特許第6207106号(P6207106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207106触媒担体及びその製造方法、並びに排気浄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207106
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】触媒担体及びその製造方法、並びに排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20170925BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20170925BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20170925BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20170925BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B01J35/04 351
   B01D53/94 300
   F01N3/24 EZAB
   F01N3/28 301U
   F01N3/035 A
   B01J35/04 311Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-70225(P2016-70225)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-177033(P2017-177033A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年8月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良明
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−121838(JP,A)
【文献】 特開昭56−097518(JP,A)
【文献】 特開昭63−315152(JP,A)
【文献】 特開昭53−066869(JP,A)
【文献】 特開2002−321071(JP,A)
【文献】 特許第5363406(JP,B2)
【文献】 特開2016−109106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/73,53/86−53/90,53/94,53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の金網が積層されて焼結された金網積層多孔体で構成され、触媒物質を分散担持する触媒担持フィルターと、
前記触媒担持フィルターが内装される金属製の外筒とを備え、
前記触媒担持フィルターの外周端が前記外筒の内周面に略当接するように形成され、
前記触媒担持フィルターの厚さ方向の中間で周回する中間領域にて、前記触媒担持フィルターの外周端に位置する針金の端面が当接する前記外筒の内周面に溶着されている
ことを特徴とする触媒担体。
【請求項2】
前記中間領域で、前記触媒担持フィルターの外周端に位置する針金の端面が当接する前記外筒の内周面に溶着される溶着部が全周に亘って設けられていることを特徴とする請求項1記載の触媒担体。
【請求項3】
前記触媒担持フィルターの3枚以上の前記金網が積層されて構成される金網層のうち中間層である一層の金網の波高と位置が、前記中間領域に略対応することを特徴とする請求項1又は2記載の触媒担体。
【請求項4】
複数個の前記触媒担持フィルターが前記外筒の軸方向に並べて設けられることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の触媒担体。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の触媒担体の製造方法であって、
複数枚の金網が積層されて焼結され触媒物質を分散担持する触媒担持フィルターを外筒に内装し、前記触媒担持フィルターの外周端を前記外筒の内周面に略当接させる第1工程と、
前記触媒担持フィルターの厚さ方向の中間で周回する中間領域に対応する前記外筒の領域にて外側からレーザー貫通溶接を施し、前記触媒担持フィルターの外周端に位置する針金の端面を前記外筒の内周面に溶着する第2工程と
を備えることを特徴とする触媒担体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の触媒担体の製造方法であって、
複数枚の金網が積層されて焼結された金網積層多孔体を外筒に内装し、前記金網積層多孔体の外周端を前記外筒の内周面に略当接させる第1工程と、
前記金網積層多孔体の厚さ方向の中間で周回する中間領域に対応する前記外筒の領域にて外側からレーザー貫通溶接を施し、前記金網積層多孔体の外周端に位置する針金の端面を前記外筒の内周面に溶着する第2工程と
を備えることを特徴とする触媒担体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4の何れかに記載の触媒担体が内燃機関の排気経路の離間した複数箇所に設けられることを特徴とする排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動四輪車や自動二輪車の内燃機関で発生した排気の浄化処理に係り、排気中の有害物質を触媒反応で除去する触媒担体及びその製造方法、並びに排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関で発生した排気中に含まれる窒素酸化物等の有害物質の除去に、触媒反応によって除去する触媒担体が用いられている。触媒担体には、ステンレス製の金属板で形成されたハニカム構造体に触媒物質を担持させたものが多く用いられており、例えば特許文献1には、フェライト系耐熱ステンレスの帯状の金属薄板と金属波板を重ねて螺旋状に巻き付けて円柱状のハニカム構造体を形成し、ハニカム構造体の表面に触媒物質を担持させ、触媒物質を担持したハニカム構造体を円筒状の外筒内に挿入した状態とし、このハニカム構造体の両側の外端縁をそれぞれ外筒にレーザー溶接して固定する触媒担体が開示されている。
【0003】
このハニカム構造体による触媒担体では、有害物質の充分な除去に必要な触媒反応を得るために、触媒物質を担持したハニカム構造体の排気が流通する直線流路を長くする必要がある。そのため、この触媒担体は直線的な厚さやサイズが大きいものとなってしまい、排気経路における設置場所がかなり制約される。
【0004】
また、触媒担体の厚さを小さくできる可能性のあるものとして、特許文献2の金網積層多孔体がある。この金網積層多孔体は、複数枚の金網が積層されて焼結された多孔体であり、例えばその表面に触媒物質を分散担持したアルミナ薄層が形成されて触媒担持フィルターとされる。特許文献2の金網積層多孔体或いは触媒担持フィルターは、排気の通過する流路を三次元にわたる曲線状にして排気と触媒物質の接触性を高められ、触媒物質を担持したハニカム構造体よりも厚さを大幅に薄くすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−197519号公報
【特許文献2】特許第5363406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献2の触媒担持フィルターを外筒に内装、固定して触媒担体とする場合、複数枚の金網が積層されて焼結された触媒担持フィルター或いは金網積層多孔体を外筒の内空断面の形状とサイズに合わせて切断し、切断した形状の触媒担持フィルター或いは金網積層多孔体を外筒内に挿入して溶接することが必要になるが、切断した形状の触媒担持フィルター或いは金網積層多孔体の外周端は、金網を構成する針金の切断で形成された端面がランダムに配置された状態となる。そのため、触媒担持フィルターの外周端を外筒に高強度で溶接された状態とすることにはかなりの困難を伴う。更に、この触媒担持フィルター或いは金網積層多孔体の外周端を外筒に溶接する際には、触媒担持フィルター或いは金網積層多孔体の溶接による溶け落ちや熱変形を防止し、触媒担持フィルター或いは金網積層多孔体の形状を保持することも求められる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、複数枚の金網が積層されて焼結された触媒担持フィルター又は金網積層多孔体の溶接による溶け落ちや熱変形を防止して形状を保持することができると共に、針金の端面がランダムに配置された触媒担持フィルターの外周端を外筒に高強度で溶着された状態にすることができる触媒担体及びその製造方法、並びに排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の触媒担体は、複数枚の金網が積層されて焼結された金網積層多孔体で構成され、触媒物質を分散担持する触媒担持フィルターと、前記触媒担持フィルターが内装される金属製の外筒とを備え、前記触媒担持フィルターの外周端が前記外筒の内周面に略当接するように形成され、前記触媒担持フィルターの厚さ方向の中間で周回する中間領域にて、前記触媒担持フィルターの外周端に位置する針金の端面が当接する前記外筒の内周面に溶着されていることを特徴とする。
これによれば、触媒担持フィルターの中間領域で溶着することにより、複数枚の金網が積層されて焼結された触媒担持フィルター又は金網積層多孔体の溶接による溶け落ちや熱変形を防止し、触媒担持フィルターの形状が保持された触媒担体とすることができる。また、中間領域にて、針金の端面がランダムに配置された触媒担持フィルターの外周端を外筒の内周面に高強度で溶着された状態にすることができ、排気浄化装置に搭載したときに熱、振動、排圧などで壊れない十分な強度を得ることができる。また、複数枚の金網が積層されて焼結され、触媒物質を分散担持する触媒担持フィルターが高強度で固定された触媒担体とすることで、既存のハニカム構造体による触媒担体よりも触媒担体の長さを大幅に小さくすることができ、排気経路における設置場所の自由度、柔軟性を高めることができる。
【0009】
本発明の触媒担体は、前記中間領域で、前記触媒担持フィルターの外周端に位置する針金の端面が当接する前記外筒の内周面に溶着される溶着部が全周に亘って設けられていることを特徴とする。
これによれば、触媒担持フィルターと外筒の固定により高い強度が求められる場合に対応し、針金の端面がランダムに配置された触媒担持フィルターの外周端を外筒の内周面により高い強度で溶着された状態にすることができる。
【0010】
本発明の触媒担体は、前記触媒担持フィルターの3枚以上の前記金網が積層されて構成される金網層のうち中間層である一層の金網の波高と位置が、前記中間領域に略対応することを特徴とする。
これによれば、中間層である特定の金網層の波高に対応して溶着することにより、触媒担持フィルターのランダムに配置された針金の端面を高い確実性で外筒の内周面に溶着することができ、溶着による固定強度を一層高めることができる。
【0011】
本発明の触媒担体は、複数個の前記触媒担持フィルターが前記外筒の軸方向に並べて設けられることを特徴とする。
これによれば、触媒担体の浄化性能を高めることができると共に、必要に応じて柔軟に触媒担体の浄化性能を設定することができる。
【0012】
本発明の触媒担体の製造方法は、本発明の触媒担体を製造する方法であって、複数枚の金網が積層されて焼結され触媒物質を分散担持する触媒担持フィルターを外筒に内装し、前記触媒担持フィルターの外周端を前記外筒の内周面に略当接させる第1工程と、前記触媒担持フィルターの厚さ方向の中間で周回する中間領域に対応する前記外筒の領域にて外側からレーザー貫通溶接を施し、前記触媒担持フィルターの外周端に位置する針金の端面を前記外筒の内周面に溶着する第2工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、レーザー貫通溶接により、触媒担持フィルターのランダムに配置された針金の端面を高い確実性で外筒の内周面に溶着することができ、溶着による固定強度を一層高めることができる。また、触媒担持フィルターの溶接による溶け落ちや熱変形の防止、触媒担持フィルターの形状の保持の確実性をより高めることができる。
【0013】
本発明の触媒担体の製造方法は、本発明の触媒担体を製造する方法であって、複数枚の金網が積層されて焼結された金網積層多孔体を外筒に内装し、前記金網積層多孔体の外周端を前記外筒の内周面に略当接させる第1工程と、前記金網積層多孔体の厚さ方向の中間で周回する中間領域に対応する前記外筒の領域にて外側からレーザー貫通溶接を施し、前記金網積層多孔体の外周端に位置する針金の端面を前記外筒の内周面に溶着する第2工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、レーザー貫通溶接により、触媒物質を担持させる前の金網積層多孔体のランダムに配置された針金の端面を高い確実性で外筒の内周面に溶着することができ、溶着による固定強度を一層高めることができる。また、触媒物質を担持させる前の金網積層多孔体の溶接による溶け落ちや熱変形の防止、金網積層多孔体の形状の保持の確実性をより高めることができる。
【0014】
本発明の排気浄化装置は、本発明の触媒担体が内燃機関の排気経路の離間した複数箇所に設けられることを特徴とする。
これによれば、本発明の触媒担体の効果を有する排気浄化装置を得ることができると共に、例えば一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害物質の種類に合わせて各々の触媒担体の触媒物質を調整し、各々の触媒担体をそれぞれの有害物質がより触媒反応を起こしやすい場所に設置し、全体的な浄化性能を高めることも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数枚の金網が積層されて焼結された触媒担持フィルター又は金網積層多孔体の溶接による溶け落ちや熱変形を防止して形状を保持することができると共に、針金の端面がランダムに配置された触媒担持フィルターの外周端を外筒に高強度で溶着された状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明による第1実施形態の触媒担体の正面図、(b)はそのA−A縦断面図。
図2図1のB部拡大説明図。
図3】(a)は第1実施形態の触媒担体の触媒担持フィルターを構成する金網の部分縦断説明図、(b)は第1実施形態の触媒担体の触媒担持フィルターの部分縦断説明図。
図4】(a)は第1実施形態の触媒担体の触媒担持フィルターの側面図、(b)はそのC部拡大図、(c)はそのC部における溶着状態を説明する説明図。
図5】(a)は本発明による第2実施形態の触媒担体の斜視説明図、(b)は本発明による第3実施形態の触媒担体の斜視説明図、(c)は本発明による第4実施形態の触媒担体における触媒担持フィルターと筒半体を示す斜視説明図。
図6】試験例の触媒担体の縦断説明図。
図7】レーザー溶接条件を異ならせた試験例の触媒担体に対して押し抜き荷重試験を行った結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態の触媒担体及びその製造方法〕
本発明による第1実施形態の触媒担体1は、図1及び図2に示すように、触媒物質を分散担持する触媒担持フィルター2と、触媒担持フィルター2が内装される金属製の外筒3を備える。触媒担持フィルター2は、複数枚の金網20が積層されて焼結された金網積層多孔体で構成されており、図示例では、5枚の金網20が5層に積層されて焼結されることで金網積層多孔体が形成され、この金網積層多孔体に触媒物質が分散担持されている。
【0018】
触媒担持フィルター2の外周端は、外筒3の内周面31に略当接するように形成されている。図示例における外筒3は、ステンレス等の金属で略円筒形の短筒状に形成され、その板厚はt2である。そして、略円形の触媒担持フィルター2の外周端の外径は外筒3の内径と略同一に形成され、外筒3の内周面31に略当接するようになっている。また、図示例では、触媒担持フィルター2は外筒3の長さ方向における略中間位置に内挿して配置されている。
【0019】
触媒担持フィルター2は、例えば針金の周期的な繰り返しパターンの波長λ、最大の厚さに相当する針金の繰り返しパターンの波高hの略矩形の金網20a(図3(a)参照)を互いの凹凸が入り込むようにして積層層n=5で積層し、積層された略矩形の金網20aを円形に切断して形成され、その厚さt1は波高h×積層数nよりも小さくなっている(図2図3(b)参照)。金網20aを円形に切断して形成された略円形の金網20で構成される略円形の触媒担持フィルター2では、その外周端の位置で切断面である針金の端面21が露出しており、この針金の端面21が外筒3の内周面31に略当接される。
【0020】
触媒担持フィルター2は、図4に示すように、その厚さ方向の中間で周回する中間領域45にて、触媒担持フィルター2の外周端に位置する針金の端面21が当接する外筒3の内周面31に溶着部42で溶着されている。本実施形態では、中間領域45で、触媒担持フィルター2の外周端に位置する針金の端面21が当接する外筒3の内周面31に溶着される溶着部42が全周に亘って設けられており、外周端で露出し且つ中間領域45内に位置する部分で、外筒3の内周面31に当接する針金の端面21が溶着部42でランダムに外筒3の内周面31に溶着されている。尚、中間領域45で、針金の端面21以外の金網20の部分が当接する外筒3の内周面31に溶着された部分が、針金の端面21の溶着部42と併存する構成としてもよい。
【0021】
この中間領域45は、触媒担持フィルター2の3枚以上の複数の金網20が積層されて構成される金網層のうち、中間層である一層の金網20の波高hと位置に略対応させると好適であり、図示例における中間領域45は、金網20が5層に積層された金網層のうち、中央に位置する3層目の金網20の波高hと位置に略対応するように設定され、中間領域45の幅Wは金網20の波高hと略同一になっている。そして、3層目の金網20と略対応する中間領域45内で外筒3の内周面31に当接する触媒担持フィルター2の針金の端面21、或いは端面21の一部が、溶着部42で外筒3の内周面31に溶着されている。
【0022】
また、図1図2中の41は溶接ビードであり、触媒担持フィルター2の針金の端面21或いは端面21の一部と外筒3の内周面31を溶着部42で溶着する際に、外筒3の外側からレーザー貫通溶接を施した際に形成されたものである。溶接ビード41の外筒3の内周面31の幅は中間領域45の幅Wと略対応しており、外筒3の内周面31の溶接幅が中間領域45の幅Wになるようにしてレーザー貫通溶接が施されている。
【0023】
第1実施形態の触媒担体1を製造する際には、例えば複数枚の金網20が積層されて焼結され触媒物質を分散担持する触媒担持フィルター2を外筒3に内装し、外筒3内の所定位置で触媒担持フィルター2の外周端を外筒3の内周面31に略当接させる工程を行った後、触媒担持フィルター2の厚さ方向の中間で周回する中間領域45に対応する外筒3の領域にて外側からレーザー貫通溶接を施し、触媒担持フィルター2の外周端に位置する針金の端面21を外筒3の内周面31に溶着する工程を行って製造する。
【0024】
また、触媒担体1を製造する別の製造例として、触媒物質を分散担持する前の状態である複数枚の金網20が積層されて焼結された金網積層多孔体を外筒3に内装し、外筒3内の所定位置で金網積層多孔体の外周端を外筒3の内周面31に略当接させる工程を行った後、金網積層多孔体の厚さ方向の中間で周回する中間領域45に対応する外筒3の領域にて外側からレーザー貫通溶接を施し、金網積層多孔体の外周端に位置する針金の端面31を外筒3の内周面31に溶着する工程を行って製造する。この別の製造例では、その後の工程で、例えば外筒3の内周面31と併せて金網積層多孔体に触媒物質を分散担持させる工程を行い、金網積層多孔体を触媒担持フィルター2にする。
【0025】
第1実施形態の触媒担体1における触媒担持フィルター2は、複数の金網20の積層状態における厚さt1が例えば3mm〜20mm程度、図示例では3mm〜6mm程度で薄く、又、外筒3の長さは例えば触媒担持フィルター2の厚さt1+排気管との接合に必要な長さα以上であればよいことから、外筒3の長さ、換言すれば触媒担体1の長さも非常に短尺にすることが可能である。従って、触媒担体1を内燃機関の排気経路に集約して一カ所に設けて排気浄化装置を構成することの他、触媒担体1を内燃機関の排気経路の離間した複数箇所に設けて排気浄化装置を構成することも可能であり、これにより、例えば一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害物質の種類に合わせて各々の触媒担体1の触媒物質を調整し、各々の触媒担体1をそれぞれの有害物質がより触媒反応を起こしやすい場所に設置し、全体的な浄化性能を高めることも可能となる。
【0026】
第1実施形態によれば、触媒担持フィルター2の中間領域45で溶着することにより、複数枚の金網20が積層されて焼結された触媒担持フィルター2又は金網積層多孔体の溶接による溶け落ちや熱変形を防止し、触媒担持フィルター2の形状が保持された触媒担体1とすることができる。これに対して、触媒担持フィルター2の厚さt1に対応する幅を溶接幅として溶着した場合や、触媒担持フィルター2の厚さ方向の一方の端面が含まれる領域で溶着した場合には、溶け落ちや熱変形が発生して触媒担持フィルター2の形状を保持することが困難となる。
【0027】
また、中間領域45にて、針金の端面21がランダムに配置された触媒担持フィルター2の外周端を外筒3の内周面31に高強度で溶着された状態にすることができ、排気浄化装置に搭載したときに熱、振動、排圧などで壊れない十分な強度を得ることができる。また、複数枚の金網20が積層されて焼結され、触媒物質を分散担持する触媒担持フィルター2が高強度で固定された触媒担体1とすることで、既存のハニカム構造体による触媒担体よりも触媒担体1の長さを大幅に小さくすることができ、排気経路における設置場所の自由度、柔軟性を高めることができる。
【0028】
また、中間領域45で触媒担持フィルター2の外周端に位置する針金の端面21を当接する外筒3の内周面31に全周に亘って溶着することにより、触媒担持フィルター2と外筒3の固定により高い強度が求められる場合に対応し、針金の端面21がランダムに配置された触媒担持フィルター2の外周端を外筒3の内周面31により高い強度で溶着された状態にすることができる。また、中間層である特定の金網層の金網20の波高hに対応して溶着することにより、触媒担持フィルター2のランダムに配置された針金の端面21を高い確実性で外筒3の内周面31に溶着することができ、溶着による固定強度を一層高めることができる。
【0029】
また、上記レーザー貫通溶接による製造例によれば、触媒担持フィルター2或いは触媒物質を担持させる前の金網積層多孔体のランダムに配置された針金の端面21を高い確実性で外筒3の内周面31に溶着することができ、溶着による固定強度を一層高めることができる。更に、触媒担持フィルター2或いは触媒物質を担持させる前の金網積層多孔体の溶接による溶け落ちや熱変形の防止、形状の保持の確実性をより高めることができる。
【0030】
〔第2〜第4実施形態の触媒担体及びその製造方法〕
本発明による第2実施形態の触媒担体1aは、図5(a)に示すように、触媒担持フィルター2が外筒3の長さ方向における一方の端部近傍に内装され、その厚さ方向の中間で周回する中間領域にて、触媒担持フィルター2の外周端に位置する針金の端面が当接する外筒3の内周面に溶着部42aで溶着されている。溶着部42aは外筒3の内周面の周方向に所定角度毎に設けられ、図示例では周方向に60度に亘って設けられ、3個の弧状の溶着部42aが60度離間して設けられている。第2実施形態の触媒担体1aのその他の構成は第1実施形態と同様であり、又、触媒担体1aは第1実施形態と同様の製造例で製造することができる。
【0031】
第2実施形態の触媒担体1aでは、第1実施形態の触媒担体1ほどの触媒担持フィルター2と外筒3の固定強度が求められない場合に、所要の固定強度を得つつ、溶接作業の効率化、製造コストの低減を図ることができる。その他、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0032】
また、本発明による第3実施形態の触媒担体1bは、図5(b)に示すように、複数個の触媒担持フィルター2が外筒3の軸方向に並べて設けられている。図示例では、触媒担持フィルター2が外筒3の長さ方向における一方の端部近傍に内装され、これと隣接或いは近接して連続するように触媒担持フィルター2、2が並設されて外筒3に内装され、合計3個の触媒担持フィルター2が外筒3に内装されている。それぞれの触媒担持フィルター2は、各々の厚さ方向の中間で周回する中間領域にて、触媒担持フィルター2の外周端に位置する針金の端面が当接する外筒3の内周面に溶着され、溶着部42で全周に亘って設けられている。第3実施形態の触媒担体1bのその他の構成は第1実施形態と同様であり、又、触媒担体1bは、例えば触媒担持フィルター2或いは金網積層多孔体を並べるように配置して外筒3に内装する工程後に、それぞれの触媒担持フィルター2或いは金網積層多孔体に対してレーザー貫通溶接で溶着する工程を行い、第1実施形態の製造例を応用して製造することができる。
【0033】
第3実施形態の触媒担体1bでは、触媒担持フィルター2を複数並置することで浄化性能を高めることができると共に、触媒担持フィルター2の個数を調整して必要に応じて柔軟に触媒担体1bの浄化性能を設定することができる。その他、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0034】
また、本発明による第4実施形態の触媒担体は、図5(c)に示すように、第3実施形態と同様に複数個の触媒担持フィルター2が外筒3の軸方向に並べて設けられていると共に、その外筒が筒半体32cと筒半体33cを合わせて構成され、例えば筒半体32cの一方の端部と他方の端部、筒半体33cの一方の端部と他方の端部をそれぞれ重ね合わせ、重ね合わせ部分で溶接して接合することにより外筒が形成される。その他の構成は第3実施形態と同様であり、又、第4実施形態の触媒担体は、例えば触媒担持フィルター2或いは金網積層多孔体を並べるように配置して筒半体32c、33cを合わせて外筒3に内装する工程を行い、第3施形態の製造例を応用して製造することができる。第4実施形態は、第3実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0035】
〔触媒担体の押し抜き荷重試験〕
次に、試験例の触媒担体1mによる押し抜き荷重試験について説明する。試験例の触媒担体1mは、図6に示すように、単数の触媒担持フィルター2が外筒3の長さ方向における一方の端部近傍に内装されている。そして、触媒担持フィルター2を外筒3に溶着しない試験例の触媒担体1mの他は、溶着した試験例の触媒担体1mでは、その厚さ方向の中間で周回する中間領域にて、触媒担持フィルター2の外周端に位置する針金の端面が当接する外筒3の内周面に溶着部で溶着されており、溶着部と溶接ビード41が外筒3の全周に亘って設けられている。
【0036】
試験例の触媒担体1mは、SUS436のステンレス製で、外筒の板厚t2=0.8mm、外筒の長さL1=25mm、外筒の内径D=50.5mmである。試験例の触媒担体1mにおける触媒担持フィルター2は、金網20を5層に積層した厚さt1=4.9mmで、縦6メッシュで横12メッシュの金網20が用いられ、金網20を構成する針金の線径が0.58mmとなっている。
【0037】
また、試験例の触媒担体1mの溶着部の形成はレーザー貫通溶接で行い、レーザー貫通溶接時のレーザー溶接機の加工ヘッドの駆動速度を3.0m/minとし、シールドガスにはArガスを用いて噴射量を15L/minとした。そして、外筒3の内周面における溶接位置と溶接幅が触媒担持フィルター2の5層の真ん中の金網20の位置と波高h=1.16mmに対応するように調整してレーザー貫通溶接を施した。レーザー溶接時の出力は、1.2kw、1.35kw、1.5kwとし、1.2kwによる触媒担体1mは2個作製した。
【0038】
そして、溶着無しの触媒担体1mと、1.2kwの2個の触媒担体1mと、1.35kwの触媒担体1m、1.5kwの触媒担体1mについて、一方の端部側を上側にして触媒担持プレート2に荷重プレート50を載せて押し抜き荷重試験を行った。
【0039】
図7の試験結果のグラフから、2個の1.2kwの触媒担体1m・1m、1.35kwの触媒担体1m、1.5kwの触媒担体1mのいずれにおいても、押し抜くまでに7kN超の荷重が必要であり、触媒担持フィルター2と外筒3との溶着に十分な固定強度が得られていることが分かる。
【0040】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や各実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものである。そして、下記変形例も包含する。
【0041】
例えば本発明における触媒担持フィルターの厚さ方向の中間で周回する中間領域は、触媒担持フィルターの厚さ方向の両側端面よりも内側に位置する適宜の領域とすることが可能である。但し、触媒担持フィルターを構成する複数層の金網のうち、厚さ方向の両側の端部に位置する金網よりも内側に位置する金網の層を中間領域とすることが好ましく、例えば5層に金網20を積層した触媒担持フィルター2において、2層目、3層目、4層目の金網20の積層部分で、2層目の金網20の外端から4層目の金網20の外端までの幅と位置を中間領域としてもよい。
【0042】
また、第3実施形態の触媒担体1bで、軸方向に並べる触媒担持フィルター2の個数は複数個であれば適宜である。また複数個の触媒担持フィルター2を並べて触媒担体1bを構成する場合に、触媒担持フィルター2・2相互に間隔が開いて設けられる構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、内燃機関の排気経路に設置される触媒担体や排気浄化装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1、1a、1b、1m…触媒担体 2…触媒担持フィルター 20、20a…金網 21…針金の端面 3…外筒 31…内周面 32c、33c…筒半体 41…溶接ビード 42、42a…溶着部 45…中間領域 50…荷重プレート t1…触媒担持フィルターの厚さ t2…外筒の板厚 L1…外筒の長さ D…外筒の内径 h…金網の波高 λ…金網の波長 W…中間領域の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7