(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0013】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0014】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0015】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0016】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0017】
以下で説明する実施の形態では、SiP型の半導体装置の例として、一つのパッケージ内に、メモリ回路が形成された半導体チップ(メモリチップ)とメモリ回路の動作を制御する制御回路が形成された半導体チップ(制御チップ)が搭載された半導体パッケージを取り上げて説明する。
【0018】
(実施の形態)
本実施の形態では、複数の半導体チップを積層した半導体装置の例として、演算処理回路が形成された半導体チップ上にメモリ回路が形成された複数の半導体チップを積層した実施態様を取り上げて説明する。
図1は本実施の形態の半導体装置の斜視図、
図2は、
図1に示す半導体装置の下面図である。また、
図3は、
図1に示す封止体を取り除いた状態で配線基板上の半導体装置の内部構造を示す透視平面図である。また、
図4は
図1のA−A線に沿った断面図である。なお、
図1〜
図4では、見易さのため、端子数を少なくして示しているが、端子(ボンディングリード2f、ランド2g、半田ボール5)の数は、
図1〜
図4に示す態様には限定されない。また、
図3では、ロジックチップLCとメモリチップMC4の平面視における位置関係や平面サイズの違いを見易くするため、ロジックチップLCの輪郭を、点線により示している。
【0019】
<半導体装置>
図4に示すように、配線基板2は、複数の半導体チップ3が搭載された上面(面、チップ搭載面)2a、上面2aとは反対側の下面(面、実装面)2b、および上面2aと下面2bの間に配置された側面2cを有し、
図2および
図3に示すように平面視において四角形の外形形状を成す。
図2および
図3に示す例では、配線基板2の平面サイズ(平面視における寸法、上面2aおよび下面2bの寸法、外形サイズ)は、例えば一辺の長さが14mm程度の正方形を成す。また、配線基板2の厚さ(高さ)、すなわち、
図4に示す上面2aから下面2bまでの距離は、例えば0.3mm〜0.5mm程度である。
【0020】
配線基板2は、上面2a側に搭載された半導体チップ3と図示しない実装基板を電気的に接続するためのインタポーザであって、上面2a側と下面2b側を電気的に接続する複数の配線層(
図4に示す例では4層)を有する。各配線層には、複数の配線2dおよび複数の配線2d間、および隣り合う配線層間を絶縁する絶縁層2eが形成されている。ここで、本実施の形態の配線基板2は、3つの絶縁層2eを有しており、真ん中の絶縁層2eがコア層(コア材)であるが、コアとなる絶縁層2eを有していない、所謂、コアレス基板を用いても良い。また、配線2dには、絶縁層2eの上面または下面に形成される配線2d1、および絶縁層2eを厚さ方向に貫通するように形成されている層間導電路であるビア配線2d2が含まれる。
【0021】
また、配線基板2の上面2aには、半導体チップ3と電気的に接続される端子である、複数のボンディングリード(端子、チップ搭載面側端子、電極)2fが形成されている。一方、配線基板2の下面2bには、図示しない実装基板と電気的に接続するための端子、すなわち、半導体装置1の外部接続端子である複数の半田ボール5が接合された、複数のランド2gが形成されている。複数のボンディングリード2fと複数のランド2gは、複数の配線2dを介して、それぞれ電気的に接続されている。なお、ボンディングリード2fやランド2gに接続される配線2dは、ボンディングリード2fやランド2gと一体に形成されるので、
図4では、ボンディングリード2fおよびランド2gを、配線2dの一部として示している。
【0022】
また、配線基板2の上面2aおよび下面2bは、絶縁膜(ソルダレジスト膜)2h、2kにより覆われている。配線基板2の上面2aに形成された配線2dは絶縁膜2hに覆われている。絶縁膜2hには開口部が形成され、この開口部において、複数のボンディングリード2fの少なくとも一部(半導体チップ3との接合部、ボンディング領域)が絶縁膜2hから露出している。また、配線基板2の下面2bに形成された配線2dは絶縁膜2kに覆われている。絶縁膜2kには開口部が形成され、この開口部において、複数のランド2gの少なくとも一部(半田ボール5との接合部)が絶縁膜2kから露出している。
【0023】
また、
図4に示すように、配線基板2の下面2bの複数のランド2gに接合される複数の半田ボール(外部端子、電極、外部電極)5は、
図2に示すように行列状(アレイ状、マトリクス状)に配置されている。また、
図2では図示を省略するが、複数の半田ボール5が接合される複数のランド2g(
図4参照)も行列状(マトリクス状)に配置されている。このように、配線基板2の実装面側に、複数の外部端子(半田ボール5、ランド2g)を行列状に配置する半導体装置を、エリアアレイ型の半導体装置と呼ぶ。エリアアレイ型の半導体装置は、配線基板2の実装面(下面2b)側を、外部端子の配置スペースとして有効活用することができるので、外部端子数が増大しても半導体装置の実装面積の増大を抑制することが出来る点で好ましい。つまり、高機能化、高集積化に伴って、外部端子数が増大する半導体装置を省スペースで実装することができる。
【0024】
また、半導体装置1は、配線基板2上に搭載される複数の半導体チップ3を備えている。複数の半導体チップ3は、配線基板2の上面2a上に積層されている。また、複数の半導体チップ3のそれぞれは、表面(主面、上面)3a、表面3aとは反対側の裏面(主面、下面)3b、および、表面3aと裏面3bとの間に位置する側面3cを有し、
図3に示すように平面視において四角形の外形形状を成す。このように、複数の半導体チップを積層することにより、半導体装置1を高機能化させた場合であっても、実装面積を低減することができる。
【0025】
図3および
図4に示す例では、最下段(配線基板2に最も近い位置)に搭載される半導体チップ3は、演算処理回路PU(
図5参照)が形成されたロジックチップ(半導体チップ)LCである。一方、ロジックチップLCの上段に搭載される半導体チップ3は、ロジックチップLCとの間で通信するデータを記憶する主記憶回路(記憶回路)MM(
図5参照)が形成された、メモリチップ(半導体チップ)MC1、MC2、MC3、MC4である。なお、ロジックチップLCには、上記した演算処理回路の他、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の主記憶回路の動作を制御する制御回路が形成されている。半導体装置1の回路構成例については、後述する。
【0026】
また、
図4に示すように複数の半導体チップ3の間には、接着材NCL(絶縁性接着材)が配置される。接着材NCLは、上段側の半導体チップ3の表面3aと下段側の半導体チップ3の裏面3b(または、配線基板2の上面2a)の間の空間を塞ぐように配置される。詳しくは、この接着材NCLは、配線基板2上にロジックチップLCを接着固定する接着材(絶縁性接着材)NCL1、およびロジックチップ上にメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の積層体MCSを接着固定する接着材(絶縁性接着材)NCL2を含む。また、接着材NCL1、NCL2は、それぞれ絶縁性(非導電性)の材料(例えば樹脂材料)から成り、ロジックチップLCと配線基板2の接合部、およびロジックチップLCと積層体MCSの接合部に接着材NCLを配置することで、各接合部に設けられている複数の電極間を電気的に絶縁することができる。
【0027】
また、
図4に示す例では、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の間には、封止体4とは異なる封止体(チップ積層体用封止体、チップ積層体用樹脂体)6が配置され、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の積層体MCSは封止体6により封止されている。封止体6は、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の表面3aおよび裏面3bに密着するように埋め込まれ、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の積層体MCSは、各半導体チップ3間の接合部および封止体6により一体化される。また、封止体6は、絶縁性(非導電性)の材料(例えば樹脂材料)から成り、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の各接合部に封止体6を配置することで、各接合部に設けられている複数の電極間を電気的に絶縁することができる。ただし、
図4に示すようにメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の積層体MCSのうち、最下段(最もロジックチップLCに近い位置)に搭載されるメモリチップMC1の表面3aは、封止体6から露出している。また、
図3および
図4に示すように、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の積層体MCSのうち、最上段に配置されるメモリチップMC4の裏面3bは封止体6から露出している。
【0028】
また、半導体装置1は、複数の半導体チップ3を封止する封止体4を備える。封止体4は、上面(面、表面)4a、上面4aとは反対側に位置する下面(面、裏面、実装面)4b(
図4参照)、および上面4aと下面4bの間に位置する側面4cを有し、平面視において四角形の外形形状を成す。
図1に示す例では、封止体4の平面サイズ(上面4a側から平面視した時の寸法、上面4aの外形サイズ)は配線基板2の平面サイズと同じであって、封止体4の側面4cは配線基板2の側面2cと連なっている。また、
図1に示す例では、封止体4の平面寸法(平面視における寸法)は、例えば一辺の長さが14mm程度の正方形を成す。
【0029】
封止体4は、複数の半導体チップ3を保護する樹脂体であって、複数の半導体チップ3間、および半導体チップ3と配線基板2に密着させて封止体4を形成することで、薄い半導体チップ3の損傷を抑制することができる。また、封止体4は、保護部材としての機能を向上させる観点から例えば以下のような材料で構成される。封止体4には、複数の半導体チップ3間および半導体チップ3および配線基板2に密着させ易く、かつ、封止後には、有る程度の硬さが要求されるので、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂が含まれることが好ましい。また、硬化後の封止体4の機能を向上させるため、例えば、シリカ(二酸化珪素;SiO
2)粒子などのフィラー粒子が樹脂材料中に混合されていることが好ましい。例えば、封止体4を形成した後の熱変形による半導体チップ3の損傷を抑制する観点からは、フィラー粒子の混合割合を調整して、半導体チップ3と封止体4の線膨張係数を近づけることが好ましい。
【0030】
<半導体装置の回路構成>
次に、半導体装置1の回路構成例について説明する。
図5に示すように、ロジックチップLCには、上記した演算処理回路PUの他、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の主記憶回路MMの動作を制御する制御回路CUが形成されている。また、ロジックチップLCには、例えば一次的にデータを記憶するキャッシュメモリなど、上記した主記憶回路MMよりも記憶容量が小さい補助記憶回路(記憶回路)SMが形成されている。
図5では、一例として演算処理回路PU、制御回路CU、補助記憶回路SMを総称して、コア回路(主回路)CR1として示している。ただし、コア回路CR1に含まれる回路は、上記以外の回路が含まれていても良い。
【0031】
また、ロジックチップLCには、図示しない外部機器との間で信号の入出力を行う外部インタフェース回路(外部入出力回路)GIFが形成されている。外部インタフェース回路GIFには、ロジックチップLCと図示しない外部機器との間で信号を伝送する信号線SGが接続される。また、外部インタフェース回路GIFは、コア回路CR1とも電気的に接続され、コア回路CR1は、外部インタフェース回路GIFを介して外部機器と信号を伝送することができる。
【0032】
また、ロジックチップLCには、内部機器(例えば、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4)との間で信号の入出力を行う内部インタフェース回路(内部入出力回路)NIFが形成されている。内部インタフェース回路NIFには、データ信号を伝送するデータ線(信号線)DS、アドレス信号を伝送するアドレス線(信号線)AS、およびその他の信号を伝送する信号線OSが接続されている。これらの、データ線DS、アドレス線AS、および信号線OSは、それぞれメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の内部インタフェース回路NIFに接続されている。
図5では、外部インタフェース回路GIFや内部インタフェース回路NIFなど、ロジックチップLC以外の電子部品との間で信号の入出力を行う回路を、入出力回路NS1として示している。
【0033】
また、ロジックチップLCには、コア回路CR1や入出力回路NS1を駆動するための電位を供給する電源回路DRを備えている。電源回路DRには、ロジックチップLCの入出力回路NS1を駆動する電圧を供給する、電源回路(入出力用電源回路)DR1と、ロジックチップLCのコア回路CR1を駆動する電圧を供給する、電源回路(コア用電源回路)DR2が含まれる。電源回路DRには、例えば異なる複数の電位(第1電源電位と第2電源電位)が供給され、その電位差によりコア回路CR1や入出力回路NS1に印加される電圧が規定される。
【0034】
ロジックチップLCのように、ある装置やシステムの動作に必要な回路が一つの半導体チップ3に集約して形成されたものを、SoC(System on a Chip)と呼ぶ。ところで、ロジックチップLCに
図5に示す主記憶回路MMを形成すれば、ロジックチップLC、1枚でシステムを構成することができる。しかし、動作させる装置やシステムに応じて、必要な主記憶回路MM(
図5参照)の容量は異なる。そこで、ロジックチップLCとは別の半導体チップ3に主記憶回路MMを形成することで、ロジックチップLCの汎用性を向上させることができる。
【0035】
また、要求される主記憶回路MMの記憶容量に応じて、複数枚のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4を接続することで、システムが備える記憶回路の容量の設計上の自由度が向上する。
図5に示す例では、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4には、それぞれ主記憶回路MMが形成されている。
図5では主記憶回路MMをメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4のコア回路(主回路)CR2として示している。ただし、コア回路CR2に含まれる回路は、主記憶回路MM以外の回路が含まれていても良い。
【0036】
また、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4には、それぞれ内部機器(例えば、ロジックチップLC)との間で信号の入出力を行う内部インタフェース回路(内部入出力回路)NIFが形成されている。
図5では、各メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4以外の電子部品との間で信号の入出力を行う内部インタフェース回路NIFを、入出力回路NS2として示している。
【0037】
また、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4には、コア回路CR2や入出力回路NS2を駆動するための電位を供給する電源回路(駆動回路)DRを備えている。電源回路DRには、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の入出力回路NS2を駆動する電圧を供給する、電源回路(入出力用電源回路)DR3と、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4のコア回路CR2を駆動する電圧を供給する、電源回路(コア用電源回路)DR4が含まれる。電源回路DRには、例えば異なる複数の電位(例えば第1電源電位と第2電源電位)が供給され、その電位差によりコア回路CR2や入出力回路NS2に印加される電圧が規定される。
【0038】
なお、
図5に示す例では、ロジックチップLCの電源回路DR1と、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の電源回路DR3を兼用化している。言い換えれば、ロジックチップLCの入出力回路NS1とメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の入出力回路NS2は、電源線V2から供給される同じ電圧が印加されて駆動するようになっている。このように、電源回路DRの一部または全部を兼用化することで、電源回路に電位(駆動電圧)を供給する電源線V1、V2、V3の数を低減することができる。また、電源線V1、V2、V3の数を低減すれば、ロジックチップLCに形成される電極数を低減することができる。
【0039】
半導体装置1のように、ある装置やシステムの動作に必要な回路が一つの半導体装置1に集約して形成されたものを、SiP(System in Package)と呼ぶ。なお、
図4では、一つのロジックチップLC上に、四つのメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4を積層した例を示しているが、上記の通り、半導体チップ3の積層数には種々の変形例がある。図示は省略するが、例えば、最小限の構成としては、一つのロジックチップLC上に一つのメモリチップMC1を搭載する変形例に適用することができる。
【0040】
また、ロジックチップLCおよびメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の汎用性を向上させる観点からは、ロジックチップLCおよびメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の平面サイズ(平面視における寸法、表面3aおよび裏面3bの寸法、外形サイズ)は、各半導体チップ3の機能を達成可能な範囲内で最小化することが好ましい。ロジックチップLCは、回路素子の集積度を向上させることにより平面サイズを低減することができる。一方、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4は、平面サイズに応じて、主記憶回路MMの容量や伝送速度(例えばデータバスの幅によるデータ転送量)が変化するので、平面サイズの小型化には限界がある。
【0041】
このため、
図4に示す例では、メモリチップMC4の平面サイズは、ロジックチップLCの平面サイズよりも大きい。例えば、メモリチップMC4の平面サイズは、一辺の長さが8mm〜10mm程度の四角形であるのに対し、ロジックチップLCの平面サイズは、一辺の長さが5mm〜6mm程度の四角形である。また、図示は省略するが、
図4に示すメモリチップMC1、MC2、MC3の平面サイズは、メモリチップMC4の平面サイズと同じである。
【0042】
また、上記したように、ロジックチップLCには、図示しない外部機器との間で信号の入出力を行う外部インタフェース回路GIFが形成されるので、外部機器との伝送距離を短縮する観点から、複数の半導体チップ3の積層順は、ロジックチップLCを最下段、すなわち、配線基板2に最も近い位置に搭載することが好ましい。つまり、半導体装置1のように平面サイズの小さい半導体チップ3(ロジックチップLC)上に、平面サイズが大きい半導体チップ3(メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4)を積層する構成が好ましい。
【0043】
<半導体チップの構造例>
次に、
図4に示すロジックチップLCおよびメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の詳細および各半導体チップ3の電気的な接続方法について説明する。
図6は
図4に示すA部の拡大断面図である。また、
図7は、
図4に示すメモリチップの表面側を示す平面図、
図8は、
図7に示すメモリチップの裏面側の一例を示す平面図である。また、
図9は、
図4に示すロジックチップの表面側を示す平面図、
図10は、
図9に示すロジックチップの裏面側の一例を示す平面図である。なお、
図6〜
図10では、見易さのため、電極数を少なくして示しているが、電極(表面電極3ap、裏面電極3bp、貫通電極3tsv)の数は、
図6〜
図10に示す態様には限定されない。また、
図8では、メモリチップMC1、MC2、MC3の裏面図を示すが、裏面電極3bpが形成されないメモリチップMC4(
図4参照)の裏面の構造は、
図3に示されているので、図示は省略する。
【0044】
本願発明者は、SiP型の半導体装置の性能を向上させる技術を検討しているが、この一環として、SiPに搭載される複数の半導体チップ間の信号伝送速度を、例えば12Gbps(毎秒12ギガビット)以上に向上させる技術について検討した。SiPに搭載される複数の半導体チップ間の伝送速度を向上させる方法として、内部インタフェースのデータバスの幅を大きくして1回に伝送するデータ量を増加させる方法がある(以下、バス幅拡大化と記載する)。また、別の方法として、単位時間当たりの伝送回数を増やす方法がある(以下、高クロック化と記載する)。また、上記したバス幅拡大法とクロック数増加法を組み合わせて適用する方法がある。
図1〜
図5を用いて説明した半導体装置1は、バス幅拡大化と高クロック化を組み合わせて適用することにより、内部インタフェースの伝送速度を12Gbps以上に向上させた半導体装置である。
【0045】
例えば
図4に示すメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4は、それぞれ512bitのデータバスの幅を持つ、所謂、ワイドI/Oメモリである。詳しくは、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4は、データバスの幅が128bitのチャンネルを、それぞれ4つ備えており、この4チャンネルのバス幅を合計すると、512bitとなる。また、各チャンネルの単位時間当たりの伝送回数は高クロック化され、例えばそれぞれ3Gbps以上になっている。
【0046】
このように、高クロック化とバス幅拡大化を組み合わせて適用する場合には、多数のデータ線を高速で動作させる必要があるため、ノイズの影響を低減する観点から、データの伝送距離を短縮する必要がある。そこで、
図4に示すように、ロジックチップLCとメモリチップMC1は、ロジックチップLCとメモリチップMC1の間に配置される導電性部材を介して電気的に接続されている。また、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4は、それぞれ、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の間に配置される導電性部材を介して電気的に接続される。言い換えれば、半導体装置1では、ロジックチップLCとメモリチップMC1の間の伝送経路に、配線基板2や図示しないワイヤ(ボンディングワイヤ)が含まれない。また、半導体装置1では、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4間の伝送経路に、配線基板2や図示しないワイヤ(ボンディングワイヤ)が含まれない。
【0047】
本実施の形態では複数の半導体チップ3同士を直接的に接続する方法として、半導体チップ3を厚さ方向に貫通する貫通電極を形成し、この貫通電極を介して積層された半導体チップ3同士を接続する技術を適用している。詳しくは、
図6に示すようにロジックチップLCは、表面3aに形成された複数の表面電極(電極、パッド、表面側パッド)3ap、および裏面3bに形成された複数の裏面電極(電極、パッド、裏面側パッド)3bpを有している。また、ロジックチップLCは、表面3aおよび裏面3bのうちの一方から他方に向かって貫通するように形成され、かつ、複数の表面電極3apと複数の裏面電極3bpを電気的に接続する複数の貫通電極3tsvを有している。
【0048】
半導体チップ3が備える各種回路(半導体素子およびこれに接続される配線)は、半導体チップ3の表面3a側に形成される。詳しくは、半導体チップ3は、例えばシリコン(Si)からなる半導体基板(図示は省略)を備え、半導体基板の主面(素子形成面)に、例えばトランジスタなどの複数の半導体素子(図示は省略)が形成される。半導体基板の主面上(表面3a側)には、複数の配線と複数の配線間を絶縁する絶縁膜を備える配線層(図示は省略)が積層される。配線層の複数の配線は複数の半導体素子とそれぞれ電気的に接続されて、回路を構成する。半導体チップ3の表面3a(
図4参照)に形成される複数の表面電極3apは、半導体基板と表面3aの間に設けられている配線層を介して半導体素子と電気的に接続され、回路の一部を構成する。
【0049】
したがって、
図6に示すように、半導体チップ3を厚さ方向に貫通する貫通電極3tsvを形成し、貫通電極3tsvを介して表面電極3apと裏面電極3bpを電気的に接続することで、裏面電極3bpと表面3a側に形成された半導体チップ3の回路を電気的に接続することができる。つまり、
図6に示すように、メモリチップMC1の表面電極3apとロジックチップLCの裏面電極3bpを、外部端子(突起電極、導電性部材、バンプ電極)7などの導電性部材を介して電気的に接続すれば、メモリチップMC1の回路とロジックチップLCの回路は貫通電極3tsvを介して電気的に接続される。
【0050】
また、本実施の形態では、メモリチップMC1と配線基板2の間に搭載されるロジックチップLCが、複数の貫通電極3tsvを有している。このため、メモリチップMC1とロジックチップLCを、貫通電極3tsvを介して電気的に接続することで、ロジックチップLCとメモリチップMC1の間の伝送経路から、配線基板2や図示しないワイヤ(ボンディングワイヤ)を排除することができる。この結果、ロジックチップLCとメモリチップMC1の間の伝送経路中のインピーダンス成分を低減し、高クロック化させたことによるノイズの影響を低減することができる。言い換えれば、ロジックチップLCとメモリチップMC1の間の信号伝送速度を向上させた場合でも、伝送信頼性を向上させることができる。
【0051】
また、
図6に示す例では、ロジックチップLC上には、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4が積層されるので、この複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4間でも、信号伝送速度を向上させることが好ましい。そこで、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4のうち、上下にそれぞれ半導体チップ3が配置されるメモリチップMC1、MC2、MC3は、ロジックチップLCと同様に複数の貫通電極3tsvを有している。詳しくは、メモリチップMC1、MC2、MC3のそれぞれは、表面3aに形成された複数の表面電極(電極、パッド)3ap、および裏面3bに形成された複数の裏面電極(電極、パッド)3bpを有している。また、メモリチップMC1、MC2、MC3のそれぞれは、表面3aおよび裏面3bのうちの一方から他方に向かって貫通するように形成され、かつ、複数の表面電極3apと複数の裏面電極3bpを電気的に接続する複数の貫通電極3tsvを有している。
【0052】
したがって、上記したロジックチップLCの場合と同様に、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4のうち、上段側の半導体チップ3の表面電極3apと下段側の半導体チップ3の裏面電極3bpを、外部端子7などの導電性部材を介して電気的に接続すれば、積層された複数の半導体チップ3の回路は、貫通電極3tsvを介して電気的に接続される。
【0053】
このため、各半導体チップ3間を、外部端子7(半田材7a)を介して接続することで、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の間の伝送経路から、配線基板2や図示しないワイヤ(ボンディングワイヤ)を排除することができる。この結果、積層された複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の間の伝送経路中のインピーダンス成分を低減し、高クロック化させたことによるノイズの影響を低減することができる。言い換えれば、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の間の信号伝送速度を向上させた場合でも、伝送信頼性を向上させることができる。
【0054】
なお、
図6に示す例では、最上段に搭載されるメモリチップMC4は、メモリチップMC3と接続されれば良いので、複数の表面電極3apは形成されるが、複数の裏面電極3bpおよび複数の貫通電極3tsvは形成されていない。このように、最上段に搭載されるメモリチップMC4は、複数の裏面電極3bpおよび複数の貫通電極3tsvを備えない構造を採用することで、メモリチップMC4の製造工程を簡略化することができる。ただし、図示は省略するが、変形例としては、メモリチップMC4についても、メモリチップMC1、MC2、MC3と同様に、複数の裏面電極3bpおよび複数の貫通電極3tsvを備えた構造にすることもできる。この場合、積層される複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4を同一の構造にすることで、製造効率を向上させることができる。
【0055】
また、積層された半導体チップ3の間に配置され、上段側の半導体チップ3の表面電極3apと下段側の半導体チップ3の3bpを電気的に接続する外部端子7は、
図6に示す例では、例えば以下の材料を用いている。すなわち、ロジックチップLCと配線基板2を電気的に接続する外部端子7は、柱状(例えば円柱形)に形成した銅(Cu)を主成分とする部材(突起電極7b)の先端に、ニッケル(Ni)膜、半田(例えばSnAg)膜(半田材7a)を積層した金属部材であって、先端の半田膜を裏面電極3bpに接合させることで、電気的に接続される。
【0056】
また、ロジックチップLCと配線基板2の接合部以外では、突起電極7bを介さずに、半田材7aを介して接合する例を示している。この場合、表面電極3apの露出面に半田材7aを接合し、半田材7aを外部端子(所謂マイクロバンプと呼ばれるバンプ電極)として用いることができる。
【0057】
ただし、外部端子7を構成する材料は、電気的特性上の要求、あるいは接合強度上の要求を満たす範囲内で種々の変形例を適用することができる。例えば、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の表面電極3apのそれぞれに、突起電極7bを形成し、突起電極7bおよび半田材7aを介して電気的に接続することができる。あるいは、ロジックチップLCの表面電極3apの露出面に半田材7aを直接接合し、この半田材7aを介して配線基板2と電気的に接続することができる。
【0058】
また、
図6に示すロジックチップLCやメモリチップMC1、MC2、MC3のように、貫通電極3tsvを備える半導体チップ3は、厚さ、すなわち、表面3aと裏面3bの離間距離は薄く(小さく)することが好ましい。半導体チップ3の厚さを薄くすれば、貫通電極3tsvの伝送距離が短縮されるので、インピーダンス成分を低減できる点で好ましい。また、半導体基板の厚さ方向に開口部(貫通孔および貫通しない穴を含む)を形成する場合、孔の深さが深くなるほど加工精度が低下する。言い換えれば、半導体チップ3の厚さを薄くすれば、貫通電極3tsvを形成するための開口部の加工精度を向上させることができる。このため、複数の貫通電極3tsvの径(半導体チップ3の厚さ方向に対して直交方向の長さ、幅)を揃えることができるので、複数の伝送経路のインピーダンス成分を制御し易くなる。
【0059】
図6に示す例では、ロジックチップLCの厚さは、ロジックチップLC上に配置される複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の積層体MCS(
図4参照)の厚さよりも薄い。また、ロジックチップLCの厚さは、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4のうち、最上段に搭載され、貫通電極3tsvが形成されていないメモリチップMC4の厚さよりも薄い。例えば、ロジックチップLCの厚さは50μmである。これに対し、メモリチップMC4の厚さは80μm〜100μm程度である。また、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の積層体MCS(
図4参照)の厚さは260μm程度である。
【0060】
上記のように、半導体チップ3を薄型化する場合、半導体チップ3を露出させた状態では、半導体チップ3が損傷する懸念がある。本実施の形態によれば、
図4に示すように、複数の半導体チップ3に封止体4を密着させて封止する。このため、封止体4は半導体チップ3の保護部材として機能し、半導体チップ3の損傷を抑制することができる。つまり、本実施の形態によれば、複数の半導体チップ3を樹脂で封止することにより、半導体装置1の信頼性(耐久性)を向上させることができる。
【0061】
また、貫通電極3tsvを備える半導体チップ3を積層する半導体装置1の場合、伝送距離短縮の観点から、半導体チップ3と配線基板2の間隔も狭くする事が好ましい。例えば、
図6に示す例では、ロジックチップLCの表面3aと配線基板2の上面2aの間隔は例えば10μm〜20μm程度である。また、メモリチップMC1の表面3aと配線基板2の上面2aの間隔は例えば70μm〜100μm程度である。このように、貫通電極3tsvを備える半導体チップ3を積層する半導体装置1では、半導体チップ3の厚さおよび離間距離を小さくすることで、伝送距離の短縮を図ることが好ましい。
【0062】
また、本実施の形態では、表面電極3apおよび裏面電極3bpの平面視におけるレイアウトにおいて、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4とロジックチップLCの間の伝送距離を短縮することが可能な構成を適用している。
【0063】
図7に示すように、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4が備える複数の表面電極3apは、表面3aにおいて中央部に集約して配置されている。
図8に示すように、メモリチップMC1、MC2、MC3が備える複数の裏面電極3bpは、裏面3bにおいて中央部に集約して配置されている。
図6に示すように、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の複数の表面電極3apとメモリチップMC1、MC2、MC3の複数の裏面電極3bpは、それぞれが厚さ方向に重なる位置に配置されている。
【0064】
また、
図9に示すように、ロジックチップLCが備える複数の表面電極3apのうちの一部(複数の表面電極3ap1)は、表面3aにおいて中央部に集約して配置されている。また、ロジックチップLCが備える複数の表面電極3apのうちの一部(複数の表面電極3ap2)は、表面3aの周縁部に表面3aの辺(側面3c)に沿って配置されている。
図9に示す複数の表面電極3apのうち、表面3aの中央部に配置される複数の表面電極3ap1は、
図6に示す貫通電極3tsvを介して裏面電極3bpと電気的に接続されている。つまり複数の表面電極3ap1は、内部インタフェース用の電極である。一方、
図9に示す複数の表面電極3apのうち、表面3aの周縁部に配置される複数の表面電極3ap2は、
図4に示す配線基板2を介して図示しない外部機器と電気的に接続されている。詳しくは、表面電極3ap2は、外部端子7を介してボンディングリード2f(
図4参照)と電気的に接合されている。つまり複数の表面電極3ap2は、外部インタフェース用の電極である。
【0065】
複数の半導体チップ3の間の伝送距離を短くする観点からは、
図6に示すように内部インタフェース用の表面電極3apと裏面電極3bpを厚さ方向に重なる位置に配置して外部端子7を介して接続する方式が特に好ましい。
【0066】
また、上記したように、ロジックチップLCの平面サイズは、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の平面サイズよりも小さい。また、
図3に示すように半導体装置1では、平面視において、ロジックチップLCの裏面3bの中央部(中央領域)がメモリチップMC4の中心部(中央領域)と重なるように配置されている。つまり、平面視において、メモリチップMC4の四つの側面3cは、ロジックチップLCの四つの側面3cよりも外側に配置される。言い換えれば、複数の半導体チップ3は、メモリチップMC4の四つの側面3cが、ロジックチップLCの四つの側面3cと配線基板2の四つの側面2cの間に位置するように、配線基板2上に積層して搭載される。また、
図4に示すメモリチップMC1、MC2、MC3は平面視において、メモリチップMC4と重なる位置(同じ位置)に配置される。
【0067】
このため、平面視において、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の周縁部(表面3aおよび裏面3bの周縁部)は、ロジックチップLCの外側の周辺領域と重なる位置に配置される。言い換えれば、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の周縁部と配線基板2の間には、ロジックチップLCが存在しない(例えば
図4を参照)。
【0068】
そこで、
図6に示す各半導体チップ3の、内部インタフェース用の表面電極3apと裏面電極3bpを厚さ方向に重なる位置に配置するためには、少なくとも内部インタフェース用の表面電極3apと裏面電極3bpは、ロジックチップLCと厚さ方向に重なる位置に配置することが好ましい。また、ロジックチップLCの周縁部には、
図9に示すように、外部インタフェース用の複数の表面電極3ap2が配置される。したがって、ロジックチップLCの表面3aにおいて、内部インタフェース用の複数の表面電極3ap1は、表面3aの中央部に集約して配置することが好ましい。
【0069】
また、
図7に示すように、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の表面3a側(詳しくは、半導体基板の主面上)には、複数のメモリ領域(記憶回路素子配列領域)MRが形成されている。
図7に示す例では、上記した4チャンネルに対応した四つのメモリ領域MRが形成されている。各メモリ領域MRには複数のメモリセル(記憶回路素子)がアレイ状に配置されている。ここで、
図7に示すように、複数の表面電極3apを表面3aの中央部に集約して配置すれば、表面電極群が配置された領域を囲むように、4チャンネル分のメモリ領域MRを配置するこができる。この結果、各メモリ領域MRから表面電極3apまでの距離を均等化することができる。つまり、複数のチャンネルそれぞれの伝送距離を等長化することができるので、チャネル毎の伝送速度の誤差を低減することができる点で好ましい。
【0070】
ところで、
図9に示すロジックチップLCの表面3aの中央部に集約される表面電極3ap1を内部インタフェース専用の電極として利用する場合には、表面電極3ap1を
図6に示す配線基板2と電気的に接続しなくても機能させることができる。しかし、
図6に示すように、表面電極3ap1の一部を配線基板2のボンディングリード2fと電気的に接続した場合には、表面電極3ap1の一部を外部インタフェース用の電極として利用できる点で好ましい。
【0071】
例えば、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4には
図5に示す主記憶回路MMを駆動させるための電源回路DRが形成されるが、この電源回路DRに電源電位(第1基準電位)や基準電位(第1基準電位と異なる第2基準電位、例えば接地電位)を供給する端子として、
図9に示す表面電極3ap1の一部を利用することが考えられる。言い換えれば、
図9に示す例では、ロジックチップLCの表面3aの中央部に配置される複数の表面電極3ap1には、第1基準電位(例えば電源電位)が供給される第1基準電位電極と、第1基準電位とは異なる第2基準電位(例えば接地電位)が供給される第2基準電位電極が含まれる。さらに言い換えれば、
図9に示す例では、ロジックチップLCの表面3aの中央部に配置される複数の表面電極3ap1には、メモリチップMC1に形成された回路を駆動する電圧を供給する電源線V2、V3(
図5参照)が含まれる。
【0072】
信号伝送速度を向上させる場合、瞬間的な電圧降下などによる動作の不安定化を抑制する観点から、電源の供給源と電源を消費する回路間の伝送距離を短くすることが好ましい。そこで、ロジックチップLCの表面電極3ap1の一部を配線基板2と電気的に接続し、第1基準電位(例えば電源電位)や第2基準電位(例えば接地電位)を供給すれば、電源を消費する回路が形成されたメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の駆動回路までの距離を短縮できる点で好ましい。また、第1基準電位(例えば電源電位)が供給される第1基準電位電極と、第1基準電位とは異なる第2基準電位(例えば接地電位)が供給される第2基準電位電極は、
図6に示すように表面電極3apと裏面電極3bpが厚さ方向に重なるように配置され、かつ貫通電極3tsvを介して電気的に接続されていることが好ましい。
【0073】
<半導体チップの位置合わせ精度>
本願発明者の検討によれば、下段側の半導体チップ3の裏面電極3bpと、上段側の半導体チップ3の表面電極3apを対向配置させて、外部端子7を介して電気的に接続する場合、半導体チップ3を積層する際に、高い位置合わせ精度が要求されることが判った。
【0074】
図6に示すように、下段側の半導体チップ3の裏面電極3bpと上段側の半導体チップ3の表面電極3apを電気的に接続するためには、裏面電極3bpの位置と表面電極3apの位置が厚さ方向に重なるように配置する必要がある。また、裏面電極3bpの位置と表面電極3apの位置が重なる面積が小さい場合、半田材7aと裏面電極3bp(または表面電極3ap)との接合面積が小さくなって、電気的特性が低下する懸念が生じる。このため、下段側の半導体チップ3の裏面電極3bpと上段側の半導体チップ3の表面電極3apの位置合わせ精度を向上させる必要がある。
【0075】
特に、
図10に示すように、ロジックチップLCの裏面電極3bpの数が多くなると、位置合わせ精度が要求される対象物が増えるので、特に高精度での位置合わせが必要になる。また、ロジックチップLCの裏面電極3bpの電極間ピッチ(隣り合う電極の離間距離)が小さくなると、位置ズレにより、隣の電極に接触してしまう懸念が大きくなるので、特に高精度での位置合わせが必要になる。
【0076】
そこで、本願発明者は、配線基板2上に複数の半導体チップ3を積層する際に、位置合わせ精度を向上させる技術について検討を行った。
図11は、
図4に示す半導体装置を組み立てる際に使用する位置合わせ手段(アライメントマーク)を模式的に示す説明図である。また、
図12は
図11に対応する検討例を示す説明図である。
【0077】
まず、本願発明者は、
図12に示すように、配線基板2と複数の半導体チップ3の表面3aに、それぞれアライメントマーク50を形成する方法について検討した。
図12に示す位置合わせ方法では、まず、配線基板2に形成したアライメントマーク50aと、ロジックチップLCの表面3aに形成されたアライメントマーク50bを検出(認識)して位置合わせを行った後、配線基板2上にロジックチップLCを搭載する。次に、配線基板2に形成したアライメントマーク50aと、積層体MCSの表面3aに形成されたアライメントマーク50dを検出(認識)して位置合わせを行った後、ロジックチップLC上に積層体MCSを搭載する。
【0078】
図12に示す方法の場合、ロジックチップLCの配線基板2に対する位置合わせ精度は、主として、アライメントマーク50a、50bの位置を検出する検出精度と、ロジックチップLCを搭載する際の搬送精度により規定される。例えば、電極間ピッチ(隣り合う電極の離間距離)が60μmである場合に、ロジックチップLCの配線基板2に対する位置合わせ精度を±5μm〜10μm程度の誤差範囲内に収めれば、ロジックチップLCと配線基板2の電気的接続信頼性は十分に確保可能である。
【0079】
一方、積層体MCSの配線基板2に対する位置合わせ精度は、主として、アライメントマーク50a、50dの位置を検出する検出精度と、積層体MCSを搭載する際の搬送精度により規定される。したがって、上記したロジックチップLCを搭載する工程と同じ検出装置、同じ搭載装置を用いれば、積層体MCSの配線基板2に対する位置合わせ精度を±5μm〜10μm程度の誤差範囲内に収めることができる。
【0080】
ところが、
図12に示す方法の場合、積層体MCSのロジックチップLCに対する位置合わせ精度は、積層体MCSとロジックチップLCそれぞれの位置ズレを考慮する必要があるので、±10μm〜20μmになってしまう。また、ロジックチップLCの裏面電極3bpと積層体MCSの表面電極3apの位置合わせ精度については、各電極の形成位置精度も考慮する必要がある。このように、
図12に示す方法の場合、積層する半導体チップ3の数を増やす度に、位置合わせ精度が低下してしまう。また、
図12に示すように2枚の半導体チップ3を積層する場合であっても、電極間ピッチによっては、電気的信頼性が低下する懸念が顕在化する。
【0081】
そこで、本願発明者はさらに検討を行い、
図11に示す構成を見出した。すなわち、
図12に示す構成に加え、ロジックチップLCの裏面3bにアライメントマーク50cを形成している。
図11に示す位置合わせ方法では、まず、配線基板2に形成したアライメントマーク50aと、ロジックチップLCの表面3aに形成されたアライメントマーク50bを検出(認識)して位置合わせを行った後、配線基板2上にロジックチップLCを搭載する。この点は
図12に示す位置合わせ方法と同様である。
【0082】
次に、ロジックチップLCに形成されたアライメントマーク50cと、積層体MCSの表面3aに形成されたアライメントマーク50dを検出(認識)して位置合わせを行った後、ロジックチップLC上に積層体MCSを搭載する。つまり、
図11に示す位置合わせ方法は、ロジックチップLCに形成されたアライメントマーク50cに対して位置合わせを行う点で
図12に示す位置合わせ方法とは異なる。
【0083】
図11に示す位置合わせ方法の場合、ロジックチップLCの裏面3bに形成されたアライメントマーク50cを位置合わせの基準として用いるので、積層体MCSのロジックチップLCに対する位置合わせ精度は、ロジックチップLCの位置ズレを考慮する必要がない。例えば上記した例と同じ検出装置、おなじ搭載装置を用いれば、±5μm〜10μm程度の誤差範囲内に収めることができる。また、
図11に示す位置合わせ方法の場合、積層される半導体チップ3の数を増やした場合でも、位置合わせ精度の低下を防止することができる。
【0084】
つまり、下段側の半導体チップ3に対する上段側の半導体チップ3の位置合わせ精度は、半導体チップ3の積層数には影響されない。また、電極間ピッチが狭い場合であっても、検出装置や搭載装置が備える実力に応じた位置合わせ精度を確保できるので、半導体チップ3間の電気的接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0085】
図3および
図7〜
図10には、本実施の形態1の半導体装置1が有するアライメントマーク50のレイアウト例を記載しているが、アライメントマークの詳細な構造、および好ましい実施態様については半導体装置1の製造方法を説明する際に、詳細に説明する。
【0086】
<半導体装置の製造方法>
次に、
図1〜
図11を用いて説明した半導体装置1の製造工程について説明する。半導体装置1は、
図13に示すフローに沿って製造される。
図13は、
図1〜
図11を用いて説明した半導体装置の製造工程の概要を示す説明図である。各工程の詳細については、
図14〜
図45を用いて、以下に説明する。
【0087】
<基板準備工程>
まず、
図13に示す基板準備工程では、
図14〜
図18に示す配線基板20を準備する。
図14は、
図13に示す基板準備工程で準備する配線基板の全体構造を示す平面図である。また、
図15は
図14に示すデバイス領域1個分の拡大平面図である。また、
図16は
図15のA−A線に沿った拡大断面図である。また、
図17は、
図15の反対側の面を示す拡大平面図である。また、
図18は、
図15のB−B線に沿った拡大断面図である。なお、
図14〜
図17では、見易さのため、端子数を少なくして示しているが、端子(ボンディングリード2f、ランド2g)の数は、
図14〜
図17に示す態様には限定されない。
【0088】
図14に示すように、本工程で準備する配線基板20は、枠部(外枠)20bの内側に複数のデバイス領域20aを備えている。詳しくは、複数(
図14では27個)のデバイス領域20aが行列状に配置されている。複数のデバイス領域20aは、それぞれが、
図1〜
図4に示す配線基板2に相当する。配線基板20は、複数のデバイス領域20aと、各デバイス領域20aの間にダイシングライン(ダイシング領域)20cを有する、所謂、多数個取り基板である。このように、複数のデバイス領域20aを備える多数個取り基板を用いることで、製造効率を向上させることができる。
【0089】
また、
図15および
図16に示すように各デバイス領域20aには、
図4を用いて説明した配線基板2の構成部材がそれぞれ形成されている。配線基板20は、上面2a、上面2aの反対側の下面2b、および上面2a側と下面2b側を電気的に接続する複数の配線層(
図4に示す例では4層)を有する。各配線層には、複数の配線2dおよび複数の配線2d間、および隣り合う配線層間を絶縁する絶縁層(コア層)2eが形成されている。また、配線2dには、絶縁層2eの上面または下面に形成される配線2d1、および絶縁層2eを厚さ方向に貫通するように形成されている層間導電路であるビア配線2d2が含まれる。
【0090】
また、
図15に示すように、配線基板20の上面2aは、
図13に示す第1チップ搭載工程において、
図9に示すロジックチップLCを搭載する予定領域であるチップ搭載領域(チップ搭載部)2p1を含む。チップ搭載領域2p1は上面2aにおいて、デバイス領域20aの中央部に存在する。なお、
図15ではチップ搭載領域2p1、デバイス領域20a、およびダイシングライン20cの位置を示すため、チップ搭載領域2p1、デバイス領域20a、およびダイシングライン20cの輪郭を2点鎖線で示す。しかし、チップ搭載領域2p1は、上記の通りロジックチップLCを搭載する予定領域なので、実際に視認可能な境界線が存在する必要はない。また、デバイス領域20aおよびダイシングライン20cについても、実際に視認可能な境界線が存在する必要はない。
【0091】
また、配線基板20の上面2aは、複数のボンディングリード(端子、チップ搭載面側端子、電極)2fが形成されている。ボンディングリード2fは、
図13に示す第1チップ搭載工程において、
図9に示すロジックチップLCの表面3aに形成された複数の表面電極3apと電気的に接続される端子である。本実施の形態では、ロジックチップLCの表面3a側を配線基板20の上面2aと対向させる、所謂、フェイスダウン実装方式でロジックチップLCを搭載するので、複数のボンディングリード2fの接合部は、チップ搭載領域2p1の内側に形成される。
【0092】
また、配線基板20の上面2aは、絶縁膜(ソルダレジスト膜)2hにより覆われている。絶縁膜2hには開口部2hwが形成され、この開口部2hwにおいて、複数のボンディングリード2fの少なくとも一部(半導体チップとの接合部、ボンディング領域)が絶縁膜2hから露出している。また、図示しないが、本実施の形態では、ダイシングライン(ダイシング領域)20cの上面も絶縁膜2hから露出している。これにより、後の個片化工程(
図13参照)においてダイシングブレード(回転刃)を使用した際、このダイシングブレードに絶縁膜2hが目詰まりすることを抑制できる。すなわち、切断性の低下を抑制できる。しかしながら、切断性を考慮しなければ、ダイシングライン20cの上面は絶縁膜2hで覆われていても良い。
【0093】
一方、
図17に示すように、配線基板20の下面2bには複数のランド2gが形成されている。配線基板20の下面2bは、絶縁膜(ソルダレジスト膜)2kにより覆われている。絶縁膜2kには開口部2kwが形成され、この開口部2kwにおいて、複数のランド2gの少なくとも一部(半田ボール5との接合部)が絶縁膜2kから露出している。また、図示しないが、本実施の形態では、ダイシングライン(ダイシング領域)20cの下面も絶縁膜2kから露出している。これにより、後の個片化工程(
図13参照)においてダイシングブレード(回転刃)を使用した際、このダイシングブレードに絶縁膜2kが目詰まりすることを抑制できる。すなわち、切断性の低下を抑制できる。しかしながら、切断性を考慮しなければ、ダイシングライン20cの上面は絶縁膜2kで覆われていても良い。
【0094】
また、
図16に示すように、複数のボンディングリード2fと複数のランド2gは、複数の配線2dを介して、それぞれ電気的に接続されている。これら複数の配線2d、複数のボンディングリード2fおよび複数のランド2gなどの導体パターンは、例えば、銅(Cu)を主成分とする金属材料で形成される。また、複数の配線2d、複数のボンディングリード2fおよび複数のランド2gは例えば、電解めっき法により形成することができる。また、
図16に示すように、4層以上(
図16では4層)の配線層を有する配線基板20は、例えばビルドアップ工法により、形成することができる。
【0095】
また、
図15および
図18に示すように、配線基板20の上面2aには、アライメントマーク50aが形成されている。アライメントマーク50aは、
図13に示す第1マーク検出工程で検出対象となるパターンであって、例えば、
図16に示す配線2dやボンディングリード2fと同じ金属材料で形成されている。また、
図18に示す例では、絶縁膜2hに開口部2hsが形成され、アライメントマーク50aは、開口部2hsにおいて絶縁膜2hから露出している。
【0096】
詳細は後述するが、
図13に示す第1マーク検出工程では、カメラなどのイメージセンサを用いて、アライメントマーク50aの位置を検出する。したがって、絶縁膜2hから露出する金属パターンをアライメントマーク50aとすることにより、光の反射効率が向上するので、位置検出精度を向上させられる点で好ましい。ただし、アライメントマーク50aの輪郭形状が認識できれば良い。したがって、例えば絶縁膜2hが可視光透過性を有する材料であれば、アライメントマーク50aが絶縁膜2hに覆われていても良い。
【0097】
アライメントマーク50aは、例えば、複数のボンディングリード2fおよび複数の配線2dを形成する際に一括して形成することができる。
【0098】
また、
図15に示すように、アライメントマーク50aは、デバイス領域20a内に形成することが好ましい。変形例としては、アライメントマーク50aをデバイス領域20aの外、すなわち、ダイシングライン(ダイシング領域)20c内、または
図14に示す枠部20bに形成する実施態様も考えられる。しかし、上記したように、アライメントマーク50aは、
図11に示す配線基板2とロジックチップLCの位置合わせを行う際に用いる。このため、チップ搭載領域2p1に近い、デバイス領域20a内に形成する方が、アライメントマーク50aを形成する際の位置精度が向上する点で好ましい。また、変形例として、ダイシングライン(ダイシング領域)20c内にアライメントマーク50aを配置する場合には、後述する第1接着材配置工程において、アライメントマーク50aが接着材により覆われ難くなる。したがって、アライメントマーク50aを確実に露出させる観点からは、ダイシングライン20c内にアライメントマーク50aを配置することが好ましい。
【0099】
また、
図15に示すように、アライメントマーク50aは、デバイス領域20aの複数箇所に形成することが好ましい。アライメントマーク50aが1個の場合であっても、上面2aに沿った座表面において、アライメントマーク50aのX座標の位置とY座標の位置は特定できる。しかし、アライメントマーク50aを少なくとも2箇所以上に形成することにより、デバイス領域20aのθ方向の位置を特定することができるので、位置検出精度を向上させることができる。
【0100】
また、θ方向の位置を特定する精度を向上させる観点からは、2つのアライメントマーク50aの離間距離を大きくする方が好ましい。したがって、
図15に示すように、一つのアライメントマーク50aをデバイス領域20aの一つの角部に配置し、他のアライメントマーク50aをデバイス領域20aの上記一つの角部の対角に位置する角部に配置することが特に好ましい。言い換えれば、二つのアライメントマーク50aは、デバイス領域20aの一つの対角線上に配置されることが好ましい。
【0101】
<第1接着材配置工程>
次に、
図13に示す第1接着材配置工程では、
図19および
図20に示すように、配線基板20の上面2aのチップ搭載領域2p1上に接着材NCL1を配置する。
図19は、
図15に示すチップ搭載領域に接着材を配置した状態を示す拡大平面図、
図20は
図19のA−A線に沿った拡大断面図である。なお、
図19ではチップ搭載領域2p1、2p2、デバイス領域20a、およびダイシングライン20cの位置を示すため、チップ搭載領域2p1、2p2、デバイス領域20a、およびダイシングライン20cの輪郭をそれぞれ2点鎖線で示す。しかし、チップ搭載領域2p1、2p2は、それぞれ、ロジックチップLCおよび積層体MCSを搭載する予定領域なので、実際に視認可能な境界線が存在する必要はない。また、デバイス領域20aおよびダイシングライン20cについても、実際に視認可能な境界線が存在する必要はない。なお、以下、チップ搭載領域2p1、2p2、デバイス領域20aおよびダイシングライン20cを平面図において図示する場合には、同様に実際に視認可能な境界線が存在する必要はない。
【0102】
一般に、半導体チップをフェイスダウン実装方式(フリップチップ接続方式)で配線基板上に搭載する場合、半導体チップと配線基板を電気的に接続した後で接続部分を樹脂で封止する方式(後注入方式)が行われる。この場合、半導体チップと配線基板の隙間の近傍に配置したノズルから樹脂を供給し、毛細管現象を利用して樹脂を隙間に埋め込む。
【0103】
一方、本実施の形態で説明する例では、後述する第1チップ搭載工程でロジックチップLC(
図9参照)を配線基板20上に搭載する前に、接着材NCL1をチップ搭載領域2p1に配置し、接着材NCL1上からロジックチップLCを押し付けて配線基板20と電気的に接続する方式(先塗布方式)で、ロジックチップLCを搭載する。
【0104】
上記した後注入方式の場合、毛細管現象を利用して樹脂を隙間に埋め込むので、一つのデバイス領域20aに対する処理時間(樹脂を注入する時間)が長くなる。一方、上記した先塗布方式の場合、ロジックチップLCの先端(例えば、
図6に示す突起電極7bの先端に形成された半田材7a)とボンディングリード2fの接合部が接触した時点で、既に配線基板20とロジックチップLCの間には、接着材NCL1が埋め込まれている。したがって、上記した後注入方式と比較して、一つのデバイス領域20aに対する処理時間を短縮し、製造効率を向上させることができる点で好ましい。
【0105】
ただし、本実施の形態に対する変形例としては
図13に示す第1チップ搭載工程と第1接着材配置工程の順番を前後させて、後注入方式を適用することができる。例えば、一括して形成する製品形成領域が少ない場合には、処理時間の差は小さくなるので、後注入方式を用いた場合でも、製造効率の低下を抑制できる。
【0106】
また、先塗布方式で使用する接着材NCL1は、上記したように、絶縁性(非導電性)の材料(例えば樹脂材料)から成る。
【0107】
また、接着材NCL1はエネルギーを加えることで硬さ(硬度)が硬くなる(高くなる)樹脂材料で構成され、本実施の形態では、例えば熱硬化性樹脂を含んでいる。また、硬化前の接着材NCL1は
図6に示す外部端子7よりも柔らかく、ロジックチップLCを押し付けることにより変形させられる。
【0108】
また、硬化前の接着材NCL1は、ハンドリング方法の違いから、以下の2通りに大別される。一つは、NCP(Non-Conductive Paste)と呼ばれるペースト状の樹脂(絶縁材ペースト)から成り、図示しないノズルからチップ搭載領域2p1に塗布する方式がある。もう一つは、NCF(Non-Conductive Film)と呼ばれる、予めフィルム状に成形された樹脂(絶縁材フィルム)から成り、フィルム状態のままチップ搭載領域2p1に搬送し、貼り付ける方法がある。絶縁材ペースト(NCP)を使用する場合、絶縁材フィルム(NCF)のように貼り付ける工程が不要なので、絶縁材フィルムを使用する場合よりも半導体チップ等に与えるストレスを小さくすることができる。一方、絶縁材フィルム(NCF)を使用する場合、絶縁材ペースト(NCP)よりも保形性が高いので、接着材NCL1を配置する範囲や厚さを制御し易い。
【0109】
図19および
図20に示す例では、絶縁材フィルム(NCF)である接着材NCL1をチップ搭載領域2p1上に配置して、配線基板20の上面2aと密着するように貼り付けた例を示している。ただし、図示は省略するが、変形例としては、絶縁材ペースト(NCP)を用いることもできる。
【0110】
また、本工程では、
図19に示すように、アライメントマーク50aの光反射効率向上の観点から、接着材NCL1でアライメントマーク50aを覆わないように配置することが好ましい。接着材NCL1が可視光透過性を有する材料であれば、アライメントマーク50aが接着材NCL1に覆われていても良いが、この場合、接着材NCL1の材料選択の自由度が低下する。そこで、アライメントマーク50aは接着材NCL1から露出させることが特に好ましい。
【0111】
また、アライメントマーク50aを、接着材NCL1から露出させるため、アライメントマーク50aの形成位置は、デバイス領域20aの周縁部に形成することが好ましい。
【0112】
<第1チップ準備工程>
また、
図13に示す第1チップ準備工程では、
図9および
図10に示すロジックチップLCを準備する。
図21は、
図6に示す貫通電極を備えた半導体チップの製造工程の概要を模式的に示す説明図である。また、
図22は
図21に続く半導体チップの製造工程の概要を模式的に示す説明図である。なお、
図21および
図22では、貫通電極3tsvおよび貫通電極3tsvと電気的に接続される裏面電極3bpの製造方法を中心に説明し、貫通電極3tsv以外の各種回路の形成工程については図示および説明を省略する。また、
図21および
図22に示す半導体チップの製造方法は、
図4に示すロジックチップLCの他、メモリチップMC1、MC2、MC3の製造方法にも適用することができる。
【0113】
まず、ウエハ準備工程として、
図21に示すウエハ(半導体基板)WHを準備する。ウエハWHは、例えばシリコン(Si)から成る半導体基板であって、平面視において円形を成す。ウエハWHは、半導体素子形成面である表面(主面、上面)WHsおよび表面WHsの反対側の裏面(主面、下面)WHbを有する。また、ウエハWHの厚さは、
図4に示すロジックチップLCやメモリチップMC1、MC2、MC3の厚さよりも厚く、例えば数百μm程度である。
【0114】
次に、孔形成工程として、
図6に示す貫通電極3tsvを形成するための孔(穴、開口部)3tshを形成する。
図21に示す例では、マスク25をウエハWHの表面WHs上に配置して、エッチング処理を施すことにより孔3tshを形成する。なお、
図4に示すロジックチップLCやメモリチップMC1、MC2、MC3の半導体素子は、例えば本工程の後で、かつ、次の配線層形成工程の前に形成することができる。
【0115】
次に、孔3tsh内に例えば銅(Cu)などの金属材料を埋め込んで貫通電極3tsvを形成する。次に、配線層形成工程として、ウエハWHの表面WHs上に配線層(チップ配線層)3dを形成する。本工程では、
図7や
図9に示す複数の表面電極3apを形成し、複数の貫通電極3tsvと複数の表面電極3apをそれぞれ電気的に接続する。なお表面電極3apや表面電極3apと一体に形成される最上層の配線層3dは、例えばアルミニウム(Al)から成る金属膜で形成する。
【0116】
また、本工程では、
図4に示すロジックチップLCやメモリチップMC1、MC2、MC3の半導体素子と
図7および
図9に示す複数の表面電極3apを、配線層3dを介して電気的に接続する。これにより、ロジックチップLCやメモリチップMC1、MC2、MC3の半導体素子は配線層3dを介して電気的に接続される。
【0117】
また、本工程では、
図9に示すアライメントマーク50b、または
図7に示すアライメントマーク50dを形成する。アライメントマーク50b、50dは、表面電極3apや最上層の配線層3dと同じ材料(例えばアルミニウム)で形成できるので、表面電極3apを形成する際に、一括して形成することができる。
図9に示すアライメントマーク50bおよび
図7に示すアライメントマーク50dの詳細については後述する。
【0118】
次に、外部端子形成工程として、表面電極3ap(
図7、
図9参照)上に外部端子7を形成する。本工程では、
図6に示すように、ロジックチップLCの表面電極3ap上に突起電極7bを形成する。突起電極7bの先端に半田材7aを形成する。あるいは、メモリチップMC1の表面電極3ap上に半田材7aを形成する。この半田材7aが、
図6に示す半導体チップ3を配線基板2、または下層の半導体チップ3上に搭載する際の接合材として機能する。
【0119】
次に、
図22に示す裏面研磨工程として、ウエハWHの裏面WHb(
図21参照)側を研磨し、ウエハWHの厚さを薄くする。これにより、
図5に示す半導体チップ3の裏面3bが露出する。言い換えると、貫通電極3tsvはウエハWHを厚さ方向に貫通する。また、複数の貫通電極3tsvは、ウエハWHの裏面3bにおいてウエハWHから露出する。
図22に示す例において、裏面研磨工程では、ガラス板などの支持基材26および表面WHs側を保護する外部端子7を保護する保護層27によりウエハWHを支持した状態で、研磨治具28を用いて研磨する。
【0120】
次に、裏面電極形成工程において、裏面3bに複数の裏面電極3bpを形成し、複数の貫通電極3tsvと電気的に接続する。
【0121】
また、本工程では、
図10に示すアライメントマーク50cを形成する。アライメントマーク50cは、裏面電極3bpと同じ材料(例えば銅)で形成できるので、裏面電極3bpを形成する際に、一括して形成することができる。
図10に示すアライメントマーク50cの詳細については後述する。
【0122】
次に個片化工程として、ウエハWHをダイシングラインに沿って分割し、複数の半導体チップ3を取得する。その後、必要に応じて検査を行い、
図4に示す半導体チップ3(ロジックチップLCやメモリチップMC1、MC2、MC3)が得られる。
【0123】
<第1チップ搭載工程>
次に、
図13に示す第1チップ搭載工程では、
図23や
図24に示すように、ロジックチップLCを配線基板20上に搭載する。なお、
図13に記載される第1チップ搬送工程、第1マーク検出工程、および第1位置合わせ工程は、ロジックチップLCを配線基板20上に搭載する工程に含まれるサブ工程として考えることができる。したがって、本実施の形態では、第1チップ搬送工程、第1マーク検出工程、および第1位置合わせ工程は、第1チップ搭載工程に含まれるサブ工程として説明する。
【0124】
図23は
図19に示す配線基板のチップ搭載領域上にロジックチップLCを搭載した状態を示す拡大平面図である。また、
図24は、
図23のA−A線に沿った拡大断面図である。また、
図25は、
図13に示す第1チップ搬送工程の要部を模式的に示す説明図である。
図26は、
図13に示す第1マーク検出工程の要部を模式的に示す説明図である。また、
図27は、
図26に示すロジックチップのアライメントマークの断面構造の要部を示す要部拡大断面図である。また、
図28は、
図13に示す第1位置合わせ工程の要部を模式的に示す説明図である。また、
図29は、
図28に示す第1位置合わせ工程の後、ロジックチップを配線基板に向かって移動させた状態を模式的に示す説明図である。また、
図30は、
図29に示す保持治具を取り外し、加熱治具を半導体チップの裏面側に押し当てた状態を示す説明図である。
【0125】
本工程では、
図24に示すように、ロジックチップLCの表面3aが配線基板20の上面2aと対向するように、所謂フェイスダウン実装方式(フリップチップ接続方式)によりロジックチップLCを搭載する。また、本工程によりロジックチップLCと配線基板20は電気的に接続される。詳しくは、ロジックチップLCの表面3aに形成された複数の表面電極3apと配線基板20の上面2aに形成された複数のボンディングリード2fは、外部端子7(
図6に示す突起電極7bおよび半田材7a)を介して電気的に接続される。以下、本工程の詳細なフローについて
図25〜
図30を用いて説明する。
【0126】
第1チップ搭載工程には、まず、
図25に示すように、配線基板20のチップ搭載領域2p1上にロジックチップLC(半導体チップ3)を配置する、第1チップ搬送工程が含まれる。ロジックチップLCは、裏面3b側が保持治具(コレット)30に保持された状態でチップ搭載領域2p1上に搬送され、素子形成面側に位置する表面3aが配線基板20の上面2aと対向するようにチップ搭載領域2p1上(または、接着材NCL1上)に配置される。保持治具30は、ロジックチップLCの裏面3bを吸着保持する保持面30aを有し、ロジックチップLCを保持面30aで保持した状態で搬送する。
【0127】
また、ロジックチップLCの表面3a側には突起電極7bが形成されており、突起電極7bの先端には半田材7aが形成されている。一方、配線基板20の上面2aに形成されたボンディングリード2fの接合部には、突起電極7bと電気的に接続するための接合材である半田材7aが、予め形成されている。
【0128】
本実施の形態では、
図13に示す第1位置合わせ工程で、ロジックチップLCと配線基板20の精密な位置合わせを行うので、第1チップ搬送工程の段階では、搬送位置の精度は低くても良い。ただし、第1位置合わせ工程での位置合わせ精度を向上させる観点からは、第1位置合わせ工程での移動距離を小さくする方が好ましい。したがって、例えば、第1チップ搬送工程では、チップ搭載領域2p1上にロジックチップLCが配置される程度の精度で、配線基板20の上面2a上にロジックチップLCを配置することが好ましい。
【0129】
次に、第1チップ搭載工程には、
図26に示すように、配線基板20のアライメントマーク50aとロジックチップLCのアライメントマーク50bを検出(認識)する、第1マーク検出工程が含まれる。
図26に示すように、第1マーク検出工程では、ロジックチップLCを配線基板20上に配置した状態で、配線基板20とロジックチップLCの間にカメラ(マーク位置検出装置、イメージセンサ、撮像装置)60を配置して、配線基板20のアライメントマーク50aとロジックチップLCのアライメントマーク50bを検出(認識)する。
【0130】
カメラ60は、例えば、可視光を受光する受光部60a、受光部60aで受光した光を電気信号に変換する光電変換回路部60b、および光電変換部で変換された電気信号を外部に出力する出力回路部60cを備えている。また、カメラ60は、制御部61と電気的に接続され、出力回路部60cから出力された電気信号は、制御部61が備える、画像処理回路(図示は省略)に伝送され、画像処理が施されると、アライメントマーク50(アライメントマーク50a、50b)の位置データ(座標データ)が出力される。また、アライメントマーク50aとボンディングリード2fの接合部の位置関係を規定する位置データ、または、アライメントマーク50bと表面電極3apの位置関係を規定する位置データを制御部61に入力することで、制御部61において、ボンディングリード2fの接合部や表面電極3apの位置を算出することができる。
【0131】
また、
図26に示す例では、外部から入射された可視光を受光部60aに向けて反射する、可視光反射部(ミラー)60dを備えている。また、カメラ60は、図示しない駆動装置に接続され、配線基板20上を自在に移動可能な状態で固定されている。したがって、可視光反射部60dの反射角度を変更し、かつ、カメラ60の位置を移動させることで、アライメントマーク50a、50bの位置を同じカメラ60で検出(認識)することができる。
【0132】
また、
図26に示す例では、配線基板20上には複数のアライメントマーク50aが、ロジックチップLCの表面3a側には複数のアライメントマーク50bが、それぞれ形成されている。このように、配線基板20とロジックチップLCの表面3aにそれぞれ複数のアライメントマーク50を形成し、この複数のアライメントマーク50の位置をそれぞれ検出することで、例えば、
図19に示すXY平面における座標データに加え、座標軸の傾きを表すθ方向のデータを取得することができる。また、アライメントマーク50の座標データとθ方向のデータを取得すれば、複数のボンディングリード2f(
図15参照)の位置、または、複数の表面電極3ap(
図9参照)の位置を正確に算出することができる。
【0133】
また、
図19に示すように、複数のアライメントマーク50aは、平面視において、四角形を成すデバイス領域20aの一つの対角線上に配置されるように、対向する角部に配置されている。また、
図9に示すように、複数のアライメントマーク50bは、平面視において、四角形を成す表面3aの一つの対角線上に配置されるように、対向する角部に配置されている。このように、アライメントマーク50を互いに対角に位置する角部に配置することで、上記したθ方向のデータの精度を向上させることができる。この結果、複数のボンディングリード2f(
図15参照)の位置、または、複数の表面電極3ap(
図9参照)の位置を算出する精度を向上させることができる。
【0134】
また、
図27に示すように、ロジックチップLCの表面3aに形成されるアライメントマーク50bは、ロジックチップLCの最表面に形成された絶縁膜(保護膜、パッシベーション膜)3pから露出させることが好ましい。
図27に示す例では、ロジックチップLCの最表面に形成された絶縁膜(保護膜、パッシベーション膜)3pに開口部3psが形成され、アライメントマーク50bは、開口部3psにおいて絶縁膜3pから露出している。なお、
図27では、アライメントマーク50bの下層には、厳密には、半導体基板の半導体素子形成面(主面)、表面電極3ap(
図9参照)を電気的に接続する配線層が配置されている。
図27では、この配線層の図示を省略し、半導体基板であるウエハWHのみを示している。
【0135】
図18を用いて説明したアライメントマーク50aと同様に、絶縁膜3pから露出する金属パターンをアライメントマーク50bとすることにより、光の反射効率が向上するので、位置検出精度を向上させられる点で好ましい。ただし、アライメントマーク50bの輪郭形状が認識できれば良い。したがって、例えば絶縁膜3pが可視光透過性を有する材料であれば、アライメントマーク50bが絶縁膜3pに覆われていても良い。
【0136】
なお、アライメントマーク50aについては、
図18を用いて説明した通りなので、重複する説明は省略する。
【0137】
次に、第1チップ搭載工程には、
図28に示すように、配線基板20とロジックチップLCの位置合わせを行う、第1位置合わせ工程が含まれる。
図28に示すように、第1位置合わせ工程では、配線基板20の上面2aに沿って、ロジックチップLCと配線基板20の相対的位置を移動させて、複数のボンディングリード2fの接合部と、ロジックチップLCの表面3aに形成された複数の外部端子7が対向配置されるようにする。
【0138】
上記したように、本実施の形態によれば、複数のボンディングリード2fの位置、および複数の表面電極3apの位置を、それぞれ高精度で算出することができる。したがって、これらの算出データに基づいて、ロジックチップLCと配線基板20の相対的位置を移動させれば、高精度で位置合わせを行うことができる。
【0139】
図28に示す例では、ロジックチップLCと配線基板20の相対的位置を移動させる方法として、
図28に矢印を付して示すようにロジックチップLCを保持する保持治具30を、配線基板20の上面2aに沿って移動させる。ただし、ロジックチップLCと配線基板20の相対的位置関係を移動させることが出来れば良いので、ロジックチップLC、配線基板20のいずれか一方、若しくは両方を移動させることができる。
【0140】
次に、
図29に示すように、ロジックチップLCを配線基板20に向かって移動させる。この時、接着材NCL1は、加熱硬化前の柔らかい状態で配線基板20上に配置されている。したがって、ロジックチップLCの表面3a側は、接着材NCL1に埋め込まれる。また、
図29に示す例では、ロジックチップLCの表面3a側に形成される、アライメントマーク50bは接着材NCL1に覆われる。しかし、アライメントマーク50bの位置を検出する工程(第1マーク検出工程)は、既に完了しているので、特に問題は生じない。
【0141】
また、上記した第1位置合わせ工程により、ロジックチップLCと配線基板20の相対的位置は高精度で位置合わせされている。したがって、配線基板20に向かって、ロジックチップLCを直線的に移動させれば、複数のボンディングリード2fの接合部と、ロジックチップLCの表面3aに形成された複数の外部端子7が対向配置された状態を維持することができる。
【0142】
次に、
図30に示すように、加熱治具31をロジックチップLCの裏面3b側に押し当て、配線基板20に向かってロジックチップLCを押し付ける。上記したように、接着材NCL1は硬化前の柔らかい状態なので、加熱治具31によりロジックチップLCを押し込むと、ロジックチップLCは配線基板20に近づく。ロジックチップLCが配線基板20に近づくと、ロジックチップLCの表面3aに形成された複数の外部端子7の先端(詳しくは、半田材7a)は、ボンディングリード2fのボンディング領域(詳しくは半田材7a)と接触する。
【0143】
また、接着材NCL1の厚さは、少なくとも外部端子7の高さ(突出高さ)、およびボンディングリード2fの厚さの合計よりも厚い。このため、加熱治具31に押し込まれると、ロジックチップLCの表面3a側の一部は、接着材NCL1に埋め込まれる。言い換えれば、ロジックチップLCの側面のうち、少なくとも表面3a側の一部は、接着材NCL1に埋め込まれる。
【0144】
ここで、ロジックチップLCには、アライメントマーク50cおよび裏面電極3bpが形成されているので、接着材NCL1が裏面3b側に回り込んでアライメントマーク50cや裏面電極3bpが覆われることを防止する必要がある。そこで、
図30に示すように、加熱治具31とロジックチップLCの間に加熱治具31およびロジックチップLCよりも柔らかい部材(低弾性部材)、例えば樹脂フィルム(フィルム)32を介在させて、樹脂フィルム32でロジックチップLCの裏面3bを覆うことが好ましい。樹脂フィルム32を介してロジックチップLCを押し付ければ、樹脂フィルム32がロジックチップLCの裏面3bに密着するので、接着材NCL1の厚さを厚くしても、接着材NCL1がロジックチップLCの裏面3bに回り込むことを抑制できる。なお、本実施の形態の樹脂フィルム32は、例えばフッ素樹脂から成る。
【0145】
次に、
図30に示すように加熱治具31にロジックチップLCが押し付けられた状態で、加熱治具(熱源)31によりロジックチップLCおよび接着材NCL1を加熱する。ロジックチップLCと配線基板20の接合部では、ボンディングリード2f側の半田材7aと外部端子側の半田材7aがそれぞれ溶融し、一体化することで、外部端子7とボンディングリード2fを電気的に接続する接合材になる。つまり、加熱治具(熱源)31によりロジックチップLCを加熱することで、突起電極7bとボンディングリード2fは、半田材7aを介して電気的に接続される。
【0146】
また、接着材NCL1を加熱することで、接着材NCL1は硬化する。これにより、ロジックチップLCの一部が埋め込まれた状態で硬化した接着材NCL1が得られる。また、ロジックチップLCのアライメントマーク50cおよび裏面電極3bpは、樹脂フィルム32に覆われているので、硬化した接着材NCL1から露出する。なお、加熱治具(熱源)31からの熱によって接着材NCL1を完全に硬化させる必要はなく、ロジックチップLCを固定できる程度に接着材NCL1に含まれる熱硬化性樹脂の一部を硬化(仮硬化)させた後、配線基板20を図示しない加熱炉に移し、残りの熱硬化性樹脂を硬化(本硬化)させる実施態様にすることができる。接着材NCL1に含まれる熱硬化性樹脂成分全体が硬化する本硬化処理が完了するまでには、時間を要するが、本硬化処理を加熱炉で行うことで、製造効率を向上させることができる。
【0147】
<第2接着材配置工程>
次に、
図13に示す第2接着材配置工程では、
図31に示すように、ロジックチップLC(半導体チップ3)の裏面3b上に、接着材NCL2を配置する。
図31は
図20に示す半導体チップの裏面およびその周囲に接着材を配置した状態を示す拡大平面図、
図32は
図31のA−A線に沿った拡大断面図である。
【0148】
図6に示すように、本実施の形態の半導体装置1は、積層される複数の半導体チップ3の内、最下段(例えば第1段目)に搭載されるロジックチップLC、および下段から数えて第2段目に搭載されるメモリチップMC1は、いずれもフェイスダウン実装方式(フリップチップ接続方式)で搭載される。このため、上記した第1接着材配置工程で説明したように、一つのデバイス領域20a(
図31、
図32参照)に対する処理時間を短縮し、製造効率を向上させることができる点で、上記した先塗布方式を適用することが好ましい。
【0149】
また、先塗布方式で使用する接着材NCL2は、上記したように、絶縁性(非導電性)の材料(例えば樹脂材料)から成る。また、接着材NCL2はエネルギーを加えることで硬さ(硬度)が硬くなる(高くなる)樹脂材料で構成され、本実施の形態では、例えば熱硬化性樹脂を含んでいる。また、硬化前の接着材NCL2は
図6に示す突起電極7bよりも柔らかく、ロジックチップLCを押し付けることにより変形させられる。
【0150】
また、硬化前の接着材NCL2は、ハンドリング方法の違いから、NCPと呼ばれるペースト状の樹脂(絶縁材ペースト)と、NCFと呼ばれる、予めフィルム状に成形された樹脂(絶縁材フィルム)に大別される。本工程で使用する接着材NCL2としては、NCPおよびNCFのいずれか一方を用いることができる。
図31および
図32に示す例では、NCPをノズル33(
図32参照)から吐出して、ロジックチップLCの裏面3b上に、接着材NCL2を配置する。
【0151】
なお、ノズル33からペースト状の接着材NCL2を吐出する点に関しては、上記第1接着材配置工程で説明した、後注入方式と共通する。しかし、本実施の形態では、
図4に示すメモリチップMC1を搭載する前に、予め接着材NCL2を搭載する。したがって、毛細管現象を利用して樹脂を注入する後注入方式と比較すると、接着材NCL2の塗布速度は大幅に向上させることができる。
【0152】
また、
図31に示すように、ロジックチップLCの裏面に形成された複数のアライメントマーク50cは、
図13に示す第2マーク検出工程における検出対象物なので、
アライメントマーク50cが露出するように、接着材NCL2を配置することが好ましい。接着材NCL2を可視光に対して透明あるいは半透明な材料で形成すれば、アライメントマーク50cが接着材NCL2に覆われた場合でもアライメントマーク50cの位置は検出できる。しかし、材料選択の自由度を向上させる観点からは、
図31に示すようにアライメントマーク50cが露出するように、接着材NCL2を配置することが好ましい。また、絶縁材ペースト(NCP)は、絶縁材フィルム(NCF)と比較して、接着材の配置領域を小さくできるので、アライメントマーク50cを露出させ易い。
【0153】
接着材NCL2は、
図13に示す第2チップ搭載工程でメモリチップMC1(
図4参照)とロジックチップLC(
図4参照)を接着固定する固定材機能を有する。また、接着材NCL2は、メモリチップMC1とロジックチップLCの接合部を封止することにより保護する封止材機能を有する。なお、上記封止機能には、メモリチップMC1とロジックチップLCの接合部に伝達される応力を分散させて緩和することにより接合部を保護する、応力緩和機能が含まれる。
【0154】
上記封止材機能を満たす観点では、メモリチップMC1とロジックチップLCの接合部の周囲を包むように接着材NCL2を配置すれば良いので、少なくともメモリチップMC1を搭載した時に、
図6に示す複数の外部端子7が接着材NCL2に封止されていれば良い。
【0155】
<第2チップ準備工程>
また、
図13に示す第2チップ準備工程では、
図4に示すメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の積層体MCSを準備する。本実施の形態に対する変形例としては、ロジックチップLC上にメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4を順次積層することができる。しかし、本実施の形態では、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4を予め積層して、
図34に示す積層体(メモリチップ積層体、半導体チップ積層体)MCSを形成する実施態様について説明する。以下で説明するように、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の積層体MCSを形成する場合、例えば、
図13に示す第2チップ準備工程以外の工程とは別の場所で、他の工程とは独立して行うことができる。例えば、積層体MCSは、購入部品として準備することも可能である。このため、
図13に示す組立工程を簡略化し、全体として製造効率を向上させることができる点で有利である。
【0156】
図33は、
図4に示すメモリチップの積層体の組立工程の概要を模式的に示す説明図である。また、
図34は
図33に続くメモリチップの積層体の組立工程の概要を模式的に示す説明図である。なお、
図33および
図34に示す複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4のそれぞれの製造方法は、
図21および
図22を用いて説明した半導体チップの製造方法を適用して製造することができるので、説明を省略する。
【0157】
まず、組立基材準備工程として、
図34に示す積層体MCSを組み立てるための基材(組立基材)34を準備する。基材34は、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4を積層する組立面34aを有し、組立面34aには、接着層35が設けられている。
【0158】
次にチップ積層工程として、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4を基材34の組立面34a上に積層する。
図33に示す例では、積層される各半導体チップの裏面3bが基材34の組立面34aと対向するように、メモリチップMC4、MC3、MC2、MC1の順で、順次積層される。上段側の半導体チップ3の裏面電極3bpと下段側の半導体チップ3の表面電極3apは、例えば外部端子7(半田材7a)により接合される。また、最上段に配置されるメモリチップMC1の表面電極3apには、
図7に示すように複数のアライメントマーク50dが形成されている。
【0159】
次に、
図34に示す積層体封止工程では、積層された複数の半導体チップ3の間に、樹脂(アンダフィル樹脂)を供給し、封止体(チップ積層体用封止体、チップ積層体用樹脂体)6を形成する。この封止体6は、上記第1接着材配置工程で説明した、後注入方式により形成される。すなわち、予め複数の半導体チップ3を積層した後、ノズル36からアンダフィル樹脂6aを供給し、積層された複数の半導体チップ3の間に埋め込む。アンダフィル樹脂6aは
図13に示す封止工程で使用する封止用の樹脂よりも粘度が低く、毛細管現象を利用して複数の半導体チップ3の間に埋め込むことができる。その後、半導体チップ3の間に埋め込まれたアンダフィル樹脂6aを硬化させて封止体6を得る。
【0160】
この後注入方式で封止体6を形成する方法は、所謂、トランスファモールド方式と比較して隙間の埋め込み特性に優れているため、積層された半導体チップ3の間の隙間が狭い場合に適用して有効である。また、
図34に示すようにアンダフィル樹脂6aを埋め込む隙間が複数段に形成されている場合、複数の隙間に対して一括してアンダフィル樹脂6aを埋め込むことができる。このため、全体としては処理時間を短縮できる。
【0161】
次に、組立基材除去工程では、基材34および接着層35を、メモリチップMC4の裏面3bから剥離させて取り除く。基材34と接着層35を取り除く方法としては、例えば接着層35に含まれる樹脂成分(例えば紫外線硬化樹脂)を硬化させる方法を適用することができる。以上の工程により、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4が積層され、各メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の接続部が封止体6により封止された積層体MCSが得られる。この積層体MCSは、複数の表面電極3apが形成された表面3a(メモリチップMC1の表面3a)および表面3aの反対側に位置する裏面3b(メモリチップMC4の裏面3b)を有する一つのメモリチップと見做すことができる。
【0162】
<第2チップ搭載工程>
次に、
図13に示す第2チップ搭載工程では、
図35および
図36に示すように、積層体MCSをロジックチップLCの裏面3b上に搭載する。なお、
図13に記載される第2チップ搬送工程、第2マーク検出工程、および第2位置合わせ工程は、積層体MCSをロジックチップLC上に搭載する工程に含まれるサブ工程として考えることができる。したがって、本実施の形態では、第2チップ搬送工程、第2マーク検出工程、および第2位置合わせ工程は、第2チップ搭載工程に含まれるサブ工程として説明する。
【0163】
図35は
図31に示すロジックチップの裏面上に積層体を搭載した状態を示す拡大平面図である。また、
図36は、
図35のA−A線に沿った拡大断面図である。また、
図37は、
図13に示す第2チップ搬送工程の要部を模式的に示す説明図である。
図38は、
図13に示す第2マーク検出工程の要部を模式的に示す説明図である。また、
図39は、
図13に示す第2位置合わせ工程の要部を模式的に示す説明図である。また、
図40は、
図39に示す第2位置合わせ工程の後、ロジックチップを配線基板に向かって移動させた状態を模式的に示す説明図である。また、
図41は、
図40に示す保持治具を取り外し、加熱治具を半導体チップの裏面側に押し当てた状態を示す説明図である。
【0164】
本工程では、
図36に示すように、積層体MCSの表面3a(メモリチップMC1の表面3a)がロジックチップLCの裏面3bと対向するように、所謂フェイスダウン実装方式(フリップチップ接続方式)により積層体MCSを搭載する。また、本工程により複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4とロジックチップLCは電気的に接続される。詳しくは、
図6に示すように、積層体MCS(メモリチップMC1)の表面3aに形成された複数の表面電極3apとロジックチップLCの裏面3bに形成された複数の裏面電極3bpは、外部端子7(
図6に示す半田材7a)を介して電気的に接続される。以下、本工程の詳細なフローについて
図37〜
図41を用いて説明する。
【0165】
第2チップ搭載工程には、まず、
図37に示すように、配線基板20のチップ搭載領域2p2上に積層体MCS(半導体チップ3)を配置する、第2チップ搬送工程が含まれる。積層体MCSは、裏面3b側が保持治具(コレット)30に保持された状態でチップ搭載領域2p2上に搬送され、素子形成面側に位置する表面3aが配線基板20の上面2aと対向するようにチップ搭載領域2p2上(または、接合材NCL2上)に配置される。保持治具30は、積層体MCSの裏面3bを吸着保持する保持面30aを有し、積層体MCSを保持面30aで保持した状態で搬送する。チップ搭載領域2p2は、本工程で積層体MCSを搭載する予定領域であって、第1チップ搭載工程で説明したチップ搭載領域2p1と同様に実際に視認可能な境界線が存在する必要はない。
【0166】
また、積層体MCSの表面3a側には外部端子7が形成されている。
図37に示す例では、外部端子7として、半田材7aを接合した例を示している。ただし、
図25に示すロジックチップLCと同様に、突起電極7bを形成し、その先端に半田材7aを形成する変形例を適用することもできる。
【0167】
また、
図37に示す例では、ロジックチップLCの裏面3bに形成された裏面電極3bpの上面には半田材などの接合材は、形成されていない。ただし、
図37に対する変形例として、裏面電極3bpにも、図示しない半田材を形成しておく実施態様を適用することもできる。ただし、裏面電極3bpを覆う半田材を上記した第1チップ搭載工程よりも前に形成しておく場合、
図30に示す加熱治具31で加熱した時に、溶融した半田が樹脂フィルム32に付着する懸念がある。したがって、ロジックチップLCの裏面電極3bpに半田材を形成する場合には、上記第1チップ搭載工程の後、かつ、上記第1接着材配置工程の前に、半田材を塗布する方法が好ましい。
【0168】
また、本実施の形態では、
図13に示す第2位置合わせ工程で、積層体MCSと配線基板20の精密な位置合わせを行うので、第2チップ搬送工程の段階では、搬送位置の精度は低くても良い。ただし、第2位置合わせ工程での位置合わせ精度を向上させる観点からは、第2位置合わせ工程での移動距離を小さくする方が好ましい。したがって、例えば、第2チップ搬送工程では、チップ搭載領域2p2上に積層体MCSが配置される程度の精度で、配線基板20の上面2a上に積層体MCSを配置することが好ましい。
【0169】
次に、第2チップ搭載工程には、
図38に示すように、ロジックチップLCの裏面3bのアライメントマーク50cと積層体MCSのアライメントマーク50bを検出(認識)する、第2マーク検出工程が含まれる。
【0170】
図38に示すように、第2マーク検出工程では、積層体MCSを配線基板20上に配置した状態で、配線基板20と積層体MCSの間にカメラ60を配置して、ロジックチップLCのアライメントマーク50cと積層体MCSのアライメントマーク50dを検出(認識)する。カメラ60およびカメラ60に接続される制御部61や図示しない駆動装置等は、上記した第1マーク検出工程で説明したので、重複する説明は省略する。本工程では、カメラ60により、少なくとも1個以上のアライメントマーク50cと1個以上のアライメントマーク50dをそれぞれ検出する。
【0171】
ここで、
図35に示すように、アライメントマーク50aをデバイス領域20aの周縁部に配置すれば、アライメントマーク50aを視認することが可能である。したがって、ロジックチップLCの裏面3bにはアライメントマーク50cを形成せず、配線基板20のアライメントマーク50aを利用して位置合わせを行う方法が考えられる。
【0172】
しかし、上記第1チップ搭載工程で、高精度の位置合わせを行ったとしても、複数の裏面電極3bpの位置(
図23に示すXY平面の座標位置)や角度(
図23に示すθ方向の角度)にズレが生じる。例えば、第1位置合わせ工程の後、ロジックチップLCを配線基板20に向かって移動させる工程、あるいは、
図29に示す保持治具30から
図30に示す加熱治具31に切り替える際などに、ズレが生じる場合がある。
【0173】
このため、本工程で配線基板20のアライメントマーク50aを利用して積層体MCSの位置合わせを行うと、積層体MCSの外部端子7とロジックチップLCの裏面電極3bpとの位置ズレ量は、配線基板20とロジックチップLCの位置ズレ量と、配線基板20と積層体MCSの位置ズレ量の和になる。つまり、積層体MCSの外部端子7とロジックチップLCの裏面電極3bpとの位置ズレ量は、半導体チップ3それぞれの位置ズレ量よりも大きくなる場合がある。
【0174】
このため、本実施の形態では、上記したように、ロジックチップLCの裏面3bにアライメントマーク50cを形成し、アライメントマーク50cを利用して積層体MCSとロジックチップLCの位置合わせを行う。これにより、積層体MCSの外部端子7とロジックチップLCの裏面電極3bpとの位置ズレ量は、積層体MCSとロジックチップLCの間の位置ズレ量の範囲内に収まる。
【0175】
また、上記した第1マーク検出工程で説明したように、アライメントマーク50cとロジックチップLCの裏面電極3bpの位置関係を規定する位置データ、または、アライメントマーク50dと積層体MCSの表面電極3apの位置関係を規定する位置データを制御部61に入力する。これにより、制御部61において、ロジックチップLCの複数の裏面電極3bpや積層体MCSの複数の表面電極3apの位置を算出することができる。
【0176】
また、
図38に示す例では、ロジックチップLC上には複数のアライメントマーク50cが、積層体MCSの表面3a側には複数のアライメントマーク50dが、それぞれ形成されている。このように、ロジックチップLCの裏面3bと積層体MCSの表面3aにそれぞれ複数のアライメントマーク50を形成し、この複数のアライメントマーク50の位置をそれぞれ検出することで、例えば、
図23に示すXY平面における座標データに加え、座標軸の傾きを表すθ方向のデータを取得することができる。また、アライメントマーク50の座標データとθ方向のデータを取得すれば、ロジックチップLCの複数の裏面電極3bp(
図10参照)の位置、または、積層体MCSの複数の表面電極3ap(
図7参照)の位置を正確に算出することができる。
【0177】
また、
図10に示すように、複数のアライメントマーク50cは、平面視において、四角形を成す裏面3bの一つの対角線上に配置されるように、対向する角部に配置されている。また、
図7に示すように、複数のアライメントマーク50dは、平面視において、四角形を成す表面3aの一つの対角線上に配置されるように、対向する角部に配置されている。このように、アライメントマーク50を互いに対角に位置する角部に配置することで、上記したθ方向のデータの精度を向上させることができる。この結果、複数の裏面電極3bp(
図10参照)の位置、または、複数の表面電極3ap(
図7参照)の位置を算出する精度を向上させることができる。
【0178】
ところで、本実施の形態では、上記した
図7に示すようにメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の表面電極3apを表面3aの中央部に集約配置されている。したがって、表面電極3apの配置スペースを確保する観点から、
図7に示すように、アライメントマーク50dは、複数の表面電極3apよりも外側(周縁部側)に配置することが好ましい。
【0179】
また、
図6に示すようにロジックチップLCの複数の裏面電極3bpはメモリチップMC1の複数の表面電極3apと対向する位置に配置される。したがって、
図10に示すようにロジックチップLCの裏面電極3bpはロジックチップLCの裏面3bの中央部に集約配置されている。したがって、ロジックチップLCの裏面電極3bpの配置スペースを確保する観点から、アライメントマーク50cは、複数の裏面電極3bpよりも外側(周縁部側)に配置することが好ましい。
【0180】
また、上記した
図7に示すように、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4のそれぞれは、表面3aにおいて、表面電極群が配置された領域(中央部)を囲むように、4チャンネル分のメモリ領域MRが配置されている。これにより、各メモリ領域MRから表面電極3apまでの距離の均等化を図っている。このように、各メモリ領域MRから表面電極3apまでの距離の均等化を図る観点からは、メモリ領域MRと複数の表面電極3apの間にアライメントマーク50dを配置しないことが好ましい。したがって、
図7に示すように、複数のアライメントマーク50dのそれぞれは、メモリチップMC1の表面3aにおいて、複数のメモリ領域MRよりも外側(周縁部側)に配置することが好ましい。
【0181】
メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の記憶容量は、メモリ領域MRの面積に比例して大きくなるので、上記のように、複数のアライメントマーク50dを、複数のメモリ領域MRよりも外側(周縁部側)に配置すれば、アライメントマーク50dは、表面3aの周縁部に配置されることになる。この結果、複数のアライメントマーク50d間の距離を大きくすることができるので、上記したようにθ方向の位置合わせ精度を向上させることができる。
【0182】
ただし、θ方向の位置合わせ精度を向上させる観点からは、上記したように、アライメントマーク50dを互いに対角に位置する角部に配置することが特に好ましい。
【0183】
また、
図27に示すように、積層体MCSの表面3aに形成されるアライメントマーク50dは、積層体MCSの最表面に形成された絶縁膜(保護膜、パッシベーション膜)3pから露出させることが好ましい。
図27に示す例では、積層体MCSの最表面に形成された絶縁膜(保護膜、パッシベーション膜)3pに開口部3psが形成され、アライメントマーク50dは、開口部3psにおいて絶縁膜3pから露出している。
【0184】
なお、アライメントマーク50cは、例えば
図38に示すようにロジックチップLCの裏面3b上に形成され、裏面3bを覆う絶縁膜や保護膜は形成されていない。このため、上記第2接着材配置工程において、アライメントマーク50cを避けるように接着材NCL2を配置すれば、容易にアライメントマーク50cを露出させることができる。
【0185】
次に、第2チップ搭載工程には、
図39に示すように、ロジックチップLCと積層体MCSの位置合わせを行う、第2位置合わせ工程が含まれる。
図39に示すように、第2位置合わせ工程では、配線基板20の上面2aに沿って、積層体MCSとロジックチップLC(言い換えれば配線基板20)の相対的位置を移動させて、ロジックチップLCの複数の裏面電極3bpと、積層体MCSの表面3aに形成された複数の外部端子7が対向配置されるようにする。
【0186】
上記したように、本実施の形態によれば、ロジックチップLCの複数の裏面電極3bpの位置、および積層体MCSの複数の表面電極3apの位置を、それぞれ高精度で算出することができる。したがって、これらの算出データに基づいて、積層体MCSとロジックチップLCの相対的位置を移動させれば、高精度で位置合わせを行うことができる。
【0187】
図39に示す例では、積層体MCSとロジックチップLCの相対的位置を移動させる方法として、
図39に矢印を付して示すように積層体MCSを保持する保持治具30を、配線基板20の上面2aに沿って移動させる。ただし、積層体MCSとロジックチップLCの相対的位置関係を移動させることが出来れば良いので、積層体MCS、ロジックチップLCのいずれか一方、若しくは両方を移動させることができる。
【0188】
次に、
図40に示すように、積層体MCSをロジックチップLCに向かって移動させる。上記した第2位置合わせ工程により、積層体MCSとロジックチップLCの相対的位置は高精度で位置合わせされている。したがって、ロジックチップLCに向かって、積層体MCSを直線的に移動させれば、ロジックチップLCの複数の裏面電極3bpと、積層体MCSの表面3aに形成された複数の外部端子7が対向配置された状態を維持することができる。
【0189】
次に、
図41に示すように、加熱治具31を積層体MCSの裏面3b側に押し当て、ロジックチップLCに向かって積層体MCSを押し付ける。この時、接着材NCL2は硬化前の柔らかい状態なので、加熱治具31により積層体MCSを押し込むと、積層体MCSはロジックチップLCに近づく。積層体MCSがロジックチップLCに近づくと、積層体MCSの表面3aに形成された複数の外部端子7の先端(詳しくは、半田材7a)は、裏面電極3bpのボンディング領域(詳しくは半田材7a)と接触する。
【0190】
また、積層体MCSとロジックチップLCの間に塗布された接着材NCL2は、ロジックチップLCの裏面3bに沿って広がる。
図41に示す例では、接着材NCL2の周縁部は、ロジックチップLCの裏面3bの周縁部までは到達していない。ただし、変形例として、ロジックチップLCの周縁部まで接着材NCL2を広げ、ロジックチップLCの側面、あるいは接着材NCL1の側面を覆うようにしても良い。この場合、ロジックチップLCの裏面3bのアライメントマーク50cが、接着材NCL2に覆われる。しかし、アライメントマーク50cの位置は、既に検出済なので、特に問題は生じない。また、接着材NCL2と半導体チップ3の密着面積を広げることにより、接着材NCL2と半導体チップ3(積層体MCSおよびロジックチップLC)の接着強度を向上させることができる。
【0191】
なお、本実施の形態では、積層体MCSの裏面3bにはアライメントマーク50や裏面電極3bpが形成されていない。このため、
図41に示す樹脂フィルム32は省略することができる。ただし、樹脂フィルム32を配置すれば、加熱治具31で押し付ける際に積層体MCSが受ける力を分散させることができる。また、樹脂フィルム32を配置すれば、上記した第1チップ搭載工程と同じ機構で第2チップ搭載工程を行うことができるので、製造工程が単純化できる。したがって、第2チップ搭載工程においても、積層体MCSと加熱治具31の間に樹脂フィルム32を介在させることが好ましい。
【0192】
次に、
図41に示すように加熱治具31に積層体MCSが押し付けられた状態で、加熱治具(熱源)31により積層体MCSおよび接着材NCL2を加熱する。積層体MCSとロジックチップLCの接合部では、外部端子側の半田材7aがそれぞれ溶融し、ロジックチップLCの裏面電極3bpと接合される。つまり、加熱治具(熱源)31により積層体MCSを加熱することで、積層体MCSの複数の表面電極3apとロジックチップLCの複数の裏面電極3bpは、複数の半田材7aを介してそれぞれ電気的に接続される。
【0193】
また、接着材NCL2を加熱することで、接着材NCL2は硬化する。上記第1チップ搭載工程で説明したように、加熱治具(熱源)31からの熱によって接着材NCL1を完全に硬化させる必要はなく、積層体MCSを固定できる程度に接着材NCL1に含まれる熱硬化性樹脂の一部を硬化(仮硬化)させた後、ロジックチップLCを図示しない加熱炉に移し、残りの熱硬化性樹脂を硬化(本硬化)させる実施態様にすることができる。接着材NCL1に含まれる熱硬化性樹脂成分全体が硬化する本硬化処理が完了するまでには、時間を要するが、本硬化処理を加熱炉で行うことで、製造効率を向上させることができる。
【0194】
<封止工程>
次に、
図13に示す封止工程では、
図42に示すように、配線基板20の上面2a、ロジックチップLC、および複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の積層体MCSを樹脂で封止して、封止体4を形成する。
図42は
図36に示す配線基板上に封止体を形成し、積層された複数の半導体チップを封止した状態を示す拡大断面図である。また、
図43は、
図42に示す封止体の全体構造を示す平面図である。
【0195】
本実施の形態では、
図43に示すように、複数のデバイス領域20aを一括して封止する封止体4を形成する。このような封止体4の形成方法は、一括封止(Block Molding)方式と呼ばれ、この一括封止方式により製造された半導体パッケージをMAP(Multi Array Package)型の半導体装置と呼ぶ。一括封止方式では、各デバイス領域20aの間隔を小さくすることができるので、1枚の配線基板20における有効面積が大きくなる。つまり、1枚の配線基板20から取得できる製品個数が増加する。このように、1枚の配線基板20における有効面積を大きくすることで、製造工程を効率化することができる。
【0196】
また、本実施の形態では、図示しない成形金型内に加熱軟化させた樹脂を圧入して成形した後、樹脂を熱硬化させる、所謂、トランスファモールド方式により形成する。トランスファモールド方式により形成された封止体4は、例えば、
図42に示す積層体MCSを封止する封止体6のように、液状の樹脂を硬化させたものと比較して、耐久性が高いので、保護部材として好適である。また、例えば、シリカ(二酸化珪素;SiO
2)粒子などのフィラー粒子を熱硬化性樹脂に混合することで、封止体4の機能(例えば、反り変形に対する耐性)を向上させることができる。
【0197】
なお、本実施の形態では、積層される複数の半導体チップ3の接合部(電気的接続部)は、接着材NCL1、NCL2、および封止体6により封止されている。したがって、変形例としては、封止体4を形成しない実施態様に適用することができる。この場合、本封止体工程は省略することができる。
【0198】
<ボールマウント工程>
次に、
図13に示すボールマウント工程では、
図44に示すように、配線基板20の下面2bに形成された複数のランド2gに、外部端子になる複数の半田ボール5を接合する。
図44は、
図37に示す配線基板の複数のランド上に半田ボールを接合した状態を示す拡大断面図である。
【0199】
本工程では、
図44に示すように配線基板20の上下を反転させた後、配線基板20の下面2bにおいて露出する複数のランド2gのそれぞれの上に半田ボール5を配置した後、加熱することで複数の半田ボール5とランド2gを接合する。本工程により、複数の半田ボール5は、配線基板20を介して複数の半導体チップ3(ロジックチップLCおよびメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4)と電気的に接続される。ただし、本実施の形態で説明する技術は、アレイ状に半田ボール5を接合した、所謂BGA(Ball Grid Array)型の半導体装置に限って適用させるものではない。例えば、本実施の形態に対する変形例としては、半田ボール5を形成せず、ランド2gを露出させた状態、あるいはランド2gに半田ボール5よりも薄く半田ペーストを塗布した状態で出荷する、所謂LGA(Land Grid Array)型の半導体装置に適用することができる。LGA型の半導体装置の場合には、ボールマウント工程は省略することができる。
【0200】
<個片化工程>
次に、
図13に示す個片化工程では、
図45に示すように、配線基板20をデバイス領域20a毎に分割する。
図45は
図44に示す多数個取りの配線基板を個片化した状態を示す断面図である。
【0201】
本工程では、
図45に示すように、ダイシングライン(ダイシング領域)20cに沿って配線基板20および封止体4を切断し、個片化された複数の半導体装置1(
図4参照)を取得する。切断方法は特に限定されないが、
図45に示す例では、ダイシングブレード(回転刃)40を用いてテープ材(ダイシングテープ)41に接着固定された配線基板20および封止体4を、配線基板20の下面2b側から切削加工して切断する実施態様を示している。ただし、本実施の形態で説明する技術は、複数のデバイス領域20aを備えた、多数個取り基板である配線基板20を用いる場合に限って適用させるものではない。例えば、半導体装置1個分に相当する配線基板2(
図4参照)の上に複数の半導体チップ3を積層した半導体装置に適用することができる。この場合、個片化工程は省略することができる。
【0202】
以上の各工程により、
図1〜
図11を用いて説明した半導体装置1が得られる。その後、外観検査や電気的試験など、必要な検査、試験を行い、出荷、あるいは、図示しない実装基板に実装する。
【0203】
<アライメントマークの形状>
次に、アライメントマークの平面視における形状について、好ましい実施態様を説明する。
図46は、
図3、
図7、
図9および
図10に示すアライメントマークを拡大して示す拡大平面図である。また、
図47〜
図49は、それぞれ
図46に対する変形例を示す拡大平面図である。
【0204】
図46に示すアライメントマーク50は、平面視において多角形(
図46ではL字形状)を成す。また、多角形の外接円51の中心に対して非対称な形状になっている。このように、アライメントマーク50の平面形状を、非対称形状にすることで、アライメントマーク50の位置に加え、アライメントマーク50の平面視における傾きを検出することができる。
【0205】
このため、例えば、上記したアライメントマーク50a、50b、50c、50dがそれぞれ1個形成されている場合であっても、
図46に示すXY座表面において、アライメントマーク50のX座標位置、Y座標位置およびθ方向の位置を特定することができる。
【0206】
また、非対称形状のアライメントマーク50を、同一平面上に2個以上配置した場合、
図46に示すθ方向の位置が180度ずれている事を検出することができる。例えば
図7に示す複数のアライメントマーク50d、および
図9に示す複数のアライメントマーク50bを、それぞれ
図46に示す非対称形状にすれば、第1チップ搭載工程および第2チップ搭載工程において、半導体チップ3の搭載する向きが180度ずれる誤搭載を防止または抑制できる。
【0207】
また、
図47に示すアライメントマーク52のように、平面視において、円形を成す形状は、
図46に示す多角形よりも容易に加工できるので、加工精度を向上させることができる。また、円形のアライメントマーク52は、一部が欠落し難いので、検出精度を向上させることができる。
【0208】
このため、例えば、上記したアライメントマーク50a、50b、50c、50dのうち、少なくともいずれか1箇所以上に円形のアライメントマーク52を適用すれば、アライメントマーク52を配置した箇所の位置検出精度を向上させることができる。もちろん、上記したアライメントマーク50a、50b、50c、50dの全てをアライメントマーク52のように円形にすることもできる。
【0209】
ただし、本実施の形態では、
図6に示すように、ロジックチップLCの複数の裏面電極3bpとメモリチップMC1の複数の表面電極3apが確実に対向配置されれば良いので、要求される位置合わせ精度が確保可能な範囲内で種々の変形例を適用することができる。例えば、
図48に示すように、平面視において、四角形を成すアライメントマーク53を適用することができる。また、例えば
図49に示すように、平面視においてX字形状を成すアライメントマーク54を適用することができる。また、上記したアライメントマーク50、52、53、54を組み合わせて適用することができる。
【0210】
(変形例)
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0211】
<変形例1>
例えば上記実施の形態では、アライメントマーク50を検出した結果を利用して半導体チップ3を積層する技術を、第1チップ搭載工程および第2チップ搭載工程で適用する実施態様を説明した。しかし、積層体MCSを組み立てる工程、すなわち、上記した第2チップ準備工程に適用することができる。
図50は
図8に対する変形例を示す平面図である。
【0212】
アライメントマーク50を検出した結果を利用して半導体チップ3を積層する技術を、上記した第2チップ準備工程に適用する場合、
図7に示すように、積層体MCS(
図4参照)を構成する複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4のそれぞれの表面3aにアライメントマーク50dを形成する。また、
図50に示すように、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3のそれぞれの裏面3bにアライメントマーク50eを形成する。
【0213】
本変形例によれば、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4を積層する際の位置合わせ精度が向上するので、複数のメモリチップMC1、MC2、MC3、MC4の電気的接続信頼性を向上させることができる。
【0214】
<変形例2>
また、上記実施の形態では、上段側に搭載される積層体MCSの平面サイズの方が下段側に搭載されるロジックチップLCの平面サイズよりも大きい場合について説明した。しかし、
図51に示す半導体装置1aのように、積層体MCSの平面サイズの方が下段側に搭載されるロジックチップLCの平面サイズよりも小さい場合に適用することができる。
図51は
図3に対する変形例を示す透視平面図である。
【0215】
<変形例3>
また、上記実施の形態では、積層(使用)する複数の半導体チップ3の例として、メモリチップMC1、MC2、MC3、MC4とロジックチップLCで構成されたSiP型の半導体装置1について説明した。しかし、積層された複数の半導体チップ3を互いに、かつ電気的に接続した構造であれば、メモリチップとロジックチップ以外の組み合わせについても適用することができる。
【0216】
<変形例4>
また、上記実施の形態では、
図6に示すようにロジックチップLCの複数の表面電極3apの反対側に複数の裏面電極3bpが配置され、複数の貫通電極3tsvを介して電気的に接続されている実施態様について説明した。しかし、下段側の半導体チップ3に複数の裏面電極3bpが形成され、上段側の半導体チップ3の複数の表面電極3apと外部端子7を介して電気的に接続する半導体装置であれば、貫通電極3tsvが形成されていない実施態様にも適用することができる。
【0217】
<変形例5>
さらに、上記実施の形態で説明した技術思想の要旨を逸脱しない範囲内において、変形例同士を組み合わせて適用することができる。