特許第6207234号(P6207234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207234
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】既設可撓管の外面補強構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20170925BHJP
   F16L 55/168 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F16L57/00 A
   F16L55/168
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-108716(P2013-108716)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-228071(P2014-228071A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196624
【氏名又は名称】西武ポリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100180817
【弁理士】
【氏名又は名称】平瀬 実
(72)【発明者】
【氏名】永井 達也
(72)【発明者】
【氏名】鹿山 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】野呂 翔平
(72)【発明者】
【氏名】津田 剛男
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−96833(JP,A)
【文献】 実開昭62−183189(JP,U)
【文献】 特開平9−317338(JP,A)
【文献】 特開2003−113699(JP,A)
【文献】 特開昭64−46092(JP,A)
【文献】 実開平3−28391(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 57/00
F16L 55/168 − 55/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路中に接続された可撓管を外面から補強し当該可撓管に損傷が生じても接続状態を維持可能とする既設可撓管の外面補強構造であって、
前記可撓管を挟む管路の外周に相対向させて水密状態で固定され止水部材が取り付けられる環状の取付台部材と、
これら相対向する取付台部材に跨いで取り付けられて前記可撓管の外周を覆う環状の可撓性の止水部材と、
この止水部材を押える押え部材と、
前記止水部材を覆って外周側に設けられ当該止水部材の伸びを許容する隙間を確保するとともに伸び変形後に加わる圧力を支持可能な分割設置可能に構成され連結一体化される環状の外筒部材とを備え、
前記止水部材による伸び変形を許容する止水と、前記外筒部材による伸び変形後の前記止水部材の圧力の支持および局部変形の規制とを組み合わせて前記可撓管に損傷が生じても接続状態を維持可能に構成してなることを特徴とする既設可撓管の外面補強構造。
【請求項2】
前記取付台部材は、前記管路の外周面に水密状態で溶接されて取り付けられて構成されることを特徴とする請求項1に記載の既設可撓管の外面補強構造。
【請求項3】
前記取付台部材は内周面に、前記管路の外周面との間に空隙部を形成する突出部材を備えるとともに、連結される分割接合面には、面取り部を備えており、これら空隙部および面取り部に接着剤を注入して取り付けられて構成されることを特徴とする請求項1に記載の既設可撓管の外面補強構造。
【請求項4】
前記取付台部材には、可撓性の止水部材が押え部材を介してボルト・ナットで取り付けられるとともに、ボルト頭部に、止水部材の変形による損傷を防止する保護部材を取り付けて構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の既設可撓管の外面補強構造。
【請求項5】
前記押え部材には、それぞれの管軸方向外側に、止水部材の変形を規制する規制板部材が設けられて構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の既設可撓管の外面補強構造。
【請求項6】
前記外筒部材は円周方向および軸方向で分割されて連結可能とされ、軸方向の分割面には、位置決め連結板が当てられて位置決め連結されて構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の既設可撓管の外面補強構造。
【請求項7】
前記止水部材は、局部伸びの発生を防止する補強繊維で補強されて構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の既設可撓管の外面補強構造。
【請求項8】
前記取付台部材は、変位後の既設可撓管に対しては相対向するそれぞれの取付台部材の外周面が変位前の管軸方向と平行で当該既設可撓管の中心と偏心させて配置可能に構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の既設可撓管の外面補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は既設可撓管の外面補強構造に関し、水管橋及び管廊内等に設けられる可撓管を、断水を伴う交換するのに換えて、外面から補強しそのまま継続使用ができるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
水道管や各種送水管などが、河川、道路や鉄道などを橋梁形式で交差する部分には、いわゆる水管橋及び管廊内等が設けられており、これら水管橋及び管廊内等には、温度変化や地震などによる変位の吸収のため、管路の途中に可撓管が設けられている。
このような可撓管は老朽化や変位量が許容値を超えた場合には、交換する必要がある。しかし、供用中の管路の可撓管を交換しようとすると、工事期間中、断水状態にする必要があるなどの都合から交換を避け、補強などを行いそのまま継続使用している場合がある。
一方、既設の可撓管が破損すると、一気に漏水し、断水状態となることから既設の可撓管を補強することが行われており、その方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、水管橋では、図7に示すように、河川などの両岸に橋台Aを設け、橋台Aに設けた支承BにリングサポートCを介して管路Dを固定することで構成されており、管路Dの途中に可撓管1が設けられている。
このような既設の可撓管1を交換することなく補強する方法として、例えば特許文献1には、可撓管1の外周部を、ゴム製の伸縮カバー2と保護カバー3とで覆った伸縮管用漏水防止装置4が開示されている。
この伸縮管用漏水防止装置4では、伸縮カバー2で可撓管1を構成する伸縮管の外周をその全周、全長に亘って覆うようにし、軸方向両端部を、それぞれ可撓管1を挟んだ両側の管路Dに固定具5,5を固定しておき、この固定具5を介して固定バンド6で伸縮カバー2を締め付けることで水密に固定している。そして、固定具5,5間に離反防止手段として接続金具7,7が取り付けられ、アラミド繊維からなるロープ8を幾分たるんだ状態で連結しておく。さらに、伸縮カバー2を覆うように筒状の保護カバー3が設けられ、伸縮カバー2が内部からの水圧により外側に膨らむことを拘束することで補強し、破損を防止するようにし、管路D,D同士が互いに離反することを拘束して落橋を防止する効果も期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−232348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような伸縮管用漏水防止装置4では、可撓管1の外側を覆って水密状態にする伸縮カバー2のさらに外側に保護カバー3を設けて伸縮カバー2が水圧で外側に膨らむことを拘束し、破損を防止するようにしているが、可撓管1の外側を伸縮カバー2及び保護カバー3で覆う必要があり、施工のために広い空間が必要であり、水管橋などの足場の狭い空間で作業することが困難になるという問題がある。
また、伸縮カバー2で水密状態にするためには、可撓管1の外周をその全周、全長に亘って覆うことができる大きな伸縮カバー2を用意しなければならず、しかも可撓管1が万一破損すると、伸縮カバー2自体に大きな水圧が加わるため、この水圧に耐える伸縮カバーを用意しなければならないという問題がある。
【0006】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、万一の場合に加わる水圧を止水部材自体で支持する必要がなく、既設の可撓管をコンパクトかつ短時間に補強することでそのまま継続使用することができる既設可撓管の外面補強構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の課題を解決するこの発明の請求項1に記載の既設可撓管の外面補強構造は、管路中に接続された可撓管を外面から補強し当該可撓管に損傷が生じても接続状態を維持可能とする既設可撓管の外面補強構造であって、前記可撓管を挟む管路の外周に相対向させて水密状態で固定され止水部材が取り付けられる環状の取付台部材と、これら相対向する取付台部材に跨いで取り付けられて前記可撓管の外周を覆う環状の可撓性の止水部材と、この止水部材を押える押え部材と、前記止水部材を覆って外周側に設けられ当該止水部材の伸びを許容する隙間を確保するとともに伸び変形後に加わる圧力を支持可能な分割設置可能に構成され連結一体化される環状の外筒部材とを備え、前記止水部材による伸び変形を許容する止水と、前記外筒部材による伸び変形後の前記止水部材の圧力の支持および局部変形の規制とを組み合わせて前記可撓管に損傷が生じても接続状態を維持可能に構成してなることを特徴とするものである。
【0008】
この発明の請求項2に記載の既設可撓管の外面補強構造は、請求項1に記載の構成に加え、前記取付台部材は、前記管路の外周面に水密状態で溶接されて取り付けられて構成されることを特徴とするものである。
【0009】
この発明の請求項3に記載の既設可撓管の外面補強構造は、請求項1に記載の構成に加え、前記取付台部材は内周面に、前記管路の外周面との間に空隙部を形成する突出部材を備えるとともに、連結される分割接合面には、面取り部を備えており、これら空隙部および面取り部に接着剤を注入して取り付けられて構成されることを特徴とするものである。
【0010】
この発明の請求項4に記載の既設可撓管の外面補強構造は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記取付台部材には、可撓性の止水部材が押え部材を介してボルト・ナットで取り付けられるとともに、ボルト頭部に、止水部材の変形による損傷を防止する保護部材を取り付けて構成したことを特徴とするものである。
【0011】
この発明の請求項5記載の既設可撓管の外面補強構造は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記押え部材には、それぞれの管軸方向外側に、止水部材の変形を規制する規制板部材が設けられて構成されることを特徴とするものである。
【0012】
この発明の請求項6に記載の既設可撓管の外面補強構造は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記外筒部材は円周方向および軸方向で分割されて連結可能とされ、軸方向の分割面には、位置決め連結板が当てられて位置決め連結されて構成されることを特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項7に記載の既設可撓管の外面補強構造は、請求項1〜6のいずれかに記載の構成に加え、前記止水部材は、局部伸びの発生を防止する補強繊維で補強されて構成されることを特徴とするものである。
【0014】
この発明の請求項8に記載の既設可撓管の外面補強構造は、請求項1〜7のいずれかに記載の構成に加え、前記取付台部材は、変位後の既設可撓管に対しては相対向するそれぞれの取付台部材の外周面が変位前の管軸方向と平行で当該既設可撓管の中心と偏心させて配置可能に構成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明の請求項1に記載の既設可撓管の外面補強構造によれば、管路中に接続された可撓管を外面から補強し当該可撓管に損傷が生じても接続状態を維持可能とする既設可撓管の外面補強構造であって、前記可撓管を挟む管路の外周に相対向させて水密状態で固定され止水部材が取り付けられる環状の取付台部材と、これら相対向する取付台部材に跨いで取り付けられて前記可撓管の外周を覆う環状の可撓性の止水部材と、この止水部材を押える押え部材と、前記止水部材を覆って外周側に設けられ当該止水部材の伸びを許容する隙間を確保するとともに伸び変形後に加わる圧力を支持可能な分割設置可能に構成され連結一体化される環状の外筒部材とを備え、前記止水部材による伸び変形を許容する止水と、前記外筒部材による伸び変形後の前記止水部材の圧力の支持および局部変形の規制とを組み合わせて前記可撓管に損傷が生じても接続状態を維持可能に構成してなるので、分割設置可能な取付台部材を可撓管を挟んで対向して設置し、これら取付台部材の間に可撓性の止水部材を環状に配置して押え部材を介して取り付け、止水部材の伸びを許容する隙間をあけて外筒部材を設けることで、万一、可撓管が破損した場合であっても、取付台部材および止水部材で漏水を防止することができ、しかも止水部材の伸びを外筒部材で規制・支持することで、止水部材に大きな外圧が作用することがなく、外筒部材で止水部材の局部変形を防止して水密状態を維持することができる。
これにより、水管橋などの可撓管を外面から補強してそのまま継続使用することができるとともに、各部材も軽量コンパクトであり、施工も容易かつ短時間に補強することができる。
【0016】
この発明の請求項2に記載の既設可撓管の外面補強構造によれば、前記取付台部材は、前記管路の外周面に水密状態で溶接されて取り付けられて構成されているので、溶接により取り付けることで、取付強度を確保し、確実に水密状態として通水状態を維持することができる。
【0017】
この発明の請求項3に記載の既設可撓管の外面補強構造によれば、前記取付台部材は内周面に、前記管路の外周面との間に空隙部を形成する突出部材を備えるとともに、連結される分割接合面には、面取り部を備えており、これら空隙部および面取り部に接着剤を注入して取り付けられて構成されているので、溶接ができない場合であっても、突出部材による管路外周面との空隙部に接着剤を注入するとともに、分割接合面に設けた面取り部によって接着剤の注入できる空間を大きくすることができ、確実に接合強度を確保することができる。
【0018】
この発明の請求項4に記載の既設可撓管の外面補強構造によれば、前記取付台部材には、可撓性の止水部材が押え部材を介してボルト・ナットで取り付けられるとともに、ボルト頭部に、止水部材の変形による損傷を防止する保護部材を取り付けて構成したので、押え部材を介してボルト・ナットで止水部材を取り付けることで、止水部材を確実に固定することができるとともに、止水部材が変位や伸びなどで変形してボルト頭部に接触するような状態でも、保護部材によって止水部材の損傷を防止することができ、確実に通水状態を維持することができる。
【0019】
この発明の請求項5記載の既設可撓管の外面補強構造よれば、前記押え部材には、それぞれの管軸方向外側に、止水部材の変形を規制する規制板部材が設けられて構成されているので、止水部材の周方向の変形などを規制板部材で規制することができ、止水部材の損傷を押えて確実に通水状態を維持することができる。
【0020】
この発明の請求項6に記載の既設可撓管の外面補強構造によれば、前記外筒部材は円周方向および軸方向で分割されて連結可能とされ、軸方向の分割面には、位置決め連結板が当てられて位置決め連結されて構成されているので、軸方向の分割面を位置決め連結板を当てて連結することで、軸方向および周方向にずれることを防止することができ、分割面を溶接したり、接着する場合でも直線上の分割面に対して作業することができ、簡単かつ短時間に連結することができる。
【0021】
この発明の請求項7に記載の既設可撓管の外面補強構造によれば、前記止水部材は、局部伸びの発生を防止する補強繊維で補強されて構成されているので、止水部材を補強繊維で補強することで、局部伸びを防止することができ、安定した状態で確実に通水状態を維持することができる。
【0022】
この発明の請求項8に記載の既設可撓管の外面補強構造によれば、前記取付台部材は、変位後の既設可撓管に対しては相対向するそれぞれの取付台部材の外周面が変位前の管軸方向と平行で当該既設可撓管の中心と偏心させて配置可能に構成されているので、既設の可撓管が変位した状態であっても取付台部材を偏心させることで、取付台部材の間の外周面が平行な円筒面となり、外面補強を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の既設可撓管の外面補強構造の一実施の形態にかかり、(a)は一部分の概略縦断面図、(b)はB部の拡大断面図である。
図2】この発明の既設可撓管の外面補強構造の一実施の形態にかかる左半分の横断面図である。
図3】この発明の既設可撓管の外面補強構造の一実施の形態にかかる分割面と溶接線の関係の説明図である。
図4】この発明の既設可撓管の外面補強構造の一実施の形態にかかる止水部材の変位後の状態の一部分の概略縦断面図である。
図5】この発明の既設可撓管の外面補強構造の他の一実施の形態にかかる一部分の概略縦断面図である。
図6】この発明の既設可撓管の外面補強構造のさらに他の一実施の形態にかかる部分拡大断面図である。
図7】従来の既設可撓管の外面補強構造にかかり、(a)は全体の概略構成図、(b)は部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の既設可撓管の外面補強構造を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
この発明が適用される既設の可撓管1は、例えば図1に示すように、金属製の管路D中に接続されており、管路D,Dへの接続は、フランジ構造によりボルト・ナットで連結するものであったり、溶接構造により溶接して連結するものなどのいずれでも、他の接続構造であっても良い。可撓管1自体は、ゴムなどの弾性体で作られた蛇腹状などの伸縮部1aにより温度変化や地震などの変位の吸収と止水性が確保されるものである。なお、可撓管としては、これに限らず、図7に示した伸縮管など他の構造であっても良い。
【0025】
この既設可撓管の外面補強構造10では、既設の可撓管1に変位が生じた場合などに可撓管1の両側の金属製の管路D,Dを利用して外面補強構造10の主構造である取付台部材11などが溶接などで取り付けられ、取付台部材11などの主構造部分に既設の可撓管1を覆って新たな可撓性の止水部材15を設けるようにするが、万一、既設の可撓管1が損傷した場合の止水部材15に加わる水圧などを止水部材15自体でなく、外筒部材20で支持可能に構成したところに特徴がある。また、図7で説明した従来構造に比べコンパクトで、狭い空間に設置し施工できるものである。
【0026】
この既設可撓管の外面補強構造10は、図1および図2に示すように、可撓管1を挟む管路D,Dの外周に相対向して取付台部材11、11が配置され、管路D,Dに対して水密状態で固定される。相対向する1対の取付台部材11、11の間を跨ぐように止水部材15が取り付けられる。
【0027】
この取付台部材11は、横断面形状がLの字状とされてLの字の水平部分11aが軸方向と平行に配置されて環状とされ、止水部材15が取り付けられる。取付台部材11のLの字の垂直部分11bが管軸と直交する平面上に配置されて管路Dの外周と溶接され水密状態で固定される。
また、取付台部材11は、管路D,Dへの取り付けのため円周方向に複数、例えば4分割され、管路Dに取り付けた後、現地での溶接によって環状に連結されるようにしてある。
この取付台部材11には、補強用のリブ12が円周等間隔に溶接によって取り付けられ、環状に連結する部分では、リブ12同士を当ててボルト・ナット13で締め付けるとともに、溶接して環状に連結する。
また、リブ12の管路Dとの溶接部分には、リブ補強板14が当てられて取付台部材11を管路Dに強固に取り付けることができるようにしてある。
【0028】
止水部材15としては、シート状のゴム、合成樹脂などの止水ゴムが用いられ、高水圧下での変形時に局部変形(局部伸び)が生じないように繊維補強がなされており、例えば補強布を2層積層したものが用いられる。そして、この止水部材15である止水ゴムが相対向する取付台部材11、11の間を跨いで既設の可撓管1を覆うように取り付けられ、現地にて加硫接着または接着剤で環状に連結される。
なお、止水部材の材質や補強繊維の材質および補強構造は、上記のものに限定するものでなく、必要な強度などの条件に応じて適宜決定すればよい。
この止水部材15の取付台部材11への取り付けは、円周方向に分割された押え部材16を外周側に当て、ボルト・ナット17によって締め付けることで取り付けられ、例えば円周方向に30個に分割された押え部材16を用い、それぞれの押え部材16に2本ずつのボルト・ナット17を用いて取り付けるようにしている。
【0029】
この押え部材16と止水部材15とを締め付けるボルト・ナット17には、ボルト頭部の高さより高いゴム、合成樹脂などの保護部材としてのスペース部材18が取り付けてあり、ボルト頭部と接触する止水部材15や後述する外筒部材の損傷を防止する。
また、押え部材16には、止水部材15の両端外側に、止水部材15やスペース部材18が外側にはみ出さないように規制する規制板部材としてのせき板19が押え部材16に溶接して取り付けてある。
【0030】
こうして1対の取付台部材11を跨ぐように取り付けた止水部材15の外側には、止水部材15との間に隙間を空けて金属製の外筒部材20が環状に設けられ、外筒部材20との隙間で止水部材15が伸びが許容されるとともに、伸び変形後には、外筒部材20の内周面と密着することで、加わる圧力を外筒部材20で支持することができ、止水部材15自体は伸び強度は必要とするものの大きな耐圧強度を必要としない構造としてある。
【0031】
この外筒部材20は、管路Dへの取り付けのため円周方向に複数に分割されるとともに、軸方向にも複数に分割してあり、例えば円周方向に4分割され、軸方向に3分割され、現地にてフランジ20a、20aをボルト・ナット21で組み立てた後、溶接される。
外筒部材20の円周方向の分割面には、図3(a)に示すように、溶接線Xに対して作業に必要な空間を確保して連結用のフランジ20aが形成され、同図(b)に示すように、2つのフランジ20a,20aの間に位置決め固定パイプ22を挟んで締め付けるようにする。また、軸方向の分割面には、同図(c)に示すように、3つに分割された連結用のフランジ20aの間の溶接線Yが一直線上になるように、軸方向の3つのフランジ20aの位置を規制する位置決め連結板として位置決め固定板23が当てられ、位置決め固定パイプ22とともに締め付ける。
これにより、位置決め固定パイプ22と位置決め連結板としての位置決め固定板23によって円周方向の溶接線X及び軸方向の溶接線Yが一直線上に位置決めされることになり、分割面であるフランジ20a、20aの間の空間を利用して簡単に溶接作業を行うことができる。
【0032】
このように構成した既設可撓管の外面補強構造10によれば、分割設置可能な取付台部材11を可撓管1を挟んで対向して管路D,Dに溶接で固定設置し、これら取付台部材11,11の間に可撓性の止水部材15を環状に配置して押え部材16を介して取り付け、止水部材15の伸びを許容する隙間をあけて外筒部材20を設けてあるので、万一、可撓管1が破損した場合であっても、取付台部材11および止水部材15で漏水を防止することができる。
この既設の可撓管1が破損した場合には、止水部材15の内側に大きな圧力が作用して止水部材15が変形し、外筒部材20に接するまで伸ばされることになるが、外筒部材20に接するまでの伸びは、設計時に許容されている伸び変形であり、この変形後には、止水部材15が外筒部材20の内周面に密着することで、その後の加圧力が止水部材15を介して外筒部材20で規制・支持されることになる。
これにより、止水部材15の伸びを外筒部材20で規制・支持することで、止水部材15に大きな内圧が作用することがなく、外筒部材20で止水部材15の局部変形を防止して水密状態を維持することができる。
したがって、水管橋などの可撓管1を外面から補強してそのまま継続使用することができるとともに、各部材も分割構造とされて軽量コンパクトであり、分割構造の部材の組み立てや溶接などの施工も容易かつ短時間に行って補強することができる。
【0033】
また、この既設可撓管の外面補強構造10によれば、取付台部材11は、管路Dの外周面に水密状態で溶接によって取り付けてあるので、取付強度を確保し、確実に水密状態として通水状態を維持することができる。
【0034】
さらに、この既設可撓管の外面補強構造10によれば、取付台部材11には、可撓性の止水部材15が押え部材16を介してボルト・ナット17で取り付けられるとともに、ボルト頭部に、止水部材15の変形による損傷を防止する保護部材であるスペース部材18を取り付けてあるので、止水部材15を確実に固定することができるとともに、止水部材15が変位や伸びなどで変形してボルト頭部に接触するような状態でも、保護部材であるスペース部材18によって止水部材15の損傷を防止することができ、確実に通水状態を維持することができる。
【0035】
また、この既設可撓管の外面補強構造10よれば、押え部材16には、それぞれの管軸方向外側に、止水部材15の変形を規制する規制板部材としてせき板19が設けてあるので、止水部材15の周方向の変形などを規制板部材であるせき板19で規制することができ、止水部材15の損傷を押えて確実に通水状態を維持することができる。
【0036】
さらに、この既設可撓管の外面補強構造10によれば、外筒部材20は円周方向および軸方向で分割されて連結可能とされ、軸方向の分割面には、位置決め連結板である位置決め固定板23が当てられて位置決め連結されるので、軸方向の分割面がずれることを防止することができ、分割面を溶接したり、接着する場合でも直線上の分割面に対して作業することができ、簡単かつ短時間に連結することができる。
【0037】
また、この既設可撓管の外面補強構造10によれば、止水部材15は、局部伸びの発生を防止する補強繊維で補強されているので、止水部材15の局部伸びを防止することができ、安定した状態で確実に通水状態を維持することができる。
【0038】
次に、この発明の既設可撓管の外面補強構造の実施をするための他の形態について、図5により説明するが、既に説明した上記の実施の形態と同一部分には同一記号を記し、重複する説明は省略する。
この既設可撓管の外面補強構造10Aでは、既設の可撓管1が変位した場合には、可撓管1の両端の管路D,Dに対し、相対向する取付台部材11、11Aを同心状態で配置するのではなく、図5に示すように、止水部材15および外筒部材20を水平方向に沿って平行に配置できるようにしており、図示例では、右側の取付台部材11Aを偏心状態で取り付けるようにしている。
なお、既設の可撓管1の変形状態によっては、一方の取付台部材11Aだけでなく、両方の取付台部材11、11を管路D、Dの中心と偏心させて設置するようにする。
このためには、施工前に寸法計測などを行い、これに基づき取付台部材11AのLの字状の垂直部分11bの長さが偏心量に応じて異なるものを用意することで、対応することができる。
この取付台部材11A以外の構成は、既に説明した実施の形態と同一である。
【0039】
このような既設可撓管の外面補強構造10Aによれば、変位後の既設可撓管1に対して相対向する一方の取付台部材11Aの外周面が変位前の管軸方向(水平方向)と平行で既設可撓管1および管路Dの中心と偏心させて配置してあるので、既設の可撓管1が変位した状態であっても取付台部材11と偏心させた取付台部材11Aとによって取付台部材11,11Aの間の外周面が水平な中心軸を有する円筒面となり、傾斜した状態とならず外面補強を容易に行うことができる。
【0040】
次に、この発明の既設可撓管の外面補強構造の実施をするためのさらに他の形態について、図6により説明するが、既に説明した上記の実施の形態と同一部分には同一記号を記し、重複する説明は省略する。
この既設可撓管の外面補強構造10Bでは、管路Dへの取付台部材11Bを溶接構造とせずに接着剤で接着固定するようにしている。
このため取付台部材11Bは、横断面形状がH型鋼状とされ、水平方向の一方のフランジ(水平部分)11aを止水部材15の取付部分とし、ウエブ(垂直部分)11bを垂直方向に配置し、もう一方のフランジ(水平部分)11cを管路Dへの接着面とする。管路Dへの接着面となるフランジ(水平部分)11cの表面には、多数の突出部材として突起11dが設けられて管路Dとの間に接着剤の充填用の空隙部が確保できるようにしてある。
また、取付台部材11Bの円周方向の分割面には、ウエブ(垂直部分)11bの両側に補強用のリブ12,12が溶接で取り付けられ、円周方向の連結にはリブ12,12同士を当ててボルト・ナット13で連結するとともに、分割接合面には、6C面取りがなされ、2つのフランジ(水平部分)11a、11cおよびウエブ(垂直部分)11bの全ての角部が面取りされて面取り部に接着剤が充填されて接着するようにしている。
なお、接着剤としては、例えばエポキシ樹脂接着剤を用いる。
【0041】
このような既設可撓管の外面補強構造10Bによれば、取付台部材11Bはフランジ(水平部分)11cの内周面に、管路Dの外周面との間に空隙部を形成する突出部材として突起11dを設けるとともに、連結される分割接合面には、面取り部を設けてあるので、これら空隙部および面取り部に接着剤を注入して接着・固定することができ、溶接ができない場合であっても、接着剤の注入できる空間を大きくすることができ、確実に接合強度を確保することができる。
したがって、水管橋などの可撓管1を外面から補強してそのまま継続使用することができるとともに、各部材も分割構造とされて軽量コンパクトであり、分割構造の部材の組み立てや接着などの施工も容易かつ短時間に行って補強することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 既設可撓管の外面補強構造
10A 既設可撓管の外面補強構造
10B 既設可撓管の外面補強構造
11 取付台部材
11a 水平部分
11b 垂直部分
11A 取付台部材
11B 取付台部材
11c 水平部分
11d 突起(突出部材)
12 補強用のリブ
13 ボルト・ナット
14 リブ補強板
15 止水部材
16 押え部材
17 ボルト・ナット
18 スペース部材(保護部材)
19 せき板(規制板部材)
20 外筒部材
20a フランジ
21 ボルト・ナット
22 位置決め固定パイプ
23 位置決め固定板(位置決め連結板)
X 円周方向の溶接線
Y 軸方向の溶接線
C リングサポート
D 管路
1 可撓管
1a 伸縮部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7