【文献】
Gerasimova, T. N.; Fomenko, T. V.; Fokin, E. P.,Reaction of polyfluoro-substituted aromatic ketones with Grignard reagents,Zhurnal Organicheskoi Khimii,1977年,13(7),1562-1563
【文献】
Lee, Woo Young; Park, Chang Hee,Orthocyclophanes. 2. Starands, a new family of macrocycles of spirobicyclic polyketals with a 2n-crown-n moiety,Journal of Organic Chemistry,1993年,58(25),7149-7157
【文献】
Habib, Fatemah; Cook, Cyril; Korobkov, Ilia; Murugesu, Muralee,Novel in situ manganese-promoted double-aldol addition,Inorganica Chimica Acta ,2012年,380,378-385
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下においては、本発明のジオール化合物、金属錯体、及び、それによる重合用触媒並びにそれを用いたオレフィン重合体の製造方法について、項目毎に、詳細に説明する。
【0023】
1.ジオール化合物
(1)基本構成
本発明におけるジオール化合物は、下記の一般式(1)で示される。
【化3】
【0024】
(一般式(1)において、Q1〜Q3は、各々独立して、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数2〜20の二価の炭化水素基、炭素数2〜10のエステル基で置換された炭素数3〜20の二価の炭化水素基、炭素数3〜18のシリル基で置換された炭素数4〜20の二価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜20の二価の炭化水素基からなる群より選ばれた置換基を示す。
Q4、Q5は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数2〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基又は炭素数1〜20の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選ばれた置換基を示す。
T1、T2は、各々独立して、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数2〜10のエステル基、アミノ基、炭素数1〜12の置換アミノ基又はハロゲンからなる群より選ばれた置換基を示す。)
【0025】
(2)Q1〜Q3について
炭素数1〜20の二価の炭化水素基であるQ1〜Q3は、好ましくは、炭素数1〜12の二価の炭化水素基、更に好ましくは、炭素数1〜12のアルキレン基、フェニレン基、アルキレン−フェニレン−アルキレン基、ビフェニレン基である。
好ましい具体例は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1,4−シクロへキシレン基、{メチレン−(1,4−シクロへキシレン)}基、{メチレン−(1,4−シクロへキシレン)−メチレン}基、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、3−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、3−ペンテニレン基、4−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、3−ヘキセニレン基、4−ヘキセニレン基、5−ヘキセニレン基、フェニレン基、メチレンフェニレン基、{メチレン−(1 ,4−フェニレン)−メチレン}基、ビフェニレン基であり、更に好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、4−ヘキセニレン基、{メチレン−(1,4−シクロへキシレン)−メチレン}基、フェニレン基、ビフェニレン基であり、特に好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、フェニレン基、ビフェニレン基である。
【0026】
水酸基で置換された炭素数1〜20の二価の炭化水素基であるQ1〜Q3は、好ましくは、前述の炭素数1〜20の二価の炭化水素基の水酸基置換体が挙げられる。
好ましい具体例は、(1−ヒドロキシ)メチレン基、(1−ヒドロキシ)エチレン基、(2−ヒドロキシ)エチレン基、(1−ヒドロキシ)トリメチレン基、(2−ヒドロキシ)トリメチレン基、(3−ヒドロキシ)トリメチレン基、(1−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(2−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(3−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(4−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(1−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(2−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(3−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(4−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(5−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(1−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(2−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(3−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(4−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(5−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(6−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(1−ヒドロキシ)メチレン基、(1−ヒドロキシ)エチレン基、(2−ヒドロキシ)エチレン基、(5−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(6−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基であり、特に好ましくは、(1−ヒドロキシ)メチレン基、(1−ヒドロキシ)エチレン基、(2−ヒドロキシ)エチレン基である。
【0027】
炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数2〜20の二価の炭化水素基であるQ1〜Q3は、好ましくは、前述の炭素数1〜20の二価の炭化水素基を、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、(1−メトキシ)メチレン基、(1−メトキシ)エチレン基、(2−メトキシ)エチレン基、(1−エトキシ)エチレン基、(2−エトキシ)エチレン基、(1−メトキシ)トリメチレン基、(2−メトキシ)トリメチレン基、(3−メトキシ)トリメチレン基、(1−メトキシ)テトラメチレン基、(2−メトキシ)テトラメチレン基、(3−メトキシ)テトラメチレン基、(4−メトキシ)テトラメチレン基、(1−メトキシ)ペンタメチレン基、(2−メトキシ)ペンタメチレン基、(3−メトキシ)ペンタメチレン基、(4−メトキシ)ペンタメチレン基、(5−メトキシ)ペンタメチレン基、(1−メトキシ)ヘキサメチレン基、(2−メトキシ)ヘキサメチレン基、(3−メトキシ)ヘキサメチレン基、(4−メトキシ)ヘキサメチレン基、(5−メトキシ)ヘキサメチレン基、(6−メトキシ)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(1−メトキシ)メチレン基、(1−メトキシ)エチレン基、(2−メトキシ)エチレン基、(1−エトキシ)エチレン基、(2−エトキシ)エチレン基であり、特に好ましくは、(1−メトキシ)メチレン基、(1−メトキシ)エチレン基、(2−メトキシ)エチレン基である。
【0028】
炭素数2〜10のエステル基で置換された炭素数3〜20の二価の炭化水素基であるQ1〜Q3は、好ましくは、前述の炭素数1〜20の二価の炭化水素基を、炭素数2〜10のエステル基で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、(メトキシカルボニル)メチレン基、(1−メトキシカルボニル)エチレン基、(2−メトキシカルボニル)エチレン基、(1−エトキシカルボニル)エチレン基、(2−エトキシカルボニル)エチレン基、(1−メトキシカルボニル)トリメチレン基、(2−メトキシカルボニル)トリメチレン基、(3−メトキシカルボニル)トリメチレン基、(1−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(2−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(3−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(4−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(1−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(2−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(3−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(4−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(5−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(1−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(2−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(3−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(4−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(5−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(6−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(メトキシカルボニル)メチレン基、(1−メトキシカルボニル)エチレン基、(2−メトキシカルボニル)エチレン基、(1−エトキシカルボニル)エチレン基、(2−エトキシカルボニル)エチレン基であり、特に好ましくは、(メトキシカルボニル)メチレン基、(1−メトキシカルボニル)エチレン基、(2−メトキシカルボニル)エチレン基である。
【0029】
炭素数3〜18のシリル基で置換された炭素数4〜20の二価の炭化水素基であるQ1〜Q3は、好ましくは、前述の炭素数1〜20の二価の炭化水素基を、炭素数3〜18のシリル基で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、(トリメチルシリル)メチレン基、(1−トリメチルシリル)エチレン基、(2−トリメチルシリル)エチレン基、(1−トリエチルシリル)エチレン基、(2−トリエチルシリル)エチレン基、(1−トリメチルシリル)トリメチレン基、(2−トリメチルシリル)トリメチレン基、(3−トリメチルシリル)トリメチレン基、(1−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(2−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(3−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(4−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(1−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(2−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(3−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(4−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(5−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(1−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(2−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(3−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(4−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(5−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(6−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(トリメチルシリル)メチレン基、(1−トリメチルシリル)エチレン基、(2−トリメチルシリル)エチレン基、(1−トリエチルシリル)エチレン基、(2−トリエチルシリル)エチレン基であり、特に好ましくは、(トリメチルシリル)メチレン基、(1−トリメチルシリル)エチレン基、(2−トリメチルシリル)エチレン基である。
【0030】
ハロゲン原子で置換された炭素数1〜20の二価の炭化水素基であるQ1〜Q3は、好ましくは、前述の炭素数1〜20の二価の炭化水素基を、ハロゲン原子で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、(クロロ)メチレン基、(1−クロロ)エチレン基、(2−クロロ)エチレン基、(1−ブロモ)エチレン基、(2−ブロモ)エチレン基、(1−クロロ)トリメチレン基、(2−クロロ)トリメチレン基、(3−クロロ)トリメチレン基、(1−クロロ)テトラメチレン基、(2−クロロ)テトラメチレン基、(3−クロロ)テトラメチレン基、(4−クロロ)テトラメチレン基、(1−クロロ)ペンタメチレン基、(2−クロロ)ペンタメチレン基、(3−クロロ)ペンタメチレン基、(4−クロロ)ペンタメチレン基、(5−クロロ)ペンタメチレン基、(1−クロロ)ヘキサメチレン基、(2−クロロ)ヘキサメチレン基、(3−クロロ)ヘキサメチレン基、(4−クロロ)ヘキサメチレン基、(5−クロロ)ヘキサメチレン基、(6−クロロ)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(クロロ)メチレン基、(1−クロロ)エチレン基、(2−クロロ)エチレン基、(1−ブロモ)エチレン基、(2−ブロモ)エチレン基であり、特に好ましくは、(クロロ)メチレン基、(1−クロロ)エチレン基、(2−クロロ)エチレン基である。
【0031】
(3)Q4,Q5について
ハロゲン原子であるQ4、Q5の好ましい具体例は、フッ素、塩素、臭素である。これらの中で、更に好ましい置換基は、塩素である。
【0032】
炭素数1〜20の炭化水素基であるQ4、Q5は、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基である。
ここで、アルキル基、シクロアルキル基の例は、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、トリシクロヘキシルメチル基、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基、1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、1,1−ジメチルブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、2−オクチル基、3−ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、エキソ−ノルボルニル基、エンド−ノルボニル基、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノピニル基、デカヒドロナフチル基、メンチル基、ネオメンチル基、ネオペンチル基、及び5−デシル基などである。
これらの中で、好ましい置換基としては、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基である。
【0033】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シンナミル基、スチリル基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基が挙げられ、これらのアリール基の芳香環に存在させうる置換基の例としては、アルキル基、アリール基、融合アリール基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルブテニル基、トリル基、キシリル基、p−エチルフェニル基などである。これらの中で、好ましい置換基としては、フェニル基である。
これらの具体例の中で、特に好ましい置換基としては、メチル基、エチル基、フェニル基であり、更に、特に好ましくは、メチル基である。
【0034】
ハロゲン原子で置換された炭素数1〜20の炭化水素基であるQ4、Q5は、好ましくは、前述の炭素数1〜20の炭化水素基を、ハロゲン原子で置換した構造体が挙げられる。
具体的に好ましい例として、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0035】
炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数2〜20の炭化水素基であるQ4、Q5は、好ましくは、前述の炭素数1〜20の炭化水素基を、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基又はt−ブトキシ基で置換された炭素数2〜6の炭化水素基である。更に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基で置換された炭素数2〜6の炭化水素基であり、具体的には、1−(メトキシメチル)エチル基、1−(エトキシメチル)エチル基、1−(フェノキシメチル)エチル基、1−(メトキシエチル)エチル基、1−(エトキシエチル)エチル基、ジ(メトキシメチル)メチル基、ジ(エトキシメチル)メチル基、ジ(フェノキシメチル)メチル基が挙げられる。特に好ましくは、1−(メトキシメチル)エチル基、1−(エトキシメチル)エチル基である。
【0036】
炭素数1〜10のアルコキシ基であるQ4、Q5は、好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基などである。これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基又はイソプロポキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
【0037】
炭素数6〜20のアリーロキシ基であるQ4、Q5は、好ましくは、炭素数6〜12のアリーロキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、及び2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基が挙げられる。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、フェノキシ基又は2,6−ジメチルフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基である。
【0038】
炭素数1〜20の炭化水素基で置換されたシリル基であるQ4、Q5は、好ましくは、炭素数3〜18のシリル基であり、好ましい具体例は、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基である。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、トリメチルシリル基又はジメチルフェニルシリル基であり、特に好ましくは、トリメチルシリル基である。
【0039】
(4)T1,T2について
炭素数1〜10のアルコキシ基であるT1、T2は、好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基などである。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基又はイソプロポキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
【0040】
炭素数6〜20のアリーロキシ基であるT1、T2は、好ましくは、炭素数6〜12のアリーロキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、及び2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基が挙げられる。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、フェノキシ基又は2,6−ジメチルフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基である。
【0041】
炭素数2〜10のエステル基であるT1、T2は、好ましくは、炭素数2〜8のエステル基であり、好ましい具体例は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、(4−ヒドロキシブトキシ)カルボニル基、(4−グリシジルブトキシ)カルボニル基、フェノキシカルボニル基、スクシン酸無水物基、スクシン酸イミド基が挙げられる。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(4−ヒドロキシブトキシ)カルボニル基、スクシン酸無水物基が挙げられ、特に好ましくは、メトキシカルボニル基、スクシン酸無水物基である。
【0042】
炭素数1〜12の置換アミノ基であるT1、T2の好ましい具体例は、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、モノフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、モルホリニル基が挙げられる。
これらの中で、更に好ましい置換基は、ジメチルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基である。
【0043】
ハロゲンであるT1、T2の好ましい具体例は、フッ素、塩素、臭素である。これらの中で、更に好ましい置換基は、塩素である。
【0044】
(5)ジオール化合物の具体例
本発明のジオール化合物の好ましい具体例として、1,3−ビス(2−ベンジロキシ−3’,5,5’−トリt−ブチル−3−ビフェニリル)−1,3−ジヒドロキシプロパン、1,3−ビス(2−メトキシ−3’,5,5’−トリt−ブチル−3−ビフェニリル)−1,3−ジヒドロキシプロパン、1,3−ビス(2−メトキシ−3,5−ジt−ブチル−フェニル)−1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ビス(2−ベンジロキシ−3’,5,5’−トリt−ブチル−3−ビフェニリル)−1,4−ジヒドロキシブタン、1,4−ビス(2−メトキシ−3’,5,5’−トリt−ブチル−3−ビフェニリル)−1,4−ジヒドロキシブタン、1,4−ビス(2−メトキシ−3,5−ジt−ブチル−フェニル)−1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ビス(2−ベンジロキシ−3’,5,5’−トリt−ブチル−3−ビフェニリル)−1,5−ジヒドロキシペンタン、1,5−ビス(2−メトキシ−3’,5,5’−トリt−ブチル−3−ビフェニリル)−1,5−ジヒドロキシペンタン、1,5−ビス(2−メトキシ−3,5−ジt−ブチル−フェニル)−1,5−ジヒドロキシペンタンが挙げられる。これらは例示であり、これらに限定されないのは、自明である。
【0045】
2.金属錯体
(1)基本構成について
本発明における金属錯体は、ジオール化合物と、4〜10族の遷移金属化合物である錯体前駆体とを反応させて得られる金属錯体又は具体的には下記の一般式(2)で示される金属錯体である。
【化4】
【0046】
一般式(2)において、Q1〜Q3は、各々独立して、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数2〜20の二価の炭化水素基、炭素数2〜10のエステル基で置換された炭素数3〜20の二価の炭化水素基、炭素数3〜18のシリル基で置換された炭素数4〜20の二価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜20の二価の炭化水素基からなる群より選ばれた置換基を示す。
【0047】
Q4、Q5は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数2〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基又は炭素数1〜20の炭化水素基で置換されたシリル基からなる群より選ばれた置換基を示す。
【0048】
T1、T2は、各々独立して、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数2〜10のエステル基、アミノ基、炭素数1〜12の置換アミノ基又はハロゲンからなる群より選ばれた置換基を示す。
【0049】
Mは、4〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、X1、X2は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数2〜10のエステル基、炭素数1〜12の置換アミノ基、又はハロゲンからなる群より選ばれた置換基を示す。)
【0050】
ここで、Q1〜Q5、T1、T2は、前述の一般式(1)で表されるジオール化合物における置換基と同様である。
4〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子であるMは、好ましくは、4〜6族の遷移金属であり、特に好ましくは、4族の遷移金属である。
好ましい具体例は、チタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、更に好ましくは、ジルコニウム、ハフニウムである。
【0051】
(2)X1,X2について
炭素数1〜20の炭化水素基であるX1、X2は、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基である。
ここで、アルキル基、シクロアルキル基の例は、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、トリシクロヘキシルメチル基、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基、1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、1,1−ジメチルブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、2−オクチル基、3−ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、エキソ−ノルボルニル基、エンド−ノルボニル基、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノピニル基、デカヒドロナフチル基、メンチル基、ネオメンチル基、ネオペンチル基、及び5−デシル基などである。
これらの中で、好ましい置換基としては、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基である。
【0052】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シンナミル基、スチリル基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基が挙げられ、これらのアリール基の芳香環に存在させうる置換基の例としては、アルキル基、アリール基、融合アリール基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルブテニル基、トリル基、キシリル基、p−エチルフェニル基などである。これらの中で、好ましい置換基としては、フェニル基である。
これらの具体例の中で、好ましい置換基としては、メチル基、アリル基、ベンジル基、フェニル基であり、特に好ましくは、メチル基、ベンジル基である。
【0053】
炭素数1〜10のアルコキシ基であるX1、X2は、好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基などである。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基又はイソプロポキシ基であり、特に好ましくは、イソプロポキシ基である。
【0054】
炭素数6〜20のアリーロキシ基であるX1、X2は、好ましくは、炭素数6〜12のアリーロキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、及び2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基が挙げられる。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、フェノキシ基又は2,6−ジメチルフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基である。
【0055】
炭素数2〜10のエステル基であるX1、X2は、好ましくは、炭素数2〜8のエステル基であり、好ましい具体例は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、(4−ヒドロキシブトキシ)カルボニル基、(4−グリシジルブトキシ)カルボニル基、フェノキシカルボニル基、スクシン酸無水物基、スクシン酸イミド基が挙げられる。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(4−ヒドロキシブトキシ)カルボニル基、スクシン酸無水物基が挙げられ、特に好ましくは、メトキシカルボニル基である。
【0056】
炭素数1〜12の置換アミノ基であるX1、X2の好ましい具体例は、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、モノフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、モルホリニル基が挙げられる。これらの中で、更に好ましい置換基は、ジメチルアミノ基である。
【0057】
ハロゲンであるX1、X2の好ましい具体例は、フッ素、塩素、臭素である。これらの中で、更に好ましい置換基は、塩素である。
【0058】
上記の置換基X1、X2の具体例の中で、特に好ましい置換基としては、メチル基、エチル基、ベンジル基、イソプロポキソ基、クロロ基であり、特に好ましくは、ベンジル基、クロロ基である。
【0059】
(3)金属錯体の具体例
本発明の金属錯体の好ましい具体例として、以下のジルコニム錯体が挙げられる。これらは例示であり、これらに限定されないのは自明である。
【0064】
3.ジオール化合物及びジオールを反応させて得られる金属錯体の合成
(1)基本的な合成経路
本発明におけるジオール化合物の合成は、任意のジオール合成経路により行うことができる。
すなわち、具体例として、ケトンの還元、ケトンのカップリング、オレフィンの酸化、エポキシドの水酸化などが挙げられる。具体的なジオール合成例は、実施例における配位子の合成例として、詳細に記述されている。
ジオールを反応させて得られる金属錯体の合成経路は、目的化合物の構造から任意に定めることができるが、そのうちの具体例として、原料であるジオール化合物と錯体前駆体を反応させる経路や、原料であるジオール化合物を脱プロトン化した後に錯体前駆体を反応させる経路が挙げられる。
【0065】
(2)錯体前駆体
本発明における4〜10族の遷移金属化合物である錯体前駆体は、好ましくは、4〜6族の遷移金属錯体であり、特に好ましくは、4族の遷移金属錯体である。
好ましい具体例は、四塩化チタン、三塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタンなどのハロゲン化チタン、テトラキス( ジメチルアミド) チタン、ジクロロビス( ジメチルアミド) チタン、トリクロロ( ジメチルアミド) チタン、テトラキス( ジエチルアミド) チタンなどのアミドチタン、テトラ(イソプロポキソ)チタン、テトラ(n−ブトキソ)チタン、ジクロロ(ジイソプロポキソ)チタン、トリクロロ(イソプロポキソ)チタンなどのアルコキソチタン、ジクロロジメチルチタン、ジイソプロポキソ(ジメチル)チタン、トリクロロ(メチル)チタン、テトラベンジルチタンなどのアルキルチタン、及び上記各化合物のチタンをジルコニウム、ハフニウムに変更した化合物などである。
更に好ましくは、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニウム、テトラキス( ジメチルアミド) チタン、テトラキス( ジメチルアミド) ジルコニウム、テトラキス( ジメチルアミド)ハフニウム、テトライソプロポキソチタン、テトライソプロポキソジルコニウム、テトライソプロポキソハフニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラベンジルハフニウムであり、特に好ましくは、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラベンジルハフニウムである。
【0066】
(3)錯体前駆体との反応
本発明における錯体前駆体の使用量は、一般式(1)で示されるジオール化合物1モルに対して、通常、0.5〜3モル、好ましくは0.7〜1.5モルの範囲である。
錯体合成反応は、α−オレフィンとの共重合に使用する反応器中で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。錯形成後に、金属錯体を単離抽出して触媒に用いてもよいし、単離せずに触媒に用いてもよい。更に、後述する担体の存在下に実施することも可能である。
【0067】
4.オレフィン重合用触媒
本発明の、ジオールを反応させて得られる金属錯体は、オレフィン重合用触媒成分を形成し、該触媒成分は、オレフィン重合用触媒に用いることができる。例えば、該金属錯体を成分(A)として含む、次に説明するオレフィン重合用触媒として、用いることが好ましい。
【0068】
(1)オレフィン重合用触媒の成分
本発明のオレフィン重合用触媒としては、下記(A)、(B)及び任意に(C)成分を含むものである。
成分(A):一般式(1)で示されるジオール化合物を反応させて得られる金属錯体又は一般式(2)で示される金属錯体
成分(B):成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物
【0069】
(2)各成分について
イ)成分(A)
成分(A)は、一般式(1)で示されるジオール化合物を反応させて得られる金属錯体又は一般式(2)で示される金属錯体であり、同一又は異なる二種以上を用いてもよい。
【0070】
ロ)成分(B)
成分(B)としては、成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩である。
【0071】
成分(B)の一つとして、有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。上記有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中に、Al−O−Al結合を有し、その結合数は通常1〜100、好ましくは1〜50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる生成物である。
有機アルミニウムと水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
【0072】
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記一般式(3)で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
(R1)
tAl(X3)
(3−t)・・・一般式(3)
(一般式(3)中、R1は、炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基を示し、X3は、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのいずれでも差し支えないが、メチル基、イソブチル基が好ましく、メチル基であることが特に好ましい。上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0073】
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1〜1.2/1、特に、0.5/1〜1/1であることが好ましく、反応温度は、通常−70〜100℃、好ましくは−20〜20℃の範囲にある。反応時間は、通常5分〜24時間、好ましくは10分〜5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物などに含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。
なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常、アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む)は、有機アルミニウムオキシ化合物として、好適である。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶解又は分散させた溶液としたものを用いても良い。
【0074】
また、成分(B)の他の具体例として、ボラン化合物やボレート化合物が挙げられる。上記ボラン化合物をより具体的に表すと、トリフェニルボラン、トリ(o−トリル)ボラン、トリ(p−トリル)ボラン、トリ(m−トリル)ボラン、トリス(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランなどが挙げられる。
【0075】
これらの中でも、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランがより好ましく、更に好ましくはトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボランが好ましい化合物として例示される。
【0076】
また、ボレート化合物を具体的に表すと、第1の例は、次の一般式(4)で示される化合物である。
[L1−H]
+[B(R2)(R3)(X4)(X5)]
−・・・一般式(4)
一般式(4)中、L1は中性ルイス塩基であり、Hは水素原子であり、[L1−H]は、アンモニウム、アニリニウム、ホスフォニウムなどのブレンステッド酸を示す。
アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムを例示できる。
また、アニリニウムとしては、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどのN,N−ジアルキルアニリニウムが例示できる。
更に、ホスフォニウムとしては、トリフェニルホスフォニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムなどのトリアリールホスフォニウム、トリアルキルホスフォニウムが挙げられる。
【0077】
また、一般式(4)中、R2およびR3は、6〜20、好ましくは6〜16の炭素原子を含む、同じか又は異なる芳香族又は置換芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などに代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンが好ましい。更に、X4及びX5は、ハイドライド基、ハライド基、1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置換された1〜20の炭素原子を含む置換炭化水素基である。
【0078】
上記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
【0079】
これらの中でも、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートが好ましい。
【0080】
また、ボレート化合物の第2の例は、次の一般式(5)で表される。
[L2]
+[B(R2)(R3)(X4)(X5)]
− ・・・一般式(5)
一般式(5)中、L2は、カルボカチオン、メチルカチオン、エチルカチオン、プロピルカチオン、イソプロピルカチオン、ブチルカチオン、イソブチルカチオン、tert−ブチルカチオン、ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトンなどが挙げられる。また、R2、R3、X4及びX5は、前記一般式(4)における定義と同じである。
【0081】
上記化合物の具体例としては、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o−トリル)ボレート、トリチルテトラ(p−トリル)ボレート、トリチルテトラ(m−トリル)ボレート、トリチルテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh
4、NaB(o−CH
3−Ph)
4、NaB(p−CH
3−Ph)
4、NaB(m−CH
3−Ph)
4、NaB(o−F−Ph)
4、NaB(p−F−Ph)
4、NaB(m−F−Ph)
4、NaB(3,5−F
2−Ph)
4、NaB(C
6F
5)
4、NaB(2,6−(CF
3)
2−Ph)
4、NaB(3,5−(CF
3)
2−Ph)
4、NaB(C
10F
7)
4、HBPh
4・2ジエチルエーテル、HB(3,5−F
2−Ph)
4・2ジエチルエーテル、HB(C
6F
5)
4・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF
3)
2−Ph)
4・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF
3)
2−Ph)
4・2ジエチルエーテル、HB(C
10H
7)
4・2ジエチルエーテルを例示することができる。
【0082】
これらの中でも、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaB(C
6F
5)
4、NaB(2,6−(CF
3)
2−Ph)
4、NaB(3,5−(CF
3)
2−Ph)
4、NaB(C
10F
7)
4、HB(C
6F
5)
4・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF
3)
2−Ph)
4・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF
3)
2−Ph)
4・2ジエチルエーテル、HB(C
10H
7)
4・2ジエチルエーテルが好ましい。
【0083】
更に好ましくは、これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、NaB(C
6F
5)
4、NaB(2,6−(CF
3)
2−Ph)
4、HB(C
6F
5)
4・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF
3)
2−Ph)
4・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF
3)
2−Ph)
4・2ジエチルエーテル、HB(C
10H
7)
4・2ジエチルエーテルが挙げられる。
【0084】
更に、成分(B)の具体例として、イオン交換性層状珪酸塩が挙げられる。イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、且つ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。珪酸塩は、各種公知のものが知られており、具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている。
本発明において、成分(B)として好ましく用いられるものは、スメクタイト族に属するもので、具体的にはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどを挙げることができる。中でも、共重合体部分の重合活性、分子量を高める観点からモンモリロナイトが好ましい。
大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英やクリストバライトなど)が含まれることが多く、本発明で用いられるスメクタイト族の珪酸塩に夾雑物が含まれていてもよい。
珪酸塩は酸処理及び/又は塩類処理を行ってもよい。該処理においては、対応する酸と塩基を混合して反応系内で塩を生成させて処理を行ってもよい。
【0085】
成分(B)として、前記の有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物やボレート化合物、イオン交換性層状珪酸塩との混合物を用いることもできる。さらに、それぞれを単独でも用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0086】
ハ)成分(C)
成分(C)として使用される、有機アルミニウム化合物の一例は、次の一般式で表される。
Al(R4)
aX
(3−a) ・・・一般式(6)
一般式(6)中、R4は、炭素数1〜20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基又はシロキシ基を示し、aは0より大きく3以下の数を示す。
一般式(6)で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン又はアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられる。
これらの中では、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。また、上記の有機アルミニウム化合物を2種以上併用してもよい。また、上記のアルミニウム化合物をアルコール、フェノールなどで変性して用いてもよい。これらの変性剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、フェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノールなどが例示され、好ましい具体例は、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノールである。
【0087】
(3)触媒の調製法
本発明に係るオレフィン重合用触媒の調製法においては、成分(A)、(B)、更に必要に応じて(C)を接触させる方法は、特に限定されないが、次の様な方法を例示することができる。
(i)成分(A)と成分(B)とを接触させた後に、成分(C)を添加する方法
(ii)成分(A)と成分(C)とを接触させた後に、成分(B)を添加する方法
(iii)成分(B)と成分(C)とを接触させた後に、成分(A)を添加する方法
(iv)各成分(A)、(B)、(C)を同時に接触させる方法。
更に、各成分中で別種の成分を混合物として用いてもよいし、別々に順番を変えて接触させてもよい。なお、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
又、成分(B)と成分(C)とを接触させた後、成分(A)と成分(C)の混合物を加えるというように、成分を分割して各成分に接触させてもよい。
上記の各成分(A)(B)(C)の接触は、窒素などの不活性ガス中において、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素溶媒中で行うことが好ましい。接触は、−20℃から溶媒の沸点の間の温度で行うことができ、特に室温から溶媒の沸点の間での温度で行うのが好ましい。
【0088】
5.重合方法
(1)モノマー
上記したオレフィン重合用触媒は、α−オレフィンの単独重合又は二種類以上のα−オレフィンの共重合に使用可能である。
α−オレフィン類には、炭素数2〜30、好ましくは2〜8のものが包含され、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが例示される。更に好ましくは、エチレン、プロピレンが挙げられる。
α−オレフィン類は、2種類以上のα−オレフィンを共重合させることも可能である。共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。もちろん、α−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4−メチルスチレン、4−ジメチルアミノスチレンなどのスチレン類、1,4−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン類、ノルボルネン、シクロペンテンなどの環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチルなどの含酸素化合物類、などの重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。
【0089】
(2)重合方法
本発明において、重合反応は、前記した担持触媒の存在下、好ましくはスラリー重合又は気相重合にて、行うことができる。スラリー重合の場合、実質的に酸素、水などを断った状態で、イソブタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素などから選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で、エチレンなどを重合させる。また、液状エチレンや液状プロピレンなどの液体モノマーも溶媒として使用できることはいうまでもない。
また、気相重合の場合、エチレンやコモノマーのガス流を導入、流通又は循環した反応器内においてエチレンなどを重合させる。本発明において、更に好ましい重合は、気相重合である。
【0090】
重合条件は、温度が0〜250℃、好ましくは20〜110℃、更に好ましくは60〜100℃であり、圧力が常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜4MPa、更に好ましくは0.5〜2MPaの範囲にあり、重合時間としては5分〜10時間、好ましくは5分〜5時間が採用されるのが普通である。
【0091】
重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。
これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
【0092】
重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
【実施例】
【0093】
以下において、本発明を実施例によって具体的に説明し、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。
【0094】
1.評価方法
(1)分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Q値)
(測定条件)使用機種:ウォーターズ社製150C 検出器:FOXBORO社製MI
RAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm) 測定温度:140℃ 溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 流速:1.0mL/分 注入量:0.2mL
(試料の調製)試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させた。
(分子量の算出)標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の銘柄であり、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000、である。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×M
αは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10
−4、α=0.7
PE:K=3.92×10
−4、α=0.733
PP:K=1.03×10
−4、α=0.78
【0095】
(2)融点(Tm)
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200示差走査熱量測定装置を使用して、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温することにより融解曲線を得た。
融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとし、該ピークのピーク面積をΔHmとした。
【0096】
(3)MFR及びFR
MFRは、JIS K6760に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定した。FR(フローレイト比)は、190℃、10kg荷重の条件で同様に測定したMFRであるMFR
10kgとMFRとの比(=MFR
10kg/MFR)から算出した。
【0097】
本発明におけるジオール化合物1〜5の合成経路を以下に示す。なお、以下の合成例で特に断りのない限り、操作は精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は脱水・脱酸素したものを用いた。
【0098】
[合成例1]ジオール化合物1及び2の合成
(中間体化合物1Aの合成)
【化9】
【0099】
N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(2.9g,30.0mmol)の塩化メチレン(10mL)溶液に、トリメチルアルミニウムトルエン溶液(2.0M,15.0mL,30.0mmol)を0℃で加え、30分間撹拌した。反応液に、ヴァレロラクトン(2.0g,20.0mmol)を滴下し、0℃で30分間撹拌後、更に室温で16時間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、塩酸(0.1N,5mL)を加え、室温で1時間撹拌した。硫酸マグネシウム(4.0g,33.3mmol)を加えた後、10分間撹拌し、ろ過によりろ液を回収した。ろ過により得られた固体に塩化メチレン(50mL)を加えて抽出し、先ほどのろ液と混ぜて濃縮することにより、オイル状の生成物1Aを得た。収量1.2gで収率37%であった。
1H NMR (DMSO-d6, ppm): 4.35 (t, J = 5.2 Hz, 1 H), 3.65 (s, 3 H), 3.40 (dd, J = 11.6, 6.4 Hz, 2 H), 3.08 (s, 3 H), 2.37 (dd, J = 7.6, 7.2 Hz, 2 H), 1.54 (m, 2 H), 1.43 (m, 2 H).
【0100】
(中間体化合物1Bの合成)
【化10】
【0101】
ジメチルスルホキシド(1.45g,18.6mmol)の塩化メチレン(10mL)溶液に、オキサリルクロライド(1.18g,9.3mmol)を−78℃でゆっくりと加え、5分間撹拌した。この反応液に、化合物1A(1.0g,6.2mmol)の塩化メチレン溶液(2mL)を−78℃でゆっくりと滴下し、そのままの温度で1時間撹拌した。この反応液に、トリエチルアミン(3.1g,31.0mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。反応液をジエチルエーテル(10mL)に注ぎ、濾過により濾液を回収した。濃縮後、カラムクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル=1/1)で精製することにより、淡黄色オイル状の化合物1Bを得た。収量0.5gで収率53%であった。
1H NMR (CDCl3, ppm): 9.75 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 3.65 (s, 3 H), 3.15 (s, 3 H), 2.52 (td, J = 6.8, 1.6 Hz, 2 H), 2.47 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 1.95 (quint, J = 2.8 Hz, 2 H).
【0102】
(中間体化合物1Dの合成)
【化11】
【0103】
化合物1C(16.0g,31.7mmol)のテトラヒドロフラン(150mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,14.0mL,34.9mmol)を−78℃で加え、1時間半撹拌した。反応液に、化合物1B(4.8g,30.2mmol)を加え、0℃まで温度を上昇させながら30分間撹拌後、室温で16時間撹拌した。
氷水(100mL)を加え、ジクロロメタンで抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムで乾燥した。カラムクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル=1/1)で精製することにより、化合物1Dを得た。収量4.3gであった。
1H NMR (CDCl3, ppm): 7.53 (dd, J = 4.0, 2.8 Hz, 2 H), 7.49 (dd, J = 2.4, 2.0 Hz, 1 H), 7.46 (dd, J = 2.0, 1.6 Hz, 1 H), 7.43 (d, J = 1.6 Hz, 3 H), 7.40 (d, J = 1.6 Hz, 2 H), 7.32 (d, J = 2.4 Hz, 1 H), 7.18 (m, 6 H), 7.00 (m, 2 H), 6.93 (m, 2 H), 5.01 (br, 1 H), 4.43 (s, 2 H), 4.39 (d, J = 6.0 Hz, 2 H), 3.09 (dd, J = 6.0, 3.6 Hz, 2 H), 2.58 (br, 1 H), 1.93-1.78 (m, 4 H), 1.38-1.36 (m, 54 H).
【0104】
(化合物1,化合物2の合成)
【化12】
【0105】
化合物1D(0.50g,0.52mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、ソジウムボロハイドライド(39.8mg,1.05mmol)を室温で加え、16時間撹拌した。反応後、塩化アンモニウム水溶液(20mL)を加え、酢酸エチルで抽出し(20mL×3)、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。粗収量0.5g、LCMS純度62%であった。カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物1と化合物2をそれぞれ得た。
化合物1.1H NMR (CDCl3, ppm): 7.46 (d, J = 1.6 Hz, 2 H), 7.44 (d, J = 2.0 Hz, 4 H), 7.42 (d, J = 2.4 Hz, 2 H), 7.33 (d, J = 2.4 Hz, 2 H), 7.20 (m, 6 H), 7.01 (m, 4 H), 5.01 (br, 2 H), 4.40 (dd, J = 12.8, 10.8 Hz, 4 H), 2.31 (br, 2 H), 1.89 (br, 4 H), 1.54 (br, 2 H), 1.38 (s, 18 H), 1.36 (s, 36 H).
化合物2.1H NMR (CDCl3, ppm): 7.47 (m, 2 H), 7.43 (m, 6 H), 7.33 (d, J = 2.4 Hz, 2 H), 7.22 (m, 6 H), 7.01 (m, 4 H), 5.04 (dd, J = 8.8, 4.4 Hz, 2 H), 4.41 (dd, J = 16.8, 10.4 Hz, 4 H), 2.38 (br, 2 H), 1.9-1.6 (m, 6 H), 1.38 (s, 18 H), 1.36 (s, 36 H).
【0106】
[合成例2]ジオール化合物3の合成
(中間体化合物3Bの合成)
【化13】
【0107】
化合物3A(0.50g,3.60mmol)のアセトン(10mL)溶液に、炭酸カリウム(0.50g,3.60mmol)とヨウ化メチル(0.70g,4.80mmol)を0℃で加え、50℃で3時間撹拌した。
反応液を室温に冷却し、濾過した。濾過により得られた固体を酢酸エチル(10mL×3)で抽出し、濾液とともに濃縮することにより、淡黄色オイル状の中間体化合物3Bを得た。収量0.5gで収率94%であった。
1H NMR (CDCl3, ppm): 7.53 (d, J = 2.4 Hz, 1 H), 7.44 (dd, J = 1.6, 2.0 Hz, 1 H), 7.41 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 7.32 (d, J = 2.4 Hz, 1 H), 3.45 (s, 3 H), 1.38 (s, 18 H), 1.34 (s, 9 H).
【0108】
(中間体化合物3Cの合成)
【化14】
【0109】
化合物3B(8.0g,18.5mmol)のテトラヒドロフラン(80mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,8.5mL,21.3mmol)を−78℃で加え、2時間撹拌した。反応液に、化合物1B(1.50g,9.5mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。氷水(60mL)を加え、酢酸エチルで抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムで乾燥した。カラムクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル=20/1)で精製することにより、白色固体の化合物3Cを得た。収量1.0gで収率13%であった。
1H NMR (CDCl3, ppm): 7.48 (dd, J = 2.4, 7.6 Hz, 1 H), 7.43 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 7.40 (s, 3 H), 7.37 (m, 3 H), 7.27 (d, J = 4.4 Hz, 1 H), 5.01 (br, 1 H), 3.37 (s, 3 H), 3.33 (s, 3 H), 3.13 (m, 2 H), 1.9-1.8 (m, 4 H), 1.37 (s, 18 H), 1.36 (s, 18 H), 1.33 (s, 18 H).
【0110】
(化合物3の合成)
【化15】
【0111】
化合物3C(1.00g,1.24mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、ソジウムボロハイドライド(0.14g,3.72mmol)を室温で加え、24時間撹拌した。反応後、塩化アンモニウム水溶液(20mL)を加え、酢酸エチルで抽出し(10mL×3)、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。カラムクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル=5/1)で精製することにより、白色固体の化合物3を得た。収量0.8gで収率80%であった。
1H NMR (CDCl3, ppm): 7.41 (s, 6 H), 7.35 (d, J = 2.4 Hz, 2 H), 7.27 (m, 2 H), 5.00 (br, 2 H), 3.33 (s, 6 H), 2.61 (dd, J = 5.6, 8.8 Hz, 2 H), 2.0-1.6 (br, 6 H), 1.37 (s, 36 H), 1.37 (s, 18 H).
【0112】
[合成例3]ジオール化合物4の合成
(化合物4の合成)
【化16】
【0113】
1−ブロモ−2−フェノキシベンゼン(6.0g,24.1mmol)のテトラヒドロフラン(60mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,10.6mL,25.6mmol)を−78℃で加え、室温で2時間撹拌した。反応液に、フタルアルデヒド(1.52g,11.4mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を−78℃で加え、室温で16時間撹拌した。氷水(50mL)を加え、酢酸エチルで抽出し(40mL×3)、硫酸ナトリウムで乾燥した。カラムクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル=20/1)で精製することにより、白色固体の化合物4を得た。収量0.7gであった。
1H NMR (DMSO-d6, ppm): 7.45 (m, 2 H), 7.37 (m, 2 H), 7.3-7.1 (m, 8 H), 7.05 (m, 4 H), 6.79 (d, J = 8.0 Hz, 4 H), 6.68 (d, J = 7.2 Hz, 2 H), 5.50 (s, 2 H).
【0114】
[合成例4]ジオール化合物5の合成
(中間体化合物5Bの合成)
【化17】
【0115】
2,6−ジイソプロピルフェノール(20.0g,156mmol)、2−フルオロベンゾニトリル(18.9g,156mmol)、炭酸カリウム(23.6g,172mmol)のジメチルホルムアミド(150mL)溶液を120℃で16時間加熱した。反応後、氷水(200mL)を加え、酢酸エチルで抽出し(150mL×3)、飽和食塩水で洗浄(150mL)後に、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、濃縮後、カラムクロマトグラフィー(ペンタン)で精製することにより、化合物5Bを得た。収量30.0gで収率69%であった。
【0116】
(中間体化合物5Cの合成)
【化18】
【0117】
化合物5B(14.0g,50.2mmol)のトルエン(50mL)溶液に、DIBAL−Hトルエン溶液(1.0M,60.2mL,60.2mmol)を室温で加え、16時間撹拌した。反応後、氷水(100mL)を加え、酢酸エチルで抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル=100/1)で精製することにより、白色固体の化合物5Cを得た。収量7.5gで収率63%であった。
【0118】
(中間体化合物5Dの合成)
【化19】
【0119】
1−ブロモ−2−ヨードベンゼン(0.44g,1.57mmol)に、イソプロピルマグネシウムクロライドのトルエン溶液(2.0M,0.95mL,1.90mmol)を−40℃で加え、HPLCにて原料消失を確認するまで撹拌した。この反応液に、化合物5C(0.4g,1.42mmol)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液を加え、室温で16時間撹拌した。反応後、氷水(10mL)を加え、酢酸エチルで抽出し(15mL×3)、水で洗浄後(15mL×3)、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル=20/1)で精製することにより、白色固体の化合物5Dを得た。収量0.49gで収率78%であった。
【0120】
(化合物5の合成)
【化20】
【0121】
化合物5D(3.3g,7.52mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,7.5mL,18.8mmol)を−78℃で加え、−78℃で2時間撹拌した。反応液に、中間体5C(3.18g,11.3mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を−78℃で加え、室温で16時間撹拌した。氷水(50mL)を加え、酢酸エチルで抽出し(50mL×3)、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル=10/1)で精製することにより、白色固体の化合物5を得た。収量1.1gで収率22%であった。
1H NMR (CDCl3, ppm): 7.64 (d, J = 7.6 Hz, 2 H), 7.3-7.2 (m, 8 H), 7.2-7.1 (m, 4 H), 6.98 (m, 2 H), 6.82 (d, J = 4.0 Hz, 2 H), 6.30 (d, J = 7.6 Hz, 2 H), 3.70 (d, J = 4.0 Hz, 2 H), 2.99 (m, 2 H), 2.42 (m, 2 H), 1.11 (s, 6 H), 1.09 (d, J = 1.2 Hz, 6 H), 0.90 (s, 3 H), 0.89 (s, 3 H), 0.71 (s, 3 H), 0.70 (s, 3 H).
【0122】
[実施例1]
充分に窒素置換した30mLフラスコに、50μmolのテトラベンジルジルコニウムとジオール化合物1を秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを室温で5分間混合撹拌して錯体溶液を調製した。次に、内容積1.5Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、MAO(10mmol)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した(全量700mL)。重合温度50℃、エチレン圧2.0MPaに保持した後、先に調製した錯体溶液を圧入して重合を開始した。反応中は温度を一定に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。
エタノール(10mL)を圧入することで重合を終了した後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーをエタノール(1L)を用いて再沈させ、濾過により得られた固形物をエタノールで洗浄後、80℃で3時間減圧乾燥して回収した。
【0123】
[実施例2〜5、比較例1(エチレン重合)]
実施例2〜5では化合物2〜5を、比較例1では公知文献(段落0007に前掲した非特許文献1)を参考に合成した、N,N’−ビス(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−ヒドロキシフェニルメチル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミン(化合物6)を用いた以外は、実施例1に準じて、重合体を製造した。重合条件、及び得られた重合体の物性評価結果を表1にまとめた。
【0124】
【表1】
【0125】
[実施例6(プロピレン重合)]
充分に窒素置換した30mLフラスコに、20μmolのテトラベンジルジルコニウムとジオール化合物1をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを室温で5分間混合撹拌して錯体溶液を調製した。次に、内容積1.5Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、MAO(10mmol)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した(全量700mL)。重合温度50
℃、プロピレン圧1.0MPaに保持した後、先に調製した錯体溶液を圧入して重合を開始した。反応中は温度を一定に保ち、圧力が保持されるように連続的にプロピレンを供給した。
エタノール(10mL)を圧入することで重合を終了した後、プロピレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーをエタノール(1L)を用いて再沈させ、濾過により得られた固形物をエタノールで洗浄後、80℃で3時間減圧乾燥して回収した。
【0126】
[実施例7,8]
実施例7では化合物2を、実施例8では化合物3をそれぞれ用いた以外は、実施例6に準じて、重合体を製造した。重合条件、及び得られた重合体の物性評価結果を表2にまとめた。
【0127】
【表2】
【0128】
[実施例と比較例の結果の対照による考察]
実施例1〜5では、生成ポリエチレンが高温溶融状態で流動性を示さないほどの低MFR値又は分子量20万以上を示したのに対して、比較例1により得られたポリマーでは流動性が高すぎる結果となった。このポリマー流動性は、その分子量と密接な関係を持つことが公知となっており、本実施例により得られたポリエチレンが高分子量であることを示唆している。
また、実施例6〜8では、分子量が7万を超えるポリプロピレンを得られることを明らかにした。
以上のように、本発明の金属錯体を使用することにより、高い分子量を有するポリエチレン及びポリプロピレンを得ることができた。これにより、本発明における構成の要件の合理性と有意性、及び本発明の従来技術に対する卓越性を明らかにした。