【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 風力等自然エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー技術研究開発/次世代海洋エネルギー発電技術研究開発(海中浮体式海流発電)事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した水流発電機のブレーキ装置は、油圧や電気を用いて駆動する場合が多いため、水中ではなく空気雰囲気である発電機室の中に通常配置されている。一方で、羽根車には、常に海流に応じてトルクが発生しているため、例えば、羽根車と発電機室との間の伝達系に、伝達不良等の不具合が生じた場合には、ブレーキ装置によって羽根車の回転を停止できなくなることが想定される。また、深海に水流発電機を設置する場合等には、水圧が高いため、通常のブレーキ装置を設置しようとすると、水密構造等が複雑化してコストが増加してしまう。そのため、上記水中発電機においては、緊急時等に備え、ブレーキ機構とは別に、羽根車の回転を強制的に停止させる手段を低コストで設けることが望まれている。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低コストで羽根車の回転を確実に停止させることができる水流発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、水流発電機は、基体と、前記基体に対して相対回転可能に設けられ、複数の羽根で水流を捉えて回転する羽根車と、前記基体の内部に設けられて、前記羽根車から伝達される回転エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する発電機と、前記基体に設けられ、前記羽根車の回転軌跡の外側から前記回転軌跡の内側へ進入可能な回転停止部材を有する羽根車回転停止機構と、を備え
、前記回転停止部材は、その長手方向にスライド可能なロッドである。
このように構成することで、羽根車回転停止機構の回転停止部材を羽根車の回転軌跡の内側に進入させて、回転停止部材を羽根車の羽根に干渉させることができる。これにより、羽根車の回転を停止させることができる。
【0007】
さらに、ロッドを羽根車の回転軌跡の内側に進入させてロッドを羽根車の羽根と干渉させることができる。そのため、羽根車の回転を停止させることができる。
【0008】
この発明の第
二態様によれば、水流発電機は、第
一態様において、前記ロッドが、少なくとも前記回転軌跡と交差する部位に、前記羽根車の回転方向と反対方向を向く断面が鋭角な鋭角部を有しているようにしてもよい。
このように構成することで、羽根車の回転軌跡に配置されたロッドの鋭角部が羽根に衝突する際に、羽根車の羽根に食い込ませたり、羽根を切断したりすることができる。その結果、羽根車の回転をより確実に停止させることができる。
【0009】
この発明の第
三態様によれば、水流発電機は、
基体と、前記基体に対して相対回転可能に設けられ、複数の羽根で水流を捉えて回転する羽根車と、前記基体の内部に設けられて、前記羽根車から伝達される回転エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する発電機と、前記基体に設けられ、前記羽根車の回転軌跡の外側から前記回転軌跡の内側へ進入可能な回転停止部材を有する羽根車回転停止機構と、を備え、前記回転停止部材が、前記回転軌跡の内側に向けて展開可能な索状体であ
る。
このように構成することで、回転軌跡の内側に向けて展開された索状体が羽根車に絡みつき、羽根車の回転を停止させることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る水流発電機によれば、低コストで羽根車の回転を確実に停止させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の一実施形態における水流発電機を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、この実施形態における水流発電機を示す斜視図である。
図2は、上記水流発電機の実施形態における羽根車とナセルとの連結部分の構成を示す断面図である。
図3は、上記水流発電機の第一実施形態における羽根車停止機構において、ロッドを突出させた状態を示す斜視図である。
図1に示すように、この実施形態の水流発電機10は、左右一対で設けられた発電ユニット11と、左右の発電ユニット11を連結する構造体12と、を備えている。水流発電機10は、構造体12に一端を係止させた係留索13により、海底や水中構造物等に係留されることで、海水中に設置される。
【0013】
各発電ユニット11は、羽根車20と、ナセル30と、を備えている。
羽根車20は、ハブ21と、ブレード22と、を備えている。
【0014】
図1、
図2に示すように、ハブ21は、羽根車20の中央部に配置されている。ハブ21は、先端21a(
図1参照)に向かって外径が漸次縮小するいわゆる砲弾状に形成されている。このハブ21は、先端21aと反対側に、羽根車20の回転中心軸C(以下、単に軸線Cと称する)に直交する端面21bを有している。また、ハブ21の端面21bの外周部には、回転中心軸Cの延びる方向(以下、単に軸線C方向と称する)で先端21aと反対側に向かって延びる円筒状の筒状部21cが一体に設けられている。また、ハブ21の端面21bには、シャフト23が一体に設けられている。このシャフト23は、軸線C方向で先端21aとは反対側に向けて突出している。
【0015】
ブレード22は、ハブ21の外周部に、周方向に間隔をあけて複数本設けられている。この実施形態においては、2本のブレード22が設けられ、それぞれ回転対称な位置に配されている。各ブレード22は、基端部22aがハブ21の筒状部21cに一体に固定され、先端部22bに向かってハブ21から放射方向外側に延びている。
【0016】
ナセル30は、ケーシング31と、発電機32と、メインシャフト33と、を備えている。
ケーシング31は、軸線C方向に延びる円筒状に形成されている。このケーシング31は、その一端部31aに羽根車20を回転自在に支持する羽根車支持部34が設けられている。羽根車支持部34の外周面には、軸線C方向に間隔をあけて、一対の外部軸受35が設けられている。羽根車20は、これら外部軸受35を介して、羽根車支持部34に回転自在に支持されている。各外部軸受35は、例えば、樹脂で形成され、周囲の海水を潤滑剤として羽根車20を回転自在に支持する、いわゆる滑り軸受として機能する。
【0017】
ケーシング31内には、隔壁36が設けられている。この隔壁36は、軸線Cに直交し、軸線C方向で一端部31aとは反対側(以下、単に他端側と称する)を向く平面を有している。ケーシング31内には、軸線C方向で隔壁36よりも他端側に、密閉された発電機室37が形成されている。この発電機室37内は、空気雰囲気とされ、発電機32が収容されている。
【0018】
発電機32は、軸線Cに沿って隔壁36側に突出する入力軸32aを備えている。この発電機32は、入力軸32aと一体に設けられたロータ(図示無し)と、ロータに対向するステータ(図示無し)と、を備え、入力軸32aとともにロータがステータに対して相対的に回転することで発電する。この発電機32によって発電された電力は、送電線(図示無し)を介して外部に供給される。この発電機32の入力軸32aには、増速器(図示無し)、ブレーキ40等を介してメインシャフト33が連結されている。
【0019】
ブレーキ40は、水流発電機10が備えるコントローラ(図示無し)の制御により、例えば所定の回転数を超える等、異常が発生した場合や、定期メンテナンスを行うときに、メインシャフト33に制動力を付与し、羽根車20の回転速度を低減、および、停止させることが可能となっている。
【0020】
メインシャフト33は、隔壁36に形成されたシャフト孔36hを通じて羽根車支持部34内に延びている。これらメインシャフト33とシャフト孔36hとの間には、リング状のシール部材38が設けられ、メインシャフト33周りから発電機室37内への浸水を防止している。
【0021】
メインシャフト33と、羽根車20のハブ21に設けられたシャフト23との間には、カップリング継手50が設けられている。このカップリング継手50を介し、メインシャフト33とシャフト23とが、軸方向、径方向、傾斜方向の相対変位が可能な状態で接続されている。
【0022】
図1に示すように、このような各発電ユニット11は、羽根車回転停止機構60Aを備えている。
羽根車回転停止機構60Aは、ナセル(基体)30または構造体(基体)12(
図1の例ではナセル30)に設けられている。羽根車回転停止機構60Aは、ケース61と、ロッド(回転停止部材)62と、を備える。
【0023】
ケース61は、筒状で、ナセル30の外周面に固定されている。
ロッド62はケース61内に設けられ、バネ力、油圧、空圧等を用いた駆動機構(図示無し)により羽根車20側に向けてスライド変位可能とされている。
図3に示すように、ロッド62は、ケース61から突出した状態で、羽根車20のブレード22の回転軌跡R内、すなわち回転軌跡Rの回転面と交差する位置に配される。つまり、ロッド62が回転軌跡Rの内側に進入することで、ロッド62がブレード22に干渉して羽根車20の旋回が阻害されることとなる。
【0024】
羽根車回転停止機構60Aの作動は、水流発電機10に備えられたコントローラ(図示無し)により制御される。例えば、ナセル30内に、メインシャフト33の回転数と、シャフト23の回転数とを計測するセンサ(図示無し)を設けておく。コントローラーでは、センサで検出するメインシャフト33とシャフト23との回転数の差が、予め定めた基準値を超えた場合、カップリング継手50に故障等が発生したと判断し、羽根車回転停止機構60Aを作動させ、ロッド62の突出により羽根車20の旋回を停止させる。ここでは、予め定めた回転数の基準値に基づいて羽根車回転停止機構60Aを作動させる場合について説明したが、どのような条件で羽根車回転停止機構60Aを停止させるかは適宜設定すればよい。
【0025】
したがって、上述した第一実施形態の水流発電機によれば、羽根車回転停止機構60Aのロッド62を羽根車20の回転軌跡R内に進入させて、ロッド62を羽根車20のブレード22に干渉させることによって、羽根車20の回転を停止させることができる。これにより、緊急時等においても、羽根車20を確実に停止させることができる。
【0026】
(第二実施形態)
次に、この発明にかかる水流発電機の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と羽根車回転停止機構60Bの構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0027】
図4は、上記水流発電機の第二実施形態における羽根車停止機構において、ロッドを突出させた状態を示す斜視図である。
図4に示すように、この実施形態における水流発電機10の各発電ユニット11は、羽根車回転停止機構60Bを備えている。この羽根車回転停止機構60Bは、ナセル30または構造体12(
図4の例ではナセル30)に設けられている。羽根車回転停止機構60Bは、ケース61と、ロッド(回転停止部材)63と、を備える。
【0028】
ケース61は、筒状に形成されて、ナセル30の外周面に固定されている。
ロッド63はケース61内に設けられ、バネ力、油圧、空圧等を用いた駆動機構(図示無し)により羽根車20側に向けてスライド変位可能とされている。ロッド63は、ケース61から突出した状態で、羽根車20のブレード22の回転軌跡Rの回転面内、すなわち回転軌跡Rと交差する位置に配される。これにより、ロッド63がブレード22に干渉して羽根車20の旋回が阻害される。
【0029】
このロッド63には、旋回するブレード22の側面に対向する位置に鋭角部63sが形成されている。この鋭角部63sは、その断面が鋭角に形成されたクサビ状、刃物状等に形成されている。鋭角部63sのロッド63は、少なくともその鋭角部63sが、ブレード22よりも硬度の高い材料で形成されている。例えば、ブレード22が強化繊維プラスチック製の場合、鋭角部63sは金属製とすることができる。
【0030】
羽根車回転停止機構60Bの作動は、水流発電機10に設けられたコントローラー(図示無し)により制御される。このコントローラーは、所定の条件を満足したときに、ロッド63を羽根車20側に向けてスライド変位させて突出させる。すると、ロッド63には、鋭角部63sが形成されているので、旋回中の羽根車20のブレード22に対し、ロッド63が干渉して鋭角部63sがブレード22の側部に食い込んだり、ブレード22が切断されたりする。ブレード22に鋭角部63sが食い込んだ場合には、ブレード22に対して鋭角部63sが係止されて羽根車20が停止する。一方で、ブレード22が切断された場合には、ブレード22が海流を受けて回転することができなくなるため羽根車20が停止する。
【0031】
したがって、上述した第二実施形態の水流発電機によれば、羽根車回転停止機構60Bのロッド63を羽根車20の回転軌跡R内に進入させ、ロッド63が羽根車20のブレード22と干渉することによって、羽根車20の回転を停止させることができる。
さらに、ロッド63の鋭角部63sがブレード22の側部に食い込ませたり、ブレード22を切断したりすることができる。その結果、羽根車20の回転をより確実に停止させることができる。
【0032】
(第一、第二実施形態の変形例)
ここで、上述した第一、第二実施形態においては、羽根車回転停止機構60A,60Bをナセル30の外周面に設置するようにした。しかし、この構成に限られるものではない。羽根車回転停止機構60A,60Bは、構造体12の外周面に設けるようにしてもよいし、構造体12の内部に収容し、ロッド62,63を構造体12から外部に突出させるようにしてもよい。
【0033】
(第三実施形態)
次に、この発明にかかる水流発電機の第三実施形態について説明する。この第三実施形態においては、第一、第二実施形態と羽根車回転停止機構60Cの構成のみが異なるので、第一、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0034】
図5は、水流発電機の第三実施形態における羽根車停止機構を示す斜視図である。
図6は、索状体を展開させた状態を示す斜視図である。
図5、
図6に示すように、この実施形態における水流発電機10の各発電ユニット11は、羽根車回転停止機構60Cを備えている。
【0035】
羽根車回転停止機構60Cは、ナセル30または構造体12(
図5の例では構造体12)に設けられている。羽根車回転停止機構60
Cは、ケース65と、索状体(回転停止部材)66と、を備えている。
【0036】
ケース65は、中空の蓋状で、ナセル30の外周面に開閉可能に設けられている。このケース65は、水流発電機10に設けられたコントローラ(図示無し)により制御され、所定の条件を満足した場合に開くようになっている。このケース65は、羽根車20に対して海流の上流側に配されている。
【0037】
索状体66は、複数本がケース65内に設けられている。索状体66は、例えば金属ワイヤーや、その他所定の破断強度を有したケーブル、ロープ等からなる。索状体66は、通常時においては、ケース65内に収容されている。
図6に示すように、索状体66は、ケース65が開くと、海流によって、羽根車20側に向けて延びるように展開される。索状体66は、ケース65から延びた状態で、羽根車20のブレード22の回転軌跡Rの回転面内に進入してブレード22に干渉する。すると、羽根車20の旋回にともなって、索状体66が羽根車20に徐々に絡みつき、羽根車20の旋回が阻害される。
【0038】
したがって、上述した第三実施形態の水流発電機によれば、索状体66が羽根車20に絡みつくことによって、羽根車20の回転を停止させることができる。
【0039】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態においては、索状体66の先端部に、海流による圧力を受けるパラシュート等を備えてもよい。このような構成とすることで、パラシュート等で海流の圧力を受けることによって、索状体66は、羽根車20に向けてスムーズに展開される。
また、索状体66に代えて、網状のネット等、他のものを用いてもよい。
【0040】
(その他の変形例)
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
上述した各実施形態、および、各変形例においては、水流発電機10が深海に設置される場合について説明したが、深海に限られるものではない。
さらに、上述した各実施形態、および、各変形例においては、発電ユニット11が2つ設けられている場合について説明したが、発電ユニット11の個数は2つに限られない。また羽根車20のブレード22の枚数も複数枚であれば、上述した枚数に限られない。
また、これ以外にも、水流発電機10の各部の構成等については、適宜他の構成を採用することが可能である。