特許第6207420号(P6207420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207420燃料電池のスタック構造体、及び、燃料電池のスタック構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207420
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】燃料電池のスタック構造体、及び、燃料電池のスタック構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2484 20160101AFI20170925BHJP
   H01M 8/24 20160101ALI20170925BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170925BHJP
【FI】
   H01M8/24 M
   H01M8/24 E
   !H01M8/12
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-28728(P2014-28728)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-164094(P2015-164094A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2016年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-18710(P2014-18710)
(32)【優先日】2014年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−149508(JP,A)
【文献】 特開2005−216620(JP,A)
【文献】 特開2013−168421(JP,A)
【文献】 特開2012−222327(JP,A)
【文献】 特開2006−139985(JP,A)
【文献】 特開平06−013098(JP,A)
【文献】 特開2003−272658(JP,A)
【文献】 米国特許第05807642(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/0297
H01M 8/08 − 8/2495
H01M 8/04 − 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、長手方向を有し且つその内部に前記長手方向に沿うガス流路が形成された支持基板と、前記支持基板の表面に設けられ且つ少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極がこの順で積層された発電素子部と、を含むセラミックスの焼成体である、複数のセルと、
前記各セルに燃料ガスをそれぞれ供給するマニホールドであって、前記各セルの前記長手方向の他端部がマニホールドの天板の表面からそれぞれ突出し且つ前記複数のセルがスタック状に整列するように、並びに、マニホールドの内部空間と前記各セルの前記ガス流路の一端部とがそれぞれ連通するように、前記各セルの前記長手方向の一端部がそれぞれ固定されたマニホールドと、
を備えた燃料電池のスタック構造体において、
前記マニホールドの全体が、セラミックスで構成され
前記マニホールドと前記複数のセルとを接合する接合材をさらに備え、前記接合材は結晶化ガラスで構成された、燃料電池のスタック構造体。
【請求項2】
それぞれが、長手方向を有し且つその内部に前記長手方向に沿うガス流路が形成された支持基板と、前記支持基板の表面に設けられ且つ少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極がこの順で積層された発電素子部と、を含むセラミックスの焼成体である、複数のセルと、
前記各セルに燃料ガスをそれぞれ供給するマニホールドであって、前記各セルの前記長手方向の他端部がマニホールドの天板の表面からそれぞれ突出し且つ前記複数のセルがスタック状に整列するように、並びに、マニホールドの内部空間と前記各セルの前記ガス流路の一端部とがそれぞれ連通するように、前記各セルの前記長手方向の一端部がそれぞれ固定されたマニホールドと、
を備えた燃料電池のスタック構造体において、
前記マニホールドの全体が、加熱・溶融されたセラミックス粉体を吹き付けて三次元的に造形することによって形成され
前記マニホールドと前記複数のセルとを接合する接合材をさらに備え、前記接合材は結晶化ガラスで構成された、燃料電池のスタック構造体。
【請求項3】
それぞれが、長手方向を有し且つその内部に前記長手方向に沿うガス流路が形成された支持基板と、前記支持基板の表面に設けられ且つ少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極がこの順で積層された発電素子部と、を含むセラミックスの焼成体である、複数のセルと、
前記各セルに燃料ガスをそれぞれ供給するマニホールドであって、前記各セルの前記長手方向の他端部がマニホールドの天板の表面からそれぞれ突出し且つ前記複数のセルがスタック状に整列するように、並びに、マニホールドの内部空間と前記各セルの前記ガス流路の一端部とがそれぞれ連通するように、前記各セルの前記長手方向の一端部がそれぞれ固定されたマニホールドと、
前記マニホールドと前記複数のセルとを接合する接合材と、
を備え、前記接合材は結晶化ガラスで構成された、燃料電池のスタック構造体の製造方法において、
加熱・溶融されたセラミックス粉体を吹き付けて三次元的に造形することによって、前記マニホールドの全体を形成する工程を含む、燃料電池のスタック構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニホールド、及び、燃料電池のスタック構造体、並びに、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、「それぞれが、長手方向を有し且つその内部に前記長手方向に沿うガス流路が形成された支持基板と、前記支持基板の表面に設けられ且つ少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極がこの順で積層された発電素子部と、を含むセラミックスの焼成体である、複数のセル」と、「前記各セルに燃料ガスをそれぞれ供給するマニホールドであって、前記各セルの前記長手方向の他端部がマニホールドの天板の表面からそれぞれ突出し且つ前記複数のセルがスタック状に整列するように、並びに、マニホールドの内部空間と前記各セルの前記ガス流路の一端部とがそれぞれ連通するように、前記各セルの前記長手方向の一端部がそれぞれ固定されたマニホールド」とを備えた燃料電池のスタック構造体が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−100687号公報
【発明の概要】
【0004】
上記文献に記載のスタック構造体では、内部空間を有するマニホールドが、ステンレス鋼で構成された基体に、ステンレス鋼で構成された天板が接合されることによって形成される。一方、セルは、セラミックスで構成されている。従って、セルとマニホールドとでは熱膨張係数が異なる。このため、各セルとマニホールドとの接合部位(より具体的には、両者を接合する接合材)に比較的大きな熱応力が発生し易い、という問題があった。
【0005】
また、上記文献に記載のスタック構造体では、燃料電池の作動温度において、マニホールドを構成するステンレス鋼からクロムが蒸発し、蒸発したクロムが空気極に供給され得る。クロムが空気極に供給されると、所謂「クロム被毒」が発生する。この結果、空気極の反応抵抗が増大するなどの問題が発生し得る。
【0006】
本発明は、各セルとマニホールドとの接合部位に大きな熱応力が発生し難く、且つ、クロム被毒が発生しない、マニホールド、及び、燃料電池のスタック構造体を提供することを目的とする。
【0007】
本発明に係るマニホールドは、セラミックスの焼成体である複数のセルのそれぞれに燃料ガスを供給する。このマニホールドには、前記複数のセルがスタック状に整列するように、且つ、マニホールドの内部空間と前記各セルの内部に形成されたガス流路とがそれぞれ連通するように、前記各セルがそれぞれ固定される。
【0008】
本発明に係るマニホールドの特徴は、前記マニホールドの全体が、セラミックスで構成されたことにある。これによれば、マニホールドと、セラミックスで構成されたセルとで熱膨張係数が一致し得る。従って、各セルとマニホールドとの接合部位にて大きな熱応力が発生し難い。加えて、燃料電池の作動温度において、マニホールドを構成する材料からクロムが蒸発し得ない。従って、所謂クロム被毒の問題も発生しない。
【0009】
このマニホールドの全体は、セラミックス粉体を含むスラリーを用いた鋳込み成形法等を利用して一体で(継ぎ目なく、シームレスに)成形された成形体を焼成することによって形成され得る。
【0010】
このマニホールドの全体は、加熱・溶融されたセラミックス粉体を基材(基板)に吹き付けて三次元的に造形することによって一体で(継ぎ目なく、シームレスに)形成されることが好適である。換言すれば、マニホールドの全体が、所謂溶射法を応用して形成されることが好ましい。なお、「溶射法」とは、溶射材と呼ばれる材料を加熱して基材(基板)に吹き付け、被膜を形成する表面処理法の一種である。
【0011】
この方法によれば、その後に焼成工程を行うことなく、焼成体と同等の性質を備えたマニホールドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体に使用される1つのセルを示す斜視図である。
図2図1に示すセルの2−2線に対応する断面図である。
図3図1に示す支持基板の凹部に埋設された燃料極及びインターコネクタの状態を示した平面図である。
図4図1に示すセルの作動状態を説明するための図である。
図5図1に示すセルの作動状態における電流の流れを説明するための図である。
図6図1に示す支持基板を示す斜視図である。
図7図1に示すセルの製造過程における第1段階における図2に対応する断面図である。
図8図1に示すセルの製造過程における第2段階における図2に対応する断面図である。
図9図1に示すセルの製造過程における第3段階における図2に対応する断面図である。
図10図1に示すセルの製造過程における第4段階における図2に対応する断面図である。
図11図1に示すセルの製造過程における第5段階における図2に対応する断面図である。
図12図1に示すセルの製造過程における第6段階における図2に対応する断面図である。
図13図1に示すセルの製造過程における第7段階における図2に対応する断面図である。
図14図1に示すセルの製造過程における第8段階における図2に対応する断面図である。
図15】本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体の全体の斜視図である。
図16図15に示した燃料ガスマニホールドの全体の斜視図である。
図17図16に示した支持板に形成された挿入孔の拡大図である。
図18】挿入孔とセルの一端部との接合部の様子を示した縦断面図である。
図19】挿入孔とセルの一端部との接合部の様子を示した横断面図である。
図20図15に示したスタック構造体に対して燃料ガス及び空気が供給・排出される様子を示した図である。
図21】1つの挿入孔に複数のセルの一端部が挿入される場合における図19に対応する図である。
図22】支持板の孔にセルの一端部が進入しないようにセルが支持板に対して配置される場合における図18に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(スタック構造体に使用されるセルの構成の一例)
先ず、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)のスタック構造体に使用されるセル100について説明する。図1に示すように、このセル100は、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
【0014】
このセル100の全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向の辺の長さL1が50〜500mmで長手方向に直交する幅方向(y軸方向)の長さL2が10〜100mmの長方形である(L1>L2)。このセル100の全体の厚さL3は、1〜5mmである(L2>L3)。このセル100の全体は、厚さ方向の中心を通り且つ支持基板10の主面に平行な面に対して上下対称の形状を有する。以下、図1に加えて、このセル100の図1に示す2−2線に対応する部分断面図である図2を参照しながら、このセル100の詳細について説明する。図2は、代表的な1組の隣り合う発電素子部A,Aのそれぞれの構成(の一部)、並びに、発電素子部A,A間の構成を示す部分断面図である。その他の組の隣り合う発電素子部A,A間の構成も、図2に示す構成と同様である。
【0015】
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。後述する図6に示すように、支持基板10の内部には、長手方向に延びる複数(本例では、6本)の燃料ガス流路11(貫通孔)が幅方向において所定の間隔をおいて形成されている。本例では、各凹部12は、支持基板10の材料からなる底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。
【0016】
支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。
【0017】
支持基板10は、「遷移金属酸化物又は遷移金属」と、絶縁性セラミックスとを含んで構成され得る。「遷移金属酸化物又は遷移金属」としては、NiO(酸化ニッケル)又はNi(ニッケル)が好適である。遷移金属は、燃料ガスの改質反応を促す触媒(炭化水素系のガスの改質触媒)として機能し得る。
【0018】
また、絶縁性セラミックスとしては、MgO(酸化マグネシウム)、又は、「MgAl(マグネシアアルミナスピネル)とMgO(酸化マグネシウム)の混合物」が好適である。また、絶縁性セラミックスとして、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、Y(イットリア)が使用されてもよい。
【0019】
このように、支持基板10が「遷移金属酸化物又は遷移金属」を含むことによって、改質前の残存ガス成分を含んだガスが多孔質の支持基板10の内部の多数の気孔を介して燃料ガス流路11から燃料極に供給される過程において、上記触媒作用によって改質前の残存ガス成分の改質を促すことができる。加えて、支持基板10が絶縁性セラミックスを含むことによって、支持基板10の絶縁性を確保することができる。この結果、隣り合う燃料極間における絶縁性が確保され得る。
【0020】
支持基板10の厚さは、1〜5mmである。以下、この構造体の形状が上下対称となっていることを考慮し、説明の簡便化のため、支持基板10の上面側の構成についてのみ説明していく。支持基板10の下面側の構成についても同様である。
【0021】
図2及び図3に示すように、支持基板10の上面(上側の主面)に形成された各凹部12には、燃料極集電部21の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極集電部21は直方体状を呈している。各燃料極集電部21の上面(外側面)には、凹部21aが形成されている。各凹部21aは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
【0022】
各凹部21aには、燃料極活性部22の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極活性部22は直方体状を呈している。燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21+燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。各燃料極活性部22の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。
【0023】
各燃料極集電部21の上面(外側面)における凹部21aを除いた部分には、凹部21bが形成されている。各凹部21bは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
【0024】
各凹部21bには、インターコネクタ30が埋設(充填)されている。従って、各インターコネクタ30は直方体状を呈している。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。各インターコネクタ30の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
【0025】
燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)の上面(外側面)と、インターコネクタ30の上面(外側面)と、支持基板10の主面とにより、1つの平面(凹部12が形成されていない場合の支持基板10の主面と同じ平面)が構成されている。即ち、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で、段差が形成されていない。
【0026】
燃料極活性部22は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極集電部21は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmであり、燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50〜500μmである。
【0027】
このように、燃料極集電部21は、電子伝導性を有する物質を含んで構成される。燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と酸化性イオン(酸素イオン)伝導性を有する物質とを含んで構成される。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸化性イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸化性イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
【0028】
インターコネクタ30は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。
【0029】
燃料極20及びインターコネクタ30がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面は、固体電解質膜40により覆われている。固体電解質膜40は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。
【0030】
即ち、燃料極20がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。
【0031】
なお、図2に示すように、本例では、固体電解質膜40が、燃料極20の上面、インターコネクタ30の上面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、上述したように、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
【0032】
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
【0033】
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
【0034】
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
【0035】
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図2を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
【0036】
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
【0037】
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
【0038】
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、前記「電気的接続部」に対応する。
【0039】
なお、インターコネクタ30は、前記「電気的接続部」における前記「緻密な材料で構成された第1部分」に対応し、気孔率は10%以下である。空気極集電膜70は、前記「電気的接続部」における前記「多孔質の材料で構成された第2部分」に対応し、気孔率は20〜60%である。
【0040】
以上、説明した図1に示す「横縞型」のセル100に対して、図4に示すように、支持基板10の燃料ガス流路11内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電膜70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。
(1/2)・O+2e→O2− (於:空気極60) …(1)
+O2−→HO+2e (於:燃料極20) …(2)
【0041】
発電状態においては、図5に示すように、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、電流が、矢印で示すように流れる。この結果、図4に示すように、このセル100全体から(具体的には、図4において最も手前側の発電素子部Aのインターコネクタ30と最も奥側の発電素子部Aの空気極60とを介して)電力が取り出される。
【0042】
(製造方法)
次に、図1に示した「横縞型」のセル100の製造方法の一例について図6図14を参照しながら簡単に説明する。図6図14において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
【0043】
先ず、図6に示す形状を有する支持基板の成形体10gが作製される。この支持基板の成形体10gは、例えば、支持基板10の材料(例えば、CSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、押し出し成形、切削等の手法を利用して作製され得る。以下、図6に示す7−7線に対応する部分断面を表す図7図14を参照しながら説明を続ける。
【0044】
図7に示すように、支持基板の成形体10gが作製されると、次に、図8に示すように、支持基板の成形体10gの上下面に形成された各凹部に、燃料極集電部の成形体21gがそれぞれ埋設・形成される。次いで、図9に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面に形成された各凹部に、燃料極活性部の成形体22gがそれぞれ埋設・形成される。各燃料極集電部の成形体21g、及び各燃料極活性部22gは、例えば、燃料極20の材料(例えば、NiとYSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
【0045】
続いて、図10に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面における「燃料極活性部の成形体22gが埋設された部分を除いた部分」に形成された各凹部に、インターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成される。各インターコネクタの成形体30gは、例えば、インターコネクタ30の材料(例えば、LaCrO)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
【0046】
次に、図11に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)及び複数のインターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタの成形体30gが形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面に、固体電解質膜の成形膜40gが形成される。固体電解質膜の成形膜40gは、例えば、固体電解質膜40の材料(例えば、YSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング法等を利用して形成される。
【0047】
次に、図12に示すように、固体電解質膜の成形体40gにおける各燃料極の成形体22gと接している箇所の外側面に、反応防止膜の成形膜50gが形成される。各反応防止膜の成形膜50gは、例えば、反応防止膜50の材料(例えば、GDC)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
【0048】
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体10gが、空気中にて1500℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したセル100において空気極60及び空気極集電膜70が形成されていない状態の構造体が得られる。
【0049】
次に、図13に示すように、各反応防止膜50の外側面に、空気極の成形膜60gが形成される。各空気極の成形膜60gは、例えば、空気極60の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
【0050】
次に、図14に示すように、各組の隣り合う発電素子部について、一方の発電素子部の空気極の成形膜60gと、他方の発電素子部のインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極の成形膜60g、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の外側面に、空気極集電膜の成形膜70gが形成される。各空気極集電膜の成形膜70gは、例えば、空気極集電膜70の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
【0051】
そして、このように成形膜60g、70gが形成された状態の支持基板10が、空気中にて1050℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したセラミックスで構成されたセル100(焼成体)が得られる。以上、図1に示したセル100の製造方法の一例について説明した。
【0052】
なお、この時点では、酸素含有雰囲気での焼成により、燃料極20中のNi成分が、NiOとなっている。従って、これらの導電性を獲得するため、その後、支持基板10側から還元性の燃料ガスが流され、NiOが800〜1000℃で1〜10時間に亘って還元処理される。なお、この還元処理は発電時に行われてもよい。
【0053】
(スタック構造体の全体構成の一例)
次に、上述したセル100を用いた本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)のスタック構造体について説明する。図15に示すように、このスタック構造体は、多数のセル100と、多数のセル100のそれぞれに燃料ガスを供給するための燃料ガスのマニホールド200と、を備えている。マニホールド200の全体(基体及び天板)は、セラミックス材料で一体に(継ぎ目なく、シームレスに)構成されている。
【0054】
マニホールド200の天板210(ガスタンクの天板(平板))は、多数のセル100を支持するための支持板を兼ねている。また、マニホールド200には、外部からマニホールド200の内部空間に燃料ガスを導入するための導入通路220が設けられている。各セル100が天板210の表面から長手方向(x軸方向)に沿ってそれぞれ突出し且つ複数のセル100がスタック状に整列するように、各セル100の長手方向の一端部が天板210に接合・支持されている(接合構造の詳細は後述する)。各セル100の長手方向の他端部は、自由端となっている。従って、このスタック構造は、「片持ちスタック構造」と表現することができる。
【0055】
図16に示すように、マニホールド200の天板210の表面には、マニホールド200の内部空間と連通する多数の挿入孔211が形成されている。各挿入孔211には、対応するセル100の一端部がそれぞれ挿入される。図17に示すように、各挿入孔211の形状は、長さL4、幅L5の長円形状(L4>L5)を呈し、線対称に関する対称軸の方向(y軸方向)を有する。
【0056】
挿入孔211の長さL4は、セル100の一端部の側面の長さL2(図1を参照)より0.2〜3mm大きい。同様に、挿入孔211の幅L5は、セル100の一端部の側面の幅L3(図1を参照)より0.2〜3mm大きい。即ち、図18、19に示すように、セル100の一端部の側面の長さ方向が挿入孔211の対称軸の方向(挿入孔211の長さ方向)に沿うように、セル100の一端部が挿入孔211に挿入された状態では、挿入孔211の内壁とセル100の一端部の外壁との間に隙間が形成される。換言すれば、セル100の一端部が挿入孔211に遊嵌される。なお、図18図19(特に、図19)では、前記隙間が誇張して描かれている。
【0057】
図18図19に示すように、挿入孔211とセル100の一端部との接合部のそれぞれにおいて、固化された接合材300が前記隙間に充填されるように設けられている。これにより、各挿入孔211と対応するセル100の一端部とがそれぞれ接合・固定されている。図18に示すように、各セル100のガス流路11の一端部は、マニホールド200の内部空間と連通している。
【0058】
また、図18に示すように、隣接するセル100、100の間には、隣接するセル100、100の間(より詳細には、一方のセル100の燃料極20と他方のセル100の空気極60)を電気的に直列に接続するための集電部材400が介在している。集電部材400は、例えば、金属メッシュ等で構成される。加えて、各セル100について表側と裏側とを電気的に直列に接続するための集電部材500も設けられている。
【0059】
接合材300は、MgO−CaO−SiO−B系や、MgO−BaO−SiO−B系等のホウ素(B)を含有する結晶化ガラスで構成される。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラス(セラミックス)を指す。結晶化ガラスの結晶化度は、具体的には、例えば、「XRD等を用いて結晶相を同定し、SEM及びEDS、或いは、SEM及びEPMA等を用いて結晶化後のガラスの組織や組成分布を観察した結果に基づいて、結晶相領域の体積割合を算出する」ことによって得ることができる。
【0060】
以上、説明した燃料電池の片持ちスタック構造を稼働させる際には、図20に示すように、高温(例えば、600〜800℃)の燃料ガス(水素等)及び「酸素を含むガス(空気等)」を流通させる。導入通路220から導入された燃料ガスは、マニホールド200の内部空間へと移動し、その後、各挿入孔211を介して対応するセル100のガス流路11にそれぞれ導入される。各ガス流路11を通過した燃料ガスは、その後、各ガス流路11の他端(自由端)から外部に排出される。空気は、スタック構造の内部における隣接するセル100間の隙間に沿って、セル100の幅方向(y軸方向)に流される。
【0061】
上述した片持ちスタック構造は、例えば、以下の手順で組み立てられる。先ず、必要な枚数の完成したセル100、並びに、完成したマニホールド200が準備される。
【0062】
マニホールド200の全体(基体及び天板)は、加熱・溶融されたセラミックス粉体を基材(基板)に吹き付けて三次元的に造形することによって一体で(継ぎ目なく、シームレスに)形成される。即ち、マニホールド200の全体が、所謂溶射法を応用して形成される。この手法によれば、その後の焼成工程が不要となる。なお、「溶射法」とは、溶射材と呼ばれる材料を加熱して基材(基板)に吹き付け、被膜を形成する表面処理法の一種である。
【0063】
具体的には、加熱・溶融されるセラミックス粉体(溶射材)として、MgO、MgO−MgAl、MgO−CSZ、MgO−Y等の粉体が使用され得る。セラミックス粉体の粒径は0.2〜10μmである。熱源として、燃焼炎、及びプラズマ等が使用され得る。溶融されたセラミックス粉体の吹き付けには、圧縮空気を用いた高速のガス流が使用され得る。加熱・溶融されたセラミックス粉体を放射するためのガンを基材(基板)に対して三次元的に走査しながら、溶融されたセラミックス粉体を基材(基板)に対して吹き付けることによって、溶融されたセラミックス粉体が基材(基板)の表面に三次元的に蓄積され、この結果、マニホールド200が造形・形成され得る。
【0064】
特に、熱源としてプラズマが使用される場合、例えば、以下の条件でマニホールド200が造形・形成され得る。
プラズマガス種:Ar、H
ガス流量:Arについて41L/min、Hについて14L/mim
電流:600A
ガン−基材間距離:120mm
ガン走査速度:1000mm/s
ガン走査の間隔(隣り合う走査軌跡の間隔):5mm程度
粉末投入量:20〜30g/min
【0065】
なお、マニホールド200の全体(基体及び天板)は、セラミックス粉体を含むスラリーを用いた鋳込み成形法等を利用して一体で(継ぎ目なく、シームレスに)成形体を作成し、この成形体を焼成することによっても、形成され得る。
【0066】
次いで、所定の治具等を用いて、複数のセル100がスタック状に整列・固定される。次に、複数のセル100がスタック状に整列・固定された状態が維持されながら、複数のセル100のそれぞれの一端部が、天板210の対応する挿入孔211に一度に挿入される。次いで、接合材300用の非晶質材料(非晶質ガラス)のペーストが、挿入孔211とセル100の一端部との接合部のそれぞれの隙間に充填される。その際、図18に示すように、ペーストが天板210の表面から上方に向けてはみ出す程度まで前記接合部に供給されてもよい。
【0067】
次に、上記のように充填された非晶質材料ペーストに熱処理(結晶化処理)が加えられる。この熱処理によって非晶質材料の温度がその結晶化温度まで到達すると、結晶化温度下にて、材料の内部で結晶相が生成されて、結晶化が進行していく。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化されて、結晶化ガラスとなる。これにより、結晶化ガラスで構成される接合材300が機能を発揮し、各セルの一端部が対応する挿入孔211にそれぞれ接合・固定される。換言すれば、各セル100の一端部が接合材300を用いて天板210にそれぞれ接合・支持される。その後、前記所定の治具が複数のセル100から取り外されて、上述した片持ちスタック構造体が完成する。
【0068】
(作用・効果)
以上、本発明の実施形態に係るSOFCのスタック構造体では、マニホールド200の全体が、セル100と同様に、セラミックスで構成されている。従って、マニホールド200とセル100とで熱膨張係数が一致し得る。従って、各セル100とマニホールド200との接合部位(具体的には、接合材300)にて大きな熱応力が発生し難い。加えて、燃料電池の作動温度において、マニホールド200を構成する材料からクロムが蒸発し得ない。従って、所謂クロム被毒の問題も発生しない。
【0069】
加えて、マニホールド200の全体が、加熱・溶融されたセラミックス粉体を吹き付けて三次元的に造形することによって一体で(継ぎ目なく、シームレスに)形成される。換言すれば、マニホールド200の全体が、所謂溶射法を応用して形成される。この製法によれば、その後に焼成工程を行うことなく、焼成体と同等の性質を備えたマニホールド200を得ることができる。更には、マニホールド200の全体(基体及び天板)が一体で(継ぎ目なく、シームレスに)形成されるので、「発明の概要」の欄で述べた従来のマニホールドのように、基体と天板とを接合する工程も不要となる。
【0070】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、天板210に形成された1つの挿入孔211に1つのセル100の一端部が挿入されているが、図21に示すように、天板210に形成された1つの挿入孔211に2つ以上のセル100の一端部が挿入されていてもよい。なお、図21では、隣接するセル100、100の間隔が誇張して描かれている。更には、天板210に形成された1つの(唯一の)挿入孔211に複数のセル100の一端部の全てが挿入されていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、挿入孔211にセル100の一端部が挿入されている(即ち、挿入孔211の内部空間にセル100の一端部が進入している)が(図18等を参照)、図22に示すように、孔211にセル100の一端部が挿入されていなくてもよい(即ち、孔211の内部空間にセル100の一端部が進入していなくてもよい)。この場合、接合材300が、各孔211と対応するセル100の一端部との接合部のそれぞれにおいて孔211とセル100の一端部との間に存在する空間に充填されるように設けられる。
【符号の説明】
【0072】
10…支持基板、11…燃料ガス流路、20…燃料極、40…固体電解質膜、60…空気極、A…発電素子部、100…セル、200…マニホールド、210…支持板、211…挿入孔、300…接合材、310…コーティング膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22