特許第6207268号(P6207268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207268ポリスチレン系フィルムおよびその製造方法
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  • 特許6207268-ポリスチレン系フィルムおよびその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207268
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ポリスチレン系フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20170925BHJP
   B29C 55/16 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08J5/18CET
   B29C55/16
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-147654(P2013-147654)
(22)【出願日】2013年7月16日
(65)【公開番号】特開2015-21017(P2015-21017A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】中野 正志
(72)【発明者】
【氏名】明星 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】西松 英明
(72)【発明者】
【氏名】小田川 友彦
(72)【発明者】
【氏名】安田 晴紀
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−886(JP,A)
【文献】 特開2000−038461(JP,A)
【文献】 特開平02−067328(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/156210(WO,A1)
【文献】 特開2009−235321(JP,A)
【文献】 特開2001−168117(JP,A)
【文献】 特開2012−246372(JP,A)
【文献】 特開2011−88387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02、5/12−5/22
B29C 55/00−55/30、61/00−61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂およびフェノール系酸化防止剤を含有する前駆体フィルムを、同時二軸延伸処理に供してなる二軸配向ポリスチレン系フィルムであって、
180℃の周囲温度で48時間保持した後の引張伸びが5%以上であり、
180℃での熱収縮率の絶対値は、MD方向およびTD方向のいずれの方向についても6.0%以下であり、
離型フィルムとして使用されるポリスチレン系フィルム。
【請求項2】
同時二軸延伸処理が、弛緩式熱固定処理を伴う同時二軸延伸処理である、請求項1に記載のポリスチレン系フィルム。
【請求項3】
酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤の組み合わせを含む請求項1または2に記載のポリスチレン系フィルム。
【請求項4】
フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤がそれぞれシンジオタクチックポリスチレン系樹脂に対して0.01〜1.5重量%で含有される請求項3に記載のポリスチレン系フィルム。
【請求項5】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂がシンジオタクチックポリスチレンである請求項1〜のいずれかに記載のポリスチレン系フィルム。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載のポリスチレン系フィルムの製造方法であって、
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂および酸化防止剤を含有する前駆体フィルムに対して、同時二軸延伸処理を行うポリスチレン系フィルムの製造方法。
【請求項7】
同時二軸延伸処理が、弛緩式熱固定処理を伴う同時二軸延伸処理である、請求項6に記載のポリスチレン系フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリスチレン系フィルム、特にポリスチレン系離型フィルム、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板、セラミック電子部品、レンズ部品、半導体パッケージ、熱硬化性樹脂製品、熱可塑性樹脂製品、化粧板等を製造する際、成形金型や成形ロールと被成形材料が融着しないように、その間にプラスチックフィルムを離型フィルムとして介在させる場合がある。また、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、セラミック、金属等の薄膜層の形成工程や所定の処理工程において、その薄膜層の支持や保護を目的としてプラスチックフィルムに薄膜層を積層し、最終的にはプラスチックフィルムを離型フィルムとして剥離・除去する場合もある。このようにプラスチックフィルムの用途は多岐にわたっている。
【0003】
プラスチックフィルムには一般的に熱が付与される場合が多く、より高い温度が付与される場合が増えている。さらに近年の高性能化ニーズに伴い、プラスチックフィルムに求められる耐熱性は厳しくなっている。具体的には、例えばプラスチックフィルムを離型フィルムとしてプレス成形時の融着防止のために金型と被成形材料との間に介在させて使用する場合、熱によりプラスチックフィルムに溶融変形が起こらないように、プラスチックフィルムには良好な耐熱変形性が求められている。さらに、たとえ良好な耐熱変形性を有していても、熱によりプラスチックフィルムに寸法変動(熱膨張および/または熱収縮)が起こると、金型成形面の凹凸に十分に追随せず、且つ十分に転写されないため、当該フィルムには特に良好な耐熱寸法安定性が求められている。この場合、離型フィルムの伸びが悪いと、離型フィルムがプレス成形時に被成形材料の変形に追随できず、破れが起こり、金型と被成形材料との融着を有効に防止できないため、良好な引張伸びも求められている。
【0004】
寸法安定性に優れたプラスチックフィルムの一例として、シンジオタクチックポリスチレン系フィルムが知られている。例えば、特許文献1には、シンジオタクチックポリスチレン系フィルムよりなる未延伸非晶のフィルムに対して、特定の逐次二軸延伸を行うことにより、縦方向と横方向における、機械的強度や熱収縮率のバランスに優れたシンジオタクチックポリスチレン系フィルムを製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−201873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の技術では、十分な耐熱寸法安定性を達成することができず、例えば得られたフィルムを離型フィルムとしてプレス成形時に使用した場合、金型成形面の凹凸にうまく追随せず、且つ精度よく転写できなかった。
【0007】
離型フィルムにおいてはまた、耐熱伸び安定性についての新たな問題が生じている。詳しくは、離型フィルムは一般に耐熱伸び安定性に劣るため、長時間にわたって高温に曝されたとき、脆くなり、離型フィルムとしての使用に耐えなくなった。具体的には、プレス成形による量産時、離型フィルムは被成形材料が問題なく成形される限り、例えば1回以上のプレス成形に継続して使用される。また、プレス成形機は、成形作業の終了後、次の開始まで、それまで使用していた離型フィルムを上下金型間に挟んで保持したまま、成形作業の再開に備えて成形温度を維持して待機させるのが一般的である。このような状況において成形作業の終了から再開までの間に土曜日および日曜日を挟む場合など、待機時間が48時間以上になる場合、保持されていた離型フィルムは機械的物性(例えば、引張伸び)が低下しており、成形作業の再開後、すぐに破損するので、当該離型フィルムを作業再開後も継続して使用することはできなかった。
【0008】
本発明は、耐熱寸法安定性および耐熱変形性に十分に優れ、良好な引張伸びを有するとともに、耐熱伸び安定性にも優れたポリスチレン系フィルム、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂および酸化防止剤を含有する二軸配向ポリスチレン系フィルムであって、
180℃の周囲温度で48時間保持した後の引張伸びが5%以上であるポリスチレン系フィルムに関する。
【0010】
本発明はまた、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂および酸化防止剤を含有する前駆体フィルムに対して、同時二軸延伸処理を行うポリスチレン系フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリスチレン系フィルムは耐熱寸法安定性および耐熱変形性に十分に優れ、良好な引張伸びを有する。このため、本発明のポリスチレン系フィルムを離型フィルムとしてプレス成形時に使用した場合、金型成形面の凹凸形状、平面形状に十分に追随し、且つ十分に精度よく転写できる。
本発明のポリスチレン系フィルムはまた耐熱伸び安定性にも優れているので、高温に長時間曝されても、機械的物性の低下が防止される。このため、本発明のポリスチレン系フィルムを離型フィルムとしてプレス成形機の上下金型間に挟んで保持したまま、成形温度を維持して、プレス成形機を成形作業の再開に備えて待機させても、当該離型フィルムを作業再開後も継続して使用することができる。
本発明のポリスチレン系フィルムはさらに、高温に長時間曝されても、黄変が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のポリスチレン系フィルムを離型フィルムとして使用するときの使用方法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るポリスチレン系フィルム(以下、単に「PS系フィルム」という)はシンジオタクチックポリスチレン系樹脂および酸化防止剤を含有する二軸配向フィルムである。二軸配向とは、当該フィルムを構成するポリマー分子が当該フィルムの面内方向において、主として、互いに異なる2方向、好ましくは略直角をなす2方向で配向していることを意味するものであり、例えば後述する同時二軸延伸または逐次二軸延伸などの二軸延伸により達成することができる。本発明においてはシンジオタクチックポリスチレン系樹脂および酸化防止剤を含有するフィルムを二軸延伸で二軸配向フィルムとすることにより、二軸配向していないフィルムおよび酸化防止剤を含有しない二軸配向フィルムならびに二次酸化防止剤のみを含有したフィルムと比較して、十分に優れた耐熱伸び安定性を発現させることができる。
【0014】
本明細書中、耐熱寸法安定性とは、フィルムを加熱しても、フィルムの膨張および収縮が十分に防止されるフィルム特性を意味するものとする。
耐熱変形性とは、フィルムを加熱しても、フィルムの溶融変形が十分に防止されるフィルム特性を意味するものとする。
耐熱伸び安定性とは、フィルムを長時間(例えば48〜100時間)、高温(例えば170〜180℃)に曝しても、フィルムの引張伸びの低下が防止され、かつフィルムの良好な引張強さが維持されるフィルム特性を意味するものとする。
【0015】
<シンジオタクチックポリスチレン系樹脂>
本発明のPS系フィルムに含有されるシンジオタクチックポリスチレン系樹脂(以下、単に「SPS系樹脂」という)は、いわゆるシンジオタクチック構造を有するスチレン系ポリマーである。シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち、炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基または置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を意味するものである。
【0016】
SPS系樹脂のタクティシティー(立体規則性)は同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量することができる。13C−NMR法により測定されるSPS系樹脂のタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば、2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。本発明におけるSPS系樹脂は、通常、ラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、若しくはラセミトリアッドで60%以上、好ましくは75%以上、若しくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレン系ポリマーである。
【0017】
SPS系樹脂としてのスチレン系ポリマーの種類としては、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(アリールスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体等及びこれらの混合物、又はこれらを主成分とする共重合体が挙げられる。
【0018】
ポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(ビニルスチレン)等が挙げられる。
ポリ(アリールスチレン)としては、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)等が挙げられる。
ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。
ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。
ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
【0019】
本発明に係るPS系フィルムを構成するSPS系樹脂の重量平均分子量は、10,000〜3,000,000、好ましくは30,000〜1,500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。SPS系樹脂のガラス転移温度は60〜140℃、好ましくは70〜130℃である。SPS系樹脂の融点は200〜320℃、好ましくは220〜280℃である。
【0020】
本明細書中、樹脂のガラス転移温度および融点はJIS K7121に従って測定された値を用いている。
【0021】
SPS系樹脂は市販品として入手することもできるし、公知の方法によって製造することもできる。
SPS系樹脂は例えば、出光興産(株)社製「ザレック」(142ZE、300ZC、130ZC、90ZC)等として入手できる。
【0022】
PS系フィルム中、SPS系樹脂は上記した範囲内で、タクティシティー(ラセミダイアッド、ラセミトリアッドまたはラセミペンタッド)、種類、ガラス転移温度および/または融点が異なる2種類以上のSPS系樹脂が含有されてもよい。
【0023】
本発明のPS系フィルムは、耐熱寸法安定性、耐熱変形性、製膜性および耐熱伸び安定性に悪影響を与えない範囲で、上記SPS系樹脂以外に、他のポリマーを含有してもよい。
【0024】
他のポリマーの具体例としては、例えば、前記SPS系樹脂以外のポリスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等のポリスチレン系合成ゴム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンサルファイト;ポリアリレート;ポリエーテルサルホン;ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0025】
前記SPS系樹脂以外のポリスチレン系樹脂とは、いわゆるアイソタクチックポリスチレン系樹脂およびアタクチックポリスチレン系樹脂を包含して意味するものである。
【0026】
PS系フィルム中の全量に対するSPS系樹脂の含有割合は、耐熱寸法安定性、耐熱変形性および耐熱伸び安定性のさらなる向上の観点から、60重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上であり、最も好ましくは95重量%以上である。2種類以上のSPS系樹脂が含有される場合、それらの合計割合が上記範囲内であればよい。
【0027】
<酸化防止剤>
酸化防止剤はPS系フィルムの分野で黄変防止を目的として使用される酸化防止剤が使用可能であり、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤を含有させないと、耐熱伸び安定性が低下する。
【0028】
フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を含有する有機化合物であり、従来よりPS系フィルムの分野でフェノール系酸化防止剤として使用されているフェノール骨格含有有機化合物が使用できる。フェノール系酸化防止剤は市販品として入手することができる。
フェノール系酸化防止剤の市販品として、例えば、スミライザーGA−80(住友化学社製)、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330(ともにADEKA社製)、イルガノックス245(BASF社製)、サイアノックス1790(CYTEC社製)等が挙げられる。
【0029】
リン系酸化防止剤はリン原子を含有する有機化合物であり、従来よりPS系フィルムの分野でリン系酸化防止剤として使用されているリン原子含有有機化合物が使用できる。リン系酸化防止剤は市販品として入手することができる。
リン系酸化防止剤の市販品として、例えば、スミライザーGP(住友化学社製)、アデカスタブPEP−36(ADEKA社製)、Irgafos38、Irgafos168(ともにBASF社製)等が挙げられる。
【0030】
硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する有機化合物であり、従来よりPS系フィルムの分野で硫黄系酸化防止剤として使用されている硫黄原子含有有機化合物が使用できる。硫黄系酸化防止剤は市販品として入手することができる。
硫黄系酸化防止剤の市販品として、例えば、スミライザーMB(住友化学社製)、アデカスタブAO−412S(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0031】
酸化防止剤の含有割合は、耐熱伸び安定性の観点から、PS系フィルム中のSPS系樹脂に対して0.01〜3.0重量%、特に0.02〜1.0重量%が好ましい。2種類以上の酸化防止剤が含有される場合はそれらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0032】
耐熱伸び安定性のさらなる向上の観点からは、酸化防止剤は、少なくともフェノール系酸化防止剤を含むことが好ましく、より好ましくはフェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤および/または硫黄系酸化防止剤とを組み合わせて含み、さらに好ましくはフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤を組み合わせて含む。これらのとき、各酸化防止剤はそれぞれSPS系樹脂に対して0.01〜2.0重量%、特に0.01〜1.5、好ましくは0.02〜1.0重量%で含有されることが好適である。
【0033】
<他の添加剤>
本発明のPS系フィルムは上記した酸化防止剤以外に、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、無機フィラー、着色剤、結晶核剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0034】
<PS系フィルムの製造方法>
本発明のPS系フィルムは以下の方法により製造できる。
例えば、前記SPSおよび酸化防止剤ならびに所望により含有される他のポリマーおよび添加剤を所定の割合で混合し、溶融・混練して前駆体フィルム(未延伸フィルム)を製造した後、得られた前駆体フィルムに対して二軸延伸処理を行う。
【0035】
前駆体フィルムの製造方法は公知の方法を採用できる。例えば、所望の成分からなる混合物を押出機により溶融・混練し、混練物をTダイより押し出した後、冷却すればよい。
【0036】
前駆体フィルムの厚みは特に制限されるものではなく、例えば、20〜2000μmであり、好ましくは30〜1000μmである。
【0037】
二軸延伸処理工程では通常、二軸延伸処理を行った後、熱固定処理を行う。このような二軸延伸処理工程によって、フィルムのガラス転移温度を上昇させたり、熱膨張率を減少させたり、熱収縮率の絶対値を減少させたり、高温に長時間曝された後の引張伸びを上昇させたりすることができる。
【0038】
二軸延伸処理は、MD方向およびTD方向について延伸を行う。延伸方式は、MD方向もしくはTD方向のうち一方の方向に延伸を行った後、他方の方向に延伸を行う逐次二軸延伸方式、またはMD方向とTD方向の両方向に同時に延伸を行う同時二軸延伸方式のいずれの方式でもよい。好ましくは同時二軸延伸方式を行う。同時二軸延伸方式を行うことにより、熱膨張率および熱収縮率に関する耐熱寸法安定性が向上するとともに、耐熱伸び安定性がより一層向上する。二軸延伸の代わりに、一軸延伸を行うと、延伸していない方向の熱膨張率が減少せず、耐熱寸法安定性が低下するだけでなく、耐熱伸び安定性も低下する。延伸処理自体を行わない場合においても、MD方向およびTD方向の熱膨張率が減少せず、耐熱寸法安定性が低下するだけでなく、耐熱伸び安定性も低下する。本明細書中、MD方向とは、いわゆる流れ方向であって、押出機からの前駆体フィルムの引き取り方向(縦方向)を意味するものとする。TD方向とは、いわゆる幅方向であって、当該MD方向に対する直交方向を意味するものとする。
【0039】
二軸延伸を行うに際して、延伸倍率、延伸温度および延伸速度は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではないが、以下の範囲とする。耐熱寸法安定性、熱収縮率引張強さおよび引張伸びをより一層、向上するためである。
【0040】
延伸倍率は、MD方向およびTD方向ともに2.0倍以上の破断が起こらない範囲内であり、特に2.0〜5.0倍が好ましく、より好ましくは2.2〜4.0倍である。MD方向およびTD方向の延伸倍率は近似していることが好ましい。具体的には、MD方向の延伸倍率をPMD、TD方向の延伸倍率をPTDとしたとき、「PTD−PMD」は−0.6〜+0.6が好ましく、より好ましくは−0.3〜+0.3である。なお、MD方向の延伸倍率は延伸直前のMD方向長さに基づく倍率である。TD方向の延伸倍率は延伸直前のTD方向長さに基づく倍率である。
【0041】
延伸倍率を上記範囲内で調整することにより熱膨張率の減少幅、引張強さおよび引張伸びを制御することができる。例えば、所定方向の延伸倍率を増大させると、当該方向の熱膨張率の減少幅は大きくなり、引張強さおよび引張伸びも大きくなる。
【0042】
延伸温度は、当該フィルムを構成するSPS系樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたとき、Tg以上、Tg+30℃以下であり、耐熱寸法安定性、引張強さおよび引張伸びのさらなる向上の観点から好ましくはTg℃以上、Tg+25℃以下である。延伸温度が低すぎると破断しやすく、高すぎると、熱膨張率の減少幅が小さくなり、耐熱寸法安定性が低下する。なお、延伸温度は、延伸を行う際のフィルム温度である。SPS系樹脂が2種類以上のポリマーからなる場合、SPS系樹脂のTgは、各ポリマーのガラス転移温度に当該ポリマーの含有比率を乗じた値の和である。
【0043】
延伸温度を上記範囲内で調整することにより熱膨張率の減少幅、引張強さおよび引張伸びを制御することができる。例えば、延伸温度を低くすると、熱膨張率の減少幅は大きくなり、引張伸びも大きくなる。
【0044】
延伸速度は、MD方向およびTD方向ともに50〜10000%/分であり、好ましくは100〜5000%/分、より好ましくは100〜3000%/分である。
延伸速度とは、{(延伸後寸法/延伸前寸法)−1}×100(%)/延伸時間で算出される値である。
【0045】
延伸速度を上記範囲内で調整することにより熱膨張率の減少幅、引張強さおよび引張伸びを制御することができる。例えば、延伸速度を大きくすると、熱膨張率の減少幅は大きくなり、引張強さおよび引張伸びも大きくなる。
【0046】
熱固定処理は、延伸フィルムを延伸温度以上の温度で保持することにより、ポリマー分子の配向を固定する処理である。熱固定処理温度は、当該フィルムを構成するSPS系樹脂のガラス転移温度をTg(℃)、融点をTm(℃)としたとき、Tg+70℃以上、Tm以下であり、耐熱寸法安定性および耐熱変形性および耐熱伸び安定性のさらなる向上の観点から好ましくはTg+75℃以上、Tm−10℃以下である。熱固定処理温度が低すぎても、高すぎても、耐熱伸び安定性が低下し、また熱収縮率が高くなり、耐熱寸法安定性が低下する。なお、熱固定処理温度は、フィルム保持を行う際のフィルム温度である。SPS系樹脂が2種類以上のポリマーからなる場合、SPS系樹脂のTmは、各ポリマーの融点に当該ポリマーの含有比率を乗じた値の和である。
【0047】
熱固定処理温度を上記範囲内で調整することにより熱収縮率絶対値を制御することができる。例えば、熱固定処理温度を高くすると、熱収縮率絶対値は小さくなる。
【0048】
熱固定処理は、二軸延伸処理時の張力を維持したまま熱固定処理を行う緊張式熱固定処理を実施してもよいし、当該処理と同時に当該張力を弛緩させて熱固定処理を行う弛緩式熱固定処理を実施してもよいし、または当該張力を維持して熱固定処理(第1熱固定処理)を行った後、当該張力を弛緩させて熱固定処理(第2熱固定処理)を行う複合式熱固定処理を実施してもよい。好ましくは弛緩式熱固定処理を実施する。熱固定処理を上記いずれの方式で実施するに際しても、熱固定処理温度は前記範囲内に設定される。
【0049】
熱固定処理を上記した弛緩式または複合式で行う場合、熱収縮率の絶対値の低減、耐熱寸法安定性および耐熱変形性のさらなる向上、フィルムの平坦性の観点から、弛緩倍率はMD方向およびTD方向ともに0.8〜1.00倍が好ましく、より好ましくは0.85〜0.99倍、最も好ましくは0.90〜0.98倍である。MD方向およびTD方向の弛緩倍率は近似していることが好ましい。具体的には、MD方向の弛緩倍率をQMD、TD方向の弛緩倍率をQTDとしたとき、「QTD−QMD」は−0.1〜+0.1が好ましく、より好ましくは−0.05〜+0.05であり、最も好ましくは−0.02〜+0.02である。なお、MD方向の弛緩倍率は延伸直後のMD方向長さに基づく倍率である。TD方向の弛緩倍率は延伸直後のTD方向長さに基づく倍率である。
【0050】
弛緩倍率を上記範囲内で調整することにより熱収縮率絶対値を制御することができる。例えば、所定方向の弛緩倍率を低減すると、当該方向の熱収縮率絶対値の減少幅は大きくなる。
【0051】
<PS系フィルム>
本発明のPS系フィルムの厚みは特に制限されるものではなく、例えば、10〜150μmであり、好ましくは12〜125μmである。
【0052】
本発明のPS系フィルムは優れた耐熱伸び安定性を有する。その結果、本発明のPS系フィルムを離型フィルムとして使用した場合において、高温に長時間曝されても、機械的物性の低下が十分に防止される。本発明のPS系フィルムはまた、高温に長時間曝されても、黄変が防止される。
【0053】
耐熱伸び安定性について詳しくは、本発明のPS系フィルムは、例えば、引張伸びが特定の範囲内である。具体的には、本発明のPS系フィルムは、180℃の周囲温度で48時間保持された後の引張伸びが5%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上である。本発明のPS系フィルムにおける引張伸びの上限値は特に限定されるものではないが、通常、200%、特に100%である。上記引張伸びが小さすぎると、離型フィルムとして使用した場合、プレス成形時に被成形材料の変形に追随できず、破断が生じる。
【0054】
本明細書中、引張伸びは、フィルムを180℃の周囲温度で48時間保持した後、当該フィルムの引張伸びをJIS K7127に従って測定された値を用いている。引張伸びは、引張方向がMD方向の場合およびTD方向の場合について測定され、いずれか一方の方向の引張伸びが上記範囲内であればよいが、両方の方向の引張伸びが上記範囲内であることが好ましい。
【0055】
本発明のPS系フィルムは優れた引張強さも有する。具体的には、本発明のPS系フィルムは、180℃の周囲温度で48時間保持された後の引張強さが40MPa以上、好ましくは60MPa以上、より好ましくは70MPa以上である。本発明のPS系フィルムにおける引張強さの上限値は特に限定されるものではないが、通常、200MPaである。上記引張強さが小さすぎると、プレス成形作業の終了後、成形温度を維持したまま、当該フィルムを上下金型間に挟んで保持した場合、成形作業を再開したとき、当該フィルムはすぐに破損する。
【0056】
本明細書中、引張強さは、フィルムを180℃の周囲温度で48時間保持した後、当該フィルムの引張強さをJIS K7127に従って測定された値を用いている。引張強さは、引張方向がMD方向の場合およびTD方向の場合について測定され、いずれか一方の方向の引張強さが上記範囲内であればよいが、両方の方向の引張強さが上記範囲内であることが好ましい。
【0057】
本発明のPS系フィルムには著しく優れた耐熱寸法安定性および耐熱変形性も発現する。その結果、本発明のPS系フィルムを離型フィルムとして使用した場合において、金型成形面の凹凸形状、平面形状にフィルムが十分によく追随し、且つ十分に精度よく転写できる。
【0058】
耐熱寸法安定性について詳しくは、本発明のPS系フィルムは、例えば、熱膨張率および熱収縮率がそれぞれ特定の範囲内である。具体的には、本発明のPS系フィルムは、引張荷重5gf/2mm幅および昇温速度10℃/分の条件下で50℃から100℃まで昇温したときの熱膨張率は80ppm/℃以下であり、好ましくは70ppm/℃以下、より好ましくは60ppm/℃以下、最も好ましくは50ppm/℃以下である。熱膨張率は、MD方向およびTD方向のいずれの方向についても、上記範囲内である。熱膨張率が大きすぎると、耐熱寸法安定性が低下し、金型の成形面を十分に転写させることができない。本発明のPS系フィルムの熱膨張率は通常は、1〜80ppm/℃、好ましくは5〜70ppm/℃、より好ましくは10〜60ppm/℃、最も好ましくは15〜50ppm/℃である。
【0059】
熱膨張率について、プレス成形用離型フィルムとして使用された場合において金型の成形面をより一層十分に転写させる観点から好ましくは、熱膨張率のMD方向とTD方向との差の絶対値は50ppm/℃以下であり、より好ましくは40ppm/℃以下、さらに好ましくは20ppm/℃以下である。
【0060】
本明細書中、熱膨張率は、試験片(2mm×25mm)を長手方向が鉛直方向になるように吊り下げて、該試験片の下端に5gf/2mm幅の引張荷重を印加し、雰囲気温度を昇温速度10℃/分で50℃から100℃まで昇温したときの熱膨張率である。熱膨張率は、引張方向がMD方向の場合およびTD方向の場合について測定され、具体的には後述する方法により測定される。熱膨張率の値は正の値が膨張を意味し、負の値が収縮を意味する。
【0061】
180℃での熱収縮率の絶対値は10.0%以下であり、好ましくは6.0%以下、より好ましくは4.0%以下である。熱収縮率の絶対値は、MD方向およびTD方向のいずれの方向についても、上記範囲内である。熱収縮率の絶対値が大きすぎると、耐熱寸法安定性が低下し、プレス成形用離型フィルムとして使用された場合、金型の成型面の凹凸形状、平面形状に十分に追随せず、且つ金型の成形面を十分に転写させることができない。
【0062】
熱収縮率について、プレス成形用離型フィルムとして使用された場合において金型の成型面の凹凸形状、平面形状に十分に追従し、且つ金型の成形面を十分に転写させる観点から好ましくは、熱収縮率のMD方向とTD方向との差の絶対値は10.0%以下であり、より好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、最も好ましくは1.0%以下である。
【0063】
本明細書中、熱収縮率は、試験片(200mm×200mm)を雰囲気温度180℃で30分間放置したときのMD方向およびTD方向の各方向における熱収縮率であり、具体的には後述する方法により測定される。熱収縮率の値は正の値が収縮を意味し、負の値が膨張を意味する。
【0064】
耐熱変形性について具体的には、本発明のPS系フィルムのガラス転移温度は150℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上である。
本発明のPS系フィルムはその製造過程において、特に前記した熱固定処理を含む二軸延伸工程の前後で、フィルムのガラス転移温度が50℃以上上昇し、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上上昇している。
なお、本発明のPS系フィルムのガラス転移温度は、250℃程度までであるが、特にそれに限定されない。また、ガラス転移温度の上昇温度幅は120℃程度までであるが、特にそれに限定されるものではない。
本明細書中、PS系フィルムのガラス転移温度はJIS C6481:1996「5.17.1 TMA法」に基づいて測定された値を用いている。
【0065】
本発明のPS系フィルムは離型フィルムとして有用である。
離型フィルムは、熱プレス成形時に金型と被成形材料との間に介在させることにより、金型と被成形材料との融着を防止させるためのフィルムである。
【0066】
具体的には、本発明のPS系フィルムを離型フィルムとして使用する場合、当該フィルムを金型と被成形材料との間に介在させることにより、金型と被成形材料との融着を防止しながらも、金型の成形面を精度よく転写させることができる。特に本発明の離型フィルムは寸法変動および変形が十分に防止されるので、例えば金型成形面に深さ1mmの凹凸がある場合でも、当該成形面形状によく追随し、且つ当該成形面を精度よく転写させることができる。
【0067】
本発明のPS系フィルムを離型フィルムとして使用する場合の一実施態様を図1に示す。詳しくは、被成形材料からなるフレーク1を上下金型2,3により熱プレス成形するに際し、フレーク1と金型2,3との間にフィルム4を介在させる。フィルム4は金型より外側で把持し固定する。金型2,3の成形面にはそれぞれ凹部と凸部が形成されており、当該凹部と凸部とがプレス時において嵌合するようになっている。プレス時において、金型2,3の接近はスペーサー5により制限される。
【0068】
被成形材料を構成するプラスチックの種類は特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が使用可能である。
プレス時の金型温度、圧力および処理時間はプラスチック成形の分野で公知の条件が使用可能である。例えば、プレス時の金型温度は通常、80〜200℃である。プレス圧は通常、1〜150kg/cmである。プレス時間は通常、0.5〜60分間である。
【実施例】
【0069】
実施例/比較例
表1または表2に記載の成分の混合物を押出機により樹脂温度280℃でTダイより溶融押し出した後、冷却し、未延伸フィルム(前駆体フィルム)を得た。未延伸フィルムを、表1または表2に記載の条件で延伸工程に供した。延伸工程は延伸処理および熱固定処理からなり、熱固定処理は所定の温度および弛緩倍率にて弛緩式熱固定処理を行った。
同時二軸延伸は、MD方向およびTD方向について同時に延伸した。
逐次二軸延伸は、MD方向で延伸した後、TD方向で延伸した。
一軸延伸は、MD方向のみについて延伸した。
【0070】
SPSはシンジオタクチックポリスチレン「ザレック142ZE」(出光興産(株)社製、ガラス転移温度95℃、融点247℃)を使用した。
酸化防止剤は、アデカスタブAO−60(フェノール系、ADEKA社製)、アデカスタブPEP−36(リン系、ADEKA社製)、アデカスタブAO−412S(硫黄系、ADEKA社製)を使用した。
【0071】
評価
熱膨張率
熱機械測定装置(Q400EM;TA INSTRUMENTS社)を用い、試験片(フィルム;2mm×25mm)を、該試験片の長手方向が鉛直方向になるように吊り下げ、該試験片の下端に5gf/2mm幅の引張荷重を印加した。その後、雰囲気温度を昇温速度10℃/分で昇温し、50℃から100℃までの寸法変化を1℃あたりの変化量に換算し、熱膨張率Rを測定した。熱膨張率は引張方向がMD方向およびTD方向の場合について測定した。熱膨張率Rについて正の値は膨張したことを意味する。
◎;R≦60ppm/℃(最良);
○;60ppm/℃<R≦70ppm/℃(良);
△;70ppm/℃<R≦85ppm/℃(実用上問題なし);
×;85ppm/℃<R(実用上問題あり)。
【0072】
熱収縮率
まず、長さ150mmの2本の直線をそれぞれ、MD方向およびTD方向に対して平行に、かつ互いに中点で交わるように、試験片(フィルム;200mm×200mm)上に描いた。この試験片を、標準状態(温度23℃×湿度50%)に2時間放置し、その後試験前の直線の長さを測定した。続いて180℃の雰囲気に設定された熱風循環式オーブン内で一角を支持した宙吊り状態にて30分間放置した後、取り出して、標準状態に2時間放置冷却した。その後各方向の直線の長さを測定し、試験前の長さからの変化量を求め、当該試験前の長さに対する変化量の割合として熱収縮率Rを求めた。熱収縮率Rについて正の値は収縮したことを意味する。
◎;Rの絶対値≦4.0%(最良);
○;4.0%<Rの絶対値≦8.0%(良);
△;8.0%<Rの絶対値≦10.0%(実用上問題なし);
×;10.0%<Rの絶対値(実用上問題あり)。
【0073】
引張伸び
JIS K7127に従って、180℃の周囲温度で48時間保持した後の引張伸びを測定した。測定時の引張方向はMD方向であった。引張伸びが5%未満では、離型用フィルムの評価時において破断が発生した。
◎:20%≦引張伸び(最良);
○:10%≦引張伸び<20%(良);
△:5%≦引張伸び<10%(実用上問題なし);および
×:引張伸び<5%。
【0074】
引張強さ
JIS K7127に従って、180℃の周囲温度で48時間保持した後の引張強さを測定した。測定時の引張方向はMD方向であった。
◎:70MPa≦引張強さ(最良);
○:60MPa≦引張強さ<70MPa(良);
△:40MPa≦引張強さ<60MPa(実用上問題なし);および
×:引張強さ<40MPa。
【0075】
ガラス転移温度(TMA)
JIS C6481:1996「5.17.1 TMA法」に従ってガラス転移温度を測定した。詳しくは、熱機械測定装置(Q400EM;TA INSTRUMENTS社)により、試験片(フィルム;2mm×25mm)を、引張荷重5gf/2mm幅および昇温速度10℃/分の条件下で昇温し、Tgを測定した。Tgは引張方向がMD方向およびTD方向の場合について測定し、それらの平均値で示した。Tgの測定は、最終的に得られたフィルムおよび延伸直前のフィルムについて行い、上昇幅(℃)を求めた。
・最終的に得られたフィルムのTg
◎:170℃≦Tg(最良);
○:160≦Tg<170℃(良);
△:150≦Tg<160℃(実用上問題なし);および
×:Tg<150℃。
・上昇幅
◎:70℃≦上昇幅(最良);
○:60≦上昇幅<70℃(良);
△:50≦上昇幅<60℃(実用上問題なし);および
×:上昇幅<50℃。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表中、「測定不可」とは、熱処理後に試料を引張伸びまたは引張強さの測定のためにセットしただけで脆性破壊が起こり、当該測定ができなかったことを意味する。このため、「測定不可」は180℃の周囲温度で48時間保持した後の引張伸びまたは引張強さの上記評価ランクにおいてランク「×」に包含されるレベルである。
図1