(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207391
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】裁断機の排出案内装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/32 20060101AFI20170925BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20170925BHJP
B26D 7/20 20060101ALI20170925BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B26D7/32 B
B26D7/18 C
B26D7/20
B26D5/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-273209(P2013-273209)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-127076(P2015-127076A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101638
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 峰太郎
(72)【発明者】
【氏名】有北 礼治
(72)【発明者】
【氏名】上山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】羽山 徹
【審査官】
豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−245797(JP,A)
【文献】
特開平6−305620(JP,A)
【文献】
再公表特許第2009/060566(JP,A1)
【文献】
中国実用新案第201390548(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/00
B26D 7/00 − 7/32
B65H 29/16
B65H 5/02
B41J 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛毛ブラシを並べて搬送コンベアの表面が形成され、表面に載置されるシート材を吸引保持可能な裁断テーブルと、
裁断テーブルの搬出側で、搬送コンベアの端部を裁断テーブルの表面よりも高い位置で覆う搬出テーブルと、
裁断テーブルの表面と搬出テーブルの上面との間の段差部分に設けられ、裁断されて搬送コンベアで搬出される被裁断材を、裁断テーブルの表面から搬出テーブルの上面まで、傾斜する斜面で案内するためのコームと、
を有する裁断機に対し、裁断テーブルから搬出テーブルまでの経路で被裁断材の排出を案内する、裁断機の排出案内装置であって、
コームの斜面と、搬出テーブルのうち、少なくともコームの斜面から移行する部分を含む範囲とを、上方から被裁断材の2層分の厚みよりも小さい間隔で覆い、被裁断材が該間隔を搬出方向に通過するように案内する、通過案内手段を、
含むことを特徴とする、裁断機の排出案内装置。
【請求項2】
前記通過案内手段は、ベルトが周回するように駆動されるコンベアであり、ベルトの下面で接触して前記被裁断材を、前記搬出方向に案内する、
ことを特徴とする請求項1記載の裁断機の排出案内装置。
【請求項3】
前記搬出側には、前記搬出テーブルに続いて、被裁断材を取出す作業を行うためのピックアップコンベアが配置され、
前記コンベアは、
ピックアップコンベア側から駆動されるとともに、
前記コーム側が遊端となり、ピックアップコンベア側から駆動を受ける軸が基端となる揺動で、コーム側が手動で開閉可能である、
ことを特徴とする請求項2記載の裁断機の排出案内装置。
【請求項4】
前記通過案内手段は、
前記範囲でコームおよび搬出テーブルの上面に対応する形状に屈曲するように形成されるガイド板であり、
前記間隔が前記被裁断材の1層分の厚みよりも小さい部分が存在しても、被裁断材が通過する際には、弾性変形で間隔を大きくして通過を許容しつつ、前記搬出方向に案内する、
ことを特徴とする請求項1記載の裁断機の排出案内装置。
【請求項5】
前記通過案内手段は、前記裁断テーブルの幅方向に対し、複数に分けて、かつ間隔をあけて設けられる、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の裁断機の排出案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁断テーブルが搬送コンベアとしての機能も有する裁断機の搬出側に設けられ、裁断された被裁断材が円滑に排出されるように案内する、裁断機の排出案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、裁断機は、衣料品を縫製するためのパーツなどとして、布帛などのシート材を裁断するために使用されている(たとえば、特許文献1参照)。近年は、衣料品に限らず、家具など、各種産業用資材のシート材の裁断にも、裁断機が使用されている。熱硬化性樹脂が硬化の途中段階の状態で含浸されているプリプレグなども、シート材の素材として使用される。
【0003】
図1を参照して、裁断機1の概略的な構成を説明する。裁断機1が備える裁断テーブル2は、搬送コンベア3としての機能を備え、表面にシート材4を載置して、吸引保持しながら裁断する。裁断された被裁断材4aは、搬送コンベア3から搬出テーブル6の上面に排出される。搬送コンベア3は、剛毛ブラシ5を並べて形成されるので、搬出テーブル6の上面と裁断テーブル2の表面との間では、段差が生じる。この段差の部分を、被裁断材4aが円滑に移動するように、コーム7が設けられている。コーム7は、搬出テーブル6から搬送コンベア3の表面側に突出されている複数の爪7aを有する。爪7aの上縁は、搬送コンベア3の表面から搬出テーブル6の上面まで続く斜面の一部となる。
【0004】
シート材4から衣料品のパーツなどを裁断する場合、搬送方向に連続するシート材4の残材と被裁断材4aとが搬送コンベア3で搬出側に排出される。先行する被裁断材4aとシート材4の残材とは、後続のものに押されて、コーム7の上縁で形成する斜面上を上昇するように移動し、搬出テーブル6の上面を搬出側に移動する。搬出テーブル6の搬出側に隣接して、ピックアップコンベア8を設ければ、ピックアップコンベア8まで到達した被裁断材4aを搬出方向に移動させることができる。シート材4の残材は連続しているので、ピックアップコンベア8に到達すれば、ピックアップコンベア8で搬出側に引張ることができ、搬送コンベア3とピックアップコンベア8との間にあるコーム7の斜面や搬出テーブル6上も円滑に通過させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5032946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プリプレグの裁断では、一枚裁断で、帯状のシート材4から幅方向側端部となる耳端4bを除いて、
図2に示すような矩形の被裁断材4aや、
図5に示すような平行四辺形の被裁断材4cが裁断される場合がある。このような場合、被裁断材4a,4cは順次連続して搬出される。プリプレグは衣料品を縫製するための素材である布帛などに比較して厚いので、剛性を有し、コーム7の斜面や搬出テーブル6上を通過する被裁断材4a,4cは、搬送コンベア3に搬送される後続の被裁断材4a,4cによって押されることで移動する。ただし、コーム7の斜面から搬出テーブル6に移行する部分などでは、被裁断材4a,4cの搬出側の端部が搬出テーブル6の上面側に曲らずに、コーム7の斜面傾斜に沿って上昇し、搬出テーブル6の上方に突出する起き上がりが生じるおそれがある。起き上がりが生じると、後続する被裁断材4a,4cの搬出側の端部が先行する被裁断材4a,4cの上に重なって積層され、被裁断材4a,4cの移動が停滞してしまうおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、被裁断材の停滞を防ぎ、安定して被裁断材を排出することができる、裁断機の排出案内装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、剛毛ブラシを並べて搬送コンベアの表面が形成され、表面に載置されるシート材を吸引保持可能な裁断テーブルと、
裁断テーブルの搬出側で、搬送コンベアの端部を裁断テーブルの表面よりも高い位置で覆う搬出テーブルと、
裁断テーブルの表面と搬出テーブルの上面との間の段差部分に設けられ、裁断されて搬送コンベアで搬出される被裁断材を、裁断テーブルの表面から搬出テーブルまで、傾斜する経路で案内するためのコームと、
を有する裁断機に対し、裁断テーブルから搬出テーブルまでの経路で被裁断材の排出を案内する、裁断機の排出案内装置であって、
コームの斜面と、搬出テーブルのうち、少なくともコームの斜面から移行する部分を含む範囲とを、上方から被裁断材の2層分の厚みよりも小さい間隔で覆い、被裁断材が該間隔を搬出方向に通過するように案内する、通過案内手段を、
含むことを特徴とする、裁断機の排出案内装置である。
【0009】
また本発明で、前記通過案内手段は、ベルトが周回するように駆動されるコンベアであり、ベルトの下面で接触して前記被裁断材を、前記搬出方向に案内する、
ことを特徴とする。
【0010】
また本発明で、前記搬出側には、前記搬出テーブルに続いて、被裁断材を取出す作業を行うためのピックアップコンベアが配置され、
前記コンベアは、
ピックアップコンベア側から駆動されるとともに、
前記コーム側が遊端となり、ピックアップコンベア側から駆動を受ける軸が基端となる揺動で、コーム側が手動で開閉可能である、
ことを特徴とする。
【0011】
また本発明で、前記通過案内手段は、
前記範囲でコームおよび搬出テーブルの上面に対応する形状に屈曲するように形成されるガイド板であり、
前記間隔が前記被裁断材の1層分の厚みよりも小さい部分が存在しても、被裁断材が通過する際には、弾性変形で間隔を大きくして通過を許容しつつ、前記搬送方向に案内する、
ことを特徴とする。
【0012】
また本発明で、前記通過案内手段は、前記裁断テーブルの幅方向に対し、複数に分けて、かつ間隔をあけて設けられる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通過案内手段は、裁断テーブルの搬出側に設けるコームから、搬出テーブル上に、裁断された被裁断材を案内する範囲を、上方から被裁断材の2層分の厚みよりも小さい間隔をあけて覆う。この間隔を搬出方向に通過するように案内されるので、被裁断材は、裁断テーブルと搬送テーブルとの段差部分でも起き上がって重なることなく通過し、停滞することなく、安定して排出される。
【0014】
また本発明によれば、通過案内手段となるコンベアのベルトの下面が被裁断材に接触して、被裁断材を確実に搬出側に移動させることができる。
【0015】
また本発明によれば、通過案内手段のコンベアは、搬出テーブルに続いて配置されるピックアップコンベア側から駆動される。コンベアは、コーム側が遊端となる揺動で、コーム側を手動で開くことができ、ごみの除去などのメンテナンス作業や準備作業を容易に行うことができる。ピックアップコンベア側から駆動を受ける軸が揺動の基端となるので、コーム側を開く際の揺動時にも、ピックアップコンベア側から軸を駆動する経路を維持して、コーム側を閉じればコンベアの駆動を再開させることができる。
【0016】
また本発明によれば、通過案内手段としてのガイド板が通過する被裁断材を押えながら、起き上がりを防止する。被裁断材は、順次搬出され、裁断テーブルから搬出される後続の被裁断材によって押し出され、コームから搬出テーブルを通過することができる。
【0017】
また本発明によれば、通過する被裁断材を案内する通過案内手段を裁断テーブルの幅方向に対して複数に分けるので、被裁断材の幅方向の形状に応じて、案内状態を調整することができる。複数に分けた通過案内手段間で間隔をあけることで、間隔をあけた部分から被裁断材の通過を確認することも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1としての裁断機1の排出案内装置10について、概略的な構成を示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図1の排出案内装置10を開く状態を示す正面図、およびコンベア11の構成を、ベルト12については断面で示す側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例2としての裁断機1の排出案内装置20について、概略的な構成を示す正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例3としての裁断機1の排出案内装置30について、概略的な構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1〜
図3、
図4および
図5、
図6および
図7で、本発明の実施例1、実施例2、実施例3としての裁断機1の排出案内装置10,20,30の構成および動作をそれぞれ示す。ただし、
図2、
図5および
図7の平面図では、図の上下方向となる裁断テーブル2の幅方向は、中間部分を省略して、全体として短縮させた状態で示す。
【0020】
また、説明を簡明にするために、説明対象の図には記載されていない部分について、他の図に記載される参照符を付して言及する場合がある。また、各図で、共通する部分には同一の参照符を付し、背景技術に関する説明も含めて、先行する説明と重複する説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1として、裁断機1の排出案内装置10の概略的な構成を、正面図として示す。裁断機1は、裁断テーブル2を備える。裁断機1には、図示を省略しているけれども、裁断刃や生地押えなどが設けられる裁断ヘッドも設けられる。裁断テーブル2は、搬送コンベア3としての機能も備えている。裁断ヘッドの裁断テーブル2の表面に沿う移動で、裁断刃は、裁断テーブル2上で吸引保持するシート材4を、予め設定される裁断データに従って裁断する。
【0022】
シート材4から裁断された被裁断材4aは、搬送コンベア3で図の左方となる搬出側に搬送され、搬出テーブル6の上面に排出される。搬送コンベア3は、通気性を有するように、プラスチックの成型品である剛毛ブラシ5を並べて形成される。搬送コンベア3は、搬送方向の両端で、図示を省略しているスプロケットホイールに掛け渡されている。ブロック状の剛毛ブラシ5がスプロケットホイールの部分を回転しながら通過する際に、軌跡の一部は、スプロケットホイール間で剛毛ブラシ5の先端で形成する裁断テーブル2の表面よりも高くなる。搬出テーブル6は、搬送コンベア3の端部を覆う際に、剛毛ブラシ5の軌跡を退避する必要があるので、搬出テーブル6の上面は、裁断テーブル2の表面よりもさらに高い位置になる。この段差の部分を、被裁断材4aが円滑に移動するように、コーム7が設けられている。コーム7では、複数の爪7aが並んで搬出テーブル6から搬送コンベア3の表面側に突き出されている。爪7aの上縁は、裁断テーブル2の表面から搬出テーブル6の上面まで続く斜面の一部となる。爪7aの下部は、剛毛ブラシ5の剛毛中に分け入る。
【0023】
裁断機1の搬出側には、搬出テーブル6に続いて、被裁断材4aを取出す作業を行うためのピックアップコンベア8が配置される。ピックアップコンベア8は、コンベア8aの上面で被裁断材4aを搬送することができる。コンベア8aの裁断機1側端部の軸端に、搬送用の回転出力を取出す歯車8bを取付ける。
【0024】
本実施例の排出案内装置10は、通過案内手段であるコンベア11を含む。コンベア11では、無端のベルト12が複数のローラ13a,13b,13c,13d,13e間に掛け渡されて周回するように駆動される。なお、以下の説明で、複数のローラ13a,13b,13c,13d,13eについて、ローラ13と総称する場合がある。ローラ13a,13b,13c,13d,13eは、枠14に取付けられる。ベルト12の下面は、コーム7の斜面と、搬出テーブル6のうち、少なくともコーム7の斜面から移行する部分を含む範囲を、上方から被裁断材4aの2層分の厚みよりも小さい間隔で覆う。この間隔を、コンベア11は、コーム7から搬出テーブル6に向う搬出方向に、被裁断材4aが通過するように案内する。
【0025】
ローラ13c,13dは、回転軸の両端が揺動腕15a,15bの遊端側15aa,15baでそれぞれ支持される。ローラ13c,13d間では、ベルト12の下面を、搬出テーブル6の上面に接触させ、コンベア11の重量を支えさせる。揺動腕15a,15bの基端側15ab,15bbは、外枠材15に、揺動可能な状態で支持されるので、ローラ13c,13dは、枠14に対して、変位可能となる。揺動腕15aの揺動状態の調整で、ローラ13a,13bとコーム7の斜面との間の隙間を調整することもできる。
【0026】
なお、ベルト12の下面とコーム7の斜面または搬出テーブル6の上面とで、接触したり間隔が小さい部分が生じても、被裁断材4aが通過する際には、間隔が被裁断材4aの1層分以上に押上げられ、通過が許容される。被裁断材4aが通過する際の間隔が2層分の厚みよりも小さくしておけば、被裁断材4aは、裁断テーブル2の表面と搬出テーブル6の上面との間の段差部分でも起き上がって重なることなく通過し、停滞することなく、安定して排出される。
【0027】
枠14は、幅方向の両側に配置される外枠材15と、外枠材15間に延びる内枠材16とを組合せて形成される。枠14のピックアップコンベア8側の端部は、ピックアップコンベア8の枠8cに取付けられる支持部材17によって、揺動可能に支持される。外枠材15のコーム7側の先端付近には、幅方向の外方に延びる取手14aが取付けられ、取手14aを操作して、手動でコンベア11を上方に開くことができる。支持部材17は、ローラ13eの軸14bの両端でコンベア11を支持する。ローラ13eの軸14bには、ピックアップコンベア8の歯車8bと噛合する歯車14cが取付けられ、ローラ13eを駆動する。ピックアップコンベア8側のローラ13eとコーム7側のローラ13aとの間にベルト12が架渡されているので、ベルト12は、ローラ13eを介して周回駆動を受ける。すなわち、軸14bは、ピックアップコンベア8側からの駆動を受ける部分となり、かつ、コーム7側が遊端となる揺動の基端となる。
【0028】
軸14bの両端は、支持板15cで回転可能な状態で支持される。支持板15cによって支持を受ける外枠材15側の取付部分に長孔が設けられ、ローラ13eに対して、コンベア11のコーム7側の部分の位置、およびベルト12の張り具合を調整可能である。
【0029】
なお、コンベア11の駆動は、排出案内装置10として独立した駆動源を設けて行うこともできる。また、裁断機1の搬送コンベア3から駆動力を伝達して行うこともできる。本実施例でコンベア11は、ピックアップコンベア8側から駆動され、ピックアップコンベア8と同期して、被裁断材4aをピックアップコンベア8に円滑に移動させることができる。
【0030】
図2は、
図1の排出案内装置10を平面図として示す。なお、ベルト12を支持するローラ13等は、ベルト12によって隠れる部分となる。したがって、ベルト12を実線、ローラ13等の大部分は隠れ線で示すべきところ、説明の便宜上、ベルト12を仮想線、ローラ13等でベルト12により隠れる部分を実線でそれぞれ示す。
【0031】
裁断テーブル2上で裁断するシート材4は、たとえば炭素繊維にエポキシなどの熱硬化性樹脂を含浸させてあるプリプレグを使用する。排出案内装置10は、裁断された被裁断材4aをピックアップコンベア8まで搬出する経路の上方に配置される。なお、シート材4から被裁断材4aを裁断する際の残材として、幅方向の側端に耳端4bを残す場合がある。耳端4bは、コーム7には案内しないで、裁断テーブル2の幅方向の外方に案内してもよい。
【0032】
コーム7側のローラ13a,13bと、ピックアップコンベア8側のローラ13eとは、幅方向の中間で分割される。ローラ13a,13bおよびローラ13eの中間の軸は、中間支持材18,19を介して、内枠材16でそれぞれ支持される。
【0033】
なお、コンベア11のベルト12の幅は、ピックアップコンベア8のコンベア8aの幅に合わせている。シート材4から裁断される被裁断材4aは、ベルト12の幅以内であれば排出案内が可能となる。なお、シート材4から耳端4bの部分を除去して被裁断材4aを裁断する場合、被裁断材4aの幅は、シート材4の幅よりも小さくなる。後述するように、ベルト12にはガイド12vが設けられ、ローラ13には溝13vを設けて、幅方向の位置ずれを防いでいる。
【0034】
図3は、(a)で
図1の排出案内装置10のコンベア11を開く状態を示し、(b)でコンベア11の構成を、ベルト12については断面で示す。
図3(a)に示すように、コンベア11は、支持部材17で支持されるピックアップコンベア8側のローラ13eの軸14bを基端として、揺動変位11aを行うことができ、遊端となるコーム7側を開閉することができる。ベルト12の下面と、コーム7および搬出テーブル6の上面との間隔は、開いた状態では被裁断材4aの厚みよりも十分に大きくなり、ごみの除去などのメンテナンス作業や準備作業を容易に行うことができる。コンベア11の駆動は、ローラ13eの軸14bに取付けられる歯車14cを介して行われ、ピックアップコンベア8側から駆動を受ける軸14bが揺動の基端となるので、コーム7側を開く際の揺動時にも、ピックアップコンベア8側から軸14bを駆動する経路を維持して、コーム7側を閉じればコンベア11の駆動を再開させることができる。
【0035】
なお、駆動力の伝達は、このように伝達に関わる歯車14cの軸14bを揺動の軸とする構成とは異なる構成にしてもよい。たとえばタイミングベルトを介して駆動力を伝達するようにしてもよい。また、コンベア11に専用の駆動源を設けるようにしてもよい。
【0036】
図3(b)に示すように、コンベア11は、ローラ13に掛け渡すベルト12に、ガイド12vを設け、ローラ13に設ける溝13vに嵌合させて、幅方向の位置ずれを防いでいる。なお、ローラ13は、軸方向の中間で分割されていないので、ローラ13c,13dに相当するけれども、
図2に示すように、分割されるローラ13a,13b,13eでも、溝13vを設けている。
【実施例2】
【0037】
図4および
図5は、本発明の実施例2として、裁断機1の排出案内装置20の概略的な構成を、正面図および平面図として、それぞれ示す。排出案内装置20は、通過案内手段としてのガイド板21を含む。ガイド板21は、弾性を有する金属板などで形成され、コーム7の斜面と、搬出テーブル6のうち、少なくともコーム7の斜面から移行する部分を含む範囲とを、上方から被裁断材4cの2層分の厚みよりも小さい間隔で覆う。間隔が2層分の厚みよりも小さくなるので、ガイド板21の下面に沿って通過する被裁断材4cは、裁断テーブル2の表面と搬出テーブル6の上面との間の段差部分でも起き上がって重なることなく搬出方向に通過し、停滞することなく、安定して排出される。被裁断材4cは、たとえば平行四辺形であり、順次搬出され、裁断テーブル2から搬出される後続の被裁断材4cによって押し出され、コーム7から搬出テーブル6を通過することができる。なお、排出案内装置20は、
図2に示すような矩形の被裁断材4aでも、同様に起き上がりを防ぎながら通過するように案内することができる。また、実施例1の排出案内装置10でも、被裁断材4cを被裁断材4aと同様に案内することができる。
【0038】
ガイド板21は、幅方向の両端をボルト22で、搬出テーブル6の両側部に取付けて支持される。ガイド板21でコーム7の上方を覆う部分は、コーム7の上縁の傾斜に合わせて曲げられて、傾斜部21aとなっている。さらに傾斜部21aの先端には、上方に折曲げられて、被裁断材4cを傾斜部21aとコーム7との間の間口を広げて案内する案内部21bが設けられている。ガイド板21の搬出テーブル6の上方を覆う部分の先端には、上方に折曲げられて、撓みを幅方向について防止する補強部21cが設けられている。傾斜部21aでは、コーム7の上縁との間隔を被裁断材4cの1層分の厚みよりも小さくすることもできる。案内部21bでの間隔は十分に大きくなるので、被裁断材4cを案内部21bから進入させ、傾斜部21aを押上げながら、通過させることができる。被裁断材4cが通過する際に押上げられる傾斜部21aは、案内手段としてのガイド板21を通過する被裁断材4cを押えながら、起き上がりを防止する。
【実施例3】
【0039】
図6および
図7は、本発明の実施例3として、裁断機1の排出案内装置30の概略的な構成を、正面図および平面図として、それぞれ示す。排出案内装置30は、通過案内手段としてのガイド板31を含む。ガイド板31は、弾性を有する金属板などで形成され、傾斜部31aおよび案内部31bを、ガイド板21の傾斜部21a、案内部21bと同様に有し、実施例2のガイド板21と同様に動作する。ただし、幅方向には、複数、たとえば2つに分けられ、ガイド板31間には間隔が設けられる。各ガイド板31は、支持板32で支持される。支持板32は、実施例2のガイド板21と同様に、幅方向の両端をボルト33で、搬出テーブル6の両側部に取付けて支持される。ガイド板31は、支持板32にボルト34で取付けられ、コーム7の斜面と、搬出テーブル6のうち、少なくともコーム7の斜面から移行する部分を含む範囲に対し、上方を、被裁断材4aの2層分の厚みよりも小さい間隔で覆い、ガイド板21と同様に動作する。なお、本実施例でも、
図5に示す被裁断材4cを、被裁断材4aと同様に案内することができる。
【0040】
本実施例によれば、通過する被裁断材4a,4cを案内する通過案内手段としてのガイド板31を裁断テーブル2の幅方向に対して複数に分けるので、被裁断材4a,4cの幅方向の形状に応じて、案内状態を調整することができる。複数に分けた個々のガイド板31間で間隔をあけるので、被裁断材4a,4cの通過を確認することも容易になる。
【0041】
なお、実施例1のようなコンベア11でも、幅方向に対して複数に分けることができる。たとえば、
図3(b)に示すベルト12を幅方向について複数に分割し、同一のローラ13に分けて掛け渡すこともできる。ベルト12を分けても、ガイド12vをそれぞれ設け、ローラ13にも溝13vを対応する位置に設ければ、複数のベルトを使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 裁断機
2 裁断テーブル
3 搬送コンベア
4 シート材
4a,4c 被裁断材
5 剛毛ブラシ
6 搬出テーブル
7 コーム
8 ピックアップコンベア
8a,11 コンベア
8b,14c 歯車
10,20,30 排出案内装置
12 ベルト
13,13a,13b,13c,13d,13e ローラ
14 枠
14b 軸
15 外枠材
16 内枠材
17 支持部材
21,31 ガイド板
32 支持板