特許第6207382号(P6207382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207382
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】動的骨アンカー
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/68 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   A61B17/68
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-265416(P2013-265416)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2014-128657(P2014-128657A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2016年1月22日
(31)【優先権主張番号】12199487.5
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/746,367
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ビルフリート・マティス
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−014785(JP,A)
【文献】 特表2008−534096(JP,A)
【文献】 特表2008−531210(JP,A)
【文献】 特表2007−510483(JP,A)
【文献】 特開2003−010199(JP,A)
【文献】 特開平06−125918(JP,A)
【文献】 特表平04−502567(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0248089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/68 − A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的骨アンカーであって、
第1の端(21)と、第2の端(22)と、前記第1の端および前記第2の端を通って延在する縦軸(L)とを有する縦方向のコア部材(2,2′,2″,2″′)と、
前記コア部材上に設けられ、外側の骨係合構造(31)を有する少なくとも1つの管状部(3,3′,3″)とを備え、
前記動的骨アンカーは、組立て状態で、第1の構成と、該第1の構成とは異なる第2の構成とをとることができ、
前記第1の構成では、前記少なくとも1つの管状部(3,3′,3″)は前記縦軸に沿って前記コア部材上を摺動するように構成されるが、前記縦軸(L)の周りを回転することができず、
前記コア部材(2,2′,2″,2″′)は、前記縦軸を横切る方向において前記少なくとも1つの管状部に対して可動である、動的骨アンカー。
【請求項2】
前記少なくとも1つの管状部(3,3′,3″)の内面(34)は、前記縦軸(L)に垂直な平面内に多角形状、好ましくは四角形状を有し、前記コア部材(2,2′,2″,2″′)は、対応する外形を有する前記少なくとも管状部に対応する位置に接続部(25,25′)を含む、請求項1に記載の動的骨アンカー。
【請求項3】
前記少なくとも1つの管状部(3,3′,3″)は、自身の外面に骨ねじ山(31)を有する、請求項1または2に記載の動的骨アンカー。
【請求項4】
前記第1の構成において前記縦軸に沿った前記少なくとも1つの管状部の動きを制限する第1の止め具(42)および第2の止め具(52)が前記コア部材に設けられる、請求項1〜のいずれかに記載の動的骨アンカー。
【請求項5】
前記第1の止め具(42)は、前記コア部材の前記第1の端(21)にまたはこの近傍に設けられた先端部材(4)によって、好ましくは接続可能な先端部材によって形成される、請求項に記載の動的骨アンカー。
【請求項6】
前記第2の止め具(52)は、前記コア部材の前記第2の端(22)にまたはこの近傍に設けられた頭部(5,5′,5″,5″′)によって形成される、請求項またはに記載の動的骨アンカー。
【請求項7】
前記頭部(5)は、前記少なくとも1つの管状部に逆らって動くことができるように、前記コア部材(2)上を摺動可能である、請求項に記載の動的骨アンカー。
【請求項8】
前記コア部材(2)は自身の第2の端(22)に牽引部を含み、前記骨アンカーは、前記コア部材を引張り、かつ前記頭部(5)を前記少なくとも1つの管状部(3′)に押付けることによって、第2の構成にされる、請求項に記載の動的骨アンカー。
【請求項9】
前記コア部材(2)は、自身の第2の端(22)から離れたところに、予め定められた折取部(28)を含む、請求項1〜のいずれかに記載の動的骨アンカー。
【請求項10】
前記頭部(5′)は、好ましくはねじ山接続によって、縦方向において少なくとも1つの管状部までの調節可能な距離で前記コア部材に接続されるように構成される、請求項に記載の動的骨アンカー。
【請求項11】
前記コア部材(2″)は形状記憶特性を有する材料からなり、前記コア部材(2″)は、前記第1の構成では第1の長さになり、第2の構成では第2の長さになるように構成され、前記第1の長さは前記第2の長さよりも長い、請求項1〜および10のいずれかに記載の動的骨アンカー。
【請求項12】
前記コア部材は、熱を印加すると前記第2の長さから前記第1の長さに変化するように構成される、請求項11に記載の動的骨アンカー。
【請求項13】
少なくとも2つの管状部が設けられ、前記コア部材(2″′)は、互いに対向する前記管状部(3,3′)の端同士を橋架する位置に少なくとも1つの接続部(25′)を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の動的骨アンカー。
【請求項14】
前記動的骨アンカーは、前記少なくとも1つの管状部(3,3′,3″)が前記コア部材(2,2′,2″)に対して固定される第2の構成を取り得る、請求項1〜および10のいずれかに記載の動的骨アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動的骨アンカーに関する。動的骨アンカーは、縦方向のコア部材と、コア部材上に設けられた複数の管状部とを含む。第1の構成では、縦方向において管状部同士の間に距離があり、管状部は互いに対して可動である。骨アンカーが第1の構成にある場合、コア部材は縦軸を横切って小さく動くことができる。任意の第2の構成では、管状部は互いに当接し、動くことができない。動的骨アンカーは、椎弓根ねじ(pedicle screw)または骨プレートなどの任意の種類の骨固定または安定化装置内で、当該装置の部品の制限された動きを可能にするために用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
動的骨固定要素は、米国特許出願公開第2009/0157123号から公知である。当該要素は、骨係合部品および負荷保持係合部品を含む。骨係合部品は、患者の骨および管腔に係合するための複数のねじ山を含む。負荷保持部は、管腔内に少なくとも部分的に延在するシャフト部を有する。シャフト部の遠端は管腔に結合され、シャフト部の外面の少なくとも一部は管腔の内面の少なくとも一部から隙間によって間隔が空けられているため、頭部は骨係合部品に対して動くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0157123号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、骨または椎骨内に骨アンカーをアンカー固定した後の骨アンカーの頭部の制限された動きを可能にする、動的骨アンカーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の動的骨アンカーによって達成される。さらなる展開が従属請求項において与えられる。
【0006】
この動的骨アンカーによって、固定または安定すべき骨の部分または椎骨が、互いに対して制御かつ制限された動きを実行することができる。特に、骨アンカーの頭部は、骨アンカーの中心軸に対して小さな回転および/または並進運動を行なうことができる。
【0007】
骨アンカーは組立てられた状態において、頭部が可動である第1の構成と、任意に、骨アンカー全体が剛性装置である第2の構成とを取り得る。動的骨アンカーの構成は、第1の構成または第2の構成に変更可能である。いくつかの実施形態では、骨アンカーを骨の一部または椎骨に挿入する際に第2の構成が用いられ得る。骨アンカーは挿入時に剛性を有し得るため、公知の態様での簡単な挿入が可能である。第1の構成は、移植された骨アンカーの構成であり得る。
【0008】
動的骨アンカーの骨係合構造は、骨ねじ山や、返しなどの別の係合構造であり得る。骨係合構造が骨ねじ山である場合、骨アンカーの管状部に関連付けられるねじ山部は、第2の構成において骨アンカーの外面に沿って連続的な骨ねじ山が設けられるように、互いに対して方向付けられる。この方向は、骨アンカーが第1の構成を取っても変化しない。これによって、第2の構成に戻すことによって移植後に骨アンカーの位置を修正する可能性が生まれる。
【0009】
動的骨アンカーは、さまざまな設計を取り得る頭部を含み得る。特に、動的骨アンカーを、多軸骨ねじの受け部と、または骨ねじを旋回可能に収容するための球状座部を有する孔を含む骨プレートとの組合せに適したものにする、球状頭部が用いられ得る。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面によって実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る動的骨アンカーの分解斜視図である。
図2】組立てられた状態の図1の骨アンカーの斜視図である。
図3図1の動的骨アンカーのコア部材の側面図である。
図4図3のコア部材の先端の底面図である。
図5】第1の実施形態に係る動的骨アンカーの先端部材の斜視図である。
図6】コア部材の縦軸を含む平面で切取った、図5に示される先端部材の断面図である。
図7図1の動的骨アンカーの頭部の底部からの斜視図である。
図8】コア部材の縦軸を含む平面で切取った、図7の頭部の断面図である。
図9図1に示される第1の実施形態に係る第1の構成における動的骨アンカーの管状部の側面図である。
図10図9の線A−Aに沿った断面図である。
図11】管状部が互いに当接している、第2の構成における図9の管状部材の側面図である。
図12】縦軸を含む平面で切取った、第2の構成における図1および図2の動的骨アンカーの断面図である。
図13a】管状部材が互いに短い距離だけ間隔が空けられている、第2の構成における第1の実施形態に係る動的骨アンカーの断面図である。
図13b図13aの詳細の拡大図である。
図14】第1の実施形態に係る動的骨アンカーがアンカー固定要素として用いられる多軸ペディクルねじの断面図である。
図15】骨プレートとともに用いられる第1の実施形態に係る動的骨アンカーの断面図である。
図16】第2の実施形態に係る動的骨アンカーの分解斜視図である。
図17】組立てられた状態の第2の実施形態に係る動的骨アンカーの分解斜視図である。
図18】縦軸を含む平面で切取った、第2の構成における第2の実施形態に係る動的骨アンカーの断面図である。
図19】管状要素が互いに短い距離だけ間隔が空けられている、第1の構成における図18の動的骨アンカーの断面図である。
図20】第3の実施形態に係る動的骨アンカーの分解斜視図である。
図21】組立てられた状態の図20の動的骨アンカーの斜視図である。
図22】第3の実施形態に係る動的骨アンカーの頭部の底部からの斜視図である。
図23】縦軸を含む平面で切取った、第2の構成における第3の実施形態に係る動的骨アンカーの断面図である。
図24a】管状部が互いに短い距離だけ間隔が空けられている、第1の構成における図23の動的骨アンカーの断面図である。
図24b図24aの詳細の拡大図である。
図25】第4の実施形態に係る動的骨アンカーの分解斜視図である。
図26】組立てられた状態の図25の動的骨アンカーの斜視図である。
図27】第4の実施形態に係る動的骨アンカーの頭部の底部からの斜視図である。
図28a】縦軸を含む平面で切取った、管状部が互いに短い距離だけ間隔が空けられている第1の構成における第4の実施形態に係る動的骨アンカーの断面図である。
図28b図28aの詳細の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および図2を参照して、コア部材2と、複数の管状部3,3′,3″と、先端部材4と、頭部5とを含む、第1の実施形態に係る動的骨アンカー1が示される。管状部3,3′,3″はコア部材2上に配置され、先端部材4および頭部5はコア部材2に接続されて骨アンカー1を形成し得る。さらに図3を参照して、コア部材2は、第1の端21と、反対側の第2の端22と、第1の端21および第2の端22を通って延在し、かつコア部材が曲がったり歪んだりしていないときに骨アンカーの中心軸を形成する縦軸Lとを含む。
【0013】
コア部材2は第1の端21に先端を有し得、先端21に隣接して、図3に示されるようなねじ山であり得る接続構造23を有する。接続構造23と第2の端22との間の中央部24はロッド形状であり、円形断面を有する。接続構造23から離れたところに、中央部24の長さに沿って複数の接続部25が設けられ、接続部25は互いに等距離だけ間隔が空けられている。接続部25は、図1および図4に見られるように四角形の外形を有し、径方向においてロッド形状部24の外面を越えて延在するような厚みを有する。示される実施形態では、図1に示される3つの管状部3,3′,3″をコア部材2に接続するように作用する3つの接続部25が設けられる。第2の端22に向かって最後の接続部25から離れたところに、以下に説明するように頭部5をコア部材2に接続するように作用するさらなる接続部26が設けられる。接続部26も四角形の外形を有する。第2の端22に向かう方向において頭部5のための接続部26に隣接して、ロッド形状部24の直径よりも大きい外径を有し、かつ頭部5に収容される円筒部27が設けられる。円筒部27と第2の端22との間に、予め定められた折取部28が設けられる。予め定められた折取部28は、ロッド形状部24の外径が減少した領域によって実現される。予め定められた折取部28は、骨アンカーを骨に移植した後にロッド形状部24の長さを調整するように作用する。
【0014】
先端部材4は、図1および図5図6に示されるように、接続構造23と協働するように構成された軸方向のねじ穴41を有する円錐の部分である。先端部材4および第1の端21の先端部が、骨アンカーの先端を形成する。先端部材4はコア部材2に螺合されるとロッド形状部24に当接し、特に図12に見られるように径方向においてロッド形状部24を越えて延在する。これによって、管状部3,3′,3″のための第1の環状止め面42が設けられる。
【0015】
図7および図8を参照して、頭部5を説明する。頭部5は、第1の端51と、反対側の第2の端52と、第1の端51に隣接した球状部形状の部分53とを含む。球状部形状の部分53と第2の端52との間に、実質的に円筒形状を有する短い首部54が存在する。四角形の内形を有する凹部55が、第2の端52から球状部53内に延在する。凹部55は、コア部材2の接続部26を収容するように作用し、接続部26と頭部5との間に嵌合接続を提供するように適合される。
【0016】
骨アンカーの管状シャフトは複数の管状部3,3′,3″に分割され、第1の端の部分3は先端部材4に隣接し、第2の端の部分3′は頭部5に隣接し、1つ以上の中間の管状部3″が設けられる。管状部3,3′,3″の各々は、自身の外面に骨ねじ山31を有する。管状部3,3′,3″が互いに当接すると、各管状部材の骨ねじ山は当接する管状部材の骨ねじ山に嵌合するため、連続的な骨ねじ山を有する連続的な管状シャフトが形成される。第1の端部材3は、管状部がコア部材2上に配置されるとコア部材の第1の端21に向かってテーパ状になるテーパ部32を有し得る。第2の端の管状部材3′は、コア部材2の第2の端22に向けられた円筒部33を含み得る。円筒部33およびテーパ部32にはねじ山がない。骨ねじ山31は任意の好適な骨ねじ山であり得ることを理解すべきである。骨ねじ山は各管状部上に完全に延在する必要はなく、骨ねじ山はすべての管状部上に存在する必要もない。
【0017】
管状部3,3′,3″の内部34は中空であり、縦軸に垂直な平面内に、コア部材2の接続部25の形に適合された形状を有し得る。示される実施形態では、形状は四角形である。しかし、接続部の形に応じて、管状部3,3′,3″が接続部25上に配置されたときに管状部が縦軸の周りを回転することを防止する任意の多角形または他の形状が可能である。
【0018】
管状部の長さは、管状部がコア部材2上に配置されて先端部材4に当接したときに、接続部26と第2の端の部分3′の自由端との間に距離があるような長さである。
【0019】
コア部材2、管状部3,3′,3″、先端部材4、および頭部5は好ましくは、たとえばチタンもしくはステンレス鋼などの生体適合性金属、特にニチノールなどのたとえばニッケルチタン合金などの生体適合性合金、またはたとえばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの生体適合性ポリマー材料などの、生体適合性材料からなる。これらの部分はすべて同一の材料からなってもよいし、異なる材料からなってもよい。
【0020】
動的骨アンカー1は以下のように組立てられる。円筒部27が頭部5の凹部56に収容されて凹部56の底部56aに当接するまで、コア部材を第1の端21を用いて凹部56,55の中を通って導く。そして、各管状部3,3′,3″が接続部25上に位置決めされるように管状部をコア部材2上に配置する。その後、先端部材4をコア部材2に装着する。コア部材2の第2の端22に隣接する部分は、牽引部として作用する。
【0021】
組立てられた状態では、動的骨アンカー1は第1の構成を取り得、当該構成では、管状部3,3′,3″はコア部材2上に回転固定されているが、管状部同士の間に短い距離があるので、制限された態様で軸方向に摺動可能である。第1の構成では、管状部3,3′,3″が限られた範囲内で軸方向に動くことができるため、頭部5が装着されたコア部材2は縦軸Lから離れるように管状部に対して動くことができる。
【0022】
動的骨アンカーは第2の構成を取り得、当該構成では、頭部の端面52が第2の端の部材3′の自由端に当接し、管状部を先端部材4の止め具42に向けて移動させる。第2の構成では、管状部は軸方向に動くことができない。第1の構成と同様に、管状部3,3′,3″も回転できない。
【0023】
使用時、コア部材2は工具(図示せず)によって係合し、頭部5の端面51から切離される一方で、頭部5は工具用のアバットメントとして作用し得る。これによって、図12に示されるように頭部5が第2の端の部分3′を押圧し、すべての管状部3,3′,3″を先端部材4に向けて移動させる。管状部3,3′,3″同士の間の距離がなくなり、骨アンカー全体が自身の外面に連続的な骨ねじ山を有する。この第2の構成では、頭部5および管状部3,3′,3″は予め張力をかけられる。骨アンカーは剛性を有し、すなわち、これらの部分は相対的に動かない。骨アンカーは骨の一部または椎骨に挿入され得る。挿入力は、接続部25を介して管状部に伝達される。管状部3,3′,3″は回転できないため、ねじ山部の互いに対する向きが維持される。
【0024】
挿入後、予張力(pre-tension)が維持されるようにコア2が工具によって解放される。頭部5は、円筒部27が頭部5内でアバットメント56aに当接するように、軸方向にわずかに動くことができる。この結果、管状部3,3′,3″同士の間に小さな隙間が生じ、管状部同士の互いに対する制限された動きが可能になる。図13aに示されるように、コアが装着された頭部は、縦軸Lを横切る方向において、管状部3,3′,3″に対して小さな並進および/または回転運動を行うことができる。このような運動は、コア部材2のロッド形状部24と管状部との間の間隙26a(図13b)によって可能となる、直線位置から離れたコア部材の歪みに基づく。さらに図13bに見られるように、管状部は限られた範囲内で可動であるため、頭部の端面52は管状部3′に対して可動である。
【0025】
最後に、コアは、予め定められた折取部28で第2の端22を折取ることによって短くされ得る。
【0026】
安定化装置とともに用いられる骨アンカーの第1の適用例を図14に示す。第1の実施形態に係る骨アンカーは受け部60に結合されて多軸骨アンカーを形成する。受け部60は実質的に円筒形状であり、上端61と、下端62と、上端61から下端62からのある距離まで延在する同軸ボア63とを含む。ボア63は下端62に向かって狭くなり、下端62の近傍に開口部64を提供する。開口部64の近くに、頭部5を旋回可能に受けるための座部65が設けられる。安定化ロッド70を受けるためのU字型凹部が、上端61から上端61からのある距離まで延在する。このU字型凹部によって2つの自由脚部66,67が設けられ、これらは、止めねじ80などのロック部材と協働するための雌ねじ山68を有する。さらに、ロック部材80を締付けることによって頭部5が一定の角度位置でロック固定され得るように、頭部5に圧力を印加する圧力部材90が設けられる。骨アンカーは他の設計の受け部および多軸骨ねじとともに用いられてもよい。また、コア部材2の頭部5は、ロッドおよびロック部材を受けるための部分を含み、他の単軸骨ねじから公知であるようにロッドを固定するように設計されてもよい。
【0027】
使用時、少なくとも2つの多軸骨アンカーが隣接する椎骨または骨の部分に挿入され、ロッド70を介して接続される。骨アンカー1が骨の部分または隣接する椎骨に挿入されると、頭部5は管状部に対して制限された動きが可能になる。頭部5が受け部60にロック固定されると、骨アンカーは動的な安定を提供し、これによって、骨の部分の互いに対する小さな動き、または脊柱の移動部の小さな動きが可能になる。
【0028】
第2の適用例を図15に示す。この例では、第1の実施形態に係る骨アンカー1が、2つの骨アンカーの頭部5をそれぞれ受けるための座部100bを有する孔100aを含む骨プレート100とともに用いられる。2つの骨アンカーは隣接する骨の部分に挿入され、骨プレート100は骨折部位の少なくとも一部を橋架する。特定の適用例では、2つの孔100aの中心軸同士の間の距離は、骨アンカー1の縦軸L同士の間の距離よりもやや小さい。コア部材2が装着された頭部5は縦軸を横切る方向にわずかに動くことができるため、骨の部分を骨折部位で結び付けることができる。
【0029】
図16図19を参照して、動的骨アンカーの第2の実施形態を説明する。第2の実施形態の動的骨アンカー1′は、コア部材および頭部の設計が第1の実施形態の動的骨アンカー1と異なる。第1の実施形態と同一または同様の部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。コア部材2′は、その第2の端22に隣接して、たとえばスロット29aなどの工具用の係合部29aを有する円筒部29を含む。円筒部29に続いて、頭部に設けられた対応するねじ山と協働するように構成された雄ねじを有するねじ山部26′がある。図18および図19に示される頭部5′は、コア部材2′に接続するように作用する凹部55′が円形であり、かつコア部材2′のねじ山接続部26′と協働する雌ねじ山を有するという点で、頭部5と異なる。
【0030】
図17図19に示される組立てられた状態では、頭部5′がコア部材2′に螺合され、その自由端面52で第2の端部材3′の自由端面を押圧する。コア部材2′と頭部5′との間のねじ山接続によって、管状部を先端部材4に押付けることによって管状部はコア部材2′に対して予め張力がかけられ得る。図18に示される動的骨アンカーのこの第2の構成では、動的骨アンカーは剛性を有する。動的骨アンカーは、第2の構成では骨に挿入され得る。たとえば、スロット29aが工具と係合し得、骨アンカー全体が骨にねじ込まれ得る。
【0031】
骨に挿入した後、骨アンカーの第1の構成を示す図19に示されるように円筒部29が凹部56内のアバットメント56aに当接するまで、コア部材2′が頭部5′に対して逆向きに螺合され得る。これによって、予張力が除かれ、管状部は限られた範囲内で軸方向に可動になる。
【0032】
図20図24bを参照して、動的骨アンカーの第3の実施形態を説明する。第3の実施形態の骨アンカー1″は、コア部材2″および頭部5″の設計が先の実施形態と異なる。他の部分はすべて先の実施形態と同様または同一であり、その説明は繰返さない。コア部材2″は、頭部5″に接続するための接続部26″を含む。接続部26″は多角形の外形、特に圧入接続によって頭部5″の対応する四角形状の凹部55に接続されるように構成された四角形状を有する。頭部5″は反対側に、工具用の係合部58、たとえばトルクス(登録商標)形状の凹部58を有する。
【0033】
コア部材2″は、ニッケル−チタン系形状記憶合金系材料、好ましくはニチノールからなる。当該材料は形状記憶特性を示す。
【0034】
コア部材2″は、形状記憶効果によって達成される圧入接続によって頭部5″に接続される。たとえば、接続部26″は、接続部26″の平坦な側面が押付けられるようにマルテンサイト終了温度Mfよりも低い温度に冷却される。マルテンサイト位相の変形能力によって、接続部26″は凹部55に容易に挿入され得、加熱後に四角形状に戻って圧入接続を達成し得る。
【0035】
骨アンカーの第1および第2の構成を提供するために、形状記憶効果も用いられる。まず、コア2″が装着前にマルテンサイト終了温度Mfよりも低い温度に冷却され得、縦方向にやや圧縮され得ることによって、その長さが短くなる。マルテンサイト冶金状態では、頭部5″が装着されたコア部材2″が、管状部3,3′,3″および先端部材4とともに組立てられる。オーステナイト終了温度Afよりも高い温度まで加熱した後、コア部材2″はその本来の非圧縮状態および本来の長さになる。加熱後にコア部材2″が延びることによって頭部5″が管状部から離れるように動くため、管状部は軸方向において互いに可動になる。
【0036】
加熱は、たとえば骨アンカーを骨に挿入したときに体温を印加することによって実行されてもよいし、外部の加熱装置を用いて別個の加熱工程で実行されてもよい。
【0037】
図25図28bを参照して、動的骨アンカーの第4の実施形態を説明する。第4の実施形態の動的骨アンカー1″′は、コア部材2″′および頭部5″′の設計が先の実施形態と異なる。先の実施形態と同様または同一の部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。コア部材2″′は、ねじ山部の形態の係合部23に隣接して第1の接続部25′を含み、第1の接続部25′は、他の接続部25′と同様に四角形の外形を有し、先端部材4のためのより大きなアバットメント面を提供する。他の接続部25′は、図28aに詳細に示されるように、管状部の端が互いに当接する位置に対応する位置P1,P2などに設けられる。こうして、管状部3,3′,3″はそれぞれの自由端において接続部25′によって支持される。コア部材2″′は第2の端22に隣接して、第3の実施形態と同様に四角形の外形を有する接続部26″′を含む。頭部5″′は第1の実施形態の頭部と同様であり、接続部26″′に接続するための四角形状の凹部55と、その反対に工具と係合するための凹部58とを有する。接続部26″′は、接続部25′を越えて径方向に延在する。さらに、接続部26″′の軸方向の長さは頭部5″′内の凹部55の深さよりもやや短いため、頭部5″′の首部内に小さな隙間27aが設けられ得、第1の構成における頭部5″′の動きがさらに促進される。接続部26″′は、たとえば圧入接続によって頭部5″′に接続され得る。
【0038】
先の実施形態と同様に、管状部3,3′,3″が互いに対して可動であり、かつ頭部5″′が管状部に対して制限された動きを実行することができる、図28aおよび図28bに示される構成が設けられる。管状部3,3′,3″の当接する端面を介してより高い力が伝達可能であるため、動的骨アンカーはこの構成において挿入される。
【0039】
第4の実施形態についても、コア部材2″′はニチノールなどのNiTi形状記憶合金系材料からなり得ることを理解すべきである。またこの実施形態でも、コア部材2″′は当該部材をマルテンサイト位相で圧縮することによって短くされ得、骨アンカーを骨に挿入した後に加熱することよって延ばされ得る。したがって、隙間のサイズが異なる2つの動的構成を得ることができる。
【0040】
実施形態で説明した動的骨アンカーのさらなる適合または変形例が、本発明の範囲から逸脱することなく当業者によって達成され得る。たとえば、頭部は、骨プレート、安定化ロッドを収容するための受け部などの他の安定化装置に接続するのに適した任意の他の形状を有し得る。コア部材の自由端が別の装置との接続に適している場合は、いくつかの実施形態では頭部を省略してもよい。
【0041】
任意の種類の先端が設けられ得る。先端部材4はたとえば完全な円錐であってもよく、第1の端21には先端部材に接続するための接続構造しか設けられなくてもよい。
【0042】
骨係合構造については、たとえば粗面などの、返しまたは任意の他の骨係合構造が設けられ得る。
【0043】
少なくとも1つの管状部、好ましくは2つ以上の管状部が設けられ得る。異なる実施形態の特徴を互いに組合せてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 動的骨アンカー、2 コア部材、3,3′,3″ 管状部、4 先端部材、5 頭部、21 第1の端、22 第2の端、25 接続部、26 接続部、27 円筒部、31 骨ねじ山、33 円筒部、34 内部。
図1
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図28a
図28b