(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207306
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】レーザ光によるガラス基板融着方法及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20170925BHJP
C03B 23/203 20060101ALI20170925BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20170925BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20170925BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
C03C27/06 101H
C03B23/203
B23K26/00 G
B23K26/21 G
B23K26/21 W
B23K26/00 N
C03C23/00 D
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-178975(P2013-178975)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-48254(P2015-48254A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 政直
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲平
(72)【発明者】
【氏名】清水 政二
【審査官】
吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0107525(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0247063(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0321903(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0100058(US,A1)
【文献】
特開2008−062263(JP,A)
【文献】
特開平08−011224(JP,A)
【文献】
特開2007−008808(JP,A)
【文献】
特開2000−225483(JP,A)
【文献】
特開2013−112532(JP,A)
【文献】
実開昭54−051955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/06
C03B 23/20 − 23/24
B23K 26/00 − 26/74
E06B 3/66 − 3/667
C03C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させるガラス基板の融着方法であって、
第1ガラス基板をワークテーブル上に載置する第1工程と、
前記第1ガラス基板に波長が2.7μm以上6.0μm以下のレーザ光を照射して前記第1ガラス基板の表面に所定高さの凸部を形成する第2工程と、
前記第1ガラス基板の前記凸部が形成された表面に第2ガラス基板を重ね合わせる第3工程と、
凸部に前記波長を有するレーザ光を照射して前記凸部先端部と前記第2ガラス基板とを融着する第4工程と、
を備えたレーザ光によるガラス基板融着方法。
【請求項2】
前記第2工程及び前記第4工程では、波長が2.7μm以上5.0μm以下のレーザ光をガラス基板に対して照射する、請求項1に記載のレーザ光によるガラス基板融着方法。
【請求項3】
前記第2工程及び前記第4工程では、前記レーザ光を照射しながら融着予定ラインに沿って走査する、請求項1又は2に記載のレーザ光によるガラス基板融着方法。
【請求項4】
前記第2工程及び前記第4工程では、連続発振のレーザ光をガラス基板に対して照射する、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ光によるガラス基板融着方法。
【請求項5】
前記第2工程及び前記第4では、繰り返し周波数が1MHz以上の擬似連続発振のレーザ光をガラス基板に対して照射する、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ光によるガラス基板融着方法。
【請求項6】
前記第2工程及び前記第4工程では、繰り返し周波数が10kHz以上のパルスレーザ光をガラス基板に対して照射する、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ光によるガラス基板融着方法。
【請求項7】
前記第3工程では、前記第2ガラス基板を前記第1ガラス基板に対して押圧することなく重ね合わせる、請求項1から6のいずれかに記載のレーザ光によるガラス基板融着方法。
【請求項8】
前記第2工程及び前記第4工程では、Er:Y2O3、Er:ZBLAN、Er:YSGG、Er:GGG、Er:YLF、Er:YAG、Dy:ZBLAN、Ho:ZBLAN、CO、Cr:ZnSe、Cr:ZnS、Fe:ZnSe、Fe:ZnS、半導体レーザの中赤外のレーザ光群の中から選択されたいずれかのレーザ光をガラス基板に対して照射する、請求項1から7のいずれかに記載のレーザ光によるガラス基板融着方法。
【請求項9】
前記第1及び第2ガラス基板はレーザ光の内部吸収率が5%以上95%以下である、請求項1から8のいずれかに記載のレーザ光によるガラス基板加工方法。
【請求項10】
重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させるレーザ加工装置であって、
ガラス基板が載置されるワークテーブルと、
波長が2.7μm以上6.0μm以下のレーザ光を発振するレーザ発振器と、
前記ワークテーブルに載置された第1ガラス基板の表面に前記レーザ発振器からのレーザ光を照射して、前記第1ガラス基板の表面に所定高さの凸部を形成するとともに、前記第1ガラス基板の前記凸部が形成された表面に第2ガラス基板が重ね合わされた状態において前記凸部に前記波長を有するレーザ光を照射して前記凸部先端部と前記第2ガラス基板とを融着するレーザ光照射機構と、
を備えたレーザ加工装置。
【請求項11】
前記レーザ発振器は波長が2.7以上5.0μm以下の中赤外光のレーザ光を発振する、請求項10に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記レーザ光照射機構からのレーザ光を前記ガラス基板に対して相対的に移動させて、レーザ光を融着予定ラインに沿って走査する走査機構をさらに備えた請求項10又は11に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記レーザ発振器は前記レーザ光を連続発振する、請求項10から12のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記レーザ発振器は繰り返し周波数が1MHz以上のレーザ光を擬似連続発振する、請求項10から12のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
前記レーザ発振器は繰り返し周波数が10kHz以上のパルスレーザ光を発振する、請求項10から12のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項16】
前記レーザ発振器は、Er:Y2O3、Er:ZBLAN、Er:YSGG、Er:GGG、Er:YLF、Er:YAG、Dy:ZBLAN、Ho:ZBLAN、CO、Cr:ZnSe、Cr:ZnS、Fe:ZnSe、Fe:ZnS、半導体レーザの中赤外のレーザ光群の中から選択されたいずれかのレーザ光をガラス基板に対して照射する、請求項10から15のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板融着方法、特に、重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させるガラス基板融着方法及びそれを用いたレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、IT機器用の装置においては、2枚のガラス基板を重ね合わせたデバイスが用いられている。このような積層された2枚のガラス基板を接合するための方法及び装置が、特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1に示されたガラス基板の接合方法では、まず、バックプレートとしてのガラス基板の表面にフリットを予備焼結することによってフリット壁が形成される。そして、このフリット壁が形成されたバックプレートに、カバープレートとしてのガラス基板を重ね合わされる。その後、フリット壁にレーザ光が照射される。これにより、フリット壁がレーザ光により加熱されて難化し、フリット壁がバックプレートとカバープレートの両方に接合し、2枚のプレートが接合される。
【0004】
また、特許文献2には、短パルスレーザ光を用いて2枚のガラス基板を接合する方法が示されている。ここでは、2枚のガラス基板の隙間近傍に高エネルギで短パルスのレーザ光が集光され、多光子吸収を起こすことによって、2枚のガラス基板が接合される。
【0005】
さらに、特許文献3では、特許文献2と同様に、短パルスレーザ光により多光子吸収現象を生成させ、2枚のガラス基板を接合する方法が示されている。ここでは、まず、2枚のガラス基板を積層するとともに、互いが接近する方向に圧力が付与される。次に、2枚のガラス基板の間でアブレーションが生じないように、その間隙がレーザ光の中心波長の1/4程度以下となるようにして互いに当接させ、レーザ光の焦点を2枚のガラス基板の当接部近傍に位置させて短パルスレーザ光が照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2012−533853号公報
【特許文献2】国際公開2011/115242号公報
【特許文献3】特許第4709482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法では、一旦フリットをバックプレートの表面に予備焼結する必要がある。このフリットの予備焼結のために、カバープレート又はフリットをオーブン又は炉内に入れて過熱する必要があり、工程が煩雑になる。
【0008】
また、特許文献2及び特許文献3の方法では、短パルスレーザ光が用いられるが、短パルスレーザ光は高価である。また、この特許文献2及び3の方法では、多光子吸収現象を生成させるために、レーザ光のスポット径を小さくする必要があり、このため、集光光学系と焦点位置制御のために複雑な装置が必要となる。
【0009】
本発明の課題は、簡単な工程及び光学系を用いてガラス基板を融着できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させる方法であって、以下の工程を備えている。
【0011】
第1工程:第1ガラス基板をワークテーブル上に載置する。
【0012】
第2工程:第1ガラス基板に波長が2.7μm以上6.0μm以下のレーザ光を照射して第1ガラス基板の表面に所定高さの凸部を形成する。
【0013】
第3工程:第1ガラス基板の凸部が形成された表面に第2ガラス基板を重ね合わせる。
【0014】
第4工程:凸部にレーザ光を照射して凸部先端部と第2ガラス基板とを融着する。
【0015】
この方法では、まず、ワークテーブルに載置された第1ガラス基板に波長が2.7μm以上6.0μm以下のレーザ光が照射され、これにより第1ガラス基板の内部が加熱され、レーザ光が照射された部分が溶融して膨張し、第1ガラス基板表面に凸部が形成される。次に、この凸部が形成された第1ガラス基板に第2ガラス基板が重ね合わされる。そして、凸部が形成された部分に、先のレーザ光と同じレーザ光が照射される。これにより、凸部先端部と第2ガラス基板とが溶融し、第1ガラス基板と第2ガラス基板とが溶融される。
【0016】
ここでは、フリットを用いることなく、かつ凸部を形成する工程及び2つのガラス基板を融着する工程において同じレーザ光を用いることができ、融着のための工程が簡単になる。また、多光子吸収現象を用いることなく2つのガラス基板を融着させるので、集光位置を高精度に制御する必要がなく、装置構成が簡単になる。
【0017】
本発明の第2側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1側面の方法において、第2工程及び第4工程では、波長が2.7μm以上5.0μm以下のレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【0018】
ここでは、ガラスに対する透過率が比較的高い中赤外のレーザ光が用いられるので、レーザ光が照射される一方のガラス基板の厚さが比較的厚い場合でも、他方のガラス基板までレーザ光が届き、安定してガラス基板を融着させることができる。
【0019】
本発明の第3側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1又は第2側面の方法において、第2工程及び第4工程では、レーザ光を照射しながら融着予定ラインに沿って走査する。
【0020】
ここでは、2つのガラス基板を、連続した融着予定ラインに沿って融着することができる。したがって、2つのガラス基板の間に形成された空間を封止できる。
【0021】
本発明の第4側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第3側面のいずれかの方法において、第2工程及び第4工程では、連続発振のレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【0022】
ここでは、連続発振のレーザ光が用いられるので、融着予定ラインに沿って均一な連続する溶融部を形成でき、2つのガラス基板を簡単にかつ強固に融着することができる。
【0023】
本発明の第5側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第3側面のいずれかの方法において、第2工程及び第4では、繰り返し周波数が1MHz以上の擬似連続発振のレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【0024】
ここでは、擬似連続発振のレーザ光が用いられるので、連続発振のレーザ光と同様にほぼ均一な連続する溶融部を簡単に形成することができる。
【0025】
本発明の第6側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第3側面のいずれかの方法において、第2工程及び第4工程では、繰り返し周波数が10kHz以上のパルスレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【0026】
ここでは、繰り返し周波数が10kHz以上のパルスレーザ光が用いられるので、パルスレーザの1パルスごとに形成された各溶融部を互いに重ねて連続させた溶融部を形成できる。
【0027】
本発明の第7側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第6側面のいずれかの方法において、第3工程では、第2ガラス基板を第1ガラス基板に対して押圧することなく重ね合わせる。
【0028】
ここでは、2枚のガラス基板を互いに圧接する必要がなく、装置構成が簡単になる。
【0029】
本発明の第8側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第7側面のいずれかの方法において、第2工程及び第4工程では、Er:Y
2O
3、Er:ZBLAN、Er:YSGG、Er:GGG、Er:YLF、Er:YAG、Dy:ZBLAN、Ho:ZBLAN、CO、Cr:ZnSe、Cr:ZnS、Fe:ZnSe、Fe:ZnS、半導体レーザの中赤外のレーザ光群の中から選択されたいずれかのレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【0030】
本発明の第9側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1から第8側面のいずれかの方法において、ガラス基板はレーザ光の内部吸収率が5%以上95%以下である。
【0031】
本発明の第10側面に係るレーザ光によるガラス基板加工装置は、重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させる装置である。この装置は、ガラス基板が載置されるワークテーブルと、レーザ発振器と、レーザ光照射機構と、を備えている。レーザ発振器は波長が2.7μm以上6.0μm以下のレーザ光を発振する。レーザ光照射機構は、ワークテーブルに載置された第1ガラス基板の表面にレーザ発振器からのレーザ光を照射して、第1ガラス基板の表面に所定高さの凸部を形成する。また、このレーザ光照射機構は、第1ガラス基板の凸部が形成された表面に第2ガラス基板が重ね合わされた状態において凸部にレーザ光を照射して凸部先端部と第2ガラス基板とを融着する。
【0032】
本発明の第11側面に係るレーザ加工装置は、第10側面の装置において、レーザ発振器は波長が2.7以上5.0μm以下の中赤外光のレーザ光を発振する。
【0033】
本発明の第12側面に係るレーザ加工装置は、第10又は第11側面の装置において、レーザ光照射機構からのレーザ光をガラス基板に対して相対的に移動させて、レーザ光を融着予定ラインに沿って走査する走査機構をさらに備えている。
【0034】
本発明の第13側面に係るレーザ加工装置は、第10から第12側面のいずれかの装置において、レーザ発振器はレーザ光を連続発振する。
【0035】
本発明の第14側面に係るレーザ加工装置は、第10から第12側面のいずれかの装置において、レーザ発振器は繰り返し周波数が1MHz以上のレーザ光を擬似連続発振する。
【0036】
本発明の第15側面に係るレーザ加工装置は、第10から第12側面のいずれかの装置において、レーザ発振器は繰り返し周波数が10kHz以上のパルスレーザ光を発振する。
【0037】
本発明の第16側面に係るレーザ加工装置は、第10から第15側面のいずれかの装置において、レーザ発振器は、Er:Y
2O
3、Er:ZBLAN、Er:YSGG、Er:GGG、Er:YLF、Er:YAG、Dy:ZBLAN、Ho:ZBLAN、CO、Cr:ZnSe、Cr:ZnS、Fe:ZnSe、Fe:ZnS、半導体レーザの中赤外のレーザ光群の中から選択されたいずれかのレーザ光をガラス基板に対して照射する。
【発明の効果】
【0038】
以上のような本発明では、簡単な工程及び光学系を用いて2枚のガラス基板を簡単に融着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の一実施形態によるレーザ加工装置の概略構成図。
【
図2】無アルカリガラスに対するレーザ光の波長と透過率との関係を示す図。
【
図3】ソーダガラスに対するレーザ光の波長と透過率との関係を示す図。
【
図4】ガラス基板に形成された凸部の顕微鏡写真及びその概念図。
【
図5】レーザ光の焦点位置及び走査速度と凸部寸法との関係を示す表。
【
図6】2枚のガラス基板を重ねて融着させた場合の模式図及び断面を示す顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[レーザ加工装置]
本発明の一実施形態によるレーザ加工装置を
図1に示す。このレーザ加工装置は、ガラス基板Gが載置されるワークテーブル1と、レーザ発振器2と、光学系3と、走査機構としてのテーブル移動機構4と、を備えている。
【0041】
レーザ発振器2は、波長が2.7μm以上6.0μm以下の中赤外光のレーザ光を発振する。ここで、レーザ発振器2としては、Er:Y
2O
3、Er:ZBLAN、Er:YSGG、Er:GGG、Er:YLF、Er:YAG、Dy:ZBLAN、Ho:ZBLAN、CO、Cr:ZnSe、Cr:ZnS、Fe:ZnSe、Fe:ZnS、半導体レーザの中赤外のレーザ光群の中から選択されたレーザ光で、前述のように、波長が2.7〜6.0μmのものを出射するものであればよい。また、ここでは、連続発振のレーザ光を出射する。
【0042】
光学系3は、複数の反射ミラー6a,6b,6c及び集光レンズ7を含んでいる。集光レンズ7は、一例としてガラス基板Gの表面近傍にレーザ光を集光させるように設定されている。
【0043】
テーブル移動機構4は、互いに直交するX及びY方向にワークテーブル1を移動させるための機構である。このテーブル移動機構4によって、レーザ光を融着予定ラインに沿って走査することができる。
【0044】
[ガラス基板の加工方法:第1〜第2工程]
以上のレーザ加工装置を用いて、第1ガラス基板G1の表面に第2ガラス基板G2を重ね合わせて融着する場合は、以下の工程によって行われる。
【0045】
まず、第1ガラス基板G1をワークテーブル1上の所定位置にセットする。次に、ワークテーブル1上の第1ガラス基板G1に対して、前述のような中赤外光のレーザ光を、第1ガラス基板G1の表面近傍に集光させて照射し、さらに融着予定ラインに沿って走査する。なお、レーザ光の焦点位置点は第1ガラス基板G1の表面に限定されるものではない。
【0046】
以上のようなレーザ光の連続照射及び走査によって、第1ガラス基板G1におけるレーザ光の照射部分には、表面が膨らむように凸部が形成される。この凸部の高さ及び幅については、レーザ光の焦点位置及び走査速度によって調整することが可能である。
【0047】
特に、波長3μm程度の中赤外光のレーザ光を利用することによって、レーザ光はガラス基板の内部まで透過しながら吸収される。このため、ガラス基板の表面から内部まで、熱分布の偏りが少なくなり、ガラス基板の熱損傷を抑えて、レーザ光照射部分に容易に所定の高さの凸部を形成することができる。
【0048】
<透過率と波長>
図2に、板厚が0.2mmの無アルカリガラス(例えばOA10(製品名:日本電気硝子社製))のガラス基板に対するレーザ光の波長と透過率との関係を示している。また、
図3に、板厚が0.5mmのソーダガラスのガラス基板に対するレーザ光の波長と透過率との関係を示している。
【0049】
図2から明らかなように、板厚0.2mmの無アルカリガラスに対しては、例えば波長が10.6μmのCO2レーザでは透過率が「0」であるので、レーザ光は基板の表面で吸収されることになる。また、波長が1μmのYAGレーザや、波長が532nmのグリーンレーザでは、透過率が90%以上であり、透過しない約10%のレーザ光もそのほとんどは表面で反射され、基板内部に吸収されない。そして、波長が2.8μmのレーザ光であれば、基板内部でほぼ均一に吸収され、基板内部を溶融させて、ガラス基板の表面に凸部を形成することができる。
【0050】
また、
図3の板厚0.5mmのソーダガラスでは、波長が2.8μmのレーザ光では、基板の内部までレーザ光が透過しながら吸収され、したがって
図2の無アルカリガラスと同様に、基板内部を溶融させて、表面に所定高さの凸部を形成することができる。
【0051】
なお、
図2と
図3に示したグラフの透過率の値の差は、試料の厚さの違いに起因するものであり、厚さが同じであれば、無アルカリガラスとソーダガラスとで透過率に差は無いと思われる。
【0052】
以上のことから、波長が2.7μm以上6.0μm以下のレーザ光を用いることによって、多くのガラス基板(特にレーザ光の内部吸収率が5%以上95%以下のガラス基板)に対して、レーザ光の照射部分に、容易に所定高さの凸部を形成することができると推察される。また、レーザ光を照射する基板の厚さが比較的厚い場合でも、波長2.7μm以上5.0μm以下のレーザ光を用いることにより、ガラス基板上に凸部を形成することができる。
【0053】
<実験例:凸部の形成>
ガラス基板に前述のような中赤外光のレーザ光を照射した場合に、ガラス基板表面に凸部が形成される様子を
図4(a)及び(b)に示している。
図4(a)はレーザ光照射部分の断面の顕微鏡写真であり、
図4(b)はその概念図である。この実験におけるガラス基板及びレーザ照射条件は以下の通りである。
【0054】
基板:無アルカリガラス(OA10=製品名:日本電気硝子社製)、サイズ=100mm×125mm×t0.2mm
レーザ光:Er:ZBLANファイバレーザ、波長2.7μm、出力7W、連続発振
この実験では、レーザ光を
図4の紙面垂直方向に速度を変えて走査した。この結果、走査ラインに沿って凸部は連続して形成され、その寸法は、幅10μm×高さ1μm〜幅40μm×高さ8μmであった。ここで、ガラス基板には、
図4(b)の概念図で示すように、膨張部、変質部、熱影響部の3つの層が形成されていると考えられる。
【0055】
図5に、焦点位置を+0.4mm〜−0.4mmに変化させ、走査速度を15mm/s〜35mm/sに変化させた場合に、凸部がどのように形成されるかをまとめて示している。図において、「+0.4mm」〜「−0.4mm」はレーザ光の焦点位置であり、「0mm」がガラス基板の表面、「−」は基板内部の位置であることを示している。表中の数値単位は「μm」である。また、図において、「F」は高さのゆらぎ幅、すなわち、膨張幅の中心に設定した測定ライン(加工ラインの中心線とほぼ同じ)における高さの最大値と最小値との差である。
【0057】
(a)レーザ光の焦点位置を基板表面(0mm)に設定した場合が、最も膨張しやすい。しかし、焦点位置が+0.4mm〜−0.4mmの範囲であれば、レーザ光の走査速度を適切に制御することによって、所望の高さの凸部をガラス基板の表面に形成することができる。
【0058】
(b)走査速度を高くすると、加工された跡は観察できるが膨張による凸部は形成されない。すなわち、凸部を形成するためには、ある程度の熱量を基板に与える必要がある。
【0059】
(c)レーザ光の焦点位置を「−」(基板内部)に設定した方が、膨張するサイズは大きい。なお、
図5ではガラスの屈折率を考慮していないために、実際の焦点位置を示しているわけではない。
【0060】
(d)レーザ光の焦点位置がガラス基板の表面から離れると、高さのゆらぎ幅が大きくなる。
【0061】
以上から、前述のような波長のレーザ光を用いて、焦点位置をガラス基板表面の近傍に設定すれば、走査速度を制御することによって、所望の高さの凸部を安定してガラス基板表面に形成できることがわかる。
【0062】
[ガラス基板の加工方法:第3〜第4工程]
以上のようにして凸部の形成された第1ガラス基板G1に第2ガラス基板G2を重ねあわせ、凸部の形成と同様のレーザ光照射条件で凸部にレーザ光を照射する。これにより、凸部先端部と第2ガラス基板G2とが融着して接合される。
【0063】
<実験例:重ねあわせ及び融着>
図6に、凸部Bの形成された第1ガラス基板G1に第2ガラス基板G2を重ねあわせ、凸部Bにレーザ光を照射した場合の模式図(a)及び実験例(b)を示している。
【0064】
なお、この実験例におけるレーザ光の焦点位置は、第1ガラス基板1の表面(凸部Bが形成された側の面)であり、走査速度は10mm/sである。
【0065】
以上の加工によって、第1ガラス基板G1の表面に形成された凸部Bの先端部と第2ガラス基板G2の裏面(第1ガラス基板G1と対向する面)とが融着され、両ガラス基板G1,G2の間に7μmの隙間が確認された。
【0066】
[用途]
以上のような方法は、積層された2枚のガラス基板を、その間に所定の隙間をあけて融着し、封止する場合に有効である。すなわち、融着ラインを連続させ、かつ閉じることによって、凸部によって囲まれた内部空間が封止されることになる。
【0067】
なお、凸部を2枚のガラス基板の間のスペーサ及び封止部として機能させてもよいし、凸部は封止のみに用いて、その内部に別のスペーサを配置して2枚のガラス基板を融着させてもよい。
【0068】
[特徴]
(1)2枚のガラス基板を、フリットを用いることなく融着することができる。
【0069】
(2)凸部を形成する工程及び2つのガラス基板を融着する工程において、同じレーザ光を用いることができ、融着のための工程が簡単になる。
【0070】
(3)集光位置を高精度に制御する必要がなく、装置構成が簡単になる。
【0071】
(4)中赤外光のレーザ光をガラス基板に照射することによって、レーザ光の出力を制御したり、後工程で加熱、押圧したりすることなく、所望の高さの凸部を精度よく形成することができる。
【0072】
(5)レーザ光の焦点位置及び走査速度を調整することにより、凸部の高さをコントロールすることができる。
【0073】
(6)レーザ光はガラス基板の内部まで浸透しながら吸収され、このためガラス基板の表面から内部にわたって均一に加熱される。したがって、ガラス基板の熱損傷を抑制しつつ、ガラス基板の表面に凸部を形成することができる。
【0074】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0075】
前記実施形態では、連続発振のレーザ光を用いたが、繰り返し周波数1MHz以上の擬似連続発振のレーザ光や、繰り返し周波数が10kHz以上のパルスレーザ光を照射するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 ワークテーブル
2 レーザ発振器
3 光学系
4 テーブル移動機構
B 凸部
G1,G2 ガラス基板