【文献】
岸山 祥久 外,将来無線アクセスに向けた非直交マルチアクセスを用いる無線インターフェースについての初期検討,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.111 No.145,2011年 7月,第111巻,pp.37-42
【文献】
Nokia, Nokia Siemens Networks,On advanced UE MMSE receiver modelling in system simulations[online], 3GPP TSG-RAN WG1#64 R1-111031,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ra,2011年 2月
【文献】
Yuya Saito et al.,Non-Orthogonal Multiple Access (NOMA) for Cellular Future Radio Access,2013 IEEE 77th Vehicular Technology Conference (VTC Spring),2013年 6月,pp.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基地局の各々の前記情報通知部は、前記ユーザ装置の各々に、前記情報として、そのユーザ装置についての下りリンク信号の変調・符号化方式を示す情報を通知し、前記変調・符号化方式を示す前記情報には、そのユーザ装置の位置およびそのユーザ装置についての下りリンク送信電力が関連付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
前記所望基地局から、前記情報として、そのユーザ装置についての下りリンク信号の変調・符号化方式を示す情報を受信し、前記変調・符号化方式を示す前記情報には、そのユーザ装置の位置およびそのユーザ装置についての下りリンク送信電力が関連付けられている
ことを特徴とする請求項4に記載のユーザ装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。
まず、非直交マルチアクセスの概略を説明する。
図1に示すように、基地局1は複数のユーザ装置(user equipment、UE)100〜102と通信する。
図1において符号1aは基地局1のセルエリアを示す。UE102は、セルエリア端すなわち最もセルエリア1aの境界に近い位置にあり、基地局1から最も遠く、パスロスが最も大きい(あるいは受信SINRが最も小さい)。UE
100は、セルエリア1aの中央付近にあり、基地局1から最も近く、パスロスが最も小さい(あるいは受信SINRが最も大きい)。UE101は、UE102よりも基地局1に近く、UE
100よりも基地局1から遠い。
【0015】
図2は、非直交マルチアクセスにおける各UEへの基地局での下りリンク送信電力の割り当ての例を示す図である。基地局1は、UE100〜102に対して同時に同じ周波数を使用して下りリンク送信を行う。つまり、これらのUE100〜102には、同じ周波数と同じ時間が割り当てられる。基地局1は、最も遠隔にあるUE102への送信に最も高い下りリンク送信電力を使用し、最も近傍にあるUE100への送信に最も低い下りリンク送信電力を使用する。
【0016】
但し、基地局1に接続されるUEは、UE100〜102に限られない。非直交マルチアクセスは、直交マルチアクセスに組み合わせることが可能であり、UE100〜102以外のUEにはUE100〜102に割り当てられた周波数と異なる周波数が割り当てられてもよい。また、同時に同じ周波数が割り当てられるUEの数(NOMAで多重されるUEの数)は3に限らず、2でもよいし4以上でもよい。
【0017】
各UE100〜102の立場から見れば、最も高い受信電力の信号がUE102宛の信号であり、最も低い受信電力の信号がUE
100宛の信号である。各UE100〜102は最も高い受信電力の信号をまず復調する。その復調された信号は最もセルエリア1aの境界に近い位置にあるUE102宛の信号であるから、UE102は復調を終了し、その復調された信号を使用する。他の各UE100,101は、受信信号からその復調された信号に相当する干渉成分を干渉キャンセラにより除去し、2番目に高い受信電力の信号を復調する。その復調された信号は2番目にセルエリア1aの境界に近い位置にあるUE101の信号であるから、UE101は復調を終了し、その復調された信号を使用する。このように高い受信電力の信号の復調と除去を繰り返すことにより、すべてのUE100〜102はそのUE宛の信号を復調することができる。このように、非直交マルチアクセスでは、UEはそのUEを宛先とする信号を復調するまで、所望基地局1から送信された他のUEを宛先とする信号をキャンセルする。
【0018】
次に、
図3を参照し、干渉抑圧合成について説明する。
図3に示すように、無線通信ネットワークは複数の基地局1,2を備える。基地局1は複数のUE100,101と通信し、基地局2も複数のUE120,121と通信する。
図3において符号2aは基地局2のセルエリアを示す。基地局1に接続されたUEが所望基地局1から受信する電波は、基地局2から送信される同じ周波数の電波により干渉され、基地局2に接続されたUEが所望基地局2から受信する電波は、基地局1から送信される同じ周波数の電波により干渉される。特に、所望基地局のセルエリアの境界付近にあるUEは、隣の他の基地局から干渉電波ビームを受けやすい。例えば、在圏セルエリア(所望基地局1のセルエリア)1aの境界付近に所在するUE101は、所望基地局1の隣の他の基地局2(干渉基地局)から干渉電波ビームを強く受けやすい。
図3においては、所望基地局1で生成されたビーム1bの概略形状と、干渉基地局2で生成されたビーム2bの概略形状が示されている。干渉基地局2で生成されたビーム2bすなわち他のUE(例えばUE120)への下りチャネルのためのビームの一部がUE101にとって干渉信号2cの原因になりうる。
【0019】
干渉抑圧合成は、例えば、MMSE(最小平均二乗誤差)アルゴリズムを用いて、UEが重み付け係数(受信ウェイト)を計算し、そのUEの各受信アンテナで受信される各信号に受信ウェイトを適用し、干渉基地局から送信された干渉信号をキャンセルする技術である。干渉抑圧合成の各種の手順は既に提案されており公知である。
【0020】
本発明は、
図3に示すような複数の基地局と複数のUEとを備える無線通信システムに関しており、特に各UEが干渉抑圧合成(IRC)を実行しかつ複数の非直交信号を含む無線信号を適切に処理することができる、非直交マルチアクセス(NOMA)が適用される無線通信システムに関する。
【0021】
次に、NOMAにおける基地局での各UEへの下りリンク送信電力の決定手法の例を説明する。基地局は、例えば以下の式(1)を用いて、各UEに関する下りリンク送信電力P
kを決定する。
【数1】
【0022】
式(1)において、Pは同時に同じ周波数を使用するすべてのUEへの下りリンク送信電力の合計(総下りリンク送信電力)である。各パラメータの添字kは、下りリンク送信電力P
kが決定されるUEを識別し、各パラメータの添字iは式(1)中のサンメンションのためUEを識別する。Kは同時に同じ周波数を使用するすべてのUEの数である。hはUEについての下りリンクのチャネル係数を示し、Nは各UEでの熱雑音電力および他の基地局からの干渉電力の合計を示す。
【0023】
【数2】
は、UE
iでのSINR(信号対干渉雑音比)に相当し、基地局はそのSINRをUE
iから報告されるCQI(チャネル品質インジケータ)によって知ることができる。式(1)において、αは、下りリンク送信電力の配分を決定する係数であり、0より大きく1以下である。仮にαが0であれば、同時に同じ周波数を使用するすべてのUEへの下りリンク送信電力は均等である。αは0より大きく1以下なので、SINRが大きい(受信品質が良好な)UEに、小さい下りリンク送信電力が割り当てられる。そして、αが1に近いほど、各UEでの受信SINRの差に対する、各UEへの送信電力の相違は大きくなる。
【0024】
図3に示す各UEがIRCを実行し、かつNOMAが適用される通信システムでの各UEでの無線信号の復調方式を説明する。基地局1に接続するUE100,101を例にとる。UE100は、基地局1の近傍にあるため、基地局間干渉(inter-cell interference)、すなわち他の基地局2からの干渉よりも、NOMAによる他のUE宛の信号による干渉を強く受ける。一方、UE101は、基地局1のセルエリア内のセルエリア境界に近い位置にあるため、NOMAによる他のUE宛の信号による干渉よりも、基地局間干渉を強く受ける。
【0025】
したがって、UEの基地局のセルエリア内での位置に応じて、UEが異なる方式で復調することが望ましい。但し、上記のNOMAにおける下りリンク送信電力の決定手法の説明から明らかなように、NOMAでの電力は、各UEでの受信SINR(受信品質)に依存するので、所望基地局から遠いUEへの下りリンク送信電力が高いとは限らず、所望基地局に近いUEへの下りリンク送信電力が低いとは限らない。SINRは位置に関連するパラメータであるが、位置に完全に依存するのではない。したがって、本明細書のUEの「位置」はSINR(受信品質)を基準とした位置であり、UEと所望基地局の距離もSINR(受信品質)を基準とした距離である。つまり、セルエリア境界に近い位置にUEがある(またはUEが所望基地局から遠い)ことは、そのUEの受信SINR(受信品質)が低いことを意図しており、UEが所望基地局に近いことは、そのUEの受信SINR(受信品質)が高いことを意図している。以下、説明の簡便化のため、NOMAにより、基地局1に接続する2つのUE100,101に同時に同じ下りリンクの周波数が割り当てられると想定する。
【0026】
図4は、基地局1の最も近傍にあるUE100の無線信号の受信からUE100宛の信号の復調までの機能ブロックを示すブロック図である。
図4に示すように、UE100は、アンテナで受信された受信信号
【数3】
をまずIRC重み付けし、IRC重み付けされた受信信号からUE101宛の信号(最も高い受信電力の信号)
【数4】
を復調する。
【0027】
次に、UE100は、アンテナで受信された受信信号からUE101宛の信号をキャンセルし、得られた信号をIRC重み付けし、IRC重み付けされた信号からUE100宛の信号(最も低い受信電力の信号)
【数5】
を復調する。
【0028】
図5は、基地局1から最も遠隔にある(セルエリア境界に最も近い位置にある)UE101の無線信号の受信からUE101宛の信号の復調までの機能ブロックを示すブロック図である。
図5に示すように、UE101は、アンテナで受信された受信信号
【数6】
をまずIRC重み付けし、IRC重み付けされた受信信号からUE101宛の信号(最も高い受信電力の信号)
【数7】
を復調する。
【0029】
以上の想定では、同時に同じ周波数が割り当てられるUEの数(NOMAで多重されるUEの数)は2であるが、これに限らず、3以上でもよい。基地局の近傍にあるUEは、受信電力がより高い信号の復調、その信号のキャンセルおよびIRC重み付けを、そのUEを宛先とする信号の復調が行われるまで、繰り返す。
【0030】
以上説明したように、各UEがIRCを実行し、かつNOMAが適用される通信システムでは、UEの基地局のセルエリア内での位置に応じて、UEが異なる方式で復調することが望ましい。したがって、各UEは、基地局のセルエリア内での相対的な位置に関連するパラメータを認識することが望ましい。
【0031】
第1の実施の形態
図6は本発明の第1の実施の形態に係る基地局1の構成を示すブロック図である。基地局2も基地局1と同じ構成を有する。基地局1は、制御部30、無線信号送信部32、複数の送信アンテナ33、無線信号受信部34、受信アンテナ35および基地局間通信部36を備える。
【0032】
無線信号送信部32は、基地局1が各UEへ無線送信を行うため電気信号を送信アンテナ33から送信する電波に変換するための送信回路である。送信アンテナ33はアダプティブアンテナアレイを構成する。無線信号受信部34は、基地局1が各UEから無線受信を行うため受信アンテナ35から受信した電波を電気信号に変換するための受信回路である。基地局間通信部36は、基地局1が他の基地局と通信を行うための通信インターフェイスである。
【0033】
制御部30は、CQI報告処理部38、情報通知部40および下りリンク送信電力決定部42を備える。制御部30は、コンピュータプログラムに従って動作するCPU(central processing unit)である。CQI報告処理部38、情報通知部40および下りリンク送信電力決定部42は、制御部30がそのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。
【0034】
制御部30は、基地局1に接続された各UEから送信され無線信号受信部34で受信された上りリンクのデータ信号を処理する。
【0035】
CQI報告処理部38は、基地局1に接続された各UEから報告され無線信号受信部34で受信されたCQI(チャネル品質インジケータ)に基づいて、各UEでのSINRを認識する。下りリンク送信電力決定部42は、各UEでのSINRに基づいて、NOMAのために、基地局1に接続された各UEに対する下りリンク送信に使用する下りリンク送信電力を決定する。SINRは、UEのセルエリア内での相対的な位置、具体的にはUEと基地局の距離に関連するパラメータである。下りリンク送信電力の決定の手法は、式(1)を参照し上述した通りである。但し、式(1)は例であり、決定の手法はこれに限定されない。下りリンク送信電力決定部42は、UEと基地局の距離が大きい程、高い下りリンク送信電力を割り当てる。
【0036】
制御部30は、基地局1に接続された複数のUEをそれぞれ宛先とする下りリンクのデータ信号を無線信号送信部32に供給する。無線信号送信部32は、これらのUEをそれぞれ宛先とする互いに直交しない複数の非直交信号(下りリンクのデータ信号に相当する)が混合された無線信号を、送信アンテナ33により送信する。このとき、無線信号送信部32は、各非直交信号を下りリンク送信電力決定部42で決定された下りリンク送信電力で送信する。したがって、同時に同じ周波数が下りリンク送信で使用される複数のUEに対して、異なる下りリンク送信電力でデータ信号が送信される。
【0037】
情報通知部40は、基地局1に接続された複数のUEの各々に、そのUEの位置を示す情報を通知する。ここでいうUEの位置とは、UEのセルエリア内での相対的な位置、具体的にはUEと所望基地局の距離のレベルである。情報通知部40は、UEと所望基地局の距離のレベルを示す情報を、上位レイヤ信号または制御チャネル信号でそのUEに通知する。
【0038】
例えば、情報通知部40は、UEと所望基地局の距離のレベルを示す情報として、制御チャネルの所定数のビットを使用することができる。表1は、UEと所望基地局の距離のレベルを示す情報の例を示す。
【表1】
表1は、同時に同じ周波数が割り当てられるUEの数(NOMAで多重されるUEの数)が4の場合の例である。各UEが下りリンクの制御チャネルの2ビットを解釈することにより、各UEはそのUEの所望基地局に対する位置を認識することができる。表1では2ビットの値00がセルエリア境界に最も近いことを示し、11が基地局に最も近いことを示すが、ビットの値と解釈の関係はこの例に限られない。
【0039】
NOMAで多重されるUEの数は4に限られない。したがって、UEと所望基地局の距離のレベルを示す情報には様々なバリエーションがありうる。例えば、NOMAで多重されるUEの数が2である場合には、表2に示す2ビットの情報を使用してもよいし、表3に示す1ビットの情報を使用してもよい。
【表2】
【表3】
【0040】
UEの位置認識部62は、このような位置を示す情報に基づいて、そのUEの位置に関連するパラメータを認識する。例えば表1〜表3のいずれかに示すビットの値と解釈の関係は、あらかじめUEに与えられており、この関係に基づいて、位置認識部62は、ビットの値からそのUEの位置を認識することが可能である。
【0041】
NOMAで多重されるUEの数があらかじめ決まっている場合には、各UEにその数を通知する必要はないが、その数が可変である場合には、各UE(特にセルエリア境界に最も近い位置にないUE)にその数を通知する必要がある。この場合には、情報通知部40は、その数を示す情報を上位レイヤ信号または制御チャネル信号で、基地局1に接続される各UEに通知する。
【0042】
また、セルエリア境界に最も近い位置にない各UEでのデータ信号の復調のためには、各UEには、そのUEについての下りリンク送信電力に関する情報を通知する必要がある。下りリンク送信電力に関する情報とは、そのUEについての下りリンク送信電力P
kを直接的に示す情報でもよいし、総下りリンク送信電力Pに対する下りリンク送信電力P
kの比を示す情報でもよい。情報通知部40は、このような情報を上位レイヤ信号または制御チャネル信号で、基地局1に接続される各UEに通知する。
【0043】
図7は第1の実施の形態に係るUE10の構成を示すブロック図である。上述したUE(UE100等)はUE10と同じ構成を有する。UE10は、制御部50、無線信号送信部52、送信アンテナ53、無線信号受信部54および複数の受信アンテナ55を備える。
【0044】
無線信号送信部52は、UE10が所望基地局へ無線送信を行うため電気信号を送信アンテナ53から送信する電波に変換するための送信回路である。無線信号受信部54は、UE10が所望基地局から無線受信を行うため受信アンテナ55から受信した電波を電気信号に変換するための受信回路である。受信アンテナ55はアダプティブアンテナアレイを構成する。
【0045】
制御部50は、受信品質測定部60、CQI報告部61、位置認識部62、電力認識部64、干渉抑圧合成処理部(IRC処理部)66、復調部68および非直交信号キャンセル部70を備える。制御部50は、コンピュータプログラムに従って動作するCPUである。受信品質測定部60、CQI報告部61、位置認識部62、電力認識部64、IRC処理部66、復調部68および非直交信号キャンセル部70は、制御部50がそのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。
【0046】
制御部50は、上りリンクのデータ信号を無線信号送信部52に供給し、無線信号送信部52は、上りリンクのデータ信号を送信アンテナ53により所望基地局に送信する。受信品質測定部60は、無線信号受信部54で受信された無線信号のSINRを測定する。CQI報告部61はSINRに基づいてCQIを生成し、CQIを無線信号送信部52に供給する。無線信号送信部52は、CQIを制御チャネルで所望基地局に送信する。
【0047】
無線信号受信部54は、所望基地局から送信された互いに直交しない複数の非直交信号が含まれた無線信号を受信する。また、無線信号受信部54は、所望基地局から送信されたそのUEの位置を示す情報およびそのUEについての下りリンク送信電力に関する情報を受信する。さらに、所望基地局がNOMAで多重されるUEの数を示す情報を送信する場合には、無線信号受信部54は所望基地局から送信されたNOMAで多重されるUEの数を示す情報を受信する。
【0048】
位置認識部62は、所望基地局から送信されたそのUEの位置を示す情報に基づいて、そのUEの位置に関連するパラメータを認識する。電力認識部64は、所望基地局から送信されたそのUEについての下りリンク送信電力に関する情報に基づいて、そのUEについての下りリンク送信電力P
kを認識する。
【0049】
IRC処理部66は、無線信号受信部54が無線信号受信部が受信した無線信号の中の非直交信号の中の、そのUEが接続されていない干渉基地局から受信された干渉信号成分を抑圧する。復調部68は、IRC処理部66によって干渉信号成分が抑圧された非直交信号を復調する。非直交信号キャンセル部70は、そのUEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にないと位置認識部62が認識する場合に、復調部68で復調された非直交信号を無線信号からキャンセルする。IRC処理部66、復調部68および非直交信号キャンセル部70の動作は、所望基地局から通知され位置認識部62で認識されたUEの基地局のセルエリア内での位置に応じて異なる。
【0050】
UEが所望基地局から最も遠隔にある(セルエリア境界に最も近い位置にある)と位置認識部62が認識する場合には、IRC処理部66は、無線信号受信部54で受信された受信信号をIRC重み付けすることにより干渉信号成分を抑圧する。復調部68は、IRC重み付けによって干渉信号成分が抑圧された受信信号を復調する。したがって、そのUE宛の信号(最も高い受信電力の信号)が復調される。つまり、そのUE宛のデータ信号が得られ、復調の処理は終了する。他のUE宛の信号を復調してキャンセルする必要はない。この場合、非直交信号キャンセル部70は動作しない。
【0051】
UEが所望基地局から最も遠隔にあると位置認識部62が認識する場合の復調の処理は、
図5を参照して上述した通りである。UEが所望基地局から最も遠隔にある場合、無線信号受信部54で受信された受信信号
【数8】
は例えば下記の式(2)で表される。添字の(k)は下りリンクのリソース、具体的には周波数を示す。
【数9】
【0052】
式(2)において、
【数10】
は、所望基地局からそのUEまでの下りリンクのチャネルインパルス行列を示す。式(2)はNOMAで多重されるUEの数が2である場合(同時に同じ周波数で2つのUEに下りリンク送信が行われる場合)に使用される。P
0は所望基地局に近い方のUEへの下りリンク送信電力を示し、P
1は所望基地局から遠い方のUE(つまり復調処理を行うUE)への下りリンク送信電力を示す。
【0053】
【数11】
は、所望基地局に近い方のUEを宛先とする送信データ信号ベクトルを示し、
【数12】
は、所望基地局から遠い方のUEを宛先とする送信データ信号ベクトルを示す。
【0054】
【数13】
は、そのUEに支配的な干渉をもたらす干渉基地局からそのUEまでの下りリンクのチャネルインパルス行列を示し、
【数14】
は、干渉基地局からそのUEに干渉を与える送信データ信号ベクトルを示す。
【0055】
【数15】
は、支配的ではない干渉成分を表す行列を示し、
【数16】
は、熱雑音成分を表する行列を示す。
【0056】
UEが所望基地局から最も遠隔にある場合のIRC処理部66によるIRC重み付けのためのIRC重み付け行列
【数17】
は例えば下記の式(3)で表される。式(3)はNOMAで多重されるUEの数が2である場合(同時に同じ周波数で2つのUEに下りリンク送信が行われる場合)に使用される。
【数18】
【0057】
式(3)において、
【数19】
は所望基地局からそのUEまでの下りリンクの推定チャネルインパルス行列を示す。上付文字Hは複素共役転置(complex conjugate transpose)を示す。P
1Intercellは、そのUEに支配的な干渉をもたらす干渉基地局の送信電力を示し、σ
I12は支配的ではない干渉電力を示し、σ
N12は熱雑音電力を示す。
【数20】
は単位行列を示す。
【0058】
式(3)で用いられるP
0+P
1は、所望基地局の総下りリンク送信電力Pであり、UEにとって既知である(総下りリンク送信電力Pは固定値であってもよいし、上位レイヤ信号または参照信号によって所望基地局からUEに通知されてもよい)。他の各パラメータは、公知の技術によって推定される。したがって、所望基地局から最も遠隔にあるUEのIRC処理部66は、IRC重み付け行列を算出することができ、これを受信信号に乗算することができる。IRC処理部66は、そのUEのための下りリンク送信電力P
1を知る必要はない。所望基地局から最も遠隔にあるUEの復調部68は、IRC重み付けされた受信信号を復調するだけで、そのUE宛のデータ信号を得ることができる。
【0059】
他方、UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にないと位置認識部62が認識する場合には、IRC処理部66は、無線信号受信部54で受信された受信信号をIRC重み付けすることにより干渉信号成分を抑圧し、復調部68は、IRC重み付けによって干渉信号成分が抑圧された受信信号を復調する。したがって、所望基地局から最も遠隔にあるUE宛の信号(最も高い受信電力の信号)が復調される。
【0060】
この後、非直交信号キャンセル部70は、復調部68で復調された非直交信号を無線信号からキャンセルする。そして、復調部68がそのUEを宛先とする信号を復調するまで、IRC処理部66は、非直交信号キャンセル部70から出力された非直交信号の中の干渉信号成分を抑圧し、復調部68は、IRC処理部66によって干渉信号成分が抑圧された非直交信号を復調する。つまり、この場合に、UEは、復調部68がそのUEを宛先とする信号を復調するまで、干渉抑圧合成と、所望基地局に接続された他のUEを宛先とする非直交信号のキャンセルを繰り返す。
【0061】
UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にないと位置認識部62が認識する場合の復調の処理は、
図4を参照して上述した通りである。UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にない場合、無線信号受信部54で受信された受信信号
【数21】
は例えば下記の式(4)で表される。
【数22】
【0062】
式(4)において、
【数23】
は、所望基地局からそのUEまでの下りリンクのチャネルインパルス行列を示す。式(4)はNOMAで多重されるUEの数が2である場合(同時に同じ周波数で2つのUEに下りリンク送信が行われる場合)に使用される。P
0は所望基地局に近い方のUE(つまり復調処理を行うUE)への下りリンク送信電力を示し、P
1は所望基地局から遠い方のUE(つまり他方のUE)への下りリンク送信電力を示す。
【0063】
【数24】
は、そのUEに支配的な干渉をもたらす干渉基地局からそのUEまでの下りリンクのチャネルインパルス行列を示し、
【数25】
は、干渉基地局からそのUEに干渉を与える送信データ信号ベクトルを示す。
【0064】
【数26】
は、支配的ではない干渉成分を表す行列を示し、
【数27】
は、熱雑音成分を表する行列を示す。
【0065】
UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にない場合のIRC処理部66による最初のIRC重み付け(
図4の上段のIRC重み付け)のためのIRC重み付け行列
【数28】
は例えば下記の式(5)で表される。式(5)はNOMAで多重されるUEの数が2である場合(同時に同じ周波数で2つのUEに下りリンク送信が行われる場合)に使用される。
【数29】
【0066】
式(5)において、
【数30】
は所望基地局からそのUEまでの下りリンクの推定チャネルインパルス行列を示す。P
0Intercellは、そのUEに支配的な干渉をもたらす干渉基地局の送信電力を示し、σ
I02は支配的ではない干渉電力を示し、σ
N02は熱雑音電力を示す。
【0067】
式(5)で用いられるP
0+P
1は、所望基地局の総下りリンク送信電力であり、UEにとって既知である。他の各パラメータは、公知の技術によって推定される。したがって、所望基地局の近傍にあるUEのIRC処理部66は、式(5)に従ってIRC重み付け行列を算出することができ、これを受信信号に乗算することができる。所望基地局の近傍にあるUEの復調部68は、IRC重み付けされた受信信号を復調するだけで、所望基地局から最も遠隔にあるUE宛のデータ信号を得ることができる。
【0068】
この後、非直交信号キャンセル部70は、復調部68で復調された非直交信号(所望基地局から最も遠隔にあるUE宛のデータ信号のレプリカ)を無線信号からキャンセルする。その結果の信号
【数31】
は例えば下記の式(6)で表される。
【数32】
【0069】
式(6)はNOMAで多重されるUEの数が2である場合(同時に同じ周波数で2つのUEに下りリンク送信が行われる場合)に使用される。P
0は所望基地局に近い方のUE(つまり復調処理を行うUE)への下りリンク送信電力を示す。
【0070】
IRC処理部66は、非直交信号キャンセル部70から出力された非直交信号の中の干渉信号成分をIRC重み付けによって抑圧する。UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にない場合のIRC処理部66による2回目のIRC重み付け(
図4の下段のIRC重み付け)のためのIRC重み付け行列
【数33】
は例えば下記の式(7)で表される。式(7)はNOMAで多重されるUEの数が2である場合(同時に同じ周波数で2つのUEに下りリンク送信が行われる場合)に使用される。
【数34】
【0071】
式(7)で用いられるP
0は、復調処理を行うUEへの下りリンク送信電力であり、電力認識部64によって認識されている。他の各パラメータは、公知の技術によって推定される。したがって、所望基地局の近傍にあるUEのIRC処理部66は、式(7)に従ってIRC重み付け行列を算出することができ、これを信号
【数35】
に乗算することができる。所望基地局の近傍にあるUEの復調部68は、IRC重み付けされた信号を式(6)に従って復調することにより、所望基地局からそのUE宛のデータ信号を得ることができる。式(6)で用いられるP
0は、復調処理を行うUEへの下りリンク送信電力であり、電力認識部64によって認識されている。他の各パラメータは、公知の技術によって測定または推定される。
【0072】
以上、NOMAで多重されるUEの数が2である場合のUEの具体的動作を説明したが、NOMAで多重されるUEの数が3以上である場合のUEの具体的動作は、当業者にとっては上記説明に適切な改変が加えられることで理解される。
【0073】
以上のように、この実施の形態によれば、非直交マルチアクセスにおいて、ユーザ装置が干渉抑圧合成を実行しかつ複数の非直交信号を含む無線信号を適切に処理することができる。特に、所望基地局から送信された情報に基づいて、ユーザ装置はそのユーザ装置の位置を認識し、その位置に基づいて、干渉抑圧合成と非直交信号の復調に関する適切な処理動作を選択的に実行することが可能である。
【0074】
第2の実施の形態
次に本発明に係る第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態に係る基地局の構成は第1の実施の形態の基地局1(
図6参照)と同じでよい。第1の実施の形態では、情報通知部40は、基地局1に接続された複数のUEの各々に、そのUEの位置を示す情報を通知し、そのUEについての下りリンク送信電力に関する情報を通知する。つまり、情報通知部40は、UEの位置を示す情報と、そのUEについての下りリンク送信電力に関する情報を別個にUEに通知する。
【0075】
しかし、第2の実施の形態では、基地局の情報通知部40は、基地局1に接続された複数のUEの各々に、そのUEの位置を示す情報を通知せず、そのUEについての下りリンク送信電力に関する情報を通知する。NOMAにおいては、所望基地局とUEの距離が大きいほど、下りリンク送信電力が高いので、UEは下りリンク送信電力に関する情報に関する情報に基づいて、そのUEの位置、具体的には所望基地局とUEの距離を認識することが可能である。
【0076】
NOMAで多重されるUEの数があらかじめ決まっている場合には、各UEにその数を通知する必要はないが、その数が可変である場合には、各UE(特にセルエリア境界に最も近い位置にないUE)にその数を通知する必要がある。この場合には、情報通知部40は、その数を示す情報を上位レイヤ信号または制御チャネル信号で、基地局1に接続される各UEに通知する。
【0077】
図8は第2の実施の形態に係るUE10の構成を示すブロック図である。第2の実施の形態に係るUEの構成要素は、第1の実施の形態のUE(
図7参照)と同じでよいが、位置認識部62は、所望基地局から送信されたそのUEについての下りリンク送信電力に関する情報に基づいて、そのUEの位置に関連するパラメータを認識する。電力認識部64は、第1の実施の形態と同様に、所望基地局から送信されたそのUEについての下りリンク送信電力に関する情報に基づいて、そのUEについての下りリンク送信電力P
kを認識する。
【0078】
第1の実施の形態と同様に、UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にないと位置認識部62が認識する場合、UEのIRC処理部66は、そのUEを宛先とする信号を復調するためのIRC重み付けの計算に、電力認識部64で認識された下りリンク送信電力を使用する。つまり、UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にない場合、IRC処理部66は、電力認識部64で認識された下りリンク送信電力に基づいて、干渉信号成分を抑圧する。
【0079】
第1の実施の形態と同様に、UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にないと位置認識部62が認識する場合、UEの復調部68は、そのUEを宛先とする信号を復調するために、電力認識部64で認識された下りリンク送信電力を使用する。つまり、UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にない場合、復調部68は、電力認識部64で認識された下りリンク送信電力に基づいて、そのUEを宛先とする信号を復調する。
【0080】
基地局1の情報通知部40がUEに通知する下りリンク送信電力に関する情報とは、そのUEについての下りリンク送信電力P
kを直接的に示す情報でもよいし、総下りリンク送信電力Pに対する下りリンク送信電力P
kの比を示す情報でもよい。所望基地局の総下りリンク送信電力PはUEにとって既知であるから、UEの電力認識部64は、比を示す情報からそのUEについての下りリンク送信電力P
kを計算することができる。
【0081】
基地局1の情報通知部40は、下りリンク送信電力に関連する情報を、上位レイヤ信号または制御チャネル信号でそのUEに通知する。例えば、情報通知部40は、下りリンク送信電力に関連する情報として、制御チャネルの所定数のビットを使用することができる。表4は、下りリンク送信電力に関連する情報の例を示す。
【表4】
【0082】
表4は、同時に同じ周波数が割り当てられるUEの数(NOMAで多重されるUEの数)が4の場合の例である。各UEが下りリンクの制御チャネルの2ビットを解釈することにより、各UEはそのUEについての下りリンク送信電力(この例では総下りリンク送信電力Pに対する下りリンク送信電力P
kの比)およびそのUEの所望基地局に対する位置を認識することができる。下りリンク送信電力に関連する情報は、下りリンク送信電力に関連する情報であると同時に、UEの所望基地局に対する位置を示す情報でもあると考えることができる。表4では2ビットの値00が最大の送信電力およびセルエリア境界に最も近いことを示し、11が最小の送信電力および基地局に最も近いことを示すが、ビットの値と解釈の関係はこの例に限られない。
【0083】
NOMAで多重されるUEの数は4に限られない。したがって、下りリンク送信電力に関連する情報には様々なバリエーションがありうる。例えば、NOMAで多重されるUEの数が2である場合には、表5に示す2ビットの情報を使用してもよいし、表6に示す1ビットの情報を使用してもよい。
【表5】
【表6】
【0084】
このような位置および下りリンク送信電力を示す情報に基づいて、UEの位置認識部62はそのUEの位置を認識し、UEの電力認識部64はそのUEへの下りリンク送信電力を認識する。例えば表4〜表6のいずれかに示すビットの値と解釈の関係は、あらかじめUEに与えられており、この関係に基づいて、位置認識部62はビットの値からそのUEの位置を認識することが可能であり、電力認識部64はビットの値からそのUEへの下りリンク送信電力を認識することが可能である。
【0085】
下りリンク送信電力を示す情報とUEでの下りリンク送信電力の解釈の関係を更新することが可能である。例えば、表4においてビット00は電力比が0.5であることを示す。基地局1の下りリンク送信電力決定部42は、例えば式(1)に従って、逐次的に下りリンク送信電力を決定するので、基地局1から最も遠隔にあるUEへの下りリンク送信電力が0.5以外の値に決定されることがありうる。他のUEについての下りリンク送信電力も同様である。したがって、基地局1の情報通知部40は、下りリンク送信電力の解釈の更新を指示する情報をUEに送信することが好ましい。表7は、UEに下りリンク送信電力の解釈の更新を指示するための情報の例である。このような情報は上位レイヤ信号または制御チャネル信号で基地局1からUEに通知される。このような情報を受信したUEにおいて、電力認識部64は新解釈に従って下りリンク送信電力を示す情報を解釈して、下りリンク送信電力を認識する。
【表7】
【0086】
この実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、所望基地局から送信された情報に基づいて、ユーザ装置はそのユーザ装置の位置を認識し、その位置に基づいて、干渉抑圧合成と非直交信号の復調に関する適切な処理動作を選択的に実行することが可能である。さらに、この実施の形態によれば、ユーザ装置は、所望基地局から送信された下りリンク送信電力に関する情報を、干渉抑圧合成と非直交信号の復調に使用することができ、しかも所望基地局から送信された単一種類の情報により、ユーザ装置は、そのユーザ装置の位置およびそのユーザ装置についての下りリンク送信電力を認識することができる。したがって、第1の実施の形態よりもトラフィック量を削減することができる。
【0087】
第3の実施の形態
次に本発明に係る第3の実施の形態を説明する。第3の実施の形態は、第2の実施の形態の変形であり、基地局1の情報通知部40は、各UEにUEの位置および下りリンク送信電力に関する情報として、そのUEについての下りリンクデータ信号の変調・符号化方式(MCS、Modulation and Coding Scheme)を示す情報を通知する。
【0088】
UEでの下りリンクのデータ信号の復調のためには、UEはそのUEについての下りリンクデータ信号のMCSを知っている必要がある。また、UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にない(電力がNOMAで多重される他のUEよりも低い)場合には、UEは、NOMAで多重される他のUEを宛先とする信号(電力が高い信号)を復調する必要があるため、他のUEについてのMCSを知っている必要がある。したがって、第1の実施の形態および第2の実施の形態でも、基地局1の情報通知部40は、UEにそのUEのためのMCSを通知し、そのUEより電力が高いUEのためのMCSも通知する。しかし、第3の実施の形態では、基地局1からUEに通知されるMCSを示す情報には、そのMCSに関するUEの位置およびそのUEについての下りリンク送信電力が関連付けられている。ここでいう「関連付け」とは、基地局1から送信されたMCSを示す情報に基づいて、UEがそのUEの位置およびそのUEについての下りリンク送信電力を解釈することができることを意味する。
【0089】
第3の実施の形態に係る基地局の構成は第1の実施の形態の基地局1(
図6参照)と同じでよい。第3の実施の形態に係るUEの構成は第2の実施の形態のUE10(
図8参照)と同じでよい。
【0090】
基地局1の情報通知部40がUEに通知するMCSには、そのUEについての下りリンク送信電力P
kが直接的に関連付けられていてもよいし、総下りリンク送信電力Pに対する下りリンク送信電力P
kの比が関連付けられていてもよい。所望基地局の総下りリンク送信電力PはUEにとって既知であるから、UEの電力認識部64は、比を示す情報からそのUEについての下りリンク送信電力P
kを計算することができる。また、MCSには、後述する下りリンク送信電力の相対値が関連付けられ、相対値に基づいてUEが下りリンク送信電力を計算してもよい。基地局1の情報通知部40がUEに通知するMCSには、そのUEの位置(すなわちUEと所望基地局の距離のレベル)が直接的に関連付けられていてもよい。また、MCSには、後述する下りリンク送信電力の相対値が関連付けられ、相対値に基づいてUEが位置を解釈してもよい。
【0091】
UEの位置認識部62は、所望基地局から送信されたMCSを示す情報に基づいて、そのユーザ装置の位置に関連するパラメータを認識する。電力認識部64は、所望基地局から送信されたMCSを示す情報に基づいて、そのUEについての下りリンク送信電力P
kを認識する。
【0092】
第1の実施の形態と同様に、UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にないと位置認識部62が認識する場合、UEのIRC処理部66は、そのUEを宛先とする信号を復調するためのIRC重み付けの計算に、電力認識部64で認識された下りリンク送信電力を使用する。つまり、UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にない場合、IRC処理部66は、電力認識部64で認識された下りリンク送信電力に基づいて、干渉信号成分を抑圧する。
【0093】
第1の実施の形態と同様に、UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にないと位置認識部62が認識する場合、UEの復調部68は、そのUEを宛先とする信号を復調するために、電力認識部64で認識された下りリンク送信電力を使用する。つまり、UEが所望基地局のセルエリア内にあるが最もセルエリア境界に近い位置にない場合、復調部68は、電力認識部64で認識された下りリンク送信電力に基づいて、そのUEを宛先とする信号を復調する。
【0094】
この実施の形態によれば、第2の実施の形態の効果と同じ効果を達成することができる。しかも基地局から送信されるMCSを示す情報により、ユーザ装置は、そのユーザ装置の位置およびそのユーザ装置についての下りリンク送信電力を認識することができる。したがって、第2の実施の形態よりもトラフィック量を削減することができる。
【0095】
第3の実施の形態の特定の例を以下に説明する。表8は、MCSを示す情報(MCSインデックス)と下りリンク送信電力の相対値の関係の例を示す。
【表8】
【0096】
表8に示すMCSインデックスと解釈の関係は、あらかじめUEに与えられており、この関係に基づいて、UEは下りリンク送信電力の相対値を認識することが可能である。表8においては、複数のMCSインデックスに同じ送信電力の相対値が割り当てられているが、異なるMCSインデックスに異なる相対値を割り当ててもよい。
【0097】
基地局1の情報通知部40は、NOMAで多重される複数のUEに、これらの複数のUEに使用されるMCSインデックスをすべて通知する。また、情報通知部40は、各UEにそのUEのためのMCSがどれであるのかも通知する。UEの位置認識部62は、これらのMCSインデックスから複数のUEについての下りリンク送信電力の相対値を認識し、これらの相対値に基づいて、UEの位置を認識する。UEの電力認識部64は、これらのMCSインデックスから複数のUEについての下りリンク送信電力の相対値を認識し、これらの相対値と既知の総下りリンク送信電力Pに基づいて、そのUEへの下りリンク送信電力を計算する。
【0098】
例えば、NOMAで多重されるUEの数が2であって、MCSインデックス4とMCSインデックス22が基地局1から各UEに通知されると想定する。所望基地局から最も遠隔にある(セルエリア境界に最も近い位置にある)UEにはMCSインデックス4で示されるMCSが割り当てられ、所望基地局に最も近いUEにはMCSインデックス22で示されるMCSが割り当てられると想定する。この場合、所望基地局から最も遠隔にあるUEには、電力の相対値5が割り当てられ、所望基地局に最も近いUEには電力の相対値1が割り当てられる。相対値の合計は6である。
【0099】
所望基地局から送信されるMCSインデックスの数は2であるから、各UEの位置認識部62はそのMCSインデックスの数に基づいて、NOMAで多重されるUEの数を認識することができる。各UEの位置認識部62は、これらのMCSインデックス(4と22)から複数のUEについての下りリンク送信電力の相対値(5と1)を認識するとともに、そのUEについてのMCSインデックス(4または22)からそのUEについての下りリンク送信電力の相対値(5または1)を認識する。そのUEについての下りリンク送信電力の相対値が他のUEについての下りリンク送信電力より高ければ、位置認識部62は、そのUEが所望基地局から最も遠隔にあると認識する。そのUEについての下りリンク送信電力の相対値が他のUEについての下りリンク送信電力より低ければ、位置認識部62は、そのUEが所望基地局に最も近いと認識する。NOMAで多重されるUEの数が3以上の場合でも、所望基地局から送信されるMCSインデックスの数と相対値相互の比較に基づいて、位置認識部62は、そのUEの位置(UEと所望基地局の距離のレベル)を認識することができる。
【0100】
各UEの電力認識部64は、所望基地局から送信されるMCSインデックスの数に基づいて、NOMAで多重されるUEの数を認識することができる。各UEの電力認識部64は、これらのMCSインデックス(4と22)から複数のUEについての下りリンク送信電力の相対値(5と1)を認識するとともに、そのUEについてのMCSインデックス(4または22)からそのUEについての下りリンク送信電力の相対値(5または1)を認識する。また、電力認識部64は、相対値の合計に対するそのUEについての下りリンク送信電力の相対値の比に、既知の総下りリンク送信電力Pを乗算することにより、そのUEについての下りリンク送信電力の絶対値を計算する。より具体的には、UEが所望基地局から最も遠隔にあると位置認識部62が認識する場合、そのUEの電力認識部64は、そのUEについての下りリンク送信電力P
0を下記の式に従って計算する。
P
0=P*5/6
【0101】
UEが所望基地局に最も近いと位置認識部62が認識する場合、そのUEの電力認識部64は、そのUEについての下りリンク送信電力P
1を下記の式に従って計算する。
P
1=P*1/6
【0102】
NOMAで多重されるUEの数が3以上の場合でも、これらの相対値に基づいて、電力認識部64は、そのUEについての下りリンク送信電力の絶対値を計算することができる。
【0103】
この例において、MCSインデックスと下りリンク送信電力の相対値の解釈の関係を更新することが可能である。基地局1の下りリンク送信電力決定部42は、例えば式(1)に従って、逐次的に下りリンク送信電力を決定するので、表8の関係が必ずしも適切はなくなることがありうる。したがって、基地局1の情報通知部40は、MCSインデックスと下りリンク送信電力の相対値の解釈の更新を指示する情報をUEに送信することが好ましい。表9は、UEに下りリンク送信電力の相対値の解釈の更新を指示するための情報の例である。このような情報は上位レイヤ信号または制御チャネル信号で基地局1からUEに通知される。このような情報を受信したUEにおいて、電力認識部64は新解釈に従って下りリンク送信電力の相対値を認識する。
【表9】
【0104】
第4の実施の形態
次に本発明に係る第4の実施の形態を説明する。第4の実施の形態は、第2の実施の形態の変形であり、基地局1の情報通知部40は、各UEにUEの位置および下りリンク送信電力に関する情報を、参照信号によって通知する。第4の実施の形態に係る基地局の構成は第1の実施の形態の基地局1(
図6参照)と同じでよい。第4の実施の形態に係るUEの構成は第2の実施の形態のUE10(
図8参照)と同じでよい。
【0105】
UEの位置認識部62は、所望基地局から送信された参照信号を分析し、そのUEの位置に関連するパラメータを認識する。UEの電力認識部64は、所望基地局から送信された参照信号を分析し、そのUEについての下りリンク送信電力P
kを認識する。参照信号の送信の方式としては、
図9に示す共通参照信号を送信する方式と、
図10に示す個別参照信号を送信する方式がある。
【0106】
図9および
図10は、下りリンク送信電力が高いUE100宛のデータ信号と、下りリンク送信電力が低いUE101宛のデータ信号とがNOMAにより、同時に同じ周波数で多重送信されることを示す。
図9の例では、基地局1は、UE100のデータ信号のための下り送信電力とUE101のデータ信号のための下り送信電力の両方を使用して、同時に同じ周波数で共通参照信号を送信する。この結果、UE100は、UE100だけでなくUE101の位置および下り送信電力を知ることができ、UE101は、UE101だけでなくUE100の位置および下り送信電力を知ることができる。
【0107】
図10の例では、基地局1は、UE100のデータ信号のための下り送信電力を用いて、UE100宛の個別参照信号を送信し、UE101のデータ信号のための下り送信電力を用いて、UE101宛の個別参照信号を送信する。したがって、UE100宛の参照信号とUE101宛の参照信号は直交する。この結果、UE100は、UE100だけの位置および下り送信電力を知ることができ、UE101は、UE101だけの位置および下り送信電力を知ることができる。
【0108】
第5の実施の形態
次に本発明に係る第5の実施の形態を説明する。第5の実施の形態に係るUEの構成は第1の実施の形態のUE(
図7参照)または第2の実施の形態のUE10(
図8参照)と同じでよい。但し、各UEのIRC処理部66は、逐次干渉キャンセラ(Successive Interference Canceller、SIC)である。SICは、例えば、下記の文献に開示されている。
S. Sen, N. Santhapuri, R.R. Choudhury, and S. Nelakuditi, "Successive interference cancellation: A back-of-the-envelope perspective," in Proc. Ninth ACM Workshop on Hot Topics in Networks (HotNets-IX), Monterey, CA, Oct. 20-21, 2010。
Raphael Visoz at al, "Binary Versus Symbolic Performance Prediction Methods For Iterative MMSE-IC Multiuser MIMO Joint Decoding", in Proc. IEEE SPAWC, June 2009。
【0109】
SICは、干渉基地局(所望基地局の近隣の他の基地局)からの干渉信号成分を復調することにより干渉レプリカを生成し、干渉レプリカを無線信号から逐次的に減算する。これにより干渉を抑圧することが可能である。UEが干渉信号成分を復調するためには、干渉基地局に接続されたUEでの信号の復調に使用されるのと同じMCSをUEは知る必要がある。さらに、干渉基地局でもNOMAを適用している場合には、UEが干渉信号成分を復調するためには、そのUEへの信号と同じ周波数で干渉基地局からNOMAにより下りリンク送信されている複数のUEのうちの干渉基地局からの下りリンク送信電力が最大のUEについての下りリンク送信電力をUEは知る必要がある(そのUEへの信号と同じ周波数で干渉基地局からNOMAにより下りリンク送信されている複数のUEについてのすべての下りリンク送信電力をUEは知ることが好ましい)。
【0110】
そこで、この実施の形態では、基地局の各々はその基地局での下りリンク送信に使用する下りリンク送信電力に関する情報を近隣の他の基地局に通知する。そして、基地局の各々は、近隣の他の基地局から受信した近隣の他の基地局での下りリンク送信に使用する下りリンク送信電力に関する他基地局電力情報を、その基地局に接続された複数のUEに通知する。
【0111】
図11は、第5の実施の形態に係る基地局1の構成を示すブロック図である。第5の実施の形態に係る基地局1の構成要素は、第1の実施の形態の基地局1(
図6参照)と同じでよい。また第5の実施の形態に係る基地局1は、第1〜第4の実施の形態のいずれかと同様に動作する。さらに、下りリンク送信電力決定部42は、この基地局を所望基地局とするUEのための下りリンク送信電力を決定すると、これらの下りリンク送信電力を示す情報を、基地局間通信部36を介して、近隣の他の基地局に通知する。下りリンク送信電力決定部42は、これらの下りリンク送信電力のうち最大の下りリンク送信電力のみを示す情報を近隣の他の基地局に通知してもよい。
【0112】
基地局間通信部36は、近隣の他の基地局から近隣の他の基地局での下りリンク送信に使用する下りリンク送信電力に関する情報を受信する。この情報に基づいて、情報通知部40は、近隣の他の基地局での下りリンク送信に使用する下りリンク送信電力に関する他基地局電力情報を生成する。情報通知部40は、他基地局電力情報通知部として機能し、この基地局に接続されたUEに、上位レイヤ信号または制御チャネルによって他基地局電力情報を通知する。第3の実施の形態と類似した形式で、情報通知部40は、他基地局電力情報として、干渉基地局で使用されているMCSを示す情報を各UEに通知し、各UEは干渉基地局で使用されているMCSから干渉基地局で使用されている下りリンク送信電力を認識してもよい。
【0113】
他基地局電力情報を受信したUEでは、IRC処理部66すなわちSICは、干渉基地局で使用されている下りリンク送信電力を認識し、その下りリンク送信電力に基づいて干渉レプリカを生成し、干渉レプリカを無線信号から減算することにより干渉抑圧を実行する。他の動作は、第1〜第4の実施の形態のいずれかと同様である。
【0114】
この実施の形態においては、ユーザ装置のIRC処理部がSICであって、干渉基地局がNOMAを実行する場合において、適切にSICが動作して、ユーザ装置は所望のデータ信号を復調することが可能である。
【0115】
他の変形
基地局およびUEにおいて、CPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array),DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【0116】
前記の実施の形態および変形は、矛盾しない限り、組み合わせてもよい。