(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
商用電源から電力が供給される直流電源からの直流電力が供給される直流負荷と、前記直流電源からの直流電力によって充電される蓄電池とが並列に接続された直流電源システムであって、
前記直流電源の出力電圧には、前記蓄電池の充電および前記直流負荷への給電を行うための第一の電圧値と、前記第一の電圧値よりも低く設定され前記蓄電池の前記直流負荷への放電を可能とする第二の電圧値が有り、前記第二の電圧値は予め設定された所定の時間帯に対して設定され、前記蓄電池の放電特性および所望の放電量に対応する値であり、前記蓄電池の容量は、前記所定の時間帯の放電で使用される容量と停電時における前記直流負荷のバックアップに対応する容量とを合計したものとなっている、ことを特徴とする直流電源システム。
前記直流電源には、前記直流負荷へ供給される電力を計測する第一の電力監視手段からの信号および前記蓄電池に対して出入りする電力を計測する第二の電力監視手段からの信号に基づき、前記直流電源の出力電圧を調整する制御部が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の直流電源システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した
図20ないし
図22の直流電源システムは、つぎの問題を有しており、実用化には多くの課題がある。
【0008】
図20の直流電源システムでは、サイクル使用に相当する蓄電池5の容量が大きくなるという問題がある。すなわち、サイクル使用の蓄電池5の寿命を伸ばす目的で蓄電池5の放電深度を下げようとすると、大きな容量の蓄電池が必要となり、システムのコストが増加する。また、専用充電器6が必要となるのでシステムが煩雑になる。さらに、回路切替え用のスイッチ7を使用しなければならないので、システムの信頼性が低下する。
【0009】
図21の直流電源システムでは、DC電源2の出力を停止するので、システム運用時の信頼性が低下するという問題がある。また、バックアップ用の蓄電池3の放電電気量の制御が不正確であり、蓄電池3の突発故障が起きた際に、復旧時に給電電圧の低下などのトラブルが懸念される。
【0010】
図22の直流電源システムでは、直流電力をDC負荷4に供給する電源ラインに切り離しスイッチ8が設けられるので、DC電源2からの電力供給が停止され、
図21の直流電源システムと同様なトラブルが懸念される。
【0011】
そこでこの発明は、停電時における直流負荷に対するバックアップの信頼性を高く維持しつつ、バックアップのための蓄電池を有効利用することが可能な直流電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、
商用電源から電力が供給される直流電源からの直流電力が供給される直流負荷と、前記直流電源からの直流電力によって充電される蓄電池とが並列に接続された直流電源システムであって、前記直流電源の出力電圧には、前記蓄電池の充電および前記直流負荷への給電を行うための第一の電圧値と、前記第一の電圧値よりも低く設定され前記蓄電池の前記直流負荷への放電を可能とする第二の電圧値が有り、前記第二の電圧値は予め設定された所定の時間帯に対して設定され
、前記蓄電池の容量は、前記所定の時間帯の放電で使用される容量と停電時における前記直流負荷のバックアップに対応する容量とを合計したものとなっている、ことを特徴とする直流電源システムである。
【0013】
この発明によれば、直流電源の出力電圧を第一の電圧値から第二の電圧値に低下させることにより、蓄電池の電圧が直流電源の出力電圧よりも高い状態となり、直流負荷には蓄電池の放電による直流電力のみが供給される。蓄電池からの直流負荷への電力供給は、予め設定された所定の時間帯に行われ、所定の時間帯の経過後には、直流電源の出力電圧が第一の電圧値まで復帰し、直流電源による蓄電池の充電と直流負荷への給電が再び開始される。
【0014】
請求項
1に記載の発明は
、前記直流電源の前記第二の電圧値は、前記蓄電池の放電特性および所望の放電量に対応する値であることを特徴としている。
【0015】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の直流電源システムにおいて、前記直流電源には、前記直流負荷へ供給される電力を計測する第一の電力監視手段からの信号および前記蓄電池に対して出入りする電力を計測する第二の電力監視手段からの信号に基づき、前記直流電源の出力電圧を調整する制御部が接続されていることを特徴としている。
【0016】
請求項
3に記載の発明は、請求項1
または2に記載の直流電源システムにおいて、前記第二の電圧値は、前記蓄電池の使用環境温度に対応して調整可能であることを特徴としている。
【0017】
請求項
4に記載の発明は、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の直流電源システムにおいて、前記第二の電圧値は、前記蓄電池の劣化度に対応して調整可能であることを特徴としている。
【0018】
請求項
5に記載の発明は、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の直流電源システムにおいて、前記直流電源と前記蓄電池とを接続する回路には、再生可能エネルギーを利用して発電された直流電力が供給可能であることを特徴としている。
【0019】
請求項
6に記載の発明は、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の直流電源システムにおいて、前記所定の時間帯は、深夜電力料金が適用される時間帯に至るまであることを特徴としている。
【0020】
請求項
7に記載の発明は、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の直流電源システムにおいて、前記蓄電池は、リチウムイオン二次電池から構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、予め設定された所定の時間帯に蓄電池を充電するための出力電圧よりも出力電圧を低下させることにより、蓄電池から直流負荷への放電が可能となるので、バックアップのための蓄電池を有効利用することができ、電力負荷の平準化を図ることができる。また、バックアップ用の蓄電池とサイクル用の蓄電池の二組の蓄電池を用いることが不要となるので、バックアップ用の蓄電池とサイクル用の蓄電池をそれぞれ用いるシステムに比べて、システム全体の蓄電池の容量を少なくすることが可能となり、直流電源システムのコストを低減することができる。さらに、スイッチによる直流電源と蓄電池との切り離しを必要としないので、直流電源システムの信頼性を高めることができる。
【0022】
請求項
1に記載の発明によれば、直流電源の第二の電圧値は、蓄電池の放電特性および所望の放電量に対応する値であるので、蓄電池の過剰の放電を防止することができ、しかも不測の停電発生に際しても直流負荷に対する十分なバックアップが可能となる。
【0023】
請求項
2に記載の発明によれば、直流負荷へ供給される電力を計測する第一の電力監視手段からの信号および蓄電池に対して出入りする電力を計測する第二の電力監視手段からの信号に基づき、直流電源の出力電圧を調整することが可能となり、蓄電池の充電と直流負荷への電力供給を最適化することができる。
【0024】
請求項
3に記載の発明によれば、第二の電圧値は、蓄電池の周囲温度に対応して調整することが可能であるので、使用環境温度によって変化する蓄電池の放電特性を考慮して第一の電圧値と第二の電圧値を調整することができ、蓄電池のバックアップ放電量またはサイクル放電量を確保することができる。
【0025】
請求項
4に記載の発明によれば、第二の電圧値は、蓄電池の劣化度に対応して調整することが可能であるので、劣化が進行した蓄電池の放電特性を考慮して第一の電圧値と第二の電圧値を調整することができ、蓄電池のサイクル放電量を確保することができる。
【0026】
請求項
5に記載の発明によれば、直流電源と蓄電池とを接続する回路には、再生可能エネルギーを利用して発電された直流電力が供給可能であるので、例えば太陽光による電力や風力などによる電力も利用可能となり、地球環境の改善に寄与することができる。
【0027】
請求項
6に記載の発明によれば、所定の時間帯は、深夜電力料金が適用される時間帯に至るまでとしているので、料金の安価な電力を蓄電池の充電に利用することができ、直流電源システムの運用コストを低減することができる。
【0028】
請求項
7に記載の発明によれば、蓄電池はリチウムイオン二次電池から構成されているので、蓄電池のエネルギー密度を高めることができ、蓄電池の小型化によって設置スペースが制限される場所での使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る直流電源システムの概略構成図であり、
図1(a)はフロート充電時の状態を示し、
図1(b)はDC電源の出力電圧を低下させた時の状態を示し、
図1(c)はフロート充電に復帰させた直後の状態を示した図である。
【
図2】
図1の直流電源システムにおけるDC電源の出力電圧の調整を行うための全体制御ブロック図である。
【
図3】
図1の直流電源システムにおけるDC電源の出力電圧の制御を行う制御部の機能を示すブロック図である。
【
図4】
図1の直流電源システムにおけるDC電源の出力電圧低下の設定と蓄電池の動作状況を示す特性図である。
【
図5】
図1の直流電源システムにおけるDC電源の出力電圧低下値の選定法を示す特性図である。
【
図6】
図1の直流電源システムにおける蓄電池から直流負荷への放電量とDC電源の出力電圧低下値の関係を示す特性図である。
【
図7】
図1の直流電源システムにおける蓄電池から直流負荷への放電量とDC電源の出力電圧低下値の関係を数値で示した特性図である。
【
図8】
図1の直流電源システムにおけるDC電源の出力低下時の蓄電池放電とその後の充電状況を示す特性図である。
【
図9】この発明におけるDC電源の出力電流等によって蓄電池の充電状況(完全充電、充電不足)を判定しDC電源の出力電圧低下の制御を行うための特性図である。
【
図10】この発明におけるDC電源の出力電圧低下時の蓄電池放電特性から蓄電池の劣化状態を推定する特性図である。
【
図11】この発明における蓄電池の劣化状態と放電特性との関係を示す特性図である。
【
図12】この発明における蓄電池の使用環境温度とDC電源の出力電圧との関係を示す特性図である。
【
図13】
図12における蓄電池の使用環境温度とDC電源の出力電圧との関係を数値で示した特性図である。
【
図14】この発明における蓄電池の劣化時におけるサイクル放電量とDC電源における出力電圧との関係を示す特性図である。
【
図15】この発明における蓄電池の劣化時におけるバックアップ放電量とDC電源における出力電圧との関係を示す特性図である。
【
図16】この発明におけるDC電源の出力電圧の設定範囲を示す特性図である。
【
図17】この発明の実施の形態2に係る直流電源システムの概略構成図であり、
図1の直流電源システムにおけるDC電源に太陽電池を併設した例を示す概略構成図である。
【
図18】
図17の直流電源システムにおける電力供給の手順を示す特性図である。
【
図19】
図17の直流電源システムにおける電力供給の手順の具体例を示す特性図である。
【
図20】バックアップ用蓄電池を有効利用することが可能な直流電源システムの一例を示す概略構成図である。
【
図21】バックアップ用蓄電池を有効利用することが可能な直流電源システムの別の例を示す概略構成図である。
【
図22】バックアップ用蓄電池を有効利用することが可能な直流電源システムのさらに別の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
つぎに、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0031】
(実施の形態1)
図1ないし
図16は、この実施の形態1に係る直流電源システム10を示している。直流電源システム10は、直流電源(DC電源)12と、蓄電池13と、直流負荷(DC負荷)14とを有している。DC電源12には、商用電源11からの交流電力が供給されている。DC電源12は、交流電力を直流電力に変換する整流器(RF)から構成されている。DC電源12の出力側には、蓄電池13とDC負荷14が並列に接続されている。
【0032】
蓄電池13は、単電池(セル)13aとしてのリチウムイオン二次電池を複数直列に接続した組電池から構成されている。この実施の形態1においては、蓄電池13は、単電池13aが直列に12個接続された電池群が並列に接続された比較的大きな容量の蓄電池から構成されている。これにより、蓄電池13は、電力平準化のための電力供給および停電時のバックアップの双方に対応可能となっている。蓄電池13は、各セルの充電バランスを調整するための組電池管理装置(図示略)によって管理されている。
【0033】
蓄電池13は、停電発生時および後述するDC電源12による強制的な電圧低下操作を除き、通常はフロート充電(浮動充電)で運用されている。この実施の形態1における直流電源システム10では、DC電源12による蓄電池13のフロート充電時の出力電圧は、49.2Vに設定されており、DC負荷14へ供給可能な負荷電流は、例えば10〜100Aに設定されている。また、蓄電池13の放電によるDC負荷14のバックアップ時間は、例えば10〜30時間に設定されている。
【0034】
DC負荷14は、例えば通信機器から構成されている。DC負荷14は、例えばDC電源12または蓄電池13から供給される直流電力の電圧を所望の電圧に制御するDC−DCコンバータ(図示略)を有している。DC負荷14は、
図1(a)に示すように、蓄電池13がDC電源12によってフロート充電されている状態では、同じDC電源12からの直流電力の供給によって動作している。DC負荷14は、DC電源12または蓄電池13から供給される直流電力の電圧変動を考慮した仕様であれば、供給電圧が一定範囲で変動しても正常に動作するので、とくにDC−DCコンバータを必要としない。
【0035】
DC電源12は、予め設定された所定の時間帯に限り、「出力電圧の設定値」(以下、単に「出力電圧」と略記)を、蓄電池13をフロート充電するための出力電圧よりも出力電圧を低下させることにより蓄電池13からDC負荷14への放電を可能にし、所定の時間帯の経過後には低下させた出力電圧を蓄電池13のフロート充電をするための出力電圧に復帰させることにより蓄電池13の回復充電を行う機能を有している。すなわち、DC電源12は、交流電力を直流電力に変換する整流器の機能に加え、蓄電池13の充電および放電を自動で行うための充放電制御機能を有している。DC電源12には、蓄電池13の充放電制御を行うための制御部123が接続されており、蓄電池13の充放電制御は、制御部123に予め入力されたプログラムに基づいて行われるようになっている。
【0036】
図2は、
図1の直流電源システム10におけるDC電源12の出力電圧の調整を行うための全体制御のブロック図を示している。DC電源12には、DC負荷14へ供給される電力を計測する第一の監視手段121からの信号および蓄電池13に対して出入りする電力を計測する第二の電力監視手段122からの信号に基づき、DC電源12の出力電圧を調整する制御部123が接続されている。
【0037】
第一の電力監視手段121は、負荷電流計測手段121aとシステム電圧計測手段121bを有している。負荷電流計測手段121aは、DC電源12または蓄電池13からDC負荷14に供給される直流電力の電流を計測する機能を有している。システム電圧計測手段121bは、DC電源12または蓄電池13からDC負荷14に供給される直流電力の電圧を計測する機能を有している。
【0038】
第二の電力監視手段122は、組電池電流計測手段122aと、組電池電圧計測手段122bと、組電池温度計測手段122cを有している。組電池電流計測手段122aは、蓄電池13に対して出入りする直流電力の電流を計測する機能を有している。組電池電圧計測手段122bは、蓄電池13に対して出入りする直流電力の電圧を計測する機能を有している。組電池温度計測手段122cは、例えば蓄電池13の使用環境温度(周囲温度)から間接的に蓄電池13の温度を計測する機能を有している。
【0039】
第一の電力監視手段121からの信号と第二の電力監視手段122からの信号は、それぞれ制御部123に入力されている。
図3に示すように、制御部123は、測定データ入力部123aと、演算部123bと、整流器電圧制御部123cと、電池データ記憶部123dと、電池データ・測定条件設定値入力部123eと、表示部123fと、電源部123gを有している。演算部123bは、測定データ入力部123aおよび電池データ記憶部123dなどから送られてくる信号に基づき、整流器電圧制御部123cを制御する機能を有している。整流器電圧制御部123cは、演算部123bからの信号に基づき、整流器電圧制御信号SをDC電源12に出力する機能を有している。
【0040】
図4は、DC電源12に入力されているプログラムに基づくDC電源12の出力電圧の制御、蓄電池13に対する充放電制御、およびDC負荷14に対する電力供給制御の手順および特性を示している。
図4に示すように、0時から6時までは、DC電源12は通常の出力電圧であるフロート充電電圧Vf(第一の電圧値)で蓄電池13をフロート充電している。そして、6時から18時の間では、DC電源12は出力電圧を低下させた状態を保つことになり、その電圧低下時の出力電圧V(第二の電圧値)は、「V=Vrf−d」に設定されている。蓄電池13の放電は、6時から16時の時間帯に行われる。DC電源12は、16時から18時の時間帯には、DC負荷14および蓄電池13への電力供給が可能となっている。18時から24時の間では、DC電源12は出力電圧をフロート充電電圧Vfまで復帰させ、DC負荷14への電力供給および蓄電池13のフロート充電を再び行うようになっている。
【0041】
図5は、DC電源12における出力電圧と蓄電池13の容量との関係を示している。この直流電源システム10における蓄電池13の容量は、昼間の放電で使用される容量AとDC負荷14のバックアップに対応する容量Bとを合計したものである。この実施の形態1では、DC電源12におけるフロート充電時の出力電圧は49.2V(単電池電圧4.1V)に設定されており、電圧低下時の出力電圧は45.6V(単電池電圧3.8V)に設定されている。また、DC電源12の電圧低下時間は、12時間に設定されている。
図5の上側の特性は、DC負荷14が消費する電流における、定電流放電電圧特性を示している。最近のデジタル機器系の負荷では、負荷電流はほぼ一定であることから、この実施の形態1では、負荷電流は運用中一定としている。フロート充電状態で単電池13aは、4.1V/セルで完全充電状態にあり、完全充電状態から一定電流で放電させると、
図5の上側の特性となる。
【0042】
図5の特性に従ってDC電源12の出力電圧を低下させると、単電池13aの放電が開始される。しかし、単電池13aの放電が進み、単電池13aの電圧がDC電源12の低下した出力電圧に対応する値まで低下すると、単電池13aの放電はそれ以上進まない。
図5の上側の特性に示すように、電池容量の50%に相当する時点の電池電圧が3.8V/セルとすると、DC電源12の出力電圧をこの「3.8V/セル相当値」としておけば、電池電圧がここまで低下すると、単電池13aの放電は自動的に停止する。そして、その後は、DC電源12から電力が供給される。12個組電池の場合、「4.1V/セル」、「3.8V/セル」に相当するDC電源12の出力は、それぞれ、4.1V×12=49.2V、3.8×12=45.6Vであるので、「49.2Vでフロート充電中のDC電源12の出力電圧を45.6Vまで低下」させれば、
図5の上側の特性に示すように、単電池13aの放電は「50%」まで進んで停止する。
【0043】
図6および
図7は、蓄電池13を構成する新品の単電池13aにおける放電量(放電深度)と電圧との関係を示している。
図6および
図7に示すように、単電池13aの放電量が増加するにつれて単電池13aの電圧が低下することがわかる。例えば、放電量20%においては単電池13aの電圧は4.0Vであり、放電量50%においては単電池13aの電圧は3.8Vとなる。蓄電池13の放電量の調整において、放電量の減少の場合、放電特性に基づき「高い電圧の選定」、また放電量の増加の場合、「低い電圧の選定」を行う。このように、放電量を変える場合、使用するリチウムイオン二次電池からなる単電池の放電特性に基づいて、希望する放電量(%)に対応した「電圧値」を選定し、これを「DC電源12の電圧低下時の設定値」としてシステムに入力すればよい。
【0044】
つぎに、この直流電源システム10における蓄電池13の容量算出について説明する。
【0045】
下記は、容量算出の条件の一例を示している。
(1)電池種類:リチウムイオン二次電池
(2)負荷電流:20A(常時一定)
(3)負荷バックアップ時間:10時間(h)
(4)昼間のサイクル放電時間:10h(負荷電流20A)
【0046】
蓄電池13の容量算出
(1)昼間のサイクル放電量
20A×10h=200Ah
(2)バックアップ用の放電量
20A×10h=200Ah
【0047】
したがって、この直流電源システム10では、昼間の放電量とバックアップ用の放電量を合計した「400Ah」の蓄電池が設置される。単なるバックアップ用のみの場合は、「200Ah」の電池のみが設置されるが、この直流電源システム10において、使用電池の容量は、「サイクル放電量+バックアップ放電量」で400Ahとなり、
図6に示すように、放電深度は「50%」になる。
【0048】
一方、同様の目的で、「サイクル用の専用電池」を設置すると、放電深度は100%になり、電池寿命が低下する。蓄電池の寿命延長の一つの手段として、電池容量を増加させる方法があるが、そうすると、この発明の直流電源システム10の蓄電池13よりも電池全体の容量が増加することになり、また専用充電器の追加によりシステムの構成も複雑となる(
図20参照)。
【0049】
図20の直流電源システムについて、この発明の直流電源システム10と同じ条件で蓄電池の容量を試算するとつぎのようになる。
【0050】
バックアップ用:200Ah
サイクル専用:事例A:200Ah(放電深度:100%)
事例B:400Ah(放電深度:50% 本発明と同じ)
【0051】
このように、バックアップ用電池と事例Aの電池を合計した容量は400Ahとなり、本願と同じ容量になるが、これでは、放電深度が100%であるためサイクル専用電池の寿命が低下する。そこで、放電深度を低下させることになり、放電深度を50%として選定される事例Bの400Ahの電池を使用すると200Ahのバックアップ用電池と合わせて総容量は600Ahとなる。この結果、放電深度は本発明と同じになるが、電池容量は1.5倍に増加することになる。
【0052】
図8は、この直流電源システム10におけるDC電源12の出力電圧低下時の電池放電とその後の回復充電時の特性および
図4の電流の流れに対応する特性を示している。
図8に示すように、6時から16時までの間は蓄電池13の放電のみによりDC負荷14への直流電力の供給が行われる。また、16時から18時の間では、DC負荷14および蓄電池13への電力供給が可能となっている。これにより、蓄電池13の単電池13aの電圧が16時から徐々に上昇するようになっている。そして、18時からはDC電源12の出力電圧が49.2Vに復帰し、これにより蓄電池13のフロート充電が再び開始されるようになっている。
図8における18時からの蓄電池13の充電は、DC電源12による定電流定電圧充電によって行われる。
【0053】
図9は、直流電源システム10におけるDC電源の出力電流等によって電池の充電状況(完全充電、充電不足)を判定するための特性を示している。
【0054】
蓄電池の充電状況(完全充電、充電不足)が判定された場合の制御は下記になる。
【0055】
実施条件と実施内容
(1)放電量≦充電量 放電時間Tdはそのままとする。
(2)放電量>充電量 放電時間Tdを短縮する。例:10h→8h
【0056】
必要性
(1)日射量が少ない期間に電池放電量の増加(充電回復が少ない期間)
(2)放電時間Tbが長い状態
(3)負荷電流が当初の見込みよりも増加した場合
【0057】
実施単位
(1)日単位ではなく、1週間単位等で計測し、実施する。
【0058】
図10および
図11は、この発明における蓄電池13の劣化判定を行うための特性を示している。
図10に示すように、負荷電流が一定の場合、電池放電時の特性から劣化状態を推定することが可能となる。これは、蓄電池の定電流放電特性は、新品時と劣化時で違いが生ずるからである。この発明の直流電源システム10においては、放電時間の観測から劣化推定が可能になる。例えば、蓄電池13は新品時は放電時間が10時間であるのに対し、劣化により容量低下した電池(容量70%)では放電時間が8時間、劣化により容量がさらに低下した電池(容量50%)では放電時間が5時間となる。従って、蓄電池13の劣化は、電池電圧の計測によって推定可能である。例えば、組電池の総電圧またはセル個別の電圧を計測することにより、蓄電池13の劣化が推定可能となる。このように、負荷電流に応じた「劣化度と電圧の関係テーブルを作成しておくことにより、蓄電池13の劣化度が容易に推定可能となる。なお、負荷電流値に変動がある場合、電流の平均値を使用することとしてもよい。
【0059】
図11に示すように、蓄電池13が劣化すると、同一の負荷電流における放電特性に差が生じる。すなわち、蓄電池13は、特定の電圧に至る放電時間に差が生じる。したがって、新品時の電池特性から、10hの放電時間Tdに対応した電圧を選定しても、「電池の放電時間Td」は、劣化した蓄電池13では短縮される。このように、蓄電池13の放電時間のモニタから、劣化状態の推定が可能となる。
【0060】
図12および
図13は、蓄電池13の温度変化によるサイクル放電量もしくはバックアップ放電量を確保するために使用するDC電源12の電圧設定値の調整のための特性を示している。ここでは、蓄電池13の使用環境温度(=電池温度)によって蓄電池13の放電特性が変わることから、使用環境温度に応じてDC電源12の出力電圧を調整するようにしている。
図12は、蓄電池13の温度が低下した際の放電特性を示している。
図12に示すように、蓄電池13の温度の低下によって放電電圧が低下するので、DC電源12の出力電圧の値を一定にしておいた場合、サイクル放電時の容量とバックアップ容量に影響がでる。そこで、蓄電池13の温度の計測値に応じて出力電圧値の変更を行うことで、サイクル放電時の容量とバックアップ容量を確保することが可能となる。サイクル放電時の容量低下の防止には、DC電源12の出力電圧の低下が、逆に、バックアップ容量の低下防止には、DC電源12の出力電圧の上昇が行われる。
【0061】
図14は、
図11と同様に蓄電池13の経年劣化に伴うサイクル放電量を確保するために使用するDC電源12の電圧設定値の調整のための特性を示している。
図14(a)に示すように、蓄電池13が経年劣化すると、放電電圧特性に変化が生じ、DC電源12による同一の出力電圧では、サイクル放電量が低下することになる。そこで、
図14(b)および
図14(c)に示すように、蓄電池13の劣化状況に応じて、DC電源12の出力電圧を低下させることにより、蓄電池13は劣化前と同じサイクル容量を確保することが可能となる。
【0062】
図15は、蓄電池13の経年劣化に伴うバックアップ放電量を確保するために使用するDC電源12の電圧設定値の調整のための特性を示している。
図15(a)に示すように、蓄電池13が経年劣化すると、放電電圧特性に変化が生じ、DC電源12による同一の出力電圧では、バックアップ放電量が低下することになる。そこで、
図15(b)に示すように、蓄電池13の劣化状況に応じて、DC電源12の出力電圧を上昇させることにより、蓄電池13は劣化前と同じバックアップ容量を確保することが可能となる。
図15(c)は、バックアップ容量の低下防止対策の効果を示している。
図15(c)に示すように、DC電源12の出力電圧を蓄電池13の放電量に対応した電圧値に上昇させることにより、蓄電池13のバックアップ容量の低下を防止することが可能となる。
図16は、この発明におけるDC電源12の出力低下時に設定可能な電圧範囲の1例を示している。
図16に示すように、この発明におけるDC電源12の出力電圧の設定可能な電圧範囲は、3.3V/セル〜4.1V/セルとなっており、これらは電源システムの動作電圧範囲と組電池の直列数等から算出される。
【0063】
つぎに、実施の形態1における直流電源システム10の動作手順および作用について説明する。
【0064】
図1(a)に示すように、蓄電池13のフロート充電時(前日の18時から翌日の6時までの時間帯)には、DC電源12の出力電圧は、第一の電圧値であるV=Vf(42.9V)に設定されており、DC電源12からの直流電力はDC負荷14に供給され、蓄電池13はDC電源12から供給される直流電力によってフロート充電されている。
【0065】
図1(b)に示すように、6時になるとDC電源12の出力電圧Vは、第二の電圧値である「V=Vrf−d」となり、フロート充電時の出力電圧に比べて低下する。これにより、蓄電池13の電圧がDC電源12の出力電圧よりも高い状態となり、DC負荷14には蓄電池13の放電による直流電力が供給される。蓄電池13からのDC負荷14への電力供給は、蓄電池13の放電により蓄電池13の電圧がDC電源1の出力電圧V「V=Vrf−d」に低下するまで行われる。蓄電池13の放電中は、蓄電池13の電圧が徐々に低下することになるが、DC負荷14は受け取った直流電力の電圧を適正な電圧に変換するDC−DCコンバータ(図示略)を有しているので、蓄電池13から供給される電圧が変動しても影響を受けない。この実施の形態1においては、6時から18時の間で、DC電源12の出力電圧Vである第二の電圧値は、「V=Vrf−d」まで低下されるが、蓄電池13の放電が終了している16時から18時の間では、DC電源12からDC負荷12に直流電力が供給される。
【0066】
18時から翌日の6時までの時間帯は、DC電源12の出力電圧が蓄電池13をフロート充電するための第一の電圧値である電圧49.2Vに復帰するので、
図1(c)に示すように、DC電源12からはDC負荷14と蓄電池13の双方に直流電力が供給される。これにより、蓄電池13はDC電源12からの電力供給により回復充電状態に移行し、蓄電池13の電池電圧は徐々に上昇することになる。
【0067】
このように、予め設定された所定の時間帯(6時〜18時)には、DC電源12の出力電圧は、蓄電池13をフロート充電するための出力電圧49.2Vよりも低い出力電圧45.6Vに低下する。従って、蓄電池13の放電によるDC負荷14への電力供給が可能となり、バックアップのための蓄電池13を有効利用することができ、電力負荷の平準化を図ることができる。また、バックアップ用の蓄電池とサイクル用の蓄電池の二組の蓄電池を用いることが不要となるので、バックアップ用の蓄電池とサイクル用の蓄電池をそれぞれ用いるシステムに比べて、システム全体の蓄電池の容量を少なくすることが可能となり、直流電源システム10のコストを低減することができる。さらに、スイッチによる直流電源と蓄電池との切り離しを必要としないので、直流電源システム10の信頼性を高めることができる。
【0068】
DC電源12の第二の電圧値は、蓄電池13の放電特性および所望の放電量に対応する値であるので、蓄電池13の過剰の放電を防止することができ、しかも不測の停電発生に際しても直流負荷に対する十分なバックアップが可能となる。また、DC負荷14へ供給される電力を計測する第一の電力監視手段121からの信号および蓄電池13に対して出入りする電力を計測する第二の電力監視手段122からの信号に基づき、DC電源12の出力電圧を調整することが可能となり、蓄電池13の充電とDC負荷14への電力供給を最適化することができる。さらに、DC電源12の出力電圧における第一の電圧値「Vf」と第二の電圧値「「V=Vrf−d」を蓄電池13の使用環境温度に対応して調整することが可能であるので、使用環境温度によって変化する蓄電池13の放電特性を考慮して第一の電圧値と第二の電圧値を調整することができ、蓄電池13のバックアップ放電量またはサイクル放電量を確保することができる。
【0069】
DC電源12の出力電圧における第一の電圧値と第二の電圧値は、蓄電池13の劣化度に対応して調整することが可能であるので、劣化が進行した蓄電池13の放電特性を考慮して第一の電圧値と第二の電圧値を調整することができ、蓄電池13のサイクル放電量を確保することができる。そして、蓄電池13はリチウムイオン二次電池から構成されているので、蓄電池13のエネルギー密度を高めることができ、蓄電池13の小型化によって設置スペースに制約のある場所での直流電力システム10の使用が可能となる。
【0070】
また、DC電源12の電圧低下時間を深夜電力料金の時間帯に至るまでとすれば、放電後の蓄電池13の充電は、深夜電力料金が適用される時間帯で行われるので、料金の安価な電力を充電に利用することができ、直流電源システム10の運用コストを低減することができる。すなわち、実施の形態1においては、放電によって蓄電池13の電圧が設定値まで低下すると、その時点で自動的に蓄電池13からの放電が終了し、DC電源12からの電力供給となり、DC電源12の電圧低下時間を深夜電力料金の時間帯に至るまでと設定しておくことで、深夜時間帯になってからDC電源12の出力電圧をフロート充電の値に復帰し、蓄電池13の充電を安価な深夜電力料金によって行うことができる。
【0071】
この実施の形態1においては、蓄電池13の容量を「バックアップ相当容量+DC電圧低下時の放電量」とすることで、バックアップ用とサイクル用の二組の蓄電池を設置することなく、同一構成でDC電源12を構成する整流器の容量を増すのみで、直流電源システム10を容易に構成することができる。そして、この発明の直流電源システム10では、サイクル専用蓄電池とバックアップ用蓄電池を別個に設置する場合に比べて、システム全体の電池容量を少なくすることが可能となる。さらに、蓄電池13の昼間の放電中はもとより、蓄電池13の放電終了直後に、停電等の事故が発生しても、当初必要とされるバックアップ時間に応じた電池容量を蓄電池13は確保しているので、電源本来のDC負荷14に対するバックアップにはまったく支障がない。
【0072】
(実施の形態2)
図17ないし
図19は、この実施の形態2に係る直流電源システムを示している。実施の形態2が実施の形態1と異なるところは、太陽電池の有無のみであり、その他の部分は実施の形態1に準ずるので、準ずる部分に実施の形態1と同一の符号を付すことにより、準ずる部分の説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0073】
図17に示すように、DC電源12と蓄電池13とを接続する回路には、再生可能エネルギーを利用して発電された直流電力が供給可能となっている。この実施の形態2においては、再生可能エネルギーとしての太陽光の照射によって発電可能な太陽電池(PV)20がDC電源12の出力側と蓄電池13との間の回路に接続されている。太陽電池20は、例えば電力変換機能を有するパワーコンデショナ(図示略)に接続可能となっており、蓄電池およびDC負荷14には、DC電源12および太陽電池20からの電力が供給可能となっている。
【0074】
図18は、太陽電池20を併設した直流電源システム10のおける電力供給の特性図を示している。
図18に示すように、DC電源12を構成する整流器による出力電圧低下の時間は、6時から18時までの12時間となっている。また、「Trf−d」開始時刻は、6時に設定されている。太陽電池20による出力は、Vfと同一値またはやや高めに設定されている。
図19は、日射強度の相違によるDC負荷14および蓄電池13に対する電力供給の特性を示している。
図19に示すように、日射強度100%では太陽電池20から蓄電池13への電力供給が可能となっており、日射強度50%および30パーセントにおいては太陽電池20からの蓄電池13への供給は行わないようになっている。
【0075】
このように構成された実施の形態2においては、蓄電池13のフロート充電時(前日の18時から翌日の6時までの時間帯)には、DC電源12の出力電圧は、V=Vf(42.9V)に設定されており、DC電源12からの直流電力はDC負荷14に供給され、蓄電池13はDC電源12から供給される直流電力によってフロート充電されている。
【0076】
図19に示すように、6時になるとDC電源12の出力電圧Vは、フロート充電時の出力電圧に比べて低下する。これにより、蓄電池13の電圧がDC電源12の出力電圧よりも高い状態となり、DC負荷14には蓄電池13の放電による直流電力が供給される。また、6時から18時の間は、太陽電池20による発電が可能となるので、日射強度が100%となる条件では、太陽電池20からDC負荷14および蓄電池13に電力が供給可能となる。また、日射強度が50%または30%となる気象条件では、太陽電池20からの電力はDC負荷14にのみ供給される。18時から翌日の6時までは、DC電源12の出力電圧が蓄電池13をフロート充電するための電圧に復帰するので、DC電源12からはDC負荷14と蓄電池13の双方に直流電力が供給される。これにより、蓄電池13はDC電源12からの電力供給により回復充電状態に移行し、蓄電池13の電池電圧は徐々に上昇することになる。
【0077】
このように、実施の形態2においては、DC電源12と蓄電池13とを接続する回路には太陽電池20が接続されているので、再生可能エネルギーである太陽光を利用して発電された直流電力をDC負荷14に供給することができ、地球環境の改善に寄与することができる。
【0078】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態1、2の直流電源システム10は、DC負荷14としての通信機器に電力を供給する構成としたが、DC負荷14はサーバーを構成するCPUやLED照明機器などであってもよい。また、実施の形態2においては、DC電源12に太陽電池20を併設する構成としたが、再生可能エネルギーとしての風力で発電する風力発電機や水素を燃料として発電する燃料電池を併設する構成としてもよい。