
その後、図1に示すように、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート10の長さ方向が鉛直方向に一致するようにして、SUS板11側を固定して、破壊強度測定用サンプルを引張試験機(商品名TE−701、テスター産業株式会社)にセットした。次いで、PETフィルム12を剥離角度180°、速度100m/分で鉛直上向きに引張り、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シート10を厚み方向(Z方向)に凝集破壊したときの荷重を測定し、その測定値を破壊強度とした。
【0042】
<加工性評価>
ポリオレフィン樹脂組成物から架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを製造する過程における加工性を、以下の評価基準で評価した。
A:製造時の加工性が良好であった。
B:押出成形時にブロッキングが生じたが、製造には殆ど問題がないレベルであった。
C:押出成形時のブロッキングが大きく、工業的には製造できないレベルであった。
<独立気泡率>
JIS K7138に準拠し、Beckman社製空気比較比重計MODEL930にて、明細書中に記載の方法で測定した。
【0043】
[実施例1]
ポリオレフィン樹脂(A)としての直鎖状低密度ポリエチレン[日本ポリエチレン株式会社製、商品名「カーネルKF370」]80質量部、ポリオレフィン樹脂(B)としての直鎖状低密度ポリエチレン[ダウケミカル社製、商品名.アフィニティーEG8200]20質量部、熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド2.3質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.2質量部、及び酸化亜鉛1.8質量部で構成されるポリオレフィン樹脂組成物を、押出機に供給して130℃で溶融混練した後押出成形し、厚み240mmの長尺シート状にした。
次に、上記長尺シート状のポリオレフィン樹脂組成物の両面に加速電圧500kVの電子線を5.0Mrad照射してポリオレフィン樹脂組成物を架橋した後、このポリオレフィン樹脂組成物を熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させ、厚み350mmの発泡シートとした。
【0044】
得られた発泡シートを発泡炉から連続的に送り出した後、この発泡シートをその両面の温度が200〜250℃となるように維持した状態で、発泡シートをそのCD方向に2.5倍の延伸倍率で延伸させると共に、発泡シートの発泡炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって発泡シートを巻き取ることによって発泡シートをMD方向に2.5倍の延伸倍率で延伸させて、実施例1の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを得た。得られた架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。なお、上記発泡シートの巻取速度は、発泡シート自身の発泡によるMD方向への膨張分を考慮しつつ調整した。
【0045】
[実施例2〜8、比較例1〜7]
ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)の配合を表1に示すように変更するとともに、架橋時の線量を表1の架橋度となるように調整した点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1中の樹脂(A)及び樹脂(B)は、以下のとおりである。
ポリオレフィン樹脂A1:メタロセン化合物の重合触媒を用いて得られたエチレン−1−ヘキセン共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製の商品名「カーネルKF370」、密度:0.905g/cm3、融点(DSC法)Tm:97℃)
ポリオレフィン樹脂A2:高圧下ラジカル重合触媒で製造された低密度ポリエチレン(LDPE)(密度0.923g/cm3、融点(DSC法)Tm:112℃)
ポリオレフィン樹脂B1:メタロセン化合物の重合触媒を用いて得られたエチレン−1−オクテン共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、商品名.アフィニティーEG8200、密度が0.870g/cm3、融点(DSC法)Tm:63℃)
ポリオレフィン樹脂B2:メタロセン化合物の重合触媒を用いて得られたエチレン−1−オクテン共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、商品名.アフィニティーKC8852、密度0.875g/cm3、融点(DSC法)Tm:66℃)
【0048】
本実施例では、相対的に密度が高いポリオレフィン樹脂(A)と、相対的に密度が低いポリオレフィン樹脂(B)を混合したことにより、破壊強度等の物性が良好な値となり、機械強度及び柔軟性が高められ、それにより、発泡シートの衝撃吸収性能、耐衝撃性が良好となることが理解できる。
また、本実施例の結果から、樹脂(A)の配合量を多くすると、加熱寸法変化が小さくて熱安定性に優れ、さらには、発泡シート製造時の加工性も良好となった。さらには、質量比(A/B)を85/15〜40/60の範囲内とすると、特に、メタロセン化合物の重合触媒により得た直鎖状低密度ポリエチレンを用いた場合に、加工性及び熱安定性に加えて各種機械強度もより良好となり、耐衝撃性及び衝撃吸収性能に優れた架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを容易に製造できることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートは、破壊強度等の各種強度及び柔軟性が良好となり、薄厚であっても高い耐衝撃性及び衝撃吸収性能を有するものとなる。したがって、パーソナルコンピュータ、携帯電話、及び電子ペーパー等の各種電子機器用途のシール材、耐衝撃吸収材として好適に用いることができる。
図1