(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207086
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】アミン吸収液再生のための熱供給手段を備えた吸収式ヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F25B 27/02 20060101AFI20170925BHJP
F25B 15/00 20060101ALI20170925BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20170925BHJP
【FI】
F25B27/02 K
F25B15/00 B
C01B32/50
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-149985(P2014-149985)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-23897(P2016-23897A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年5月2日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23〜25年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/未利用温排熱から高温水蒸気を生成する吸着式蒸気回生システムの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】307020545
【氏名又は名称】公立大学法人岡山県立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000191881
【氏名又は名称】森松工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板谷 義紀
(72)【発明者】
【氏名】深井 潤
(72)【発明者】
【氏名】中川 二彦
(72)【発明者】
【氏名】丸毛 謙次
【審査官】
西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−341733(JP,A)
【文献】
実開平05−008353(JP,U)
【文献】
特開2005−195283(JP,A)
【文献】
特開2004−292298(JP,A)
【文献】
特開2008−057876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00
F25B 27/02
F25B 30/04
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むアミン吸収液に熱を供給して二酸化炭素を分離するための熱供給手段を備えた吸収式ヒートポンプ装置であって、
a)廃温水供給経路から供給された廃温水と溶媒との間で熱交換することで、前記溶媒を加熱して蒸発させ溶媒蒸気を得る蒸発器と、
b)吸収液を流下させて前記溶媒蒸気を吸収させる伝熱管を備えている吸収器と、
c)前記廃温水供給経路から供給された廃温水によって、溶媒蒸気を吸収した前記吸収液を加熱し、前記溶媒蒸気と前記吸収液とを分離させる再生器と、
d)分離した前記溶媒蒸気を冷却して溶媒に凝縮させる凝縮器と、
e)アミン吸収液に熱を供給する熱供給手段と、
を備えており、
前記熱供給手段が、前記吸収器の下部に設けられた隔壁の上側に規定液位を常時維持するように温水を導入する導入配管と、前記伝熱管の上部に配置されているトレイに前記温水を移送する循環路と、前記吸収器の下部から水蒸気を排出する導出配管と、前記導出配管の経路上に配置された蒸気圧縮器とを備えており、
前記温水は、前記トレイから前記伝熱管の外側を通過して前記吸収器の下部に到達するまでの間に前記伝熱管を通過する吸収液との熱交換を行って高温の水蒸気となり、当該水蒸気が前記導出配管から導出され、前記蒸気圧縮器によって圧縮されてさらに高温の水蒸気となり、アミン吸収液に供給されてアミン吸収液から二酸化炭素を分離するための熱エネルギーを供給することを特徴とする吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項2】
二酸化炭素を含むアミン吸収液に熱を供給して二酸化炭素を分離するための熱供給手段を備えた吸収式ヒートポンプ装置であって、
a)廃温水供給経路から供給された廃温水と溶媒との間で熱交換することで、前記溶媒を加熱して蒸発させ溶媒蒸気を得る蒸発器と、
b)吸収液を流下させて前記溶媒蒸気を吸収させる伝熱管を備えている吸収器と、
c)前記廃温水供給経路から供給された廃温水によって、溶媒蒸気を吸収した前記吸収液を加熱し、前記溶媒蒸気と前記吸収液とを分離させる再生器と、
d)分離した前記溶媒蒸気を冷却して溶媒に凝縮させる凝縮器と、
e)アミン吸収液に熱を供給する熱供給手段と、
を備えており、
前記熱供給手段が、前記吸収器の内側上部にアミン吸収液を導入するアミン吸収液導入配管と、前記吸収器の下部からアミン吸収液を排出する導出配管とを備えており、
前記導入配管から前記吸収器に導入された二酸化炭素を含むアミン吸収液が、前記伝熱管の外側を通過して前記吸収器の下部に到達するまでの間に前記伝熱管を通過する吸収液から熱を供給されて高温となることで、前記アミン吸収液と二酸化炭素とが分離され、前記アミン吸収液が前記導出配管から導出されることを特徴とする吸収式ヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含むアミン吸収液に熱を供給して二酸化炭素を分離するための熱供給手段を備えた吸収式ヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーを再利用する装置の一つとして、比較的低温の廃温水を熱源としてより高温の熱を得ることのできる吸収式ヒートポンプ装置が知られている。一般的な吸収式ヒートポンプ装置は、蒸発器と、吸収器と、再生器と、凝縮器とを備えている。蒸発器では、溶媒が熱源の供給路上に撒布され、熱源と熱交換を行うことで蒸発して溶媒蒸気となる。吸収器では、蒸発器から供給された溶媒蒸気に吸収液がスプレーまたは混合され、溶媒を吸収した吸収液が吸収熱を発生させる。溶媒を吸収した吸収液は、再生器に移されて廃温水によって加熱され、溶媒と吸収液とに再び分離される。分離された溶媒は凝縮器で冷却されて液体となり、蒸発器に循環される。分離された吸収液は、吸収器に循環される。吸収器で得られる吸収熱や凝縮器で得られる凝縮熱が、熱交換によりくみ上げられて利用される。吸収式ヒートポンプ装置は、製鉄所の高炉や火力発電所等で化石燃料を燃焼させた際に発生する熱を熱源として利用する場合がある。
【0003】
吸収式ヒートポンプ装置がしばしば導入される燃焼装置では、地球温暖化防止の観点から、二酸化炭素の排出量を削減することが求められている。現在、燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する有力な方法の一つとして、「化学吸収法」が知られている。化学吸収法は、二酸化炭素をアミン吸収液に吸収させる吸収工程と、二酸化炭素をアミン吸収液から分離回収してアミン吸収液を再生する再生工程とを備えており、常温常圧の気体から二酸化炭素を回収できるという独自の効果を有している。一方で、化学吸収法によって継続的に二酸化炭素を回収する場合、再生工程でアミン吸収液を再生するためには100℃を超える高温の熱エネルギーが常時必要となる。このため再生工程の熱消費をできる限り低減させる技術が求められている。
【0004】
特許文献1には、製鉄所で発生する副生ガスから化学吸収法で二酸化炭素を分離回収し、その後、二酸化炭素を吸収している化学吸収液を製鉄所で発生する500℃以下の排熱で加熱することで、二酸化炭素を吸収液から分離させる技術が開示されている。特許文献1の二酸化炭素の分離回収工程は、吸収液再生用の熱源として、製鉄所の低品位排熱を利用することで、特別な加熱手段を設けることなく二酸化炭素を化学吸収液から分離回収する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−292298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1の二酸化炭素の分離回収方法は、製鉄所で発生する500℃以下の排熱を吸収液再生用の熱源として用い、それ以上の廃熱は製鉄の他のプロセスで使用する技術を開示している。しかし、より低温の廃熱についても種々の用途に再利用することで、設備全体のエネルギー効率を向上させることが求められている。同時に、二酸化炭素の回収は、燃焼装置で早急に実施することが求められている技術である。
【0007】
本願発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、廃熱を効率よく利用すると同時
に、廃熱を利用した二酸化炭素の回収を効率よく行う手段を提供することを解決すべき課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、二酸化炭素を含むアミン吸収液に熱を供給して二酸化炭素を分離するための熱供給手段を備えた吸収式ヒートポンプ装置に関する。本発明の吸収式ヒートポンプ装置は、以下の構成を有している。すなわち、
a)廃温水供給経路から供給された廃温水と溶媒との間で熱交換することで、溶媒を加熱して蒸発させ溶媒蒸気を得る蒸発器と、
b)吸収液を流下させて溶媒蒸気を吸収させる伝熱管を備えている吸収器と、
c)廃温水供給経路から供給された廃温水によって、溶媒蒸気を吸収した吸収液を加熱し、溶媒蒸気と吸収液とを分離させる再生器と、
d)分離した溶媒蒸気を冷却して溶媒に凝縮させる凝縮器と、
e)アミン吸収液に熱を供給する熱供給手段と、
を備えている。
【0009】
本発明の熱供給手段は、アミン吸収液に熱を供給して二酸化炭素を分離させる手段である。本発明の熱供給手段の好ましい一つの態様では、吸収器の下部に設けられた隔壁の上側に規定液位を常時維持するように温水を導入する導入配管と、伝熱管の上部に配置されているトレイに温水を移送する循環路と、吸収器の下部から水蒸気を排出する導出配管と、導出配管の経路上に配置された蒸気圧縮器とを備えている。吸収器に導入された温水は、トレイから伝熱管の外側を通過して吸収器の下部に到達するまでの間に伝熱管を通過する吸収液との熱交換を行って高温の水蒸気となり、この高温の水蒸気は導出配管から導出され、蒸気圧縮器によって圧縮されてさらに高温の水蒸気となり、アミン吸収液に供給されてアミン吸収液から二酸化炭素を分離するための熱エネルギーを供給することを特徴とする。
【0010】
本発明の熱供給手段のもう一つの態様では、吸収器の内側上部にアミン吸収液を導入するアミン吸収液導入配管と、吸収器の下部からアミン吸収液を排出する導出配管とを備えている。そして、導入配管から吸収器に導入された二酸化炭素を含むアミン吸収液が、伝熱管の外側を通過して吸収器の下部に到達するまでの間に伝熱管を通過する吸収液から熱を供給されて高温となることで、アミン吸収液と二酸化炭素とが分離され、アミン吸収液は導出配管から導出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸収式ヒートポンプ装置は、比較的低温の廃熱を効率よく利用可能な温度に昇温することができる。同時に、化学吸収法によってアミン吸収液に吸収された二酸化炭素の分離回収時に必要な熱量を効率よく供給することができる。
【0012】
本発明の吸収式ヒートポンプ装置は、高炉や発電装置等の大規模な燃焼装置を伴う設備と共に用いることで、燃料装置の廃熱を効率よく再利用可能とすることができる。特に、燃焼装置が化学吸収法を適用した二酸化炭素回収装置を備えている場合には、この二酸化炭素回収装置の再生工程に必要な熱を効率よく供給することができる。この結果、二酸化炭素回収装置が独立した熱源を必要としなくなり、装置全体の小型化、簡略化が可能となると共に、装置全体の熱効率を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態の吸収式ヒートポンプ装置1を模式的に示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第二実施形態の吸収式ヒートポンプ装置41を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、発明を実施するための形態として、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を、化学吸収法による二酸化炭素分離回収手段を備えた燃焼装置に接続してその廃熱を利用する形態について説明する。本実施形態においては、吸収式ヒートポンプ装置は燃焼装置の廃温水を熱源として利用している。吸収式ヒートポンプ装置の溶媒として水が用いられており、溶媒を吸収する吸収液として高濃度の臭化リチウム溶液が用いられている。
【0015】
(第一実施形態)
以下に、図面を参照しつつ、本発明の第一実施形態の吸収式ヒートポンプ装置1(以下、単にヒートポンプ装置1とも言う)の構成と作用について説明する。
図1に本実施形態のヒートポンプ装置1の概略構成図を示す。ヒートポンプ装置1は、蒸発器11と、吸収器12と、再生器13と、凝縮器14と、熱供給手段15を備えている。この熱供給手段15は、二酸化炭素分離回収装置に用いられているアミン吸収液を再生する熱を供給する手段である。
【0016】
本実施形態のヒートポンプ装置1は、図示されない燃焼装置から廃温水を供給される。廃温水は、廃温水供給経路21によって最初に再生器13に導入されて再生器13の内部を通過し、次に蒸発器11の内部に導入されて蒸発器11の内部を通過して、排出される。
【0017】
ヒートポンプ装置1の蒸発器11の中では、凝縮器14から溶媒供給経路22aを通過して伝熱管31に導入される水と、廃温水供給経路21の中の廃温水との間で熱交換が行われる。蒸発器11の内部は初期投入水温度の飽和蒸気圧まで減圧されているため、水は定常運転時に73℃〜75℃の温度範囲で気化し、水蒸気(溶媒蒸気)となる。この水蒸気は、蒸発器11の下部側面に連通している蒸気供給路24を通過して、吸収器12上部側面に開口している蒸気入口25に到達し、吸収器12に供給される。
【0018】
吸収器12は、上部に蒸気入口25と、蒸気入口に対して直径方向で直角側となる上部側面に設けられている臭化リチウム導入口26とを備えている。吸収器12の内部には、その上下方向に延在している複数の伝熱管27が収容されている。伝熱管27の上端部は上方に向かって開口しており、伝熱管27の下端部は吸収器12の底部に向かって開口している。蒸気入口25から供給された水蒸気と、臭化リチウム導入口26から導入された高濃度の臭化リチウム(LiBr)水溶液(以下、臭化リチウム高濃度溶液とも言う)とは、それぞれ伝熱管27に導入される。伝熱管27内で水蒸気は臭化リチウム高濃度溶液に吸収され、このとき吸収熱が発生する。臭化リチウム高濃度溶液は、水蒸気を吸収することで希釈されて、臭化リチウム低濃度溶液となる。臭化リチウム低濃度溶液は、伝熱管27の下端部から吸収器12の底部に流出して一時保管される。
図1では、簡略化のために伝熱管27を2本図示しているが、熱交換をより効率よく行うために、より多くの伝熱管27を配置することができる。
【0019】
吸収器12と再生器13との間には、吸収液循環経路28a,28bが配置されている。吸収液循環経路28aは、吸収器12の底部と再生器13の本体側面の上部とを接続している。吸収液循環経路28bは、再生器13の底部と吸収器12の臭化リチウム導入口26とを接続している。吸収液循環経路28aは、吸収器12の底部に一時保管されている臭化リチウム低濃度溶液を溶液熱交換器40に非加熱側臭化リチウム溶液として供給し、さらに再生器13内に供給する。再生器13に供給された臭化リチウム低濃度溶液は、廃温水供給経路21の中を通過する廃温水と熱交換することで昇温され、吸収液に吸収されていた溶媒の水が再び水蒸気となり、吸収液と水とが分離する。水蒸気が分離すること
で得られる臭化リチウム高濃度溶液は、再生器13の下部に一時貯留された後、吸収液循環経路28bを通過して、溶液熱交換器40により加温され、加熱導入口26から吸収器12の伝熱管27に導入される。
【0020】
再生器13の下部と凝縮器14の中央部とを、溶媒供給経路22bが接続している。溶媒供給経路22bは、再生器13で吸収液から分離された水蒸気を凝縮器14に導入する。凝縮器14に導入された水蒸気は、凝縮器14の内部に配置された冷却水供給路29を通過する冷却水によって冷却されて、再び水に凝縮する。水は、凝縮器14の下部に一旦貯留した後、溶媒供給経路22aを経由して移送ポンプにより蒸発器11の上部に再び導入される。
【0021】
本実施形態のヒートポンプ装置1の熱供給手段15について説明する。本実施形態の熱供給手段15は、図示されない二酸化炭素分離回収装置に用いられているアミン吸収液を加熱し、アミン吸収液が吸収している二酸化炭素を分離させて再生するための熱を供給する手段である。熱供給手段15は、温水槽36と、吸収器12の側面下部に連通しており吸収器12の内側下部に温水を導入する導入配管32と、吸収器12の下部側面から水蒸気を排出する導出配管33と、導出配管33の経路上に配置された蒸気圧縮器34とを備えている。
【0022】
温水槽36は、燃焼装置の廃熱によって暖められた温水を貯水して、導入配管32に供給している。導入配管32から吸収器12に導入された温水は、吸収器12の下部に設けられた隔壁37の上側に規定の液位を常時維持するように供給され、移送ポンプにより循環路38を通過して、伝熱管27の上部に配置されているトレイ35に到達し、トレイ35の開口から伝熱管27の外側に沿うように流下する。温水は伝熱管27の外面を通過して吸収器12の下部に到達するまでの間に伝熱管27を通過する吸収液との熱交換を行って大部分が高温の水蒸気となる。高温の水蒸気は、導出配管33から導出され、蒸気圧縮器34によって圧縮されてさらに高温の水蒸気となり、二酸化炭素分離回収装置に供給される。一方、導出配管33から導出されなかった一部の温水は吸収器12の下部に設けられた隔壁37の上側に一時貯水され、循環路38によって再び吸収器12の上部に供給される。
【0023】
本実施形態のヒートポンプ装置1は、吸収器12内の伝熱管27を通過する臭化リチウム高濃度溶液が水蒸気を吸収する時の吸収熱を、熱交換によって伝熱管27の外側を流下する温水と熱交換させて、くみ出させることができる。このような熱交換を行うことで、本発明のヒートポンプ装置1は、二酸化炭素回収装置の再生工程に必要な熱を効率よく供給することができる。
【0024】
(第二実施形態)
以下に、図面を参照しつつ、本発明の第二実施形態の吸収式ヒートポンプ装置41(以下、単にヒートポンプ装置41とも言う)の構成と作用について説明する。
図2に本実施形態のヒートポンプ装置41の概略構成図を示す。ヒートポンプ装置41は、蒸発器11と、吸収器12と、再生器13と、凝縮器14と、熱供給手段45を備えている。第一実施形態と同一の構成を有するものについては、同一符号を付与して重複説明を割愛する。
【0025】
本実施形態の熱供給手段45は、二酸化炭素回収装置から直接アミン吸収液を導入し、吸収器12に流下させて熱交換を行うことにより、より効率よくアミン吸収液から二酸化炭素を分離して再生することができる。熱供給手段45は、図示されない二酸化炭素回収装置のアミン吸収液再生手段と連通しており、吸収器12の内側上部にアミン吸収液を導入するアミン吸収液導入配管42と、吸収器12の下部から二酸化炭素が除去されたアミン吸収液を排出する導出配管43とを備えている。
【0026】
アミン吸収液導入配管42から吸収器12に導入された二酸化炭素を含むアミン吸収液は、トレイ35を経由して伝熱管27の外側に沿うように流下する。アミン吸収液は伝熱管27の外面を通過して吸収器12の下部に到達するまでの間に伝熱管27を通過する吸収液との熱交換を行って高温となり、二酸化炭素が分離して再生される。高温となったアミン吸収液は、隔壁37の上側に一時貯留され、アミン吸収液導出配管43から二酸化炭素分離回収装置に再び供給される。アミン吸収液から分離した二酸化炭素は、二酸化炭素導出配管44から導出される。
【0027】
本実施形態のヒートポンプ装置1は、二酸化炭素分離回収装置との間で直接アミン吸収液を循環させて再生することで、効率よくアミン吸収液を再生して二酸化炭素の分離回収を行うことができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
本発明のヒートポンプ装置1において、吸収液として市販されている臭化リチウム55重量%水溶液を用い、廃温水供給源から約85℃の廃温水、30℃の冷却水を供給して試験を行った場合の、アミン吸収液の再生効率について説明する。本実施例のヒートポンプ装置1の吸収器12では、蒸気入口25から供給された74℃、12500kg/hrの水蒸気と、臭化リチウム導入口26から導入された80℃、56.5重量%、18740
0kg/hrの臭化リチウム高濃度溶液とは、それぞれ伝熱管27に導入され、伝熱管27内で水蒸気は臭化リチウム高濃度溶液に吸収され、このとき吸収熱が発生し、55.4
重量%の臭化リチウム低濃度溶液となる。本実施例のヒートポンプ装置1が接続されている二酸化炭素分離回収装置は、アミン吸収液としてモノエタノールアミン(MEA)吸収液(約30wt%)を使用しており、4.59t/hrの二酸化炭素を回収している。本実施例において、アミン吸収液の再生に必要な熱量は、18.4GJ/hrである。ヒートポンプ装置1の熱供給手段15は、温水槽36から85℃の温水を8400kg/hr供給しており、供給された温水は吸収器12で高温となった吸収液との熱交換によって100℃の蒸気となる。発生した蒸気は、さらに蒸気圧縮器34によって130℃まで昇温されてアミン吸収液の再生に必要な熱量を供給する。
【0029】
試験の結果、本実施例のヒートポンプ装置1は、蒸気圧縮器の動力として1000kWhの電気を消費することが明らかとなった。一方、ヒートポンプ装置1を使用せず、ボイラーで蒸気を発生させることによってアミン吸収液の再生に必要な熱量を発生させる場合、必要な化石燃料は0.475kl/hrである。ボイラーから得られる熱量によってアミン吸収液の再生を行った場合と比較すると、本実施例のヒートポンプ装置1の重油換算のエネルギー消費量は0.097kl/hrであり、エネルギーコストを約80%削減することが可能となる。
【0030】
(実施例2)
本発明のヒートポンプ装置41において、実施例1と同一の吸収液と温排水と25℃の冷却水とを用いて、二酸化炭素分離回収装置から直接アミン吸収液を導入して試験を行った場合のアミン吸収液の再生効率について説明する。ヒートポンプ装置1の熱供給手段45は、80℃のアミン吸収液を38.3t/hr供給している。このアミン吸収液は、吸収器12の熱交換によって110℃まで昇温されて再生される。
【0031】
本実施例のヒートポンプ装置1は、吸収器12に直接アミン吸収液を導入して再生するために、他の動力を必要とせず、重油換算のエネルギー消費量は0.0039kl/hrであり、ボイラーで蒸気を発生させることによってアミン吸収液の再生に必要な熱量を発生させる場合と比較するとエネルギーコストを約99%削減することが可能となる。本実
施例のヒートポンプ装置41は、再生に必要な温度が比較的低い吸収液に特に好適に適用される。
【0032】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。たとえば、熱供給手段の吸収器に対する配管の配置等、本来の機能を損なわない範囲で自由に変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1,41 吸収式ヒートポンプ装置
11 蒸発器
12 吸収器
13 再生器
14 凝縮器
15,45 熱供給手段
21 廃温水供給経路
22a,22b 溶媒供給経路
25 蒸気入口
26 臭化リチウム導入口
27,31 伝熱管
32 導入配管
33 導出配管
34 蒸気圧縮器
35 トレイ
36 温水槽
37 隔壁
38 循環路
42 アミン吸収液導入配管
43 アミン吸収液導出配管
44 二酸化炭素導出配管