(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の一実施形態における周波数特性検知システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、検知システム1は、検知装置100と、繊維シート200とを具備する。検知装置100は、交流信号出力部110と、周波数特性取得部120と、警報出力部130と、記憶部180と、制御部190とを具備する。記憶部180は、検知条件記憶部181を具備する。制御部190は、検知信号出力部191を具備する。繊維シート200は、第一導電体210と、第二導電体220とを具備する。
【0019】
検知システム1は、人工透析時における漏血を検知することで抜針を検知する。
図2は、人工透析における抜針の例を示す説明図である。同図において、血管911にテフロン針(テフロンは登録商標)921が挿入されており、テフロン針921には、側溝H11が設けられている。体内から人工透析器への取血側では、動脈にテフロン針921が挿入される。また、人工透析器から体内への返血側では、静脈にテフロン針921が挿入される。
【0020】
図2の例において、テフロン針921の一部が体外(皮膚912の外)へ、抜け出ており、体外に露出した側溝H11から血液が漏出している。
特に、返血側では、人工透析器にて血液の圧を高める影響で、取血側よりも抜針が生じやすい。また、人工透析を繰り返すことや糖尿病の影響等で血管がもろくなった場合も、抜針が生じやすくなる。
【0021】
繊維シート200は、人工透析の際、針を穿刺される腕の下に敷かれる。例えば、人工透析の間、患者はベッドに横たわって透析を受ける。そして、繊維シート200は、ベッドの上に敷かれ、繊維シート200の上に置かれた患者の腕にテフロン針921(
図2)が穿刺される。繊維シート200は吸水性を有しており、血液や汗などがベッド側に漏出するのを防止する。繊維シート200が、吸水性に加えて、あるいは代えて、防水性を有するようにしてもよい。これにより、血液や汗などがベッド側に漏出することを、より確実に防止できる。
【0022】
なお、繊維シート200が包帯またはガーゼとして構成されていてもよい。例えば、包帯として構成されている繊維シート200を、例えば人工透析時に針を穿刺される腕など漏血監視対象部位に巻きつけて用いることができる。また、ガーゼとして構成されている繊維シート200を、漏血監視対象部位に当て、包帯で巻いて用いることができる。
【0023】
患者が寝返りを打つなど大きく動いた場合、繊維シート200をベッドの上に敷き、その上に患者の腕が置かれる用法では、繊維シート200の大きさによっては繊維シート200外に漏血する可能性がある。
これに対し、包帯として構成されている繊維シート200を漏血監視対象部位に巻きつけて用いることで、繊維シート200が漏血監視対象部位から外れる可能性を低減させることができ、より確実に漏血を検知し得る。同様に、ガーゼとして構成されている繊維シート200を、漏血監視対象部位に当て、包帯で巻いて用いることで、繊維シート200が漏血監視対象部位から外れる可能性を低減させることができ、より確実に漏血を検知し得る。
【0024】
また、患者が自ら抜針してしまう可能性がある場合など、包帯で穿刺箇所を巻いて固定する場合がある。この場合、繊維シート200をベッドの上に敷き、その上に患者の腕が置かれる用法では、検知装置100が包帯内部の漏血を検知できない可能性がある。これに対し、包帯として構成されている繊維シート200で穿刺箇所を巻いて固定することで、検知装置100は、より確実に包帯内部の漏血を検知し得る。また、ガーゼとして構成されている繊維シート200を、穿刺箇所に当て、包帯で巻いてガーゼや針を固定することで、検知装置100は、より確実に包帯内部の漏血を検知し得る。
【0025】
第一導電体210および第二導電体220は、それぞれ、繊維シート200に設けられた導電体であり、交流信号出力部110からの交流信号が入力される。
第一導電体210と第二導電体220とは接しておらず、また、繊維シート200の本体(第一導電体210および第二導電体220が設けられるベースとなる部分)は絶縁性の繊維で作られている。このため、繊維シート200に液体が付着していない状態では、第一導電体210と第二導電体220とは絶縁されているか、あるいは、コンデンサ効果等による微小な交流電流が流れるのみである。
一方、第一導電体210と第二導電体220との間に液体が垂れると、第一導電体210と第二導電体220とは垂れた液体に応じた周波数特性で通電する。
【0026】
なお、繊維シート200が吸水性を有し液体を拡散させることで、液体が第一導電体210と第二導電体220との間以外の位置に垂れた場合でも、第一導電体210と第二導電体220とが通電する可能性を高めることができる。特に、検知システム1が血液の漏出を検知できる可能性を高めることができる。
なお、第一導電体210と第二導電体220との表面に吸水性のある絶縁性の層を設けた構成にするなど、患者の腕が第一導電体210や第二導電体220に直接接触しない構成としてもよい。あるいは、検知システム1(検知装置100)が、患者の腕の接触と区別可能な通電の特性(周波数特性)を検知することで、血液の漏出を検知するようにしてもよい。
【0027】
第一導電体210や第二導電体220の素材として、導電性のある様々な素材を用いることができる。例えば、第一導電体210や第二導電体220として導電性糸(導電性を有する糸)を用いて、繊維シート200の製造の際に編み込むようにしてもよい。あるいは、第一導電体210や第二導電体220として導電性糸を用いて、製造後の繊維シート200本体に縫い付けるようにしてもよい。
第一導電体210や第二導電体220として導電性糸を用いることで、繊維シート200の肌触りを良くすることができる。これにより、患者が繊維シート200に腕を置いた際に不快感を与えずに済む。
【0028】
検知装置100は、繊維シート200へ交流信号を入力し、繊維シート200側における周波数特性を取得して漏血の有無を判定する。
検知装置100が、繊維シート200へ入力する交流信号として、電圧の変化する様々な信号(すなわち、周波数を有する様々な信号)を用いることができる。例えば、検知装置100が繊維シート200へ正弦波を入力するようにしてもよいし、三角波を入力するようにしてもよいし、矩形波を入力するようにしてもよい。
【0029】
また、検知装置100が取得する周波数特性は、入力する交流信号の周波数に応じて測定される様々なデータとすることができる。本実施形態では、検知装置100が周波数特性としてインピーダンスや位相回転を測定する場合を例に説明するが、これに限らない。
検知装置100は、例えばマイコン(Microcomputer)を含んで構成される。あるいは、検知装置100の各部が専用回路にて構成される、あるいはスマートフォンまたはパーソナルコンピュータ等を用いて構成されるなど、マイコンを含む構成以外の構成としてもよい。
【0030】
交流信号出力部110は、繊維シート200へ入力するための交流信号を出力する。上記のように、交流信号出力部110が出力する交流信号として、電圧の変化する様々な信号を用いることができる。
周波数特性取得部120は、繊維シート200に設けられた少なくとも2つの導電体(本実施形態では第一導電体210と第二導電体220と)に、交流信号出力部110が交流信号を入力した場合の周波数特性を取得する。例えば、周波数特性取得部120は、交流信号出力部110が出力する交流信号の周波数における繊維シート200のインピーダンスや、交流信号出力部110の出力する交流信号に対する、繊維シート200における交流信号の位相回転を測定する。さらに例えば、周波数特性取得部120は、第一導電体210と第二導電体220との間のインピーダンスや、第一導電体210と第二導電体220との間に流れる電流の、交流信号出力部110の出力する交流信号に対する位相回転を測定する。
【0031】
特に、周波数特性取得部120は、第一周波数の交流信号、第二周波数の交流信号それぞれを第一導電体210と第二導電体220とに入力した場合の周波数特性を取得する。後述するように、血液と汗とでは、周波数の変化に対するインピーダンスの変化の大きさや位相回転の変化の大きさが異なる。そこで、周波数特性取得部120は、周波数の異なる交流信号の各々について、当該交流信号を第一導電体210と第二導電体220とに入力した場合の周波数特性を測定する。
検知装置100(検知信号出力部191)がこれら周波数の異なる交流信号の各々についての周波数特性に基づいて血液の漏出を検知することで、血液と汗とを区別することができる。これにより、抜針の誤検知を低減させることができる。
【0032】
警報出力部130は、周波数特性取得部120の取得した周波数特性に基づいて検知装置100(検知信号出力部191)が血液の漏出を検知すると、警報を出力する。
警報出力部130の警報出力方法として様々な方法を用いることができる。例えば、警報出力部130はスピーカを具備し、検知信号出力部191の出力する検知信号に応じて警報音を出力する。あるいは、警報出力部130が、スピーカに加えて、あるいは代えてランプを具備し、当該ランプの発光にて警報を出力するようにしてもよい。あるいは、警報出力部130が、ナースセンターに設置されたパソコン(Personal Computer;PC)に警報信号を送信するなど、他機器に警報信号を送信するようにしてもよい。
【0033】
記憶部180は、例えば検知装置100の具備する記憶デバイスを含んで構成され、各種データを記憶する。
検知条件記憶部181は、検知信号出力部191が検知信号を出力するか否かの判定閾値を記憶する。すなわち、当該閾値は、検知信号出力部191が、血液の漏出を検知したか否かを判定する際の検知条件として用いられる。
【0034】
制御部190は、検知装置100の各部を制御して各種機能を実行する。制御部190は、例えば検知装置100の具備するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、記憶部180からプログラムを読み出して実行することで実現される。
検知信号出力部191は、周波数特性取得部120が所定の周波数特性を取得した場合に検知信号を出力する。より具体的には、検知信号出力部191は、周波数特性取得部120が取得した周波数特性が、検知条件記憶部181の記憶する検知条件を満たすか否かを判定する。そして、検知信号出力部191は、検知条件を満たすと判定した場合に、警報出力部130へ検知信号を出力する。
【0035】
特に、検知信号出力部191は、第一周波数の交流信号を第一導電体210および第二導電体220に入力した場合の周波数特性と、第二周波数の交流信号を第一導電体210および第二導電体220に入力した場合の周波数特性との相違が所定の相違である場合に、検知信号を出力する。より具体的には、交流信号出力部110は、上記のように異なる周波数(第一周波数および第二周波数)の交流電力を繊維シート200に入力する。そして、周波数特性取得部120は、各周波数についてインピーダンスや位相回転を測定する。そして、検知信号出力部191は、周波数の変化によるインピーダンスの変化の大きさや位相回転の大きさが、検知条件記憶部181の記憶する検知条件を満たすと判定した場合に、警報出力部130へ検知信号を出力する。
【0036】
次に、
図3〜
図8を参照して、検知信号出力部191が血液の漏出を検知するための判定条件について説明する。実験にて、人間の血液を模擬した豚の血液と、汗を模擬した食塩水とでは異なる周波数特性が得られており、かかる実験結果に基づいて、検知信号出力部191が血液の漏出を検知するための判定条件を設定することができる。
【0037】
図3は、実験に用いた容器および測定電極の外形の概略を示す外観図である。実験において、アクリル容器801の両端にそれぞれ電極802を挿入し、容器内に血液や食塩水を入れた。アクリル容器801を恒温槽内に置き、体温に近い温度(37度(℃))で実験を行った。
また、電極802のそれぞれを交流電源803と接続して交流信号を流した。電極802のそれぞれは電圧計804との接続されており、電圧計804にて電極802間の電圧を測定した。
電極802は、第一導電体210および第二導電体220を模擬する。電源803は、交流信号出力部110を模擬する。電圧計804は、周波数特性取得部120を模擬する。
【0038】
図4は、実験における回路の概略を示す説明図である。同図に示すように、電源803は、2つの電極802の間に接続されて、これら2つの電極802に交流信号を入力する。電圧計804は、2つの電極802の間に接続されて、これら2つの電極802間の電圧を測定する。
また、実験では、豚10頭の血液を使用し、平均値を算出した。実験に用いた血液のヘマトクリット値(Hct)は、約40パーセント(%)である。
また、非凝固血では、抗凝固剤としてクエン酸ナトリウムを用いた。
【0039】
図5は、アクリル容器801に食塩水が入った状態でのインピーダンスの大きさZの測定結果を示すグラフである。同図に示すグラフの横軸は周波数を示し、縦軸はインピーダンスを示す。
実験では、大きさの異なる3つのアクリル容器801(以下、容器A、容器B、容器Cと表記する。)に食塩水を入れてインピーダンスを測定した。アクリル容器801に食塩水が入った状態での周波数特性は、アクリル容器801自体の周波数特性を示す。また、アクリル容器801に食塩水が入った状態での周波数特性は、汗の周波数特性を模擬している。
線L11、L12、L13は、それぞれ、容器A、容器B、容器Cでのインピーダンス測定値を示す。線L11、L12、L13のいずれも、約3キロヘルツ(kHz)から約2メガヘルツ(MHz)の範囲では、おおよそ一定のインピーダンスを示している。
【0040】
図6は、アクリル容器801に食塩水が入った状態での位相差(位相回転)の測定結果を示すグラフである。ここでの位相差は、電源803が出力する交流信号の位相と、電圧計804が電圧を測定する電極802間の交流信号の位相との差である。
図6に示すグラフの横軸は周波数を示し、縦軸は位相差を示す。また、線L21、L22、L23は、それぞれ、容器A、容器B、容器Cでの位相差を示す。線L11、L12、L13のいずれも、約40キロヘルツから約2メガヘルツの範囲では、おおよそ一定の位相差(おおよそ位相差0)を示している。
図5および
図6の測定結果から、食塩水では、約40キロヘルツから約2メガヘルツまでの範囲で振幅、位相ともにおおよそ一定となっている。
【0041】
図7は、アクリル容器801に豚血液が入った状態でのインピーダンスの大きさZの測定結果を示すグラフである。同図に示すグラフの横軸は周波数を示し、縦軸はインピーダンスを示す。アクリル容器801に豚血液が入った状態での周波数特性は、人の血液の周波数特性を模擬している。
【0042】
線L31は、非凝固血液のインピーダンスを示す。線L32は、凝固血液のインピーダンスを示す。
線L31にて示される非凝固血液では、100キロヘルツから900キロヘルツへと周波数が大きくなるほどインピーダンスが小さくなっている。また、線L32にて示される凝固血では、非凝固血の場合よりもインピーダンスが大きくなっており、また、周波数の増大に対するインピーダンスの減少の割合が大きくなっている。
【0043】
図8は、アクリル容器801に豚血液が入った状態での位相差(位相回転)の測定結果を示すグラフである。
図6の場合と同様、
図8での位相差は、電源803が出力する交流信号の位相と、電圧計804が電圧を測定する電極802間の交流信号の位相との差である。
図8に示すグラフの横軸は周波数を示し、縦軸は位相差を示す。
【0044】
線L41は、非凝固血液での位相差を示す。線L42は、凝固血液での位相差を示す。
線L41にて示される非凝固血液では、100キロヘルツから900キロヘルツへと周波数が大きくなるほど位相差(位相遅れ)が大きくなっている。また、線L42にて示される凝固血では、非凝固血の場合よりも位相差が大きくなっており、また、周波数の増大に対する位相遅れの増大の割合も大きくなっている。
【0045】
図5〜
図8に示される測定結果から、比較的低周波の場合と比較的高周波の場合とで振幅または位相、あるいはこれら両方を比較することで、食塩水(汗)と血液とを区別することが考えられる。具体的には、周波数の変化に応じた変化が比較的小さい場合は、食塩水または汗と判断し、比較的大きい場合は、血液と判断する。
比較的低周波の場合として、例えば100キロヘルツ以下の交流信号を用いる。また、比較的高周波の場合として、例えば900キロヘルツ以上の交流信号を用いる。
【0046】
例えば、交流信号出力部110は、第一周波数の交流信号として100キロヘルツの交流信号を第一導電体210および第二導電体220に入力する。また、また、交流信号出力部110は、第二周波数の交流信号として900キロヘルツの交流信号を第一導電体210および第二導電体220に入力する。
また、周波数特性取得部120は、第一周波数の場合、第二周波数の場合それぞれについて、第一導電体210と第二導電体220との間のインピーダンス、および、第一導電体210と第二導電体220との間を電流の、交流信号出力部110の出力する電流に対する位相遅れを測定する。
【0047】
そして、検知信号出力部191は、例えば、周波数特性取得部120による測定値が以下の条件(1)、(2)の両方を満たす場合に、検知信号を出力する。
(1)第一周波数の場合のインピーダンスの大きさに対し、第二周波数の場合のインピーダンスの大きさが97パーセント以下である。(すなわち、3パーセント以上小さくなっている。)
(2)第一周波数の場合の位相遅れの大きさに対し、第二周波数の場合の位相遅れの大きさが2倍以上である。
【0048】
図7や
図8に示す例では、条件(1)、条件(2)の両方を満たしている。一方、
図5や
図6に示す例のように、食塩水や汗の場合はインピーダンスや位相遅れの変化がほとんど見られず、条件(1)や条件(2)を満たさないと考えられる。
従って、条件(1)または条件(2)、あるいはこれらの条件の併用により、血液の流出を検知し、かつ、汗等による誤検知を低減させることができる。
【0049】
また、
図7や
図8に示されるように、非凝固血と凝固血とで位相変化が異なることから、検知信号出力部191が、凝固血と非凝固血とを区別して検知するように検知条件を設定できる。
例えば、手術後等に傷口に当てるガーゼまたは包袋に繊維シート200を用い、検知信号出力部191が、時間経過に伴って漏血が凝固する状態変化を検知するようにしてもよい。より具体的には、検知信号出力部191がタイマを具備し、手術終了時などから所定時間経過したことを検知すると血液凝固の有無を判定する。血液凝固無しと判定した場合、検知装置100は、止血の確認を促す警報を出力する。
また、傷口からの出血が止まった後、検知信号出力部191が非凝固血を検知した場合、検知装置100が、傷口が開いた可能性を示す警報を出力するようにしてもよい。
【0050】
次に、
図9〜
図12を参照して、センサ繊維を用いての周波数特性の時間変化の測定実験について説明する。
図9は、実験で用いたセンサ繊維の概略構造を示す構造図である。同図に示すセンサ繊維230は、導電性糸231を絶縁用木綿232で巻き、その周りに導電性糸233を巻きつけて構成されている。
【0051】
図10は、センサ繊維230の層構造を示す説明図である。
図10は、センサ繊維230の断面における層構造を示している。同図に示すように、導電性糸231と導電性糸233との間に絶縁用木綿232が挟まれている。絶縁用木綿232が液体を吸収すると、導電性糸231と導電性糸233との間の周波数特性が変化する。
【0052】
図11は、センサ繊維に食塩水または血液(豚血液)を滴下した状態でのインピーダンスの大きさZの測定値の時間変化を示すグラフである。同図に示すグラフの横軸は滴下からの経過時間を示し、縦軸はインピーダンスを示す。線L51は、食塩を滴下した状態でのインピーダンスを示し、線L52は、血液を滴下した状態でのインピーダンスを示す。
図11の例では、センサ繊維230(導電性糸231および233)に、75キロヘルツの交流信号を入力している。
線L51に示される食塩水の滴下ではインピーダンスがほとんど変化していないのに対し、線L52に示される血液の滴下ではインピーダンスが一度減少した後増大している。
【0053】
図12は、センサ繊維に食塩水または血液(豚血液)を滴下した状態での位相差の測定値の時間変化を示すグラフである。ここでの位相差は、導電性糸231および233に入力される交流信号の位相に対する、導電性糸231と233との間に流れる交流信号の位相差(位相遅れ)である。
図12に示すグラフの横軸は滴下からの経過時間を示し、縦軸は位相差を示す。線L61は、食塩を滴下した状態での位相差を示し、線L62は、血液を滴下した状態での位相差を示す。
図11の例では、センサ繊維230(導電性糸231および233)に、1メガヘルツの交流信号を入力している。
【0054】
線L61に示される食塩水を滴下した状態よりも、線L62に示される血液を滴下した状態の方が、位相差が大きい。また、食塩水の滴下では位相差がほとんど変化していないのに対し、血液の滴下では時間経過に伴って位相が遅れている。
図11や
図12に示されるように、食塩水と血液とでは周波数特性の時間変化にも差が生じる。そこで、検知信号出力部191の検知条件として、位相の違いによる周波数特性の違いに加えて、あるいは代えて、時間経過による周波数特性の変化についての条件を用いるようにしてもよい。
【0055】
図3〜
図12を参照して説明した食塩水と血液との周波数特性の違いは、血液中の赤血球の構造に起因すると考えられる。より具体的には、赤血球細胞膜に起因する誘電体により、インピーダンスや位相差が周波数に応じて変化すると考えられる。このことから、検知装置100は、汗に限らず水やコーラなど、赤血球細胞膜のような構造を含まない様々な液体と区別して血液を検知し得る。従って、検知装置100では、患者が水やコーラ等の飲料をこぼした場合にも、抜針を誤検知する可能性を低減させることができる。
【0056】
次に、
図13〜
図17を参照して、繊維シート200における第一導電体210および第二導電体220の配置例について説明する。繊維シート200において第一導電体210と第二導電体220とを様々に配置することができる。
図13は、第一導電体210および第二導電体220の配置の第1例を示す説明図である。同図に示す配置例では、第一導電体210と第二導電体220とが交互に配置されている。第一導電体210と第二導電体220との間に血液が滴下すると、第一導電体210と第二導電体220との間の周波数特性が変化する。これにより、検知信号出力部191は、血液の漏出を検知し得る。
【0057】
なお、第一導電体210や第二導電体220が、ある程度の幅を持って配置されていてもよい。
図14は、第一導電体210および第二導電体220の配置の第2例を示す説明図である。
図13の例と同様、
図14の例でも第一導電体210と第二導電体220とが交互に配置されている。但し、
図14の例では、第一導電体210や第二導電体220の幅が、
図13の場合よりも太くなっている。これにより、
図13の場合よりも、第一導電体210と第二導電体220との間隔が狭くなる。第一導電体210と第二導電体220との間隔が狭くなることで、第一導電体210と第二導電体220との間に血液が滴下された場合のインピーダンス特性の変化がより大きくなり、検知装置100が血液の滴下を検知し易くなることが期待される。
【0058】
図15は、第一導電体210および第二導電体220の配置の第3例を示す説明図である。同図の配置例では、繊維シート200は、第一導電体210を含むシート241と第二導電体220を含むシート243との間にシート242が挟まれた3層構造にて構成されている。なお、第一導電体210と第二導電体220とが異なる向きになるように配置されていてもよいし、同じ向きになるように配置されていてもよい。
【0059】
シート241の本体、シート243の本体、およびシート242は、いずれも吸水性を有する絶縁性のシートとなっている。シート242が挟まれることで、第一導電体210と第二導電体220とが非接触となっている。また、シート242が血液等の水分を吸収すると、第一導電体210と第二導電体220との間のインピーダンス特性が変化する。これにより、検知信号出力部191は、繊維シート200への血液の漏出を検知し得る。
【0060】
なお、第一導電体210および第二導電体220において、各線が独立したチャネルを構成するようにしてもよい。
図16は、第一導電体210および第二導電体220の配置の第4例を示す説明図である。
図16の例において、繊維シート200は、第一導電体210を含むシート251と第二導電体220を含むシート253との間にシート252が挟まれた3層構造にて構成されている。また、第一導電体210と第二導電体220とは異なる向きになるように配置されている。また、シート251の本体、シート253の本体、およびシート252は、いずれも吸水性を有する絶縁性のシートとなっている。シート252が挟まれることで、第一導電体210と第二導電体220とが非接触となっている。
【0061】
一方、
図15の例と異なり
図16の例では、第一導電体210の各線は電気的に接続されておらず、それぞれの線がチャネル1〜チャネル4を構成している。また、第二導電体220の各線も電気的に接続されておらず、それぞれの線がチャネル5〜チャネル8を構成している。
【0062】
図17は、第一導電体210の各チャネルと第二導電体220の各チャネルとの位置関係の例を示す説明図である。同図の例において第一導電体210の各チャネルと第二導電体220の各チャネルとは互いに直交して配置されている。但し、シート252が挟まれていることで、第一導電体210の各チャネルと第二導電体220の各チャネルとは非接触となっている。シート252の一部に液体が染み込んだ場合、染み込んだ位置に応じたチャネルにおいて、第一導電体210と第二導電体220との周波数特性が変化する。これにより、検知信号出力部191は、液体の浸出の有無に加えて浸出した位置を検知し得る。
【0063】
例えば、繊維シート200がカーペットとして用いられており、繊維シート200の上の領域A11、A12、A13の各々に、機器が設置されているとする。この場合、チャネル2とチャネル5との間の周波数特性が変化すれば、領域A11に設置されている機器について液体が付着することによる故障等から保護する必要性を検知できる。一方、チャネル3とチャネル7との間の周波数特性が変化すれば、領域A12に設置されている機器や領域A13に設置されている機器について、液体が付着することによる故障等から保護する必要性を検知できる。
このように、検知システム1は、抜針の検知に限らず、第一導電体210と第二導電体220との間の周波数特性を変化させる様々な液体の検知に適用し得る。
【0064】
なお、液体の種類を区別する必要がない場合、交流信号に代えて直流電流をチャネルに印加するようにしても、繊維シート200に液体が染み込んだ位置を検知し得る。
例えば、チャネル1とチャネル2とに直流電流を印加した状態で、チャネル5、チャネル6それぞれの電圧を測定することで、領域A11への液体の染み込みの有無を判定し得る。この場合、液体の導電率が空気の導電率に対して十分大きな値を示し、チャネル5とチャネル6との電位差について、所定の大きさ以下の測定値が得られた場合、領域A11に液体が染み込んだと判定する。
【0065】
なお、少なくとも2つの導電体が互いに接触しないように組み合わせて1本の糸を構成し、この糸を繊維シートに編み込む、あるいは縫い付けるようにしてもよい。
例えば、
図9および
図10に例示される構造のように、導電性糸231を、絶縁用木綿232のように吸水性のある絶縁素材で薄く覆い、さらに導電性糸233を巻きつけて、いわば同軸ケーブル風の糸を生成する。この糸を吸水性のある絶縁素材でさらに覆い、導電性糸233が体表面等に直接触れないようにしてもよい。
【0066】
図18は、2つの導電体が互いに接触しないように組み合わせられた糸の配置の第1例を示す説明図である。
同図において、包帯261は、包帯261自らの中央に縦に編み込まれた糸262を含んで構成されている。糸262は、互いに接触しないように組み合わせられた2つの導電体を含んで構成されている。包帯261は、繊維シート200の例に該当し、糸262に含まれる2つの導電体が、第一導電体210および第二導電体220の例に該当する。
【0067】
包帯261は、例えば人工透析時に針を穿刺される腕など漏血監視対象部位に巻きつけて用いられる。その際、包帯261を任意の長さに切断可能であり、糸262の端部の一方において2つの導電体をそれぞれ交流信号出力部110に接続することで、
図1の構成とすることができる。これにより、検知装置100は、上述したように漏血を検知することができる。
【0068】
図19は、2つの導電体が互いに接触しないように組み合わせられた糸の配置の第2例を示す説明図である。
同図において、繊維シート271は、吸水性を有する絶縁性のシートに、糸262が蛇行して編み込まれて構成されている。
図18の例と同様に、糸262は、互いに接触しないように組み合わせられた2つの導電体を含んで構成されている。繊維シート271は、繊維シート200の例に該当し、糸262に含まれる2つの導電体が、第一導電体210および第二導電体220の例に該当する。
【0069】
糸262の端部の一方(例えば点P11)において2つの導電体をそれぞれ交流信号出力部110に接続することで、
図1の構成とすることができる。これにより、検知装置100は、上述したように漏血を検知することができる。特に、糸262を蛇行させて配置することで、検知装置100は、繊維シート271の様々な部分において、漏血など液体の染み込みを検知することができる。
【0070】
2つの導電体が互いに接触しないように組み合わせられた糸262を用いることで、
図18の例や
図19の例のように、1本の糸を包帯または繊維シート等に編み込んで、または縫い付けて繊維シート200を構成することができる。
これにより、2つの導電体を比較的狭い間隔で配置することができ、液体が繊維シート200に染み込んだ際に、検知信号出力部191の検知精度を高めることができる。
しかも、2つの導電体(例えば導電性糸)を、互いに接触しないように、かつ、比較的狭い間隔で、包帯または繊維シート等にそれぞれ編み込む、または縫い付ける場合よりも簡単に繊維シート200を生成することができる。これにより、繊維シート200の製造コストを低減させることができる。
【0071】
なお、1本の糸に含まれる2つの導電体の配置は、
図9および
図10の例に示されるものに限らない。
図20は、1本の糸に含まれる2つの導電体の配置のもう1つの例を示す説明図である。同図において、糸280は、互いに接触しないように撚り合わせられた2本の導電性糸281および282を含んで構成される。
例えば、導電性糸281および282をゴムなど伸縮性のある素材にて互いに非接触かつ平行に固定し、これをねじって
図20のような配置にする。これにより、導電性糸281と282とを比較的狭い間隔で配置することができ、かつ、糸280に伸縮性を持たせることができる。
【0072】
図21は、1本の糸に含まれる2つの導電体の配置のさらにもう1つの例を示す説明図である。
図22は、
図21に例示される糸の断面における2つの導電体の配置例を示す説明図である。
図21および
図22に例示される糸280では、2本の導電性糸281および282が平行に配置され、それら2本の導電性糸が絶縁用木綿232など吸水性のある絶縁素材で覆われた構造となっている。この構造では、導電性糸を撚り合わせる必要がなく、この点において、比較的容易に糸を生成し得る。
【0073】
以上のように、周波数特性取得部120は、繊維シートに設けられた少なくとも2つの導電体に交流信号を入力した場合の周波数特性を取得する。また、検知信号出力部191は、周波数特性取得部120が所定の周波数特性を取得した場合に検知信号を出力する。
これにより、検知装置100では、周波数特性の違いに基づいて他の液体と区別して特定の液体の付着を検知可能である。
かつ、検知装置100では、少なくとも2つの導電体(第一導電体210および第二導電体220)が設けられた繊維シートを使用可能である。当該繊維シートとして、例えば、複数の導電性糸が編み込まれた繊維シートを用いることができ、繊維シート構造を簡単にできる。これにより、繊維シートの製造コストを低減させ、当該繊維シード(液体の付着する部分)を使い捨てにし得る。
【0074】
また、周波数特性取得部120は、第一周波数の交流信号、第二周波数の交流信号それぞれを少なくとも2つの導電体(第一導電体210および第二導電体220)に入力した場合の周波数特性を取得する。そして、検知信号出力部191は、第一周波数の交流信号を導電体に入力した場合の周波数特性と、第二周波数の交流信号を導電体に入力した場合の周波数特性との相違が所定の相違である場合に検知信号を出力する。
ここで、上述したように、汗と血液とでは、周波数の変化に対する周波数特性の変化の割合が異なる。このため、検知信号出力部191は、複数の周波数における周波数特性の違いに基づいて、汗と区別して血液を検知することができ、抜針の誤検知を低減させることができる。
このように、検知信号出力部191は、複数の周波数における周波数特性の違いに基づいて、特定の液体と他の液体と区別して検知し得る。
【0075】
また、繊維シート200は、互いに接触しないように組み合わせられた少なくとも2つの導電体210および220を含む糸(糸262または糸280)を含む。
これにより、2つの導電体210および220を比較的狭い間隔で配置することができ、液体が繊維シート200に染み込んだ際に、検知信号出力部191の検知精度を高めることができる。
しかも、2つの導電体210および220を、互いに接触しないように、かつ、比較的狭い間隔で、包帯または繊維シート等にそれぞれ編み込む、または縫い付ける場合よりも簡単に繊維シート200を生成することができる。これにより、繊維シート200の製造コストを低減させることができる。
【0076】
なお、検知信号出力部191の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することで各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0077】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。