特許第6207377号(P6207377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207377
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】低温液化ガス移充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 6/00 20060101AFI20170925BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20170925BHJP
   F17C 9/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F17C6/00
   B65D90/00 J
   F17C9/00
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-260815(P2013-260815)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-117752(P2015-117752A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】米内 冠
(72)【発明者】
【氏名】早坂 一隆
(72)【発明者】
【氏名】西澤 理
(72)【発明者】
【氏名】安齋 忠志
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04211086(US,A)
【文献】 特開平05−065993(JP,A)
【文献】 特開2000−191094(JP,A)
【文献】 特開昭62−098099(JP,A)
【文献】 特開平05−215298(JP,A)
【文献】 特表2010−516976(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0212330(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0153084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 6/00
B65D 90/00
F17C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯留した第1の低温液化ガス容器から低温液化ガスが充填される第2の低温液化ガス容器に前記低温液化ガスを移充填するための低温液化ガス移充填装置において、前記第2の低温液化ガス容器は、低温液化ガスを第2の低温液化ガス容器内に導入する低温液化ガス導入部と、第2の低温液化ガス容器内への低温液化ガス導入時に第2の低温液化ガス容器内のガスを導出するガス導出部とを有する移充填用連結部を備え、前記低温液化ガス移充填装置は、前記低温液化ガス導入部に接続されて第1の低温液化ガス容器内の低温液化ガスを第2の低温液化ガス容器に向けて導出する低温液化ガス導出部と、第2の低温液化ガス容器の前記移充填用連結部が着脱可能に装着される第2の低温液化ガス容器装着部と、該第2の低温液化ガス容器装着部を前記低温液化ガス導出部に向けて直線的に移動させる接続側移動手段と、前記第2の低温液化ガス容器装着部を前記低温液化ガス導出部から離れる方向に移動させる分離側移動手段と、前記第2の低温液化ガス容器装着部が前記低温液化ガス導出部に接近して前記低温液化ガス導入部と前記低温液化ガス導出部とが接続状態になったときに該接続状態を保持する接続状態保持手段とを備え、前記低温液化ガス導入部と前記低温液化ガス導出部とは、あらかじめ設定された接続状態になったときにのみ開弁状態となる移充填連結弁をそれぞれ備えるとともに、前記ガス導出部は、低温液化ガス導入部と低温液化ガス導出部とがあらかじめ設定された前記接続状態になったときにのみ開弁状態となる排気弁を備えている低温液化ガス移充填装置。
【請求項2】
前記接続側移動手段は、下方に向けて押動する接続側レバーと、該接続側レバーの押し下げ動作によって作動する複数のリンク部材を組み合わせたトグル機構とを備えている請求項1記載の低温液化ガス移充填装置。
【請求項3】
前記接続状態保持手段は、前記トグル機構が、前記移充填連結弁の接続前の状態から接続後の状態に到る間にデッドポイントを超えて回動することにより、移充填連結弁の接続状態に保持する請求項2記載の低温液化ガス移充填装置。
【請求項4】
前記分離側移動手段は、下方に向けて押動する分離側レバーと、該分離側レバーの押し下げ動作により、前記トグル機構を、前記移充填連結弁が接続している状態から前記デッドポイントを超えて移充填連結弁の接続前の状態に回動させる分離側リンク部材と、前記第2の低温液化ガス容器装着部を前記低温液化ガス導出部から離れる方向に付勢する付勢手段とを備えている請求項3記載の低温液化ガス移充填装置。
【請求項5】
前記分離側移動手段は、前記分離側レバーの押し下げ動作によって前記第2の低温液化ガス容器装着部を前記低温液化ガス導出部から離れる方向に押動する押動部材を備えている請求項4記載の低温液化ガス移充填装置。
【請求項6】
前記ガス導出部は、前記低温液化ガス導入部に隣接して設けられており、低温液化ガス導入部が低温液化ガス導出部に接続したときに、前記第1の低温液化ガス容器の上部に低温液化ガス導出部に隣接して設けられたガス排出部に同時に接続されて前記排気弁が開弁状態になり、ガス導出部から導出されるガスが前記ガス排出部を介して装置外部に排出される請求項1乃至5のいずれか1項記載の低温液化ガス移充填装置。
【請求項7】
前記低温液化ガスが医療用の液体酸素である請求項1乃至6のいずれか1項記載の低温液化ガス移充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液化ガス移充填装置に関し、詳しくは、低温液化ガスを貯留した第1の低温液化ガス容器から低温液化ガスが充填される第2の低温液化ガス容器に低温液化ガスを移充填する際に使用する低温液化ガス移充填装置であって、例えば、在宅酸素療法用液体酸素気化式供給装置における親容器(第1の低温液化ガス容器)から子容器(第2の低温液化ガス容器)に液体酸素を移充填する際に親容器と子容器とを連結する医療用酸素移充填装置として用いるのに適した低温液化ガス移充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、在宅酸素療法用液体酸素気化式供給装置は、室内に設置される大容量の親容器と、携帯型の小容量の子容器とを備えており、子容器を使用する際には、親容器から子容器に液体酸素を移充填している。親容器から子容器への液体酸素の移充填は、親容器と子容器とにそれぞれ設けられている移充填用の連結部を利用者が連結することにより行われている。親容器から子容器に液体酸素を移充填するためのシステムとして、親容器の連結手段と携帯用子容器の連結手段とを位置合わせして連結した後、子容器側の排気弁を開放することにより携帯用子容器への液体酸素の充填を開始するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4211086号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1に記載されたシステムでは、親容器の連結手段の高さまで子容器を持ち上げて、かつ、連結手段の軸の位置合わせを行う動作及び連結後に排気弁を開放する動作がそれぞれ必要になることから、筋力の弱い高齢者などでは操作が負担になることがあり、改善が望まれていた。また、上述の医療用酸素だけでなく、一般的に使用される液体酸素、液体窒素、液体アルゴン、液化炭酸ガス等の各種低温液化ガスを貯留した第1の低温液化ガス容器から低温液化ガスが充填される第2の低温液化ガス容器に低温液化ガスを移充填する際も、より手軽に、かつ、確実に移充填することができる手段が求められている。
【0005】
そこで本発明は、簡単な操作で、確実に移充填用連結部を連結して低温液化ガスの移充填を行うことができる低温液化ガス移充填装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の低温液化ガス移充填装置は、低温液化ガスを貯留した第1の低温液化ガス容器から低温液化ガスが充填される第2の低温液化ガス容器に前記低温液化ガスを移充填するための低温液化ガス移充填装置において、前記第2の低温液化ガス容器は、低温液化ガスを第2の低温液化ガス容器内に導入する低温液化ガス導入部と、第2の低温液化ガス容器内への低温液化ガス導入時に第2の低温液化ガス容器内のガスを導出するガス導出部とを有する移充填用連結部を備え、前記低温液化ガス移充填装置は、前記低温液化ガス導入部に接続されて第1の低温液化ガス容器内の低温液化ガスを第2の低温液化ガス容器に向けて導出する低温液化ガス導出部と、第2の低温液化ガス容器の前記移充填用連結部が着脱可能に装着される第2の低温液化ガス容器装着部と、該第2の低温液化ガス容器装着部を前記低温液化ガス導出部に向けて直線的に移動させる接続側移動手段と、前記第2の低温液化ガス容器装着部を前記低温液化ガス導出部から離れる方向に移動させる分離側移動手段と、前記第2の低温液化ガス容器装着部が前記低温液化ガス導出部に接近して前記低温液化ガス導入部と前記低温液化ガス導出部とが接続状態になったときに該接続状態を保持する接続状態保持手段とを備え、前記低温液化ガス導入部と前記低温液化ガス導出部とは、あらかじめ設定された接続状態になったときにのみ開弁状態となる移充填連結弁をそれぞれ備えるとともに、前記ガス導出部は、低温液化ガス導入部と低温液化ガス導出部とがあらかじめ設定された前記接続状態になったときにのみ開弁状態となる排気弁を備えていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の低温液化ガス移充填装置は、前記接続側移動手段が、下方に向けて押動する接続側レバーと、該接続側レバーの押し下げ動作によって作動する複数のリンク部材を組み合わせたトグル機構とを備えていること、前記接続状態保持手段の前記トグル機構が、前記移充填連結弁の接続前の状態から接続後の状態に到る間にデッドポイントを超えて回動することにより、移充填連結弁の接続状態に保持することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の低温液化ガス移充填装置は、前記分離側移動手段が、下方に向けて押動する分離側レバーと、該分離側レバーの押し下げ動作により、前記トグル機構を、前記移充填連結弁が接続している状態から前記デッドポイントを超えて移充填連結弁の接続前の状態に回動させる分離側リンク部材と、前記第2の低温液化ガス容器装着部を前記低温液化ガス導出部から離れる方向に付勢する付勢手段とを備えていること、前記分離側移動手段が、前記分離側レバーの押し下げ動作によって前記第2の低温液化ガス容器装着部を前記低温液化ガス導出部から離れる方向に押動する押動部材を備えていることを特徴としている。
【0009】
さらに、前記ガス導出部は、前記低温液化ガス導入部に隣接して設けられており、低温液化ガス導入部が低温液化ガス導出部に接続したときに、前記第1の低温液化ガス容器の上部に低温液化ガス導出部に隣接して設けられたガス排出部に同時に接続されて前記排気弁が開弁状態になり、ガス導出部から導出されるガスが前記ガス排出部を介して装置外部に排出されることを特徴としている。また、本発明の低温液化ガス移充填装置は、在宅酸素療法用液体酸素気化式供給装置における大容量の第1の低温液化ガス容器から携帯型の小容量の第2の低温液化ガス容器に医療用の液体酸素を移充填する際に使用する移充填装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の低温液化ガス移充填装置によれば、第2の低温液化ガス容器の移充填用連結部を装着した第2の低温液化ガス容器装着部を、第1の低温液化ガス容器の低温液化ガス導出部に向けて直線的に移動させることにより、第2の低温液化ガス容器の低温液化ガス導入部と第1の低温液化ガス容器の低温液化ガス導出部とにそれぞれ設けられている移充填連結弁を接続して開弁状態にすることができるので、第1の低温液化ガス容器から第2の低温液化ガス容器への低温液化ガスの移充填を容易に行うことができる。
【0011】
特に、下方に向けて押動する接続側レバーとトグル機構とで第2の低温液化ガス容器装着部を低温液化ガス導出部に向けて移動させることにより、簡単な操作で低温液化ガスの移充填を開始することができる。また、トグル機構のデッドポイントを利用して移充填連結弁を接続状態に保持することにより、簡単な機構で移充填連結弁を接続状態に確実に保持することができる。
【0012】
さらに、下方に向けて押動する分離側レバーの押し下げ動作と付勢手段の付勢力とを利用して移充填連結弁を分離させることにより、分離側レバーを押し下げるだけの簡単な操作で移充填連結弁を分離させることできる。また、分離側レバーの押し下げ動作によって第2の低温液化ガス容器装着部を低温液化ガス導出部から離れる方向に押動する押動部材を設けることにより、移充填の際の温度低下で移充填連結弁が凍り付いてしまった場合でも、分離側レバーの押し下げ動作によって移充填連結弁を簡単に分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の低温液化ガス移充填装置を在宅酸素療法用液体酸素気化式供給装置における医療用酸素移充填装置に適用した一形態例を示す接続状態の配管系統図である。
図2】同じく子容器を連結していない医療用酸素移充填装置を背面側から見た斜視図である。
図3】同じく医療用酸素移充填装置の平面図である。
図4】同じく医療用酸素移充填装置の底面図である。
図5図6のV−V断面図である。
図6図3のVI−VI断面図であって、移充填用連結部を装着する状態を示す図である。
図7】同じく接続側レバーを押し下げて子容器の移充填用連結部を装着した子容器装着部を液体酸素導出部方向に移動させている状態を示す断面図である。
図8】同じく移充填連結弁が接続した状態を示す断面図である。
図9】同じく移充填連結弁を接続状態に保持した状態を示す断面図である。
図10】同じく分離側レバーを押し下げて移充填連結弁を分離させている状態を示す断面図である。
図11】同じく子容器装着部が付勢手段の付勢力で子容器着脱位置に戻った状態を示す断面図である。
図12】同じく分離側レバーを押し下げて移充填連結弁を押動部材によって分離させている状態を示す断面図である。
図13】同じく子容器装着部が押動部材の付勢力で分離して付勢手段の付勢力で子容器着脱位置に戻った状態を示す側面図である。
図14】同じく断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本形態例は、本発明の低温液化ガス移充填装置を、在宅酸素療法用液体酸素気化式供給装置における医療用酸素移充填装置に適用した一形態例を示すもので、移充填される低温液化ガスは、医療用の液体酸素であり、第1の低温液化ガス容器は、室内に設置される比較的大型の断熱容器からなる親容器であり、第2の低温液化ガス容器は、外出時に携行可能な大きさ、重量を有する親容器より小型の断熱容器からなる子容器である。
【0015】
医療用酸素移充填装置11は、在宅酸素療法用液体酸素気化式供給装置における親容器21内の液体酸素を子容器31内に移充填する際に、親容器21と子容器31とを液体酸素を移充填可能な状態で連結するものであって、通常の利用時には、医療用酸素移充填装置11は、親容器21の上部に固定された状態で用いられる。
【0016】
まず、図1の配管系統図に示すように、液体酸素を貯留した親容器21は、液体酸素を蒸発させて酸素ガスとする蒸発器22と、該蒸発器22で蒸発した酸素ガスを供給する酸素ガス供給弁23と、親容器21内で蒸発したガスにより親容器21内の圧力が所定の圧力以上に上昇した場合に親容器21内のガスを供給ラインに供給するための節約弁24と、親容器21内の圧力が異常に上昇したときに親容器21内からガスを放出する安全弁25と、前記医療用酸素移充填装置11に連結される親側移充填経路26と、該親側移充填経路26に設けられた移充填元弁27と、親容器21内に液体酸素を充填する際に使用する充填弁28と、親容器21内の圧力を表示する圧力計29とを備えている。
【0017】
子容器31は、前記親容器21と同様に、液体酸素を蒸発させて酸素ガスとする蒸発器32と、該蒸発器32で蒸発した酸素ガスを供給する酸素ガス供給弁33と、子容器31内で蒸発したガスにより子容器31内の圧力が所定の圧力以上に上昇した場合に子容器31内のガスを供給ラインに供給するための節約弁34と、子容器31内の圧力が異常に上昇したときに子容器31内からガスを放出する安全弁35とを備えるとともに、液体酸素を子容器31内に導入する液体酸素導入部36と、子容器31内への液体酸素導入時に子容器31内のガスを導出するガス導出部37とを有する移充填用連結部38を備えている。
【0018】
液体酸素導入部36の先端及びガス導出部37の先端には、子容器側の移充填連結弁36a及びガス導出連結弁37aがそれぞれ設けられており、子容器側の移充填連結弁36a及びガス導出連結弁37aは、同一方向を向けて所定間隔で隣接した状態で移充填用連結部38に設けられている。
【0019】
医療用酸素移充填装置11は、親容器21から子容器31に液体酸素を移充填するための経路として、前記親側移充填経路26に接続される液体酸素導出部12と、該液体酸素導出部12の先端に設けられて前記子容器側の移充填連結弁36aに接続される移充填連結弁12aと、前記ガス導出連結弁37aにガス排出弁13aを介して接続されるガス排出部13とを備えている。また、ガス排出部13には、該ガス排出部13を通って装置外部に排出されるガス(流体)の温度を測定する温度計14が設けられている。
【0020】
図2乃至図14は、医療用酸素移充填装置11の装置構成の一形態例を示すもので、各図において、左側が前面となっている。まず、図2乃至図6において、医療用酸素移充填装置11は、親容器21の少なくとも上部を覆う筐体(図示せず)に固着するための取付片15aを下部外側に有する箱形の台座部15と、該台座部15の上面前部側に、前記移充填連結弁12a及び前記ガス排出弁13aをそれぞれ後方を向くようにして並べて配置した充填用連結弁部16と、台座部15の上面に設けられた子容器装着部17と、台座部15の正面向かって左側に設けられて子容器装着部17を充填用連結弁部16に接近する方向に移動させる際に使用する接続側レバー18と、台座部15の正面向かって右側に設けられて子容器装着部17を充填用連結弁部16から離れる方向に移動させる際に使用する分離側レバー19とを備えている。
【0021】
前記子容器装着部17は、下方が開口した箱状に形成されており、この子容器装着部17と前記台座部15とには、台座部15に対して子容器装着部17を前後方向に移動させるための各種部材が配置されている。まず、台座部15の前後両端部に設けられたガイド棒支持部材15b,15cには、前後方向に平行な2本の第1ガイド棒41が設けられており、子容器装着部17の前壁17a及び後壁17bには、前記第1ガイド棒41が貫通するガイド孔(図示せず)がそれぞれ設けられている。また、前部側のガイド棒支持部材15bと前壁17aとの間の第1ガイド棒41の外周には、子容器装着部17を後方に付勢する第1スプリング41aがそれぞれ設けられている。
【0022】
子容器装着部17の上面には、移充填用連結部38の底板に設けた3箇所の位置決め孔38aに対応した位置決めピン42aが3箇所に設けられるとともに、後端部には、子容器装着部17に装着した移充填用連結部38の後端を当接部材42bを介して支持する支持片42cが設けられている。また、前壁17aには、後部側に向かって2本の第2ガイド棒43aと1本の第3ガイド棒43bとが設けられており、子容器装着部17の下面には、第2ガイド棒43a及び第3ガイド棒43bにガイド部43cを介して移動可能にガイドされるスライド部材43dが設けられるとともに、前壁17aとスライド部材43dとの間の第2ガイド棒43aの外周には、子容器装着部17に対してスライド部材43dを後方に付勢する第2スプリング43eがそれぞれ設けられている。
【0023】
この子容器装着部17に装着される移充填用連結部38の前端部には、前記移充填連結弁12a及び前記ガス排出弁13aに対向するように、前面側を向いて前記移充填連結弁36a及び前記ガス導出連結弁37aが並べて配置されている。移充填連結弁12aと移充填連結弁36a、及び、ガス排出弁13aとガス導出連結弁37aには、あらかじめ設定された接続状態になったときにのみ自動的に開弁し、非接続状態では自動的に閉弁状態となるセルフシール式のカップリングがそれぞれ用いられており、子容器装着部17が前方に移動し、移充填連結弁12aと移充填連結弁36a、及び、ガス排出弁13aとガス導出連結弁37aが、それぞれ確実に接続された状態で液体酸素の移充填が行えるように形成されている。
【0024】
台座部15の内部には、子容器装着部17を前後進させるとともに、前進位置で保持するためのトグル機構44が設けられている。このトグル機構44は、台座部15の後部側上部に設けられた固定軸44aに基端部が連結された第1リンク部材44bと、前記スライド部材43dに設けられた移動軸44cに先端が連結された第2リンク部材44dと、第1リンク部材44bの先端部と第2リンク部材44dの基端部とを連結する連結軸44eとを備えている。また、第1リンク部材44bの中間下部には、トグル機構44を作動させる際に用いられる駆動ピン44fが設けられている。
【0025】
前記接続側レバー18の基部に連結した接続側回動角軸45aは、台座部15を左右方向に貫通しており、該接続側回動角軸45aには、接続側レバー連結側から順に、接続側歯車部材45b、接続側駆動部材45c、接続解除用部材45dが設けられている。接続側駆動部材45cの先端部には係合凹部45eが設けられており、該係合凹部45e内に前記駆動ピン44fが係合している。
【0026】
一方の分離側レバー19の基部に連結した分離側回動角軸46aは、前記接続側回動角軸45aの前部側で台座部15を左右方向に貫通しており、該分離側回動角軸46aには、分離側レバー連結側から順に、分離側歯車部材46b、分離側駆動部材46cが設けられている。また、接続側回動角軸45a及び分離側回動角軸46aには、接続側レバー18及び分離側レバー19を上昇方向に付勢する軸スプリング45f,46dがそれぞれ設けられており、前記各歯車部材45b,46bは、台座部15の側壁に設けられた回転型ダンパー45g,46eにそれぞれ歯合している。また、分離側駆動部材46cの回動端部には、分離用駆動ピン46fが設けられている。
【0027】
前記移充填連結弁12a及び前記ガス排出弁13aの間と、両弁の12a,13aの両側の3箇所には、移充填連結弁12a及びガス排出弁13aから移充填連結弁36a及びガス導出連結弁37aを、付勢手段の付勢力に頼らずに強制的に分離させるための強制分離部材47がそれぞれ設けられている。各強制分離部材47は、左右方向に設けられた強制分離回動軸47aにそれぞれ固着されており、台座部15の右側壁を貫通した強制分離回動軸47aの先端には、強制分離部材47を作動させるための強制分離駆動部材47bが設けられるとともに、分離側レバー19の中間上部には、該分離側レバー19があらかじめ設定された角度以上回動したときに強制分離駆動部材47bを回動させる強制分離用押動部47cが設けられている。
【0028】
また、台座部15の上面後部側には、子容器装着部17の位置を検出するためのリミットスイッチ48が設けられており、図示しない制御装置で、このリミットスイッチ48からの信号や前記温度計14からの信号などに基づいて、液体酸素の移充填の状態を監視できるようにしている。
【0029】
親容器21から子容器31に液体酸素を移充填する際には、まず、図6に示すように、位置決めピン42aと位置決め孔38aとを合わせて子容器31の移充填用連結部38を子容器装着部17に装着する。このとき、子容器装着部17及びスライド部材43dは、第1スプリング41a及び第2スプリング43eの付勢作用により、充填用連結弁部16から離れた基準位置に後退した状態となっており、トグル機構44は、第1リンク部材44bと第2リンク部材44dとが下方にV字状に折れ曲がった状態となっている。また、接続側レバー18は、先端の操作部18aが上昇した状態、分離側レバー19も、先端の操作部19aが上昇した状態となっている。さらに、強制分離部材47は、強制分離回動軸47aに設けられたスプリング47dによって移充填連結弁12a及びガス排出弁13aの連結面より突出しない基準位置に引っ込んだ状態となっている。
【0030】
次に、図7に示すように、接続側レバー18を下方に押し下げて接続側回動角軸45aを回動させていくと、接続側駆動部材45cが、図7において反時計回りに回動し、第1リンク部材44bの駆動ピン44fを介して第1リンク部材44bを固定軸44aを中心にして時計回りに、すなわち、第1リンク部材44bの先端が上方に向かって移動するように回動させる。第2リンク部材44dは、連結軸44eの上昇に伴って移動軸44cを充填用連結弁部16の方向に押動し、移動軸44cの移動によってスライド部材43dが第2スプリング43eを介して子容器装着部17を充填用連結弁部16の方向に押動する。
【0031】
図8に示すように、第1スプリング41aを圧縮しながら子容器装着部17が充填用連結弁部16に接近し、移充填連結弁12aと移充填連結弁36a、ガス排出弁13aとガス導出連結弁37aがそれぞれ所定の接続状態になると、子容器装着部17の充填用連結弁部16方向への移動が停止し、この状態で接続側レバー18を更に下方に強く押し下げると、第2スプリング43eを圧縮しながらスライド部材43dが充填用連結弁部16の方向に移動し、図9に示すように、第1リンク部材44bと第2リンク部材44dとが直線状態のデッドポイントを超えて上方に回動し、両リンク部材44b,44dの連結部が子容器装着部17の下面に当接し、第1スプリング41a及び第2スプリング43eの付勢力によってトグル機構44が各弁の接続状態に保持されるとともに、第2スプリング43eの付勢力によって各弁が確実に接続した状態に保持される。
【0032】
これにより、接続側レバー18を解放しても、トグル機構44の作用により、移充填連結弁12aと移充填連結弁36a、ガス排出弁13aとガス導出連結弁37aの接続状態が所定の付勢力で保持され、親容器21から子容器31に液体酸素が移充填されるとともに、子容器31内からガスが排出される。
【0033】
移充填終了後は、分離側レバー19を下方に押し下げると、図10に示すように、分離側回動角軸46aを介して分離側駆動部材46cが、図10において反時計回りに回動し、分離側駆動部材46cの分離用駆動ピン46fが接続解除用部材45dを、図10において時計回りに回動させる。この接続解除用部材45dの回動に伴い、接続側回動角軸45aを介して接続側駆動部材45cが時計回りに回動し、第1リンク部材44bが反時計回りに回動して先端が下方に向かって移動する。これにより、第1リンク部材44bと第2リンク部材44dとが第2スプリング43eを僅かに圧縮してデッドポイントを超えた後、両リンク部材44a,45aの連結部が下方に移動する。デッドポイントを超えた後は、第1スプリング41aの復元力(付勢力)によって移充填連結弁12aと移充填連結弁36a、ガス排出弁13aとガス導出連結弁37aが分離し、図11に示すように、第1リンク部材44bと第2リンク部材44dとが元のV字状に折れ曲がった状態に戻るとともに、子容器装着部17が基準位置に後退し、接続側レバー18が元の位置に上昇する。
【0034】
この後、分離側レバー19を解放してから子容器31を子容器装着部17から取り外すことにより、子容器31を携帯用の呼気用酸素供給源として使用することができる。
【0035】
接続側レバー18及び分離側レバー19の上昇速度は、回転型ダンパー45g,46eによって適当な上昇速度に調節することができ、接続側レバー18や分離側レバー19が急激に上昇することがなく、安全性を十分に確保することができる。
【0036】
また、移充填連結弁12aと移充填連結弁36aとの周囲に空気中の水分が付着して凍り付いてしまい、第1スプリング41aの復元力では分離できないような場合でも、図12乃至図14に示すように、分離側レバー19を更に下方に押し下げることにより、分離側レバー19の強制分離用押動部47cが強制分離駆動部材47bを、強制分離回動軸47aを中心に時計回りに回動させ、強制分離回動軸47aを介して強制分離部材47を移充填連結弁12a及びガス排出弁13aの連結面から突出させ、子容器装着部17を後方に押動して移充填連結弁12aと移充填連結弁36a、ガス排出弁13aとガス導出連結弁37aを強制的に分離させることができる。分離後は、第1スプリング41aの復元力により、前述の図11の状態に戻る。
【0037】
このように、接続側移動手段や接続状態保持手段、分離側移動手段として、下方に押し下げる接続側レバー18及び分離側レバー19を用いるとともにトグル機構を用いることにより、親容器21側に設けられた子容器装着部17に、子容器31側に設けられた移充填用連結部38を装着した状態で、接続側レバー18及び分離側レバー19を所定の順序で下方に押し下げる操作だけで親容器21から子容器31への液体酸素の移充填を行うことができる。これにより、筋力の弱い高齢者などでも、容易かつ確実に液体酸素の移充填を行うことができる。特に、両レバー18,19の操作方向を、いずれも下方へ押し下げる動作とすることにより、左右方向や上方向に力を加える場合に比べて容易かつ確実に操作することが可能であり、また、親容器21が軽量な場合でも、両レバー18,19の操作によって親容器21が揺れたり、倒れたりするおそれもなく、安定した状態で移充填操作を行うことができる。
【0038】
なお、本発明は、前記形態例に限るものではなく、例えば、接続側移動手段や接続状態保持手段は、前後方向に操作するものであってもよく、電源が得られればモーターなどの電動構造を採用することも可能であり、接続状態保持手段は、適宜な係合手段を用いることもできる。さらに、前記形態例に示す医療用の液体酸素の他、産業用、実験用等に用いられる液体酸素、液体窒素、液体アルゴン、液化炭酸ガス等の低温液化ガスを、適宜な大きさの第1の低温液化ガス容器から第2の低温液化ガス容器へ移充填するための移充填装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
11…医療用酸素移充填装置、12…液体酸素導出部、12a…移充填連結弁、13…ガス排出部、13a…ガス排出弁、14…温度計、15…台座部、15a…取付片、15b,15c…ガイド棒支持部材、16…充填用連結弁部、17…子容器装着部、17a…前壁、17b…後壁、18…接続側レバー、18a…操作部、19…分離側レバー、19a…操作部、21…親容器、22…蒸発器、23…酸素ガス供給弁、24…節約弁、25…安全弁、26…親側移充填経路、27…移充填元弁、28…充填弁、29…圧力計、31…子容器、32…蒸発器、33…酸素ガス供給弁、34…節約弁、35…安全弁、36…液体酸素導入部、36a…移充填連結弁、37…ガス導出部、37a…ガス導出連結弁、38…移充填用連結部、38a…位置決め孔、41…第1ガイド棒、41a…第1スプリング、42a…位置決めピン、42b…当接部材、42c…支持片、43a…第2ガイド棒、43b…第3ガイド棒、43c…ガイド部、43d…スライド部材、43e…第2スプリング、44…トグル機構、44a…固定軸、44b…第1リンク部材、44c…移動軸、44d…第2リンク部材、44e…連結軸、44f…駆動ピン、45a…接続側回動角軸、45b…接続側歯車部材、45c…接続側駆動部材、45d…接続解除用部材、45e…係合凹部、45f…軸スプリング、45g…回転型ダンパー、46a…分離側回動角軸、46b…分離側歯車部材、46c…分離側駆動部材、46d…軸スプリング、46e…回転型ダンパー、46f…分離用駆動ピン、47…強制分離部材、47a…強制分離回動軸、47b…強制分離駆動部材、47c…強制分離用押動部、47d…スプリング、48…リミットスイッチ
図1
図2
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