(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記誘電層のフッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン・ヘキサオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体(TFE/PDD)である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
上記アンテナエレメント層に電気的に接続される配線と、上記配線及び上記アンテナエレメント層のうちの少なくとも一方に電気的に接続される電子部品とをさらに備える請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
本発明は、可撓性を有するアンテナ基板であって、フッ素樹脂を主成分とする誘電層と、この誘電層の少なくとも一方の面に積層されるアンテナエレメント層とを備え、上記アンテナエレメント層における少なくとも一方の面の十点平均粗さ(Rz)が0.2μm以上4μm以下である。
【0014】
当該アンテナ基板は、誘電層がフッ素樹脂を主成分とすることで、誘電層の比誘電率(εr)及び誘電正接(tanδ)を小さくすることができる。また、アンテナエレメント層の少なくとも一方の面の十点平均粗さ(Rz)を0.2μm以上4μm以下とすることで、接合性を十分に確保しつつ、表皮効果による伝送遅延の発生を抑制し、抵抗減衰や漏洩減衰の増加による伝送損失を抑制することができる。そのため、当該アンテナ基板は、高周波信号の伝送特性に優れ、高速大容量無線通信に対応できる。その結果、当該アンテナ基板は、車載用のアンテナや携帯電話等の情報通信端末のアンテナなどとして好適に使用することができる。
【0015】
また、当該アンテナ基板は、一般に透明性が高いフッ素樹脂を主成分とする誘電層を備えているため透明性を高くすることができる。その一方で、アンテナエレメント層が金属等の一般に透明性の低い材料により形成されるため、当該アンテナ基板は、透明性の低いアンテナエレメント層が陰影となり、アンテナエレメント層を模様として視認させることが可能となる。そのため、当該アンテナ基板は意匠性に優れたものとなる。また、当該アンテナ基板は、例えば車載用として適用したときに車両のフロントガラス等に設置したとしても、当該アンテナ基板の透明性を高くすることができることから当該アンテナ基板に起因する視野の悪化を抑制できる。
【0016】
さらに、フッ素樹脂は、一般に耐候性及び耐薬品性に優れる。そのため、当該アンテナ基板は、誘電層によって耐候性及び耐薬品性を確保できることから、室外や車載用のアンテナとして好適に使用することができる。
【0017】
上記フッ素樹脂の比誘電率(εr)としては3以下、誘電正接(tanδ)としては0.004以下が好ましい。このように誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)が上記範囲であることで、伝送損失を十分に小さくできると共に十分な伝送速度が得られる。
【0018】
上記誘電層のJIS K 7350−2:2008に規定する暴露試験後の曲げ弾性率としては20GPa以上が好ましい。このように暴露試験後の曲げ強度が上記範囲であることで、暴露試験後においても当該アンテナ基板の機械的強度を十分に確保できる。そのため、当該アンテナ基板は、耐候性を十分に確保でき、その結果当該アンテナ基板を車載用や屋外用のアンテナのように光に暴露されやすい環境で使用されるアンテナとして好適に使用することができる。
【0019】
上記誘電層の光透過率としては70%以上が好ましい。このように誘電層の光透過率が上記範囲であることで、アンテナエレメント層をより明確に陰影とすることができる。そのため、例えば当該アンテナ基板を車載用のアンテナとして適用したときより優れた意匠性を発揮することができ、また当該アンテナ基板を車両のフロントガラス等の設置したときの視界の悪化を抑制できる。
【0020】
上記誘電層のJIS K 7350−2:2008に規定する暴露試験後の光透過率としては70%以上が好ましい。このように暴露試験後の光透過率が上記範囲であることで、暴露試験後においても当該アンテナ基板の透明性を十分に確保できる。そのため、当該アンテナ基板は、耐候性を十分に確保でき、その結果当該アンテナ基板を車載用や屋外用のアンテナのように光に暴露されやすい環境で使用されるアンテナとして好適に使用することができる。
【0021】
当該アンテナ基板のJIS C 5016:1994に規定する耐屈曲性試験における屈曲回数としては400回以上が好ましい。このように耐屈曲性試験における屈曲回数が上記範囲であることで、当該アンテナ基板の可撓性が経時的に劣化し難いものとなる。そのため、当該アンテナ基板の可撓性の劣化に起因するアンテナエレメント層の剥離や断線の発生を抑制することができる。
【0022】
当該アンテナ基板のJIS C 5016:1994に規定する耐折性試験における断線までの回数としては400回以上が好ましい。このように耐折性試験における断線までの回数が上記範囲であることで、当該アンテナ基板の可撓性が経時的に劣化し難いものとなる。そのため、当該アンテナ基板の可撓性の劣化に起因するアンテナエレメント層の剥離や断線の発生を抑制することができる。
【0023】
当該アンテナ基板は、上記誘電層のフッ素樹脂と上記アンテナエレメント層との間に化学結合を有しているとよい。このように誘電層のフッ素樹脂とアンテナエレメント層との間に化学結合を有することで、誘電層とアンテナエレメント層との接合性が高まり、接合強度を向上させることができる。
【0024】
上記化学結合が電離放射線照射により形成されることが好ましい。このような電離放射線照射によれば、上記化学結合を適切に形成することができるため、アンテナエレメント層と誘電層との接合性をより向上させることができる。
【0025】
上記化学結合が上記誘電層と上記アンテナエレメント層との界面に存在するカップリング剤を介して形成されているとよい。このようにカップリング剤を介在させることで、上記化学結合を簡易かつ確実に実現することができ、その結果誘電層とアンテナエレメント層との接合性を簡易かつ確実に向上させることができる。
【0026】
上記カップリング剤としてはN原子又はS原子を含む官能基を持つシランカップリング剤が好ましい。このようにカップリング剤がN原子又はS原子を含む官能基を持つシランカップリング剤であることで、誘電層とアンテナエレメント層との接合性をより向上させることができる。この理由は明確ではないが、上記シランカップリング剤の加水分解基がアンテナエレメント層にシランカップリング反応により固定される一方で、上記シランカップリング剤のアミノ基、スルフィド基等のN原子又はS原子を含む官能基が、誘電層の主成分であるフッ素樹脂がラジカル化した際に生じる炭素ラジカルサイトと化学結合することで接合性が向上するものと推定される。
【0027】
上記誘電層がフッ素樹脂の分子間に電離放射線照射により形成される化学結合を有しているとよい。このように誘電層がフッ素樹脂の分子間に化学結合を有することで、誘電層の機械的強度を向上させることができ、当該アンテナ基板の機械的強度のさらに向上させることができる。
【0028】
上記誘電層のフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・ヘキサオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体(TFE/PDD)が好ましい。このようなフッ素樹脂は、電子線照射や加熱等によりフッ素ラジカルを生成しやすい化合物であると考えられる。そのため、当該アンテナ基板は、例示したフッ素樹脂を主成分とする誘電層を備えることで上記化学結合を適切に形成できるため、誘電層とアンテナエレメント層との接合性がより優れたものとなる。また、例示したフッ素樹脂は、誘電正接(tanδ)及び比誘電率(εr)が低い材料であるため、誘電層がそのようなフッ素樹脂を主成分とすることで、伝送損失、伝送速度等の伝送特性に優れる当該アンテナ基板をより簡易に得られる。
【0029】
当該アンテナ基板は、上記アンテナエレメント層を覆い、かつフッ素樹脂を主成分とするカバーフィルムをさらに備えるとよい。このようなカバーフィルムを備えることで、酸化等によるアンテナエレメント層の劣化を抑制できる。特に、カバーフィルムが耐候性及び耐薬品性に優れるフッ素樹脂を主成分とすることで、当該アンテナ基板の耐候性等をより向上させることが可能となる。また、カバーフィルムが光透過率の高いフッ素樹脂を主成分とすることで、カバーフィルムを設けることによる当該アンテナ基板の透過性の低下を抑制できる。そのため、例えば当該アンテナ基板を車載用のアンテナとして適用したときの意匠性の悪化や視野の悪化を抑制できる。
【0030】
当該アンテナ基板は、車載用のアンテナとして使用されるとよい。このように当該アンテナ基板を車載用に使用することで、例えば当該アンテナ基板を車両のフロントガラス等に設置したときに意匠性を損なうことなく、また十分な視野を確保できる。
【0031】
当該アンテナ基板は、上記アンテナエレメント層に電気的に接続される配線と、上記配線及び上記アンテナエレメントのうちの少なくとも一方に電気的に接続される電子部品とをさらに備えるとよい。このように当該アンテナ基板が配線及び電子部品をさらに備えることで、当該アンテナ基板を電気回路として機能させることができる。そのため、当該アンテナ基板は、携帯電話等の情報通信端末などのアンテナ回路として好適に使用することができる。
【0032】
ここで、「フッ素樹脂」とは、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基で置換されたものをいう。「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。「十点平均粗さ(Rz)」とは、JIS B 0601:1994に準拠して測定される値であり、評価長さ(l)を3.2mmとし、カットオフ値(λc)を0.8mmとした値である。「比誘電率(εr)」及び「誘電正接(tanδ)」は、JIS C 2138:2007に準拠して測定した値である。「光透過率」及び「暴露試験後の光透過率」は、JIS K 7375:2008に準じて測定した値である。「暴露試験後の曲げ強さ」は、JIS K 7171:2008に規定する試験条件において測定した値である。「化学結合」とは、共有結合又は水素結合をいう。
【0033】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の第1実施形態から第3実施形態に係るアンテナ基板について、図面を参照しつつ説明する。
【0034】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係るアンテナ基板1について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。
【0035】
図1及び
図2のアンテナ基板1は、高周波用アンテナとして好適に使用できるものである。このアンテナ基板1は、誘電層10、アンテナエレメント層11及びカバーレイ12を備えている。
【0036】
アンテナ基板1は、全体として平板状であり可撓性を有する。ここで、アンテナ基板1の可撓性は、例えば以下に説明する耐屈曲性、耐折れ性等により評価できる。
【0037】
アンテナ基板1の耐折性は、張力4.9Nで毎分170回の割合で試料(アンテナ基板1)を折り曲げ、この試料が断線するまでの回数として評価できる。アンテナ基板1が断線するまでの回数としては、400回以上が好ましく、500回以上がより好ましい。アンテナ基板1が断線するまでの断線回数は、JIS C 5016「フレキシブルプリント配線板試験方法(8.7 耐折性)」:1994に準拠して測定される回数であり、10個の試料の測定結果の平均値として定義される。
【0038】
<アンテナエレメント層>
アンテナエレメント層11は情報の送受信を行う部分である。このアンテナエレメント層11は、誘電層10の一方の面に積層されており、平面視櫛歯状にパターン形成されている。このようなアンテナエレメント層11は、例えば誘電層10の一方の面に積層される金属層をエッチングすることによって形成されている。この金属層は、導電性を有する材料で形成可能であるが、銅箔、アルミニウム箔等によって形成することで、容易かつ確実に所望形状のパターンを形成することができる。また、アンテナエレメント層11は、防錆処理層を含んでいることが好ましい。
【0039】
また、アンテナエレメント層11を含む回路のインピーダンスはアンテナ基板1の仕様によって適宜設定すればよい。上記インピーダンスの下限としては、通常10Ωであり、30Ωが好ましい。上記インピーダンスの上限としては、通常300Ωであり、120Ωが好ましい。
【0040】
アンテナエレメント層11の周波数10GHzにおける50Ω系での伝送損失としては、0.230dB/cm以下が好ましく、0.228dB/cm以下がより好ましい。これにより、アンテナ基板1は、高周波領域の伝送に好適に用いることができる。
【0041】
アンテナエレメント層11の周波数100GHzにおける50Ω系での伝送損失としては、3.10dB/cm以下が好ましく、3.05dB/cm以下がより好ましく、3.00dB/cm以下がさらに好ましい。これにより、アンテナ基板1は、100GHz以上のより高い高周波領域の伝送にも好適に用いることができる。
【0042】
アンテナエレメント層11における誘電層10の少なくとも一方の面の十点平均粗さ(Rz)の上限は、4μmであり、好ましくは3μm、より好ましくは2μmである。上記誘電層10の十点平均粗さ(Rz)の下限は、0.2μmであり、好ましくは0.5μmである。このようにアンテナエレメント層11の表面粗さを設定することで、接合性の悪化を抑制しつつ後述する誘電層10のフッ素樹脂との化学結合により接合強度を確保し、表皮効果により伝送特性の低下を抑制できる。
【0043】
アンテナエレメント層11の平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。このアンテナエレメント層11の平均厚みが上記下限未満であると、アンテナエレメント層11が断線しやすくなるおそれがある。上記アンテナエレメント層11の平均厚みの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。このアンテナエレメント層11の平均厚みが上限を超えると、アンテナ基板1が十分な柔軟性を確保できないおそれがある。
【0044】
なお、アンテナエレメント層11は、平面方向の任意の箇所の厚みが略均一であることが好ましい。ここで、「略均一」とは上記平均厚みに対して誤差が40%以内であることを意味し、「平均厚み」とは任意の10点での測定値の平均値として定義される。なお、以下において他の要素について「平均厚み」という場合には同様に定義される。
【0045】
(防錆処理層)
アンテナエレメント層11は、上述のように防錆処理層を含んでいることが好ましい。この防錆処理層は、アンテナエレメント層11の表面が酸化することによる接合強度の低下を抑制するものである。この防錆処理層としては、コバルト、クロム又は銅を含むことが好ましく、コバルト又はコバルト合金を主成分として含むことがさらに好ましい。防錆処理層は、1層として形成しても複数層として形成してもよい。防錆処理層は、めっき層として形成してもよい。このめっき層は、単一金属めっき層又は合金めっき層として形成される。単一金属めっき層を構成する金属としてはコバルトが好ましい。合金めっき層を構成する合金としては、例えばコバルト−モリブデン、コバルト−ニッケル−タングステン、コバルト−ニッケル−ゲルマニウム等のコバルト系合金などが挙げられる。
【0046】
防錆処理層の平均厚みの下限としては0.5nmが好ましく、1nmがより好ましく、1.5nmがさらに好ましい。この防錆処理層の平均厚みが上記下限未満であると、アンテナエレメント層11の酸化を充分に抑制できないおそれがある。一方、上記平均厚みの上限としては、50nmが好ましく、40nmがより好ましく、35nmがさらに好ましい。上記防錆処理層の平均厚みが上記上限を超えると、厚みの増加分に比してそれに見合うだけの酸化防止効果を得られないおそれがある。
【0047】
<誘電層>
誘電層10はアンテナエレメント層11が積層されるものである。この誘電層10は、フッ素樹脂を主成分とする。この誘電層10は、フッ素樹脂以外に、必要に応じて任意成分を含んでいてもよい。
【0048】
誘電層10のフッ素樹脂は、アンテナエレメント層11の一方の面と化学結合を形成していることが好ましい。この化学結合としては、アンテナエレメント層11と誘電層10のフッ素樹脂との間に直接形成される形態、アンテナエレメント層11と誘電層10のフッ素樹脂との間に介在するカップリング剤によって、アンテナエレメント層11と誘電層10のフッ素樹脂との間に形成される形態、これら2つの形態が複合した形態が挙げられる。また、誘電層10は、フッ素樹脂の分子間に化学結合が形成されていることが好ましい。
【0049】
(カップリング剤)
カップリング剤は、アンテナエレメント層11と誘電層10のフッ素樹脂との間に化学結合を形成するために使用される。このカップリング剤としては、シランカップリング剤が好ましく、中でも、N原子又はS原子を含む官能基(以下、「反応性官能基」ともいう)を持つシランカップリング剤がより好ましい。上記反応性官能基を持つシランカップリング剤は、加水分解基(−OCH
3、−OC
2H
5、−OCOCH
3等)が加水分解されることでアンテナエレメント層11の一方の面にシランカップリング反応により固定される。一方、シランカップリング剤は、後述するように誘電層10に対して上記反応性官能基において化学結合するものと推定される。
【0050】
N原子を含む官能基としては、例えばアミノ基、ウレイド基等を挙げることができる。
【0051】
N原子を含む官能基を持つシランカップリング剤としては、例えばアミノアルコキシシラン、ウレイドアルコキシシラン、これらの誘導体が挙げられる。
【0052】
アミノアルコキシシランとしては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
アミノエトキシシランの誘導体としては、例えば3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等のケチミン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの酢酸塩等のシランカップリング剤の塩などが挙げられる。
【0054】
ウレイドアルコキシシランとしては、例えば3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−(2‐ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
S原子を含む官能基としては、例えばメルカプト基、スルフィド基等が挙げられる。
【0056】
S原子を含む官能基を持つシランカップリング剤としては、例えばメルカプトアルコキシシラン、スルフィドアルコキシシラン、これらの誘導体が挙げられる。
【0057】
メルカプトアルコキシシランとしては、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、メルカプトオルガニル(アルコキシシラン)等が挙げられる。
【0058】
スルフィドアルコキシシランとしては、例えばビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0059】
上記シランカップリング剤としては、変性基を導入したものであってもよい。変性基としては、フェニル基が好ましい。
【0060】
シランカップリング剤としては、例示した中でも、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又はビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドが好ましい。
【0061】
カップリング剤としては、N原子又はS原子を含む官能基を持つシランカップリング剤に代えて、又はこのシランカップリング剤に加えて他のカップリング剤を使用することができる。他のカップリング剤としては、誘電層10のフッ素樹脂又はそのラジカルに対して反応性を有する官能基を含み、アンテナエレメント層11又は防錆処理層に化学結合できる官能基等を含むものが好ましく、例えばチタン系カップリング剤を使用することができる。
【0062】
チタン系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(n−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパオロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパオロホスフェート)ジイソプロピルチタネート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソプロピルテトラエチルオルソチタネート、テトラブチルオルソチタネート、ブチルポリチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス−(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス−トリエタノールアミノチタネート、オクチレングリコールチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティックエスチルチタネート、ジイソプロポキシビス8アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアルミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0063】
誘電層10の比誘電率(εr)の上限としては3が好ましく、2.7がより好ましく、2.5がさらに好ましく、2.3が特に好ましい。この比誘電率(εr)が上記上限を超えると誘電正接(tanδ)が大きくなり伝送損失を十分に小さくできないおそれがあると共に、十分な伝送速度が得られないおそれがある。誘電層10の比誘電率(εr)の下限については特に限定はないが、1.2が好ましい。上記比誘電率(εr)が上記下限未満であると、誘電層10の寸法安定度の確保が難しくなる。特に発泡により比誘電率を低下させた場合には、弾性率が低下しすぎて加工、搬送が困難になるおそれがある。
【0064】
誘電層10の誘電正接(tanδ)の上限としては、0.004が好ましく、0.0035がより好ましく、0.003がさらに好ましい。この誘電正接(tanδ)が上記上限を超えると伝送損失を十分に小さくできないおそれがあると共に、十分な伝送速度が得られないおそれがある。誘電層10の誘電正接(tanδ)については特に制限はなく、この誘電正接(tanδ)は小さければ小さいほど好ましい。
【0065】
誘電層10の暴露試験後の曲げ弾性率の下限としては、20GPaが好ましく、30GPaがより好ましく、40GPaがさらに好ましい。この誘電層10の暴露試験後の曲げ強さが上記下限未満であると、アンテナ基板1としての強度が十分でなく、また耐候性を十分に確保できないおそれがある。上記誘電層10の暴露試験後の曲げ弾性率の上限としては、80GPaが好ましく、70GPaがより好ましく、60GPaがさらに好ましい。この誘電層10の暴露試験後の曲げ弾性率が上限を超えると、アンテナ基板1の可撓性を十分に確保することができず、例えばアンテナ基板1を車載用として適用したときにフロントガラス等の貼着部位から剥離しやすくなるおそれがある。
【0066】
誘電層10の光透過率の下限としては、70%が好ましく、75%がより好ましく、80%がさらに好ましい。この誘電層10の光透過率が上記下限未満であると、アンテナ基板1としての光透過性が低くなり、例えばアンテナ基板1を車載用のアンテナとして適用したときの意匠性が損なわれ、また視野が悪化するおそれがある。上記誘電層10の光透過率の上限については特に制限はなく、100%により近いことが好ましく、材料コストや製造容易性等の観点から95%がより好ましく、85%がさらに好ましい。
【0067】
誘電層10の暴露試験後の光透過率の下限としては、70%が好ましく、75%がより好ましく、80%がさらに好ましい。この誘電層10の暴露試験後の光透過率が上記下限未満であると、耐候性を十分に確保できないおそれがあり、例えばアンテナ基板1を車載用のアンテナとして適用したときの美観の劣化を十分に抑制できないおそれがあり、またアンテナ基板1の見た目が悪化するおそれがある。上記誘電層10の光透過率の上限については特に制限はなく、100%により近いことが好ましく、材料コストや製造容易性等の観点から95%がより好ましく、85%がさらに好ましい。
【0068】
誘電層10の平均厚みの下限としては、5μmが好ましく、7μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。この誘電層10の平均厚みが上記下限未満であると、誘電正接が大きくなり伝送損失を十分に小さくできないおそれが生ずると共に、十分な伝送速度が得られないおそれが生じ、またアンテナ基板1の製造作業が困難となるおそれがある。上記誘電層10の平均厚みの上限としては、125μmが好ましく、100μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。上記誘電層10の平均厚みが上記上限を超えると、誘電層10及びアンテナ基板1の厚みが不必要に大きくなると共に、誘電層10の材料費が嵩むおそれがあり、また十分なフレキシブル性が得られないおそれがある。
【0069】
(フッ素樹脂)
フッ素樹脂は、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状、分岐状又は環状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等が挙げられる。
【0070】
「フルオロアルキル基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を意味し、「パーフルオロアルキル基」を包含する。具体的には、「フルオロアルキル基」は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルキル基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基等を包含する。
【0071】
「フルオロアルコキシ基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基を意味し、「パーフルオロアルコキシ基」を包含する。具体的には、「フルオロアルコキシ基」は、アルコキシ基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルコキシ基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基等を包含する。
【0072】
「フルオロポリエーテル基」とは、繰り返し単位として複数のアルキレンオキシド鎖を有し、末端にアルキル基又は水素原子を有する1価の基であって、このアルキレンオキシド鎖及び/又は末端のアルキル基若しくは水素原子中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された基を有する1価の基を意味する。「フルオロポリエーテル基」は、繰り返し単位として複数のパーフルオロアルキレンオキシド鎖を有する「パーフルオロポリエーテル基」を包含する。
【0073】
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・ヘキサオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体(TFE/PDD)が好ましい。
【0074】
(任意成分)
誘電層10の任意成分としては、例えばエンジニアリングプラスチック、難燃剤、難燃助剤、顔料、酸化防止剤、反射付与剤、隠蔽剤、滑剤、加工安定剤、可塑剤、発泡剤等が挙げられる。
【0075】
上記エンジニアリングプラスチックとしては、誘電層10に求められる特性に応じて公知のものから選択して使用でき、典型的には芳香族ポリエーテルケトンを使用することができる。
【0076】
この芳香族ポリエーテルケトンは、ベンゼン環がパラ位に結合し、剛直なケトン結合(−C=O)又はフレキシブルなエーテル結合(−O−)によってベンゼン環同士が連結された構造を有する熱可塑性樹脂である。芳香族ポリエーテルケトンとしては、例えばエーテル結合、ベンゼン環、エーテル結合、ベンゼン環、ケトン結合及びベンゼン環が、この順序で並んだ構造単位を有するエーテルエーテルケトン(PEEK)、エーテル結合、ベンゼン環、ケトン結合及びベンゼン環が、この順序で並んだ構造単位を有するポリエーテルケトン(PEK)が挙げられる。中でも、芳香族ポリエーテルケトンとしては、PEEKが好ましい。このような芳香族ポリエーテルケトンは、耐摩耗性、耐熱性、絶縁性、加工性等に優れるものであるため、芳香族ポリエーテルケトンを含む誘電層10は、アンテナエレメント層11との接合性等に優れる。
【0077】
PEEK等の芳香族ポリエーテルケトンとしては、市販品を使用することができる。芳香族ポリエーテルケトンとしては、様々なグレードのものが市販されており、市販されている単一のグレードの芳香族ポリエーテルケトンを単独で使用してもよく、複数のグレードの芳香族ポリエーテルケトンを併用してもよく、また変性した芳香族ポリエーテルケトンを使用してもよい。
【0078】
エンジニアリングプラスチックの含有量としては、特に限定はない。エンジニアリングプラスチックの含有量の下限としては、フッ素樹脂との合計質量比で、通常10であり、20が好ましく、35がより好ましい。上記含有量の上限としては、通常50であり、45以下が好ましい。エンジニアリングプラスチックの含有量が上記下限未満であると誘電層10の特性を充分に改善することができないおそれがある。一方、エンジニアリングプラスチックの含有量が上記上限を超えるとフッ素樹脂の有利な特性を充分に発現させることができないおそれがある。
【0079】
難燃剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤が挙げられる。
【0080】
難燃助剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば三酸化アンチモン等が挙げられる。
【0081】
顔料としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば酸化チタン等が挙げられる。
【0082】
酸化防止剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えばフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0083】
反射付与剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば酸化チタン等が挙げられる。
【0084】
誘電層10は、電離放射線照射されていることが好ましい。電離放射線照射は、加熱下で行うことが好ましい。誘電層10に電離放射線照射を行うことで、フッ素樹脂がラジカル化される。
【0085】
このようにフッ素樹脂がラジカル化されることで、上述のカップリング剤を使用する場合、このカップリング剤とフッ素樹脂のラジカルとが化学結合するものと考えられる。具体的には、フッ素樹脂には、ラジカル部分にカップリング剤の反応性官能基が化学結合することで、カップリング剤が化学結合されるものと推定される。このように、フッ素樹脂のラジカル部分にカップリング剤を化学結合させ、さらに上述のようにカップリング剤をアンテナエレメント層11に化学結合させることで、誘電層10のフッ素樹脂とアンテナエレメント層11との間にカップリング剤を介在させた化学結合が形成される。その結果、アンテナ基板1は、誘電層10とアンテナエレメント層11との接合強度を高めることができる。
【0086】
ここで、上記シランカップリング剤は、アンテナエレメント層11と誘電層10との間にはÅオーダーで存在しているものと推定される。そのため、上記カップリング剤は、アンテナエレメント層11の表面性状に殆ど影響を与えず、アンテナエレメント層11の表面が粗面化されることもないため、カップリング剤による信号伝達性能の悪化が殆ど生じないものと考えられる。
【0087】
一方、上記カップリング剤を使用しない場合、電離放射線照射等によりフッ素樹脂がラジカル化されるとフッ素樹脂のラジカル部分がアンテナエレメント層11と化学結合を形成する。そのため、フッ素樹脂とアンテナエレメント層11の表面との間に化学結合を形成することで、上記カップリング剤を使用しない場合であっても誘電層10とアンテナエレメント層11との間の化学結合によって接合強度を高めることが可能である。
【0088】
また、フッ素樹脂がラジカル化されることで、フッ素樹脂分子の分子間に化学結合が形成され、誘電層10がPEEK樹脂等のエンジニアリングプラスチックを含む場合にはフッ素樹脂とエンジニアリングプラスチックとの間に化学結合が形成される。化学結合によるフッ素樹脂分子の分子間の結合、フッ素樹脂とエンジニアリングプラスチックとの結合は共有結合又は水素結合であり、これらの化学結合はフッ素樹脂の分子間結合(F−F結合)に比べて強い。そのため、アンテナ基板1では、フッ素樹脂分子の分子間に化学結合が形成され、又はフッ素樹脂がエンジニアリングプラスチックとの間に化学結合が形成されることで、誘電層10の機械的強度を向上させることが可能となる。
【0089】
ここで、電離放射線としては、電子線、高エネルギーイオン線等の荷電粒子線、γ線、X線等の高エネルギー電磁波、中性線等が挙げられ、中でも電子線が好ましい。これは、電子線発生装置が比較的安価であり、大出力の電子線が得られると共にラジカルの生成程度、すなわち化学結合の形成程度の制御が容易であるためである。
【0090】
電離放射線照射の照射線量としては、広い範囲で効果が得られるので任意の照射線を選択すればよいが、50KGy〜800KGy程度が好ましい。電離放射線の照射線量が上記下限未満であると、ラジカル化が不十分となり誘電層10の機械的強度の向上効果、及びアンテナエレメント層11と誘電層10との接合強度の向上効果等が十分に得られないおそれがある。一方、電離放射線の照射線量が上記上限を超えると、樹脂成分の分解(ポリマー主鎖の切断)が過剰となって誘電層10の機械的強度が低下するおそれがある。これに対して、照射線量を50KGy〜800kGyとすれば、ラジカル化を十分に進行させることができると共に樹脂成分の分解も少なく、十分な機械的強度、接合強度等が得られる。
【0091】
電離放射線照射は、低酸素又は無酸素の雰囲気下において誘電層10又はこの誘電層10を形成する直前の樹脂材料を加熱した状態で行うことが好ましい。
【0092】
電離放射線照射を低酸素又は無酸素の雰囲気下で行うことで、アンテナエレメント層11に対する誘電層10の接合強度を向上させることができる。具体的には、酸素濃度が1000ppm未満であれば、接合強度の向上効果が得られる。酸素濃度が500ppm以下であれば、顕著な接合強度の改善効果が得られ、100ppm以下でより顕著な接合強度の向上効果が得られる。なお、電離放射線照射時の酸素濃度の制御の安定性及び容易性の観点からは、酸素濃度としては10ppm以下が好ましい。
【0093】
電離放射線照射時の加熱温度は誘電層10の主成分であるフッ素樹脂の融点以上が好ましい。上記加熱温度としては、上記融点より80℃高い温度以下が好ましく、上記融点より40℃高い温度以下がより好ましい。例えば誘電層10の主成分がFEPである場合、FEPの融点が約270℃であることから、上記加熱温度としては270℃〜350℃が好ましい。加熱温度を樹脂の融点よりも高い温度で行うことで、フッ素樹脂のラジカル化及び化学結合の形成を適切に促進することができる。その一方、上記加熱温度の上限をフッ素樹脂の融点よりも80℃高い温度以下とすることで、フッ素樹脂の熱分解(ポリマー主鎖の切断)を抑制でき、誘電層10の機械的強度や接合強度の低下を抑制できる。
【0094】
なお、誘電層10がエンジニアリングプラスチックを含有する場合、電離放射線照射時の加熱温度は、フッ素樹脂及びエンジニアリングプラスチックの融点以上が好ましい。このように加熱温度を設定することで、フッ素樹脂とエンジニアリングプラスチックとの間に化学結合を形成して誘電層10の機械的強度等をさらに高めることができる。
【0095】
<カバーレイ>
カバーレイ12はアンテナエレメント層11を外力や水分等から保護するものである。このカバーレイ12は、カバーフィルム13及び接着層14を備えている。
【0096】
(カバーフィルム)
カバーフィルム13は、接着層14を介して誘電層10及びアンテナエレメント層11に積層されている。このカバーフィルム13は、アンテナ基板1が車載用のアンテナとして使用される場合には透明性が高いことが好ましい。カバーフィルム13の透明性としては、誘電層10と同程度の光透過率を有することが好ましい。
【0097】
カバーフィルム13の主成分としてはフッ素樹脂が好ましい。かかるフッ素樹脂としては、誘電層10の主成分として例示したものと同様なものが挙げられる。このようにカバーフィルム13がフッ素樹脂を主成分とすることで、カバーフィルム13の透明性を確保することができる。
【0098】
カバーフィルム13の平均厚みのとしては、通常10μm以上30μm以下である。カバーフィルム13の平均厚みが上記範囲未満であると、絶縁性が不十分となるおそれがある。一方、カバーフィルム13の平均厚みが上記範囲を超えると、アンテナ基板1の可撓性を損なうおそれがある。
【0099】
(接着層)
接着層14は、カバーフィルム13を誘電層10に固定するものである。この接着層14の材質としては、特に限定されるものではないが、柔軟性や耐熱性に優れたものが好ましく、例えばポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。特に、アンテナ基板1が車載用のアンテナとして使用される場合等のように透明性が要求される用途では、アクリル樹脂がより好ましい。
【0100】
接着層14の平均厚みとしては、特に限定されるものではないが、20μm以上30μm以下が好ましい。この接着層14の平均厚みが上記下限未満であると、接合強度が不十分となるおそれがある。接着層14の平均厚みが上記上限を超えると、アンテナ基板1の可撓性を十分に確保できないおそれがある。
【0101】
このように、アンテナ基板1がカバーレイ12を備えることで、アンテナエレメント層11の酸化等による劣化を抑制できる。また、カバーフィルム13がフッ素樹脂を主成分とすることで、アンテナ基板1の光透過性の低下を抑制できる。同様に、接着層14としてアクリル樹脂等の透明性の高い樹脂を用いることで、アンテナ基板1の光透過性の低下を抑制できる。そのため、例えばアンテナ基板1を車載用のアンテナとして適用し、車両のフロントガラス等に設置したときに、アンテナ基板1の意匠性の悪化や視野の悪化を抑制できる。
【0102】
[アンテナ基板の製造方法]
アンテナ基板1は、例えば
(1)防錆処理層形成工程
(2)塗工工程、
(3)乾燥工程
(4)接着工程、
(5)パターニング工程、及び
(6)カバーレイ積層工程を備える製造方法で得られる。
【0103】
<(1)防錆処理層形成工程>
防錆処理層形成工程はアンテナエレメント層11を形成するための金属箔等の導体膜の少なくとも一方の面の全部又は一部に防錆処理層を形成する工程である。この防錆処理層形成工程は、金属イオンを含む防錆溶液を導体膜の少なくとも一方の面の全部又は一部に塗工した後に、防錆溶液を乾燥させることで行われる。金属イオンとしては、コバルトイオン、クロムイオン及び銅イオンのイオンが好ましく、コバルトイオンがより好ましい。防錆溶液の塗工方法としては、公知の種々の方法を採用でき、例えば防錆溶液に導体膜を浸漬する方法、防錆溶液を導体膜に塗布する方法が挙げられる。防錆溶液の乾燥は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれであってもよい。このように防錆溶液を乾燥させることで、導体膜の少なくとも一方の面の全部又は一部に防錆溶液中の金属イオンに由来する金属酸化物の防錆処理層が形成される。
【0104】
防錆処理層形成工程は、水溶性電解めっき法等のめっき法により行ってもよい。めっき法を採用する場合、防錆処理層は単一金属めっき層又は合金めっき層として形成され、コバルトを含むように形成することが好ましい。
【0105】
<(2)塗工工程>
塗工工程は、上記導体膜(アンテナエレメント層11)にシランカップリング剤を含む組成物(以下、「カップリング剤含有組成物」ともいう)を塗工し、上記導体膜に上述のカップリング剤を化学結合させるために行われる。
【0106】
塗工工程におけるカップリング剤含有組成物の塗工方法としては、特に制限はなく、例えばカップリング剤含有組成物に導体膜を浸漬する方法、カップリング剤含有組成物を導体膜に塗布する方法が挙げられ、カップリング剤含有組成物に導体膜を浸漬する方法が好ましい。
【0107】
カップリング剤含有組成物に導体膜を浸漬する方法を採用する場合、カップリング剤含有組成物の温度は、通常、20℃〜40℃とされ、浸漬時間は10秒〜30秒とされる。
【0108】
(カップリング剤含有組成物)
カップリング剤含有組成物は、上記シランカップリング剤等のカップリング剤及び溶剤を含み、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含んでいてもよい。
【0109】
カップリング剤含有組成物におけるカップリング剤の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。上記カップリング剤の含有量が上記下限未満であると、誘電層10とアンテナエレメント層11との接合性を十分に高めることができないおそれがある。一方、カップリング剤の含有量の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、1.5質量%がさらに好ましい。カップリング剤の含有量が上記上限を超えると、カップリング剤が凝集しやすく、カップリング剤含有組成物の調製が困難となる場合がある。
【0110】
(溶剤)
溶剤としては、カップリング剤を溶解し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、トルエン、ヘキサン、水などが挙げられる。ただし、溶剤としては、保存安定性の面から、エトキシシラン系のアミノシランカップリング剤にはエタノールが好ましく、メトキシシラン系のアミノシランカップリング剤にはメタノールが好ましい。
【0111】
(任意成分)
任意成分としては、酸化防止剤、粘度調整剤、界面活性剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば鉄、糖、レダクトン、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸(ビタミンC)等が挙げられる。
【0112】
<(3)乾燥工程>
乾燥工程は、上記カップリング剤含有組成物を乾燥させるために行われる。この乾燥工程は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれで行ってもよいが、自然乾燥が好ましい。また、カップリング剤含有組成物の乾燥後は導体膜の加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理を行うことにより、導体膜の少なくとも一面の全部又は一部に、より確実にカップリング剤を固定させることできる。加熱処理は、例えば恒温槽にて100℃〜130℃で1分〜10分間加熱することで行うことができる。
【0113】
<(4)接着工程>
接着工程は、フッ素樹脂を主成分とする誘電層10の少なくとも組成物塗工面に上記導体膜を接着する工程である。この接着工程は、例えば誘電層10の一方の面に導体膜(アンテナエレメント層11)を載置した状態で加圧加熱することで行われる。接着工程は、公知の熱プレス機を用いて行うことができる。接着工程は、低酸素濃度下、例えば窒素雰囲気下での真空プレスにより行うことが好ましい。接着工程を低酸素濃度下で行うことにより、導体膜(アンテナエレメント層11)の一方の面(接着面)の酸化を抑制し密着力の低下を抑制できる。
【0114】
ここで、接着工程における加圧加熱の条件を適宜選択することにより誘電層10の主成分であるフッ素樹脂の末端又は側鎖を分解してフッ素樹脂の一部をラジカル化することができる。加熱温度は、誘電層10の主成分であるフッ素樹脂の結晶融点以上が好ましく、結晶融点よりも30℃高い温度以上がより好ましく、結晶融点よりも50℃高い温度以上がさらに好ましい。例えば、誘電層10の主成分がFEPの場合、このFEPの結晶融点が約270℃であるため、加熱温度は270℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましく、320℃以上がさらに好ましい。このような加熱温度において誘電層10を加熱することで、フッ素樹脂のラジカルを効果的に生成させることができる。ただし、加熱温度があまりに高温になると、フッ素樹脂自体が劣化するおそれがあるため、加熱温度の上限としては600℃が好ましく、500℃がより好ましい。
【0115】
また、この接着工程では、上記加圧加熱に加えて、他の公知のラジカル生成方法、例えば、電離放射線照射等を併用してもよい。電離放射線照射としては、例えばγ線照射処理が挙げられる。このように加熱下で電離放射線照射を行うことで、フッ素樹脂の劣化を抑制しつつ、より効果的にフッ素樹脂のラジカル化を生成させることができる。そのため、加熱下で電離放射線照射を行うことで、フッ素樹脂のラジカル化及び化学結合の形成を促進し、誘電層10とアンテナエレメント層11との間の接合性をさらに向上させることができる。
【0116】
また、電離放射線照射は、必ずしも接着工程において行う必要はなく、例えば誘電層10を形成するときに同時に行ってもよいし、誘電層10の形成後において接着工程を行う前に行ってもよいし、接着工程後に行ってもよい。また、電離放射線照射は必ずしも加熱下で行う必要はなく、電離放射線照射のみによりフッ素樹脂のラジカル化を実行してもよい。
【0117】
<(5)パターニング工程>
パターニング工程は、誘電層10の表面に所定パターンのアンテナエレメント層11を形成する工程である。このパターニング工程は、導体膜の積層後に行われ、例えば公知のエッチング手法により行うことができる。
【0118】
なお、パターニング工程は、接着工程よりも前に行ってもよい。このパターニング工程は、例えば、離型フィルムの表面に形成した導体膜をパターニングした後にこの導体膜を誘電層10に接着する方法、打ち抜いた導電膜を積層する方法等により行ってもよい。
【0119】
<(6)カバーレイ積層工程>
カバーレイ積層工程は、アンテナエレメント層11を覆うようにカバーレイ12を積層する工程である。このカバーレイ積層工程は、例えばカバーフィルム13に接着層14を予め形成したカバーレイ12を、アンテナエレメント層11を覆うように載置した後、加圧加熱により接着層14を介して誘電層10にカバーフィルム13を固定することで行われる。これにより、カバーフィルム13が接着層14を介して誘電層10に固定される。
【0120】
なお、加圧加熱の条件は、カバーレイ12に使用する接着層14の構成材料等により適宜決定すればよい。
【0121】
<利点>
当該アンテナ基板1は、誘電層10がフッ素樹脂を主成分とすることで誘電層10の比誘電率(εr)及び誘電正接(tanδ)を小さくすることができる。また、アンテナエレメント層11の少なくとも一方の面の十点平均粗さ(Rz)を0.2μm以上4μm以下とすることで、接合性を十分に確保しつつ、表皮効果による伝送遅延の発生を抑制し、抵抗減衰や漏洩減衰の増加による伝送損失を小さくすることができる。そのため、当該アンテナ基板1は、高周波信号の伝送特性に優れ、高速大容量無線通信に対応できる。その結果、当該アンテナ基板1は、車載用のアンテナや携帯電話等の情報通信端末などのアンテナとして好適に使用することができる。
【0122】
また、当該アンテナ基板1は透明性が高いフッ素樹脂を主成分とする誘電層10を備えているため透明性を高くすることができる。その一方で、アンテナエレメント層11は、金属等の一般に透明性の低い材料により形成されるため、アンテナ基板1では、透明性の低いアンテナエレメント層11のパターンが陰影とされ、アンテナエレメント層11を模様として視認させることが可能となる。そのため、当該アンテナ基板1は意匠性に優れたものとなる。また、当該アンテナ基板1は、例えば車載用として適用したときに車両のフロントガラス等に設置したとしても、当該アンテナ基板1の透明性を高くすることができることから当該アンテナ基板1に起因する視野の悪化を抑制できる。
【0123】
さらに、フッ素樹脂は、一般に耐候性及び耐薬品性に優れる。そのため、当該アンテナ基板1は、誘電層10及びカバーフィルム13によって耐候性及び耐薬品性を確保できることから、室外や車載用のアンテナとして好適に使用することができる。
【0124】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るアンテナ基板について
図3を参照しつつ説明する。なお、
図3においては、
図1及び
図2のアンテナ基板1と同一の要素について同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。
【0125】
図3のアンテナ基板2は、
図1及び
図2のアンテナ基板1において、誘電層10の他方の面に、グランド層21及びカバーレイ24を積層したものである。
【0126】
(グランド層)
グランド層21は、アンテナエレメント層11の接地電極として機能するものである。このグランド層21は、誘電層10の他方の面の全体に形成されている。
【0127】
グランド層21は、厚み、少なくとも一方の面の十点平均粗さ(Rz)及び材質については、アンテナエレメント層11と同様とすればよい。また、グランド層21は、アンテナエレメント層11と同様に、防錆処理、シランカップリング処理等を施したものであることが好ましい。防錆処理及びシランカップリング処理については、上述したアンテナエレメント層11の場合と同様に行うことができる。
【0128】
(カバーレイ)
カバーレイ22は、グランド層21を保護するものであり、グランド層21に積層されている。このカバーレイ22は、カバーフィルム23及び接着層24を備えている。これらのカバーフィルム23及び接着層24の構成については、上述したカバーレイ12と同様である。
【0129】
このようなアンテナ基板2では誘電層10の一方の面にアンテナエレメント層11が形成され、他方の面にグランド層21が形成されている。そのため、アンテナ基板2では、アンテナ基板2とは別の回路等にグランドを設け、このグランドにアンテナエレメント層11を接続する必要がないため、アンテナ基板2を組み込む装置の構成、製造工程等が簡略化され、製造コスト的に有利となる。
【0130】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るアンテナ基板について
図4から
図6を参照しつつ説明する。
図4から
図6においては、
図1及び
図2のアンテナ基板1と同一の要素について同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。
【0131】
図4から
図6のアンテナ基板3は、誘電層10、アンテナエレメント層30、グランド層31、カバーレイ32、電子部品33及び配線34を備えている。
【0132】
(アンテナエレメント層)
アンテナエレメント層30は、
図1及び
図2のアンテナ基板1のアンテナエレメント層11と基本的に同様であるが、アンテナエレメント層30が平面視蛇腹形状に形成されている点で異なっている。このアンテナエレメント層30は、電子部品33と接続されている。
【0133】
(グランド層)
グランド層31は、アンテナエレメント層30の接地電極として機能するものである。このグランド層31は、アンテナエレメント層30に隣接し、誘電層10の一方の面側に積層されている。グランド層31は、配線34を介して電子部品33と接続されている。グランド層31は、アンテナエレメント層30をパターン形成するときに同時に形成することができる。
【0134】
アンテナエレメント層30及びグランド層31は、材質及び少なくとも一方の面の十点平均粗さ(Rz)が
図1及び
図2のアンテナ基板1のアンテナエレメント層11と同様とされる。また、アンテナエレメント層30及びグランド層31は、
図1及び
図2のアンテナ基板1のアンテナエレメント層11と同様に、防錆処理、シランカップリング処理を施したものであることが好ましい。
【0135】
(カバーレイ)
カバーレイ32は、カバーフィルム35及び接着層36を備えている。このカバーレイ32は、
図1及び
図2のアンテナ基板1のカバーレイ12と基本的に同様であるが、このカバーレイとは切欠37を有する点で異なっている。この切欠37は、電子部品33が実装される部分に対応して形成されている。すなわち、カバーレイ32は、切欠37によって電子部品33と干渉しないようになされている。
【0136】
(電子部品)
電子部品33は、アンテナ基板3においてインピーダンス整合等の役割を果たすものである。この電子部品33は、アンテナエレメント層30、グランド層31及び配線34と接続されている。電子部品33としては、特に限定はなく、例えば整流回路等が挙げられる。
【0137】
(配線)
配線34は、アンテナエレメント層30、グランド層31及び電子部品33を相互に接続し、またアンテナ基板3を外部機器と接続するときに利用されるものである。この配線34は、複数の配線部を有する配線パターンとして形成されている。配線34は、アンテナエレメント層30及びグランド層31をパターン形成するときに同時に形成することができる。
【0138】
アンテナ基板3は、配線34及び電子部品33を備えることで、アンテナ基板3を電気回路として機能させることができるため、携帯電話等の情報通信端末などのアンテナ回路として好適に使用することができる。
【0139】
<他の実施形態>
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、後述の実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0140】
例えば、当該アンテナ基板におけるアンテナエレメント層のパターン形状は、アンテナ基板が適用される機器等に応じて決定すればよく、櫛歯状や蛇腹状に限らず他の形状であってもよい。
【0141】
当該アンテナ基板は、
図4から
図6のアンテナ基板3におけるグランド層31を、
図3のアンテナ基板1のように誘電層10の他方の面側に積層したものであってもよい。
【0142】
また、当該アンテナ基板の用途は、車載用アンテナや携帯電話等の情報通信端末などには限定されず、情報通信を行う機能を有する機器全般に適用可能である。