【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年6月に、日特建設株式会社が、日本コンクリート工業株式会社の承諾を得て、矢田哲也、中野亮、田中尚、伊藤康弘、山岸健治が発明した擁壁が掲載されたカタログを発行した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
先ず、
図1〜
図7を参照して第1実施形態について説明する。
図1において、本発明に係る擁壁は全体を符号100で示されている。
図1、
図2において、擁壁100は、地盤Gに建て込まれた親杭(H鋼)1と、板状パネル(軽量パネル)2と、固定金具(アングル材3、プレート4、ボルト5)と、ナットN2と、型枠6と、型枠6内に充填された中詰めコンクリート7(固化材:
図1)を有している。なお
図2では、型枠6を取り付けて、中詰めコンクリート7を充填する以前の状態が示されている。
図示はされていないが、固定金具において、アングル材3とプレート4は金属製であることを基本としているが、樹脂やFRP等の金属以外の素材で構成することも可能である
【0023】
図示の実施形態において、ボルト5は、ボルトヘッドが設けられておらず、全長に亘って雄ねじが形成されている部材、いわゆる「棒ねじ」が使用されている。
図1において、板状パネル2の右側の領域は、擁壁完成後に盛土が為される領域(いわゆる「裏側」の領域)となる。
【0024】
図示の実施形態において、親杭1はH鋼である。
図2で示すように、親杭1は型枠6の(
図2の左右方向について)概略中央に位置している。
図1、
図2において、アングル材3は親杭1(H鋼)の裏側(擁壁完成後に盛土が為される領域側)に設けられており、その両端部にボルト5が貫通している。ボルト5と螺合しているナットN2がアングル材3に隣接して設けられており、ナットN2を回転することにより、アングル材3が親杭1(H鋼)の裏側に接触した状態で固定出来る。
【0025】
図1、
図2で示すように、プレート4は、親杭1(H鋼)と板状パネル(軽量パネル)2の間の領域に配置されている。そして、親杭1(H鋼)と板状パネル(軽量パネル)2との相対位置に合わせてプレート4の位置を調節可能に構成されている。
図2において、親杭(H鋼)1との間の隙間に配置されているプレート4は、その両端部にボルト5が貫通しており、ボルト5に螺合するナットN1がプレート4に隣接して設けられている。ナットN1を回転すれば、板状パネル2と親杭(H鋼)1の表裏方向(
図2では上下方向)の相対位置を調節することが出来る。そのため、親杭(H鋼)1の建て込み精度が低く、板状パネル2と親杭(H鋼)1の表裏方向の相対位置が均一でなくても、プレート4を親杭(H鋼)1の表側(板状パネル2側)に接触した状態で配置することが出来る。
【0026】
図示の実施形態では断面L字状のアングル材3が用いられているが、平板状部材やその他の断面形状の部材を用いても良い。
また親杭1(H鋼)と板状パネル2(軽量パネル)の間に配置可能であれば、プレート4を断面L字状のアングル材やその他の断面形状の部材とすることも出来る。
【0027】
図1において、2段積みに重ねられた状態で示されている板状パネル2はコンクリート製のパネルであり、板状パネル2については
図3、
図4で詳細が示されている。
ここで、板状パネルとして、金属板を用いることも可能である。なお、板状パネル2を金属製とした場合、耐食性やコストの点で、コンクリート製パネルに対して不利となる。
また、板状パネルに繊維強化プラスティック(FRP)の板状部材を用いることも可能であり、あるいは、コンクリートと繊維強化プラスティック(FRP)を組み合わせた複合部材を用いることも可能である。
【0028】
図3、
図4において、板状パネル2は、その断面形状は(
図3参照)、中央肉厚部21と、両端のフランジ部22と、中央肉厚部21と両端部のフランジ部22を接続する傾斜部23を備えている。
図4において、白抜きの矢印Fは、擁壁完成後に盛土を充填する側(裏側)を示している。
【0029】
図3において、板状パネル2の上縁部であって、中央肉厚部21と傾斜部23と接続部近傍の2箇所には、台形の突出部24が形成されている。
一方、板状パネル2の下縁部であって、台形の突出部24の垂直方向下方の位置(2箇所)には、当該突出部24とは相補形状の凹部25が形成されている。
垂直方向に複数の板状パネル2を積み重ねる場合、下側の板状パネル2の突出部24に、上側の板状パネル2の凹部25が嵌合させることにより、上下の板状パネル2を正確に積み重ねることができる。
【0030】
板状パネル2の中央肉厚部21における裏側(盛土が充填される側)の面には、ピッチの異なる(L1、L2)2対の雌ねじが形成されたインサート26が、板状パネル2の裏側の面に開口するように上下2段に埋設されている。
図示では明瞭でないが、インサート26(例えば、鋼製インサート)には、雌ねじが形成されている。
ピッチL1のインサート26の雌ねじは、ボルト5と螺合する。そして、ピッチL2のインサート26の雌ねじは、型枠6を固定する図示しないボルトと螺合する。
【0031】
本明細書において、アングル材3、プレート4、ボルト5を「固定金具」と総称する場合がある。また上述した様に、アングル材3は断面L字状に限定されるものではなく、プレート4も平板部材に限定されるものではない。さらに、固定金具からプレート4を省略する場合も存在する。
なお、図示の実施形態ではボルト5はいわゆる「棒ねじ」であるが、ボルトヘッドを設けたボルトを適用することも可能である。
【0032】
図1、
図2で示すように、ボルト5はアングル材3とプレート4を貫通しており、ボルト5の先端は、前記板状パネル2に埋設したインサート26の雌ねじと螺合している。
図2で示すように、ナットN2をボルト5に螺合して適正トルクで締め付けることにより、板状パネル2が親杭(H鋼)1に固定される。図示はされてはいないが、ボルト5としてボルトヘッドを有するタイプのものを採用した場合には、ナットN2は不要となる。
【0033】
型枠6は断面がコ字状である。型枠6として、プレキャストの既成品を用いることが可能であるが、板金製品、その他の市販品を使用しても良い。或いは、型枠6は金属製、樹脂製であってもよい。
ここで型枠6は、埋め殺すタイプと、コンクリートが固化した時点で取り外すタイプの双方を使用することができる。
親杭(H鋼)1の大きさが複数種類存在する場合には、型枠6、アングル材3、ボルト5は、親杭(H鋼)1の大きさに基づいて選択すれば良い。
【0034】
図5を参照して、第1実施形態による擁壁構築の手順を説明する。
図5のAの工程で示すように、先ず、掘削機Mによって地盤Gに親杭(H鋼)1を埋め込むための穴Hを削孔する。ここで、穴Hの削孔に先立って、基礎(コンクリート)BCを打設する場合がある。
図5のBの工程では、削孔した穴Hに、親杭(H鋼)1を建て込む。
図5のCの工程では、削孔した穴Hに建て込んだ親杭(H鋼)1において、表側(盛土が充填されない側:
図5のCの左側)に板状パネル2を配置する。ここで、板状パネル2と親杭(H鋼)1との間には隙間が存在する。ただし、実際の施工において、親杭1と板状パネル2の間の隙間が極めて小さい場合や、親杭1と板状パネル2が当接している場合も存在する。
【0035】
図5のDの工程では、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN2を用いて、板状パネル2を親杭(H鋼)1に固定する。ここで、プレート4は板状パネル2と親杭(H鋼)1との間の隙間に配置され、アングル材3は親杭1の裏側(盛土が充填される側)に配置されている。
図5のEの工程では、断面コ字状の型枠6により、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN2により板状パネル2を親杭1に固定した部分を覆う。その際に、型枠6の断面コ字における開放した側が板状パネル2に当接するように配置して、型枠6を板状パネル2に固定する。
図5のFの工程では、板状パネル2に固定された型枠6に中詰めコンクリート(固化材:例えば生コンクリート)7を流し込み、中詰めコンクリート7の上面が型枠6の上縁に一致するまで充填する。
【0036】
図5のGの工程では、中詰めコンクリート7が固化して一体になった板状パネル2、親杭(H鋼)1、型枠6において、板状パネル2の上側に同一形状の板状パネル2を積み重ねる。
図3、
図4を参照して前述したように、下側の板状パネル2の突出部24が上側の板状パネル2の凹部25に嵌合するため、板状パネル2を上下に積み重ねた際に安定した状態となる。
【0037】
以下、
図5のDの工程〜
図5のFの工程までを繰り返し、予定した段数まで板状パネル2を積み重ねる。そして中詰めコンクリート7が固化して、所定段数まで積み重ねられた板状パネル2と親杭1が一体となったならば、
図5のHで示す工程に進む。
図5のHの工程では、擁壁100の裏側(
図5のHでは右側:擁壁100の背面側)と法面200の間の領域に盛土300を充填する。そして、笠コンクリート(図示せず)を打設する。
【0038】
図6は、型枠6内に中詰めコンクリート7を充填した状態を示している。
図6において、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2は、実線により表示されている。なお、
図6では型枠6が残存している状態を示しているが、中詰めコンクリート7が固化した後に形枠6を取り外す場合と、中詰めコンクリート7が固化した後も型枠6を残存する場合の双方が存在する。
図7は、中詰めコンクリート7が充填されなかったと仮定した場合における親杭(H鋼)1、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2を示している。
図7で示す場合(中詰めコンクリート7が充填されなかった場合)には、板状パネル2の裏側に充填される盛土の土圧が作用することに起因して、ボルト5に過大な力が作用し、アングル材3、プレート4が撓み(曲がり)、ボルト5も変形してしまう。
そのためアングル材3、プレート4、ボルト5は、係る変形が生じない程度まで断面2次モーメントを大きくして、寸法や重量を大きくしなければならない。
【0039】
それに対して、
図6で示す場合(中詰めコンクリート7が充填されている場合:第1実施形態)では、親杭(H鋼)1、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2は中詰めコンクリート7が固化することにより一体に固められている。そのため、
図6の中詰めコンクリート7が充填されていれば、土圧が作用してアングル材3、プレート4、ボルト5に過大な力がかかっても、固化した中詰めコンクリート7が変形(曲がり、撓み)を阻害するので、アングル材3、プレート4、ボルト5は変形しない。
そのため、アングル材3、プレート4、ボルト5は構造材料としての強度を有する必要がなく、土圧が作用しても変形が生じない程度まで断面2次モーメント、寸法、重量を大きくする必要がない。アングル材3、プレート4については、中詰めコンクリート7の打設圧力に耐えられる程度の強度があれば良い。ただしボルト5は、板状パネル2が破損するような大きな土圧にも耐えられる強度が必要である。
【0040】
換言すれば、図示の第1実施形態によれば、親杭(H鋼)1、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2を中詰めコンクリート7で一体化することにより、アングル材3、プレート4、ボルト5の寸法、重量、断面2次モーメントを大きくする必要がなくなり、小型化することが出来る。このことは、発明者による実験でも確認されている。
また、中詰めコンクリート7を充填することにより、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2は外気に触れず、防食性能が向上する。
【0041】
上述した構成を具備する第1実施形態によれば、地盤Gに建て込まれた親杭H鋼1に隣接して板状パネル2を配置し、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2を用いて親杭1に対して板状パネル2を固定し、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2を包囲する様に型枠6を配置し、当該型枠6内に中詰めコンクリート7を充填することを繰り返して、所望高さの擁壁100(山留め式の擁壁)を構築している。
【0042】
そして、第1実施形態の擁壁100では空洞箱型のブロックを使用する必要がなく、比較的軽量な板状パネル(軽量パネル)2と、固定金具であるアングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2、型枠6を用いて山留め壁100を造成することか出来る。そして、中詰めコンクリート7は型枠6で包囲された限定された領域(型枠6の内側の空間)のみに充填される。
ここで、空洞箱型のブロックを使用する必要がないため、第1実施形態では小型クレーンのみを使用して山留め式の擁壁を造成することが出来る。そのため、大型重機が入り込めないような狭い施工現場でも山留め壁を造成することが出来る。
【0043】
また、空洞箱型ブロックを用いた従来技術では、空洞箱型ブロックの内側空間のサイズが決まっているので、使用可能な親杭のサイズも決まってしまう。そのため、作用する土圧が大きく、寸法が大きな親杭を使用する必要がある現場では、アンカーの併用も考えられるが、空洞箱型ブロック全体を大きなサイズのものに交換しない限り、当該寸法が大きな親杭を使用した山留め壁を造成することができなかった。
それに対して、図示の第1実施形態によれはアングル材3、プレート4、ボルト5の長さを変えることにより、親杭1のサイズを自在に変更することが可能である。そのため、土圧に対応して、親杭1のサイズを容易に変更することが出来る。
【0044】
さらに、従来技術の空洞箱型ブロックを用いた工法では、親杭の建て込み精度が高精度でないと、ブロックを多数段に亘って積み重ねることが出来ず、高い山留め壁を造成することが困難であった。
それに対して図示の第1実施形態によれば、親杭1の建て込み精度が高精度でなくても、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2を用いて板状パネル2を親杭1に固定し、型枠6を設置して、山留め式の擁壁100を造成することが出来る。そして、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2を適宜調節することにより、板状パネル2を適正な位置に配置しつつ親杭1に固定することが出来る。そして型枠6を設置して、中詰めコンクリート7を充填すれば、山留め式の擁壁100を造成することが出来る。換言すれば、親杭1の建て込み位置が不正確でも、正確な位置に板状パネル2を配置して、適正な位置に(所望の垂直方向寸法を有する)擁壁100を構築することが出来る。
【0045】
空洞箱型のブロックを用いる従来技術では、表側(看者が山留め壁を見ることができる側)から外力が作用して当該ブロックが破損した場合には、ブロック全体を交換しなければならない。そして、空洞箱型のブロックを交換する作業には多大な労力及びコストが要求される。
それに対して図示の第1実施形態では、仮に表側から外力が作用して板状パネル2が破損しても、全ての構成要素を交換する必要はなく、破損した板状パネル2のみを交換すれば良い。そして、破損した板状パネル2のみを交換する作業は、アングル材3、ボルト5、ナットN1、N2による作業であるため、従来技術に係る空洞箱型ブロック全体を交換することに比較して、遙かに容易である。
【0046】
図示の第1実施形態において、型枠6内に中詰めコンクリート7を充填することにより、親杭1、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2の腐食を防止することが出来る。
それに加えて、中詰めコンクリート7を充填することにより、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2の寸法、重量、断面2次モーメントを大きくする必要がなくなる。そして、アングル材3、プレート4に生コンの打設圧力に耐えられる程度の強度があれば、大きな土圧が板状パネル2に作用しても、アングル材3、プレート4は変形しない。ただしボルト5は、板状パネル2が破損するような大きな土圧にも耐えられる強度が必要である。
【0047】
換言すれば、中詰めコンクリート7が存在しなければ曲がり、変形してしまう程度の強度しか有していないアングル材3、プレート4であっても、中詰めコンクリート7が充填されていれば、大きな土圧が作用しても変形しない。そのため、固定金具であるアングル材3、プレート4には構造部材としての強度は要求されず、中詰めコンクリート7の打設圧力に耐えられる程度の強度以上に強くする必要がない。そして、多大な強度が要求されないアングル材3、プレート4は、小型、軽量のものを用いることが出来る。ただしボルト5は、板状パネル2が破損するような大きな土圧にも耐えられる強度が必要である。
【0048】
従来の空洞箱型ブロックを用いた壁体造成技術では、空洞箱型ブロック内側の空間(いわゆる「クリアランス」)内に充填されたコンクリートが固化する以前の段階で、山留め壁の裏側に土を充填すると、充填された土の土圧により空洞箱型ブロックが表側にずれてしまう。
それに対して図示の第1実施形態では、板状パネル2はアングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2により親杭1に固定されているので、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2の強度の範囲内であれば、山留め壁の裏側に土を充填しても、板状パネル2が表側にずれてしまうことがない。
そのため、中詰めコンクリート7が固化する以前の段階でも、アングル材3、プレート4、ボルト5、ナットN1、N2の強度の範囲内で、山留め壁100の裏側に盛土を充填することが出来るので、中詰めコンクリート7が固化する時間を節約して、作業を進捗させることが出来る。
【0049】
次に
図8を参照して、本発明の第2実施形態を説明する
第1実施形態では、例えば
図2で示すように、プレート4は、親杭1(H鋼)と板状パネル(軽量パネル)2の間の領域に配置されている。しかし
図8において、親杭1(H鋼)の下側フランジ1Dと板状パネル2との間隔δが狭過ぎる等の理由により、間隔δで示す領域にプレート4が配置出来ない場合が存在する。
図8の第2実施形態では、プレート4(
図8では図示せず)を部材41、42に分割して構成している。そして、当該部材41、42は、それぞれナットN1により、H鋼1の上側フランジ1Uの表側(板状パネル2側)に固定されている。換言すれば、H鋼1の上側フランジ1Uをアングル材3と部材41、42により挟み込む様に配置している。
ここで、プレート4を部材41、42に分割して構成したのは、H鋼1の中央部分(ウェブ)1Cと干渉しない様にするためである。
【0050】
ここで
図8は、
図2と同様に、型枠6を取り付けているが、中詰めコンクリート7を充填する以前の状態を示している。
図8の第2実施形態によれば、下側フランジ1Dと板状パネル2との間隔δが小さ過ぎる等の理由により、
図2で示すようにプレート4をH鋼1と板状パネル2の間に配置することが出来ない場合に対処することが出来る。
図8の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1〜
図7で説明した第1実施形態と同様である。
【0051】
次に
図9を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図9も、型枠6を取り付けており、中詰めコンクリート7を充填する以前の状態を示している。
図8の第2実施形態では、プレート4に相当する部材41、42をH鋼1の上側フランジ1Uの表側(板状パネル2側)に配置している。それに対して、
図9の第3実施形態では、部材41、42をH鋼1の下側フランジ1Dの表側(板状パネル2側)に配置している。
図9の第3実施形態も、
図8の第2実施形態と同様に、下側フランジ1Dと板状パネル2との間隔(
図8における寸法δ)が小さ過ぎる等の理由により、
図2のプレート4をH鋼1と板状パネル2の間に配置することが出来ない場合に対処することが出来る。
図9の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図8の第2実施形態と同様である。
【0052】
次に
図10を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
図10も、型枠6を取り付けているが、中詰めコンクリート7を充填する以前の状態を示している。
図10で示す第4実施形態では、アングル材3(
図10では図示せず)に相当する部材は分割された部材31、32により構成されており、部材31、32はそれぞれナットN2によりH鋼1の上側フランジ1Uの裏側(盛土側:
図10では上側:板状パネル2から離隔する側)に固定されている。
図10の第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1〜
図9で示す各実施形態と同様である。
【0053】
次に
図11を参照して、本発明の第5実施形態を説明する。
図11も、型枠6を取り付けているが、中詰めコンクリート7を充填する以前の状態を示している。
図11で示す第5実施形態では、アングル材3(
図10では図示せず)に相当する部材は分割された部材31、32により構成されており、プレート4に相当する部材は分割された部材41、42により構成されている。
そして部材31、32はそれぞれナットN2によりH鋼1の下側フランジ1Dの裏側(
図11では上側:板状パネル2から離隔する側)に固定されており、部材41、42はそれぞれナットN1によりH鋼1の下側フランジ1Dの表側(
図11では下側:板状パネル2側)に固定されている。
アングル材3に相当する部材31、32が分割しているので、H鋼1の中央部分1Cと干渉しない。
図11の第5実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1〜
図10の各実施形態と同様である。
【0054】
図12を参照して、本発明の第6実施形態を説明する。
図12も、型枠6を取り付けているが、中詰めコンクリート7を充填する以前の状態を示している。
図1〜
図11の各実施形態では、H鋼1、上側フランジ1U、下側フランジ1Dの板状パネル2側に、プレート4あるいは分割された部材41、42が設けられている。
これに対して、
図12の第6実施形態では、プレート4あるいは分割された部材41、42に相当する部材が省略されている。例えば、H鋼1の下側フランジ1Dと板状パネル2との間隔が小さい場合に、第6実施形態は適用可能である。
図12の第6実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1〜
図11の各実施形態と同様である。
【0055】
図13を参照して、本発明の第7実施形態を説明する。
図13も、型枠6を取り付けているが、中詰めコンクリート7を充填する以前の状態を示している。
図13の第7実施形態では、
図11で示す第5実施形態と同様に、アングル材3(
図13では図示せず)に相当する部材は分割された部材31、32により構成されており、プレート4(
図13では図示せず)に相当する部材は部材41、42により構成されている。
そしてアングル材に相当する部材部材31、32は上側フランジ1Uの裏側(
図13の上側:板状パネル2から離隔した側)にナットN2で固定されており、プレートに相当する部材41、42は下側フランジ1Dの表側(
図13の下側:板状パネル2側)にナットN1で固定されている。
図13の第7実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1〜
図12の各実施形態と同様である。
【0056】
図14を参照して、本発明の第8実施形態を説明する。
図14も、型枠6を取り付けているが、中詰めコンクリート7を充填する以前の状態を示している。
図1〜
図13の第1〜第7実施形態では、固定金具としてアングル材3、部材31、32、プレート4、部材41、42を用いているが、
図14の第8実施形態では、断面コ字状の部材51〜54を用いている。
図14において、断面コ字状の部材51、52が、H鋼1の上側フランジ1Uの両端を挟み込む様に、図示しない固定用部材(例えばボルト等)で固定されている。そして断面コ字状の部材53、54が、下側フランジ1Dの両端を挟み込む様に、図示しない固定用部材(例えばボルト等)で固定されている。
そして、断面コ字状部材51〜54は、図示しない部材(例えばナット等)により、ボルト5に取り付けられている。
図14の第8実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1〜
図13の第1〜第7実施形態と同様である。
【0057】
次に、
図15、
図16を参照して、本発明の第9実施形態を説明する。
図15、
図16の第9実施形態は、
図1〜
図14の第1〜第8実施形態に対して、板状パネル2Aの形状が異なっている。
図15、
図16の板状パネル2Aでは、板状パネル2Aを垂直方向へ正確に積み重ねることが出来る様に、板状パネル2Aの裏側の上縁部に、板状部材27(例えば金属製)を設けている。当該板状部材27をガイド部材として、上段の板状パネル2Aを下段の板状パネル2A上に正確に積み重ねることが出来る。
板状部材27は全体がL字状に形成されており、L字状の短い辺に相当する部分は、板状パネル2Aのフランジ部22の上縁近傍に埋設されている。
【0058】
また、
図15、
図16の第9実施形態では、板状パネル2Aにおける板状部材27の長い辺に相当する部分(露出した部分)に、ボルト孔27hが形成されている。
そして、板状パネル2Aの下縁側には雌ねじが形成されたインサート28が埋設されている。インサート28は、板状パネル2Aを上下に2枚重ねた際に、下側の板状パネル2Aのボルト孔27hと整合する位置に設けられている。そして板状パネル2Aを上下に2枚重ねた際に、下側の板状パネル2Aのボルト孔27hと上側の板状パネル2Aのインサート28をボルト(図示せず)によって締結すれば、上下の板状パネル2Aが確実に接合され、板状パネル2Aの積み重ね作業が安全、迅速、確実に行われる。
【0060】
次に、
図17を参照して、第10実施形態を説明する。
図17では、擁壁全体が符号100Bで示されている。
図17の擁壁100Bでは、
図1〜
図6における型枠6、固定金具(3〜5、N1、N2)に代えて、断面コ字状の部材6Bが用いられている。この部材6Bは、予め作成された製品(プレキャスト製品)であり、断面コ字状のプレキャスト部材6Bによって板状パネル2Bが親杭1に固定されている。
【0061】
図17において、断面コ字状のプレキャスト部材6Bにおける開口側の両縁部6Beには、開口縁部6Beに沿って、2対の金属製のブラケット61(合計4個)が設けられている。
ブラケット61にはボルト孔61hが形成されており、ボルト孔61hの位置は、プレキャスト部材6Bを板状パネル2Bに固定する際に、板状パネル2Bの4箇所のインサート26Bと整合する様に設定されている。
擁壁100Bの築造作業に際しては、現場において、プレキャスト製品である断面コ字状の部材6Bが親杭1を包囲する様に配置して、例えばボルトBの様な締結部材で板状パネル2Bに取り付けることにより、作業時間を短縮することができる。
【0062】
図17の第10実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1〜
図16の各実施形態と同様である。
【0063】
次に、
図18、
図19を参照して、第11実施形態を説明する。
図18、
図19において、擁壁は全体が符号100Cで示されている。擁壁100Cでは、
図1〜
図5の擁壁100に対して、アンカーの張力支持部材に相当する緊張部材を追加装備している。
【0064】
図18、
図19において、擁壁100Cは、複数の接続部材8と、複数の緊張部材9と、クレビス10と、杭11を有している。
図18において、法面200側には、頭部11Aを法面200の地表側に露出するように、杭11が埋設されている。
図18で示すように、杭11は法面200に対して垂直に埋設されていても良いし(杭11−1)、法面200の垂直方向に対して傾斜した状態で埋設されていても良い(杭11−2)。
図18、
図19において、ボルト(テンションボルト)9が、アンカーの張力支持部材に相
当する緊張部材を構成している。係るテンションボルト9はボルト5に接続されている。なおボルト5については、
図1〜
図5に示すボルト5と同一である。そしてボルト5とテンションボルト9は、同一仕様の雄ねじが形成されていても良い。
【0065】
ボルト5とテンションボルト9の接続及びテンションボルト9同士の接続は接続部材8によって行われ、接続部材8は両端に雌ねじが形成された筒状に構成されている。
図18では、ボルト5と杭11(あるいはクレビス10)の間には2本以上のテンションボルト9が使用されているが、2本以上のテンションボルト9に代えて、両端に雄ねじを形成した1本のテンションロッドを使用することも可能である。或いは、両端に雄ねじが形成された接続端子を有するワイヤーロープを用いても良い。
【0066】
図18において、右端の接続部材8はクレビス10に固着されている。そして杭11の地表側端面には、接続用板部材11Bが固設されている。
クレビス10と接続用板部材11Bは、クレビスピン11Pによって回動自在に接続されている。
複数の接続部材8及び複数のテンションボルト9によって法面200に埋設された杭11と接続される板状パネル2は、擁壁100Cの最上端の板状パネル2であるが、それよりも下方の板状パネル2を接続部材8及びテンションボルト9を介して杭11と接続しても良い。
【0067】
この第11実施形態では、板状パネル2を接続部材8及びテンションボルト9を介して法面200に埋設された杭11と接続することにより、擁壁100Cの裏側(
図18の擁壁100Cの右側:擁壁100Cの背面側)と法面200の間の領域に充填された盛土300による土圧が擁壁100Cに作用しても、接続部材8、テンションボルト9、杭11がアンカーと同様な作用を奏し、当該土圧を負担する。そのため、擁壁100Cにおける土圧に対する抵抗が大きくなる。
図18、
図19の第11実施形態における上記以外の構成及び作用効果に関しては、
図1〜
図17の各実施形態と同様である。
そして、
図18、
図19の第11実施形態を、
図1〜
図17の各実施形態に適用することが可能である。
【0068】
次に、
図20、
図21を参照して、第11実施形態の変形例について説明する。
図20、
図21において、擁壁は全体が符号100Dで示されている。
図18、
図19で示す擁壁100Cでは法面に埋設した杭11を用いていたのに対して、
図20、
図21の擁壁100Dでは、盛土300に埋設されたL字状ブロック12を用いている。
【0069】
図20、
図21において、盛土300に埋設されたL字状ブロック12は、「L」字を反転させた形状であり、
図20ではL字の頂点12tが法面200に接するように配置されている。
右端のテンションボルト9は、L字状ブロック12に形成された図示しないボルト孔を貫通しており、L字状ブロック12の右側でナットN3と螺合し、以ってL字状ブロック12に接続されている。
【0070】
擁壁100Dの裏側(
図20の擁壁100Dの右側:擁壁100Dの背面側)と法面200の間の領域に充填された盛土300による土圧が擁壁100Dに作用して、係る土圧による引張力(L字状ブロック12を
図20の左側に引っ張ろうとする力)がL字状ブロック12に作用しても、L字状ブロック12が盛土300に埋設されているため、盛土300による抵抗力がL字状ブロック12に作用する。そのため、L字状ブロック12を擁壁100D側(
図20の左側)に移動させるには盛土300による抵抗力以上の引張力が必要となる。そのため、擁壁100Dにおける土圧に対する強度が向上するのである。
図20、
図21の第11実施形態の変形例の上記以外の構成及び作用効果は、
図18、
図19の第11実施形態と同様である。
そして、
図20、
図21の変形例を、
図1〜
図17の実施形態に適用することが可能である。
【0071】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。