(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のフックのうち一のフックを除く残りの他のフックは、外側面に突設され一の前記フックの位置決め基準部の一の孔部の内面への接触により残りの他の孔部の内面に弾性的に接触する複数の調整部を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のハンドル。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のハンドルの第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図7(a)において、10はハンドルとしてのステアリングホイールで、このステアリングホイール10は、自動車の運転席の乗員の前方に配置され、モジュール11と、このモジュール11が乗員側に装着されたハンドル本体としてのステアリングホイール本体12と、このステアリングホイール本体12の反乗員側に取り付けられる被覆部材としてのカバー体(ボディカバー)13と、ステアリングホイール本体12の乗員側に取り付けられる装飾部材としてのフィニッシャ(ガーニッシュ)14と、例えば図示しない車内のオーディオ装置などの操作用のスイッチ装置15,15となどから構成されている。
【0017】
なお、ステアリングホイール10は、通常、水平方向(垂直方向)に対して角度θ1で傾斜した状態で備えられる図示しない操縦装置としてのステアリングシャフトに装着される(
図7(b))ものであるが、以下、モジュール11側を乗員側、正面側あるいは後側、ステアリングシャフト側を車体側、背面側あるいは前側とし、このステアリングシャフトに沿った前後方向を軸方向とし、その他、このステアリングホイール10が備えられる車体の直進方向を基準として、前後方向及び上下方向などの方向を説明する。
【0018】
モジュール11は、本実施の形態では、収納体としての取付部材であるベースプレート21及び被覆体としてのエアバッグカバー22を備え折り畳まれたエアバッグ23を収納したケース24、このケース24に配置されたインフレータ25、及び、リテーナ26などを備えたエアバッグ装置(エアバッグモジュール)である(
図5)。
【0019】
ベースプレート21は、バックプレート、あるいはバックホルダなどとも呼ばれるもので、ホーン機構のホーンプレートを兼ねており、例えば合成樹脂にて一体に射出成形されている。そして、このベースプレート21は、ケース本体としての取付面部である基板部31と、この基板部31の表面側の周縁部の全体に亘って正面側に立ち上げられた周壁部32とを備えている(
図4(a)及び
図5)。
【0020】
基板部31には、略中央部に円孔状のインフレータ取付孔34が開口されているとともに、このインフレータ取付孔34を囲んで4カ所の取付孔35がそれぞれ開口されている。また、この基板部31には、モジュール11をステアリングホイール本体12に対して進退可能に取り付ける複数の柱状のフック37が背面側に突設されている。さらに、この基板部31には、可動接点38を設定する導電性の導電プレート39が一体的に取り付けられている。
【0021】
フック37は、モジュール11とステアリングホイール本体12とを着脱可能に係止するとともに、モジュール11をステアリングホイール本体12に対して正面背面方向に沿ってガイドするものである。これらフック37は、基板部31から突設され基端側をなす円柱状の受け部42と、この受け部42よりも径寸法が小さく、この受け部42と同軸に突設された円柱状のフック本体部43と、このフック本体部43の先端部に同軸に設けられた円錐状の挿入部44とを一体に備えている。そして、これらフック37は、後述するステアリングホイール本体12の孔部としての開口部47にフック本体部43及び挿入部44が挿入されるとともに、これら開口部47にそれぞれ取り付けられた係合部材としてのワイヤ48に弾性的に係止保持されるようになっている。本実施の形態では、このフック37には、上側の両側部に位置する(一方及び他方の)第1フックである一対の側部フック37a,37bと、下側の中央部に位置する第2のフックである下部フック37cとが設定されている。
【0022】
受け部42は、モジュール11をステアリングホイール本体12に対して後方(乗員側)に向けて付勢するコイルばねであるホーンスプリング51の一端部(後端部)を保持するものであり、このホーンスプリング51を係止するための係止爪部52が径方向に複数突設されている。
【0023】
フック本体部43には、ホーンスプリング51の他端部(前端部)が基端側である受け部42側の周囲に位置している。さらに、このフック本体部43は、挿入部44を含み、ホーンスプリング51の他端部よりも先端側(前端側)がステアリングホイール本体12の開口部47に挿入される部分となっている。そして、フック37の外側面であるフック本体部43の外周面54は、開口部47の内面に対して離間されており、この外周面54には、ワイヤ48が係止される一対の係止凹部55,55が挿入部44の基端に隣接して凹設されているとともに、これら係止凹部55,55に臨んで、調整部としてのアジャストピン56,56が設けられている(
図2(a)及び
図2(b))。一方、フック37のうち、一のフックである一方の側部フック37aには、係止凹部55,55及びアジャストピン56,56に加えて、位置決め基準部としてのアジャストリブ58が、フック本体部43の外周面54にアジャストピン56,56と異なる位置で軸方向に沿って設けられている(
図2(a))。したがって、フック37は、一方の側部フック37aが位置決めフック、他方の側部フック37b及び下部フック37cが一般フックとなっている。
【0024】
係止凹部55,55は、フック本体部43の外周面54に対して軸直方向に凹設されている。各フック37の係止凹部55,55は、正面背面方向に見て、各フック37の中心軸同士を結ぶ仮想的な三角形Tの重心(中心)に向かう方向に対して両側、すなわち互いに線対称に配置されている。したがって、係止凹部55,55は、各側部フック37a,37bでは、フック本体部43の外周面54の上部の一側及び下部の他側に位置し、下部フック37cでは、フック本体部43の外周面54の両側部に位置している。
【0025】
アジャストピン56,56は、各開口部47に対する各フック37の位置を調整するものであり、各係止凹部55,55よりもフック本体部43の基端側に配置され、先端部が係止凹部55,55に位置している。これらアジャストピン56,56は、フック37のフック本体部43の軸直方向(径方向)に弾性変形可能に設けられた舌片状となっており、先端部に、フック本体部43の外周面54よりも軸直方向外側に突出した爪部56a,56aが設けられている。そして、アジャストピン56,56は、これら爪部56a,56aが、開口部47の内面に弾性的に接触(当接)可能となっている。
【0026】
アジャストリブ58は、開口部47の内面と接触(当接)することで一方の側部フック37aの位置を上下左右方向に規制してモジュール11をステアリングホイール本体12に対して上下左右方向に位置決めする基準となるものであり、一方の側部フック37aのフック本体部43の外周面54から軸直方向(径方向)に突出し、軸方向すなわちフック37の開口部47への挿入方向に沿って長手状となっている。このため、このアジャストリブ58は、例えばホーン装置の操作などによってモジュール11をステアリングホイール本体12に対して正面背面方向に移動させた状態で開口部47の内面との接触を維持するようになっている。このアジャストリブ58は、フック本体部43の外周面54から軸直方向への突出量よりも長手方向の長さの方が大きく設定されている。また、このアジャストリブ58の位置は、正面背面方向に見て、一方の側部フック37aのフック本体部43において、この一方の側部フック37aの中心軸と仮想的な三角形T(
図1)の重心(中心)とを結ぶ仮想線L1と外周面54とが交差する位置となっている。すなわち、一方の側部フック37aにおいて、アジャストリブ58は、中心軸を通り仮想線L1と直交する仮想線L2に対してアジャストピン56,56と反対側に位置している。
【0027】
挿入部44は、フック37を開口部47に挿入しやすくするように、フック本体部43側である基端側から先端側へと徐々に縮径するように形成されている。
【0028】
各可動接点38は、後述するステアリングホイール本体12側に配置されたホーン機構の固定接点63と対向し、これら固定接点63とともにホーンスイッチを構成している。すなわち、可動接点38は、ベースプレート21の基板部31の両側部及び下部にそれぞれ位置している。
【0029】
導電プレート39は、導電性の金属などによって板状に形成されている。なお、この導電プレート39は、基板部31に爪などによって固定されていてもよいし、ベースプレート21を成形する際にインサート成形されて可動接点38を除く部分が基板部31に埋め込まれていてもよい。
【0030】
周壁部32は、折り畳まれた状態のエアバッグ23を囲むもので、エアバッグ23の突出方向に沿う方向に位置している。そして、この周壁部32の外部には、エアバッグカバー22を係合保持するための複数のフック部61及び複数の係止受部62がそれぞれ設けられている。
【0031】
一方、エアバッグカバー22は、絶縁性を有する合成樹脂にて一体に形成され、ステアリングホイールの一部の正面側を覆うカバー本体としての表板部64と、この表板部64の背面側である前面側から角筒状に下方へと突設された取付壁部としての取付板部65とを備えている。
【0032】
表板部64の背面である前面には、取付板部65に囲まれた位置に、厚さ寸法の小さい溝状の図示しない破断予定部であるテアラインが例えば正面視で略H字状に形成されており、エアバッグの膨張時に、エアバッグの展開圧力によってテアラインに沿って開裂して展開するように構成されている。
【0033】
取付板部65は、ベースプレート21の周壁部32の外方に位置するもので、この周壁部32の外形に沿って形成されている。さらに、取付板部65には、ベースプレート21のフック部61がそれぞれ挿入係合される挿入開口部67、及び、各係止受部62にそれぞれ係合される図示しない係止突起がそれぞれ設けられている。
【0034】
エアバッグ23は、例えば、単数、あるいは複数の基布によって扁平な袋状に形成されているとともに、ベースプレート21の基板部31と同様に、円孔状のインフレータ取付孔71と、このインフレータ取付孔71を囲んで設けられた4カ所の取付孔72とが形成されている。
【0035】
インフレータ25は、円盤状のインフレータ本体部74と、このインフレータ本体部74から外周側に突設されたフランジ部75とを備えている。また、インフレータ本体部74には、図示しないガス噴射口が設けられ、フランジ部75には、取付孔77が4カ所に設けられている。さらに、インフレータ本体部74の底部には、図示しない接点部が設けられている。この接点部には、図示しないコネクタを介してワイヤハーネスが接続され、このワイヤハーネスを介してインフレータ25が制御装置と電気的に接続されている。
【0036】
リテーナ26は、リング状をなし、金属板などにて形成されたリテーナ基部81と、このリテーナ基部81に固定された4本の取付ボルト82とを備えている。そして、リテーナ基部81は、中央部に、円孔状のインフレータ取付孔83が形成されている。また、取付ボルト82は、インフレータ取付孔83を囲んで背面側に突設され、それぞれナット84が螺合されるようになっている。
【0037】
そして、エアバッグ23の内側にリテーナ26を挿入し、このリテーナ26の取付ボルト82を取付孔72から引き出した状態で、エアバッグ23を所定の形状に折り畳む。さらに、折り畳んだエアバッグ23にエアバッグカバー22を被せるとともに、このエアバッグカバー22の取付板部65の挿入開口部67及び係止突起を、ベースプレート21の周壁部32のフック部61及び係止受部62に位置合わせしつつ、リテーナ26の取付ボルト82を取付孔35に挿入しながらベースプレート21側へと押し込むことで、フック部61が挿入開口部67に挿入係止されるとともに、係止突起が係止受部62に挿入係止されて、エアバッグカバー22とベースプレート21とが互いにワンタッチで固定される(スナップイン)。
【0038】
さらに、ベースプレート21の背面側に突出した取付ボルト82に取付孔77を挿入しながら、ベースプレート21の背面側からインフレータ25を組み合わせ、取付ボルト82にナット84を螺合して締め付ける。この状態で、インフレータ25のガス噴射口を設けたインフレータ本体部74の正面側の部分がインフレータ取付孔34からエアバッグ23の内側に挿入され、モジュール11が構成される。
【0039】
一方、ステアリングホイール本体12は、円環状をなすリム部(リング部)87と、このリム部87の内側に位置するボス部(マウント部)88と、これらリム部87とボス部88とを連結する複数、例えば本実施の形態では3本のスポーク部89とから構成されている(
図4(b)及び
図6)。
【0040】
そして、このステアリングホイール本体12は、金属製の芯金91と、この芯金91の一部を一体的に覆う軟質の被覆部92とを備え、この芯金91の背面側がカバー体13により覆われている。
【0041】
芯金91は、リム部87、ボス部88及びスポーク部89に対応し、リム芯金95、支持部としてのボス芯金96、及び連結部としてのスポーク芯金97を備え、全体として略左右対称に形成されている。
【0042】
ボス芯金96は、ボスプレート、あるいはハブコアなどとも呼ばれるもので、ステアリングシャフトに嵌着される円筒状のボス101を中央部に一体的に有するボス芯金本体102と、このボス芯金本体102と各スポーク芯金97とをそれぞれ連結する連結芯金103と、これら連結芯金103に設けられた固定部104とを備えている。
【0043】
連結芯金103は、本実施の形態では、ボス芯金本体102の上側の両側部及び下側の中央部にそれぞれ突設されている。すなわち、連結芯金103には、両側部に位置する(一方及び他方の)第1連結芯金である一対の側部連結芯金103a,103bと、下部に位置する第2連結芯金である下部連結芯金103cとが設定されている。
【0044】
固定部104には、上記開口部47と、この開口部47に配置される上記ワイヤ48を保持する係合部材保持部としてのワイヤ保持部106と、ホーンスイッチ装置を構成する上記固定接点63とがそれぞれ設けられている。そして、この固定部104は、一対の側部連結芯金103a,103bに位置する(一方及び他方の)第1固定部である一対の側部固定部104a,104bと、下部連結芯金103cに位置する第2固定部である下部固定部104cとが設定されている。
【0045】
開口部47は、ボス芯金96を厚さ方向である前後方向に貫通して設けられている。この開口部47は、側部固定部104a,104bにおいては、丸孔状の(一方及び他方の)第1開口部である一対の側部開口部47a,47bとなっており、下部固定部104cにおいては、側部開口部47a,47bに対向しない下側が円弧状となった半円形状の第2開口部である下部開口部47cとなっている。すなわち、各開口部47は、少なくとも一部の内面が円弧に沿って形成されている。そして、側部開口部47a,47bに対してフック37の側部フック37a,37bが挿通され、下部開口部47cに対してフック37の下部フック37cが挿通されるようになっている。
【0046】
ワイヤ48は、ワンタッチワイヤとも呼び得るもので、弾性変形可能な金属などの線材(ピアノ線)にて形成されている。本実施の形態では、このワイヤ48は、ねじりコイルばねであり、コイル状に巻回された係合部材本体としてのワイヤ本体111と、このワイヤ本体111から接線方向に沿って直線状に延びる第1アーム112と、ワイヤ本体111から第1アーム112と鈍角をなす接線方向に沿って直線状に延びる第2アーム113とを備えており、第1アーム112の先端側に、モジュール11のフック37の係止凹部55,55に係合してフック37を係止する係止部114,114及びこれら係止部114,114間に連続する取り外し操作用の取外し操作部115がV字状(U字状)に一体に設けられているとともに、第1アーム112の延長上に直線状に延びる被保持部116が一体に設けられている(
図3(a))。このワイヤ48は、第1アーム112と第2アーム113との角度を自然状態(無負荷状態)から変えることによってワイヤ本体111により第1アーム112と第2アーム113との角度を自然状態へと復帰させるように付勢荷重を生じさせる。本実施の形態では、このワイヤ48は、側部開口部47a,47bに取り付けられる(一方及び他方の)第1ワイヤである側部ワイヤ48a,48bと、これら側部ワイヤ48a,48bと異なる位置である下部開口部47cに取り付けられる第2ワイヤである下部ワイヤ48cとが設定されている。
【0047】
そして、各ワイヤ48は、取外し操作部115に図示しないたとえばL字型フックを備えた器具を挿入して反フック37方向に引っ張ることで、係止部114,114とフック37の係止凹部55,55との係合が解除可能となっている。
【0048】
ワイヤ保持部106は、ワイヤ本体111を保持する円孔状の第1保持部117と、この第1保持部117と連続し第2アーム113を保持するアーム保持部118と、被保持部116を保持する第2保持部119とを有している。そして、このワイヤ保持部106により、側部ワイヤ48a,48bがモジュール11を仮想的な三角形Tの重心(中心)に向けて、すなわち左右方向及び下方向に付勢するように保持され、下部ワイヤ48cがモジュール11を仮想的な三角形Tの重心(中心)に向けて、すなわち上方向(ステアリングシャフトと直交する方向)に付勢するように保持されている。
【0049】
第1保持部117は、固定部104を貫通して設けられており、ワイヤ48のワイヤ本体111が嵌合されてこのワイヤ本体111の外周を保持するようになっている。
【0050】
アーム保持部118は、第1保持部117の接線方向に沿って所定方向に形成され、ワイヤ48の第2アーム113の回動位置を付勢に抗して規制している。
【0051】
第2保持部119は、開口部47に対して第1保持部117及びアーム保持部118と反対側の位置に、第1保持部117を中心とする円弧に沿って湾曲状に形成されており、端部でワイヤ48の被保持部116を付勢に抗して保持することにより、第1アーム112の回動位置を規制している。したがって、この第2保持部119の端部とアーム保持部118との位置関係によって、ワイヤ48の第1アーム112と第2アーム113との相対的な角度が設定されるようになっており、本実施の形態では、第2アーム113の自然状態からの絞り角度の大きさに対応して(比例して)、ワイヤ48による付勢荷重の大きさが設定されている。
【0052】
ここで、これらワイヤ48によるフック37に対する付勢荷重の総和は略0となっている。本実施の形態の場合、下部ワイヤ48cはモジュール11に対して左右方向に付勢荷重を与えないため、側部ワイヤ48a,48bによって左右方向に加わる付勢荷重が設定される。側部ワイヤ48b,48bは、互いに第2アーム113の絞り角度θ2が等しく設定されているとともに、左右対称、すなわち下部ワイヤ48cによる付勢荷重方向に対して互いに対称な位置に配置されて互いに反対方向に向けて付勢荷重を生じさせていることにより、左右方向の付勢荷重が互いに相殺される。そこで、下部ワイヤ48cの第2アーム113の絞り角度θ3は、モジュール11の重量、及び、側部ワイヤ48a,48bによって下方に加わる付勢荷重を相殺するように設定されている。すなわち、モジュール11の質量をm、重力加速度をgとすると、下部ワイヤ48cによって支持すべきモジュール11の重量M1は、M1=m・g・cosθ1となる。なお、ステアリングシャフトに沿って加わるモジュール11の重量M2は、ホーンスプリング51の付勢荷重によって相殺される。また、下部ワイヤ48cによって支持すべき両側部ワイヤ48a,48bからの付勢荷重Fは、各側部ワイヤ48a,48bによる出力トルクをT1、各側部ワイヤ48a,48bのワイヤ本体111の中心から作用点(係止部114,114の中間部)までの距離をD、フック37に対して各側部ワイヤ48a,48bからの付勢荷重が下方(ステアリングシャフトと直交する方向)に作用する角度(正面方向から見た第1アーム112の上下方向の角度)をθ4とすると、F=2・(T1/D)・sinθ4となる。したがって、重量M1と付勢荷重Fとの和(M1+F)を相殺するために、下部ワイヤ48cに必要な出力トルクT2は、T2=(M1+F)・Dとなるので、下部ワイヤ48cの第2アーム113の絞り角度θ3は、下部ワイヤ48cのばね定数をkとすると、θ3=T2/k={(M1+F)・D}/kに設定されている。
【0053】
具体的に、本実施の形態では、ワイヤ保持部106に保持された側部ワイヤ48a,48bの第2アーム113の絞り角度θ2が例えばそれぞれ20°(第1アーム112と第2アーム113との角度が90°)に設定されており、ワイヤ保持部106に保持された下部ワイヤ48cの第2アーム113の絞り角度θ3が絞り角度θ2よりも大きい、例えば36°に設定されている。
【0054】
固定接点63は、導電性を有する金属などの部材により形成されており、ボス芯金96の両側部及び下部にそれぞれ配置され、正面側に向けて突出している。
【0055】
各スポーク芯金97は、ボス芯金96とリム芯金95とを放射状に連結するもので、ボス芯金96の各連結芯金103と連続する一端部から、リム芯金95と連続する他端部へと、正面方向に向けて徐々に突出するように縦壁状に屈曲されている。
【0056】
そして、このステアリングホイール本体12には、カバー体13を背面側から組み合わせ、位置決めしつつステアリングホイール本体12に取り付ける。この後、このステアリングホイール本体12のボス101をステアリングシャフトに嵌着し、図示しないナットで締め付け固定する。
【0057】
このステアリングホイール本体12に対して、モジュール11は正面側から押し込むのみで、いわばワンタッチで取り付けられる。すなわち、モジュール11は、ステアリングホイール本体12に正面側から押し込むと、各開口部47に位置するワイヤ48のワイヤ保持部106がフック37の係止凹部55,55に係合し、両側及び下側の3カ所でモジュール11がステアリングホイール本体12に係合して抜け止め支持される。
【0058】
より詳細には、モジュール11は、最前部、すなわちボス芯金96に対向する位置に突出するフック37を、ベースプレート21に開口された各開口部47に位置合わせして押し込むと、フック37の挿入部44がガイドとなってフック本体部43が開口部47に内挿される。このとき、一方の側部フック37aでは、アジャストリブ58が一方の側部開口部47aの内面に接触することでモジュール11がステアリングホイール本体12に対して上下左右方向に位置決めされ、この位置決めに対応して、一方の側部開口部47aの内面に接触するアジャストピン56,56の爪部56a,56aが弾性変形することで寸法差を調整する。同様に、他方の側部フック37b及び下部フック37cでは、一方の側部フック37aのアジャストリブ58による上下左右方向の位置決めに対応して、他方の側部開口部47b及び下部開口部47cの内面に接触する各アジャストピン56,56の爪部56a,56aが弾性変形することで寸法差を調整する。すなわち、一方の側部フック37aがアジャストリブ58によって位置決め基準として作用し、他方の側部フック37b及び下部フック37cがモジュール11の回転防止となることで、モジュール11がステアリングホイール本体12に対して位置決めされる。さらに、挿入部44は、開口部47の後方に位置するワイヤ48の係止部114,114を、その付勢荷重に抗してフック37をモジュール11に押し込む方向と交差(直交)する方向へと押圧して移動させる。そしてモジュール11を充分に押し込み、挿入部44が係止部114,114を通過すると、ワイヤ48が復帰変形し、フック37の係止凹部55,55に係止部114,114が係合される(
図1(b)ないし
図1(d))。この結果、モジュール11がステアリングホイール本体12に対して相対的に前後方向、上下方向及び左右方向にそれぞれ位置規制され、各フック37は、ワイヤ48によって正面方向へと確実に抜け止めされ、モジュール11がステアリングホイール本体12から不意に外れることが防止される。
【0059】
また、この状態で、各フック37によりステアリングホイール本体12が正面背面方向に沿って案内される。
【0060】
そして、例えばインフレータ25の接点部などに電気的な配線を行うことにより、モジュール11を備えたステアリングホイール10がステアリングシャフトに取り付けられた状態で構成される。
【0061】
このように構成されたステアリングホイール10は、運転席の乗員がリム部87を把持して回動することにより、走行時の操作が行われる。また、乗員が押動部を兼ねたモジュール11のエアバッグカバー22を各ホーンスプリング51の付勢荷重に抗して押動することにより、各フック37によってモジュール11が相対的に前方へとガイドされ、いずれかの可動接点38が固定接点63に接触すると、車体側のホーン装置が吹鳴される。このとき、乗員がエアバッグカバー22の上下あるいは左右などの、中心から偏った位置を押動した場合、エアバッグカバー22は若干傾斜した状態で前方へと移動することとなるものの、モジュール11の3つのフック37(側部フック37a,37b及び下部フック37c)において、1つのフック(側部フック37a)のみにアジャストリブ58を設定しているため、アジャストリブ58によってこのような傾斜が妨げられることがない。
【0062】
また、モジュール11をステアリングホイール本体12から取り外す際には、取外し操作部115に図示しないたとえばL字型フックを備えた器具を挿入して反フック37方向に引っ張り係止凹部55,55から離脱させることにより、ワイヤ48によるフック37の係合が解除され、モジュール11を取り外し可能となる。
【0063】
一方、車両の正面衝突などの際は、インフレータ25からエアバッグ23の内部にガスが急速に噴射されて、折り畳まれて収納されたエアバッグ23が急激に膨張する。すると、このエアバッグ23の膨張の圧力により、エアバッグカバー22がテアラインに沿って開裂してエアバッグ23の突出口が形成され、この突出口からエアバッグ23が突出して乗員の前方で膨張展開し、乗員を拘束して保護する。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、開口部47に挿通されてワイヤ48に係合保持される複数の柱状のフック37のうち一方の側部フック37aの外周面54に突設したアジャストリブ58が一方の側部開口部47aの内面に接触することでこの一方の側部開口部47aでの一方の側部フック37aの位置が規制されるとともに、この一方の側部フック37aの外周面54のアジャストリブ58と異なる位置に突設した複数のアジャストピン56がアジャストリブ58の一方の側部開口部47aの内面への接触により一方の側部開口部47aの内面に弾性的に接触する。そこで、ステアリングホイール本体12に対するモジュール11の支持と位置決めとのそれぞれの機能を各フック37と各開口部47と各ワイヤ48とに集約でき、換言すれば、モジュール11のステアリングホイール本体12に対する支持に用いるフック37、開口部47及びワイヤ48によってモジュール11をステアリングホイール本体12に対する位置決めに共用でき、別途の位置決めピンなどを設けるスペースを取る必要がなく、モジュール11の小型化に対応しつつ、このモジュール11をステアリングホイール本体12に対して確実に位置決めできる。
【0065】
また、側部ワイヤ48a,48bの左右方向の付勢荷重を等しくするとともに、これら側部ワイヤ48a,48bの下方、すなわち下部ワイヤ48bに向かう方向の付勢荷重を下部ワイヤ48cによる上方への付勢荷重と等しくすることで、全てのフック37がセンタリングされた位置で、複数のワイヤ48の複数のフック37に対する付勢荷重の総和を略0とすることにより、これらワイヤ48の付勢荷重の調整によって、別途の部品を追加するなどの部品点数の増加を伴うことなく、モジュール11の小型化に対応しつつ、このモジュール11とステアリングホイール本体12とをより確実に位置決めでき、モジュール11の重量や製造コストに影響を与えない。しかも、ワイヤ48の付勢荷重は、第2アーム113の絞り角度を変更するだけで容易に変更できる。
【0066】
さらに、一方の側部フック37aを除く、他方の側部フック37b及び下部フック37cの外周面54に複数のアジャストピン56を突設して、これらアジャストピン56が、一方の側部フック37aのアジャストリブ58の一方の側部開口部47aの内面への接触により他方の側部開口部47b及び下部開口部47cの内面に弾性的に接触することで、モジュール11をステアリングホイール本体12に対して確実に回り止めでき、モジュール11の小型化に対応しつつ、このモジュール11とステアリングホイール本体12とをより確実に位置決めできる。
【0067】
この結果、レイアウト性が有利になり、モジュール11の小型化や多車種への構造流用が可能となる。
【0068】
また、フック37のアジャストリブ58及びアジャストピン56は、ベースプレート21の成形時の型抜き方向となる、フック37の軸方向に沿っているため、ベースプレート21の成形型を複雑化することなく容易に成形できる。
【0069】
なお、上記の第1の実施の形態において、ワイヤ48によるフック37に対する付勢荷重の総和を略0、すなわち全てのワイヤ48による付勢荷重が釣り合うようにできれば、ワイヤ48の配置、すなわちワイヤ保持部106及び固定部104の位置や形状は、任意に設定できる。例えば、
図8に示す第2の実施の形態のように、各側部ワイヤ48a,48bによる付勢荷重(第2アーム113の絞り角度)を適宜変えることで、側部ワイヤ48a,48bの位置をそれぞれ上下方向及び左右方向に変えて非対称な配置としてもよい。また、
図9に示す第3の実施の形態のように、少なくともいずれかのワイヤ48の位置、例えば側部ワイヤ48bの位置を、その付勢荷重の方向に沿って(合力の同軸上に沿って)変える場合には、付勢荷重を変えることなく非対称な配置とすることができる。これらの第2及び第3の実施の形態によれば、ワイヤ48の非対称な配置に対応できるので、ステアリングホイール10(モジュール11及びステアリングホイール本体12)のデザインの自由度が向上する。
【0070】
また、上記の各実施の形態において、アジャストリブを設けるフック37は、他方の側部フック37bでもよいし、下部フック37cでもよい。
【0071】
さらに、ステアリングホイール10は、3本のスポーク部89を備えた構成に限られず、例えば2本や4本のスポーク部89を備えた構成などにも適用できる。
【0072】
そして、ワイヤ48は、例えばU字状などの他の任意の形状とすることができる。
【0073】
また、モジュール11(ベースプレート21)にフック37を突設し、ステアリングホイール本体12(ボス芯金96)に開口部47及びワイヤ48を配置する構成としたが、モジュール11()に開口部47及びワイヤ48を配置し、ステアリングホイール本体12(ボス芯金96)にフック37を突設する構成とすることもできる。
【0074】
さらに、モジュール11としては、エアバッグ装置に代えて、例えば衝撃吸収体を収納したパッド体などを用いることもできる。