(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207021
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】管内損傷部封止バンド取り付け具及び管内損傷部封止バンド取り付け方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/163 20060101AFI20170925BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20170925BHJP
E03B 7/00 20060101ALI20170925BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20170925BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
F16L55/163
E03C1/122 Z
E03B7/00 A
E03F3/04 Z
E03F7/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-94258(P2014-94258)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-209969(P2015-209969A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】593143142
【氏名又は名称】株式会社昇和産業
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】三戸 常次
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−344905(JP,A)
【文献】
特開2005−147294(JP,A)
【文献】
特開平4−266688(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3003786(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/16
E03B 7/00
E03C 1/122
E03F 3/04
E03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンドの取り付け具において、
前記封止バンドは複数個の薄板で帯状に分割して形成される部分と円周方向の両側結合部が楔形成の部分とで構成され、
前記取り付け具は、前記封止バンドの円筒方向両端と前記楔形状部分とを中間に挟むように前記円筒方向端に対峙する固定受け部を少なくとも一端側に形成するとともにハンドル操作により前記楔形状部分に対峙する可動受け部を移動自在に形成して構成され、
前記取り付け具の前記固定受け部を前記封止バンドの円筒方向一端側に当接させるとともに前記可動受け部を前記楔形状部分に当接させて前記楔形状部分を挟持し、
前記ハンドル操作により前記双方の受け部を相互に接近させて前記楔形状部分を前記封止バンド間に挿入するように構成したことを特徴とする管内損傷部封止バンド取り付け具。
【請求項2】
管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンドを用いた管内損傷部封止バンドの取り付け方法において、
前記封止バンドは、複数個の薄板で帯状に分割して形成される部分と円周方向の両側結合部が楔形成の部分とで構成され、
前記封止バンドの円周方向の両端間に形成された楔状部分を前記封止バンドの円周方向の両端間に結合する取り付け具を備え、
前記取り付け具に形成された固定受け部を前記封止バンドの円筒方向一端側に当接させるとともに可動受け部を前記楔形状部分に当節させて前記楔形状部分を挟持し、
前記ハンドル操作により前記可動受け部を固定受け部側へ接近させて前記楔形状部分を前記封止バンド間に挿入するように構成したことを特徴とする管内損傷部封止バンド取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道や下水などの配水管あるいは工業用の排水管などにおける管内の損傷部を補修するための、管内損傷部封止バンドを用いてこれを固定するために、最終工程で楔を挿入して固定するための取り付け具および当該取り付け具を用いた取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水道や下水などの配水管あるいは工業用の排水管などにおける管内の損傷部を補修するため、補修用の部品や補修方法が提案されており、さらに工事現場では各種の補修方法が用いられてきた。
【0003】
そのための一案として、同一出願人は管内損傷部封止バンドを提案した(例えば、特許文献1参照)。この封止バンドを用いれば補修作業が簡便で補修の手間が掛からず作業性が向上する。
【0004】
即ち、管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンドを管内面の損傷部を含む部位に敷設し、当該バンドの接合両端部に楔形状のバンドを取り付けて管内面に密着させた上で封止剤を注入し、損傷部を補修する管内損傷部封止バンドおよび当該バンドを用いた管内損傷部封止方法を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2012−202980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような方法にあってはバンドの円周方向における接合両端部に楔を取り付けて管の内面に密着させる際に、最終工程で楔形状のバンドを取り付けるには作業者単独では取り付け作業が容易ではなく、複数人が同時に分担して作業を行う必要がある。
【0007】
また、楔形状のバンドを取り付けるに当たってハンマーなどで叩きながら楔形状のバンドを打ち込むものであったから、正規の取り付け位置に正確に固定することが困難であり、作業の安全性や安定性が確保され難かった。
【0008】
このような状況下において補修作業が簡便であって補修の手間が掛からず、かつ補修部分へのバンドの楔形状のバンドの取り付けが単独でも行い得るとともに正規の取り付け位置を確保し易い補修具及び補修方法が求められている。
【0009】
この発明は、前記のような課題を解決するものであり、補修部分へのバンドの取り付けが単独でも行い得るようにし、かつ作業の安全性を確保し的確な設定位置に取り付け得る管内損傷部封止バンド取り付け具及び管内損傷部封止バンド取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンド取り付け具において、前記封止バンドは複数個の薄板で帯状に分割して形成される部分と円周方向の両側結合部が楔形成の部分とで構成され、前記取り付け具は前記封止バンドの円筒方向両端と前記楔形状部分とを中間に挟むように前記円筒方向端に対峙する固定受け部を少なくとも一端側に形成するとともにハンドル操作により前記楔形状部分に対峙する可動受け部を移動自在に形成して構成され、前記取り付け具の前記固定受け部を前記封止バンドの円筒方向一端側に当接させるとともに前記可動受け部を前記楔形状部分に当接させて前記楔形状部分を挟持し、前記ハンドル操作により前記双方の受け部を相互に接近させて前記楔形状部分を前記封止バンド間に挿入するように構成したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によれば、管内の損傷部を補修するための管内損傷部封止バンドを用いた管内損傷部封止バンド取り付け方法において、前記封止バンドは複数個の薄板で帯状に分割して形成される部分と円周方向の両側結合部が楔形成の部分とで構成され、前記封止バンドの円周方向の両端間に形成された楔状部分を前記封止バンドの円周方向の両端間に結合する取り付け具を備え、前記取り付け具に形成された固定受け部を前記封止バンドの円筒方向一端側に当接させるとともに可動受け部を前記楔形状部分に当節させて前記楔形状部分を挟持し、前記ハンドル操作により前記可動受け部を固定受け部側へ接近させて前記楔形状部分を前記封止バンド間に挿入するように構成した管内損傷部封止バンド取り付け方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、取り付け具は前記封止バンドの円筒方向両端と前記楔形状部分とを中間に挟むように固定受け部を少なくとも一端側に形成するとともにハンドル操作により可動受け部を移動自在に形成して構成され、前記取り付け具の前記固定受け部を前記封止バンドの円筒方向一端側に当接させるとともに前記可動受け部を前記楔形状部分に当接させて前記楔形状部分を挟持し、前記ハンドル操作により前記可動受け部を固定受け部側へ接近させて前記楔形状部分を前記封止バンド間に挿入するように構成されるから、作業者が単独であっても楔形状部分を封止バンド間に挿入するとともに適正な位置に設置作業を進めることができ、かつ的確な設定位置に取り付け得るような管内損傷部封止バンド取り付け具を提供できる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、取り付け具に形成された受け部を前記封止バンドの円筒方向一端側に当接させるとともに他方を前記楔形状部分に当節させて前記楔形状部分を挟持し、前記ハンドル操作により前記両方の受け部を接近させて前記楔形状部分を前記封止バンド間に挿入するように構成したから、作業者が単独ででも楔形状部分を封止バンド間に挿入することができるようになり、簡単に管内損傷部を補修する管内損傷部封止バンド取り付け方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明が適用される管内損傷部封止バンドの構成を示す斜視図である。
【
図2】この発明が適用される管内損傷部封止バンドの管内における配置を示す斜視図である。
【
図3】この発明の一実施形態を示す管内損傷部封止バンドの楔取り付け具を設置した工事前の斜視図である。
【
図4】この発明の一実施形態を示す管内損傷部封止バンドの楔取り付け具の詳細説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。はじめに、本発明に使用する損傷部封止バンドの全体構成を説明する。
図1は、この発明が適用される管内損傷部封止バンドの全体構成を示す斜視図であり、損傷部封止バンド22、23、24および打ち込み楔25から成り、打ち込み楔25が損傷部封止バンド22と24との間に挿入されることにより、損傷部封止バンド22、23、24を管内壁面に密着させて管内損傷部21aを封止することができる。損傷部封止バンド22、23、24および打ち込み楔25の相互間には一方が凹部で他方が凸部となるように結合部が形成されている。
【0016】
具体的に
図1で一例を示すと、損傷部封止バンド22には凹部22a、損傷部封止バンド24には凹部24a、打ち込み楔25には両側に凸部25c、25cが形成されており、この凸部25c、25cが損傷部封止バンド22の凹部22aおよび損傷部封止バンド24の凹部24aと嵌合して、損傷部封止バンド全体が連結されて管内損傷部封止バンドの全体を構成する。
【0017】
本発明は、
図2に示す既設の排水管21等の接合部の水漏れや部分的な欠損などが生じることがあり、このような損傷部分21aの補修が必要になる場合にこの作業を容易にするために、打ち込み楔25を作業者が単独でしかも簡単に隙間に打ち込み、適正な位置に設定できるようにするものである。
【0018】
図2は、本発明の管内損傷部封止バンド取り付け具を適用する際に、損傷部封止バンドが配置されるための好ましい状態を示すものである。即ち、既設の排水管21等の内部に損傷部封止バンド22、23、24が連結され、打ち込み楔25は幅の狭い部分25a側から損傷部封止バンド22と24との間に挿入されるように配置される。
【0019】
打ち込み楔25の打ち込みには、円筒方向の一方の広口部分から他方の狭口部分に向かって、上述の通りに打ち込み楔25がその狭い幅の部分25aから隙間28に挿入された後、
図3に示す取り付け具Gが当該部分に設置されるが、打ち込み楔25の傾斜角度は8〜9°に設定するのが好ましい。
【0020】
ここで、打ち込み楔25を適正な位置に設置するための本発明の主要部である取り付け具Gについて
図4を参照して詳述する。取り付け具Gは、ベース30の両端に形成された爪支持部30a、30b、30c、30dを有し、それぞれの支持部には上方に突出した固定爪31a、31b、31c、31dがベース30と一体に固定して形成されている。
【0021】
また、ベース30のほぼ中央にはシャフト32が旋回自在に両端をベース30に保持され、保持部分を除く範囲には送りねじ32aが形成されている。シャフト32の両端部面であって軸方向には、シャフト32を旋回させるために、六角レンチ又はハンドル等を差し込む六角穴32b等が形成されている。
【0022】
送りねじ32aには、爪保持部33が嵌合していて上方に突出した可動爪33aが形成されている。そして、シャフト32が旋回されるとこれに爪保持部33が嵌合しているから、送りねじ32aに沿って爪保持部33が軸方向に移動され、それによって上方に突出した可動爪33aが前後方向に移動できる。 なお、シャフト32が旋回されると送りねじ32aにより爪保持部33が軸方向に移動されるが、この際爪保持部33が旋回されずに移動するように、ベース30に固定されたリーダーガイド34a、34bが設けられている。
【0023】
ここで、固定爪31a、31b、31c、31dおよび可動爪33aのそれぞれの先端部分の形状は、排水管21等の内径に沿った円形に構成されている。そして、固定爪31および可動爪33は、バンド22、23、24、25にそれぞれ当接する際に円筒軸方向における受け部を構成している。また、固定爪31a、31b、31c、31dの内側および可動爪33aの両側には、バンド22、23、24ならびに固定爪31との当接面でスリップが生じ難くなるように#状の切込み溝35或は表面を粗面にする加工が施されている。
【0024】
次に、取り付け具Gの作動方法について説明すると、
図3に示すように打ち込み楔25がその狭い幅の部分25aから隙間28に挿入された後、取り付け具Gが
図4の状態から上下逆向きにして当該部分に設置される。そして、その設置方法は、例えば固定爪30c、30dをバンド22、24の奥側に当接させ、可動爪33aを打ち込み楔25の手前側25bに当接させる。
【0025】
続いて、取り付け具Gにおけるシャフト32の一端部の六角穴32bに六角レンチ又はハンドル等が差し込まれてシャフト32が旋回されると、送りねじ32aが旋回されるからこれに嵌合する爪保持部33が送りねじ32aに沿って補修管の軸方向つまり、
図3の左奥方向に移動される。それによって下方に突出した可動爪33aが前後方向に移動して打ち込み楔25の手前側25bを押し、打ち込み楔25は隙間28内に挿入され正規の設定位置に設置される。
【0026】
このようにして、打ち込み楔25が封止バンド22、24の隙間28に挿入されることによって、封止バンド22、23、24が排水管21等の内面に密着される。なお、打ち込み楔25が正規の設定位置に設置されたあと、不用意に送りねじ32aが緩むことのないように、ロックレバー29が設けられており、公知の機構であってロックレバー29のハンドルを回すことによって、送りねじ32aとは直交する方向に形成されたねじにより、送りねじ32aが強制的に締め付けられる構造である。
【0027】
このようにして、打ち込み楔25が封止バンド22、24の隙間28に挿入された後、詳述しないが同一出願人の出願に係る特願2012−202980号公報に記載した通りに、接着剤等の封止剤が注入されて損傷部封止バンド22、23、24および打ち込み楔25が確実に排水管21等の内面に固定される。そして、その後にロックレバー29のハンドルが取り付けの場合とは逆方向に回わされて取り付け具Gが取り外される。従って、このような状態にされたところで、排水管21等の内面に生じた損傷部分を完全に密封して水漏れなどの不都合を修理できる。
【0028】
なお、上記実施形態における説明では、取り付け具Gの設置方法は、バンド22と24との間に形成される隙間に打ち込み楔25が挿入されたのち、例えば固定爪30c、30dを
図4(a)におけるバンド22、24の上側に当接させ、可動爪33aを
図5(a)における打ち込み楔25の下側25bに当接させる場合について述べた。しかし、取り付け具Gを逆方向に向けて設置し、固定爪30a、30bを
図4(a)におけるバンド22、24の上側に当接させ、可動爪33aを
図5(a)における打ち込み楔25の下側25bに当接させるようにして、上述の場合と同様に可動爪33aが前後方向に移動して打ち込み楔25の下側25bを押し、打ち込み楔25が隙間28内に挿入され正規の設定位置に設置することもできる。
【0029】
また、上記実施形態における取り付け具Gの設置方法の説明と同様の配置のままで、固定爪30a、30bを
図4(a)におけるバンド22、24の下側に当接させ、可動爪33aを
図5(a)における打ち込み楔25の上側25aに当接させ、シャフト32の両端部の六角穴32bに六角レンチ又はハンドル等を差し込んでシャフト32を上記説明の場合とは逆方向に旋回すると、送りねじ32aが逆方向に旋回されるからこれに嵌合する爪保持部33が送りねじ32aに沿って補修管の逆向きの軸方向に移動される。それによって上方に突出した可動爪33aが前後方向に移動して打ち込み楔25の上側25aを押し、打ち込み楔25は隙間28内の設定位置から引き抜くことができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜実施形態を変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0031】
21;既設の排水管
22,23,24;損傷部封止バンド
25;打ち込み楔
28;隙間
30;ベース
31;固定爪(固定受け部)
32;シャフト
33;可動爪(可動受け部)
G;取り付け具