(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用できる実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態は、照明装置1と、照明装置1を有するイメージセンサユニット3と、イメージセンサユニット3を有する紙葉類識別装置5である。各図においては、三次元の各方向を、X,Y,Zの各矢印で示す。X方向は、イメージセンサユニット3の主走査方向である。Y方向は、イメージセンサユニット3の副走査方向である。Z方向は、イメージセンサユニット3の上下方向である。
なお、本発明の実施形態において、「光」とは、可視光線のみならず、可視光線の以外の波長域の電磁波(たとえば赤外線の波長域や紫外線の波長域の電磁波)も含むものとする。
【0013】
(照明装置)
<第1の実施形態>
まず、照明装置1の第1の実施形態について、
図1と
図2を参照して説明する。
図1は、照明装置1の構成を模式的に示す分解斜視図である。
図2は、照明装置1の導光体12(導光体12a)を主走査方向に直角な面で切断した断面模式図である。照明装置1は、イメージセンサユニット3(後述)に組み込まれた状態で、被照明体(紙葉類)としての紙幣Pに対して可視光線および赤外線を照射する。
【0014】
図1に示すように、照明装置1は、光源11と導光体12とを含む。
光源11は、導光体12の主走査方向(長手方向)の一方の端面である入射面121(後述)と間隔をあけて配設され、導光体12の入射面121に向けて光を照射する。光源11は、たとえば、順次点灯する赤(R)と緑(G)と青(B)と赤外(Ir)の各波長の光を発する発光素子を有する。各発光素子には、公知の各種LEDが適用できる。また、光源11は、イメージセンサユニット3の回路基板33(後述)の上面(Z方向の上側の面)に実装される。
【0015】
導光体12は、光源11が発する光を線状化する光学部材である。導光体12は、たとえばアクリル系の樹脂などといった透明の樹脂素材からなり、射出成形などによって一体に形成される。導光体12は、全体として主走査方向に細長い棒状の構成を有する。
【0016】
導光体12に適用されるアクリル系の樹脂(以下、アクリル樹脂と記す)は、波長によって分光透過率が異なる。たとえば、アクリル樹脂における赤外線の透過率は、可視光線(光源11が発するR、G、Bの各色の光)の透過率よりも低い。このため、導光体12の主走査方向の一方の端部に光源11が設けられる構成では、導光体12の主走査方向の他方の端部近傍の赤外線の照明強度が、可視光線に比較して低くなり、導光体12の全体に亘って赤外線の照度分布が不均一となる。すなわち、導光体12を透過率が一定でない波長域を有する素材で形成し、光源11に透過率が一定でない波長域の光を用いた場合、導光体12の長さに亘って影響が累積する。
なお、光源11からの光は、温度シフト等によって透過率が一定でない波長域内になる場合も含まれる。
【0017】
導光体12aには、透過率が高い波長域の光に対する吸収率が高い材料が混合されている。すなわち、可視光線の吸収率が赤外線の吸収率よりも高い材料が、導光体12の全体に均一に混合されている。
アクリル樹脂にこのような材料が混合されていると、導光体12aにおいて可視光線の吸収率が高くなることから可視光線の透過率が低くなり、可視光線と赤外線の透過率の差を同程度、または差を小さくすることができる。
【0018】
前述のような材料には、三菱レイヨン株式会社の製品「アクリフィルターIR」が適用できる。そして、この「アクリフィルターIR」が、重量比で99:1となるようにアクリル樹脂に混合される。このようにして得られるアクリル樹脂の成形品である導光体12aは、可視光線の透過率を90%程度に低下させることができる。したがって、可視光線と赤外線とで吸収率がほぼ同じになる。
なお、導光体12にアクリル樹脂以外の素材を用いた場合であっても、可視光線の照明強度を必要とする光の透過率に応じた照明強度となるように混合比を変更することで適用できる。
【0019】
図1に示すように、導光体12aの主走査方向の一方の端面は、光源11が発する光が入射する入射面121である。また、導光体12aの主走査方向の他方の端面は、光源11が発する光を反射する反射面123である。さらに、
図2に示すように、導光体12aの側面には、出射面122と拡散面124とが形成される。
【0020】
出射面122は、入射面121から入射した光(入射面121から入射して反射面123で反射した後および拡散面124で反射や拡散した光を含む)を紙幣Pに向けて照射する面であり、出射面122の主走査方向の一方の端部近傍に光源11が位置する。出射面122は、主走査方向に延伸する細長い帯状に形成される。出射面122は、紙幣Pの読取ラインO(
図8〜
図11参照)に向けて照射光を照射するため、たとえば、紙幣Pの読取ラインOの方向に向けて凸となる曲面に形成される。
出射面122の主走査方向の寸法は、紙幣Pの寸法に応じて設定される。たとえば、イメージセンサユニット3が紙幣Pの長辺方向に相対的に移動しながら読み取る構成であり、出射面122の主走査方向の寸法は、紙幣Pの短辺寸法に応じた寸法に設定される。
【0021】
拡散面124は、入射面121から入射した光を反射・拡散する面である。
図2に示すように、拡散面124は、出射面122に対向するように形成される。拡散面124には、たとえば、複数のプリズム状の拡散部(図においては省略)が、所要の間隔で形成される。これらの複数の拡散部の間隔は、主走査方向の一方の端部側(入射面121の側)から他方の端部側(反射面123の側)に向かうにしたがって小さくなる。
なお、拡散部として、たとえば、シルク印刷などによる光反射性の塗料からなる印刷パターンが適用される構成であってもよい。この場合には、印刷パターンの密度が、入射面121に近づくにしたがって低くなり、遠くなるにしたがって高くなる。このような構成によれば、出射面122から照射する光の照度分布が不均一になること、特に、入射面121から遠くなるにしたがって光の照明強度が低くなり、導光体12aの主走査方向に亘って光の照度分布の均一化を図ることができる。
【0022】
なお、導光体12aの外周面のその他の面は、それぞれ、光を反射する反射面として作用する。
【0023】
以上説明したとおり、第1の実施形態によれば、導光体12aの主走査方向に亘って赤外線の照度分布の均一化を図ることができる。したがって、第1の実施形態の照明装置1が組み込まれたイメージセンサユニット3や紙葉類識別装置5によれば、赤外画像との読取精度の差を小さくできる。
【0024】
<第2の実施形態>
次に、照明装置1の第2の実施形態について、
図3を参照して説明する。
図3は、照明装置1の導光体12bを主走査方向に平行な面で切断した断面模式図である。なお、第1の実施形態と共通の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0025】
導光体12bは、
導光体12の拡散面124のうちの反射面123寄りの部分に、反射手段の一例として、導光体12における透過率が一定でない波長域の光(本実施形態では赤外線)の反射率が他の波長域の光(本実施形態では可視光線)の反射率よりも高い反射材127が設けられる。拡散面124の反射材127は、たとえば、ロングパスフィルタ129とアルミ蒸着層128の積層構造を有する膜が適用できる。ロングパスフィルタ129は、赤外線を透過し赤外線よりも波長の短い光を透過しない。拡散面124にこのような構成の反射材127が設けられると、可視光線と赤外線との反射率に差が生じることから、拡散面124のうちの反射面123寄りの部分における赤外線の反射率を、入射面121寄りの部分と比較して高くできる。このため、拡散面124の反射面123寄りの部分において、赤外線の反射率を高め、出射面122の反射面123寄りの部分から出射される赤外線の量を多くすること(低下を防止すること)ができる。したがって、導光体12bの主走査方向に亘って赤外線の照度分布の均一化を図ることができる。
【0026】
このように、拡散面124のうちの反射面123寄りの部分には、減光手段として、反射率(または吸収率)に関して差を設けた波長選択性を有する反射材127が形成される。このような特性を有する塗料が塗布される構成(塗膜が形成される構成)が適用できる。なお、このような塗料には、公知の各種塗料が適用できる。
【0027】
このほか、減光手段の他の一例として別体の反射部材14を有する構成であってもよい。
図4は、導光体12bとは別体の反射部材14を有する照明装置1の構成を模式的に示す分解斜視図である。
図4に示すように、導光体12bの主走査方向の一方の端部に光源11が配設され、拡散面124のうちの反射面123寄りの部分に反射部材14が配設される。反射部材14は、前述の反射材127と同じ構成を有する。たとえば、反射部材14には、アルミ蒸着層とロングパスフィルタの積層構造を有する部材が適用できる。そして、反射部材14は、導光体12bの拡散面124のうちの反射面123寄りの部分に対向するか、または拡散面124の当該部分に接触するように配設される。このような構成では、導光体12bの拡散面124から導光体12bの外部に照射した赤外線は、反射部材14により反射して再び導光体12bの内部に入射する。このため、前述と同様の効果が得られる。
【0028】
<第3の実施形態>
次に、照明装置1の第3の実施形態について、
図5と
図6を参照して説明する。
図5は、照明装置1の構成を模式的に示す分解斜視図である。
図6は、照明装置1の導光体12cを主走査方向に平行な面で切断した断面模式図である。なお、第1の実施形態と共通の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0029】
図5と
図6に示すように、導光体12cは、導光体12の出射面122のうちの主走査方向の入射面121寄りの部分に、減光手段の一例として、可視光線の透過率が赤外線の透過率よりも高い減光材126が形成される。また、減光材126がドットパターン状に形成され、入射面121の側から反射面123の側に向かうにしたがって、ドットパターンの密度が小さくなるという構成であってもよい。このような構成によれば、入射面121から入射した赤外線の一部は、出射面122に形成される減光材126に反射する。このため、可視光線と赤外線との減光率に差が生じることから、入射面121の近傍において出射面122から出射される赤外線の照射強度を低くするとともに、反射面123側に進行する赤外線を多くして反射面123寄りの部分において出射面122から出射される赤外線の照射強度を高くできる。したがって、導光体12cの主走査方向に亘って赤外線の照度分布の均一化を図ることができる。
なお、出射面122において減光材126が形成される具体的な範囲は、限定されるものではない。この範囲は、光源11から出射される赤外線の照射強度や、減光材126の光学的な特性などに応じて適宜設定される。
【0030】
出射面122に設けられる減光材126としては、たとえば、可視光線を透過し赤外線を全反射する物質が適用できる。このような物質としては、たとえば、直径が50μmのガラスビーズが適用できる。
このほか、減光材126には、前述のような物質を含む塗料などが塗布される構成が適用できる。このような塗料としては、たとえば、「笑顔と生活安全分析センター」の商品「熱線(IR)反射スプレー」が適用できる。この場合には、入射面121から反射面123に向かうにしたがって、塗装される塗料が徐々に少なくなる構成(グラデーション状に塗布される構成)であってもよい。さらに、このような塗料がドットパターン状に塗布され、入射面121の側から反射面123の側に向かうにしたがって、ドットパターンの密度が小さくなる構成であってもよい。要は、導光体12cの出射面122における赤外線の反射率が、主走査方向に関して入射面121の側において高く、反射面123の側において低い構成であればよい。
このほか、導光体12cとは別部材であって、前述のような物質からなる粒子が混合された部材が、導光体12cの出射面122のうち、入射面121寄りの部分を覆うように設けられる構成であってもよい。
【0031】
(イメージセンサユニット)
イメージセンサユニット3の構成について、
図7と
図8を参照して説明する。
図7は、イメージセンサユニット3の構成を模式的に示す分解斜視図である。
図8は、イメージセンサユニット3の内部構造を模式的に示す断面図であり、主走査方向に直角な面での断面を示す図である。イメージセンサユニット3は、紙幣Pからの可視光線と赤外線によって紙幣Pの画像を読み取ることができる。
イメージセンサユニット3は、前述のいずれかの実施形態の照明装置1と、フレーム31と、集光体32と、回路基板33と、カバー部材35とを有する。回路基板33の上面には、イメージセンサ34が設けられる。
フレーム31は、イメージセンサユニット3の筐体である。フレーム31は、たとえば、棒状の構成を有し、黒色に着色されて遮光性を有する樹脂素材により形成される。樹脂素材としては、たとえば、ポリカーボネートが適用できる。フレーム31のZ方向上部には、照明装置1の導光体12((導光体12a、12b、12cのいずれか)を収容可能な導光体収容室311と、集光体32を収容可能な集光体収容室312とが形成される。フレーム31のZ方向下部には、回路基板33を収容可能な基板収容室313が形成される。集光体収容室312と基板収容室313とは、光が通過可能な開口部によって繋がっている。さらに、フレーム31の主走査方向の一方の端部には、照明装置1の光源11を収容可能な光源収容室314が形成される。なお、照明装置1が反射部材14を有する構成である場合には、フレーム31の主走査方向の他方の端部寄りの部分には、照明装置1の反射部材14を収容可能な反射部材収容室が形成される。
【0032】
集光体32は、紙幣Pからの可視光線および赤外線を、イメージセンサ34(後述)の表面に結像する光学部材である。集光体32には、たとえば、ロッドレンズアレイが適用される。一般的なロッドレンズアレイは、複数の正立等倍結像型の結像素子(ロッドレンズ)が主走査方向に直線状に配列された構成を有する。なお、集光体32は、結像素子が直線状に配列される構成であればよく、具体的な構成は限定されない。たとえば、集光体32は、結像素子が複数列配列される構成であってもよい。また、集光体32には、公知の各種マイクロレンズアレイなど、集光機能を有する公知の各種光学部材が適用できる。
【0033】
回路基板33は、主走査方向に長い矩形状の構成を有する。そして、回路基板33の上面(Z方向上側の面)には、イメージセンサ34と照明装置1の光源11とが実装される。光源11は、回路基板33の主走査方向の一方の端部近傍に、導光体12の入射面121に向かって光を照射できるように実装される。一方、イメージセンサ34は、集光体32からの光を受光できるように、受光面をZ方向上側に向けて実装される。さらに、回路基板33には、外部との配線を接続するためのコネクタ類などが実装される。
【0034】
イメージセンサ34は、集光体32により結像した光を電気信号に変換する。イメージセンサ34には、たとえば、イメージセンサICアレイが適用される。イメージセンサICアレイは、複数のイメージセンサICが回路基板33の表面に主走査方向に直線状に実装されることによって構成される。イメージセンサICは,イメージセンサユニット3の読取の解像度に応じた複数の受光素子(光電変換素子と称することもある)から構成される。このように、イメージセンサ34は、複数のイメージセンサIC(受光素子)が、主走査方向に直線状に配列されて構成される。なお、イメージセンサ34は、複数のイメージセンサICが直線状に配列される構成のものであればよく、それ以外の構成は特に限定されない。たとえば、イメージセンサICが千鳥配列のように複数列配列される構成であってもよい。なお、イメージセンサ34としてのイメージセンサICアレイを構成するイメージセンサICには、可視光線と赤外線に感度を有する従来公知の各種イメージセンサICが適用できる。
【0035】
カバー部材35は、フレーム31の上側を覆うように設けられる。そして、カバー部材35は、導光体12や集光体32を保護する機能や、紙幣Pに接して平面に維持する機能を有する。カバー部材35は、平板状の部材であり、たとえば、ガラス板や同等な強度を有する透明な樹脂板などが適用できる。
【0036】
このほか、イメージセンサユニット3には、紙葉類識別装置5(後述)に取り付けるための取付部や、紙葉類識別装置5に電気接続するためのコネクタなどが設けられる。なお、取付部やコネクタの構成は、特に限定されるものではない。取付部は、イメージセンサユニット3を紙葉類識別装置5に取り付けることができる構成であればよい。また、コネクタは、イメージセンサユニット3と紙葉類識別装置5の所定の機器とを、電力や電気信号を送受信可能に接続できる構成であればよい。
【0037】
そして、
図7と
図8に示すように、導光体12は、フレーム31の導光体収容室311に収容される。集光体32は、フレーム31の集光体収容室312に収容される。さらに、光源11とイメージセンサ34とが実装された回路基板33は、基板収容室313に収容される。
導光体12が導光体収容室311に収容され、光源11が実装された回路基板33が基板収容室313に収容されると、光源11は光源収容室314に収容され、導光体12の一方の端部に形成される入射面121に対向する。したがって、光源11が発する光は、導光体12の一方の端部に形成される入射面121に入射する。また、導光体12とは別体の反射部材14が用いられる構成の場合には、反射部材14が、導光体12の拡散面124のうちの他方の端部寄りの部分に対向するか、または接触する。これにより、導光体12の拡散面124から照射した光は、反射部材14に反射して、再び導光体12の内部に入射する。
【0038】
なお、第2の実施形態で説明した導光体12bが適用される構成に代えて、フレーム31の導光体収容室311の内周面であって導光体12の拡散面124のうちの反射面123寄りの部分に対向する面(または接触する面)に反射材127が形成される構成であってもよい。このような構成であっても、第2の実施形態で説明した導光体12bが適用された構成と同様の効果を奏することができる。
【0039】
紙幣Pに光を照射する場合には、光源11は、各色および赤外線の発光素子を順次点灯する。光源11が発する光(R、G、B、Ir)は、導光体12の入射面121からその内部に入射し、拡散面124やその他の反射面において反射するなどして内部を伝搬する。そして、導光体12の出射面122から紙幣Pの読取ラインOに向けて照射する。
紙幣Pの読取ラインOからの反射光は、集光体32によってイメージセンサ34の表面に結像する。イメージセンサ34は、集光体32によって結像した光学像を電気信号に変換する。
そして、イメージセンサユニット3は、紙幣Pに各色の可視光線および赤外線を照射して反射光を検出する動作を、短時間で交互に繰り返す。イメージセンサユニット3は、このような動作によって、紙幣Pに設けられる所定のパターン(たとえば、ホログラム)を可視光画像として読み取るとともに、紙幣Pを赤外画像として読み取る。
【0040】
なお、イメージセンサユニット3のうち、図示および説明を省略した部分については、従来公知のイメージセンサユニットと同じ構成が適用できる。
【0041】
(紙葉類識別装置)
イメージセンサユニット3が適用される紙葉類識別装置5について、
図9を参照して説明する。
図9は、紙葉類識別装置5の構成を模式的に示す断面図であり、主走査方向に直角な面での断面を示す図である。紙葉類識別装置5は、紙幣Pなどに光を照射すると共に、紙幣Pからの光を読み取り、読み取った光を用いて紙幣Pの種類や真贋の識別を行う。
【0042】
図9に示すように、紙葉類識別装置5は、イメージセンサユニット3と、紙幣Pを搬送する搬送ローラ51とを備える。そして、紙葉類識別装置5は、搬送ローラ51どうしの間には、紙幣Pを挟んでカバー部材35を介してイメージセンサユニット3上を読取方向(副走査方向)に搬送するための搬送経路Aが設定される。この時、集光体32の紙幣P側の焦点は、搬送経路Aの中央に設定される。このような構成の紙葉類識別装置5の動作は、次のとおりである。紙葉類識別装置5に適用されるイメージセンサユニット3が、前述した動作によって、紙幣Pに設けられる所定のパターンを可視光画像として読み取るとともに、紙幣Pを赤外画像として読み取る。その後、紙葉類識別装置5は、予め用意された真券である紙幣Pに可視光線および赤外線を照射することで得られた真券紙幣画像と、真贋判定時に判定対象となる紙幣Pの可視光画像と赤外画像とを比較することで、紙幣Pの真贋判定を行う。これは、真券である紙幣Pには、可視光下と、赤外光下とから得られる画像がそれぞれ異なるような領域が設けられているためである。なお、説明および図示を省略した部分については、従来の紙葉類識別装置と同じ構成が適用できる。
【0043】
また、紙葉類識別装置5が、さらに透過照明装置52を有する構成であってもよい。
図10は、透過照明装置52をさらに有する紙葉類識別装置5の構成を模式的に示す断面図である。
透過照明装置52は、光源11と、導光体12とを有する。透過照明装置52の光源11および導光体12には、前述の光源11および導光体12と同じ構成が適用される。そして、透過照明装置52は、イメージセンサユニット3に対向する位置に、紙幣Pに向けて可視光線および赤外線を照射できるように設けられる。特に、透過照明装置52は、その導光体12の出射面122から照射される光の光軸と、イメージセンサユニット3の集光体32の光軸とが一致するように配設される。
【0044】
このような構成の紙葉類識別装置5の動作は、次のとおりである。イメージセンサユニット3に組み込まれる照明装置1の光源11および透過照明装置52の光源11は、各色の可視光線および赤外線の発光素子を順次点灯する。
イメージセンサユニット3の照明装置1から紙幣Pに照射された可視光線および赤外線は、紙幣Pの表面で反射して集光体32に入射し、イメージセンサ34の表面に結像する。イメージセンサ34は、結像した光学像を電気信号に変換することによって、紙幣Pからの反射光による可視光の画像および赤外線の画像を取得する。一方、透過照明装置52から紙幣Pに照射された可視光線および赤外線は、紙幣Pを透過してイメージセンサユニット3の集光体32に入射し、イメージセンサ34の表面に結像する。イメージセンサ34は、結像した光学像を電気信号に変換することによって、紙幣Pからの透過光による可視光画像および赤外画像を取得する。
そして、イメージセンサユニット3および透過照明装置52は、紙幣Pに各色の可視光線および赤外線を照射して反射光と透過光を検出する動作を、短時間で交互に繰り返す。イメージセンサユニット3は、このような動作によって、紙幣Pに設けられる所定のパターン(たとえば、ホログラム)を可視光画像として読み取るとともに、紙幣Pを赤外画像として読み取る。
このような構成によれば、紙葉類識別装置5は、紙幣Pの反射光および透過光による可視光画像および赤外画像を読み取ることができる。
【0045】
さらに、紙葉類識別装置5が、2組のイメージセンサユニット3を有する構成であってもよい。
図11は、2組のイメージセンサユニット3を有する紙葉類識別装置5の構成を模式的に示す断面図である。
図11に示すように、2組のイメージセンサユニット3は、紙幣Pの搬送経路Aを挟んで対向するように配設される。そして、2組のイメージセンサユニット3は、一方のイメージセンサユニット3の照明装置1から照射されて紙幣Pを透過した可視光線および赤外線が、他方のイメージセンサユニット3の集光体32に入射するように配設される。
このような構成の紙葉類識別装置5の動作は、次のとおりである。すなわち、2組のイメージセンサユニット3に組み込まれる照明装置1の光源11は、各色の可視光線および赤外線の発光素子を順次点灯する。一方のイメージセンサユニット3の照明装置1から紙幣Pに照射された可視光線および赤外線は、紙幣Pの表面で反射して一方のイメージセンサユニット3の集光体32に入射し、一方のイメージセンサユニット3のイメージセンサ34の表面に結像する。一方のイメージセンサユニット3のイメージセンサ34は、結像した光学像を電気信号に変換することによって、紙幣Pからの反射光による可視光画像および赤外画像を取得する。また、一方のイメージセンサユニット3の照明装置1から紙幣Pに照射された可視光線および赤外線は、紙幣Pを透過して他方のイメージセンサユニット3の集光体32に入射し、他方のイメージセンサユニット3のイメージセンサ34の表面に結像する。他方のイメージセンサユニット3のイメージセンサ34は、結像した光学像を電気信号に変換することによって、紙幣Pからの透過光による可視光画像および赤外画像を取得する。
このような構成によれば、紙葉類識別装置5は、紙幣Pの両面の反射画像を読み取ることができるとともに、透過画像を読み取ることができる。
【0046】
(実施例)
次に、本発明の効果を検証した各実施例について説明する。
図12〜
図14は、第1〜第3のそれぞれの実施例にかかる照明装置の照度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
図15は、比較例にかかる照明装置の照度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。実施例および比較例では、800〜1000nmの範囲の赤外線(Ir)、可視光線として緑色(G)光線を用いている。また、導光体の主走査方向寸法は190mmとしている。そして、各グラフの横軸は光入射面からの距離を示し、縦軸は、導光体12b、12cの場合の可視光線の平均出力を1として規格化した相対照明強度を示す。
【0047】
図16は、アクリルの分光透過率を示す図である。
図17は、
図16の一部拡大図である。ここで、
図16および
図17に示すように、100はアクリルの分光透過率を示す線である。分光透過率とは、光の波長ごとの透過率を示すものであり、透過率が大きいほどアクリル内部で光の吸収が小さく、透過率が小さいほどアクリル内部で光の吸収が大きいことを示している。
例えば、合成樹脂には、赤外線が吸収される波長域が夫々存在している。アクリルの場合、800〜1000nmにその波長域が存在する。これは素材固有のものであり、合成樹脂の構造に起因する振動により赤外線の吸収が生じるものである。これに対して、可視光線(R、G、B)に相当する450〜630nmの波長域はほぼ一定となっている。
なお、
図16および
図17におけるアクリルの分光透過率は厚さ(d)=2mmの試験片のデータを示している。このため、たとえばA4幅の導光体では220〜230mmに亘って影響が累積することになる。
【0048】
<第1の実施例>
第1の実施例は、第1の実施形態にかかる照明装置の実施例であり、導光体に可視光線の吸収率が赤外線の吸収率よりも高い材料が均一に混合されている例である。
図12は、第1の実施例の照度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
図15に示すように、比較例においては、可視光線はほぼ均一な照度分布となるが、赤外線の照度分布は、光入射面とは反対側の端部近傍において、可視光線(G)に比較して低下が大きくなっている。これは、導光体としてアクリルを用いた場合、透過率が一定でない波長域である800〜1000nmの範囲の赤外線(Ir)の透過率が可視光線(R、G、B)の透過率よりも低いため、入射面から離れるにしたがって出射面から照射される赤外線が少なくなっていくためと考えられる。
これに対して、
図12に示すように、第1の実施例においては、可視光線の照度分布が、光入射面とは反対側の端部近傍において、赤外線の照度分布と同様に低下している。このため、可視光線と赤外線の照度分布は、全体としてほぼ同じ傾向を示すようになっている。
このように、導光体に可視光線の吸収率が赤外線の吸収率よりも高い材料が均一に混合される構成によれば、可視光線と赤外線との照度分布の差を少なくできることが確認された。
【0049】
<第2の実施例>
第2の実施例は、第2の実施形態にかかる照明装置の実施例であり、光入射面とは反対側の端部寄りの部分に反射手段が設けられる構成の例である。
図13は、第2の実施例の照度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
ここでは、光入射面とは反対側の端面から30mmの範囲に、反射手段が設けられる構成を用いた。また、この実施例では、反射手段の可視光線の反射率を0%とし、赤外線の反射率を90%とした。
図13と
図15から明らかなように、可視光線の照度分布は、比較例と実施例とで変化はない。これに対して、実施例の赤外線の照度分布は、比較例に比較して、光入射面とは反対側の端部近傍における低下が少ない。このため、実施例においては、可視光線と赤外線の照度分布がほぼ同じ傾向を示すようになっている。
このように、光入射面とは反対側の端部寄りの部分に、赤外線の反射率が可視光線の反射率よりも高い反射手段が設けられる構成とすることにより、可視光線と赤外線との照度分布の差を少なくできることが確認された。
【0050】
<第3の実施例>
第3の実施例は、第3の実施形態にかかる照明装置の実施例であり、光入射面寄りの部分に減光手段が設けられる構成の例である。
図14は、第3の実施例の照度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
ここでは、光入射面から80mmの範囲に、減光手段としてのフィルムが設けられる構成を用いた。このフィルムの可視光線の透過率を90%、反射率を10%とし、赤外線の透過率を10%、反射率を90%とした。
図14と
図15から明らかなように、可視光線の照度分布は、比較例と実施例とで変化はない。これに対して、実施例の赤外線の照度分布は、比較例に比較して、光入射面寄りの部分において低下しており、結果として赤外線の照度分布が均一になっている。このため、第3の実施例においては、可視光線と赤外線の照度分布がほぼ同じ傾向を示すようになっている。
このように、光出射面の光入射面寄りの部分に、可視項線の透過率が赤外光の透過率よりも高い減光手段が設けられる構成とすることにより、可視光線と赤外線との照度分布の差を少なくできることが確認された。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能である。
たとえば、前述した各実施形態においては、導光体にアクリルが適用される構成を示したが、導光体はアクリルからなる構成に限定されるものではない。導光体がアクリル以外の樹脂や石英ガラスなどからなる構成であっても、本発明を適用可能である。
また、第1の実施形態においては、アクリルに可視光線の吸収率高い材料が混合される構成を示したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。導光体に混合される材料は導光体の分光透過率に応じて決定される構成であればよい。導光体がアクリル以外の材料からなる構成であれば、導光体に混合される材料は、当該材料の分光透過率に応じて決定される。
また、第2の実施形態においては、導光体の拡散面のうちの反射面寄りの領域において赤外線の反射率が可視光線に比較して高い構成を示したが、拡散面の特性はこの特性に限定されない。導光体に適用される素材に吸収される光を選択的に反射する反射面を他方の端部に形成することで、紫外線等の短波長側の透過率が低い素材で短波長側と長波長側との均一な照明を形成する場合にも適用できる。すなわち、光源が複数の波長の光を発する構成であり、導光体の透過率が光源の発する複数の波長の光のうちの特定の一部の波長について他の波長よりも低い場合には、導光体の他方の端面に、特定の一部の波長の反射率に差を設ける拡散面を形成する構成であればよい。 また、第3の実施形態においては、出射面に形成される減光材の範囲は限定されるものではない。出射面に形成される反射材の範囲は、光源の発する光の照明強度などに応じて適宜設定されるものである。
【0052】
また、入射面121の位置は導光体12の端部に限らず、たとえば拡散面124の主走査方向における中央部に設けた構造であっても構わない。この場合、第2の実施形態においては、反射手段の例である反射材127を、前述した主走査方向における入射面121より離れた両方の端部に設ければよい(
図18参照)。また、第3の実施形態においては、減光手段の例である減光材126を、前述した主走査方向における出射面122上であって、入射面121の近傍(この場合は、主走査方向の中央部近傍)に設ければよい(
図19参照)。
なお、領域130は、入射面121から入射した光を反射・拡散する領域であり、導光体12の中央部の照度分布を均一にするために設けられる。
【0053】
さらに、前述した実施形態においては、紙葉類として紙幣が適用される構成を示したが、紙葉類の種類は限定されるものではない。たとえば、紙葉類として、各種有価証券や、IDカードなど種類を問わずに適用できる。