(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、核酸はpH3から8で結合する。この情報は、結合の間のpH、したがって試料中のpHに関する。固相の設計に応じて、本発明による方法は、極めて穏やかな条件で実施することもでき、したがってpH4から7.5、好ましくは5から7.5、特に好ましくは5から7、極めて特に好ましくは6.5から7で、したがって実質的に中性範囲で核酸を結合させることができる。核酸結合相のプロトン化可能な基が9から12のpKaを有することから、前記基は、比較的中性のpH値でも、核酸の有効な結合を可能にするのに十分な陽電荷を有する。したがって、結合を極めて穏やかな条件下で実施することができ、核酸を損傷から防ぐことができる。
【0012】
さらに、低塩濃度で結合を実施することが有利であることが判明した。したがって、一実施形態によれば、塩濃度は核酸と核酸結合相の結合の間に1M未満である。好ましくは、塩濃度は0.5M未満、0.25M未満、さらには0.1M未満でさえある。核酸と固相の結合を最適化するために、低塩濃度が好ましい。高過ぎるイオン濃度は、核酸と核酸結合相のイオン性相互作用に悪影響を及ぼす。本発明者らは、結合バッファーが、例えば、炭水化物、例えば、エタノール、メタノールなどのアルコール、又はアセトン及びアセトニトリドなどのある量の有機物質を含むこともできることを見いだした。これらの物質は、結合を損なわない。
【0013】
本方法の別の重要な一工程は、核酸の溶出である。説明したように、核酸は、結合pHを超えるpHで放出される。その結果、プロトン化可能な基は、溶出の間に、より小さい陽電荷を有し、これは、核酸の放出(freisetzung)を促進する。さらに、溶出の間のpHは、核酸結合相のプロトン化可能な基の少なくとも1個のpKaより少なくとも1pH単位低い。この結果、上で示したように、溶出を特に穏やかな条件下で実施することができる。
【0014】
使用する核酸結合基又は核酸結合相に応じて、溶出は、好ましくは、pH7.5から11、7.5から10、好ましくはpH8から9、又は8.2から8.8で実施される。これらの低pH値は、核酸が特に穏やかに放出されるので、特に有利な結果をもたらす。核酸を低pHで特に効率的に放出することができる更なる手段(massnahmen)を以下に記述する。
【0015】
単離核酸を溶出バッファー中で即座に更に処理できるようにするために、溶出バッファーは、好ましくは低塩濃度を有する。したがって、一実施形態によれば、塩濃度は、1M未満、好ましくは0.5M未満、0.25M未満、0.1M未満、特に好ましくは50mM未満、25mM未満、または10mM未満でさえある。適切な塩は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属又はアンモニウムの塩化物、鉱酸の他の塩、酢酸塩、ホウ酸塩、及びTris、Bis−Trisなどの化合物、及び例えば、MES、CHAPS、HEPESなどの有機バッファー、などとすることができる。さらに、溶出に適切な物質は、従来技術に開示されている。
【0016】
精製を容易にするために、好ましくは少なくとも1回の洗浄工程が、核酸の結合後かつ核酸の溶出前に実施される。洗浄のために、低塩濃度の水溶液を使用することが好ましいが、水の使用も好ましい。洗浄バッファー中に存在する塩は、濃度400mM未満、特に好ましくは200mM未満、100mM未満、50mM未満、及び/又はさらには25mM未満であることが好ましい。洗浄バッファーは、有機成分、例えば、アルコール、ポリオール、ポリエチレングリコール、アセトン、アセトニトリド又は炭水化物を含むことができる。しかし、洗浄バッファーは、例えば、酵素プロセシング、増幅反応などの、あとに続く適用(「下流の」適用)を損なわないようにするため、干渉量の対応する有機成分を含まないようににすることができる。
【0017】
本発明によって使用される核酸結合相は、固体又は可溶性とすることができる。可溶性核酸結合相は、通常、核酸を結合pHで沈殿させ、結合核酸を溶出pHで沈殿から再度放出する。可溶性核酸結合相又は可溶性核酸結合ポリマーは、従来技術、例えばEP0707077に記載されている。
【0018】
好ましい実施形態によれば、核酸結合相は固相である。調製に関して、プロトン化可能な基は、例えば固体支持体材料に結合させることができる。詳細を本明細書の以下に記述する。固相の使用は、試料からの結合核酸の除去を促進する。したがって、一実施形態によれば、核酸の結合に続いて固相が除去される。
【0019】
一実施形態によれば、プロトン化可能な基は、イオン交換体、好ましくは陰イオン交換体であり、又はイオン交換体、好ましくは陰イオン交換体を有する。核酸の結合に適することが判明した好ましいプロトン化可能な基は、アミノ基であり、第一級及び第二級アミノ基が好ましい。アミノ基は、好ましくは、pKaが9から12、好ましくは10から12を有する。核酸結合基は、好ましくは、1から10、特に好ましくは2から8、特に2から6個のアミノ基を有する。好ましい核酸結合基の例は、第一級モノアミン及びポリアミン、第二級モノアミン及びポリアミン、及び、第三級モノアミン及びポリアミンである。これらは、置換されていても、置換されていなくてもよい。例は、特に次式のアミンである。
【0020】
【化1】
式中、
n、m、o、p、q、r及びsは、互いに独立して、2から8までであり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、同一又は異なり、H、(分枝又は非分枝)アルキル及びアリールからなる群から選択される。
【0021】
好ましい核酸結合基は、特にN−プロピル−1,3−プロパンジアミン及びペンタエチレンヘキサミン、そしてまさしく特別にはスペルミン及びスペルミジンである。
【0022】
さらに、環式アミン、芳香族アミン、又はアミノ官能化複素環(aminofunktionalisierte heterozyklen)を使用することもできる。アミンは、置換基、例えば、アルキル置換基、アルケニル置換基、アルキニル置換基又は芳香族置換基を有することができ、さらに炭化水素鎖は環に閉じることもできる。炭化水素鎖は、酸素、窒素、硫黄、ケイ素などのヘテロ原子、又は分枝を有することもできる。
【0023】
別の適切な核酸結合基は、3個のアミノ基のうちの1、2個を有するポリオキシアルキレンアミンである。これらは、例えば、「Jeffamine」ポリオキシアルキレンアミンの名称で利用可能である。Jeffamineは、ポリエーテル骨格末端に結合した第一級アミノ基を含む。ポリエーテル骨格は、プロピレンオキシド、エチレンオキシド又はその混合物に基づくことができる。別の骨格セグメントの使用もあり得る。
【0024】
上述したように、アミンのアミノ基は、pKa値が9から12、好ましくは10から12を有する。
【0025】
本発明によれば、対応する核酸結合基の混合物を使用することもでき、又はそれを支持体に適用することもできる。
【0026】
例えばアミンなどの核酸結合基は、支持体に共有結合で、又は静電相互作用によって、極性相互作用によって若しくは疎水性相互作用によって、結合することができる。それらは、1(例えば、N−プロピル−1,3−プロパンジアミン)から10、好ましくは2から8、特に好ましくは2から6個のアミノ基が結合基1個当たり1個のプロトン化可能な基を介して存在するように連結することが好ましい。
【0027】
好ましくは、核酸結合基のアミノ基は、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、C−C二重結合を有する基、β−ヒドロキシエチル基などの電子密度低減基(elektronendichte verringernden gruppe)と結合しておらず、その結果、そのpKaは9から12である。電子密度低減基との結合は、アミノ官能基及び対応する電子密度低減基がわずか3個、2個またはそれ未満の炭素原子を介して結合している場合に、存在するとみなされる。
【0028】
好ましい一実施形態によれば、核酸結合基は、核酸精製に使用される固体核酸結合相用支持体に結合している。適切な核酸結合基用支持体の例は、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアクリラート、およびポリメタクリラート、及びその誘導体、又はポリウレタン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、及びこれらの材料のコポリマーなどの有機ポリマーである。さらに、これらの核酸結合基は、多糖、特にアガロース、セルロース、デキストラン、Sephadex、Sephacryl、キトサンなどのヒドロゲルに連結することもできる。さらに、核酸結合基は、例えば、シリカゲル、ガラス又は他の金属酸化物及び半金属性元素(halbmetall)酸化物、シリカ、酸化ホウ素、又は例えば金などの金属表面などの無機支持体に結合することもできる。磁性粒子は、取扱いに関して特に有利である。核酸結合基は、前記支持体に直接、さもなければ「スペーサー」を介して結合することができる。それらは、より大きい分子の一部とすることもできる。スペーサーの例は、炭化水素鎖、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、及び官能化シランである。前記スペーサーは、分枝でも非分枝でもよい。
【0029】
核酸結合基を結合するのに使用することができる化学官能基は、酸アミド又は酸無水物、エポキシド、トレシル基、ホルミル基、スルホニルクロリド、マレイミド又はカルボジイミド化学反応活性化(carbodiimidchemie aktivierte)カルボキシラート基である。同様に、例えばアミンなどの核酸結合基を、例えばイオン性相互作用によって又は吸収プロセスによって、非共有結合で結合させることが本発明の範囲内で可能である。核酸結合基は、例えば、チオールを介して金表面に結合することもできる。核酸結合基をカルボキシル化表面に結合させることが好ましい。
【0030】
支持体材料の別の実施形態は、非磁性及び磁性粒子、カラム材料、膜、並びに表面コーティングを含む。チューブ、膜、不織布、紙、PCR容器などの反応器、「Eppendorfチューブ」、マルチプレート、チップ、マイクロアレイなどの機能性支持体を挙げることもできる。
【0031】
本発明の別の一実施形態は、記載したように、本発明によるプロトン化可能な基を有し、本発明による原理に従って核酸を可逆的に結合可能である、可溶性ポリマーに関する。本発明によって改変することもできる適切な可溶性相の例は、例えばEP0707077に記載されている。好ましい溶媒は水であるが、本発明によって官能化を持たせた、例えばエタノールなどの有機溶媒に可溶である、ポリマーを使用することもできる。
【0032】
驚くべきことに、本発明者らは、結合及び溶出バッファーにおいて適用可能なpH値及び塩濃度が、核酸結合基1個につき存在するプロトン化可能な基、特にアミノ基の数に相関することを見いだした。すなわち、塩濃度約50mMでは、核酸は、スペルミンで被覆された表面にpH6でも結合するが、より低いpH5.5、好ましくは5でさえも、N−プロピル−1,3−プロパンジアミンで被覆された表面の利用が好ましい。N−プロピル−1,3−プロパンジアミン表面からの溶出はpH7.5でも好結果であるが、塩濃度50mMにおけるスペルミンで被覆された表面ではpH約8.5が必要である。しかし、溶出pHは、支持体を改変することによって、さらに低下させることもできる(下記参照)。
【0033】
効率的溶出及びその結果としての核酸結合相からの結合核酸の脱離は、核酸精製効率に特に重要である。ここで、驚くべきことに、重要であるのは核酸結合基のプロトン化可能な基のpKa値だけではないことが見いだされた。核酸結合相の構造及び別の官能基の存在も、中性又は弱アルカリ性範囲のpH値における溶出の促進及び改善に寄与する。
【0034】
一実施形態によれば、核酸結合相は、例えば反発効果を発揮することによって、溶出pHにおける核酸の溶出を促進する、官能基を更に有する。したがって、これらの官能基は、好ましくは、溶出の間に負電荷を有する。これらの基のpKa値は、例えば0から7、好ましくは1から5の範囲とすることができる。例えば、イオン交換体、特に陽イオン交換体、好ましくは例えばカルボキシル基などの酸性基が適切である。他の適切な基は、ベタイン、スルホナート、ホスホナート及びホスファートである。例えば、固体支持体は、カルボキシル基を用いて官能性を持たせて、核酸結合基が結合できるようにすることができる。結合のための核酸結合基濃度は、カルボキシル基の一部がフリーであり、したがって核酸結合基で官能化されないように、選択される。これらの基は、低pH値における核酸の結合を損なわない。しかし、より高いpH値では、それらは、好ましくは負に帯電し、その結果、核酸結合基からの核酸の脱離を促進する。この相互作用は、核酸結合基のプロトン化可能な基と例えばカルボキシル基などの陰イオン化可能な基との間の長さ又は距離の選択によって促進することもできる。これは、低pH値における溶出を有利に促進し、したがってその収率を増加させる。核酸に対して溶出pHで反発効果を発揮する官能基の選択、強度及び長さは、選択する核酸結合基、したがって、特に、核酸結合基1個当たりのプロトン化可能な基数、及び溶出促進官能基までのその距離に応じて変わる。
【0035】
本発明者らは、さらに、核酸結合/プロトン化可能な基が支持体材料上に互いにある距離で配置された、すなわち希釈された場合でも、溶出効率が増加し達成することを実証した。一実施形態によれば、核酸結合基のかかる配置は、少量の核酸結合基のみで支持体をコーティングすることによって得ることができる。したがって、準化学量論的量の核酸結合基を用いて官能基化を実施することが好ましい。その結果、核酸結合基は、基本的に、支持体上で希釈され、その結果、より少ない核酸結合基を利用することができる。これは、核酸がより緩やかに結合し、したがって核酸結合相からより容易に再び脱離することができるので、溶出を促進する。例えば、支持体材料上の官能基のわずか≦50%、≦25%、≦15%、≦10%又はわずか≦5%を、核酸結合基を用いて官能化することができる。支持体材料が核酸結合基を結合させる適切な官能基を持たない場合、それに適切な官能基を付与するために、支持体材料をまず官能化することができる(上記参照)。このために、準化学量論的量の核酸結合基による支持体材料の適切なプロファイルのコーティングを、前記核酸結合基を結合させるためのより少数の官能基をそれに応じて支持体材料に付与することによって、実施することもできる。
【0036】
別の一実施形態によれば、支持体は、核酸結合基と「希釈基(verduennungsgruppen)」の混合物で被覆される。「希釈基」という用語は、核酸結合基に関してその機能を示すために本明細書で使用される。その機能は、支持体上の核酸結合基の量を調節すること、さらにそれによって核酸の結合強度に影響を及ぼすことを含む。希釈基の割合が高いほど、より少数の核酸結合基が支持体に適用され、核酸との結合強度が低下する。希釈基は、陰性、陽性若しくは中性電荷、又はイオン化可能基を有することができる。その結果、希釈基は、同時に、溶出を促進する官能基も有することができる(上記参照)。希釈基に対する核酸結合基の割合は、例えば、≦50%、≦25%、≦15%、≦10%又はわずか≦5%とすることができる。適切な希釈基の例は、アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びアンモニアである。好ましい一実施形態によれば、本発明による(従来技術で公知の)一般的なモノアミンとポリアミンの混合物を支持体に適用する。この組合せのポリアミンは核酸の結合に使用され、モノアミンは主に希釈基として作用する。適切な希釈基の一例はエタノールアミンである。
【0037】
核酸結合相のpHは、上記パラメータ、特に溶出を促進する官能基、希釈基、及び核酸結合基による希釈、又は核酸結合基との混合を選択/組み合わせることによって、溶出条件に対して最適化することができる。それに応じて、核酸結合相の溶出プロファイル、特に溶出pHを制御又は調節することができる。
【0038】
本発明によるシステムによって精製することができる核酸は、血液、尿、便、唾液、痰などの体液中又は他の体液中、組織、細胞、特に動物細胞、ヒト細胞、植物細胞、細菌細胞など、肝臓、腎臓、肺などの器官などの生物学的源などに存在し得る。さらに、核酸は、スワブ、パパニコラウスメアなどの支持体材料、及びPreServCyt、Surepathなどの安定化媒体から、さもなければ例えばジュース、水性試料、食品一般などの他の液体から得ることができる。さらに、核酸は、植物材料、細菌溶解物、パラフィン包埋組織、水溶液又はゲルから得ることができる。
【0039】
さらに、本発明は、核酸を精製するための上記核酸結合相の使用に関する。本発明によって使用される核酸結合相は、特に、pKaが9から12の少なくとも1個のプロトン化可能な基を有する核酸結合基を有する。好ましい実施形態は、上で詳述されており(上記開示参照)、特に以下の特徴の1つまたは複数によって特徴づけられる:
a)核酸結合相が固体又は可溶性である、及び/又は
b)核酸結合相が、固体支持体に結合した核酸結合基を有する、及び/又は
c)核酸結合相が、溶出pHにおいて核酸の放出/溶出を促進する官能基、好ましくは陽イオン交換体、特にカルボキシル基を更に有する、及び/又は
d)特徴b)又はc)に従う核酸結合相が、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアクリラート及びポリメタクリラート及びその誘導体、ポリウレタン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、これらの材料のコポリマーなどの有機ポリマー、アガロース、セルロース、デキストラン、Sephadex、Sephacryl、キトサンなどの多糖及びヒドロゲル、無機支持体、特にシリカゲル、シリカ粒子、ガラス又は別の金属酸化物及び半金属性元素酸化物、酸化ホウ素、金属表面、例えば金を有する支持体、並びに磁性粒子からなる群から選択される支持体を有する、及び/又は
e)核酸結合相の核酸結合基がアミン、特に第一級及び第二級アミンである、及び/又は
f)特徴e)に従う核酸結合基が特にスペルミン及び/又はスペルミジンである。
【0040】
本発明は、さらに、核酸を精製するキットであって、
a)pKaが9から12の少なくとも1個のプロトン化可能な基を有する核酸結合基を有する、本発明による核酸結合相、
b)核酸結合相のプロトン化可能な基の少なくとも1個のpKaより少なくとも1pH単位低いpHを有する結合バッファー、及び/又はかかるpHを試料中で調節できるようにする結合バッファー、
c)核酸結合相のプロトン化可能な基の少なくとも1個のpKaより少なくとも1pH単位低いが、結合バッファーのpHより高いpHを有する溶出バッファー、及び/又はかかるpHを試料中で調節できるようにする溶出バッファー
を有することを特徴とするキットも提供する。
【0041】
核酸結合相及び溶出条件の詳細は、上述されており、本発明によるキットに関しても当てはまり、その中で使用される成分/バッファーを特徴づける。上記開示を参照されたい。さらに、キットは、他の通例の成分、例えば、溶解剤(lyse)、洗浄及び/又は中和試薬、及び/又はバッファーを含むことができる。
【0042】
結合バッファーは、好ましくは、以下の特徴の少なくとも1つを有することができる:
i.pHが、pH3から8である、及び/又は
ii.pHが、pH4から7.5である、及び/又は
iii.pHが、pH4.5から7である、及び/又は
iv.pHが、pH5.5から7である、及び/又は
v.pHが、pH6.5から7である、及び/又は
vi.塩濃度が1M未満、0.5M未満、0.25M未満又は0.1M未満である。
【0043】
対応する特徴の利点は、本方法に関連して上述されており、上記開示を参照されたい。
【0044】
本発明による溶出バッファーは、以下の特徴の少なくとも1つを有することができる:
i.pHが、pH7.5から10である、及び/又は
ii.pHが、pH8から9である、及び/又は
iii.pHが、pH8.2から8.8である、及び/又は
iv.塩濃度が1M未満、0.5M未満、0.25M未満、0.1M未満、25mM未満、15mM未満又は10mM未満である、及び/又は
v.本発明による溶出バッファーが、水、生物学的バッファー、有機バッファー、特にTris、Tris−Bis、MES、CHAPS及びHEPESからなる群から選択される。
【0045】
対応する特徴の詳細及び利点は、本発明による方法に関連して上述されている。上記開示を参照されたい。
【0046】
対応するキットは、特に本発明による方法の枠組み内で適用することができる。本方法、キット及び核酸結合固相は、特に分子生物学、分子診断学、科学捜査、食品分析及び応用試験の分野で使用することができる。
【0047】
溶出核酸が即時に更に処理され、したがって例えばPCR、RT−PCR、制限酵素による消化、又は転写に使用できるようにすることが好ましい。溶出バッファーが上述したように設計され、好ましくは低塩濃度を有する限り、更なる精製は不要である。
【0048】
精製に適切な核酸は、DNA及びRNA、特にゲノムDNA、プラスミドDNAであり、さらにPCR断片、cDNA、miRNA、siRNAであり、さらにオリゴヌクレオチド及び例えばPMA、LMAなどの改変核酸である。ヒト、動物又は植物起源のウイルスのRNA及びDNA又は核酸又はヒト、動物又は植物起源の細菌のRNA及びDNA又は核酸を精製することもできる。さらに、DNA/RNAハイブリッドも本発明による精製に適切である。
【0049】
本発明を幾つかの実施例に基づいて以下に説明する。これらの実施例は限定的なものではなく、本発明の好ましい実施形態である。さらに、本明細書で引用するすべての参考文献は、本開示の対象になる。
【実施例】
【0050】
実験に使用された核酸のモデルシステムは、pUC21プラスミドDNA、非短縮(ungeschnitten)、RNA、及びゲノムDNAである。さらに、大きさの異なる核酸断片の精製を、制限酵素によって断片に切断されたプラスミドDNAを使用して実証した。
【0051】
(実験の部の)手順は、下記調製プロトコルA)からI)に従った。
【0052】
A)磁性ポリマーとアミンの反応
材料
磁性ポリマー:Sera−Mag Double Speed Magnetic Carboxylate−Modified Microparticles(dsMGCM)カタログNo.65152105050250、5%強度の水性懸濁液、又はMagnetic Carboxylate−Modified(MG−CM)、カタログNo.2415−2105、5%強度の水性懸濁液、Seradyn Inc.Indianapolis、USA。
【0053】
アミン:スペルミン(Fluka、85590)、スペルミジン(Fluka、85561)、プロピル−1,3−プロパンジアミン(Aldrich、カタログNo.308153)、ペンタエチレンヘキサミン(Aldrich、カタログNo.292753)ポリ(アリルアミン塩酸塩)、Mw15000(Aldrich、カタログNo.283215)
磁性粒子500mgを50mM MESバッファーpH6.1、10ml中に再懸濁させ、次いで50mg/mlのN−ヒドロキシスクシンイミド溶液11.5mlと混合する。ミニ振とう機を使用して混合後、52μmol/lの1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)溶液10mlを添加し、続いて更にボルテックス撹拌する。次いで、溶液を回転振とう機(ueberkopfschuettler)上で30分間放置して反応させ、次いで上清を除去する。50mM MESバッファーpH6.1、50ml中で再懸濁後、懸濁液を10mlの一定分量で分配する。懸濁液を磁気的に分離し、上清を廃棄する。50mM MESバッファーpH6.1、1mlに懸濁後、各場合においてアミン2mlを50mM MES中100mg/mlの濃度及びpH8.5で添加し、続いて徹底的にボルテックス撹拌し、10分間超音波処理し、懸濁液を回転振とう機上で1時間放置して反応させる。続いて、それぞれの場合において、50mM MESバッファーpH6.1、10mlで2回洗浄し、磁気分離し、上清を廃棄する。次いで、粒子を各場合においてpH値4.5から7.0でMESバッファー2mlに再懸濁させる。
【0054】
B)N−プロピル−1,3−プロパンジアミン官能化磁性ポリマーを使用したプラスミドpUC21の精製(AX027)
50mM MESバッファー、pH5.0又は5.5中の磁性粒子2mgを使用し、各場合において50mM MESバッファーpH5.0又は5.5、50μlと混合する。続いて、バッファー「EB」(QIAGEN、カタログNo.19068)10μl中のプラスミドpUC21 10μgを添加し、短時間振とうして混合する。次いで、反応混合物を回転振とう機又はEppendorf振とう機上で5分間インキュベートする。試料混合物を磁気的に分離し、上清を除去し、DNA含有量を光度計測法で測定する。次いで、残留物をそれぞれの場合において、Millipore水100μlで2回洗浄し、磁気的に分離し、上清を廃棄する。続いて、それぞれの場合において、NaCl濃度50mM、100mM、200mM及び400mMを含む、50mM TrisバッファーpH8.5、50μlを添加することによって、2回溶出し、磁気分離によって除去し、溶出物のDNA含有量を光度計測法で調べる。
【0055】
図1に50mM NaCl濃度の結果を、AX026及びAX027とで比較して示す。
【0056】
C)スペルミジン官能化磁性ポリマーを使用したプラスミドpUC21の精製(AX026)
50mM MESバッファー、pH6.2中の磁性粒子2mgを使用し、50mM TrisバッファーpH6.2、50μlと混合する。続いて、バッファー「EB」(QIAGEN、カタログNo.19068)10μl中のプラスミドpUC21 10μgを添加し、短時間振とうして混合する。次いで、反応混合物を回転振とう機又はEppendorf振とう機上で5分間インキュベートする。試料混合物を磁気的に分離し、上清を除去し、DNA含有量を光度計測法で測定する。次いで、残留物をそれぞれの場合において、Millipore水100μlで2回洗浄し、磁気的に分離し、上清を廃棄する。続いて、それぞれの場合において、NaCl濃度50mM、100mM、200mM及び400mMをそれぞれの場合において含む、50mM TrisバッファーpH7.5、8.0、8.5、50μlを添加することによって、2回溶出し、磁気分離によって除去し、溶出物のDNA含有量を光度計測法で調べる。
【0057】
結果を
図2に示す。
【0058】
D)スペルミン官能化磁性ポリマーを使用したプラスミドpUC21の精製(AX025)
50mM MESバッファー、pH6.1中の磁性粒子2mgを使用し、50mM TrisバッファーpH7.0、50μlと混合する。続いて、バッファー「EB」(QIAGEN、カタログNo.19068)10μl中のプラスミドpUC21 10μlを添加し、短時間振とうして混合する。次いで、反応混合物を回転振とう機又はEppendorf振とう機上で5分間インキュベートする。試料混合物を磁気的に分離し、上清を除去し、DNA含有量を光度計測法で測定する。次いで、残留物をそれぞれの場合において、Millipore水100μlで2回洗浄し、磁気的に分離し、上清を廃棄する。続いて、それぞれの場合において、NaCl濃度50mM、100mM、200mM及び400mMをそれぞれの場合において含む、50mM TrisバッファーpH7.5、8.0、8.5、50μlを添加することによって、2回溶出し、磁気分離によって除去し、溶出物のDNA含有量を光度計測法で調べる。
【0059】
結果を
図3に示す。
【0060】
E)ペンタエチレンヘキサミン官能化磁性ポリマーを使用したプラスミドpUC21の精製(AX028)
50mM MESバッファー、pH6.1中の磁性粒子2mgを使用し、50mM TrisバッファーpH7.0、50μlと混合する。続いて、バッファー「EB」(QIAGEN、カタログNo.19068)10μl中のプラスミドpUC21 10μgを添加し、短時間振とうして混合する。次いで、反応混合物を回転振とう機又はEppendorf振とう機上で5分間インキュベートする。試料混合物を磁気的に分離し、上清を除去し、DNA含有量を光度計測法で測定する。次いで、残留物をそれぞれの場合において、Millipore水100μlで2回洗浄し、磁気的に分離し、上清を廃棄する。続いて、それぞれの場合において、NaCl濃度50mM、100mM、200mM及び400mMをそれぞれの場合に含む、50mM TrisバッファーpH7.5、8.0、8.5、50μlを添加することによって、2回溶出し、磁気分離によって除去し、溶出物のDNA含有量を光度計測法で調べる。
【0061】
結果を
図4に示す。
【0062】
F)ポリアリルアミン官能化磁性ポリマーを使用したプラスミドpUC21の精製(AX029)−比較例
50mM MESバッファー、pH6.1中の磁性粒子2mgを使用し、50mM TrisバッファーpH7.0、50μlと混合する。続いて、バッファー「EB」(QIAGEN、カタログNo.19068)10μl中のプラスミドpUC21 10μgを添加し、短時間振とうして混合する。次いで、反応混合物を回転振とう機又はEppendorf振とう機上で5分間インキュベートする。試料混合物を磁気的に分離し、上清を除去し、DNA含有量を光度計測法で測定する。次いで、残留物をそれぞれの場合において、Millipore水100μlで2回洗浄し、磁気的に分離し、上清を廃棄する。続いて、それぞれの場合において、NaCl濃度50mM、100mM、200mM及び400mMをそれぞれの場合において含む、50mM TrisバッファーpH7.5、8.0、8.5、50μlを添加することによって、2回溶出し、磁気分離によって除去し、溶出物のDNA含有量を光度計測法で調べる。
【0063】
結果を
図5に示す。
【0064】
G)スペルミン官能化磁性ポリマーを使用したゲノムDNAの精製(AX030)
精製ごとに、粒子2mgを25mM MES、25mM Tris、pH6.2に懸濁させる。続いて、バッファー「EB」中の子ウシ胸腺ゲノムDNA(カタログNo.89370、Fluka、Germany)10μgを添加し、短時間振とうして混合する。続いて、磁気分離し、そのものの測光検査を行う。残留物をMillipore水100μlで洗浄し、磁気分離して上清を除去し、続いて、それぞれの場合において、50mM及び100mM NaClをそれぞれ含む、50mM TrisバッファーpH8.5、50μlで2回溶出する。次いで、個々の溶出物のDNA含有量を光度計測法で測定する。
【0065】
結果を
図6及び
図7に示す。
【0066】
H)スペルミン官能化磁性ポリマーを使用したRNAの精製(AX030)
精製ごとに、粒子2mgを50mM Trisバッファー、pH5.5に懸濁させる。続いて、50mM Trisバッファー、pH5.5中の10μg/prep.RNA(16S−&23SリボソームRNA、Fermentas41−1g/l−ll)を添加する。続いて、短時間振とうして混合し、磁気分離し、次いで上清をRNAについて光度計測法で調べる。続いて、それぞれの場合において、RNaseを含まない水100μlで2回洗浄し、上清を磁気分離によって除去する。続いて、それぞれの場合において、50mM及び100mM NaClをそれぞれふくむ、50mM TRIS、pH8.5、50μl(RNaseを含まない)を用いて、2回溶出する。次いで、溶出物を個々に光度計測法で調べる。
【0067】
結果を
図8及び
図9に示す。
【0068】
I)スペルミン官能化磁性ポリマーを使用した核酸断片の精製(AX030)
調製
スペルミン官能化磁性ポリマー粒子を、25mM MES、25mM Trisを含む結合バッファー、pH6.2に懸濁密度50mg/mlで懸濁させる。次いで、ビーズをこのバッファーでさらに2回洗浄し、上清を磁気分離によって除去する。タイプpTZ19RプラスミドDNAが必要であり、そのDNA25μgを緩衝液100μlに対して使用する。まず、反応混合物に対して全量を計算し、続いて損失量の水を導入して加えて100μlまでにし、DNA、次いで酵素溶液に適合する酵素バッファー(全溶液10μl当たり1μl)、次いで最後にDNA1μg当たり3Uの制限酵素(HinfI、New England Biolabs、Cat.No.R0155S)(通常、75Uは酵素溶液7.5μlに対応する。)を添加する。混合物を水浴又は加熱ブロック中で37℃で90分間放置して、インキュベートする。続いて、Quick−Runを使用して6000U/分に短時間遠心分離し、次いで試料を−20℃で凍結させる。この制限酵素消化DNAは、PBバッファーを分析するための簡単で迅速なPCR補完物(PCR−ersatz)である。
【0069】
手順
試料ごとに、(DNA2μgに対応する)PCR溶液8μlを92μlの25mM MES、25mM Tris、pH6.2と混合し、次いで磁性シリカゲル懸濁液25μlと混合し、続いて10秒間ボルテックス撹拌し、500μlの25mM MES、25mM Tris、pH6.2と混合し、混合する。混合物を振とう機中で2分間インキュベートする。続いて、磁気分離し、上清を廃棄し、それぞれの場合において、Millipore水750μlで2回洗浄する。続いて、まず50μlの50mM Tris/HCl、50mM NaCl、pH8.5、次いで30μlの50mM Tris/HCl、50mM NaCl、pH8.5で溶出させる。溶出物を混合し、DNA含有量を光度計測法で、さらにゲルによっても、調べる。
【0070】
結果を
図10、
図11及び
図12に示す。
【0071】
J)スペルミン官能化磁性ポリマーを使用した血液由来のゲノムDNAの精製(AX040)
溶解バッファー(10mM TRIS、Triton X−100、pH9.0)1mlとプロテイナーゼK10μlを混合する。ビーズ1mg及び水3.4μlを結合バッファー(1.5M酢酸カリウムpH4.0)200μlに、懸濁密度26.6mg/mlで懸濁させる。(クエン酸塩で安定化された)解凍全血100μlを溶解バッファー/プロテイナーゼ混合物とEppendorfカップ中で混合し、十分混合する。続いて、室温で10分間インキュベートする。ビーズを結合バッファーに慎重に再懸濁させる。このうち、240μlを溶解血液に添加し、続いてピペット中で上下させて慎重に混合する。続いて、室温で1分間インキュベートする。ビーズを磁気的に分離する。上清を慎重に除去する。洗浄のため、洗浄バッファー(水)1mlを添加し、続いてピペット中で上下させて慎重に混合する。さらに磁気分離後、上清を廃棄する。溶解バッファー1ml及び結合バッファー50μlを添加し、慎重に混合し、室温で1分間インキュベートする。磁気分離後、再度、洗浄バッファー1mlで洗浄し、磁気分離する。
【0072】
溶出バッファー(10mM TRIS*HCl pH8.5)150μlをビーズに添加することによって、精製DNAを溶出させる。ビーズをピペット中で数回上下させて再懸濁させる。ビーズを磁気的に分離し、上清を除去し、DNAを光度計測法で定量する。
【0073】
結果を
図13に示す。
【0074】
上で得られた溶出物5μlをRT−PCRに供する。このため、TaqManβ−アクチン対照試薬(Applied Biosystems、No.401846)及びQuantiTect Probe PCR Mastermix(QIAGEN、No.1019337)を使用し、Mastermix12.5μl、β−アクチンプローブ(FAM)2.5μl、β−アクチン順方向プライマー2.5μl及びβ−アクチン逆方向プライマー2.5μlを適用する。
【0075】
結果を
図14に示す。