(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1は本発明の一実施形態に係る天井構造A1の説明図である。天井構造Aは、天井下地材1と、天井パネル2と、支柱3と、複数の支線4と、を備える。
【0010】
天井下地材1は吊り具5によって、天井部躯体Bから吊り下げられている。天井部躯体Bは例えば直上階の床スラブである。吊り具5は、ネジ棒等の鋼棒51とハンガ52とを備える。鋼棒51の上端は天井部躯体Bに固定され、下端は例えばナットによりハンガ52に固定されている。
【0011】
天井下地材1は、複数の野縁受け10と複数の野縁11とを備える。野縁受け10と野縁11とは互いに直交するように水平に配設され、その交差部においてクリップ11により互いに接合される。野縁受け10はハンガ52に係止され、吊り具5により天井部躯体Bから吊り下げられている。野縁受け10及び野縁11は例えば溝形鋼である。
図1の例では、サイズの異なる野縁11が用いられている。
【0012】
天井パネル2は天井下地材1に支持されている。天井パネル2は例えばタッピングネジにより野縁11に固定される。
【0013】
支柱3は、天井部躯体Bと天井パネル2とに接続されている。複数の支線4は、支柱3と天井部躯体Bとの間に張設されている。本実施形態は支柱支線方式により、支柱3を天井部躯体Bに支持させる構成である。支線4は、ワイヤ等の線材或いはネジ棒等の鋼棒を採用することができる。支線4は、その一端が天井部躯体Bに、他端が支柱3に接続される。支線4の途中部位或いは端部に、ターンバックル等の緊張具41を設けることにより緊張部41によって緊張される。支線4は支柱3から互いに異なる方向に延びている。複数の支線4は例えば支柱3を中心として平面視で放射状に延びる。支線4の数は3つ以上(3方向以上)が好ましい。
【0014】
支柱3は、支柱部材31と、接続金物32と、接続金物33とを備え、上下の長さが調整可能である。接続金物33は複数の金具331乃至333を備える。
図2及び
図3を参照して支柱3の構成について詳述する。
図2は支柱3の部分断面図である。
図3(A)は金具331の平面図、正面図及び底面図である。
図3(B)は金具332の平面図、正面図及び底面図である。
図3(C)は金具333の平面図及び正面図である。
【0015】
支柱部材31は上下に延びる棒状の部材であり、本実施形態の場合、断面円形の鋼材であり、特に、鋼管とすることで軽量化を図っている。支持本体31は角型鋼管等であってもよい。支柱部材31の上部外周にはネジ部31aが形成されている。なお、より長い全長の支柱部材31が必要な場合は、複数の部材をジョイントで連結して支柱部材31としてもよい。
【0016】
接続金物32は、ネジ部31aと螺合するネジ部を有する筒部32aと、ベースプレート32bとを備える。ベースプレート32bはボルト等の締結部材で天井部躯体Bに固定され、支柱部材31は接続金物32を介して天井部躯体Bに接続されることになる。
【0017】
接続金物33は支柱部材31の下端部に設けられ、支柱部材31と天井パネル2とを接続する。本実施形態の場合、接続金物33は更に、支柱3の全長調整機構と支線4の接続構造とを備えている。
【0018】
金具331は、支柱部材31の下端部と接続される支柱部材接続部を構成すると共に、複数の支線4が接続される支線接続部を構成している。金具331は、支線4が接続される円盤状のプレート3312と、プレート3312から上方に延びる接続部3311と、プレート3312から下方に延びる接続部3313と、を備えている。
【0019】
接続部3311は支柱部材31の下端部を挿入可能な円筒状をなしており、その周壁には、互いに対向する位置に一対のネジ孔3311aが形成されている。支柱部材31の下端部を接続部3311に挿入した状態で、ネジ孔3311aにネジ6を締結して支柱部材31の周面を押圧することで、支柱部材31と金具331とが互いに固定される。この固定方式は、固定位置を上下に調整可能であるという利点がある。なお、これらの固定方法は、他の方式も採用可能であり、例えば、支柱部材31の上端部と接続金物32との固定方式のようにネジによる締結であってもよい。
【0020】
プレート3312には、支線4を接続する複数の接続孔3312aが形成されている。接続孔3312aは周方向に複数部位に形成されており、支線4の張設部位を選択する自由度を高めた構成としている。なお、本実施形態では、支線4との接続構造をより簡易にする点で接続孔3312aを採用したが、他の接続構造(例えばネジ締結)も採用可能である。
【0021】
接続部3313は円筒状をなしており、その内周面には金具332との接続用のネジ部3313aが形成されている。
【0022】
金具332は、支柱3の全長調整機構を構成している。金具332は円盤状のプレート3322と、プレート3322から上方に延びる接続部3321と、プレート3322から下方に延びる接続部3324と、プレート3322の下面と接続部3324の上部周面とに接続された複数のリブ3323と、を備える。
【0023】
接続部3321は本実施形態の場合、外周面にネジ部が形成された丸鋼状をなし、金具331のネジ部3313aに挿入されて螺合する。接続部3324は本実施形態の場合、上部を除いて外周面にネジ部が形成された丸鋼状をなし、金具333のネジ部3331aと螺合する。そして、ネジ部3313aに対する接続部3321のネジ込み量又はネジ部3331aに対する接続部3324のネジ込み量によって、金具331と金具333との間の上下方向の距離を可変とする。これにより支柱3の全長が伸縮し、天井パネル2のレベル調整を行える。接続部3321とネジ部3313aの組と、接続部3324とネジ部3313aの組とで、ネジを互いに逆ネジとしてもよい。
【0024】
複数のリブ3323は、金具332の補強を行うと共に、天井パネル2のレベル調整を行うために、作業者が工具或いは手で金具332を回す際に利用する操作部としても機能する。
【0025】
本実施形態では、支柱3の全長調整機構をネジ込み量により調整する機構としたが、他の方式も採用可能である。例えば、一方の部材に複数の高さ選択用の孔を上下方向に設け、他方の部材に一つの係合孔を設け、高さ選択用の孔の一つと、係合孔とにピンを差し込む構成でもよい。
【0026】
金具333は、天井パネル2と接続されるパネル接続部を構成する。金具333は、ベースプレート3333と、ベースプレート3333に立設された接続部3331と、ベースプレート3333の上面と接続部3331の周面とに接続された複数のリブ3332と、スペーサ3334と、を備える。
【0027】
ベースプレート3333は板状をなしており、本実施形態の場合、平面視で方形をなしている。ベースプレート3333は例えばタッピングネジにより天井パネル2と接続される。タッピングネジにより天井パネル2と接続する場合、更に、ベースプレート3333の下面と天井パネル2とを両面粘着テープ等の接着剤で固定することが好ましい。これにより、天井パネル2から支柱3への水平力の伝達がスムーズになり、応力集中を軽減でき、一か所で大面積の耐震補強が可能となる。
【0028】
接続部3331は円筒状をなしており、その内周面には、金具332の接続部3324が螺合するネジ部3331aが形成されている。複数のリブ3332は金具333の強度を補強する。スペーサ3334は、ベースプレート3333上面に固定されており、野縁受け10とベースプレート3333との間の隙間を埋める部材であり、本実施形態の場合、角型鋼管である。スペーサ3334を野縁受け10とベースプレート3333との間の緩衝材として機能させることができる。
【0029】
係る構成からなる天井構造Aでは、支柱3と複数の支線4とによる支柱支線式の構造で、天井下地材1を介さずに天井パネル2の耐震補強を行う構造としている。支線4の緊張力を高めても天井下地材1にその負荷がかかることがなく、天井パネル2から水平力を天井下地材1を介さずに天井部躯体Bに伝達する構造であるため、天井下地材1に対する応力集中を抑制できる。よって、天井下地材1の構成に大きく左右されずに水平力に対する耐久性を向上することができる。
【0030】
また、天井下地材1に対する応力集中を抑制できるので、支柱3一か所でより大面積の耐震補強が可能となる。支線4を張る方向は比較的自由度が高いため、天井裏に設備機器や配管類が存在していたとしても、その影響を受けにくく、施工性がよい。
【0031】
接続金物33に支柱3の全長調整機構を設けたことで、天井パネル2のレベル調整が可能であり、特に、支線4の緊張後にもレベル調整が可能である。
【0032】
天井懐が大きい場合でも、支柱3と支線4の長さを調整するのみで基本的な仕口が同一であり、建物構造に対する適用柔軟性が高い構造を提供できる。
【0033】
天井下地材1の構成に大きく左右されないことから、天井下地材1及び天井パネル2を備える既設天井の補強構造としても有効であり、標準仕様の既設天井を全面的に撤去することなく、支柱3及び支線4を増設することでその耐震補強を行える。
【0034】
<第2実施形態>
第1実施形態では、支線接続部を構成するプレート3312が、支柱部材31側に位置しているが、天井パネル2側に支線接続部を位置させてもよい。つまり、支柱部材31よりも天井パネル2に近い部位に支線接続部を位置させてもよい。
図4(A)はその一例を示し、支柱3に代わる本実施形態の支柱3’の部分断面図である。
図4(B)は金具333に代わる本実施形態の金具333’の平面図及び正面図である。以下、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0035】
支柱3’は、支柱部材31’と、接続金物33’とを備え、上下の長さが調整可能である。支柱部材31’は、接続金物32に代わる接続金物32’と、金具331に代わる金具331’と、を一体に備えている。支柱部材31’は上下に延びる棒状の部材であり、本実施形態の場合、断面角形の鋼材である。なお、より長い全長の支柱部材31’が必要な場合は、複数の部材をジョイントで連結して支柱部材31’としてもよい。
【0036】
接続金物32’は支柱部材31’の上端部に固着されており、ベースプレート32bと支柱部材31’の側面との間にリブ32cが接続されている。金具331’は支柱部材31’の下端部に固着されている。金具331’はプレート3312に代わる円盤状のプレート3312’を備える。プレート3312’には支線4が接続されず、したがって、支線4の接続孔は形成されていない。プレート3312’と支柱部材31’の側面との間にリブ3314が接続されている。
【0037】
接続部3313は第1実施形態と同様の構成であり、プレート3312’から下方に延びている。ただし、本実施形態ではプレート3312’と接続部3313の周面との間にリブ3314が接続されている。
【0038】
接続金物33’は、本実施形態の場合、2部材構成となっており、第1実施形態と同じ構成の金具332と、金具333にプレート3335を一体に設けた金具333’と、から構成される。プレート3335は、複数の支線4が接続される支線接続部を構成しており、支線4を接続する複数の接続孔3335aが形成されている。第1実施形態の接続孔3335aと同様、接続孔3335aは周方向に複数部位に形成されており、支線4の張設部位を選択する自由度を高めた構成としている。無論、第1実施形態でも述べたとおり、接続孔3335aに代えて他の接続構造(例えばネジ締結)も採用可能である。
【0039】
係る構成からなる支柱3’では、天井パネル2側に支線接続部(333’)を位置させていることから、支柱3’に対する支線4の緊張力の作用点が天井パネル2に近接させることができ、水平力作用時に支柱部材31’の変形を抑制し得る。なお、本実施形態では、支線接続部(333’)の位置のみならず、接続金物32’や支柱部材31’の構成も第1実施形態と異なる構成としたが、例えば、第1実施形態において、プレート3312を金具331から除き、金具333に代えて金具333’を採用する構成も採用可能である。
【0040】
<第3実施形態>
接続金物を実質的に一部材から構成してもよい。
図5(A)はその一例を示し、支柱3或いは3’に代わる本実施形態の支柱3”の部分断面図である。
図5(B)は金具333或いは333’に代わる本実施形態の金具333”の平面図及び正面図である。
図6(A)は本実施形態における支柱部材31”と接続金物33”(金具333”)との接続部分の斜視図であり、
図6(B)は支柱部材31”下部の各側面図である。以下、第1及び第2実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0041】
支柱3’は、支柱部材31”と、接続金物33”とを備える。本実施形態の場合、支柱部材31”は、第2実施形態と同様の接続金物32’を一体に備える。支柱部材31”は上下に延びる棒状の部材であり、本実施形態の場合も、断面角形の鋼材である。なお、より長い全長の支柱部材31’が必要な場合は、複数の部材をジョイントで連結して支柱部材31’としてもよい。
【0042】
接続金物33”は、本実施形態の場合、実質的に1部材構成となっており、第2実施形態の金具333’に類似の金具333”から構成される。
【0043】
金具333”と第2実施形態の金具333’との違いは、接続部にある。金具333”の接続部3331’は、支柱部材31”に対応して断面角形の鋼管としており、本実施形態では、そのサイズは支柱部材31”と同様である。その他の構成は同じである。
【0044】
接続部3331’には、接続部3331’と支柱部材31”の下端部とを接続するための下地材334が固着されている。下地材334は、本実施形態の場合、L字型のアングル材3341及び3342から構成されている。なお、アングル材以外にも、断面角形の鋼管等も採用可能である。
【0045】
アングル材3341及び3342は、略角筒型となるように組み合わされ、接続部3331’の内側に隙間がほとんどできないように、その辺部分内面に固着される。本実施形態では、溶接による固着としている。接続部3331’の各側壁には、溶接作業用の開口部3331bが設けられており、開口部3331bの周縁をアングル材3341又は3342とスポット溶接することで下地材334を接続部3331’に固着する構成としている。
【0046】
接続部3331’と支柱部材31”の下端部とは、互いの端面が接する形で下地材334を介して接続される。支柱部材31”は現場の不陸調整等により、10cm程度の全長の調整が可能である。
【0047】
支柱部材31”の下端部と下地材334とは、ここでは、タッピングネジTSにより互いに固定される。本実施形態では、支柱部材31”の下端部にタッピングネジ用の下穴h1〜h3が設けられている。下穴h1〜h3は、支柱部材31”の四側面311a〜311dにそれぞれ形成されている。タッピングネジTSの干渉を回避するため、
図6(B)に示すように、側面311a〜311d毎に下穴h1〜h3の位置(高さ)をずらしている。なお、支柱部材31”と金具333’との接続構造は、これに限られず、様々な構造を採用可能である。例えば、下地材334と、支柱部材31”及び金具333’との各固定は、いずれも溶接としてもよいし、逆に、タッピングネジを用いた固定としてもよい。
【0048】
本実施形態では、接続金物33”を実質的に1部材構成としたことで、支柱3’の剛性向上を図ることが可能である。また、角形鋼管は各種の板厚の市販品が出回っている。このため、支柱部材31”や接続部33331’としてより厚肉の鋼管が比較的簡易に採用可能であり、剛性向上を比較的簡易に図ることが可能である。