特許第6207286号(P6207286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207286
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】シートクッション及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20170925BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B60N2/68
   B60N2/58
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-161820(P2013-161820)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-30392(P2015-30392A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】古田 将也
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−116286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションフレームと、
該クッションフレームの上側に設けられたクッションパッドと、
該クッションパッドの外表面を覆う表皮と、を備えて車両用シートに用いられるシートクッションであって、
前記クッションフレームは、シート両側方に配置される左右のサイドフレーム部と、前記シートクッションのシート後側に配置され、前記左右のサイドフレーム部を連結するフレーム連結部と、を有し、
該フレーム連結部は、前記サイドフレーム部に回動可能に支持された連結シャフトと、前記左右のサイドフレーム部に一体的に形成されて前記連結シャフトの少なくとも一部を覆うカバーと、から構成され、
該カバーは、前記サイドフレーム部と一体的に形成されており、前側に被掛止部を有し、
前記表皮のシート後側にある表皮端末の取付部は、前記カバーの周縁に設けられており、前記被掛止部に掛け止めされていることを特徴とするシートクッション。
【請求項2】
前記カバーは切欠きを有し、
前記表皮端末の取付部は、前記切欠きを通って前記被掛止部に掛け止めされていることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項3】
前記被掛止部は、前記連結シャフトよりも下方に突出して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートクッション。
【請求項4】
前記カバーは、前記被掛止部における前記切欠きに面する上端が下端よりも前記連結シャフトに近接するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載のシートクッション。
【請求項5】
前記切欠きは、前記カバーにおいてシート幅方向に延在していることを特徴とする請求項2又は4に記載のシートクッション。
【請求項6】
前記切欠きは、延在する方向の両端側が中央部よりも幅狭に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のシートクッション。
【請求項7】
前記切欠きは、前記カバーのシート前側にある前側切欠きであり、
前記カバーは、シート後側に後側切欠きを有し、
前記カバーのシート後側にあり前記後側切欠きに面する縁部は、前記カバーにおける前記縁部以外の部位を含んで前記連結シャフトの断面の中心を同心とし、前記連結シャフトよりも大径である仮想円上、又は該仮想円よりも内側に形成されていることを特徴とする請求項2、4乃至6のいずれか1項に記載のシートクッション。
【請求項8】
前記カバーは、前記被掛止部側に対して前記切欠きを挟んで逆側であるシート後側で前記サイドフレーム部と一体的に形成されていることを特徴とする請求項2、4乃至7のいずれか1項に記載のシートクッション。
【請求項9】
前記クッションフレームは、クッションスプリングを更に備え、
前記被掛止部は、前記クッションスプリングよりも下方に形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシートクッション。
【請求項10】
前記クッションフレームは、前記カバーのシート幅方向の端部側と前記サイドフレーム部との間に一体的に形成された補強部を備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシートクッション。
【請求項11】
請求項1に記載のシートクッションを備える車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッション及び車両用シート、特に、表皮端末の掛け止めに適したシートクッション、及び当該シートクッションを含む車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートクッションを覆う表皮の表皮端末は、通常、シートクッションに架設された掛け止め用のワイヤ、又はシート幅方向に架設されたクッションばねに掛け止めするようにして固定される。
特に、特許文献1には、表皮端末に形成されたスリットを、シートクッションに架設されたばねに掛け止めするようにして、シートクッションを表皮で被覆する考案が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−15599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ワイヤに表皮端末を掛け止めする場合は、掛け止め用のワイヤを新たにシートクッションに取り付けなければならないこと、また、特許文献1に記載のようにクッションばねに表皮端末を掛け止めする場合は、掛け止めの際にクッションばねが取れたりぐらついたりすることから作業性が低く、シートクッションの生産性が低かった。
その他の一般的な課題として、車両の燃費向上のため、車両部品個々の軽量化が求められていた。
【0005】
その他の課題として、クッションフレームの両サイドフレームの間に連結シャフトが回動可能に設けられている場合に、連結シャフトの円滑な回動を実現するために、表皮が連結シャフトに接触しないように表皮端末をクッションフレームに掛け止めする必要があった。
【0006】
また、燃費向上、材料費節減を重視して、クッションフレームの構成部材の体積を単純に減らした場合には、クッションフレームに必要な剛性を保てなくなることがあった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、生産性が高く、表皮端末の掛け止めを安定させることができ、且つ、軽量化されたシートクッション及び車両用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、連結シャフトの円滑な回動を実現すること、クッションフレームの剛性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明に係るシートクッションが、クッションフレームと、該クッションフレームの上側に設けられたクッションパッドと、該クッションパッドの外表面を覆う表皮と、を備えて車両用シートに用いられるシートクッションであって、前記クッションフレームは、シート両側方に配置される左右のサイドフレーム部と、前記シートクッションのシート後側に配置され、前記左右のサイドフレーム部を連結するフレーム連結部と、を有し、該フレーム連結部は、前記サイドフレーム部に回動可能に支持された連結シャフトと、前記左右のサイドフレーム部に一体的に形成されて前記連結シャフトの少なくとも一部を覆うカバーと、から構成され、該カバーは、前記サイドフレーム部と一体的に形成されており、前側に被掛止部を有し、前記表皮のシート後側にある表皮端末の取付部は、前記カバーの周縁に設けられており、前記被掛止部に掛け止めされていること、により解決される。
【0009】
このように、サイドフレーム部に連結されたフレーム連結部のカバーに被掛止部が形成され、この被掛止部に表皮端末が掛け止めされている構成によれば、表皮が掛け止められるカバーが、サイドフレーム部に連結されている分、高い剛性を備えることとなり、表皮の掛け止めが安定して生産性を高めることができる。
【0010】
また、前記カバーは切欠きを有し、前記表皮端末の取付部は、前記切欠きを通って前記被掛止部に掛け止めされているようにしてもよい。
このようにすれば、カバーに切欠きが形成されている分、カバーの体積が減ることでクッションフレームを軽量化できる。
【0011】
また、前記被掛止部は、前記連結シャフトよりも下方に突出して形成されているようにしてもよい。
このように、連結シャフトよりも被掛止部が下方に突出していることで、表皮が被掛止部に当接することによって、連結シャフトに対し表皮が離間することとなり、表皮と連結シャフトとの接触を回避でき、連結シャフトの円滑な回動を実現できる。
【0012】
また、前記カバーは、前記被掛止部における前記切欠きに面する上端が下端よりも前記連結シャフトに近接するように形成されていると好ましい。
このように、前記カバーにおける被掛止部の切欠きに面する上端が下端よりも連結シャフトに近接しカバーの上端と連結シャフトの間隔が狭められていることで、切欠きを通って掛け止めされた表皮端末(トリムコード)の動作範囲を制限して掛け止めが解除される蓋然性を低くすることができ、掛け止めの安定性を高めることができる。
【0013】
また、前記切欠きは、前記カバーにおいてシート幅方向に延在していると好ましい。
このように、切欠きが、前記カバーにおいてシート幅方向に延在していることにより、切欠きに表皮端末を通しやすくなり、掛け止めの作業性が良好となる。
【0014】
更に、前記切欠きは、延在する方向の両端側が中央部よりも幅狭に形成されているようにしてもよい。
このように、切欠きの延在する方向の両端側が中央部よりも幅狭に形成されていることで、切欠きの中央部を通って前記フレーム連結部に掛け止めされた表皮端末がシートクッションの幅方向にズレにくくなり、表皮端末の掛け止めが安定する。
【0015】
また、前記切欠きは、前記カバーのシート前側にある前側切欠きであり、前記カバーは、シート後側に後側切欠きを有し、前記カバーのシート後側にあり前記後側切欠きに面する縁部は、前記カバーにおける前記縁部以外の部位を含んで前記連結シャフトの断面の中心を同心とし、前記連結シャフトよりも大径である仮想円上、又は該仮想円よりも内側に形成されていると好適である。
このように、後側切欠きにおけるシート後側にある縁部が、仮想円上、又は仮想円よりも内側に形成されていることで、縁部が他のカバーの部位から突出せず、表皮がカバーの後側の周縁に折り返されてカバーの前側に掛け止めされた状態において、表皮から後側にあるカバーの縁部に加わる力を小さくすることができる。このため、表皮をカバーから前側に折り返して安定的して掛け止めすることができる。
【0016】
また、前記カバーは、前記被掛止部側に対して前記切欠きを挟んで逆側であるシート後側で前記サイドフレーム部と一体的に形成されていると好ましい。
このように、カバーが被掛止部側に対して切欠きを挟んで逆側であるシート後側でサイドフレーム部と一体的に形成されていることで、表皮が折り返されることで、表皮から大きな荷重がかかるカバーの後側の剛性を高めることができ、表皮が折り返されるカバーのシート後側において表皮と連結シャフトとを離間させて、連結シャフトを円滑に動作させることができる。
【0017】
また、前記クッションフレームは、クッションスプリングを更に備え、前記被掛止部は、前記クッションスプリングよりも下方に形成されていると好ましい。
このように、被掛止部が、クッションスプリングよりも下方に形成されていることで、被掛止部の上面に面する切欠きに表皮端末(トリムコード)を通す際に、クッションスプリングが邪魔にならないため、表皮の掛け止め作業の効率を高めることができる。
【0018】
更に、前記クッションフレームは、前記カバーのシート幅方向の端部側と前記サイドフレーム部との間に一体的に形成された補強部を備えるようにすると好適である。
このように、クッションフレームが、フレーム連結部とサイドフレーム部との間に一体的に形成された補強部(ハーネス取付板等)を備えることによって、フレーム連結部に切欠きが形成されていることによるクッションフレームの剛性の低下を補完できる。
【0019】
また、車両用シートがシートクッションを備えるようにしてもよい。
このように、車両用シートがシートクッションを備えることで、シートクッションによって奏される上記の効果を車両用シートも享受することができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、表皮の掛け止めが安定することにより生産性が高められたクッションフレームを提供することができる。
請求項2の発明によれば、クッションフレームを軽量化できる。
請求項3の発明によれば、連結シャフトの円滑な回動を実現できる。
請求項4の発明によれば、掛け止めの安定性を高めることができる。
請求項5の発明によれば、掛け止めの作業性を良好にすることができる。
請求項6,7の発明によれば、表皮端末のカバーへの掛け止めを安定させることができる。
請求項8の発明によれば、カバーの後側の剛性を高め、且つ、連結シャフトの円滑な回動を実現できる。
請求項9の発明によれば、掛け止めの作業性を良好にすることができる。
請求項10の発明によれば、クッションフレームの剛性を高めることができる。
請求項11の発明によれば、クッションフレームによって奏される上記の効果を車両用シートも享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
図2】シートフレームの斜視図である。
図3】シートクッションにおけるシート後側の表皮及びトリムコードを示す斜視図である。
図4図1のIV−IV断面矢視図であり、(a)は、後側端部が外径方向に突出していない形状のカバー、及び連結シャフトの模式的な断面図、(b)は、後側端部が外径方向に突出している形状のカバー、及び連結シャフトの模式的な断面図である。
図5】シートフレームの上面図である。
図6】バックフレーム及びフレーム連結部の一部を示す背面斜視図である。
図7図5のVII部に示されたハーネス取付板を拡大して示す上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態は、クッションフレームを備えるシートクッション、及びシートクッションを備える車両用シートに関するものである。
【0023】
なお、車両用シートのシートバックに対して乗員が着座する側を前方側、その逆側を後方側とし、シート幅方向を左右方向とも称呼する。
以下に、本実施形態に係るシートクッション1、及びシートクッション1を備える車両用シートSについて説明する。
【0024】
<<本実施形態に係るシートクッション及び車両用シート>>
本実施形態の車両用シートSは、図1に示すように、シートクッション1と、シートバック2と、シートバック2の上方に設けられたヘッドレスト3と、から主に構成されている。
シートクッション1は、骨格となる図2に示すクッションフレームF1と、クッションフレームF1上に載置されたクッションパッド1aと、クッションパッド1aを被覆する表皮1bとによって構成されている。
【0025】
(表皮の掛け止めについて)
表皮1bの中心部分は、クッションパッド1aの表面に接着剤等によって貼り付けられている。また、表皮1bの端末には、図3、及び図1のIV−IV断面の一部を示す図4において後側の表皮端末1baを示すように、樹脂材料から成る帯状のトリムコード10aが、表皮端末1baの周縁に沿って縫合糸10bによって縫合されている。ここで、図3は、シートクッション1におけるシート後側の表皮1b及びシート後側の表皮1bに縫合されたトリムコード10aを示す斜視図である。また、図4は、図1のシートクッション1のIV−IV断面矢視図であり、表皮1bとカバー4gとの掛け止め部分を示す模式的な断面図である。
【0026】
トリムコード10aは、後述する掛け止め片4kに表皮端末1baを取り付ける取付部に相当するものであり、弾性を有する樹脂材料から成り、断面略J字状を成し、表皮端末1baに沿ってシート幅方向に延在して後述する前側切欠き4iの中央部4icにおけるシート幅方向長さよりも僅かに短く形成されている。
トリムコード10aの一端側は、表皮端末1baに縫合されており、他端には、釣り針の先端部の如く折り返して形成されたフック10cを有する。トリムコード10aは、後述するフレーム連結部4eの前側切欠き4iの中央部4icを前方から後方に向かって挿通しており、フック10cが前側切欠き4iの下方に面する後述する掛け止め片4kの後方に配設されている。トリムコード10aは、後述する掛け止め片4kをフック10cと基端部とで挟み込むようにして、掛け止め片4kに取り付けられ、弾性によって取付状態が維持されている。たとえ、トリムコード10aを引く方向に表皮1bに力が付加されたとしても、フック10cが後述する掛け止め片4kの上端部4kaに掛止することによって、カバー4gから、つまり、クッションフレームF1からの表皮1bの抜脱が防止されることとなる。
【0027】
(クッションフレームの構成について)
次に、トリムコード10aが掛け止めされるフレーム連結部4eを含むクッションフレームF1の構成について、図2図5及び図6を参照して説明する。
図2は、図1に示す車両用シートSから表皮1b及びクッションパッド1aを取り除いた状態を示すもので、クッションフレームF1とバックフレームF2とを備えるシートフレームFの斜視図である。また、図5は、図2に示すシートフレームFの上面図である。更に、図6は、バックフレームF2及びフレーム連結部4eの一部を示す背面斜視図である。
【0028】
クッションフレームF1は、シートの幅方向両側に設けられた左右のサイドフレーム部4cと、シート前方に設けられたフロントフレーム部4dと、左右のサイドフレーム部4cを連結するフレーム連結部4eと、を有する略矩形状の枠体からなる。また、クッションフレームF1は、ガラス繊維入りポリプロピレン(PPG)等の樹脂材料から成るものであり、射出成形法その他の成形法により成形されるものである。また、クッションフレームF1は、図2及び図4に示すスライドレール5によって、図示せぬ車体フロアに対してシート前後方向に摺動可能に構成されている。スライドレール5は、図4に示すように、車体フロアに固定されるロアレール5lと、ロアレール5lに対してシート前後に摺動可能なアッパーレール5uとから構成されている。
【0029】
サイドフレーム部4cは、左右に配置されて前後方向に延在しており、その左右の間隔によって、車両用シートSの幅を画定する。左右のサイドフレーム部4cには、前後に設けられた後側板ばね6と前側板ばね7が架設されており、詳しくは後側板ばね6、前側板ばね7の側方固定部6a,7aが固定されている。具体的に後側板ばね6は、中央に枠状支持部6cを有し、この枠状支持部6cよりも、側方固定部6aは、シート前後方向の幅が狭く形成されている。
【0030】
フロントフレーム部4dは、図5に示すように、バックフレームF2側に対向する向きに僅かに傾斜して、両側でサイドフレーム部4cと一体的に形成されており、着座者の大腿部近傍を支持するものである。
【0031】
特に、フロントフレーム部4dの両側の隅4daは、大きな丸みを帯びてR面取り状に形成されている。両側の隅4daは、角張った形状ではなく、大きな丸みを帯びて形成されていることによって、面取り部分の体積分だけ材料が節減され、フロントフレーム部4dの軽量化が実現される。更に、クッションフレームF1の下方に設けられたスライドレール5を、固定孔5aを通るボルトによって図示せぬ車体フロアに固定する作業において、スライドレール5の上方にある作業スペースを、隅4daの面取り部分だけ広くできるために作業性が良くなる。更には、表皮1bをフロントフレーム部4dの上面、前面及び外側面を覆って、下面又は内側面に固定する作業の際に、隅4daに表皮1bに皺が生じづらくなるため、作業性が良好となる。
【0032】
フレーム連結部4eは、シート後側に設けられており、シート幅方向、換言すると、左右のサイドフレーム部4cの延在方向に対して略垂直に延在し、両端が左右のサイドフレーム部4cに一体的に連結されている。フレーム連結部4eは、シート幅方向に延在する円筒状の連結シャフト4fと、連結シャフト4fの一部を覆うカバー4gとから構成されている。
【0033】
連結シャフト4fは、パイプ状に形成されて、図示せぬハイトリンクに連結されており、その両端部を、左右のサイドフレーム部4cに回動可能に支持されている。
【0034】
カバー4gは、その両側を、左右のサイドフレーム部4cに一体的に連結されている。カバー4gは、トリムコード10aが掛け止めされる後述する掛け止め片4kを前側に有し、クッションフレームF1に載置されるクッションパッド1aを連結シャフト4fから上下方向において離間させる後述するカバー上部4hを上側に有する。
【0035】
また、カバー4gは、図2図4及び図5に示すように、その前側であり、後述する掛け止め片4kに面する上方にシート幅方向に延在して略前後方向に貫通する前側切欠き4iを有し、図4乃至図6に示すように、前側切欠き4iから後述するカバー上部4hを挟んで後側に、シート幅方向に延在する後側切欠き4jを有する。
【0036】
前側切欠き4iは、所定の幅をもってシート幅方向に延在し、中央部4icと両端側4isとから構成されている。前側切欠き4iの両端側4isは、中央部4icに対して幅狭に、且つ、両端側4isの下縁は、中央部4icの下縁よりも高い位置に形成されている。
【0037】
カバー4gに切欠き4iがこのように形成されていることによって、中央部4icと両端側4isとの段差が形成される。このため、中央部4icを前方から後方に通るトリムコード10aが、一定の張力で後述する掛け止め片4kに掛け止めされた状態においては、中央部4icと両端側4isとの段差によって、トリムコード10aのシート幅方向の移動が制限される。
つまり、トリムコード10aは、前側切欠き4iを有するカバー4gによって、後述する掛け止め片4kに掛け止めされた状態を維持される。
【0038】
カバー4gは、前側切欠き4i及び後側切欠き4jを有し、少ない材料で形成されることによって、材料コストの節減を実現できる。
更に、前側切欠き4i及び後側切欠き4jは、上記のように、カバー4gを含むクッションフレームF1が射出成形等によって成形されることにより、別途の加工を施さずにカバー4gの成形に伴って形成されることとなる。よって、表皮1bを取付安定性の低いばねに掛け止めする必要がなく、また、表皮1bの掛け止めのために、別途、図示せぬワイヤを用意する必要もない。更に、掛け止め部分を形成するためのプレス加工等の新たな作業を必要としない。このため、表皮1bの掛け止めが容易となり作業性が向上する。
【0039】
掛け止め片4kは、上記のようにトリムコード10aのフック10cが掛け止めされる被掛止部に相当し、前側切欠き4iに面する下側にあり、図4(a)に示すように、連結シャフト4fに対して下方に突出し、シート幅方向に延在して形成されている。
具体的には、掛け止め片4kは、連結シャフト4fの断面中心を同心とし後述するカバー上部4hに一部が重なる形を成し、カバー4gの側断面を前側切欠き4i及び後側切欠き4jの無い円形であるとして仮想した仮想円Cに対して、下方に突出して形成されている。
更に、掛け止め片4kの下端部4kbには、トリムコード10aの基端側が当接している。このように、トリムコード10aが掛け止め片4kの下端部4kbに当接していることで、トリムコード10aに縫合された表皮1bを、回動する連結シャフト4fから離間させ、これらの当接を妨げて連結シャフト4fの円滑な回動を実現可能とする。
なお、掛け止め片4kの下端部4kbに当接するものは、トリムコード10aではなく表皮1bであっても、同一の効果を奏することができる。
【0040】
更に、掛け止め片4kは、その下端部4kbがアッパーレール5uよりも上方に配置されるように形成されている。掛け止め片4kは、このように形成されていることで、表皮1bを掛け止め片4kに掛け止めする際に、アッパーレール5uを含むスライドレール5が邪魔にならず、掛け止め作業の効率を高めることができる。また、このように、掛け止め片4kの下端部4kbがアッパーレール5uよりも上方に配置されていることで、掛け止め片4kの下方の乗員の足等が入るスペースを確保できるため、車両の乗り心地を快適にすることができる。
【0041】
カバー上部4hは、掛け止め片4k側に対して前側切欠き4iを挟んで逆側にあり、連結シャフト4fから所定の間隔だけ離間して形成されており、シート幅方向に延在し、その両側でサイドフレーム部4cに一体的に連結されている。
更に、カバー上部4hは、図4(a)に示すシートクッション1の側断面図において、連結シャフト4fの断面中心を同心とする大径の円である仮想円Cに沿って、仮想円Cの中央から後側に延出しており、後側切欠き4jに面する後側の縁部4haは仮想円Cから突出していない。
【0042】
一方、形状の対比のために図4(b)に示すカバー上部40hは、図4(b)に示すシートクッション1の側断面図において、後側切欠き4jに面する後側の縁部40haが仮想円Cから突出して形成されている。
【0043】
ここで、表皮1bの掛け止め作業は、作業者が、表皮端末1baを、カバー上部4hの上方において前方から後方に向かって引っ張って、カバー上部4hの後側周縁に沿って下方に引っ張り、後方から前方に向かって折り返すようにして引っ張った後、掛け止め片4kにトリムコード10aを掛け止めすることによって成される。
【0044】
このようにして、表皮端末1baが掛け止め片4kに掛け止めされた状態において、図4(a)に示して上記したように、カバー上部4hが仮想円C上に形成されていることで、クッションパッド1aを介してカバー上部4hの後側の端部に加わる力を、図4(b)に示すカバー上部40hよりも小さく抑えることができる。このため、経年使用による表皮1bの張りを効果的に維持することが可能となる。
また、カバー4gは、図6に示すように、カバー上部4hがあるシート後側でサイドフレーム部4cと一体的に形成されていることにより、表皮1bが折り返されることで表皮1bから大きな荷重がかかるカバー4gの後側の剛性を高めることができる。更に、カバー4gがこのように形成されていることにより、表皮1bが折り返される位置において、表皮1bと連結シャフト4fとが離間することとなり、両者の接触を防いで連結シャフト4fを円滑に動作することとなる。
【0045】
(補強部について)
次に、図示せぬハーネスをクッションフレームF1に取り付けるために機能する他に、カバー4gの補強部として機能するハーネス取付板4mについて図5及び図7を参照して説明する。図7は、図5のVII部に示されたハーネス取付板4mを拡大して示す上面斜視図である。
【0046】
ハーネス取付板4mは、カバー4gの両側とサイドフレーム部4cとの連結部分に、カバー4gの前面とサイドフレーム部4cの内側面とに一体的に略垂直に形成され、着座面に並行する向きで形成されている。ハーネス取付板4mは、カバー4gの前面とサイドフレーム部4cの内側面とに一体的に形成されていることによって、カバー4gの剛性を高める補強部として機能する。
つまり、カバー4gは、前側切欠き4i及び後側切欠き4jを有することで、切欠きを有しないものよりも剛性が低くなるが、ハーネス取付板4mによってサイドフレーム部4cと一体的に形成されていることで、所定の剛性を確保できることとなる。
【0047】
特に、ハーネス取付板4mは、カバー4gの前面とサイドフレーム部4cの内側面の双方に略垂直に形成されているため、カバー4gとサイドフレーム部4cとを含む面の方向(着座面の面方向)の荷重に対する剛性が高まる。
よって、ハーネス取付板4mは、カバー4gの前後に形成された前側切欠き4iと後側切欠き4jによって弱められた剛性の補完に特に好適である。
【0048】
また、ハーネス取付板4mは、シート幅方向において、後側板ばね6の枠状支持部6cと重なる位置まで延在せずに、側方固定部6aの近傍に配設されている。前述のように枠状支持部6cよりも側方固定部6aはシート前後方向の幅が狭く形成されているため、ハーネス取付板4mと枠状支持部6cとが干渉することがなく、クッションフレームF1の前後方向の大型化を抑制できる。
【0049】
上記実施形態に係るシートクッション1及びシートクッション1を備える車両用シートSによれば、クッションフレームF1及び車両用シートSを軽量化させることが可能となると共に、クッションフレームF1への表皮端末の掛け止めが容易となり生産性を高くすることが可能となる。
【0050】
以上の実施形態に係るシートクッション1及び車両用シートSは、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0051】
例えば、表皮1bは、表皮端末1baに縫合されたトリムコード10aが前側切欠き4iを通ってカバー4gに掛け止めされるものとして説明したが、トリムコード10aに加えて、クリップ等によってカバー4gに掛け止めするようにしてもよい。
【0052】
また、連結シャフト4fは、両端を回動可能にサイドフレーム部4cに支持されているものとして説明したが、ハイトリンクに連結されているものでない場合等には、固定支持されているものであってもよい。この場合には、連結シャフト4fに、表皮を掛け止めするための切欠きを形成するようにしてもよい。
更には、フレーム連結部4eが、別体の連結シャフト4fとカバー4gとで構成されるものであるとして説明したが、連結シャフト4fとカバー4gとが一体的に形成されるものであってもよい。
【0053】
また、表皮端末1baに縫合されたトリムコード10aは、カバー4gの前側切欠き4iを通って、掛け止め片4kに掛け止めされるものとして説明したが、この構成に限定されない。例えば、前側切欠き4iをカバー4gに形成せずに、他の部位よりも突出する突出部を形成して、この突出部に表皮端末又はトリムコードを掛け止めするようにしてもよい。
【0054】
更に、クッションフレームF1は、樹脂材料から成るものとして説明したが、金属材料から成るもの、又は樹脂と金属との組合せから成るものであってもよい。また、クッションフレームF1は、一体的に形成されたサイドフレーム部4cと、フロントフレーム部4dと、フレーム連結部4eとによって構成されるものとして説明したが、サイドフレーム部4cとフレーム連結部4eのみが一体的に形成されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 シートクッション
1a クッションパッド
1b 表皮
1ba 表皮端末
2 シートバック
3 ヘッドレスト
4c サイドフレーム部
4d フロントフレーム部
4da 隅
4e フレーム連結部
4f 連結シャフト
4g カバー
4h,40h カバー上部
4ha,40ha 縁部
4i 前側切欠き
4ic 中央部
4is 両端側
4j 後側切欠き
4k 掛け止め片(被掛止部)
4ka 上端部
4kb 下端部
4m ハーネス取付板(補強部)
5 スライドレール
5a 固定孔
5l ロアレール
5u アッパーレール
6 後側板ばね
6a 側方固定部
6c 枠状支持部
7 前側板ばね
7a 側方固定部
10a トリムコード(取付部)
10b 縫合糸
10c フック
C 仮想円
F シートフレーム
F1 クッションフレーム
F2 バックフレーム
S 車両用シート

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7