特許第6207280号(P6207280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207280
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】流体封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20170925BHJP
   F16F 13/16 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F16F13/10 H
   F16F13/16
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-158381(P2013-158381)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-28369(P2015-28369A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】道山 和佳子
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−067904(JP,A)
【文献】 特開2009−243541(JP,A)
【文献】 特開2002−227912(JP,A)
【文献】 特開2012−154420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F11/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナ軸部材がアウタ筒部材に差し入れられて本体ゴム弾性体によって弾性連結されていると共に、該アウタ筒部材に支持された仕切部材を挟んで上下両側に主液室と副液室が形成されて、それら主液室と副液室が第一のオリフィス通路によって相互に連通されている一方、該本体ゴム弾性体には外周面に開口する一対の空所が形成されており、それら空所の開口部が該アウタ筒部材で覆蓋されて一対の軸直液室が形成されていると共に、それら一対の軸直液室を相互に連通する第二のオリフィス通路が形成された流体封入式防振装置において、
前記軸直液室の上壁内面と下壁内面が何れも内周側に行くに従って上傾する傾斜形状とされており、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間に軸方向下向きの荷重が入力されることで該軸直液室の上壁部を構成する前記本体ゴム弾性体の上側ゴム腕と該軸直液室の下壁部を構成する該本体ゴム弾性体の下側ゴム腕とが何れも圧縮されるようになっていると共に、該本体ゴム弾性体における前記一対の空所が軸直角方向に平行に延びており、該本体ゴム弾性体における該空所内周側には該上側ゴム腕と該下側ゴム腕とを内周端で相互に連結する内周連結部が設けられていると共に、該本体ゴム弾性体における該空所外周側には該上側ゴム腕と該下側ゴム腕とを外周端で相互に連結する外周連結部が設けられている一方、
該一対の空所がそれぞれ該本体ゴム弾性体を貫通するトンネル状の貫通孔とされて、該トンネル状の貫通孔の外側壁部が前記外周連結部によって構成されていると共に、
該本体ゴム弾性体における該外周連結部を含む外周面には一体構造の中間スリーブが固着されており、該中間スリーブに設けられた窓部を通じて該本体ゴム弾性体の該一対の空所がそれぞれ外周に開口していると共に、該中間スリーブの外周面上で該窓部を周方向に跨ぐようにして配されたオリフィス部材が、該外周連結部の外周面に固着された該中間スリーブで周方向の中間部分を支持されている一方、
該インナ軸部材の上部が該アウタ筒部材の軸方向開口部から突出しており、該上側ゴム腕の内周面が該インナ軸部材の上部に固着されていると共に、該インナ軸部材の下部が該アウタ筒部材に差し入れられて該一対の軸直液室間にまで延びており、該下側ゴム腕の内周面が該インナ軸部材の下部に固着されていることを特徴とする流体封入式防振装置。
【請求項2】
インナ軸部材がアウタ筒部材に差し入れられて本体ゴム弾性体によって弾性連結されていると共に、該アウタ筒部材に支持された仕切部材を挟んで上下両側に主液室と副液室が形成されて、それら主液室と副液室が第一のオリフィス通路によって相互に連通されている一方、該本体ゴム弾性体には外周面に開口する一対の空所が形成されており、それら空所の開口部が該アウタ筒部材で覆蓋されて一対の軸直液室が形成されていると共に、それら一対の軸直液室を相互に連通する第二のオリフィス通路が形成された流体封入式防振装置において、
前記軸直液室の上壁内面と下壁内面が何れも内周側に行くに従って上傾する傾斜形状とされており、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間に軸方向下向きの荷重が入力されることで該軸直液室の上壁部を構成する前記本体ゴム弾性体の上側ゴム腕と該軸直液室の下壁部を構成する該本体ゴム弾性体の下側ゴム腕とが何れも圧縮されるようになっていると共に、該本体ゴム弾性体における前記一対の空所が軸直角方向に平行に延びており、該本体ゴム弾性体における該空所の内周側には該上側ゴム腕と該下側ゴム腕とを内周端で相互に連結する内周連結部が設けられていると共に、該本体ゴム弾性体における該空所の外周側には該上側ゴム腕と該下側ゴム腕とを外周端で相互に連結する外周連結部が設けられている一方、
本体ゴム弾性体の外周面には中間スリーブが固着されており、該中間スリーブに設けられた一対の窓部が該中間スリーブにおける周上の半周以内に配置されていると共に、該一対の空所が互いに同じ軸直角方向に開口する凹所状とされて、それら一対の空所がそれぞれ該窓部に開口している一方、該中間スリーブには外周面に開口しながら周方向に延びる周溝が形成されており、該周溝の外周開口が前記アウタ筒部材で覆蓋されることにより前記第二のオリフィス通路が形成されており、且つ、
該インナ軸部材の上部が該アウタ筒部材の軸方向開口部から突出しており、該上側ゴム腕の内周面が該インナ軸部材の上部に固着されていると共に、該インナ軸部材の下部が該アウタ筒部材に差し入れられて該一対の軸直液室間にまで延びており、該下側ゴム腕の内周面が該インナ軸部材の下部に固着されていることを特徴とする流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記軸直液室の上壁内面の傾斜角度よりも下壁内面の傾斜角度が大きくされている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
前記軸直液室の上壁内面が下方に凹の湾曲形状とされて、該軸直液室の上壁内面の傾斜角度が内周に行くに従って次第に小さくなっている請求項1〜3の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
前記本体ゴム弾性体の外周面には前記中間スリーブが固着されており、該中間スリーブに設けられた前記窓部を通じて該本体ゴム弾性体の前記空所が外周に開口していると共に、該中間スリーブにおける該窓部の開口形状が該本体ゴム弾性体の外周面における該空所の開口形状と異なっており、該窓部の内周には該本体ゴム弾性体の外周面によって構成されたシール面が設けられている請求項1〜の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項6】
前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間に静的な支持荷重が入力された状態において前記軸直液室の上壁内面と下壁内面が何れも内周側に行くに従って上傾する傾斜形状とされている請求項1〜の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項7】
前記インナ軸部材の上部には上方に向かって次第に大径となるテーパ部が設けられており、前記上側ゴム腕の内周面が該テーパ部に固着されていると共に、上部に比して小径とされた該インナ軸部材の下部に前記下側ゴム腕の内周面が固着されている請求項1〜の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンマウントなどに用いられる流体封入式防振装置に係り、特に、軸方向および軸直角方向の振動入力に対して何れも防振効果を得ることができる多方向防振型の流体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のエンジンマウントなどに用いられる防振装置の一種として、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて発揮される防振効果を利用する流体封入式防振装置が知られている。更に、軸方向の入力に対する防振効果に加えて、軸直角方向の入力に対する防振効果が発揮される多方向防振型の流体封入式防振装置も提案されている。この多方向防振型の流体封入式防振装置では、インナ軸部材がアウタ筒部材に差し入れられて本体ゴム弾性体で弾性連結されていると共に、アウタ筒部材で支持される仕切部材を挟んだ両側に主液室と副液室が形成されて、それら主液室と副液室に非圧縮性流体が封入されると共に、それら主液室と副液室を相互に連通する第一のオリフィス通路が形成されている。更に、本体ゴム弾性体には外周面に開口する一対の空所が形成されて、それら空所の開口がアウタ筒部材で閉塞されることで一対の軸直液室が形成されており、それら軸直液室に非圧縮性流体が封入されると共に、それら一対の軸直液室を相互に連通する第二のオリフィス通路が形成されている。なお、多方向防振型の流体封入式防振装置としては、特開2002−227912号公報(特許文献1)などがある。
【0003】
ところで、特許文献1に記載された流体封入式防振装置では、軸直液室の上下内壁面が外周側に向かって上下外側に拡開する形状とされており、軸直角方向の入力に対して軸直液室間の相対的な圧力変動が効率的に惹起されるようになっている。その結果、軸直液室の上壁部を構成する本体ゴム弾性体の上側ゴム腕が外周側に向かって上傾する形状とされて、軸方向下向きの入力によって上側ゴム腕には引張変形が生じ易くなっている。
【0004】
そこで、特許文献1に示すような多方向防振型の流体封入式防振装置は、一般的に、パワーユニットの分担支持荷重などの下向きの静的な支持荷重が作用しないように配設されるが、下向きの支持荷重が入力される流体封入式防振装置においても多方向で防振効果が要求され得ることから、多方向防振型の流体封入式防振装置を下向きの支持荷重が作用する場合にも適用することが検討されている。
【0005】
ところが、特許文献1に記載された従来構造の流体封入式防振装置に対して、下向きの静的な支持荷重が入力された状態で、更にエンジンシェイク等の動的な軸方向荷重が下向きに入力されると、上側ゴム腕に過大な引張応力が及ぼされて、上側ゴム腕の耐久性が充分に確保されないおそれがあった。
【0006】
なお、特許文献1に記載された流体封入式防振装置では、本体ゴム弾性体の外周面が一対の軸直液室の対向方向で分割される成形用金型によって成形されていることから、成形後の金型の取り外しを考慮すると、軸直液室の上下壁内面は外周側に向かって拡開する傾斜面乃至は軸直角方向に広がる平面とされている必要がある。それ故、インナ軸部材とアウタ筒部材の間に下向きの静的な支持荷重が入力されると、上側ゴム腕に引張応力が及ぼされるのを避け難かった。
【0007】
また、特許文献1の流体封入式防振装置では、一対の軸直液室の形成部分において、上側ゴム腕と下側ゴム腕が内周端で薄肉のゴム弾性体で連結されていると共に、外周端では上下に離れている。このように、上下のゴム腕が実質的に独立している構造では、荷重の入力に対して上側ゴム腕と下側ゴム腕の間で応力の分散化が図られ難く、耐久性の確保がより難しい。しかも、上下のゴム腕が周上の広い範囲に亘って外周端で相互に離隔して、各別に中間スリーブに固着されていることから、剥離や亀裂などの発生が問題になる場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−227912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、軸方向下向きの荷重入力に対して本体ゴム弾性体の耐久性が確保されると共に、軸直角方向の入力に対して優れた防振性能を得ることができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0011】
すなわち、本発明の第一の態様は、インナ軸部材がアウタ筒部材に差し入れられて本体ゴム弾性体によって弾性連結されていると共に、該アウタ筒部材に支持された仕切部材を挟んで上下両側に主液室と副液室が形成されて、それら主液室と副液室が第一のオリフィス通路によって相互に連通されている一方、該本体ゴム弾性体には外周面に開口する一対の空所が形成されており、それら空所の開口部が該アウタ筒部材で覆蓋されて一対の軸直液室が形成されていると共に、それら一対の軸直液室を相互に連通する第二のオリフィス通路が形成された流体封入式防振装置において、前記軸直液室の上壁内面と下壁内面が何れも内周側に行くに従って上傾する傾斜形状とされており、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間に軸方向下向きの荷重が入力されることで該軸直液室の上壁部を構成する前記本体ゴム弾性体の上側ゴム腕と該軸直液室の下壁部を構成する該本体ゴム弾性体の下側ゴム腕とが何れも圧縮されるようになっていると共に、該本体ゴム弾性体における前記一対の空所が軸直角方向に平行に延びており、該本体ゴム弾性体における該空所内周側には該上側ゴム腕と該下側ゴム腕とを内周端で相互に連結する内周連結部が設けられていると共に、該本体ゴム弾性体における該空所外周側には該上側ゴム腕と該下側ゴム腕とを外周端で相互に連結する外周連結部が設けられている一方、該一対の空所がそれぞれ該本体ゴム弾性体を貫通するトンネル状の貫通孔とされて、該トンネル状の貫通孔の外側壁部が前記外周連結部によって構成されていると共に、該本体ゴム弾性体における該外周連結部を含む外周面には一体構造の中間スリーブが固着されており、該中間スリーブに設けられた窓部を通じて該本体ゴム弾性体の該一対の空所がそれぞれ外周に開口していると共に、該中間スリーブの外周面上で該窓部を周方向に跨ぐようにして配されたオリフィス部材が、該外周連結部の外周面に固着された該中間スリーブで周方向の中間部分を支持されている一方、該インナ軸部材の上部が該アウタ筒部材の軸方向開口部から突出しており、該上側ゴム腕の内周面が該インナ軸部材の上部に固着されていると共に、該インナ軸部材の下部が該アウタ筒部材に差し入れられて該一対の軸直液室間にまで延びており、該下側ゴム腕の内周面が該インナ軸部材の下部に固着されていることを、特徴とする。
【0012】
このような第一の態様に記載された流体封入式防振装置によれば、下向きの荷重入力に対して本体ゴム弾性体の上側ゴム腕と下側ゴム腕が何れも圧縮されるようになっていることから、パワーユニットの分担支持荷重などの静的な荷重が下向きに入力される場合にも、本体ゴム弾性体に対する引張応力の作用を防いで、耐久性の向上が図られる。特に、軸直液室の上壁内面と下壁内面がそれぞれ内周に向かって次第に上傾する傾斜形状とされていることから、それら上壁内面と下壁内面において引張応力の作用による亀裂の発生などが回避されて、耐久性が確保される。
【0013】
さらに、上側ゴム腕と下側ゴム腕における軸直液室を挟んだ内周端部と外周端部が、内周連結部と外周連結部によって相互に連結されていることから、上側ゴム腕と下側ゴム腕の間で応力の分散化がより有利に図られて、耐久性の向上が図られる。しかも、内周連結部と外周連結部が設けられることによって、軸直液室の壁内面を構成する本体ゴム弾性体の表面がより大きく確保されることから、荷重入力時に軸直液室の壁内面において応力がより広い範囲で分散されて、耐久性がより効果的に向上せしめられる。
【0014】
更にまた、本体ゴム弾性体の上側ゴム腕がインナ軸部材の上部に固着されていると共に、下側ゴム腕がインナ軸部材の下部に固着されていることによって、本体ゴム弾性体の内周端部の軸方向寸法が大きく確保されている。これにより、上側ゴム腕と下側ゴム腕をそれぞれより大きな角度で内周に向かって上傾させることができて、下向きの荷重入力に対する耐荷重性の向上が図られる。
しかも、インナ軸部材の上部がアウタ筒部材から上方に突出していると共に、インナ軸部材の下部がアウタ筒部材に差し入れられて、一対の軸直液室の間にまで延びている。これにより、本体ゴム弾性体の内周端部における軸方向寸法が大きく確保されると共に、軸直角方向の入力に対して一対の軸直液室の相対的な圧力変動が効率的に生ぜしめられて、流体の流動作用に基づいた防振効果が有効に発揮される。
【0015】
加えて、本態様によれば、貫通孔の長さ方向で型開閉される成形用金型を両側から差し入れることによって、貫通孔の内面形状をより高い自由度で成形することができる。しかも、周方向に180°回転させても同一形状となるように貫通孔を設定することで、本体ゴム弾性体の周方向での位置決めを不要にすることも可能である。
本発明の第二の態様は、インナ軸部材がアウタ筒部材に差し入れられて本体ゴム弾性体によって弾性連結されていると共に、該アウタ筒部材に支持された仕切部材を挟んで上下両側に主液室と副液室が形成されて、それら主液室と副液室が第一のオリフィス通路によって相互に連通されている一方、該本体ゴム弾性体には外周面に開口する一対の空所が形成されており、それら空所の開口部が該アウタ筒部材で覆蓋されて一対の軸直液室が形成されていると共に、それら一対の軸直液室を相互に連通する第二のオリフィス通路が形成された流体封入式防振装置において、前記軸直液室の上壁内面と下壁内面が何れも内周側に行くに従って上傾する傾斜形状とされており、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間に軸方向下向きの荷重が入力されることで該軸直液室の上壁部を構成する前記本体ゴム弾性体の上側ゴム腕と該軸直液室の下壁部を構成する該本体ゴム弾性体の下側ゴム腕とが何れも圧縮されるようになっていると共に、該本体ゴム弾性体における前記一対の空所が軸直角方向に平行に延びており、該本体ゴム弾性体における該空所の内周側には該上側ゴム腕と該下側ゴム腕とを内周端で相互に連結する内周連結部が設けられていると共に、該本体ゴム弾性体における該空所の外周側には該上側ゴム腕と該下側ゴム腕とを外周端で相互に連結する外周連結部が設けられている一方、該本体ゴム弾性体の外周面には中間スリーブが固着されており、該中間スリーブに設けられた一対の窓部が該中間スリーブにおける周上の半周以内に配置されていると共に、該一対の空所が互いに同じ軸直角方向に開口する凹所状とされて、それら一対の空所がそれぞれ該窓部に開口している一方、該中間スリーブには外周面に開口しながら周方向に延びる周溝が形成されており、該周溝の外周開口が前記アウタ筒部材で覆蓋されることにより前記第二のオリフィス通路が形成されており、且つ、該インナ軸部材の上部が該アウタ筒部材の軸方向開口部から突出しており、該上側ゴム腕の内周面が該インナ軸部材の上部に固着されていると共に、該インナ軸部材の下部が該アウタ筒部材に差し入れられて該一対の軸直液室間にまで延びており、該下側ゴム腕の内周面が該インナ軸部材の下部に固着されていることを、特徴とする。
本発明の第二の態様では、上記[0012]〜[0014]に記載の効果に加えて、次の効果が発揮され得る。
すなわち、第二の態様によれば、窓部および空所の開口方向を周上の半周以内に設定すると共に、窓部および空所の開口方向とは反対側において中間スリーブに周溝を設けることで、特別なオリフィス部材を要することなく、周溝を利用して第二のオリフィス通路を形成することができる。従って、部品点数の削減が図られて、軸直角方向の防振効果を得ることが可能な多方向防振型の流体封入式防振装置を、簡単な構造で実現することができる。
【0016】
本発明の第の態様は、第一又は第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記軸直液室の上壁内面の傾斜角度よりも下壁内面の傾斜角度が大きくされているものである。
【0017】
の態様によれば、下側ゴム腕の上面である下壁内面の面積が大きく確保されて、下側ゴム腕の自由長が長くなることで、下側ゴム腕の耐久性が有利に確保される。更に、上壁内面の傾斜角度が下壁内面の傾斜角度よりも小さくされていることで、軸直角方向の入力に対して一対の軸直液室の相対的な圧力変動が効率的に惹起されて、目的とする防振効果が有利に発揮される。
【0018】
本発明の第の態様は、第一〜第三の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記軸直液室の上壁内面が下方に凹の湾曲形状とされて、該軸直液室の上壁内面の傾斜角度が内周に行くに従って次第に小さくなっているものである。
【0019】
の態様によれば、軸直液室の上壁内面が下方に凹の湾曲形状とされることで、上壁内面の自由表面が大きくなって応力の分散化による耐久性の向上が図られる。しかも、上壁内面が下方に凹の湾曲形状であれば、下向きの荷重入力による上壁内面の急角度の屈曲に起因する応力の局所的な増大が防止されて、耐久性をより効果的に得ることができる。
【0020】
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記本体ゴム弾性体の外周面には前記中間スリーブが固着されており、該中間スリーブに設けられた前記窓部を通じて該本体ゴム弾性体の前記空所が外周に開口していると共に、該中間スリーブにおける該窓部の開口形状が該本体ゴム弾性体の外周面における該空所の開口形状と異なっており、該窓部の内周には該本体ゴム弾性体の外周面によって構成されたシール面が設けられているものである。
【0021】
の態様によれば、本体ゴム弾性体に形成される空所の開口形状を、中間スリーブに形成される窓部の開口形状とは異ならせることにより、本体ゴム弾性体における空所の開口周辺部分が窓部を通じて外周に露出してシール面を構成するようになっている。そして、中間スリーブの外周面に重ね合わされるオリフィス部材やアウタ筒部材に対して、本体ゴム弾性体のシール面が押し当てられることで封止されて、軸直液室に封入される非圧縮性流体の漏れが、少ない部品点数で防止される。
【0022】
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間に静的な支持荷重が入力された状態において前記軸直液室の上壁内面と下壁内面が何れも内周側に行くに従って上傾する傾斜形状とされているものである。
【0023】
の態様によれば、下向きの静的な支持荷重が入力された状態から更に下向きの荷重が入力される場合にも、上側ゴム腕および下側ゴム腕に対する引張応力の作用が防止されて、本体ゴム弾性体の耐久性の向上が図られる。
【0024】
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記インナ軸部材の上部には上方に向かって次第に大径となるテーパ部が設けられており、前記上側ゴム腕の内周面が該テーパ部に固着されていると共に、上部に比して小径とされた該インナ軸部材の下部に前記下側ゴム腕の内周面が固着されているものである。
【0025】
の態様によれば、上側ゴム腕がテーパ部に固着されることで、下向きの荷重入力に対して上側ゴム腕が効率的に圧縮されて、引張応力の低減による耐久性の向上が図られる。更に、下側ゴム腕が固着されるインナ軸部材の下部が小径とされていることで、下側ゴム腕の自由長が大きく確保されて耐久性の向上が図られると共に、軸直液室を大きな容積で形成することができて、軸直角方向の入力に対する防振性能の向上も図られ得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、軸直液室の上下壁内面が内周に向かって上傾しており、本体ゴム弾性体の上側ゴム腕と下側ゴム腕が下向きの荷重入力に対してそれぞれ圧縮されるようになっていることから、下向きの入力に対する耐久性の向上が図られて、例えば、下向きの支持荷重が常時入力される場合にも多方向防振型の流体封入式防振装置を適用することができる。更に、インナ軸部材の上部がアウタ筒部材から突出していると共に、インナ軸部材の下部がアウタ筒部材に差し入れられており、インナ軸部材の上部に上側ゴム腕が固着されていると共に、インナ軸部材の下部に下側ゴム腕が固着されていることから、上側ゴム腕および下側ゴム腕の傾斜角度を大きく設定することが可能となり、耐久性をより有利に確保できる。更にまた、上側ゴム腕と下側ゴム腕の内周端部が内周連結部によって相互に連結されていると共に、外周端部が外周連結部によって相互に連結されていることから、応力の分散化が図られて、耐久性の更なる向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図であって、図2のI−I断面に相当する図。
図2図1のII−II断面図。
図3図1に示されたエンジンマウントを構成する一体加硫成形品の正面図。
図4図3に示された一体加硫成形品の成形工程を説明する縦断面図であって、図5のIV−IV断面図。
図5図4のV−V断面図。
図6図1に示されたエンジンマウントの車両装着状態を示す縦断面図。
図7】本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図であって、図8のVII−VII断面に相当する図。
図8図7のVIII−VIII断面図。
図9】図に示されたエンジンマウントを構成する一体加硫成形品の成形工程を説明する縦断面図であって、図10のIX−IX断面図。
図10図9のX−X断面図。
図11図7に示されたエンジンマウントの車両装着状態を示す縦断面図。
図12】本発明の第三の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図であって、図13のXII−XII断面に相当する図。
図13図12のXIII−XIII断面図。
図14図12に示されたエンジンマウントを構成する一体加硫成形品の右側面図。
図15図14に示された一体加硫成形品の成形工程を説明する横断面図。
図16図12に示されたエンジンマウントの車両装着状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1,2には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、インナ軸部材12とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、上下方向とは図1中の上下方向を言う。
【0034】
より詳細には、インナ軸部材12は、全体として中実小径の略円形ロッド形状を呈する高剛性の部材であって、鉄やアルミニウム合金等の金属材料で形成されている。また、インナ軸部材12には、中心軸上を延びて上面に開口するねじ穴18が形成されている。更に、インナ軸部材12の上部には、上方に向かって次第に大径となる外周面を備えたテーパ部20が形成されており、テーパ部20よりも下方が上部よりも小径の筒状外周面を備えた略円柱形状の小径軸部22とされている。
【0035】
また、インナ軸部材12の外周側には、中間スリーブ24が配設されている。中間スリーブ24は、薄肉大径の略円筒形状を呈しており、インナ軸部材12と同様に金属材料で形成された高剛性の部材とされている。また、中間スリーブ24の軸方向中間部分には外周面に開口しながら周方向に延びる周溝26が形成されている。なお、本実施形態では、中間スリーブ24の軸方向中間部分の内外径寸法が部分的に小さくされることにより、周溝26が形成されている。
【0036】
さらに、中間スリーブ24には、4つの窓部28,28,28,28が形成されている。それら4つの窓部28,28,28,28は、周上で略均等に配置されており、それぞれ中間スリーブ24の軸方向中間部分を貫通している。このような4つの窓部28,28,28,28が形成されていることにより、中間スリーブ24は、周方向全周に亘って連続する上下のリングが、周上で隣り合う窓部28,28の周方向間において連結柱部30で相互に連結された構造となっている。
【0037】
そして、中間スリーブ24の上側開口からインナ軸部材12が差し入れられており、インナ軸部材12の上部が中間スリーブ24の上開口部から上方に突出していると共に、インナ軸部材12の下部が中間スリーブ24に差し入れられて、中間スリーブ24の内周側に配置されている。また、インナ軸部材12と中間スリーブ24は、本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。
【0038】
本体ゴム弾性体16は、全体として略円錐台形状とされており、上方に向かって次第に小径となっている。そして、本体ゴム弾性体16の小径側端部にインナ軸部材12が差し入れられて加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体16の大径側端部の外周面に中間スリーブ24の内周面が加硫接着されている。なお、本実施形態では、図3に示すように、本体ゴム弾性体16がインナ軸部材12とアウタ筒部材14を備えた一体加硫成形品32として形成されている。
【0039】
さらに、本体ゴム弾性体16には、下方に開口する大径凹所34が形成されている。この大径凹所34は、下方に向かって次第に大径とされた逆向きの略すり鉢状とされており、本体ゴム弾性体16の下面に開口している。
【0040】
また、本体ゴム弾性体16には、空所としての一対の貫通孔36,36が形成されている。貫通孔36は、本体ゴム弾性体16を軸直角方向に貫通するトンネル状とされており、中間スリーブ24の窓部28を通じて外周に開口している。また、一対の貫通孔36,36が軸直角方向(図2中の上下方向)に略平行に延びており、本実施形態では、一対の貫通孔36,36が図2中の左右で略対称形状とされている。更に、インナ軸部材12の小径軸部22が一対の貫通孔36,36の間にまで延びており、本実施形態では、インナ軸部材12の下端が貫通孔36の下端付近まで達している。なお、一対の貫通孔36,36が軸直角方向に平行に延びるとは、後述する上型40a,40bの軸直角方向への型開きを許容するものであれば良く、厳密に平行である場合だけでなく、特定の軸直角方向と同じ向きに多少の傾斜をもって延びている場合なども含む。このことからも明らかなように、一対の貫通孔36,36は、相対的に多少の傾斜角度をもって延びていても良い。
【0041】
さらに、貫通孔36は、図1の縦断面において、上壁内面86と下壁内面88が何れも図1中の左右内方に向かって上傾する傾斜形状とされていると共に、上壁内面86の傾斜角度:αよりも下壁内面88の傾斜角度:βが大きくされている。これにより、本体ゴム弾性体16の外周面における貫通孔36の開口形状が、左右内方に向かって先細とされており、中間スリーブ24の窓部28とは異なる形状とされている。そして、図3に示すように、本体ゴム弾性体16における貫通孔36の周辺部が窓部28を通じて外周に露出しており、窓部28の内周を通じて外周に露出した本体ゴム弾性体16の外周面によってシール面37が構成されている。
【0042】
このような一対の貫通孔36,36を備える本体ゴム弾性体16は、例えば、図4,5に示す成形用金型38によって加硫成形される。即ち、成形用金型38は、本体ゴム弾性体16の上面および外周面を成形する上型40a,40bと、本体ゴム弾性体16の下面を成形する下型42とを備えている。
【0043】
上型40a,40bは、貫通孔36の長さ方向(図5中、上下)で型開閉されるようになっており、その型合わせ面は、貫通孔36,36を挟んで外側に位置する連結柱部30,30の周方向中央をそれぞれ通るようになっている。そして、上型40a,40bと下型42が相互に型合わせされることにより、成形用金型38内に本体ゴム弾性体16のキャビティ44が形成されるようになっている。なお、上型40a,40bと下型42が型合わせされる際に、インナ軸部材12と中間スリーブ24がセットされて、キャビティ44に配置されている。
【0044】
次に、上型40a,40bと下型42を図示しない型締装置で型締保持した状態下で、所定のゴム材料を下型42に形成された図示しないランナを通じてキャビティ44に充填し、所定時間加熱保持してゴム材料を架橋すると共に、インナ軸部材12および中間スリーブ24にゴム材料を加硫接着する。その後、上型40a,40bを図5中の上下に型開きすると共に、加硫成形された本体ゴム弾性体16を下型42から脱型することにより、インナ軸部材12と中間スリーブ24を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品32を得る。なお、本体ゴム弾性体16の成形後に中間スリーブ24に縮径加工を施して、本体ゴム弾性体16に軸直角方向の予圧縮を及ぼしても良い。
【0045】
このように、上型40a,40bが貫通孔36の長さ方向で型開閉されるようにすれば、貫通孔36の上壁内面86と下壁内面88の両方に対して、内周側に向かって上傾する形状を設定することが可能となる。
【0046】
かくの如くして得られる本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品32には、図1に示すように、アウタ筒部材14が取り付けられている。アウタ筒部材14は、薄肉大径の略段付き円筒形状を有する高剛性の部材であって、下端部には可撓性膜46が全周に亘って固着されている。
【0047】
可撓性膜46は、薄肉のゴム膜であって、略円板形状を有していると共に、上下方向に弛んで容易に変形可能とされている。そして、可撓性膜46の外周端部が、小径とされたアウタ筒部材14の下端部に全周に亘って加硫接着されている。アウタ筒部材14の内周面には、可撓性膜46と一体形成されたシールゴム層48が略全面に亘って被着形成されている。
【0048】
そして、大径とされたアウタ筒部材14の上部が中間スリーブ24に外嵌固定されることで、可撓性膜46が一体加硫成形品32に取り付けられている。本実施形態では、アウタ筒部材14と中間スリーブ24の間にシールゴム層48が挟み込まれることで、アウタ筒部材14と中間スリーブ24が流体密に組み合わされている。なお、アウタ筒部材14の上端は、中間スリーブ24の上端に対して軸方向で同じ位置、或いは下方に位置しており、インナ軸部材12の上部がアウタ筒部材14よりも上方に突出している。
【0049】
さらに、可撓性膜46が一体加硫成形品32に取り付けられることにより、本体ゴム弾性体16と可撓性膜46の間には、外部から流体密に隔てられた流体室50が形成されており、内部に非圧縮性流体が封入されている。なお、流体室50に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液などが好適に採用される。また、後述する流体の流動作用に基づいた防振効果を有利に得るために、0.1Pa・s以下の低粘性流体であることが望ましい。
【0050】
また、流体室50には、仕切部材52が配設されている。仕切部材52は、全体として略円板形状を有しており、仕切部材本体54と蓋部材56を備えている。仕切部材本体54は、合成樹脂や金属等で形成された厚肉の略円板形状を呈する部材であって、径方向の中央部分には、上方に開口する円形凹状の収容凹所58が形成されていると共に、下方に開口する円形凹状の肉抜凹所60が形成されている。更に、厚肉とされた仕切部材本体54の外周端部には、外周面に開口しながら周方向に延びる第一の凹溝62が形成されている。
【0051】
蓋部材56は、薄肉大径の略円板形状を呈しており、仕切部材本体54の上面に重ね合わされている。また、蓋部材56で覆われた収容凹所58には、可動膜64が配設されている。可動膜64は、略円板形状のゴム弾性体であって、外周部分と径方向中央部分が厚肉とされて仕切部材本体54と蓋部材56の間に挟持されていると共に、径方向中間部分が薄肉とされて上下の変形を許容されている。
【0052】
このような構造とされた仕切部材52は、流体室50に配設されて、外周面が小径とされたアウタ筒部材14の下部によって支持されており、仕切部材52が流体室50内で軸直角方向に広がるように配設されることで、流体室50が仕切部材52を挟んだ上下に二分されている。これにより、仕切部材52の上方には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、軸方向の振動入力時に内圧変動が惹起される主液室としての受圧室66が形成されている一方、仕切部材52の下方には、壁部の一部が可撓性膜46で構成されて、容積変化が容易に許容される副液室としての平衡室68が形成されている。
【0053】
また、仕切部材本体54の第一の凹溝62の外周開口がアウタ筒部材14によって流体密に覆われることで、受圧室66と平衡室68を相互に連通する第一のオリフィス通路70が形成されている。そして、軸方向に振動荷重が入力されて、受圧室66と平衡室68の間に相対的な圧力変動が惹起されると、受圧室66と平衡室68の間で第一のオリフィス通路70を通じての流体流動が生ぜしめられて、流体の流動作用に基づく防振効果が発揮されるようになっている。なお、本実施形態の第一のオリフィス通路70は、壁ばね剛性を考慮しながら通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)を調節することで、例えばエンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数にチューニングされている。
【0054】
さらに、仕切部材本体54における収容凹所58の底壁部に下透孔72が貫通形成されていると共に、蓋部材56における収容凹所58の開口を覆う部分に上透孔74が貫通形成されている。そして、可動膜64における変形を許容された薄肉部分には、上面に上透孔74を通じて受圧室66の液圧が及ぼされていると共に、下面に下透孔72を通じて平衡室68の液圧が及ぼされている。これにより、軸方向の高周波小振幅振動に対して、受圧室66の液圧を可動膜64の弾性変形を利用して吸収することで防振効果(低動ばね効果)を発揮する、液圧吸収機構が構成されている。尤も、このような液圧吸収機構は、本発明において必須ではなく、省略することもできるし、収容凹所58内で微小変位を許容される可動板構造などといった別構造を採用することもできる。
【0055】
一方、アウタ筒部材14が中間スリーブ24に外嵌固定されることによって、本体ゴム弾性体16に形成された一対の貫通孔36,36の開口部が、何れもアウタ筒部材14で流体密に覆蓋されている。これにより、非圧縮性流体を封入された一対の軸直液室76,76が、一対の貫通孔36,36を利用して形成されている。なお、例えば、非圧縮性流体を満たした水槽中でアウタ筒部材14を一体加硫成形品32に組み付けることで、受圧室66、平衡室68、軸直液室76にそれぞれ非圧縮性流体を容易に封入することができる。
【0056】
また、図1の縦断面にも示されているように、本体ゴム弾性体16が軸直液室76を挟んで上下に分かれた形状とされており、軸直液室76の上壁部が上側ゴム腕78で構成されていると共に、軸直液室76の下壁部が下側ゴム腕80で構成されている。上側ゴム腕78と下側ゴム腕80は、それぞれ内周に向かって上傾する弾性主軸を有する形状とされており、それぞれの上下両面が内周に向かって上傾する傾斜形状とされている。
【0057】
さらに、上側ゴム腕78の内周面がインナ軸部材12の上部を構成するテーパ部20と小径軸部22の上部に加硫接着されていると共に、下側ゴム腕80の内周面がインナ軸部材12の下部を構成する小径軸部22の下部に加硫接着されている。一方、上側ゴム腕78の外周面が中間スリーブ24の上部に加硫接着されていると共に、下側ゴム腕80の外周面が中間スリーブ24の下部に加硫接着されている。なお、インナ軸部材12の下端が一対の軸直液室76,76の径方向間にまで延びている。
【0058】
さらに、図1に示すように、軸直液室76の内周側には、本体ゴム弾性体16の一部で構成された内周連結部82が設けられており、上側ゴム腕78の内周端部と下側ゴム腕80の内周端部が内周連結部82によって相互に連結されている。なお、内周連結部82は、インナ軸部材12の外周面に加硫接着されている。
【0059】
更にまた、図1に示すように、軸直液室76の外周側には、本体ゴム弾性体16の一部で構成された外周連結部84が設けられている。外周連結部84は、一対の軸直液室76,76の対向方向外側(図2中の左右)に配置された連結柱部30の内周面に固着されており、上側ゴム腕78の外周端部と下側ゴム腕80の外周端部を上下に連結している。本実施形態では、外周連結部84が内周連結部82よりも上下に長くなっていると共に、径方向で薄肉となっている。
【0060】
また、図1に示す縦断面において、軸直液室76の上壁内面86と下壁内面88が何れも左右内方に向かって上傾する傾斜形状とされている。更に、図1に示す縦断面において、軸直液室76の上壁内面86の傾斜角度の平均値:αよりも、軸直液室76の下壁内面88の傾斜角度の平均値:βが大きくされており、軸直液室76の縦断面形状が内周に向かって上傾すると共に先細となっている。本実施形態の軸直液室76は、上壁内面86と下壁内面88が内周端部で略直接的に接続されていると共に、上下に大きく離隔した外周端部が軸方向に広がる外周壁内面90によって相互に接続されている。
【0061】
さらに、軸直液室76の上壁内面86が縦断面において下方に凹となる湾曲形状を呈しており、軸直液室76の上壁内面86の傾斜角度が内周に行くに従って次第に小さくなって、内周端の傾斜角度:α1 が外周端の傾斜角度:α2 よりも小さくなっている。
【0062】
なお、好適には、軸直液室76の上壁内面86の傾斜角度の平均値:αが20°≦α≦40°とされると共に、軸直液室76の下壁内面88の傾斜角度の平均値:βが30°≦β≦60°とされる。また、好適には、上壁内面86の内周端の傾斜角度:α1 が10°≦α1 ≦20°とされると共に、上壁内面86の外周端の傾斜角度:α2 が30°≦α2 ≦60°とされる。
【0063】
一対の軸直液室76,76は、第二のオリフィス通路92によって相互に連通されている。即ち、中間スリーブ24の周溝26には、一組のオリフィス部材94a,94bが配設されている。オリフィス部材94は、それぞれ略半円筒状とされており、外周面に開口して周方向に延びる第二の凹溝96が形成されている。そして、中間スリーブ24にアウタ筒部材14が外嵌されることにより、第二の凹溝96の外周開口がアウタ筒部材14によって流体密に覆蓋されて、一対の軸直液室76,76を相互に連通する第二のオリフィス通路92が形成されている。第二のオリフィス通路92のチューニング周波数は、例えば、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数や、アイドリング振動に相当する十数Hz程度の中周波数にチューニングされる。なお、本実施形態では、貫通孔36の開口部分においてオリフィス部材94が本体ゴム弾性体16のシール面37に重ね合わされており、オリフィス部材94と中間スリーブ24の間でシール性が確保されている。
【0064】
そして、一対の軸直液室76,76の対向方向でインナ軸部材とアウタ筒部材の間に軸直角方向の振動荷重が入力されると、第二のオリフィス通路92を通じて流動する流体の共振作用等に基づいた防振効果が有効に発揮される。
【0065】
このような構造とされたエンジンマウント10は、図6に示すように、インナ軸部材12がインナブラケット97を介して図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、アウタ筒部材14がアウタブラケット98を介して車両ボデー99に取り付けられることによって、車両に装着されるようになっている。かかる車両装着状態では、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の間にパワーユニットの静的な分担支持荷重が入力されるようになっており、図6に示すように、インナ軸部材12がアウタ筒部材14に対して下方に相対変位して、本体ゴム弾性体16が弾性変形せしめられるようになっている。なお、車両装着状態では、インナ軸部材12の下端が一対の軸直液室76,76の下端よりも下側に位置している。
【0066】
そこにおいて、エンジンマウント10では、本体ゴム弾性体16の上側ゴム腕78と下側ゴム腕80が、何れも内周側に向かって次第に上傾する形状とされていることから、パワーユニットの分担支持荷重が下向きに入力されると、上側ゴム腕78と下側ゴム腕80が圧縮されるようになっている。特に、上下のゴム腕78,80の下面が何れも内周側に向かって上傾する傾斜面とされていることから、上下のゴム腕78,80の表面に作用する引張応力が低減されて、耐久性の向上が図られる。
【0067】
さらに、本実施形態では、パワーユニットの分担支持荷重が入力された車両装着状態でも、図6に示すように、上側ゴム腕78と下側ゴム腕80が何れも内周側に向かって上傾する形状とされるようになっている。それ故、パワーユニットの分担支持荷重が入力された状態で、エンジンシェイク等の動的な振動荷重が軸方向に入力されても、上側ゴム腕78と下側ゴム腕80の引張応力が低減されて、耐久性が確保される。
【0068】
しかも、上側ゴム腕78の下面である軸直液室76の上壁内面86と、下側ゴム腕80の上面である軸直液室76の下壁内面88とが、車両装着状態で何れも図6中の左右内方に向かって上傾する傾斜形状とされている。それ故、車両装着状態で下向きの荷重が更に入力されても、軸直液室76の壁内面における引張応力が低減されて、亀裂の発生などが防止される。
【0069】
さらに、上下のゴム腕78,80は、内周端部が内周連結部82で一体的に連結されていると共に、外周端部が外周連結部84で一体的に連結されていることから、上側ゴム腕78と下側ゴム腕80の間で応力の分散化が図られて、耐久性の更なる向上が図られ得る。しかも、軸直液室76の上下の壁部だけでなく、内周および外周の壁部も本体ゴム弾性体16の一部で構成されることから、軸直液室76の壁内面を構成する本体ゴム弾性体16の表面積が大きくなって、軸直液室76の壁内面における歪みがより分散されて低減される。
【0070】
また、上側ゴム腕78の内周端がインナ軸部材12の上部に固着されていると共に、下側ゴム腕80の内周端がインナ軸部材12の下部に固着されている。これにより、内周端における本体ゴム弾性体16の軸方向寸法が大きく確保されることから、内周側に向かって上傾する形状とされた上側ゴム腕78および下側ゴム腕80の傾斜角度をより大きく設定することが可能となる。それ故、軸方向下向きの入力時に上側ゴム腕78および下側ゴム腕80に作用する引張応力が、より効果的に低減されて、下向きの入力に対する耐久性をより有利に得ることができる。
【0071】
しかも、内周端における本体ゴム弾性体16の軸方向寸法を効率的に確保することで、マウント全体の軸方向寸法を抑えながら、軸直液室76の容積や上下のゴム腕78,80のゴムボリュームを確保することができて、軸直角方向の振動入力に対する防振性能の向上や、耐久性の更なる向上などが図られる。
【0072】
特に本実施形態では、インナ軸部材12の上部がアウタ筒部材14よりも上方まで突出していると共に、インナ軸部材12の下部がアウタ筒部材14に差し入れられて一対の軸直液室76,76の間にまで達する長さとされており、内周端における本体ゴム弾性体16の軸方向寸法をより大きく確保することができる。加えて、インナ軸部材12の下部が一対の軸直液室76,76間に差し入れられていることによって、軸直角方向の振動入力に対する一対の軸直液室76,76の液圧変動が効率的に惹起されて、流体の流動作用による防振効果をより効果的に得ることができる。
【0073】
図7,8には、本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウント100が示されている。エンジンマウント100は、図7,8に示すように、インナ軸部材12と中間スリーブ102が本体ゴム弾性体104によって弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0074】
より詳細には、中間スリーブ102は、第一の実施形態の中間スリーブ102に対して連結柱部30が径方向一方向で対向する二つとされた構造であって、上下のリングが二つの連結柱部30,30で連結された構造となっている。これにより、本実施形態の中間スリーブ102には、径方向一方向で対向する2つの窓部106,106が形成されており、それら窓部106,106がそれぞれ周方向に半周弱の長さで延びている。また、中間スリーブ102は、軸方向中間部分に段差を備える段付き円筒形状とされており、下部が上部よりも小径とされている。
【0075】
そして、インナ軸部材12が中間スリーブ102に差し入れられて、それらインナ軸部材12と中間スリーブ102が本体ゴム弾性体104によって弾性連結されることにより、本体ゴム弾性体104の一体加硫成形品108が形成される。本体ゴム弾性体104は、第一の実施形態と同様に、厚肉大径の略円錐台形状とされており、上側ゴム腕78と下側ゴム腕80を備えていると共に、それら上下のゴム腕78,80の間に空所としての貫通孔110を有している。貫通孔110は、二つの連結柱部30,30の対向する径方向に対して略直交する方向(図8中、上下)に平行に延びており、図7に示す縦断面において、図7中の左右内方に向かって上傾する上壁内面112と、内周に向かって上傾する下壁内面114とを備えている。本実施形態では、上壁内面112と下壁内面114が内周端と外周端の両方において上下に離隔しており、貫通孔110の壁内面が、上壁内面112と下壁内面114を内周端において相互に接続する内周壁内面116と、外周端において相互に接続する外周壁内面118とを備えている。これにより、貫通孔110は、壁内面の全体がゴム弾性体で構成されている。
【0076】
また、図7に示すように、貫通孔110の上壁内面112と下壁内面114は、それぞれ略一定の傾斜角度で広がっていると共に、上壁内面112の傾斜角度よりも下壁内面114の傾斜角度が大きくされている。
【0077】
なお、本実施形態の貫通孔110,110を備えた本体ゴム弾性体104は、例えば、図9,10に示す成形用金型120によって加硫成形される。即ち、成形用金型120は、本体ゴム弾性体104の上面を成形する上型122と、本体ゴム弾性体104の外周面を成形する中型124a,124bと、本体ゴム弾性体104の下面を成形する下型126とを、備えている。
【0078】
中型124a,124bは、第一の実施形態の上型40a,40bと同様に、貫通孔110の長さ方向で型開閉されるようになっており、その型合わせ面は、軸直液室130,130の外周側に位置する連結柱部30,30の周方向中央をそれぞれ通るようになっている。そして、上型122と中型124a,124bと下型126とがインナ軸部材12と中間スリーブ102をセットされた状態で型合わせされることにより、成形用金型120内に本体ゴム弾性体104のキャビティ128が形成されるようになっている。
【0079】
次に、キャビティ128に所定のゴム材料を充填して本体ゴム弾性体104を加硫成形した後、上型122を図9中の上方に型開きすると共に、中型124a,124bを図10中の上下に型開きし、更に、加硫成形された本体ゴム弾性体104を下型126から脱型することにより、インナ軸部材12と中間スリーブ102を備えた本体ゴム弾性体104の一体加硫成形品108を得る。
【0080】
図7,8に示すように、かくの如くして得られた本体ゴム弾性体104の一体加硫成形品108にアウタ筒部材14が外嵌されて、一対の貫通孔110,110の開口がアウタ筒部材14によって流体密に覆蓋されることにより、非圧縮性流体を封入された一対の軸直液室130,130が形成されている。
【0081】
また、本実施形態では、中間スリーブ102にオリフィス部材132が外挿されている。オリフィス部材132は、周方向に半周以上の長さで延びていると共に、軸方向に所定の高さを有しており、外周面に開口して周方向に延びる第二の凹溝134を備えている。このオリフィス部材132は、中間スリーブ102に下方から外挿されて、小径とされた中間スリーブ102の下部に取り付けられており、オリフィス部材132が中間スリーブ102とアウタ筒部材14の径方向間に支持されている。そして、第二の凹溝134の外周開口がアウタ筒部材14によって流体密に覆蓋されることにより、一対の軸直液室130,130を相互に連通する第二のオリフィス通路136が形成されている。
【0082】
なお、本実施形態のエンジンマウント100は、図示しないパワーユニットの静的な分担支持荷重が、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の間に下向きに入力された車両装着状態においても、図11に示すように、軸直液室130の上壁内面112と下壁内面114が何れも内周に向かって上傾する形状とされている。なお、本体ゴム弾性体104の上側ゴム腕78と下側ゴム腕80は、何れも弾性主軸が内周側に向かって上傾する形状とされており、車両装着状態では、パワーユニットの分担支持荷重によって、上側ゴム腕78と下側ゴム腕80がそれぞれ圧縮されている。
【0083】
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント100によっても、第一の実施形態に係るエンジンマウント10と同様の効果を有効に得ることができる。更に、軸直液室130の上壁内面112と下壁内面114が外周端のみならず内周端においても上下に離隔しており、上下に広がる内周壁内面116によって相互に接続されていることから、軸直液室130の容積が大きく確保されて、軸直角方向の入力に対する防振効果が有利に発揮される。更にまた、第二のオリフィス通路136が1つのオリフィス部材132で構成されることから、部品点数を少なくすることができる。
【0084】
図12,13には、本発明の第三の実施形態としてのエンジンマウント140が示されている。エンジンマウント140は、インナ軸部材12と中間スリーブ142が本体ゴム弾性体144によって弾性連結された一体加硫成形品145(図14参照)を備えている。
【0085】
中間スリーブ142は、薄肉大径の略円筒形状を有しており、軸方向の中間部分には二つの窓部146,146が形成されている。窓部146,146は、互いに同一形状とされており、中間スリーブ142の周上における半周以内の領域に形成されている。これにより、窓部146,146の周方向間には、周方向に半周以上の長さで延びる主連結部148と、主連結部148よりも周方向寸法が小さい連結柱部30とが設けられている。更に、主連結部148の軸方向中間部分には、図14に示すように、外周面に開口して周方向に延びる周溝150が形成されている。
【0086】
本体ゴム弾性体144は、空所としての一対の凹所152,152を備えている。凹所152は、軸直角方向に平行に延びており、本体ゴム弾性体144の外周面の一部に開口する凹状とされている。この一対の凹所152,152は、互いに略同じ向きに開口しており、中間スリーブ142の一対の窓部146,146を通じて外周に開口している。なお、周溝150の長さ方向両端部がそれぞれ各一方の凹所152に連通されている。
【0087】
さらに、凹所152は、図12に示す縦断面において、上壁内面154が図12中の左右内方に向かって上傾していると共に、下壁内面156が内周に向かって上傾している。更にまた、上壁内面154と下壁内面156の内周端および外周端が上下に離隔しており、凹所152が内周壁内面158と外周壁内面160とを備えた形状とされている。また、本実施形態では、図12の縦断面において、上壁内面154が下方に凹の湾曲形状とされていると共に、下壁内面156が上方に凹の湾曲形状とされている。
【0088】
なお、凹所152,152を備えた本実施形態の本体ゴム弾性体144は、例えば、図15に示す成形用金型162によって加硫成形される。即ち、成形用金型162は、本体ゴム弾性体144の上面および外周面を成形する上型164a,164bと、本体ゴム弾性体144の下面を成形する下型42とを、備えている。
【0089】
上型164a,164bは、第一の実施形態の上型164と同様に、凹所152の長さ方向で型開閉されるようになっている。本実施形態では、上型164aによって凹所152の内面形状が設定されるようになっている。そして、上型164a,164bと下型42とがインナ軸部材12と中間スリーブ142をセットした状態で型合わせされることにより、成形用金型162内に本体ゴム弾性体144のキャビティ168が形成されるようになっている。
【0090】
次に、キャビティ168に所定のゴム材料を充填して加硫成形した後、上型164a,164bを図15中の上下に型開きすると共に、加硫成形された本体ゴム弾性体144を下型42から脱型することにより、インナ軸部材12と中間スリーブ142を備えた本体ゴム弾性体144の一体加硫成形品145を得る。
【0091】
このようにして得られた本体ゴム弾性体144の一体加硫成形品145に対して、アウタ筒部材14が取り付けられることにより、一対の凹所152,152の開口部がアウタ筒部材14で流体密に閉塞されて、内部に非圧縮性流体を封入された一対の軸直液室170,170が形成される。
【0092】
さらに、中間スリーブ142にアウタ筒部材14が外嵌されて、周溝150の外周開口部がアウタ筒部材14で流体密に覆蓋されることにより、一対の軸直液室170,170を相互に連通する第二のオリフィス通路172が形成されている。本実施形態では、周溝150の内面が本体ゴム弾性体144と一体形成された被覆ゴム層174で覆われており、被覆ゴム層174の形状が適宜に設定されることにより、第二のオリフィス通路172の断面形状がチューニング周波数などに応じて設定されている。
【0093】
かくの如き構造とされたエンジンマウント140は、図16に示すように、車両への装着状態において、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の間にパワーユニットの静的な分担支持荷重が入力されるようになっている。かかる車両装着状態においても、一対の軸直液室170,170の上壁内面154と下壁内面156が、何れも内周に向かって次第に上傾する傾斜形状とされている。
【0094】
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント140においても、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、エンジンマウント140では、第二のオリフィス通路172が、特別なオリフィス部材を要することなく、中間スリーブ142の周溝150を利用して形成されていることから、部品点数の少ない簡単な構造とすることができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、縦断面において軸直液室の上壁内面よりも下壁内面が大きな傾斜角度で内周に向かって上傾しているが、上壁内面と下壁内面の傾斜角度を互いに略同じとすることもできるし、上壁内面が下壁内面よりも大きな傾斜角度で内周に向かって上傾するようにもできる。
【0096】
また、中間スリーブの窓部は、本体ゴム弾性体の空所(貫通孔36,110や凹所152)の開口形状と略同じ形状で開口していても良い。
【0097】
本発明は、エンジンマウントとして用いられる流体封入式防振装置に限定されるものではなく、ボデーマウントやサブフレームマウント、デフマウント等にも適用され得る。更に、本発明の適用範囲は、自動車用の流体封入式防振装置に限定されるものではなく、例えば、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等に用いられる流体封入式防振装置にも適用され可能である。
【符号の説明】
【0098】
10,100,140:エンジンマウント(流体封入式防振装置)、12:インナ軸部材、14:アウタ筒部材、16,104,144:本体ゴム弾性体、20:テーパ部、22:小径軸部、24,102,142:中間スリーブ、28,106,146:窓部、36,110:貫通孔(空所)、37:シール面、52:仕切部材、66:受圧室(主液室)、68:平衡室(副液室)、70:第一のオリフィス通路、76,130,170:軸直液室、78:上側ゴム腕、80:下側ゴム腕、82:内周連結部、84:外周連結部、86,112,154:上壁内面、88,114,156:下壁内面、92,136,172:第二のオリフィス通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16