(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、木質チップや木質ペレット等のバイオマス燃料を燃焼して温水を生成するボイラ装置としては、熱源として、円筒形状の燃焼室内に燃焼ガスの旋回流を形成するように構成された燃焼炉を用いたものがある。
【0003】
この種の従来の燃焼炉としては、
図13に示すように、円筒形状の第1の燃焼室202と第2の燃焼室203を軸方向に連ね、第1の燃焼室202を画定する内壁221と、第2の燃焼室203を画定する内壁222に、各燃焼室202,203へ燃焼空気を供給する複数の空気通路207,208を備えた燃焼炉201がある(特許文献1参照)。各燃焼室202,203を画定する内壁221,222の外側には外壁241,242が各々配置され、内壁221,222と外壁241,242の間に、空気通路207,208へ導く燃焼空気を予熱する円筒環状の空気室204,205が形成されている。
【0004】
上記第1の燃焼室202には、燃焼室202の中心軸に沿って略鉛直に設置されたスクリューコンベヤ209により燃料210が供給される。スクリューコンベヤ209の先端は、燃焼室202の円錐形状に形成された底面の頂部に臨んで開口した供給口291になっている。スクリューコンベヤ209の燃料供給口291には、スクリューコンベヤ209の駆動軸292に連結されて回転駆動される燃料拡散棒293が設けられている。
【0005】
上記内壁221,222に形成された空気通路207,208は、第1及び第2燃焼室202,203の径方向内側に向かって、水平面に対して上向きに傾斜するように形成されている。また、第1及び第2燃焼室202,203の径方向に対して傾斜するように形成されている。
【0006】
上記スクリューコンベヤ209で導いて燃料供給口291から吐出した燃料210を、燃料拡散棒293で燃焼室202の底面に分散させることにより、燃料を燃焼室202内で偏り無く燃焼させるようにしている。また、上記空気通路207,208から燃焼空気を水平面及び径方向に対して傾斜方向に吹き出すことにより、第1及び第2燃焼室202,203内に旋回流を形成し、燃料を2段の燃焼室202,203で順次燃焼させている。これらにより、化石燃料よりも燃焼し難い木質チップ等のバイオマス燃料を、安定に燃焼させるようにしている。
【0007】
上記燃焼炉201を用いて構成されたボイラ装置は、上記燃焼炉201で生成した燃焼ガスをガス排出管245から排出し、図示しない熱交換器に導いて水と熱交換を行い、温水を生成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の燃焼炉201は、2段の燃焼室202,203を燃焼ガスが流れる間に燃焼ガスの温度が低下するので、熱交換器での温水の生成能力が比較的低いという問題がある。
【0010】
また、上記従来の燃焼炉201は、燃料210である木質チップや木質ペレットが間伐材や建築廃材等から形成される。したがって、燃料210に、砂や建築金物の破片等のような不燃物が混入していることが多い。これらの不燃物は、略鉛直のスクリューコンベヤ209内を燃料210が通過するに伴って重力により分離し、スクリューコンベヤ209の下端に滞留して、スクリューコンベヤ209の搬送羽根294やケーシング295の内側面の摩耗を促進するという不都合がある。
【0011】
そこで、本発明の課題は、バイオマス燃料を燃焼する燃焼炉とこの燃焼炉を熱源とする熱交換器に関し、温水の生成能力を高めることができる熱交換器一体型燃焼炉を提供することにある。また、燃料の供給に伴う部品の劣化を防止できて、良好な耐久性を有する熱交換器一体型燃焼炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の熱交換器一体型燃焼炉は、燃焼室と、
上記燃焼室に燃料を供給する燃料供給部と、
上記燃焼室の下部に燃焼空気を供給する第1燃焼空気供給部と、
上記燃焼室の上部に、この燃焼室内の上方に向かう燃焼ガスの流れを乱すように燃焼空気を供給する第2燃焼空気供給部と、
上記燃焼室の上方に連なり、この燃焼室から燃焼ガスが導かれる燃焼ガス室と、この燃焼ガス室を取り巻くように配置されて上記燃焼ガスと熱交換する水が供給される水ジャケットとを有する第1熱交換部と、
上記水ジャケットで熱交換された水が導かれ、上記第1熱交換部の燃焼ガス室に隣接するように配置された水室と、この水室内に配列され、上記第1熱交換部の燃焼ガス室から導かれた燃焼ガスが流通する煙管とを有する第2熱交換部と
を備えることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、燃焼室内に燃料供給部によって燃料が供給され、上記燃焼室の下部に第1燃焼空気供給部によって燃焼空気が供給される。燃焼室で燃料が燃焼すると、燃焼室内に燃焼ガスが上昇する流れが生じるが、この燃焼室の上部に第2燃焼空気供給部によって供給された燃焼空気により、上記燃焼室内の上方に向かう燃焼ガスの流れが乱される。これにより、燃焼空気と燃焼ガスが撹拌混合され、燃焼ガスの未燃成分が燃焼して燃料が完全燃焼する。この燃焼室内の燃焼ガスが、燃焼室の上方に連なる燃焼ガス室に導かれ、この燃焼ガス室を取り巻くように配置された第1熱交換部の水ジャケットにより上記燃焼ガスと水の熱交換が行われる。この第1熱交換部の水ジャケットで熱交換された水が、上記第1熱交換部の燃焼ガス室に隣接するように配置された第2熱交換部の水室に導かれ、この第2熱交換部の水室内に配列された煙管を流通する燃焼ガスと熱交換すると共に、この第2熱交換部の水室に隣接する第1熱交換部の燃焼ガス室の熱と熱交換する。このように、第2燃焼空気供給部で供給された燃焼空気による燃焼ガスの乱れによって完全燃焼が促されるので、燃焼効率が向上し、従来よりも良好な効率で水を加熱できる。
【0014】
一実施形態の熱交換器一体型燃焼炉は、上記第2燃焼空気供給部は、上記燃焼室の壁面に配列され、上記燃焼室の底側に向かって傾斜した方向に燃焼空気を吹出す複数の吹出口を有する。
【0015】
上記実施形態によれば、燃焼室内の燃焼ガスの流れに対して、燃焼室の壁面に配列された吹出口から、上記燃焼室の底側に向かって傾斜した方向に燃焼空気が吹き出されるので、上記燃焼室内の上方に向かう燃焼ガスの流れが効果的に乱される。これにより、燃焼ガスと燃焼空気を撹拌混合し、燃焼ガスに含まれる未燃成分の燃焼を促して完全燃焼させることができ、燃焼ガスの温度を効果的に上昇させることができる。ここで、第2燃焼空気供給部の吹出口が燃焼空気を吹き出す方向は、燃焼室の中心軸の直角面に対して底側に傾斜していればよく、燃焼室の壁面の法線に対する角度は限定されない。すなわち、第2燃焼空気供給部の吹出口は、燃焼室の壁面の法線向に燃焼空気を吹き出してもよく、或いは、燃焼室の壁面の法線方向に対して傾斜した方向に燃焼空気を吹き出してもよい。第2燃焼空気供給部の吹出口が燃焼室の壁面の法線方向に燃焼空気を吹き出す場合、吹き出された燃焼空気と燃焼室を上昇する燃焼ガスとが衝突して生成される乱れは、中心軸回り方向に実質的に停止する。一方、第2燃焼空気供給部の吹出口が燃焼室の壁面の法線方向に対して傾斜した方向に燃焼空気を吹き出す場合、吹き出された燃焼空気と燃焼室を上昇する燃焼ガスとが衝突して生成される乱れは、吹出口からの流れが傾斜した方向に旋回する。
【0016】
一実施形態の熱交換器一体型燃焼炉は、上記第2燃焼空気供給部は、
上記燃焼室の壁面に配列され、上記燃焼室の軸直角平面内に壁面の法線に対して傾斜した方向に燃焼空気を吹き出す複数の第1吹出口と、
上記燃焼室の壁面に、上記第1の吹出口よりも上記燃焼室の底から遠い側に配列され、上記燃焼室の底側に向かって傾斜した方向、かつ、上記燃焼室の壁面の法線に対して上記第1の吹出口とは反対側に傾斜した方向に燃焼空気を吹き出す複数の第2吹出口と
を有する。
【0017】
上記実施形態によれば、第2燃焼空気供給部の複数の第1吹出口から、燃焼室の軸直角平面内に、壁面の法線に対して傾斜した方向に燃焼空気が吹き出され、旋回流れが形成される。上記第1吹出口よりも燃焼室の底から遠い側に配置された第2吹出口から、上記燃焼室の底側に向かって傾斜した方向、かつ、上記燃焼室の壁面の法線に対して上記第1の吹出口とは反対側に傾斜した方向に燃焼空気が吹き出され、上記第1吹出口からの燃焼空気による旋回流と衝突して、燃焼空気の乱れが形成される。これにより、燃焼室内を上昇する燃焼ガスと燃焼空気とが効果的に撹拌混合され、燃料の未燃成分の燃焼が促進され、燃料が完全燃焼して、効果的に燃焼温度が上昇する。
【0018】
一実施形態の熱交換器一体型燃焼炉は、上記第2燃焼空気供給部は、上記燃焼室の外側を取り囲むように配置されると共に上記第1吹出口に連通し、上記第1吹出口が上記燃焼室へ燃焼空気を吹き出す壁面の法線に対する傾斜方向と同じ方向に燃焼空気を旋回させる空気室を備える。
【0019】
上記実施形態によれば、燃焼室の外周側を取り囲むように配置された空気室内を、燃焼空気が、第1吹出口が燃焼室へ燃焼空気を吹き出す壁面の法線に対する傾斜方向と同じ方向に旋回する。これにより、燃焼室内に、乱れを形成して燃焼室内の燃焼ガスに燃焼空気を効果的に撹拌混合しながら、第1熱交換部へ向かう旋回流を形成することができる。
【0020】
一実施形態の熱交換器一体型燃焼炉は、上記燃料供給部は、上記燃焼室の壁面に設けられた燃料供給口を有する。
【0021】
上記実施形態によれば、燃料供給部が、燃焼室の壁面に設けられた燃料供給口から燃料を供給するので、従来のように燃料を鉛直方向に送らなくてよいから、バイオマス燃料に含まれる不燃物によって燃料供給部が損傷する不都合を防止できる。
【0022】
一実施形態の熱交換器一体型燃焼炉は、上記第1燃焼空気供給部は、上記燃焼室の底から上方に向かって燃焼空気を供給する底部吹出口を有する。
【0023】
上記実施形態によれば、第1燃焼空気供給部が有する底部吹出口により、燃焼室の底から上方に向かって燃焼空気が供給されるので、燃焼室に上昇方向の流れを形成できる。ここで、底部吹出口は、燃焼室の底に分散して複数個配置するのが好ましい。
【0024】
一実施形態の熱交換器一体型燃焼炉は、上記第2熱交換部の水室の底を形成する底部材が、上記第1熱交換部の燃焼ガス室の天井を形成する天井部材を兼ねている。
【0025】
上記実施形態によれば、第2熱交換部の水室の底部材が、第1熱交換部の燃焼ガス室の天井部材を兼ねているので、第2熱交換部の水室で、煙管に導かれる燃焼ガスと熱交換を行う水を、第1熱交換部の燃焼ガス室の燃焼ガスの熱によっても加熱できるので、第2熱交換部における水の加熱効率を向上できる。また、通常の熱交換器の水室のように、水室の底部材が外気に接して形成された場合のような外気への放熱を防止できるので、第2熱交換部の加熱効率を向上できる。また、燃焼ガス室と第2熱交換部とを分離して設置した場合に必要なダクトを削除できるので、ダクトによる熱損失を削減して熱効率を向上できると共に、部品点数を小なくできる。
【0026】
一実施形態の熱交換器一体型燃焼炉は、上記第2熱交換部は、3パスの多管式熱交換器である。
【0027】
上記実施形態によれば、第2熱交換部を3パスの多管式熱交換器で形成することにより、小型化を図ることができる。
【0028】
一実施形態の熱交換器一体型燃焼炉は、上記燃料供給部と、上記燃焼室に燃焼空気を供給する送風機とを制御する制御部を備え、
上記制御部は、上記燃料供給部による燃料供給量と上記送風機による送風量を制御して、上記燃焼室で生成すべき熱量を調節する燃焼モードと、上記燃料供給部による燃料供給量と上記送風機による送風量を上記燃焼モードにおけるよりも少ない量に制御して、上記燃焼室に種火を保持する待機モードとを有する。
【0029】
上記実施形態によれば、制御部により、燃焼室に燃料を供給する燃料供給部の動作と、燃焼室に燃焼空気を供給する送風機の動作が制御される。制御部は、燃焼モードにおいて、燃料供給部による燃料供給量と送風機による送風量を制御して、燃焼室で生成される熱量を所定の熱量に調節する。これにより、燃焼室で生成する熱を、第1熱交換部及び第2熱交換部で所定の温度が得られる量に調節し、第2熱交換部から排出される温度を所定の温度に制御する。一方、待機モードにおいて、制御部は、燃料供給部による燃料供給量と送風機による送風量を燃焼モードよりも少ない量に制御して、燃焼室に種火を保持する。この待機モードにおいて、燃焼室への燃焼空気の送風量と燃料の供給量を増大させれば、迅速に所定の熱量が得られるので、迅速に燃焼モードに移ることができる。したがって、化石燃料と比較して着火しにくいバイオマス燃料を用いるにもかかわらず、速やかに再起動できる熱交換器一体型燃焼炉が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施形態の熱交換器一体型燃焼炉を示す正面縦断面図であり、
図2は、
図1の正面縦断面図を示す切断面に対して燃焼室の中心軸回りに90°をなす切断面における側面縦断面図である。本実施形態の熱交換器一体型燃焼炉1は、バイオマス燃料である木質チップを燃料とし、水を加熱して温水を生成するものである。ここで、燃焼室の中心軸とは、燃焼室の平断面において対角線の交点を通り、燃焼室の上下方向に延びる軸をいう。
【0033】
この熱交換器一体型燃焼炉1は、燃料を燃焼する燃焼部2と、燃焼部2の上に連なり、燃焼部2で生成された燃焼ガスと水を熱交換する第1熱交換部3と、第1熱交換部3の上に連なり、第1熱交換部3で熱交換した水を更に熱交換する第2熱交換部4とで大略構成されている。
【0034】
燃焼部2は、箱状の燃焼室ケーシング5と、燃焼室ケーシング5の内側に設けられた断熱材6及びキャスタブル耐火物7とで形成された壁本体9の内側に、矩形断面を有する直方体の燃焼室8が形成されている。断熱材6は、例えばセラミックボードで形成されたものを用いることができ、キャスタブル耐火物7は、例えばアルミナコンクリートで形成されたものを用いることができる。燃焼室8の壁面に耐火物を用いることにより、蓄熱を行うと共に輻射熱を放出することができ、燃料の燃焼を促進できる。したがって、燃焼室8内の燃料を速やかに燃焼させることができる。なお、不定形のキャスタブル耐火物7に替えて、耐火レンガ等の定型の耐火物を用いてもよい。また、耐火物としては、アルミナ以外に、例えばシリカ、ジルコニア、マグネシア及び石灰等で形成されたものを用いることができる。
【0035】
燃焼部2は、燃焼室8内に燃料の木質チップを供給する燃料供給部としてのスクリューコンベヤ18と、燃焼室8の底面から燃焼空気を供給する第1燃焼空気供給部を形成する底面板10の貫通孔11及び底部空気室13と、第2燃焼空気供給部の第1吹出口を形成する下段空気供給管25と、第2燃焼空気供給部の第2吹出口を形成する上段空気供給管26と、上記下段空気供給管25に燃焼空気を供給する下側空気室28aと、上記上段空気供給管26に燃焼空気を供給する上側空気室28bとを有する。上記下段空気供給管25及び上段空気供給管26と、上記下側空気室28a及び上側空気室28bとで、第2燃焼空気供給部を形成している。
【0036】
第2燃焼空気供給部を形成する下段空気供給管25及び上段空気供給管26は、内部に燃焼室8を形成する壁本体9の上部に貫通して固定されている。下段空気供給管25及び上段空気供給管26は、内部に燃焼空気の通路が形成され、燃焼室8に臨む開口が吹出口になっている。後に詳述するように、下段空気供給管25及び上段空気供給管26は、燃焼室8の壁面の法線方向又は軸方向に対して傾斜して固定されている。下側空気室28aと上側空気室28bは、燃焼室ケーシング5の周面を取り囲むように設置された空気室壁27の内側に形成され、この空気室壁27に接続された下側給気管29aと上側給気管29bを通して、矢印A2とA3で示すように燃焼空気が夫々供給される。下側空気室28a及び上側空気室28bに供給された燃焼空気は、下段空気供給管25及び上段空気供給管26を通って燃焼室8に供給され、燃焼室8の下段空気供給管25及び上段空気供給管26で取り囲まれた領域に、燃焼空気の乱れを形成する。燃焼室8内で燃料が燃焼して生成された高温の燃焼ガスは、燃焼室8の下段空気供給管25及び上段空気供給管26に取り囲まれた領域で燃焼空気によって流れが乱れて撹拌され、燃焼が促進される。この後、燃焼室8の上に連なる第1熱交換部3の燃焼ガス室35に流れる。
【0037】
燃焼室8の底面には、壁本体9の下端に内嵌する矩形の板状の底面板10が配置され、この底面板10の下方に底部空気室13が配置されている。底部空気室13は、箱状の底部ケーシング14内に形成されている。底面板10には、燃焼空気を底部空気室13から燃焼室8に導く複数の貫通孔11,11,・・・が、全面に分散して形成されている。底面板10の貫通孔11の燃焼室8に臨む開口が、底部吹出口として機能する。底部空気室13には、底部ケーシング14に接続された下部給気管15を通して、矢印A1で示すように燃焼空気が供給される。
【0038】
上記下側空気室28a及び上側空気室28bと底部空気室13には、下側空気室28a及び上側空気室28bに接続された下側給気管29a及び上側給気管29bと、底部空気室13に接続された下部給気管15とを通して、これらの下側給気管29a及び上側給気管29bと下部給気管15の上流側に接続された送風機64により、燃焼空気が供給される、
【0039】
図4は、底面板10を示す斜視図である。底面板10は、キャスタブル耐火物を矩形の板状に成型してなり、平面視において全面に複数の貫通孔11,11,・・・が形成されている。この底面板10の表面に、燃料供給部としてのスクリューコンベヤ17から供給され、燃料供給口21から排出された燃料が、
図1の矢印Fで示されるように落下して受け取られる。底面板10は、燃焼モードの運転を行う場合に、燃焼する燃料を保持する。一方、待機モードの運転を行う場合に、着火した状態の燃料を種火として保持する。待機モード時に底面板10が種火を保持することにより、燃焼室8への燃料と燃焼空気の供給量が増大すれば、迅速に通常モードに移行することができる。
【0040】
燃焼室8の側面には、燃料を供給する燃料供給部としてのスクリューコンベヤ17が設置されている。スクリューコンベヤ17は、筒状のケーシング18と、ケーシング18内に配置されて回転駆動される搬送スクリュー19で形成され、燃料が導かれる投入管20に一端が接続されている。投入管20は、燃料の貯留及び供給を行う定量供給機の供給コンベヤに、遮断弁を介して接続されている。スクリューコンベヤ17の他端には、燃焼室8の側面に開口する燃料供給口21が設けられている。燃料供給口21の高さ方向の中心は、下段空気供給管25及び上段空気供給管26が配列された領域よりも低い位置に設置されている。なお、燃料供給口21の高さ方向の中心は、下段空気供給管25及び上段空気供給管26が配列された領域の高さ方向の中心よりも低い位置に設置されていればよい。ここで、高さ方向とは、燃焼室8の中心軸の延在方向と実質的に同じであり、高さの低い側は底部ケーシング14の底面に近い側であり、また、高さの高い側は第1熱交換部3に近い側である。上記スクリューコンベヤ17は、一端から他端に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜しており、これにより、高温の燃焼空気がスクリューコンベヤ17の内部を逆流し難くなっている。燃焼室8の壁面の燃料供給口21の近傍には、燃料供給口21と略同じ高さに設けられた着火口23が設けられている。着火口23は図示しない着火バーナの吹出口に接続されており、熱交換器一体型燃焼炉1の作動時に、図示しない着火バーナによって生成された炎が上記着火口23から放射されるようになっている。
【0041】
図5は、燃焼室8の側面に設置された下段空気供給管25及び上段空気供給管26の配置状況を示す縦断面図である。
図5は、下段空気供給管25及び上段空気供給管26の設置位置において、壁本体9を、燃焼室8の中心軸を含む面内で切断した様子を示す断面図である。なお、
図5では、下段空気供給管25及び上段空気供給管26の壁面の法線方向に対する傾斜は表現していない。
【0042】
図5に示すように、本実施形態の熱交換器一体型燃焼炉1には、燃焼室8の中心軸の延在方向に2段の空気供給管25,26が配列されている。これらの空気供給管25,26のうち、燃焼室8の底側に位置する下段空気供給管25は、燃焼室8の中心軸と直角をなす面と平行を向いている。この下段空気供給管25は、
図6の平断面図に示すように、燃焼室8の中心軸方向視において、壁面の法線Rに対して時計回りに傾斜角αを成して配置されている。これにより、下側空気室28aから下段空気供給管25を通って導かれた燃焼空気は、燃焼室8側の開口から、燃焼室8内に壁面の法線Rに対して傾斜した方向に吹き出される。このように、下段空気供給管25の燃焼室8側の開口は、第1吹出口として機能する。
【0043】
上記下段空気供給管25に対して第1熱交換部3側に位置する上段空気供給管26は、燃焼室8の中心軸の直角面に対して、燃焼室8に臨む側が燃焼室8の底面に向かって傾斜している。この上段空気供給管26は、
図5の縦断面図に示すように、燃焼室8の軸直角方向線Hに対して傾斜角θを成して配置されていると共に、
図7の平断面図に示すように、燃焼室8の中心軸方向視において、壁面の法線Rに対して反時計回りに傾斜角βを成して配置されている。上段空気供給管26の壁面の法線Rに対する傾斜角βは、下段空気供給管25の壁面の法線Rに対する傾斜角αと、壁面の法線方向に関して逆向きである。これにより、上側空気室28bから上段空気供給管26を通って導かれた燃焼空気は、燃焼室8内に、壁面の法線Rに関して下段空気供給管25と逆向きの傾斜方向に吹き出される。このように、上段空気供給管26の燃焼室8側の開口は、第2吹出口として機能する。
【0044】
図8は、下段空気供給管25の配置位置における下側空気室28a及び燃焼室8の平断面図である。
図8に示すように、下側空気室28aの一辺と平行に延在する下側給気管29aを通して矢印A2で示すように供給された燃焼空気は、下側空気室28a内で、矢印A4で示すような反時計回りに旋回する。この旋回する燃焼空気が、矢印A5で示すように、複数の下段空気供給管25,25,・・・を通して中心軸直角平面内に、壁面の法線方向に関して時計回りの偏心方向に吹き出される。複数の下段空気供給管25,25,・・・から吹き出された燃焼空気は、
図8に示すように、燃焼室8の中心軸に関して反時計回りに流れる。
【0045】
図9は、上段空気供給管26の配置位置における上側空気室28b及び燃焼室8の平断面図である。
図9に示すように、上側空気室28内を矢印A6で示すような反時計回りに旋回する燃焼空気が、矢印A7で示すように、複数の上段空気供給管26,26,・・・を通して底面側に、壁面の法線方向に関して反時計回りの偏心方向に吹き出される。複数の上段空気供給管26,26,・・・から吹き出された燃焼空気は、
図9に示すように、燃焼室8の中心軸に関して時計回りに流れる。
【0046】
上記下段空気供給管25を通って軸直角平面内に反時計回りに吹き出した燃焼空気に、上記上段空気供給管26を通って底面方向に時計回りに吹き出した燃焼空気が衝突して、燃焼室8の下段空気供給管25及び上段空気供給管26で取り囲まれた領域とその周辺に、燃焼空気の乱れが形成される。燃焼室8内に燃焼空気の乱れを形成することにより、燃焼室8内に旋回流のみを形成する場合や上昇流のみを形成する場合と比較して、燃焼ガスに燃焼空気を効果的に撹拌混合することができる。これにより、燃焼ガスの未燃成分の燃焼を促進して燃焼室8内の燃焼温度を上昇させると共に、燃料を完全燃焼させることによって一酸化炭素や煤の発生を少なくできる。したがって、一酸化炭素が漏洩する危険や、煤が熱交換部3,4に蓄積して熱交換能力が低下する不都合を防止できる。
【0047】
ここで、壁面の法線方向に関して時計回りに偏心した上記下段空気供給管25は、下側空気室28aにおける燃焼空気の旋回方向と鈍角をなす一方、壁面の法線方向に関して反時計回りに偏心した上記上段空気供給管26は、上側空気室28bにおける燃焼空気の旋回方向と鋭角をなす。これにより、上段空気供給管26から吹き出す燃焼空気の流量は、下段空気供給管25から吹き出す燃焼空気の流量よりも少ないので、燃焼室8内に形成される乱れは、下段空気供給管25から軸直角平面内に吹き出す燃焼空気が卓越して矢印A5の反時計回りに旋回する。また、底面板10の貫通孔11から燃焼室8内に吹き出される燃焼空気により、燃焼室8内には上昇流が生成される。これにより、底面板10の貫通孔11からの燃焼空気で燃料が燃焼して生成された燃焼ガスが、上段空気供給管26と下段空気供給管25からの燃焼空気による乱れによって燃焼室8の上部で効果的に燃焼空気と撹拌混合され、未燃成分の燃焼が促進されて燃料が完全燃焼する。これにより、燃焼ガスの温度が十分に上昇した後に、旋回状に流れる乱れを経て燃焼ガスが燃焼室8から上方の燃焼ガス室35に導かれる。
【0048】
ここで、第1吹出口を提供する下段空気供給管25の壁面の法線方向に対する傾斜角αは、0°よりも大きく50°以下であり、好ましくは、1°以上30°以下である。また、第2吹出口を提供する上段空気供給管26の軸直角平面に対する傾斜角θは、0°よりも大きく50°以下であり、好ましくは、1°以上30°以下である。また、上段空気供給管26の壁面の法線方向に対する傾斜角βは、0°よりも大きく50°以下であり、好ましくは、1°以上30°以下である。
【0049】
なお、上記下段空気供給管25及び上段空気供給管26で第2燃焼空気供給部を構成したが、
図10に示すように、1段の空気供給管126で第2燃焼空気供給部を構成してもよい。この空気供給管126は、
図10の縦断面図に示すように、燃焼室8の軸直角方向線Hに対して傾斜角θを成して配置されていると共に、
図11の平断面図に示すように、燃焼室8の中心軸方向視において、壁面の法線Rを向いて配置されている。この空気供給管126から燃焼室8の底側に向かって吹き出された燃焼空気は、燃焼室8内を上方に向かう燃焼ガスと衝突して乱れが形成される。これにより、燃焼ガスの未燃成分を効果的に完全燃焼させることができ、燃焼ガスの温度を上昇させることができる。
【0050】
また、第2燃焼空気供給部を構成した2段の空気供給管25,26は、下段の空気供給管が、中心軸直角面と平行を向くと共に、上段の空気供給管が、中心軸直角面に対して燃焼室8の底面に向かって傾斜したが、下段の空気供給管を燃焼室8の底面に向けて傾斜し、上段の空気供給管を中心軸直角面と平行に向けてもよい。また、下段の空気供給管を燃焼室8の天井側に向けて傾斜し、上段の空気供給管を中心軸直角面と平行に向けてもよい。また、第2燃焼空気供給部の下段空気供給管25の中心軸方向視における傾斜方向が壁面の法線Rに対して時計回りであり、上段空気供給管26の中心軸方向視における傾斜方向が壁面の法線Rに対して反時計回りであったが、下段空気供給管25の中心軸方向視における傾斜方向を反時計回りとし、上段空気供給管26の中心軸方向視における傾斜方向を時計回りとしてもよい。
【0051】
また、燃焼室8の上部に設置する空気供給管の段数は、燃焼室8内に形成すべき流れに応じて適宜設定できる。また、空気供給管の段数は2段や1段以外の何段でもよい。
【0052】
また、燃焼空気の吹出口は、空気供給管を用いて形成するほか、厚みのある壁体に貫通孔を設けて形成してもよい。この場合、貫通孔の延在方向を、燃焼室8の中心軸と直角の面や、中心軸を通る面に対して傾斜させ、あるいは、壁面の法線方向に向けて、傾斜通路や旋回通路を形成することができる。
【0053】
第1熱交換部3は、燃焼部2の燃焼室8に連なる直方体の燃焼ガス室35と、燃焼ガス室35を取り囲む水ジャケット32を備える。燃焼ガス室35と水ジャケット32の間は内壁31で区画され、水ジャケット32の外側は外壁30で区画される。外壁30には、加熱すべき水が矢印W1で示すように供給されて水ジャケット32に導く水供給管33が設けられている。上記燃焼ガス室35は、上方に位置する第2熱交換部3の水室42と隣接しており、水室42の底部材53が、燃焼ガス室35の天井部材を兼ねている。
【0054】
燃焼部2の燃焼室8で生成された高温の燃焼ガスは、燃焼室8の上に連なる燃焼ガス室35に流入し、水ジャケット32の水と熱交換を行う。水ジャケット32の水は、燃焼ガス室35の燃焼ガスとの熱交換により温度が上昇した後、第2熱交換部4に導かれる。燃焼ガス室35の燃焼ガスは、水ジャケット32の水と熱交換すると共に、燃焼ガス室35の天井部材を兼ねる第2熱交換部4の水室42の底部材53を介して、第2熱交換部4の水室42内の水と熱交換を行う。燃焼ガス室35を流れた燃焼ガスは、第2熱交換部4の第1煙室45に流入する。本実施形態の熱交換器一体型燃焼炉1は、燃焼室8の上に燃焼ガス室35を連ね、この燃焼ガス室35を取り囲む水ジャケット32を設け、この水ジャケット32で熱交換を行った燃焼ガスを多管式水熱交換器である第2熱交換部4に供給している。したがって、燃焼室8から多管式水熱交換器に直接燃焼ガスを供給する場合と比較して、燃焼室8の燃焼温度を100℃程度高めることができる。したがって、燃焼室8に、温度を低下させるための余剰の燃焼空気を供給する必要が無いので、燃料の燃焼効率を高めることができる。
【0055】
第2熱交換部4は、幅方向(
図1の紙面の左右方向)の寸法が、奥行き方向(
図2の紙面の左右方向)の寸法よりも大きい略直方体のケーシング40と、ケーシング40内の幅方向の左右両側に配置されて管板を兼ねる水室仕切り板41,41と、ケーシング40内の左右の水室仕切り板41,41の間に形成された水室42と、水室仕切り板41,41に支持されて水室42内に配置された複数の煙管43,43,・・・と、水室42内を仕切って水の流れを蛇行させる2つの流路仕切り板44,44を有する。正面視において左側の水室仕切り板41の水室42の反対側には、水室仕切り板41に支持された煙管43に連なる第1煙室45と、第3煙室47とが設けられている。正面視において右側の水室仕切り板41の水室42の反対側には、第2煙室46と、ガス排出口53とが設けられている。第1煙室45と、第2煙室46と、第3煙室47の表面には、断熱材48とキャスタブル耐火物49とが設けられている。断熱材48は、例えばセラミックボードで形成されたものを用いることができ、キャスタブル耐火物49は、例えばアルミナコンクリートで形成されたものを用いることができる。
【0056】
第1煙室45と第2煙室46との間は、複数の煙管43,43,のうちの複数の第1経路煙管43a,43a,・・・が接続している。第2煙室46と第3煙室47との間は、複数の煙管43,43,のうちの複数の第2経路煙管43b,43b,・・・が接続している。第3煙室47とガス排出口53との間は、複数の煙管43,43,のうちの複数の第3経路煙管43c,43c,・・・が接続している。第1煙室45は、第1熱交換部3の燃焼ガス室35に連通し、燃焼ガス室35の燃焼ガスが導かれる。第1煙室45に導かれた燃焼ガスは、第1経路煙管43a,43a,・・・を流れて第2煙室46に導かれ、第2煙室46に導かれた燃焼ガスは、第2経路煙管43b,43b,・・・を流れて第3煙室47に導かれ、第3煙室47に導かれた燃焼ガスは、第3経路煙管43c,43c,・・・を流れてガス排出口53に導かれ、ガス排出口53から外部に排出される。このように、第2熱交換部4は、燃焼ガスが3つの方向に流れる3パスの熱交換器を構成している。なお、第2熱交換部4は、燃焼ガスが2つの方向に流れる2パスの熱交換器を構成してもよく、必要な能力に応じてパスの数は適宜設定できる。
【0057】
第2熱交換部4の水室42は、
図2に示すように、連絡管50を介して第1熱交換部3の水ジャケット32と連通している。連絡管50は、第1熱交換部3の水ジャケット32の上部に一端が接続され、第2熱交換部4の水室42の下部の流入口51に他端が接続されている。第1熱交換部3の水ジャケット32で熱交換を行った水は、矢印W2で示すように連絡管50を通り、流入口51から第2熱交換部4の水室42に流入する。水室42に流入した水は、流路仕切り板44,44で仕切られた流路を矢印W3,W4で示すように蛇行して流れる過程で、煙管43,43,・・・を通る燃焼ガスと熱交換する。熱交換により加熱された水は、水室42の流出口52を通って水室42から流出し、流出口52に連なる流出管54を通って外部に排出される。ケーシング40上端部には、水室42内に過剰な圧力がかからないように、図示しない大気開放口が設けられている。
【0058】
上記燃焼部2及び第1熱交換部3は実質的に同じ断面の直方体に形成され、上記第2熱交換部4は、奥行き方向の寸法が第1熱交換部3の寸法よりも多少大きく、かつ、幅方向の寸法が第1熱交換部3の寸法の1.5倍程度の直方体形状に形成されている。上記燃焼部2、第1熱交換部3及び第2熱交換部4は、鉛直方向の下側から上側に向かって順次連なるように配置されている。これにより、熱交換器一体型燃焼炉1は、燃焼部と熱交換部を分離して形成するよりも少ないスペースに設置できるようになっている。
【0059】
図12は、実施形態の熱交換器一体型燃焼炉1を用いて構成されたボイラ装置を示す模式図である。このボイラ装置は、熱交換器一体型燃焼炉1と、熱交換器一体型燃焼炉1で加熱された高温水を貯留する貯湯タンク68と、熱交換器一体型燃焼炉1から排出された燃焼ガスである排気の集塵を行うサイクロン集塵装置74と、サイクロン集塵装置74の排気口に連なる誘引ファン75を備える。
【0060】
熱交換器一体型燃焼炉1の燃焼部2には、燃料としての木質チップが定量供給機60の供給コンベヤ61から巻き出され、燃焼部2の燃焼室8内からの逆火を防止するための遮断弁62を介してスクリューコンベヤ17に供給される。定量供給機60は、撹拌羽根が内蔵されたホッパーを有する。撹拌羽根は、ホッパー内の供給コンベヤ61の上方に配置され、定量供給機60の側部に設置された駆動手段で回転駆動されて、燃料の木質チップを撹拌してブリッジの形成を防止する。定量供給機60のホッパーには、貯留する燃料の表面位置を検出して残量を検知するレベルセンサL1が設けられている。スクリューコンベヤ17には温度センサT1が設けられており、温度センサT1の検出温度に基づいて、スクリューコンベヤ17の搬送する燃料が燃焼室8からの高温空気によって着火していないかを監視している。温度センサT1が異常温度を検出して燃料の着火を検知すると、スクリューコンベヤ17に接続された給水管の開閉バルブV1を開いて消火を行うようになっている。
【0061】
燃焼室8から第1熱交換部3に送られる燃焼ガスの温度は、第1煙室45に配置されたガス温度センサT2で検出される。
【0062】
第2熱交換部4の水室42には、内部の水量を検出する水位センサL3と、水の温度を検出する温度センサT3が設けられている。貯湯タンク68には、貯留される水の温度を検出する温度センサT4と、内部の水量を検出する水位センサL2が設けられている。
【0063】
貯湯タンク68は、第2熱交換部4の水室42から延びる加熱戻り管71と、循環ポンプ69に介設されて第1熱交換部3の水ジャケット32に延びる加熱送り管70に接続されている。第1熱交換部3の水ジャケット32と、第2熱交換部4の水室42と、貯湯タンク68とで水の循環経路を構成している。この循環経路上に、加熱送り管70に温水の入口温度を測定する温度センサT5が設けられていると共に、加熱戻り管71に温水の出口温度を測定する温度センサT6が設けられている。上記第1煙室45のガス温度センサT2と、上記加熱送り管70及び加熱戻り管71の温度センサT5,T6の検出値に基づいて、燃焼空気及び燃料の供給量が制御される。
【0064】
サイクロン集塵装置74は、側面に燃焼ガスの吸入口が設けられた円筒部と、円筒部の下方に連なって内部に旋回流が形成される逆円錐形の分離部と、円筒部内から上方に突出して配置された排気筒を有する。このサイクロン集塵装置74は、第2熱交換部4で熱交換を終えた燃焼ガスを円筒部の吸入口から吸入し、円筒部と分離部で燃焼ガスの旋回流を形成し、この旋回流の遠心力により燃焼ガスに含まれる粉塵を分離する。粉塵が分離された燃焼ガスは、誘引ファン75に吸引され、大気に開放される。誘引ファン75としては、遠心式送風機を用いることができる。
【0065】
このボイラ装置は、上記レベルセンサL1、温度センサT1、ガス温度センサT2、水位センサL2,L3及び温度センサT3,T4の検出情報に基づいて、供給コンベヤ61、遮断弁62、スクリューコンベヤ17、開閉バルブV1、誘引ファン75、送風機64の動作を制御する制御部80を備える。この制御部80により、貯湯タンク68の温度が所定温度となるように、燃焼室8で生成される熱量と、第1熱交換部3の水ジャケット32と第2熱交換部4の水室42と貯湯タンク68の水の循環量が制御される。
【0066】
上記構成の熱交換器一体型燃焼炉1及びボイラ装置は、次のように動作する。まず、水位センサL2,L3の検出情報により、水室42及び貯湯タンク68内の水位を確認する。水室42及び貯湯タンク68内の水位が基準値よりも少ない場合は、貯湯タンク68に水を供給する。水室42及び貯湯タンク68内の水位が基準値を満たす場合は、誘引ファン75と送風機64を起動すると共に、遮断弁62を開いて供給コンベヤ61及びスクリューコンベヤ17を起動する。送風機64を起動して、下側給気管29a及び上側給気管29bを通して下側空気室28a及び上側空気室28bに燃焼空気を供給すると共に、下部給気管15を通して底部空気室13に燃焼空気を供給する。なお、
図12において、下側給気管29a及び上側給気管29bは、まとめて符号29で示しており、下側空気室28a及び上側空気室28bは、まとめて符号28で示している。遮断弁62を開いて供給コンベヤ61及びスクリューコンベヤ17を起動し、定量供給機60から供給コンベヤ61で燃料の木質チップを巻き出して、スクリューコンベヤ17により燃焼室8へ燃料を投入する。
【0067】
熱交換器一体型燃焼炉1では、下側空気室28a及び上側空気室28bに供給された燃焼空気が、下段空気供給管25及び上段空気供給管26を通って燃焼室8に供給される。このとき、下段空気供給管25から燃焼室8の中心軸と直角をなす面内かつ中心軸の偏心方向に吹き出される燃焼空気と、上段空気供給管26から燃焼室8の底側に、中心軸に関して下段空気供給管25と逆向きの偏心方向に吹き出された燃焼空気とが混合して、燃焼室8の上部に燃焼空気の乱れが形成される。この乱れが形成される領域の下部に位置する燃料供給口21から、矢印Fで示すように、スクリューコンベヤ17で供給された燃料が燃焼室8内に投入され、投入された燃料は燃焼室8の底面板10の上に保持される。
【0068】
底面板10の上に保持された燃料は、石油燃料で作動する図示しないバーナで着火され、底部空気室13から底面板10の貫通孔11,11,・・・を通して供給される1次燃焼空気と、下側空気室28a及び上側空気室28bから下段空気供給管25及び上段空気供給管26を通して供給される2次燃焼空気を受けて燃焼を開始する。燃料の燃焼に伴って生成された燃焼ガスは、燃焼室8内の乱流が生成される領域の上方から第1熱交換部3の燃焼ガス室35を旋回状に流れる。燃料は、燃焼に伴う燃焼ガスが、燃焼室8内を乱流及び旋回流を形成して流れる過程で、貫通孔11及び空気供給管25,26により十分に燃焼空気が供給されて撹拌混合されるので、完全燃焼をして高温となる。したがって、バイオマス燃料である木質チップを用いながら、安定して高温の燃焼ガスが得られる。燃焼室8で燃料が燃焼して生成された燃焼ガスは、第1熱交換部3の燃焼ガス室35に流れる。
【0069】
燃焼ガス室35に流れた燃焼ガスは、水ジャケット32内の水と熱交換を行い、燃焼ガス室35の天井部材を兼ねる第2熱交換部4の水室42の底部材53を介して、第2熱交換部4の水室42内の水と熱交換を行う。燃焼ガス室35で水ジャケット32内の水と水室42内の水と熱交換を行った燃焼ガスは、第2熱交換部4の第1煙室45に流れる。
【0070】
第2熱交換部4の第1煙室45に流れた燃焼ガスは、第1経路煙管43a,43a,・・・を通って第2煙室46に導かれ、第2経路煙管43b,43b,・・・を通って第3煙室47に導かれ、更に、第3経路煙管43c,43c,・・・を通ってガス排出口53に導かれる。上記第1経路煙管43a,43a,・・・、第2経路煙管43b,43b,・・・及び第3経路煙管43c,43c,・・・を通る間に、水室42内の水と熱交換を行う。ガス排出口53に達した燃焼ガスは、サイクロン集塵装置74に導かれる。サイクロン集塵装置74では、円筒部の吸入口から流入した燃焼ガスが分離部に導かれ、分離部内を旋回状に流れる際の遠心力で塵が分離する。燃焼ガスから分離した塵は、サイクロン集塵装置の下部に配置された塵収容器に集められる。塵が分離された燃焼ガスは排気筒を通り、排気塔に連なる排気管を通して誘引ファン75に吸引され、大気に排気される。なお、誘引ファン75の下流側に、燃焼ガスに含まれる微細な粒子を除去するバグフィルタを接続してもよい。
【0071】
貯湯タンク68内の水は、循環ポンプ69によって加熱送り管70を通して熱交換器一体型燃焼炉1の水ジャケット32に送られる。水ジャケット32で燃焼ガス室35から伝わる熱を受けて加熱された水は、連絡管50を通って第2熱交換部4の水室42に導かれ、水室42で燃焼ガスと熱交換を行って更に加熱される。水室42で加熱された水は、流出管54に接続された加熱戻り管71を通って貯湯タンク68に戻される。
【0072】
制御部80は、ガス温度センサT2で検出された燃焼ガスの温度と、温度センサT5,T6で検出された温水の入口温度及び出口温度に基づいて、供給コンベヤ61、遮断弁62及びスクリューコンベヤ17の動作を制御し、燃焼室8に供給する燃料の量を制御すると共に、誘引ファン75と送風機64の動作を制御し、燃焼室8に供給する燃焼空気の量を制御する。温水の入口温度が基準値よりも低いと、制御部80は、水の温度を上昇させる燃焼モードの制御を行う。すなわち、遮断弁62を開き、供給コンベヤ61及びスクリューコンベヤ17による燃料の供給量を増大すると共に、送風機64の送風量を増大して燃焼室8への燃焼空気の供給量を増大する。また、誘引ファン75の吸引量を増大してサイクロン集塵装置74の第2熱交換部4から吸引する燃焼ガス量を増大する。これにより、燃焼室8内で燃料が燃焼して生成される熱量が増大し、水ジャケット32及び水室42で水と熱交換する熱量が増大し、循環する水の温度が上昇して、入口温度が上昇する。こここで、ガス温度センサT2で検出される第1煙室45の燃焼ガスの温度が異常高温に達していないかを確認し、温度センサT6で検出される第2熱交換部4からの出口温度が異常高温に達していないかを確認する。温度センサT5で検出される入口温度が所定温度に達すると、制御部80は、供給コンベヤ61及びスクリューコンベヤ17による燃料の供給量を減少させると共に、送風機64の送風量を減少させて燃焼室8への燃焼空気の供給量を減少させ、誘引ファン75の吸引量を減少させて第2熱交換部4から吸引する燃焼ガス量を減少させ、循環ポンプ69の送水量を減少させる。供給コンベヤ61からスクリューコンベヤ17への燃料の供給を停止する場合は、遮断弁62を閉じて燃焼室8からの燃焼ガスや燃焼空気の逆流を防止する。
【0073】
温水の利用が停止したこと等により、第1熱交換部3及び第2熱交換部4による水の加熱動作を停止する場合、制御部80は、燃焼モードの制御を停止して待機モードの制御を行う。すなわち、供給コンベヤ61及びスクリューコンベヤ17による燃料供給量を、燃焼モードにおけるよりも少なくすると共に、誘引ファン75の吸引量と送風機64の送風量を燃焼モードにおけるよりも少なくする。これにより、第1熱交換部3及び第2熱交換部4への熱の供給を実質的に停止した状態で、燃焼室8に種火を保持する。このように、燃焼室8に臨む底面板10に最小限の燃料を保持し、この燃料に種火を残すことにより、温水の使用が再開して第1熱交換部3及び第2熱交換部4の動作が求められた場合に、供給コンベヤ61及びスクリューコンベヤ17による燃料供給量と、送風機64の送風量を増大すれば、燃料を迅速に着火させて燃焼室8で生成する熱量を迅速に回復することができる。すなわち、待機モードから燃焼モードに迅速に移ることができ、温水の需要に迅速に対応することができる。なお、待機モードでは、供給コンベヤ61及びスクリューコンベヤ17による燃料の供給は、連続的に行ってもよく、あるいは、断続的に行ってもよい。要は、種火を保持できる程度の燃料を供給できればよい。
【0074】
上記実施形態において、バイオマス燃料として、木質チップからなる燃料を用いたが、木質ペレット等のように、植物系の材料を成型した再生燃料を用いてもよい。植物系の材料としては、オガ屑、木屑、間伐材及び剪定材等の木質系材料や、稲藁、籾殻、雑草及びバガス等の農業系材料や、建設廃材等の廃棄物系材料や、古紙や廃パルプ等の紙系材料がある。また、植物系再生燃料は、例えばRPF(Refuse Paper and Plastic Fuel;古紙及び廃プラスチックを主原料とする固形燃料)のように、植物系の材料にプラスチック等の植物系以外の材料を混合して作成した燃料であってもよい。