(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0012】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0014】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0015】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0016】
(実施の形態1)
<関連技術の説明>
まず、アルミニウムを主成分とする導体膜をパターニングする一般的な技術としての関連技術について説明し、この関連技術に存在する改善の余地について説明する。
【0017】
本明細書で、「主成分」とは、部材(層や膜)を構成する構成材料のうち、最も多く含まれている材料成分のことをいい、例えば、「アルミニウムを主成分とする導体膜」とは、導体膜の材料がアルミニウム(Al)を最も多く含んでいることを意味している。本明細書で「主成分」という言葉を使用する意図は、例えば、導体膜が基本的にアルミニウムから構成されているが、その他に不純物を含む場合を排除するものではないことを表現するために使用している。
【0018】
例えば、半導体装置で一般的に使用されているアルミニウム配線に着目すると、このアルミニウム配線は、通常、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜でアルミニウム膜を挟んだ構成をしている。すなわち、アルミニウム配線は、第1バリア導体膜と、この第1バリア導体膜上に形成されたアルミニウム膜と、アルミニウム膜上に形成された第2バリア導体膜からなる。この場合、第1バリア導体膜とアルミニウム膜と第2バリア導体膜からなる積層膜を導体膜と呼ぶ場合、この導体膜は、アルミニウム膜が大部分を占めることになるため、「アルミニウムを主成分とする導体膜」となる。
【0019】
また、本明細書でいうアルミニウム膜には、純粋なアルミニウム膜である場合だけでなく、アルミニウムにシリコンが添加されたアルミニウム合金膜(AlSi膜)や、アルミニウムにシリコンと銅が添加されたアルミニウム合金膜(AlSiCu膜)も含む広い概念で使用されており、これらのアルミニウム合金膜も「アルミニウムを主成分とする導体膜」に含まれることになる。つまり、本明細書でいう「アルミニウムを主成分とする導体膜」には、アルミニウム膜とバリア導体膜を含む導体膜にも使用されるとともに、アルミニウム膜自体がアルミニウム合金膜である場合にも使用されることになる。
【0020】
図1は、アルミニウムを主成分とする導体膜をパターニングする工程の流れを示すフローチャートである。このフローチャートに沿って、アルミニウムを主成分とする導体膜をパターニングする工程の概要について説明する。
【0021】
まず、例えば、スパッタリング法を使用することにより、下地膜上にアルミニウム(Al)を含む導体膜を形成する(S101)。次に、例えば、スピン塗布法を使用することにより、この導体膜上にレジスト膜を塗布する(S102)。そして、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、レジスト膜をパターニングする(S103)。レジスト膜のパターニングは、配線形成部分をレジスト膜が覆い、その他の部分がレジスト膜から露出するように行なわれる。その後、パターニングしたレジスト膜をマスクにしたエッチングにより、導体膜をパターニングする(S104)。具体的に、導体膜のエッチング工程では、エッチングガスが使用されるが、通常、この導体膜のエッチング工程においては、さらに、エッチングガスとともにサイドウォールポリマ形成用ガスを導入することにより、導体膜の側面にエッチングから保護するためのサイドウォールポリマを形成しながら、エッチングが行なわれる。続いて、パターニングされたレジスト膜を除去した後(S105)、導体膜の側面に形成されているサイドウォールポリマを除去する(S106)。その後、パターニングした導体膜の表面を酸化させる不動態化処理を実施する(S107)。このようにして、アルミニウムを主成分とする導体膜のパターニングが行なわれる。
【0022】
ところが、この関連技術について本発明者が検討したところ、サイドウォールポリマの除去工程を実施しても、サイドウォールポリマの一部分が除去されずに、パターニングされた導体膜の側面に残存していることが判明した。このような「ポリマ残り」が、例えば、パターニングされた導体膜間(配線間)に跨って存在すると、「ポリマ残り」を介して、パターニングされた導体膜間にショート不良が発生するおそれがある。また、「ポリマ残り」に覆われた導体膜の側面部分は、不動態化処理を実施しても、不動態化されずに耐腐食性が低いままとなる可能性がある。さらには、導体膜をパターニングした後、パターニングされた導体膜を覆うように層間絶縁膜が形成されるが、「ポリマ残り」が存在すると、「ポリマ残り」の下部に層間絶縁膜が形成されず、ボイド(隙間)が発生する可能性がある。このようなボイドが発生すると、ボイドと接する導体膜の部分が層間絶縁膜で固定されないことになり、この部分においてエレクトロマイグレーションが生じやすくなる。これにより、関連技術では、半導体装置の信頼性の低下を招くことになる。したがって、「ポリマ残り」が発生する現状の半導体装置の製造工程においては、半導体装置の信頼性を向上する観点から改善の余地が存在することがわかる。
【0023】
この点に関し、本発明者は、関連技術に存在する問題点を改善する方法について検討した。まず初めに、サイドウォールポリマの除去工程を実施しても、サイドウォールポリマの一部分が除去されずに、パターニングされた導体膜の側面に残存している現象から、サイドウォールポリマの除去工程を改良すれば、関連技術に存在する問題点を解決することができるのではないかと考えた。ところが、「ポリマ残り」を詳細に調べて見ると、サイドウォールポリマの一部が何らかの理由で変質して「ポリマ残り」が発生していることを突き止めた。すなわち、「ポリマ残り」は、サイドウォールポリマが変質したものであり、サイドウォールポリマの除去工程を改良しても、サイドウォールポリマとは異質な「ポリマ残り」を除去することは困難であることが判明した。つまり、「ポリマ残り」を無くすためには、サイドウォールポリマの除去工程を改良で対応することができず、根本的に「ポリマ残り」の発生メカニズムを解明して、「ポリマ残り」が発生しないように工夫を施す必要があるとの結論に至った。
【0024】
そこで、本発明者は、鋭意検討して、「ポリマ残り」の発生メカニズムに対する知見を獲得し、獲得した知見に基づいて、「ポリマ残り」の発生を抑制するための工夫を施している。以下では、まず、本発明者が解明した「ポリマ残り」の発生メカニズムについて説明し、その後、「ポリマ残り」の発生を抑制する工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明することにする。本実施の形態1における技術的思想は、本発明者が解明した「ポリマ残り」の発生メカニズムに基づいて想到された技術的思想である。
【0025】
<「ポリマ残り」の発生メカニズム>
本発明者の検討の結果、「ポリマ残り」の発生原因は、アルミニウムを主成分とする導体膜のパターニング工程の後に実施されるレジスト膜の除去工程にあることを突き止めた。さらに詳細には、レジスト膜の除去工程で処理室内に導入される水蒸気に「ポリマ残り」を発生させる原因があることがわかった。以下では、レジスト膜の除去工程で処理室内に導入される水蒸気によって、「ポリマ残り」が発生するメカニズムについて図面を参照しながら説明することにする。
【0026】
図2は、レジスト膜の除去工程において、処理室内に導入されるガスの状態を示すグラフである。
図2に示すように、レジスト膜の除去工程においては、まず、処理室内に酸素ガス(O
2ガス)と水蒸気(H
2O)が導入される。その後、処理室内の圧力が安定した状態になると、酸素ガスおよび水蒸気をプラズマ化するための放電を開始する。そして、プラズマ化した酸素ガスによって、レジスト膜の除去が実施される。以下に、レジスト膜の除去工程について具体的に説明する。
【0027】
図3に示すように、導体膜のパターニングが終了すると、パターニングされた導体膜CFが下地膜FF上に形成される。この導体膜CFは、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜BCF1と、バリア導体膜BCF1上に形成されたアルミニウム膜AFと、アルミニウム膜AF上に形成されたチタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜BCF2とから構成されている。そして、この導体膜CF上には、例えば、酸窒化シリコン膜からなる反射防止膜ARCが形成され、この反射防止膜ARC上にレジスト膜PRが形成されている。さらに、導体膜CFの側面には、サイドウォールポリマSWPが形成されている。そして、導体膜CF上に形成されているレジスト膜PRを除去するために、レジスト膜の除去工程が実施される。
【0028】
レジスト膜の除去工程では、まず、半導体基板(半導体ウェハ)が処理室内に搬入される。そして、半導体基板が搬入された処理室内に酸素ガスと水蒸気が導入される。
図3では、パターニングされた導体膜CFおよび導体膜CF上に形成されているレジスト膜PRの周囲に、酸素ガスを構成する酸素分子や水蒸気を構成する水分子が拡散している様子が模式的に示されている。ここで、酸素ガスは、レジスト膜PRをアッシングする目的で導入されるアッシングガスであり、水蒸気は、サイドウォールポリマSWP中に含まれるハロゲンの脱ハロゲン化やサイドウォールポリマSWP中に含まれるアルミニウム(Al)を不動態化して耐腐食性を向上させる目的で導入される。この水蒸気は、例えば、ヒーティングあるいはバブリングにより蒸気のまま処理室内に導入される。
【0029】
関連技術においては、放電を開始する前に酸素ガスおよび水蒸気が処理室内に導入されている。このため、
図4に示すように、サイドウォールポリマSWPの周囲には、酸素分子や水分子が存在することになる。このとき、例えば、水分子がサイドウォールポリマSWPの表面に付着することが考えられる、この場合、サイドウォールポリマSWPが水分子を吸湿することにより膨潤して変質する。この結果、サイドウォールポリマSWPの一部分に、水分子を吸湿することによりサイドウォールポリマSWPから変質したポリマ残りKPが形成される。すなわち、関連技術においては、サイドウォールポリマSWPに水蒸気を構成する水分子が吸湿することが原因となって、ポリマ残りKPが形成される。
【0030】
その後、
図5に示すように、処理室内に導入された酸素ガスや水蒸気をプラズマ化するために放電(着火)を開始する。これにより、酸素ガスおよび水蒸気がプラズマ化される。具体的には、
図5に示すように、Oラジカル(
*O)、OHラジカル(
*OH)、Hラジカル(
*H)が形成される。この結果、
図6に示すように、Oラジカル、OHラジカル、Hラジカルによって、レジスト膜PRが除去される。
【0031】
以上のようにして、レジスト膜の除去工程が実施される。その後、
図7に示すように、例えば、アンモニアと酢酸と水との混合液や、フッ化アンモニア系の水溶液などからなる薬液を使用することにより、サイドウォールポリマSWPを除去する。ただし、ポリマ残りKPは、サイドウォールポリマSWPとは異質な成分から構成されているため、サイドウォールポリマSWPの除去工程を実施しても除去されずに導体膜CFの側面に残存することになる。この結果、関連技術においては、導体膜CFの側面に残存するポリマ残りKPに起因して、半導体装置の信頼性が低下する可能性が高くなる。
【0032】
上述したように、ポリマ残りKPの発生原因としては、サイドウォールポリマSWPが水分子を吸湿することにより膨潤して変質することが主要因として考えられる。つまり、関連技術においては、処理室内に酸素ガスとともに水蒸気を導入しており、この水蒸気を構成する水分子がサイドウォールポリマSWPに付着することが、ポリマ残りKPの発生原因と考えることができる。したがって、ポリマ残りKPを発生させないためには、水分子の供給源である水蒸気を処理室内に導入しないことが考えられるが、処理室内に水蒸気を導入しないと、サイドウォールポリマ中に含まれるハロゲンの脱ハロゲン化やサイドウォールポリマ中に含まれるアルミニウム(Al)を不動態化して耐腐食性を向上させることが困難になってしまう。
【0033】
そこで、本実施の形態1では、サイドウォールポリマSWP中に含まれるハロゲンの脱ハロゲン化やサイドウォールポリマSWP中に含まれるアルミニウム(Al)を不動態化して耐腐食性を向上させる機能を有する水蒸気を処理室内に導入することを前提として、サイドウォールポリマSWPが水分子を吸湿することにより膨潤して変質することを抑制する工夫を施している。つまり、本実施の形態1では、上述したポリマ残りKPの発生メカニズムを的確に把握した上で、サイドウォールポリマSWPが水分子を吸湿するというポリマ残りの発生原因をできるだけ生じさせないようにする工夫を施している。以下に、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明することにする。
【0034】
<実施の形態1における半導体装置の製造方法>
まず、
図8に示すように、例えば、半導体基板(半導体ウェハ)上に形成された酸化シリコン膜からなる下地膜FF上に、アルミニウムを主成分とする導体膜CFを形成する。導体膜CFは、例えば、バリア導体膜BCF1と、バリア導体膜BCF1上に形成されたアルミニウム膜AFと、アルミニウム膜AF上に形成されたバリア導体膜BCF2とから構成される。バリア導体膜BCF1およびバリア導体膜BCF2は、例えば、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜であるチタン/窒化チタン膜から形成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。一方、アルミニウム膜AFは、例えば、純粋なアルミニウムや、アルミニウムにシリコンを添加したアルミニウム合金(AlSi)や、アルミニウムにシリコンと銅とを添加したアルミニウム合金(AlSiCu)から構成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。
【0035】
そして、
図8に示すように、導体膜CF上に反射防止膜ARCを形成する。反射防止膜ARCは、例えば、酸窒化シリコン膜から形成され、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を使用することにより形成される。
【0036】
次に、
図9に示すように、反射防止膜ARC上に、例えば、スピン塗布法を使用することにより、レジスト膜PRを形成する。その後、
図10に示すように、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、レジスト膜PRをパターニングする。レジスト膜PRのパターニングは、例えば、配線形成部分をレジスト膜が覆い、その他の部分がレジスト膜から露出するように行なわれる。
【0037】
続いて、
図11に示すように、パターニングしたレジスト膜PRをマスクとしたエッチングにより、アルミニウムを主成分とする導体膜CFをパターニングする。具体的には、導体膜CFを形成した半導体基板を処理室内に搬入し、この処理室内にエッチングガスを導入する。エッチングガスとしては、例えば、Cl
2、BCl
3、CCl
4に代表される塩素系ガスが使用される。さらに、導体膜CFのパターニング工程においては、エッチングガスとともにサイドウォールポリマ形成用ガスを導入することにより、導体膜CFの側面にエッチングから保護するためのサイドウォールポリマSWPを形成しながら、パターニングが行なわれる。サイドウォールポリマ形成用ガスとしては、例えば、メタン(CH
4)やエチレン(C
2H
4)などが使用される。このように、導体膜CFのパターニング工程においては、処理室内にエッチングガスだけでなく、サイドウォールポリマ形成用ガスも導入され、さらには、希釈ガスとして機能するアルゴン(Ar)も導入される。
【0038】
このようにして、レジスト膜PRで覆われていない導体膜CFの部分は、導入されたエッチングガスと反応してエッチングされる。一方、レジスト膜PRで覆われている導体膜CFの部分は、エッチングガスにさらされていないため、エッチングされない。このため、パターニングされたレジスト膜PRに対応して、導体膜CFがパターニングされる。このとき、サイドウォールポリマ形成用ガスによって、パターニングされつつある導体膜CFの側面には、サイドウォールポリマSWPが形成され、このサイドウォールポリマSWPによって、導体膜CFの側面からのエッチングが抑制される。すなわち、パターニングされつつある導体膜CFの側面には、サイドウォールポリマSWPが形成されることによって、エッチングから保護される。このサイドウォールポリマSWPは、原料となるサイドウォールポリマ形成用ガスに含まれる炭素(C)を主成分とする高分子から構成されるが、導体膜CFとエッチングガスとの反応生成物であるアルミニウム塩化物やチタン塩化物も含まれる。以上のようにして、パターニングしたレジスト膜PRをマスクとしたエッチングが実施されることにより、アルミニウムを主成分とする導体膜CFがパターニングされる。具体的には、
図11に示すように、レジスト膜PRで覆われた部分においては、導体膜CFおよび反射防止膜ARCが残存し、レジスト膜PRから露出している部分においては、導体膜CFおよび反射防止膜ARCがエッチングされて下地膜FFが露出する。そして、残存する導体膜CFの側面およびレジスト膜PRの側面には、サイドウォールポリマSWPが形成されている。
【0039】
次に、
図12に示すように、レジスト膜PRを除去する。このレジスト膜PRの除去工程においては、半導体基板(半導体ウェハ)が処理室内に搬入される。そして、半導体基板が搬入された処理室内に酸素ガスが導入される。酸素ガスは、レジスト膜PRをアッシングする目的で導入されるアッシングガスである。ここで、本実施の形態1でも、サイドウォールポリマSWP中に含まれるハロゲンの脱ハロゲン化やサイドウォールポリマSWP中に含まれるアルミニウム(Al)を不動態化して耐腐食性を向上させる目的で処理室内に水蒸気も導入される。ただし、本実施の形態1では、水蒸気を処理室内に導入するタイミングが関連技術と相違する。すなわち、本実施の形態1の特徴は、酸素ガスと同時期に水蒸気を処理室内に導入するのではなく、酸素ガスを処理室に導入した後、酸素ガスに対して放電を開始した時点で、処理室内に水蒸気を導入する点にある。つまり、本実施の形態1では、処理室内にプラズマが形成された時点で、処理室内に水蒸気が導入される。これにより、本実施の形態1によれば、処理室内に導入された水蒸気は、直ちにプラズマによってエネルギーを与えられて、OHラジカルやHラジカルに解離する。このことは、処理室内に導入された水蒸気を構成する水分子がサイドウォールポリマSWPに付着する時間が与えられることなく、水分子がOHラジカルやHラジカルに解離することを意味する。したがって、本実施の形態1によれば、サイドウォールポリマSWPが水分子を吸湿することにより膨潤して変質することを抑制することができるのである。つまり、本実施の形態1における技術的思想は、水分子がサイドウォールポリマSWPに付着する前に、水蒸気をOHラジカルやHラジカルに解離させれば、サイドウォールポリマSWPが水分子を吸湿することにより膨潤して変質することを抑制できる点に着目して想到されたものである。言い換えれば、本実施の形態1における技術的思想は、水蒸気がOHラジカルやHラジカルに解離すれば、解離したOHラジカルやHラジカルによって、サイドウォールポリマSWPが膨潤して変質することはない点に着目して想到されたものである。
【0040】
この点に着目して、本実施の形態1では、予め処理室内に水蒸気を導入するのではなく、処理室内に酸素ガスを導入した後、この酸素ガスを放電させてプラズマを生成した段階で、水蒸気を処理室内に導入している。このように本実施の形態1において、水蒸気を処理室内に導入するタイミングは、酸素ガスを処理室内に導入するタイミングよりも遅く、かつ、酸素ガスをプラズマ化させるための放電(着火)を開始するタイミングと同時である。この結果、本実施の形態1によれば、処理室内に導入された水蒸気は、直ちにプラズマ雰囲気中にさらされるため、水分子がサイドウォールポリマSWPにほとんど付着することなく、OHラジカルやHラジカルに解離する。このことから、本実施の形態1によれば、
図12に示すように、サイドウォールポリマSWPに変質した「ポリマ残り」が形成されることなく、レジスト膜PRを除去することができる。
【0041】
続いて、
図13に示すように、例えば、アンモニアと酢酸と水との混合液や、フッ化アンモニア系の水溶液などからなる薬液を使用することにより、サイドウォールポリマSWPを除去する。このとき、本実施の形態1において、サイドウォールポリマSWPとは異質な成分から構成されている「ポリマ残り」が形成されていないため、サイドウォールポリマSWPの除去工程を実施することにより、「ポリマ残り」が残存することなく、導体膜CFの側面に形成されているサイドウォールポリマSWPが完全に除去される。これにより、本実施の形態1によれば、変質した「ポリマ残り」に起因する半導体装置の信頼性低下を抑制することができる。逆の言い方をすれば、本実施の形態1では、レジスト膜PRの除去工程において、サイドウォールポリマSWPに変質した「ポリマ残り」が形成されないため、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0042】
その後、パターニングされた導体膜CFの露出面に対して不動態化処理を実施する。具体的に、不動態化処理は、酸素ガス、あるいは、オゾンガスを半導体ウェハの周囲に導入することにより実施される。この結果、導体膜CFの露出面が酸化されて、導体膜CFの露出面に不動態膜が形成されることになる。この結果、導体膜CFの耐腐食性が向上することになる。以上のようにして、本実施の形態1における半導体装置の製造工程において、信頼性の高い導体膜のパターニングが実施されることになる。
【0043】
<実施の形態1における特徴>
上述したように、本実施の形態1における特徴点は、レジスト膜を除去する工程において、酸素ガスを処理室に導入した後、酸素ガスに対して放電を開始した時点で、処理室内に水蒸気を導入する点にあるが、以下に、この特徴点について図面を参照して説明する。
【0044】
図14は、本実施の形態1におけるレジスト膜の除去工程において、処理室内に導入されるガスの状態を示すグラフである。
図14に示すように、本実施の形態1におけるレジスト膜の除去工程においては、まず、処理室内に酸素ガス(O
2ガス)が導入される。その後、処理室内の圧力が安定した状態になると、酸素ガスをプラズマ化するための放電を開始すると同時に、処理室内に水蒸気(H
2O)が導入される。そして、プラズマ化した酸素ガスによって、レジスト膜の除去が実施される。例えば、
図14において、酸素ガスと水蒸気を合わせた圧力は、100(Pa)〜300(Pa)程度である。また、酸素ガスの流量は、例えば、500(ml/min)〜9000(ml/min)程度であり、水蒸気の流量は、例えば、100(ml/min)〜1000(ml/min)程度である。
【0045】
図15に示すように、関連技術と同様に本実施の形態1においても、導体膜CFのパターニングが終了すると、パターニングされた導体膜CFが下地膜FF上に形成される。この導体膜CFは、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜BCF1と、バリア導体膜BCF1上に形成されたアルミニウム膜AFと、アルミニウム膜AF上に形成されたチタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜BCF2とから構成されている。そして、この導体膜CF上には、例えば、酸窒化シリコン膜からなる反射防止膜ARCが形成され、この反射防止膜ARC上にレジスト膜PRが形成されている。さらに、導体膜CFの側面には、サイドウォールポリマSWPが形成されている。そして、導体膜CF上に形成されているレジスト膜PRを除去するために、レジスト膜PRの除去工程が実施される。
【0046】
本実施の形態1におけるレジスト膜PRの除去工程では、まず、半導体基板(半導体ウェハ)が処理室内に搬入される。そして、半導体基板が搬入された処理室内に酸素ガスが導入される。
図15では、パターニングされた導体膜CFおよび導体膜CF上に形成されているレジスト膜PRの周囲に、酸素ガスを構成する酸素分子が拡散している様子が模式的に示されている。ここで、酸素ガスは、レジスト膜PRをアッシングする目的で導入されるアッシングガスである。なお、本実施の形態1におけるレジスト膜PRの除去工程においては、酸素ガスとともに、CF
4などのフッ素を含むガスを処理室内に導入してもよい。このフッ素を含むガスは、例えば、導入しない場合よりもレジスト膜PRの除去速度を向上させる機能を有する。また、本実施の形態1におけるレジスト膜PRの除去工程においては、酸素ガスとともに、窒素を含むガスを処理室内に導入してもよい。この窒素を含むガスは、導入しない場合よりも放電の広がりを増加させる機能を有する。
【0047】
その後、
図16に示すように、処理室内に導入された酸素ガスをプラズマ化するために放電(着火)を開始する。これにより、酸素ガスがプラズマ化される。さらに、本実施の形態1では、酸素ガスをプラズマ化するために放電(着火)を開始すると同時に、水蒸気を処理室内に導入する。水蒸気は、サイドウォールポリマSWP中に含まれるハロゲンの脱ハロゲン化やサイドウォールポリマSWP中に含まれるアルミニウム(Al)を不動態化して耐腐食性を向上させる機能を有している。水蒸気は、例えば、ヒーティングあるいはバブリングにより蒸気のまま処理室内に導入される。
【0048】
ここで、本実施の形態1において、処理室内に導入された水蒸気は、直ちにプラズマ雰囲気中にさらされるため、水分子がサイドウォールポリマSWPにほとんど付着することなく、OHラジカルやHラジカルに解離する。このことから、本実施の形態1によれば、サイドウォールポリマSWPに変質した「ポリマ残り」が形成されることを抑制することができる。このように本実施の形態1では、酸素ガスがプラズマ化して、Oラジカル(
*O)が形成されるとともに、プラズマ化した酸素ガスによるプラズマ雰囲気が形成されると同時に水蒸気が処理室内に導入されるため、
図16に示すように、水蒸気は、直ちにプラズマ雰囲気からエネルギーを供給されて、OHラジカル(
*OH)やHラジカル(
*H)に解離する。この結果、
図17に示すように、Oラジカル、OHラジカル、Hラジカルによって、レジスト膜PRが除去される。また、これらのラジカルによって、サイドウォールポリマSWP中に含まれるハロゲンの脱ハロゲン化やサイドウォールポリマSWP中に含まれるアルミニウム(Al)を不動態化が進行する。
【0049】
続いて、
図18に示すように、例えば、アンモニアと酢酸と水との混合液や、フッ化アンモニア系の水溶液などからなる薬液を使用することにより、サイドウォールポリマSWPを除去する。このとき、本実施の形態1において、サイドウォールポリマSWPとは異質な成分から構成されている「ポリマ残り」が形成されていないため、サイドウォールポリマSWPの除去工程を実施することにより、「ポリマ残り」が残存することなく、導体膜CFの側面に形成されているサイドウォールポリマSWPが完全に除去される。これにより、本実施の形態1によれば、変質した「ポリマ残り」に起因する半導体装置の信頼性低下を抑制することができる。そして、パターニングされた導体膜CFの露出面に対して不動態化処理を実施することにより、本実施の形態1における導体膜CFのパターニングが終了する。
【0050】
<変形例>
続いて、本実施の形態1の変形例について説明する。本変形例における特徴点は、レジスト膜を除去する工程において、酸素ガスを処理室に導入した後、酸素ガスに対して放電を開始し、さらにその後、処理室内に水蒸気を導入する点にある。以下に、この変形例における特徴点について図面を参照して説明する。
【0051】
図19は、本変形例におけるレジスト膜の除去工程において、処理室内に導入されるガスの状態を示すグラフである。
図19に示すように、本変形例におけるレジスト膜の除去工程においては、まず、処理室内に酸素ガス(O
2ガス)が導入される。その後、処理室内の圧力が安定した状態になると、酸素ガスをプラズマ化するための放電を開始し、さらにその後、処理室内に水蒸気(H
2O)が導入される。そして、プラズマ化した酸素ガスによって、レジスト膜の除去が実施される。
【0052】
図20に示すように、実施の形態1と同様に本変形例においても、導体膜CFのパターニングが終了すると、パターニングされた導体膜CFが下地膜FF上に形成される。この導体膜CFは、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜BCF1と、バリア導体膜BCF1上に形成されたアルミニウム膜AFと、アルミニウム膜AF上に形成されたチタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜BCF2とから構成されている。そして、この導体膜CF上には、例えば、酸窒化シリコン膜からなる反射防止膜ARCが形成され、この反射防止膜ARC上にレジスト膜PRが形成されている。さらに、導体膜CFの側面には、サイドウォールポリマSWPが形成されている。そして、導体膜CF上に形成されているレジスト膜PRを除去するために、レジスト膜PRの除去工程が実施される。
【0053】
本変形例におけるレジスト膜PRの除去工程では、まず、半導体基板(半導体ウェハ)が処理室内に搬入される。そして、半導体基板が搬入された処理室内に酸素ガスが導入される。
図20では、パターニングされた導体膜CFおよび導体膜CF上に形成されているレジスト膜PRの周囲に、酸素ガスを構成する酸素分子が拡散している様子が模式的に示されている。
【0054】
その後、
図21に示すように、処理室内に導入された酸素ガスをプラズマ化するために放電(着火)を開始する。これにより、酸素ガスがプラズマ化される。続いて、本変形例では、酸素ガスをプラズマ化した後、
図22に示すように、水蒸気を処理室内に導入する。この水蒸気は、例えば、ヒーティングあるいはバブリングにより蒸気のまま処理室内に導入される。
【0055】
ここで、本変形例においても、処理室内に導入された水蒸気は、直ちにプラズマ雰囲気中にさらされるため、水分子がサイドウォールポリマSWPにほとんど付着することなく、OHラジカルやHラジカルに解離する。このことから、本変形例によれば、サイドウォールポリマSWPに変質した「ポリマ残り」が形成されることを抑制することができる。このように本変形例では、酸素ガスがプラズマ化して、Oラジカル(
*O)が形成されるとともに、プラズマ化した酸素ガスによるプラズマ雰囲気が形成された後に、水蒸気が処理室内に導入されるため、
図22に示すように、水蒸気は、直ちにプラズマ雰囲気からエネルギーを供給されて、OHラジカル(
*OH)やHラジカル(
*H)に解離する。この結果、
図23に示すように、Oラジカル、OHラジカル、Hラジカルによって、レジスト膜PRが除去される。また、これらのラジカルによって、サイドウォールポリマSWP中に含まれるハロゲンの脱ハロゲン化やサイドウォールポリマSWP中に含まれるアルミニウム(Al)を不動態化が進行する。
【0056】
本変形例では、実施の形態1のように酸素ガスのプラズマ化を開始すると同時ではなく、酸素ガスのプラズマ化を開始した後に、水蒸気を処理室内に導入している。このため、本変形例によれば、水蒸気が処理室内に導入されると確実に、既に生成されているプラズマ雰囲気中にさらされるため、水分子がサイドウォールポリマSWPにほとんど付着することなく、OHラジカルやHラジカルに解離する。このことから、本変形例によれば、実施の形態1よりも確実に、サイドウォールポリマSWPに変質した「ポリマ残り」が形成されることを抑制することができる。つまり、水分子がサイドウォールポリマSWPに付着することによる「ポリマ残り」を確実に抑制する観点から、実施の形態1よりも本変形例には優位性があると考えることができる。
【0057】
続いて、
図24に示すように、例えば、アンモニアと酢酸と水との混合液や、フッ化アンモニア系の水溶液などからなる薬液を使用することにより、サイドウォールポリマSWPを除去する。このとき、本変形例においても、サイドウォールポリマSWPとは異質な成分から構成されている「ポリマ残り」が形成されていないため、サイドウォールポリマSWPの除去工程を実施することにより、「ポリマ残り」が残存することなく、導体膜CFの側面に形成されているサイドウォールポリマSWPが完全に除去される。これにより、本変形例によっても、変質した「ポリマ残り」に起因する半導体装置の信頼性低下を抑制することができる。そして、パターニングされた導体膜CFの露出面に対して不動態化処理を実施することにより、本変形例における導体膜CFのパターニングが終了する。
【0058】
<半導体装置への適用例>
上述した本実施の形態1や本変形例における導体膜CFのパターニング工程は、例えば、アルミニウムを主成分とする配線を含む半導体装置の配線工程に幅広く適用することができる。例えば、
図25には、層間絶縁膜ILで覆われた半導体装置の配線構造の一例が示されている。具体的に、
図25には、アルミニウムを主成分とする下層配線L1と、アルミニウムを主成分とする上層配線L2とが、タングステンを主成分とするプラグPLGで電気的に接続された配線構造が示されている。
図25に示される下層配線L1や上層配線L2のパターニングには、本実施の形態1や本変形例における技術的思想(導体膜のパターニング)を適用することができる。この結果、
図25に示される下層配線L1や上層配線L2の信頼性を向上することができる。
【0059】
また、例えば、
図26には、層間絶縁膜ILで覆われた半導体装置の配線構造の他の一例が示されている。具体的に、
図26には、「ダマシン法」で形成された銅を主成分とするプラグPLG1および下層配線L1と、アルミニウムを主成分とする上層配線L2とが、タングステンを主成分とするプラグPLG2で電気的に接続された配線構造が示されている。このとき、
図26に示される上層配線L2のパターニングには、本実施の形態1や本変形例における技術的思想(導体膜のパターニング)を適用することができる。この結果、
図26に示される上層配線L2の信頼性を向上することができる。
【0060】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、レジスト膜PRの除去工程において、酸素ガスの他に、サイドウォールポリマSWP中に含まれるハロゲンの脱ハロゲン化やサイドウォールポリマSWP中に含まれるアルミニウム(Al)を不動態化して耐腐食性を向上させる機能を有するガスとして水蒸気を導入する例について説明した。本実施の形態2では、上述した水蒸気に替えて、同様の機能を有するアルコール蒸気を導入する例について説明する。
【0061】
例えば、レジスト膜PRの除去工程において、酸素ガスの他に、水蒸気ではなく、メタノール蒸気(CH
3OH)やエタノール蒸気(C
2H
5OH)に代表されるアルコール蒸気を導入する場合がある。この場合においても、例えば、アルコール分子がサイドウォールポリマSWPの表面に付着して、サイドウォールポリマSWPがアルコール分子を吸湿することにより膨潤して変質することが考えられる。そして、サイドウォールポリマSWPの一部分に、アルコール分子を吸湿することによりサイドウォールポリマSWPから変質したポリマ残りKPが形成されると推測することができる。
【0062】
このことから、本実施の形態2におけるレジスト膜PRの除去工程おいても、前記実施の形態1や前記変形例で説明した技術的思想を適用することが有用である。すなわち、本実施の形態2における半導体装置の製造方法は、(a)アルミニウムを主成分とする導体膜が形成された半導体ウェハを用意する工程、(b)前記導体膜上にレジスト膜を形成する工程、(c)前記レジスト膜をパターニングする工程を備える。そして、さらに、本実施の形態2における半導体装置の製造方法は、(d)パターニングした前記レジスト膜をマスクとしたエッチングにより、前記導体膜をパターニングする工程、(e)パターニングした前記レジスト膜を除去する工程を備える。このとき、(d)工程は、(d1)前記半導体ウェハを処理室に搬入する工程、(d2)少なくとも、前記導体膜をエッチングするためのエッチングガスと、パターニングされつつある前記導体膜の側面を覆うサイドウォールポリマを形成するためのサイドウォールポリマ形成用ガスと、を前記処理室に導入して、前記導体膜をエッチングする工程を有する。また、(e)工程は、(e1)少なくとも、酸素を含むガスを前記処理室に導入する工程、(e2)前記酸素を含むガスをプラズマ化するための放電を開始する工程、(e3)メタノール蒸気やエタノール蒸気に代表されるアルコール蒸気を前記処理室に導入する工程を有する。このとき、(e3)工程は、(e2)工程と同時か、あるいは、(e2)工程後に実施する。これにより、本実施の形態2においても、レジスト膜PRの除去工程において、サイドウォールポリマSWPに変質した「ポリマ残り」が形成されないため、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0063】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。