特許第6207099号(P6207099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207099ネオジム磁石の絶縁接着方法及び積層ネオジム磁石の押圧装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207099
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ネオジム磁石の絶縁接着方法及び積層ネオジム磁石の押圧装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20170925BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20170925BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20170925BHJP
   C09J 5/02 20060101ALI20170925BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20170925BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01F41/02 G
   H01F7/02 E
   H02K15/03 A
   C09J5/02
   C09J5/06
   C09J201/00
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-231361(P2015-231361)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-103641(P2016-103641A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2015年12月8日
(31)【優先権主張番号】201410698074.7
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】310005618
【氏名又は名称】煙台首鋼磁性材料株式有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】彭 衆傑
(72)【発明者】
【氏名】賈 道寧
(72)【発明者】
【氏名】楊 昆昆
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−328927(JP,A)
【文献】 特開昭59−006760(JP,A)
【文献】 特公昭58−12821(JP,B2)
【文献】 特開2002−158105(JP,A)
【文献】 特開2003−293190(JP,A)
【文献】 特表2006−506039(JP,A)
【文献】 国際公開第01/095460(WO,A1)
【文献】 実開昭62−117069(JP,U)
【文献】 特開2014−027100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/00−7/02、41/00−41/02
H02K 1/17、1/27、15/03
C09J 1/00−5/10、9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジム磁石の絶縁接着方法であって、
前記ネオジム磁石の表面を脱脂し、活性化処理を行う工程と、
前記ネオジム磁石の接着を要する表面に、絶縁接着剤を1〜100μmの厚さで均一に塗布する工程と、
前記絶縁接着剤が塗布された前記ネオジム磁石をオーブンに入れ、20℃〜250℃の温度下で、0.1〜24時間放置して、前記絶縁接着剤を一次硬化処理する工程と、
前記一次硬化処理後の前記ネオジム磁石を、前記絶縁接着剤が対面するように複数個積層し、位置を固定した後、接着方向に0.1Mpa〜10Mpaの圧力を加える工程と、
押圧積層した状態の前記ネオジム磁石をオーブンに入れ、150℃〜350℃の温度下で、0.1〜12時間放置して、前記絶縁接着剤を二次硬化処理する工程と、
前記ネオジム磁石を室温まで冷却する工程と、を含む、
ことを特徴とするネオジム磁石の絶縁接着方法。
【請求項2】
接着後の前記ネオジム磁石に二次機械加工を行って目標の寸法に成形し、外表面に被膜層の形成を行う工程、更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム磁石の絶縁接着方法。
【請求項3】
前記ネオジム磁石は、焼結ネオジム磁石又は重希土類拡散後のネオジム磁石である、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム磁石の絶縁接着方法。
【請求項4】
前記重希土類はTb又はDyを含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のネオジム磁石の絶縁接着方法。
【請求項5】
前記表面の脱脂処理、前記活性化処理は、前記ネオジム磁石にリン酸塩処理を行った後、アルコール、ナフサ、アセトン、イソプロパノールを用いて、表面に腐食、油脂がなくなるまで洗浄、脱脂し、その後低温イオン洗浄を行い、表面活性化処理を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム磁石の絶縁接着方法。
【請求項6】
前記絶縁接着剤は熱硬化性樹脂である、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム磁石の絶縁接着方法。
【請求項7】
前記被膜層の形成方法は、吹付、刷毛塗り又はローラー塗布を含み、前記被膜層の厚さは8〜50μmである、
ことを特徴とする請求項2に記載のネオジム磁石の絶縁接着方法。
【請求項8】
積層されたネオジム磁石間の絶縁接着剤層の厚さは2〜200μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム磁石の絶縁接着方法。
【請求項9】
前記ネオジム磁石は2〜25片を積層して接着する、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム磁石の絶縁接着方法。
【請求項10】
前記二次機械加工は、ワイヤー切断、マルチワイヤー切断又はスライサ加工である、
ことを特徴とする請求項2に記載のネオジム磁石の絶縁接着方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のネオジム磁石の絶縁接着方法の実施に用いられる押圧装置であって、
磁石位置決め装置と、
前記磁石位置決め装置の中間に均等に設けられた中間ガイドレールと、
前記磁石位置決め装置の上下にそれぞれ設けられた上押圧板及び下押圧板を含み、
前記上押圧板には貫通孔が設けられ、前記貫通孔の位置は前記磁石位置決め装置と前記中間ガイドレールの位置に対応し、
前記磁石位置決め装置にはボルトが設けられ、前記ボルトは前記上押圧板の上方に位置する、
ことを特徴とする積層ネオジム磁石の押圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネオジム磁石の接着技術分野に関し、具体的にはネオジム磁石の絶縁接着方法及び当該方法の実施に用いられる押圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機械装置におけるネオジム磁石を使用したモータが増加しているが、高速回転する永久磁石モータにおいて、磁石の損耗はモータの安全な回転に影響を及ぼす一つの重要な要素となっている。例えば、ロータの放熱効果が劣化すると、高速回転時に磁石が発生する渦電流損失によってロータ温度が上昇し、永久磁石の磁気が失われてしまうため、磁石渦電流損失を低減するために、複数片のネオジム磁石を接着することにより、磁石の渦電流損失を減少させている。
【0003】
従来の磁石接着方法としては、ガラスビーズを接着剤に加えて混合した後、ネオジム磁石表面に塗布し、押圧装置に載置して押圧し、その後加熱することが一般的である。当該方法を用いる際の欠点は、ガラスビーズを加えることで接着剤の接着特性が低下することに加え、ガラスビーズは必ずしも寸法が統一されていないため、接着剤間の接着層の均一性を保証することが難しく、さらには接着継ぎ目が比較的大きくなり、磁石押圧過程において一部のガラスビーズがずれてしまうか、或いは粉砕するおそれがあり、継ぎ目間の絶縁性の保証が難しく、成功率が低く、最終的な絶縁試験(検査)を行わなければ磁石間が確実に絶縁しているか否かの判断ができない等の問題があった。
また、以下に示す特許文献も存在するが、いずれも接着後の絶縁性に課題を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−222137号公報
【特許文献2】特開2003−323048号公報
【特許文献3】特開平9−180934号公報
【特許文献4】特開平8−322174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記した従来技術が有する課題を解決し、新たなネオジム磁石の絶縁接着方法を提供することである。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、上記ネオジム磁石の絶縁接着方法を実施するための押圧装置を提供することである。
【0007】
本発明は主に、従来のネオジム磁石間の絶縁接着方法において、接着継ぎ目厚さの調整が困難であり、絶縁性が保証できないという問題を解決するものである。
【0008】
本発明は、ネオジム磁石の絶縁接着方法であって、前記ネオジム磁石の表面を脱脂し、活性化処理を行う工程と、前記ネオジム磁石の接着を要する表面に、絶縁接着剤を1〜100μmの厚さで均一に塗布する工程と、前記絶縁接着剤が塗布された前記ネオジム磁石をオーブンに入れ、20℃〜250℃の温度下で、0.1〜24時間放置して、前記絶縁接着剤を一次硬化処理する工程と、前記一次硬化処理後の前記ネオジム磁石を、前記絶縁接着剤が対面するように複数個積層し、位置を固定した後、接着方向に0.1Mpa〜10Mpaの圧力を加える工程と、押圧積層した状態の前記ネオジム磁石をオーブンに入れ、150℃〜350℃の温度下で、0.1〜12時間放置して、前記絶縁接着剤を二次硬化処理する工程と、前記ネオジム磁石を室温まで冷却する工程とを含む、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、接着後のネオジム磁石に二次機械加工を行って目標の寸法に成形し、外表面に被膜層の形成を行う工程を含む、ことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記ネオジム磁石は焼結ネオジム磁石又は重希土類拡散後のネオジム磁石である、ことを特徴とする。
【0011】
さらに、前記重希土類はTb又はDyを含む、ことを特徴とする。
【0012】
さらに、表面の脱脂処理、活性化処理はネオジム磁石にリン酸塩処理を行った後、アルコール、ナフサ、アセトン、イソプロパノールを用いて、表面に腐食、油脂がなくなるまで洗浄、脱脂し、その後低温イオン洗浄を行い、表面活性化を行う、ことを特徴とする。
【0013】
さらに、前記絶縁接着剤は熱硬化性樹脂である、ことを特徴とする。
【0014】
さらに、被膜層の形成は、刷毛塗り又はローラー塗布を含む、ことを特徴とする。
【0015】
さらに、積層されたネオジム磁石間の絶縁接着剤層の厚さは2〜200μmである、ことを特徴とする。
【0016】
さらに、前記ネオジム磁石は2〜25片を接着する、ことを特徴とする。
【0017】
さらに、前記二次機械加工は、ワイヤー切断、マルチワイヤー切断又はスライサ加工であり、前記被膜層の厚さは8〜50μmである、ことを特徴とする。
【0018】
本発明のネオジム磁石の絶縁接着方法の実施に用いられる押圧装置は、磁石位置決め装置と、前記磁石位置決め装置の中間に均等に設けられた中間ガイドレールと、前記磁石位置決め装置の上下にそれぞれ設けられた上押圧板及び下押圧板を含み、前記上押圧板には貫通孔が設けられ、前記貫通孔の位置は前記磁石位置決め装置と前記中間ガイドレールの位置に対応し、前記磁石位置決め装置にはボルトが設けられ、前記ボルトは前記上押圧板の上方に位置する、ことを特徴とする。
【0019】
本発明に係るネオジム磁石の絶縁接着方法及び当該方法を実施する押圧装置によれば、磁石と磁石が接触しないように一次硬化を経た絶縁接着剤層を積層することで確実な絶縁性を保証し、磁石の絶縁性能に対する信頼性を高め、また一次硬化を経た絶縁接着剤層の厚さを適宜に調整可能であり、その後の二次硬化処理によって確実に磁石同士を接着させ、従来技術と比較して、絶縁性能を高めることが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のネオジム磁石の絶縁接着を表す説明図である。
図2】本発明の押圧装置の構造を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明の実施例を図1図2に基づいて詳細に説明する。ここに挙げる実施例は本発明の解釈に用いられるものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0022】
図1は、本発明のネオジム磁石の絶縁接着を表す説明図である。
本願発明は、複数個のネオジム磁石を絶縁継ぎ目によって接着する際、継ぎ目の厚さを調整し、かつ確実な接着を実現するため、順次以下の工程を有するものである。
まず、接着対象とする四角形等に加工するネオジム磁石1を用意する。当該ネオジム磁石1は焼結ネオジム磁石又は重希土類拡散後のネオジム磁石であり、重希土類はTb又はDyである。
接着前の下処理として、磁石表面のリン酸塩処理後、可能な限り外界との接触を減らし、埃や油汚れによる汚染を防止する。次に、ネオジム磁石1をアルコール、ナフサ、アセトン、イソプロパノール等を含む脱脂溶液で複数回拭き、錆や油染みがなくなるまで拭き取り、低温プラズマ洗浄機に投入し、ガスを送る。ガスは、空気、アルゴンガス、窒素ガスのうちの一種であり、処理時間は≦10minであり、処理後、低温プラズマ洗浄機から取り出し、表面活性化処理を行う。
【0023】
上記の下処理が終わったネオジム磁石1は、以下の接着作業工程に移行する。まずネオジム磁石1を水平な状態に載置し、接着を要する表面に一層の絶縁接着剤を塗布する。絶縁接着剤はエポキシ樹脂、フェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂であり、単体で用いてもよく、或いは複数の樹脂を混合して用いてもよい。塗布方法は、吹付け、刷毛塗り又はローラーを採用することができる。絶縁接着剤層2の厚さは調整可能であり、通常、一度に塗布する厚さは1〜15μmであり、絶縁接着剤層2をより厚くしたい場合には、複数回塗布し、最大で100μm程度まで塗布する。
【0024】
絶縁接着剤の塗布が完了した後、ネオジム磁石1をオーブンに入れて、絶縁接着剤の一次硬化処理を行う。その際の温度は20℃〜250℃、処理時間は0.1〜24時間であり、この一次硬化処理により接着剤は凝固する(その厚さは1〜100μm程度)。これにより接着剤は流動せず、接着時の大きな押圧力によって、接着剤が過度に薄くなり、大量に溢れ出すことを防止できる。また押圧力が不均衡となり、ネオジム磁石同士が接触し、絶縁性に影響することを防止する。積層中間に位置する磁石は、片面に絶縁接着剤を塗布して一次硬化処理を行った後、もう片方の面にも絶縁接着剤を塗布し、同様の処理を行う。
【0025】
続いて、接着すべきネオジム磁石1を、絶縁接着剤が対面するように複数個積層する。積層するネオジム磁石1は2〜25片とすることができるが、それ以上であっても良い。積層したネオジム磁石を図2に示す押圧装置内に載置する。磁石位置決め装置4は、ネオジム磁石1同士が押圧過程で偏移する(ずれる)ことを防止するものであり、押圧装置の中間ガイドレール5は、主に押圧面の水平下降及び上昇を制御するものであり、押圧過程において応力が不均衡となり、一部分が接着し、他の一部分が接着しないことを防止するためのものである。当該中間ガイドレール5は、1個以上適宜に設置すれば良い。
【0026】
図2に示すように、押圧装置内にネオジム磁石1の載置が完了すると、上押圧板6を移動させてネオジム磁石1を押圧し、磁石位置決め装置4に設けたボルト3をトルクレンチによって締め付けて所定の押圧力を維持する。その際に磁石が受ける押圧力は、0.1Mpa〜10Mpaとすることが理想的である。押圧力が0.1Mpaより小さいと、絶縁接着剤層2同士が結合せず、逆に押圧力が10Mpaより大きいと、接着剤層の変形が大きくなる。上押圧板6には貫通孔が穿孔されており、貫通孔の位置はそれぞれ磁石位置決め装置4と中間ガイドレール5の位置に対応し、ボルト3は上押圧板6の上方に位置する。図中7は、下押圧板である。
【0027】
続いて、押圧積層された磁石が載置されたままの状態で押圧装置ごとオーブンに入れる。オーブン内の温度を150℃〜350℃、処理時間を0.1〜12時間に設定し、絶縁接着剤の二次硬化処理を行う。この温度下で接着剤は再び軟化を開始し、接着剤層同士が密着した部分で接着反応が生じることで、積層された磁石同士を接着することができる。接着剤はすでに一次硬化処理を経ているため、押圧及び加熱の過程において、それほど大きな変形や流動は発生せず、中間継ぎ目の寸法を良好に調整でき、接着されるネオジム磁石間の絶縁性を保証することができる。
【0028】
上記オーブン内で接着を終えたネオジム磁石を押圧装置ごと取り出し、室温まで冷却する。接着後のネオジム磁石は、未だ最終製品ではないため、これに更にワイヤー切断、マルチワイヤー切断或いはスライサを使用して二次機械加工を行い、加工後の磁石表面に厚さ8〜50μmの被膜層を形成して最終製品に仕上げる。被膜層の原料はエポキシ樹脂、フェノール樹脂等である。
【0029】
実施例1
以上説明した本願発明の方法と装置を用い、焼結ネオジム磁石の接着に適用する例を説明する。
焼結ネオジム磁石をリン酸塩処理した後、アルコール、ナフサ、アセトン及びイソプロパノールによって、表面に腐食や油脂がなくなるまで洗浄、脱脂した後、低温イオン洗浄を実施し、表面活性化処理を行う。焼結ネオジム磁石の接着を要する表面に絶縁接着剤を均一に塗布する。絶縁接着剤はエポキシ樹脂であり、絶縁接着剤の一次硬化処理の温度は20℃、処理時間は24時間、絶縁接着剤層の厚さは1μmである。2片のネオジム磁石を積層し、積層したネオジム磁石間の絶縁接着剤層の厚さは2μmである。押圧装置を使用して位置を固定し、接着方向に0.1Mpaの圧力を加え、さらに150℃、処理時間は12時間の二次硬化処理を行う。硬化終了後に室温まで冷却し、接着後のネオジム磁石を目標の寸法となるようワイヤーカット加工し、外表面に被膜層を形成する。被膜層の原料はエポキシ樹脂であり、被膜層の厚さは8μmである。
【0030】
実施例2
本願発明の方法と装置を用い、重希土類Tb拡散後のネオジム磁石の接着に適用する例を説明する。
重希土類Tb拡散後のネオジム磁石を、リン酸塩処理した後、アルコール、ナフサ、アセトン及びイソプロパノールによって、表面に腐食や油脂がなくなるまで洗浄、脱脂した後、低温イオン洗浄を実施し、表面活性化処理を行う。ネオジム磁石の接着を要する表面に刷毛塗りによって絶縁接着剤を均一に塗布する。絶縁接着剤はフェノール樹脂であり、絶縁接着剤の一次硬化処理の温度は135℃、処理時間は12時間であり、絶縁接着剤層の厚さは50μmである。12枚のネオジム磁石を積層し、積層したネオジム磁石間の絶縁接着剤層の厚さは100μmであり、押圧装置を使用して位置を固定し、接着方向に5Mpaの圧力を加え、250℃、処理時間は6時間の二次硬化処理を行う。硬化終了後に室温まで冷却し、接着後のネオジム磁石を目標の寸法となるようマルチワイヤーカット加工し、外表面に被膜層を形成する。被膜層の原料はフェノール樹脂であり、被膜層の厚さは29μmである。
【0031】
実施例3
本願発明の方法と装置を用い、重希土類Dy拡散後のネオジム磁石の接着に適用する例を説明する。
重希土類Dy拡散後のネオジム磁石を、リン酸塩処理した後、アルコール、ナフサ、アセトン及びイソプロパノールによって、表面に腐食や油脂がなくなるまで洗浄、脱脂してから、低温イオン洗浄を実施し、表面活性化処理を行う。ネオジム磁石の接着を要する表面に、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を混合した絶縁接着剤を均一にローラー塗布し、絶縁接着剤の一次硬化処理の温度は250℃、処理時間は0.1時間であり、絶縁接着剤層の厚さは100μmである。25片のネオジム磁石を積層し、積層したネオジム磁石の絶縁接着剤層の厚さは200μmであり、押圧装置を使用して位置を固定し、接着方向に10Mpaの圧力を加え、350℃、処理時間は0.1時間の二次硬化処理を行う。硬化終了後に室温まで冷却し、接着後のネオジム磁石を目標の寸法となるようスライサ加工し、外表面に被膜層を形成する。被膜層の原料はフェノール樹脂であり、被膜層の厚さは50μmである。
【0032】
以上、本発明に係るネオジム磁石の絶縁接着方法及び当該方法を実施する押圧装置によれば、磁石表面の絶縁接着剤を、一次硬化を経た後に積層し、積層後の二次硬化によって確実な絶縁性と接着を実現することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ネオジム磁石
2 絶縁接着剤層
3 ボルト
4 磁石位置決め装置
5 中間ガイドレール
6 上押圧板
7 下押圧板
図1
図2