特許第6207369号(P6207369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207369
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】空気紡績装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 1/115 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   D01H1/115 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-253911(P2013-253911)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2014-114535(P2014-114535A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2016年8月22日
(31)【優先権主張番号】10 2012 023 985.8
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴァイデ
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラセカラン ゼスハヤー
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ヴェアナー
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−102460(JP,A)
【文献】 米国特許第03802174(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0022729(US,A1)
【文献】 特開昭58−136840(JP,A)
【文献】 英国特許第00348079(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H1/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を製造するための空気紡績装置であって、該空気紡績装置において、スライバがドラフト装置を用いて延伸され、次いで空気紡績ユニットに糸撚りを生ぜしめるために供給され、該空気紡績ユニットから引き出されて、綾巻パッケージに巻き上げられる、空気紡績装置において、
前記ドラフト装置のスライバを延伸するプレドラフトゾーンに仮撚り機構が配置されていて、該仮撚り機構は、交番する回転方向で前記スライバに撚りを与え、その後で、該スライバはメインドラフトゾーンにおいて糸番手に延伸され、前記空気紡績ユニットに供給されることを特徴とする、空気紡績装置。
【請求項2】
前記紡績ユニットの上流側における前記ドラフト装置は、4ローラ式ドラフト装置である、請求項1記載の空気紡績装置。
【請求項3】
前記仮撚り機構は、第2のプレドラフトゾーンに配置されている、請求項2記載の空気紡績装置。
【請求項4】
前記仮撚り機構は、回転管である、請求項3記載の空気紡績装置。
【請求項5】
前記仮撚り機構は、空気を供給されるノズルである、請求項3記載の空気紡績装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を製造するための空気紡績装置であって、該空気紡績装置において、スライバがドラフト装置を用いて延伸され、次いで空気紡績ユニットに糸撚りを生ぜしめるために供給され、該空気紡績ユニットから引き出されて、綾巻パッケージに巻き上げられる、空気紡績装置に関する。
【背景技術】
【0002】
市場に出回っている汎用の紡績法、つまりリング紡績、圧縮紡績及びロータ紡績もしくはオープンエンド紡績のような紡績法は、その生産性に関してその方法固有の限界にほぼ達している。固有の紡績プロセスにおける空気の使用によって、撚りを与えるための特に機械的な成分は、排除され、その代わりにニューマチック式の手段を使用することが望ましい。
【0003】
空気紡績法では、ドラフト装置において、高い全延伸程度及び高い生産速度で最終番手に延伸される。ドラフト装置の出口ローラの間から進出するスライバは、ノズルブロックを通って中空の紡績スピンドルの入口開口に達する。紡績スピンドル内へのスライバの進入時に、自由な繊維端部は、回転する空気流によって紡績スピンドルの円錐形に形成されたスピンドルヘッドの周りに絡まれ、スピンドル内への糸の引込み中に、いわゆるコア繊維の周囲にらせん状に巻き付く。コア繊維は、いわゆる巻付き繊維と一緒に、新たな糸を形成し、この糸は引き出され、糸クリアラによって監視され、場合によってはクリアリングされかつ巻き上げられる。
【0004】
品質的に高価な空気紡績された糸を製造できるようにするために、空気紡績ユニットの直ぐ上流側に支承されたドラフト装置には、特別な意味がある。この場合繊維束をさらに細くすることと、繊維のさらなる平行化が問題となる。そして、可能な限り均一な糸を紡績できるようにするためには、可能な限り均一なスライバを製造することが目的である。
【0005】
ドラフト装置には通常、相前後して位置する複数のローラ対が配置されている。これらのローラ対のそれぞれは、下側ローラと上側ローラとから成っている。スライバは、ローラ対を通して空気紡績ユニットに搬送される。ローラ対の周速度は繊維走行方向において増大するので、これによってドラフトもしくは延伸が行われる。繊維走行方向で見て、最後の2つのローラ対は、メインドラフトゾーンを形成し、その上流側に位置する部分は、プレドラフトゾーンを形成する。通常、1つ又は2つのプレドラフトゾーンを備えた複数のドラフト装置が設けられており、従ってこのようなドラフト装置は、3ローラ型ドラフト装置もしくは4ローラ型ドラフト装置と呼ばれる。
【0006】
スライバにおける品質の変動は、ドラフト装置の下流ではもはや調整することができず、糸における品質の変動として現れる。さらに、例えばドラフト装置出口ローラの回転速度によって生じる空気流のような、ドラフト工程に対する僅かな不都合な影響でさえも、個々の繊維をスライバから外に導き、それどころか部分的には引き離し、これによって糸品質を損なうことになる。このような糸品質の劣化は、紡績速度の上昇に連れて極度に高まる。
【0007】
特許文献1に記載された、空気紡績された糸を製造する方法では、既に僅かな撚りを有するフライヤ粗糸がドラフト装置に供給される。追加的に、ドラフト装置の出口ローラの特殊な配置形態によって、メインドラフトゾーンにおいてフライヤ粗糸に軽い仮撚りを与えることができる。
【0008】
特許文献2に開示された紡績機械では、繊維走行方向において紡績ユニットの下流側に、2つの中空のローラから成る仮撚り装置が配置されている。撚りはこの場合、既に完全に紡出された糸に与えられ、これによって、毛羽立ちが僅かで堅固かつ均一な紡績繊維糸を紡績できるようになっている。
【0009】
特許文献3には、全横断面にわたって撚り構造を有する短繊維糸を製造する装置及び方法が記載されている。フライヤ粗糸が最終的な糸番手に延伸された後で、均一かつ連続的な撚り付与が撚糸機構を用いて行われる。この場合に特徴的なのは、繊維走行方向で見て、もっぱら正の延伸作用を有する公知のドラフト装置の下流側に配置された負のドラフトゾーンにおいて、撚りが加えられることである。このようにして製造された糸は、方法典型的な「コルクスクリュー」を有する。すなわちこの現象は、撚りが加えられた後で発生する。それというのは、幾つかの繊維群が解撚されるのに対して、他の繊維群は収縮されるからである。このことを排除するために、別のいわゆる後ドラフトプロセスが下流側で実施される。
【0010】
特許文献4には、フライヤを使用しない紡績法と、ドラフト装置を備えた装置が開示され、細い糸、フライヤの使用なしに10tex未満の極めて細い糸をも製造することができるようになっている。通常、紡績工場の準備装置に配置されている第1のドラフト装置を用いて、2.5ktex未満の細いスライバが製造される。このスライバに公知の発明では、1メートル当たり5以上の撚りから成る保護撚りが与えられ、これによって、搬送時及びさらなる処理中に第2のドラフト装置又は空気紡績ユニットへのスライバの引込み時における誤ったドラフトが生じることが阻止できるようになっている。
【0011】
上に述べた先行技術による装置及び方法には、次のような欠点があるが判明している:
特許文献1に記載された出口ローラ相互の配置形態では、出口ローラ対が極めて早期に摩耗してしまう。さらにこの公知の配置形態によっては、もっぱら画一的な撚りしか与えることができない。特許文献2及び特許文献3によれば、スライバが既に最終的な糸番手に延伸された後で初めて、撚りが加えられる。そしてこれによって、スライバから外に飛び出した繊維及び部分的に解離した繊維の問題は、満足できるレベルで解決されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE102005022186A1
【特許文献2】DE19526048A1
【特許文献3】DE2042387A1
【特許文献4】EP1853755B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ゆえに本発明の課題は、特に、ドラフト装置出口ローラの回転速度に基づく空気流によって発生する繊維の外方への変位を最小にする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、本発明によれば請求項1の特徴部記載の構成によって、すなわち、ドラフト装置のプレドラフトゾーンに仮撚り機構が配置されていて、該仮撚り機構は、交番する回転方向で前記スライバに撚りを与え、その後で、該スライバはメインドラフトゾーンにおいて所望の糸番手に延伸され、空気紡績ユニットに供給される構成によって解決される。
【0015】
本発明の別の好適な態様は、従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明にように構成されていると、回転方向もしくは撚り方向が常に交番(反転)することによって、部分的に、メインドラフトゾーン内に進入する撚りが生ぜしめられ、かつ所望の改善が生ぜしめられる。撚りによって、スライバはよりコンパクトになり、縁部繊維は、一緒に中心へと組み込まれる。これによって、個別の繊維が空気流により出口ローラ対のニップ間隙の前でスライバから外方に導かれることが、回避される。その結果、糸均一性が改善される。
【0017】
請求項2記載の好適な態様では、紡績ユニットの上流側におけるドラフト装置は、4ローラ式ドラフト装置である。所望の均一性ひいては繊維の平行位置がより精密になればなるほど、より多くのドラフトゾーンをドラフト装置は有する。このようにして、スライバはさらに段階付けられて延伸される。
【0018】
請求項3記載の態様では、仮撚り機構は、第2のプレドラフトゾーンに配置されている。このような配置形態によって次のような利点が得られる。すなわちこの場合、スライバは既に第1のドラフトゾーンによって細くされるので、より多くの撚りを加えることができ、この場合の撚りは、メインドラフトゾーンにおける強い延伸が妨げられないことによってしか制限されていない。縁部繊維を「捕捉して組み込む」という本発明の目的は、僅かな数の撚りによって既に達成される。
【0019】
請求項4記載の好適な態様では、仮撚り機構は回転管である。この回転管は、その長手方向軸線を中心にして絶え間なく左回転と右回転に変化し、このようにしてスライバに交番する回転を伝達して撚りを加える。
【0020】
請求項5記載の態様では、仮撚り機構は、空気を供給されるノズルである。貫通路における空気ノズルの相応な配置形態及び該空気ノズルへの空気供給によって、スライバには、このような構成によってもその長手方向軸線を中心にした交互に変化する回転もしくは撚りが与えられ、この態様では機械式に運動する部分が回避される。
【0021】
本発明は、特定の仮撚り機構に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】空気紡績装置を備えた繊維機械を示す正面図である。
図2図1に示した空気紡績機の1つの紡績部の紡績装置を、簡単化して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に図面に示された、空気紡績機の略示された作業部を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1には、空気紡績機1が正面図で示されている。この繊維機械は、列をなして互いに並んで配置された多数の作業部又は紡績部2を有しており、これらの作業部2は、端部側に配置されたいわゆる端部フレーム15,16の間に位置決めされている。
【0025】
図1にさらに示されているように、各作業部2はそれぞれ供給材料、例えば紡績ケンス3内に蓄えられたスライバ4を備えている。
【0026】
さらに作業部2はそれぞれドラフト装置5、空気紡績ユニット6、糸引出し装置7、糸クリアラ8及び巻上げ装置を有する。
【0027】
所属の糸綾振り装置9は、空気紡績ユニット6においてスライバ4から製造された糸10を、綾振りした状態で巻取りパッケージ11に巻き上げるために働く。
【0028】
巻取りパッケージもしくは綾巻パッケージ11は、通常のように、図示されていないパッケージフレームに保持されていて、同様に図示されていないパッケージ駆動装置によって回転させられる。
【0029】
図1にさらに示されているように、繊維機械1の作業部2は、好ましくは、自動的に作動する操作ユニット12によって管理され、この操作ユニット12は、レール13,14上を案内されて、作業部2に沿って走行可能である。
【0030】
図2には、ドラフト装置5が、後置された空気紡績ユニット6及びスライバ4の通過状態と共に示されている。紡績ケンス3から引き出されたスライバ4は、引込みローラ対として配置された上側ローラ31及び下側ローラ32によって引き込まれ、上側ローラ33,35,39及び下側ローラ34,36,40を用いて延伸される。
【0031】
上側ローラ35及び下側ローラ36はエプロンベルト37,38と共働する。上側ローラ39及び下側ローラ40は出口ローラとして配置されている。上側ローラ33及び下側ローラ34の下流側には本発明によれば仮撚り機構41が配置されている。
【0032】
紡績ユニット6の入口側には、ノズル装置42が配置されている。ノズル43,44は、管路45を介して圧縮空気源46に接続されている。ノズル43,44から流出する空気は、回転流を生ぜしめ、この回転流が延伸されたスライバ4に加えられる。ノズル43,44には、中空の紡績円錐47が接続されている。ノズル装置42と紡績円錐47との共働によって形成された糸10は、中空の紡績円錐47を通って紡績ユニット6から引き出される。紡績円錐47を取り囲む空気室48は、別の管路49を用いて負圧源50に接続されている。このような紡績装置を用いた紡績過程のさらなる詳細は、例えばDE19926492A1に開示されている。
【0033】
スライバ4はローラ対31,32;33,34;35,36;39,40によって空気紡績ユニット6に搬送され、この場合ローラ対の周速度は、スライバ走行方向において増大する。第1のプレドラフトゾーン51においてスライバ2は、4倍にまで延伸される。第2のプレドラフトゾーン52においてスライバ4は、さらに延伸され、次に仮撚り機構41によってさらに、交互に異なった方向の撚りを掛けられる。メインドラフトゾーン53においてスライバ4は、糸番手(Garnfeinheit)に相当する最終細さを有する。出口ローラとして配置された上側ローラ39及び下側ローラ40は、三角形空間54に向けられた空気流を誘導する。この空気流は上側ローラ39と下側ローラ40との間におけるニップポイントを通過することができず、ゆえに、上側ローラ39及び下側ローラ40の側方に流れる。
【0034】
メインドラフトゾーン53内に達するプレドラフトされたスライバ4は、本発明によれば、交互に掛けられた撚り(wechselnde Drehung)を有する。これによって繊維・繊維固着(Faser-Faser-Haftung)が残り、ひいては同様にスライバ4における引張り力には十分な大きさが残り、空気によって上側ローラ39及び下側ローラ40の側方に吹き出される繊維の数を僅かに保つことが可能になる。これによって、これらの繊維も同様に紡績プロセスに供給され、毛羽立ちが僅かで均一性が改善された、品質的に高価な空気紡績された糸が生じる。
【符号の説明】
【0035】
1 空気紡績機(繊維機械)、 2 紡績部(作業部)、 5 ドラフト装置、 6 空気紡績ユニット、 7 糸引出し装置、 8 糸クリアラ、 9 糸綾振り装置、 10 糸、 11 巻取りパッケージ(綾巻パッケージ)、 12 操作ユニット、 13,14 レール、 15,16 端部フレーム、 31,33,35,39 上側ローラ、 32,34,36,40 下側ローラ、 37,38 エプロンベルト、 41 仮撚り機構、 42 ノズル装置、 43,44 ノズル、 45 管路、 46 圧縮空気源、 47 紡績円錐、 48 空気室、 49 管路、 50 負圧源、 51 第1のプレドラフトゾーン、 52 第2のプレドラフトゾーン、 53 メインドラフトゾーン、 54 三角形空間
図1
図2