(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207174
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ソフトウェアの互換性をテストする方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/30 20060101AFI20170925BHJP
G06F 11/07 20060101ALI20170925BHJP
F16H 61/12 20100101ALI20170925BHJP
【FI】
G06F11/30 151
G06F11/30 140A
G06F11/30 140D
G06F11/30 140G
G06F11/07 151
G06F11/07 140J
G06F11/07 140R
F16H61/12
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-30915(P2013-30915)
(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2013-171590(P2013-171590A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2016年2月17日
(31)【優先権主張番号】10 2012 202 713.0
(32)【優先日】2012年2月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー シュミット
【審査官】
多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−095672(JP,A)
【文献】
特開平04−324524(JP,A)
【文献】
特開2007−092621(JP,A)
【文献】
特開平06−314190(JP,A)
【文献】
特開平05−324363(JP,A)
【文献】
特開2006−011647(JP,A)
【文献】
特開2008−051443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/44
G06F 11/00
G06F 11/07
G06F 11/30−11/36
G06F 15/16−15/177
B60R 16/02
F02D 45/00
F16D 27/12
F16H 61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルクラッチトランスミッションシステムにおける、少なくとも2つの制御装置(HCA1,HCA2)のソフトウェア互換性をテストする方法であって、
クラッチ毎に1つの制御装置(HCA1,HCA2)が使用され、前記制御装置は互いに依存せずに動作し、相互の監視は行われず、
各制御装置は、ソフトウェアを備えた不揮発性記憶領域を有しており、
前記不揮発性記憶領域には前記ソフトウェアのソフトウェアバージョン識別子も格納し、
前記テストされる制御装置の前記ソフトウェアバージョン識別子が有効であると共に同じであり、および/または有効であると共に互換性がある場合に、前記テストにパスしたと判定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
各制御装置が前記不揮発性記憶領域内に有する前記ソフトウェアは、当該ソフトウェアのバージョンを一意に示すソフトウェアバージョン識別子が、必要に応じて異なっている、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記テストを前記少なくとも2つの制御装置(HCA1,HCA2)のうちの1つの制御装置または別の制御装置(TCU)によって行う、
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記別の制御装置(TCU)は、他の前記制御装置(HCA1,HCA2)の上位の制御装置である、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法において、
付加的にテストを行って、前記別の制御装置(TCU)が、自身のソフトウェアと、前記テストされる制御装置の前記ソフトウェアおよび/または当該テストされる制御装置の前記ソフトウェアバージョン識別子とに互換性があるか否かを判定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法において、
前記制御装置(HCA1,HCA2,TCU)間のデータ交換をCANによって行う、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法において、
前記不揮発性記憶領域に格納されているデータに基づき、前記制御装置によって前記互換性の判定を行う、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、
前記テストされる制御装置の前記ソフトウェアバージョン識別子が有効でないか、および/または同じでないか、および/または互換性がないとみなされる場合に、前記テストを実行する制御装置(TCU)においてエラーコードがアクティブ化される、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、
前記テストを実行する制御装置(TCU)においてエラーコードがアクティブ化される場合、または前記テストされる制御装置の前記ソフトウェアバージョン識別子が有効でない、および/または同じでない、および/または互換性がないとみなされる場合に、前記テストを行う制御装置(TCU)のエラー記憶装置にエラー情報を格納する、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法において、
前記テストを実行する制御装置(TCU)においてエラーコードがアクティブ化されるか、または前記テストされる制御装置の前記ソフトウェアバージョン識別子が有効でないか、および/または同じでないか、および/または互換性がないとみなされる場合に、前記テストを実行する制御装置(TCU)によってエラー応動がトリガされ、ただし1つのエラー応動は、走行動作の遮断である、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載した特徴的構成を有する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の使用分野および使用目的は、自動車におけるクラッチおよびトランスミッションシステムに、殊にデュアルクラッチトランスミッションシステムである。
【0003】
本発明の枠内において略語HCAとは、例えば、オートマチックトランスミッションを操作するため、またはオートマチック摩擦クラッチを操作するためのあらゆるタイプの任意のアクチュエータ、殊にオートマチック摩擦クラッチのハイドロスタティック駆動アクチュエータ(Hydrostatic Clutch Actuator)のことであり、これは、例えば、DE 10 2010 047 801 AlまたはDE 10 2010 047 800 DEに開示されている。しかしながら、各HCAには、例えばこのHCAの現場持ち込み電子装置において、HCA−SWバージョンの識別子を記憶するために少なくとも1つの不揮発性記憶装置を一意に固定に割り当てなければならないのである。
【0004】
本発明の枠内において略語TCUとは、自動車のトランスミッションを制御するための任意のタイプのトランスミッション制御装置、1つまたは複数の自動車の切換クラッチを制御するための任意のタイプのクラッチ制御装置、ならびに、例えばトランスミッションを制御するためおよび1つまたは複数の切換クラッチを制御するための任意のタイプの制御装置、殊にデュアルクラッチトランスミッションを制御するための任意の制御装置のことであると理解されたい。デュアルクラッチトランスミッションは、以前から公知であり、例えばDE 10 2008 023 360 Alに記載されている。しかしながら各TCUには、例えばこのTCUの現場持ち込み電子装置において、少なくとも1つの不揮発性記憶装置を一意に固定に割り当てなければならないのである。
【0005】
本発明の枠内では、略語SWはソフトウェアのことである。
【0006】
不揮発性記憶装置とは、この記憶装置への電圧供給が遮断された際または故障した際であっても記憶内容が失われ、すなわち、この記憶装置への電圧供給が再び行われるようになった後には、この記憶内容が利用可能になる記憶装置のことである。このような不揮発性記憶装置の例は、ROM、殊にEEPROMである。
【0007】
本発明において装置という語は、TCUのことであると共にHCAのことである。
【0008】
上記のHCA(殊にHCAの特別な実施形態)は、汎用的に使用可能であり、すなわち、各HCAは、基本的にどの制御装置においても動作可能である。上記のシステムの全体機能は複数の制御装置に分散されることも多い。
【0009】
上記のHCAは、デュアルクラッチシステムにおいて使用され、クラッチ毎に1つのHCAが使用される(すなわちデュアルクラッチシステムは2つのHCAが使用される)。機能するためには各HCA(1つの制御装置に相当する)に機能ソフトウェアを設けなければならず、これは書き換え処理によって行われる。その後、このHCAのROM記憶装置内にHCA機能ソフトウェア(HCA−SW)が存在することになる。HCAのこの書き換えは、終端またはサービス(すなわち工場内で)行うことができる。
【0010】
HCAは互いに依存せずに動作し、相互の監視は行われない。しかしながら全体的なイネーブルテストの際には、2つのHCAが同じSW状態で構成されているか否かについて確認が行われる。(このHCAのSWならびに上位の制御部TCUのSWの)SWイネーブルはつねに、2つのHCAが同じSWを使用している場合に行われる。しかしながら同じSW状態である否かについての自動的な監視は、動作時には行われないのである。
【0011】
ここで想定し得るのは、要求が変更されるかまたは境界条件に起因して複数のSWアップデートが存在することである。現場において(すなわちエンドユーザにおいて)サービス工場は必要な場合に、相応のHCA−SWアップデートを行うことができるかまたはこれを行わなければならないことになる。場合によって行われるHCAコンポーネント交換の場合にも同じことが当てはまる。したがって上記のシステム(2つのHCAと1つのトランスミッション制御装置TCUとから構成されるシステム。
図1を参照されたい)を種々異なるHCA−SW状態で動作させ、ひいては上記の仕様外で動作させることが起こり得るのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE 10 2010 047 801 Al
【特許文献2】DE 10 2010 047 800 DE
【特許文献3】DE 10 2008 023 360 Al
【発明の概要】
【0013】
本発明の課題は、例えば、2つのHCAと1つのTCUとからなるシステムを種々異なるHCA−SW状態で動作させないように保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題は、本発明の請求項1により、少なくとも2つの制御装置のソフトウェア互換性をテストする方法であって、各制御装置は、ソフトウェアを備えた不揮発性記憶領域を有している、方法において、上記の不揮発性記憶領域にはソフトウェアのソフトウェアバージョン識別子も格納し、上記のテストされる制御装置のソフトウェアバージョン識別子が有効であると共に同じであり、および/または有効であると共に互換性がある場合に、前記テストにパスしたとみなす、ことを特徴とする方法によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による方法の1つの実施形態にしたがい、関与する装置間でのデータ交換を略示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
方法技術的な観点から見ると、この課題は以下に説明する方法によって解決される。
【0017】
本発明によれば、少なくとも2つの制御装置のソフトウェア互換性をテストする方法が得られ、ここで各制御装置は、ソフトウェアを備えた不揮発性記憶領域を有する。本発明では、上記の不揮発性記憶領域に上記のソフトウェアのソフトウェアバージョン識別子も格納され、ここでは、テストされる制御装置のソフトウェアバージョン識別子が有効であると共に同じであり、および/または、有効であると共に互換性がある場合に上記のテストにパスしたとみなす。
【0018】
本発明の有利な実施形態において、各制御装置が不揮発性記憶装置に有する上記のソフトウェアは、必要に応じ、このソフトウェアのバージョンを一意に示すソフトウェアバージョン識別子が異なっている。
【0019】
本発明の別の有利な実施形態では、上記のテストを上記の複数の制御装置のうちの1つの制御装置によって、または別の制御装置によって実行する。
【0020】
本発明の別の有利な実施形態では、上記の別の制御装置は、上記の他の制御装置の上位の制御装置である。
【0021】
本発明の別の有利な実施形態では、上記の別の制御装置が付加的にテストを行い、自身のソフトウェアと、上記のテストされる制御装置のソフトウェアおよび/またはこれらのテストされる制御装置のソフトウェア−バージョン識別子とに互換性があるか否かを判定する。
【0022】
本発明の別の有利な実施形態において、上記の制御装置間のデータ交換をCANによって行う。
【0023】
本発明の別の有利な実施形態において、上記の不揮発性記憶装置に格納されているデータに基づき、上記の制御装置によって互換性の判定を行う。
【0024】
本発明の別の有利な実施形態において、上記のテストされる制御装置のソフトウェア−バージョン識別子が有効でないか、および/または同じでないか、および/または互換性がないとみなされる場合、上記のテストを実行する制御装置(TCU)においてエラーコードをアクティブ化する。
【0025】
本発明の別の有利な実施形態において、エラーコードが上記のテストを実行する制御装置においてアクティブ化される場合、または上記のテストされる制御装置のソフトウェア−バージョン識別子が有効でないか、および/または同じでないか、および/または互換性がないとみなされる場合に、上記のテストを行う制御装置のエラー記憶装置にエラー情報を格納する。
【0026】
本発明の別の有利な実施形態において、エラーコードが上記のテストを実行する制御装置(TCU)においてアクティブ化されるか、または上記のテストされる制御装置のソフトウェア−バージョン識別子が有効でないか、および/または同じでないか、および/または互換性とみなれさる場合に、上記のテストを実行する制御装置によってエラー応動がトリガされ、1つのエラー応動は、走行動作の遮断である。
【0027】
これにより、上記のシステム(2つのHCAとトランスミッション制御装置TCUとからなるシステム。
図1を参照されたい)は、種々異なるHCA−SWバージョンによって動作せず、ひいては上記の仕様外で動作しないことを保証することができる。それは、上記のHCAが同じHCA−SWにより、ならびに同じHCA−SW状態で動作されることの監視が動作時にも実行されるからである。
【0028】
本発明の別の利点および有利な実施形態は、以下の図ならびにその説明に記載されている。
【実施例】
【0029】
図1には装置(TCUおよびHCA)間の双方向データ交換が示されている。したがってこの例では、例えばHCA1とHCA2とが通信しないと仮定している。この明細書の枠内では、通信とデータ交換という語を同じ意味で使用している。
【0030】
上記の書き換え過程により、HCA1機能ソフトウェアもHCA1−SWバージョンの識別子もHCA1のROM記憶装置にあり、またHCA2機能ソフトウェアもHCA2−SWバージョンの識別子もHCA2のROM記憶装置にある。
【0031】
HCAは、システム起動時に1回、および/または動作中に周期的に各HCA−SWバージョンの識別子を送信する。このために有利には上記のCANインタフェースが通信ベースとして使用される。上記の2つのHCA(HCA1およびHCA2)を駆動制御するトランスミッション制御装置TCUは、これらの識別子の有効性および一意性を監視する。識別子が有効でないかないしは識別子が互いに異なる(HCA1がHCA2とは異なる識別子を有する)場合、上記の制御装置TCUにおいて、相応するエラーコードがアクティブ化され、このエラーコードが有利には上記のエラー記憶装置に格納される。このエラーコードにより、相応のエラー応動を、例えばエラー動作の遮断をトリガすることができる。
【0032】
さらに上記のHCA−SWバージョンとTCUの機能SWとが適合するか否かについてTCUの機能ソフトウェアを同様に監視することができる。このためにCANを介して読み込んだHCAのSW識別子をテストする。ここでは複数のHCA−SWバージョンが存在し得ることを想定することができるが、2つのHCAはつねに同じSW状態を有し、ひいては同じ識別子を有しなければならない。上記のTCUの機能SWにより、2つのHCA−SWバージョン識別子が一致することがテストされた後、このTCUの機能SWのバージョンにより、上記の2つのHCAのHCA−SWバージョンが許容されるか否か、すなわちこれらと一致するかまたは少なくともこれらと互換性があるか否かがテストされる。差異がある場合、ここでも(前に述べたように)エラー応動が行われる。
【0033】
上記のHCAにおいて種々異なるSW状態が使用される否かを識別するため、有利にはトランスミッション制御装置である上記の上位の制御装置の機能SWに監視機能を実現する。
【0034】
HCAの機能SWならびに上記の上位のトランスミッション制御装置SWに本発明によるSW機能を組み込む。
【符号の説明】
【0035】
TCU 制御装置、 HCA1 アクチュエータ、 HCA2 アクチュエータ