(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の造粒物の見掛け比重・気孔率の推定方法を用いて推定した造粒物の見掛け比重及び/又は気孔率に基づいて、鉱石の造粒プロセスを制御することを特徴とする造粒プロセスの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の造粒物の見掛け比重・気孔率の推定方法及び造粒プロセスの制御方法について説明する。
鉱石は、焼成、か焼、還元、化合などの利用目的によって、所定の大きさの塊にする必要がある。鉱石を所定の大きさの塊にする処理として、造粒プロセスというものがある。
造粒プロセスでは、例えば、小さな粒状の鉱石、水及びバインダーを、回転するディスクペレタイザに投入し、これら原料(鉱石、水、バインダー)をディスクペレタイザ上で転動させることにより、鉱石(原料)を所定の大きさの塊にする。以降、造粒物プロセスで所定の大きさにした鉱石(原料)のことを造粒物という。
【0013】
このような鉱石を転動させて造粒物を生成する転動造粒プロセスでは、製造される個々の造粒物の大きさにはバラつきが存在する。造粒物の粒度分布(各粒度の造粒物の個数の存在比率)は正規分布と見なせることが知られている(化学工学便覧第3版、p850)。
さて、転動造粒プロセスなどの造粒プロセスにおいて、所定の大きさの塊に形成された造粒物は、ベルトコンベアやパレット台車などの運搬機械に載せられて造粒プロセスから下工程に送られる。
【0014】
例えば、造粒プロセスで製造した造粒物を上段ベルトコンベアに載せて運搬後、上段ベルトコンベアから下段ベルトコンベアに落下させて、下段ベルトコンベア上に堆積した造粒物を下工程に向けて運搬する。或いは、造粒プロセスで製造した造粒物を金属製のパレット台車に堆積して、パレット台車を下工程に向けて走行させることにより造粒物を運搬する。
【0015】
本発明では、運搬機械上に堆積した造粒物の状態に着目して、造粒物の見掛け比重や気孔率を推定している。
図1は、造粒物の見掛け比重及び気孔率の推定方法のフローチャートを示した図である。
図1に示すように、造粒物の見掛け比重を推定するにあたっては、ベルトコンベア等に堆積した造粒物の堆積形状を測定する(S1)。そして、測定した造粒物の堆積形状から造粒物堆積層の断面積を求める(S2)と共に、断面積を時間積分することにより造粒物堆積層の体積を求める(S3)。また、造粒物の堆積形状から造粒物の粒度の標準偏差を求める(S4)と共に、予め用意されたデータベースや検量線に基づいて充填率を求める(S5)。そして、測定した造粒物堆積層の体積と充填率とから最密充填後の造粒物堆積層の体積(見掛け体積)を求める(S6)。なお、この実施形態では、再現性よく安定した充填構造のことを最密充填と言う。
【0016】
また、ベルトコンベア等に堆積した造粒物堆積層の質量を測定して(S7)、この造粒物堆積層の質量と、造粒物堆積層の見掛け体積とに基づいて、造粒物の見掛け比重を求める(S8)。
一方、造粒物の気孔率を推定するにあたっては、造粒物の原料配合や化学分析のデータを取得した後(S10)、取得したデータに基づき、造粒物の真比重式等により、造粒物の真比重を算出する(S11)。そして、造粒物の真比重と、造粒物の見掛け比重とから造粒物の気孔率を求める(S12)。
【0017】
まず、
図1で示したS1〜S4までの流れ、即ち、造粒物の堆積形状の測定、造粒物堆積層の断面積の算出、造粒物堆積層の体積の算出、標準偏差の算出方法について詳しく説明する。
図2(a)(b)は、上段ベルトコンベアから下ベルトコンベアに造粒物を落下させて
いる状況を例示したものである。
【0018】
図2に示すように、上段ベルトコンベア1は、紙面の右左方向に造粒物Gを運搬するもので、下段ベルトコンベア2は紙面の上下方向に造粒物Gを運搬するものである。上段ベルトコンベア1の運搬方向と下段ベルトコンベア2の運搬方向とは直交している。
このような上段ベルトコンベア1及び下段ベルトコンベア2を備えた運搬機械3において、例えば、造粒物の大きさが「大」、「中」、「小」が混在する造粒物群を、上段ベルトコンベア1から下段ベルトコンベア2に落下させたとする。
【0019】
造粒物の大きさが「大」である大造粒物G1は、慣性力が大きいために大きく飛び、下段ベルトコンベア2上において、上段ベルトコンベア1の先端から最も離れた位置に着地し易い。また、造粒物の大きさが「小」である小造粒物G2は、慣性力が小さい上に空気抵抗等の影響を大きく受けるため直ちに減速し、下段ベルトコンベア2上において、上段ベルトコンベア1の先端から最も近い位置に着地し易い。また、造粒物の大きさが「中」である中造粒物G3は、下段ベルトコンベア2上において、大造粒物G1と小造粒物G2の間の位置に落下し易い。
【0020】
つまり、下段ベルトコンベア2上において、上段ベルトコンベア1に最も近い位置を原点Oとしたとき、原点Oに近い側に小造粒物G2が堆積し、原点Oに最も遠い側に大造粒物G1が堆積し、幅方向中央部側に中造粒物G3が堆積する。言い換えれば、下段ベルトコンベア2上では、造粒物が落下する前の進行方向に沿って、小粒(細粒)から大粒(粗粒)へと分級された堆積層が形成される。
【0021】
なお、
図3に示すように、上段ベルトコンベア1から下段ベルトコンベア2に造粒物を落下させる運搬機械3において、上段ベルトコンベア1が傾斜している場合がある。傾斜した上段ベルトコンベア1と水平方向との角度は、5度〜50度のものが多く、造粒物の安息角よりも大きければ、造粒物は重力によって落下運動するため、
図2と同じような状況下で下段ベルトコンベア2上に造粒物は堆積する。即ち、
図3に示したように、上段ベルトコンベア1が傾斜している場合であっても、下段ベルトコンベア2上において、上段ベルトコンベア1に最も近い側に小造粒物G2が堆積し、最も離れた側に大造粒物G1が堆積し、小造粒物G2と大造粒物G1との間に中造粒物G3が堆積する。
また、
図4に示すように、造粒物を運搬機械3で運搬するにあたって、上段ベルトコンベア1の代わりに篩い部材4を採用することがある。篩い目部材4を採用した場合、篩い目部材4は、例えば、板材で構成され、この板材に篩い目が形成されたものとなる。
【0022】
この篩い目は、運搬元から運搬先に向けて順に大きくする。即ち、篩い目部材において、篩いの分級サイズは造粒物群の進行方向に沿って拡大して配置している。
図4のように、篩い目部材から下段ベルトコンベア2に造粒物を落下させた場合でも、下段ベルトコンベア2上の造粒物は、落下前の進行方向に沿って細粒から粗粒に分級された状態で堆積していく。なお、篩い部材は、自身が振動して造粒物を運搬したり、傾斜して重力により造粒物を運搬するものであってもよい。また、篩い目部材は、所定の間隔にローラーを設置して、ローラの回転力により造粒物を分級しつつ運搬するものであってもよい。
【0023】
したがって、造粒プロセスで製造した造粒物を、所定の方向に移動させた後に落下させることにより、造粒物の落下前の進行方向に沿って分級することができる。
さて、工業規模の造粒プロセスで製造される造粒物は、先述のとおり、造粒物の大きさと、その大きさの造粒物の重量比率が正規分布に従って整理できることがわかっている。即ち、母集団である造粒物群の平均粒度を示す造粒物に関してはその重量比率が最も高くなると共に、造粒物群における個々の造粒物の粒度のバラツキの大小は正規分布における標準偏差の大小と同じであると考えられる。換言すれば、造粒物群の粒度分布は、母集団の平均粒度と標準偏差が求まれば推定が可能である。
【0024】
しかしながら、連続して多量の造粒物を生産する造粒プロセスの場合、使用する原料条件、大気湿度、などの外乱影響によって、平均粒度や標準偏差の値は刻一刻と変化する。造粒物群を回分的にサンプリングして粒度分布を測定したとしても、実際には空間的にも時間的にも一部分のサンプリングに過ぎず測定結果の代表性には常に疑念が生じる。
そこで、発明者らは様々な角度から検証を行い、造粒物がベルトコンベア等の運搬機械
3上へ落下する際に分級して堆積するという特性と、造粒物群が正規分布に従う特徴的な粒度分布との両方に着目して運搬機械上に落下した造粒物群の堆積表面形状から推定することを見出した。
【0025】
図5(a)は、下段ベルトコンベア2に堆積した造粒物群(造粒物堆積層)における表面形状(堆積形状)を例示したものである。説明の便宜上、
図5(a)の実線で示した堆積形状を「堆積形状A」、点線で示した堆積形状を「堆積形状B」、二点鎖線で示した堆積形状を「堆積形状C」とする。
堆積形状とは、下段ベルトコンベア2に堆積した造粒物の輪郭を示したものである。詳しくは、堆積形状とは、下段ベルトコンベア2の正面(進行方向側の下流側)から当該下段ベルトコンベア2に堆積した造粒物群を見て、その堆積層の上部の稜線を示したものである。
【0026】
図5(a)に示すように、堆積形状Aの頂部(造粒物が最も堆積した部分)の位置、即ち、「堆積ピーク位置」は、下段ベルトコンベア2の幅方向中央部からやや左側にシフトしていて、堆積形状Cの頂部の位置と同じである。このように、堆積形状Aと堆積形状Cとの堆積ピーク位置が下段ベルトコンベア2に対して同じ位置であるため堆積形状Aの造粒物の粒径と、堆積形状Cの造粒物の粒径とは同じであると考えられる。
【0027】
さて、
図5(b)は、造粒物の粒度と重量比率との分布図を示したものである。この第1分布〜第3分布は、
図5(a)で示した堆積形状A、堆積形状B、堆積形状Cのいずれかの堆積物の分布である。
図5(b)に示すように、第1分布及び第2分布は、ピークにおける造粒物の粒度が同じとなっているため、堆積ピーク位置が同じである堆積形状Aの造粒物、或いは、堆積形状Cの造粒物のいずれかであると推測できる。
【0028】
ここで、
図5(a)で示した堆積形状Aと堆積形状Cとの下段ベルトコンベア2に対する広がりを見てみると、堆積形状Cは、堆積形状Aに比べて下段ベルトコンベア2の幅方向に広がっている。言い換えれば、堆積形状Cの堆積ピーク位置における堆積層の高さ(堆積形状Cの盛り上がり高さ)は、堆積形状Aの堆積ピーク位置における堆積層の高さよりも低くなっている。
【0029】
一方、
図5(b)に示すように、第1分布のピークにおける重量比率は、第2分布のピークにおける重量比率よりも小さい。ゆえに、第1分布及び第2分布のうち、ピークにおける重量比率が小さい第1分布が、堆積層の高さが低い堆積形状Cに対応していると考えられ、ピークにおける重量比率が大きい第2分布が、堆積層の高さが高い堆積形状Aに対応していると考えられる。
【0030】
また、
図5(a)に示すように、堆積形状Bの頂部の位置(堆積ピーク位置)は、堆積形状A及び堆積形状Cの頂部の位置(堆積ピーク位置)に比べてやや左側にシフトしているため、堆積形状Bの造粒物の粒度は、堆積形条A及び堆積形状Cよりも大きいと考えられる。また、堆積形状Bの堆積ピーク位置における堆積層の高さは、堆積形状Aの堆積ピーク位置における堆積層の高さと同じである。それゆえ、
図5(b)において、重量比率のピークが第2分布と同じで且つ造粒物の粒度が第2分布よりも大きい第3分布が、堆積形状Bの造粒物における分布と推測することができる。
【0031】
以上、まとめると、造粒物は落下前の進行方向に沿って粒度分級されて運搬機械3上に堆積することになるが、これにより得られた堆積形状(表面形状)を運搬機械3上で測定して、最も高く堆積した位置(堆積ピーク位置)を取得すると共に、堆積ピーク位置における堆積ピーク高さ(堆積形状の盛り上がり高さ)を取得し、これら堆積ピーク位置及び堆積ピーク高さと、予め用意された造粒物の粒度及び重量比率を示す分布とを比較することにより、堆積ピーク位置と造粒物の平均粒度との関係、堆積ピーク高さと標準偏差との関係を求めることができる。つまり、下段ベルトコンベア2に堆積した造粒物群(造粒物堆積層)の状態(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ、平均粒度、標準偏差)を得ることができる。
【0032】
なお、運搬機械上の造粒物の堆積形状の測定にあたっては、測定器を用いて運搬機械に対してレーザ光を照射し、照射したレーザ光を撮像手段で撮像した上で、三角測量法の原理により形状を求めてもよいし、造粒物から反射したレーザ光を受光することにより測定
器から造粒物までの距離を求め(TOF法による距離計測法)、この距離に基づいて測定してもよい。このように、非接触型の測定器を用いることによって、堆積表面形状を崩さずに対象物までの距離を測定することができる。また、運搬機械の幅方向に落下又は堆積完了した瞬間にレーザ光を照射することにより、運搬機械上の造粒物群の運搬方向単位長さ当たり、あるいは単位経過時間当たりで平均化した堆積形状を得られるようにすることが望ましい。
【0033】
例えば、運搬機械の移動時の揺れや振動の影響を受けて堆積した造粒物が転動した場合は、堆積表面の最も高く堆積した位置や堆積高さが変化することがあるが、堆積形状を平均化したものとすることにより、上述した外乱影響が複雑に介在する環境下(運搬機械の移動時の揺れや振動がある環境下)でも造粒物の粒度等を測定することが可能である。
また、堆積ピーク位置及び堆積ピーク高さを有する粒度分布、即ち、
図5に示すような粒度分布は、予め造粒プロセスを行い、造粒プロセスにて造粒した造粒物を運搬機械に落下させて、検量線を作成し、この検量線を用いることで堆積ピーク位置、堆積ピーク高さを、それぞれ平均粒度、標準偏差に換算して求める。検量線の作成方法は、例えば、運転中の運搬機械にて堆積ピーク位置、堆積ピーク高さを実測し、次に運搬機械を停止させて、運搬機械上の造粒物群をサンプリングする。サンプリングした造粒物群は、篩いにかけて粒度分布を実測し、平均粒度と標準偏差を求めておく。このような操作を複数の造粒条件にて実施することで、堆積ピーク位置と平均粒度の関係、堆積ピーク高さと標準偏差の関係を求めて、粒度分布を作成する。
【0034】
このように、堆積形状(表面形状)を実測することにより、造粒物堆積層の状態(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ、平均粒度、標準偏差)を得ることができる。
図6〜13に基づいて、造粒物の堆積形状の測定、造粒物堆積層の断面積の算出、造粒物堆積層の体積の算出、標準偏差の算出を行う実操業についてさらに詳しく説明する。
図6は、製鉄用の造粒物を製造する造粒設備を例示したものである。
【0035】
図6に示すように、造粒設備10では、原料槽Aから1mm以下の鉱石や石灰石等を切り出し、これら鉱石及び石灰石に水、バインダーを混合して、混合物を直径6mのディスクペレタイザ11に供給し、当該ディスクペレタイザ11を回転することにより、造粒物を製造する。なお、以下の説明では、原料(鉱石、石灰石、バインダー、水)をディスクペレタイザ11にて造粒したものを生ボールという。
【0036】
ディスクペレタイザ11は、生ボール(造粒物)を運搬する運搬機械3に接続されており、生ボールは、造粒後に運搬機械3に移動する。
図7に示すように、運搬機械3は、上流側に設置されたディスクペレタイザ11に接続され且つ上下方向に傾斜するシードスクリーン(篩い部材)4と、このシードスクリーン4の下側で当該シードスクリーン4で篩いにかけられた生ボールを運搬するベルトコンベア12とから構成されたものである。
【0037】
シードスクリーン4は、傾斜の角度が生ボールの安息角を越え、生ボールを転動落下させながら分級するもので、傾斜型篩いである。シードスクリーン4の傾斜角度は20度としている。このシードスクリーン4においては、過小粒径品を除くための篩い目を有するものの、生ボールを分級する傾斜面(斜面領域)には連続して、篩い目が形成されており、生ボールの落下時には、慣性力と空気抵抗が働き、上述した
図2や3等と同じように、生ボールは堆積する。
【0038】
詳しくは、シードスクリーン4において、上流側(上部側)には7mmの篩い目が連続して形成され、下流側(下部側)には15mmの篩い目が連続して形成されている。7mmの篩い目が形成された直下には、7mm以下の生ボールを受けるホッパ13aが設けられ、シードスクリーン4の傾斜面の下端側には、15mm超の生ボールを受けるホッパ13bが設けられている。それゆえ、このシードスクリーン4では、過小(粒径が7mm以下)の生ボールはホッパ13aに入ることになり、過大(粒径が15mm超)]の生ボールはホッパ13bに入ることになり、後工程に搬送することが不適合である生ボールが除去されることになる。つまり、粒径が7mm以上15mm以下の生ボールがベルトコンベア12に落下する。
【0039】
ここで、ベルトコンベア12上においては、シードスクリーン4の上流側に近い側(右側)に粒径の小さな生ボールが堆積し、シードスクリーン4の下流側に近い側(左側)に粒径の大きな生ボールが堆積する。なお、ベルトコンベア12の幅は800mmである。
図8は、シードスクリーン4と、ベルトコンベア12とを上面から見たものである。
図8(a)は、シードスクリーン4とベルトコンベア12とのなす角が90度(シードスクリーン4とベルトコンベア12とが直交)である場合を示し、
図8(b)及び(c)は、シードスクリーン4とベルトコンベア12とのなす角が135度である場合を示し、
図8(d)は、シードスクリーン4とベルトコンベア12とのなす角が45度である場合を示している。なお、上述したように、シードスクリーン4とベルトコンベア12とのなす角は、両者を上面視(平面視)した状態において、シードスクリーン4の幅方向中心線とベルトコンベア12の幅方向中心線との角度のことである。
【0040】
図8(a)に示すように、シードスクリーン4とベルトコンベア12とが直交している場合、シードスクリーン4から落下した生ボールは、上述したように、ベルトコンベア12の幅方向に沿って大きさ順に堆積していく。ここで、シードスクリーン4とベルトコンベア12とが直交していない場合、シードスクリーン4から落下した生ボールは、上述したように、ベルトコンベア12の幅方向に沿って大きさ順に堆積しない可能性がある。しかしながら、操業や実験等により確認したところ、
図8(b)〜(d)に示すように、シードスクリーン4とベルトコンベア12とのなす角が45度〜135度である場合、シードスクリーン4から落下した生ボールは、ベルトコンベア12の幅方向に沿って大きさ順に堆積した。即ち、
図3に示すように、生ボールは、大きさ順にベルトコンベア12に落下した。
【0041】
なお、
図8(a)は、測定器13から照射したレーザ光の走査線がベルトコンベア12の進行方向、即ち、ベルトコンベア12の幅方向中心線と直交している例を示している。言い換えれば、レーザ光の走査線がシードスクリーン4の幅方向中心線と平行となっている例を示している。
図8(b)、(d)は、レーザ光の走査線がシードスクリーン4の幅方向中心線と平行となっている例を示している。
図8(c)は、レーザ光の走査線がベルトコンベア12の幅方向中心線と平行となっている場合を示している。
図8(a)〜(d)のいずれの場合でも、ベルトコンベア12上の生ボールの堆積形状、即ち、堆積層の状態を適正に測定することができた。
【0042】
次に、レーザ距離計などの測定器13によって、生ボールの堆積層(造粒物堆積層)の状態(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ、断面積、体積)の計算方法について説明する。
図9に示すように、ベルトコンベア12の上方に測定器13(レーザ距離計)を設置する。レーザ距離計のレーザ光の走査方向は、上述した
図8に示した通りである。
まず、ベルトコンベア12の正面(進行方向側の下流側)から当該ベルトコンベア12を見た状態において、原点O(基準点)を定め、ベルトコンベア12の幅方向をX軸方向、ベルトコンベア12の上面(生ボールを載置する面)と直交する方向(X軸と直交する方向)をY軸方向とおく。なお、原点Oは、ベルトコンベア12の上面と同一平面上に設定することが望ましい。また、レーザ距離計の設置位置を座標系で表し、位置(Xf、Yf)とする。なお、レーザ距離計は、センサ部が回転しながら走査・測距を繰返すもので、例えば、北陽電機社製LX−04等である。
【0043】
レーザ距離計では、計測情報として、例えば、センサ部を通りX軸と平行な軸とレーザ光の垂直成分との角度β[°]と、センサ部から生ボールまでの距離Dが出力される。これにより、レーザ距離計による任意の測定座標(Xm、Ym)は、次式により求めることができる。
Xm=Xf+D×cos(π×β/180)
Ym=Yf−D×sin(π×β/180)
このように、複数の測定座標(Xm、Ym)を計測することにより、堆積ピーク位置や堆積ピーク高さを求めることができる。
【0044】
なお、レーザ距離計の走査線の範囲がベルトコンベア12の幅に収まるように設定していてもよい。また、レーザ距離計をベルトコンベア12から離れた位置で設置するほど、
レーザ距離計によって生ボールの堆積形状を測定するための視野を大きくすることができるものの、余りにもレーザ距離計をベルトコンベア12から離すと、レーザ距離計による最小測定角(例えば、LX−04の場合であれば約0.35°)に起因して測定間隔が大きくなり過ぎる。一方、レーザ距離計をベルトコンベア12に近づけすぎると、生ボールの堆積状況によっては、死角部分が発生して測定できない可能性がある。ゆえに、レーザ距離計とベルトコンベア12との距離は適正に設定することが必要ある。例えば、80t/時(1時間)で生ボールをシードスクリーン4から落下させてベルトコンベア12で運搬するものとし、ベルトコンベア12の幅を0.8mに設定した場合は、レーザ距離計とベルトコンベア12との距離を0.5mにする。ただし、レーザ距離計とベルトコンベア12との距離は、ベルトコンベア12上に堆積する生ボールの状況やレーザ距離計の性能によって適正に設定すればよく上述したものに限定されない。
【0045】
上述したように、レーザ距離計によって生ボールまでの距離に基づいて、測定座標(Xm、Ym)を求めることができるため、この測定座標(Xm、Ym)に基づいて、生ボールの堆積層の断面積を求めることができる。即ち、測定座標のX座標(Xm)の値(生ボールからベルトコンベア12の上面までの距離)をベルトコンベア12の幅方向に積分することにより、生ボールの堆積層の断面積を求めることができる。また、生ボールの堆積層の断面積を所定時間毎に測定して、測定した断面積を積分することにより、生ボールの堆積層の体積を求めることができる。即ち、生ボールの堆積層の断面積を所定時間毎に測定して、運搬速度に対応する時間積分を行うことにより、生ボールの堆積層の体積を求めることができる。
【0046】
次に、生ボールの堆積形状(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ)に基づいて、生ボールの標準偏差等を推定する方法について説明する。
造粒設備10のディスクペレタイザ11を用いて、生産量80t/時で生ボールを製造し、製造した生ボールを連続的にシードスクリーン4に供給する。また、シードスクリーン4を介してベルトコンベア12で生ボールを運搬する。例えば、ベルトコンベア12の運搬速度を50m/分とする。ベルトコンベア12で生ボールを運搬中に、レーザ距離計を用いてベルトコンベア12上に堆積した生ボールの堆積形状(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ)を測定する。生ボールがベルトコンベア12上を安定して流れている状況を確認し、所定時間後、造粒工程(造粒装置)を停止する。
【0047】
そして、レーザ距離計を通過してベルトコンベア12上にある生ボールを採取する。例えば、レーザ距離計の直下のベルトコンベア12上を採取開始点とし、この採取開始点から下流側に2m進んだ場所を採取終了点とし、採取開始点から採取終了点の間にあるベルトコンベア12上の生ボールを回収(採取)する。採取した生ボールを、篩い等で分級して、採取した全生ボール重量に対する当該サイズの分級重量の比率を計算する。また、回収した全生ボールの平均粒度と、標準偏差を求める。
【0048】
即ち、造粒装置による生ボールの製造、堆積形状(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ)を測定した生ボールの回収、回収した全生ボール重量に対する当該サイズの分級重量の比率の計算、平均粒度、標準偏差の計算を行う。
表1は、実験番号1〜9の平均粒度と、標準偏差を求めた結果である。
図10は、実験番号1における全生ボール重量に対する当該サイズの分級重量の比率である。
【0050】
次に、ベルトコンベア12上で採取した生ボールがレーザ距離計上を通過したときの計測情報を全て抽出して、抽出した計測上方に基づいて堆積形状(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ)を求める。即ち、ベルトコンベア12上で採取開始点から採取終了点までの生ボールにおける堆積形状を求める。
具体的には、ベルトコンベア12の運搬速度は50m/分であるため、当該ベルトコンベア12によって生ボールが2m進む時間(採取開始点から採取終了点まで進む時間)は2.4秒である。この間に、例えば、レーザ距離計は28ミリ秒で1回の走査を行うため、生ボールが2m進む間に約85回走査をし、85回分の計測情報が得られる。この85回分の計測情報を平均して、堆積形状を求める。
図11は、実験番号1における生ボールの堆積層の稜線(堆積形状)を描いたものである。表2は、実験番号1〜9における堆積ピーク位置と堆積ピーク高さとをまとめたものである。
【0052】
次に、平均粒度、標準偏差、堆積ピーク位置、堆積ピーク高さを求めた後、これらのデータを用いて、
図12に示すように生ボールの堆積位置と平均粒度との関係、或いは、
図13に示すように、生ボールの堆積ピーク高さと標準偏差との関係を求める。
図12に示す一次近似線が、堆積ピーク位置から平均粒度を求める検量線となる。また、
図13に示す一次近似線が、堆積ピーク高さから標準偏差(バラツキ)を求める検量線となる。
【0053】
実操業では、連続して運搬される生ボールの堆積形状をレーザ距離計で測定し続け、計測情報に基づいて、堆積ピーク位置と堆積ピーク高さを計算し、予め求めておいた検量線を用い、生ボースの平均粒度と粒度の標準偏差を求め、これらを出力したり保存するという一連の処理を行う。
以上のように、堆積形状(表面形状)を実測することにより、造粒物堆積層の面積、体積及び造粒物の粒度の標準偏差を求めることができる。
【0054】
次に、
図1で示したS5〜S8までの流れ、即ち、充填率の算出、造粒物堆積層の見掛け体積の算出、造粒物堆積層の質量の測定、造粒物の見掛け比重の算出について詳しく説明する。
さて、「球形粒子ランダム充てん層の配位数に及ぼす粒子径分布の影響、廣田ら、、粉体工学会誌39(9)、2002年、p656−661」の文献に示されているように、造粒物の標準偏差と、堆積層の空間率には一定の関係があって、標準偏差から空間率が推定できることが知られている。そのため、実機の造粒物の標準偏差と空間率の関係を予め測定して、近似式やデーターベースを作成することにより、ベルトコンベアに体積した造粒物堆積層の充填率を迅速に推定することが可能である。
【0055】
そして、上述した造粒物堆積層の体積と、造粒物堆積層の充填率とを用いれば、見掛け体積の算出を簡単に算出することができる。また、造粒物堆積層の質量を測定すれば、
「見掛け比重=造粒物堆積層の質量/見掛け体積」によって、造粒物の見掛け比重も求めることができる。さらに、造粒物の真比重が分かれば、造粒物の見掛け比重と真比重とにより造粒物の気孔率を求めることができる。
【0056】
なお、造粒物の真比重(例えば、ペレットの真比重)は、JISM8717等で計測することが多く、ペレットとの鉱物組成等から容易に推定することが可能である。例えば、生ペレットや乾燥ペレットでは、予め測定しておいた原料鉱石類の真比重を配合比に従って加重平均した値から推定することが出来る。
このように得られた真比重と、造粒堆積層の質量の測定から得られる見掛け比重を用いると、「気孔率=1−見掛け比重÷真比重」によって、気孔率が従来よりも短周期、迅速に推定することが可能である。
【0057】
以下、充填率、見掛け体積、質量の測定、見掛け比重を求める実操業についてさらに詳しく説明する。
まず、造粒物堆積層の充填率の推定について説明する。上述した造粒物堆積層の体積には、各造粒物の体積と、各造粒物間の空隙とが含まれており、充填率と空隙率(ボイド率)とは、「充填率+空隙率=1」の関係にある。言い換えれば、
図5に示したように、造粒物堆積層の稜線とベルトコンベアとで囲まれた空間(空隙を含む造粒物堆積層の体積)に、造粒物を最密充填したときの割合を充填率としている。例えば、造粒物がペレットである場合、充填率=ペレット見かけ体積(最密充填時の体積)÷ペレット堆積層の体積(空隙を含む造粒物堆積層の体積)で表すことができる。ここで、ペレット見かけ体積(ペレットの占める体積)とは、JIS−M8719で示されている体積測定方法により測定された体積である。
【0058】
言い換えれば、ペレット見かけ体積=ペレット堆積層の体積x充填率、即ち、ペレット見かけ体積=ペレット堆積層の堆積x(1−空隙率)で表すことができる。
一般にペレット等の粒子が充填層を構成したときにおいて、空隙体積が充填層の体積に対する割合は、粒子の大きさのばらつきに影響されることが知られている。例えば、「球
形粒子ランダム充てん層の配位数に及ぼす粒子径分布の影響、廣田ら、、粉体工学会誌39(9)、2002年、p656−661」の文献には、
図14に示すように、粒子の大きさの標準偏差と空隙率の関係が示されている。この実施形態では、前述したように、求めた標準偏差と、造粒物堆積層の体積(ペレット見かけ体積)を測定してその関係を求めた。
【0059】
詳しくは、堆積のピーク高さ、造粒物堆積層の体積(ペレット見かけ体積)を2.4秒間測定した。その後、ベルトコンベアを停止して、測定対象範囲である、長さ2m、幅0.8mの範囲に堆積した造粒物(例えば、ペレット)を全て回収した。回収したペレットの見かけ体積は、JIS−M8749に従い測定した。このような測定を複数回繰り返し、ペレット粒度の標準偏差と充填率の関係を求めた。その結果は、
図15に示す。
図15に示すように、ペレットの粒度の標準偏差と充填率には強い関係があり、ペレット粒度の標準偏差から充填率を推定可能である。この実験例では、充填率=0.002X
3+0.152X
2−0.367X+0.933となった。Xは標準偏差である。
【0060】
ペレットの質量の測定には、
図16(a)に示すような市販のベルトスケールを用いた。即ち、
図16(a)のベルトスケールは、ペレット等の造粒物を運搬機械を用いて運搬する際に、造粒物の質量を測定する装置であって、運搬されている造粒物の質量を連続測定することができる。なお、造粒物の質量の測定は、これに限定されず、運搬装置間の乗り継ぎにおいて質量を測定する
図16(b)に示すようなインパクトフローメータ(衝撃式質量測定装置)であってもよい。
【0061】
さて、
図17は、造粒物の見掛け比重及び気孔率の算出の従来法の手順を示した図である。
図17に示した従来法を説明しつつ、本発明における見掛け比重及び気孔率の算出について説明する。
図17に示すように、従来法では、造粒プロセスにおいて直接、ペレットを採取して、見掛け比重をJISに示された方法、即ち、次に示す(1)〜(5)の手順で測定していた。
(1)予め決めた位置と方法により偏りなくペレットを4時間に1回採取する。1回の採取量は、偏りなく試料を選び出すため、1度に約5kgのペレットをサンプリングプローブで3回採取する。
(2)採取されたペレットはバットに広げて110℃の恒温槽に2時間以上保持して乾燥する。乾燥後のペレットを室温になるまで静かに置く。
(3)冷却後のペレットの表面を人間の目視で確認し、チップ等の付着がなく、割れやクラックが認められないペレットを選別する。これは、後工程の表面皮膜を形成するときの誤差を減らすためである。そして、約200g相当のペレットを偏りのないように選別すると、ペレットの重量を測定し記録する。
(4)ペレット1個づつを予め用意しておいたオレイン酸ナトリウム溶液に20分間漬ける。その後、ガーゼでオレイン酸を丁寧にふき取り、灯油に10秒間浸漬した後、自然乾燥させる。
(5)ペレット1個を予め用意した金属製のかごに入れる。かごとペレットを蒸留水の浴槽に入れて、重量を測定し、記録すると共に蒸留水の温度を測定する。そして、蒸留水の温度から密度を物理表を用いて算出する。
従来法において、見かけ比重は式(1)で求める。
見かけ比重(g/cm
3)=乾燥ペレット重量(g)÷[乾燥ペレット重量(g)−ペレットとかごの水中重量(g)+かご水中重量(g)]×蒸留水の密度 ・・(1)
また、従来法において、真比重の推定は、JISM8717に従って行う。例えば、ペレット(生ペレット)の真比重は、鉱物組成等から容易に推定できる。予め測定しておいた原料鉱石類の真比重を配合比に従って加重平均した値から推定することができる。予め測定した原料鉱石類の真比重及び鉱石の割合が表3であったとする。
【0063】
この場合、ペレットの真比重(t/m
3)は、鉱石Aの真比重x鉱石Aの配合比率 +鉱石Bの真比重x鉱石Bの配合比率+鉱石Cの真比重x鉱石Cの配合比率+鉱石Dの真比重x鉱石Dの配合比率+鉱石Eの真比重x鉱石Eの配合比率 +鉱石Fの真比重x鉱石Fの配合比率で求めることができる。
見掛け比重を求めると、真比重を推定して、「気孔率(−)=1−(見掛け比重÷真比重)」により気孔率を求める。
【0064】
従来法による気孔率の測定結果と、測定までの時間とをまとめると
図18に示すものとなった。
図18では、定常の4時間周期の測定に加えて、30分ごとにペレットを採取した結果を示している。
図18に示すように、4時間周期の測定結果に比べて、30分周期の測定結果は、変動が大きくなっている。このことから、ペレット気孔率を安定して制御しするためには、短周期の気孔率測定が必要であると考えられた。しかしながら、上記の通り、サンプル採取から気孔率算出までの手順に時間を要するため、4時間よりも短周期での気孔率測定は、従来法を用いる限り困難である。
【0065】
一方、本発明では、レーザ距離計等のセンサを用いて、造粒物の堆積形状を測定すると共に、造粒物堆積層の断面積、体積(見掛けた体積)、堆積ピーク位置と堆積ピーク高さ等を28ms毎に測定している。また、堆積ピーク高さから順次に標準偏差を求めている。さらに、造粒物粒の粒度の標準偏差から造粒物堆積層の充填率が、
図14に示したような検量線を用いることにより推測求めることができる。これにより、本発明では、造粒物堆積層の見かけ体積(m
3)が素早く計算することができる。
【0066】
また、ベルトスケール等によって、例えば、1秒毎の造粒物堆積層の質量が得られる。それゆえ、造粒物堆積層の見かけ体積(m
3)と、ベルトスケールによって求めた造粒物堆積層の質量(kg)とから、次式を用いて、見かけ比重(kg/m
3)を求めることができる。本発明では、見かけ比重(kg/m
3)=質量(t)÷造粒物堆積層の体積(m
3)÷充填率 (-)で求める。
【0067】
本発明においても真比重の推定は、従来法と同じ手順である。生鉱石類の真比重を予め測定しておき、配合に従い、質量比例させた平均の真比重を計算により求める。そして、本発明でも、気孔率(−)=1−(見掛け比重÷真比重)により気孔率を求める。
図19は、本発明の方法によって、求めた見掛け比重及び気孔率と、測定までの時間を示したものである。なお、見掛け比重及び気孔率は、10分ごとの平均値を示している、
図19に示すように、従来法では、ポイントP1,P2,P3に示すように、4時間毎に気孔率が求められていたが、本発明では瞬時に気孔率を求めることができた。また、本発明は数秒で気孔率を求めることができる結果となっているが、従来法による気孔率との値を見比べて見ても同じ値となっていて、本発明は、従来法に比べて測定精度は低下するものとはなっていない。また、従来法では、試料採取後、約4時間後に報告されるが、本発明では、測定後数秒で報告される。さらに測定頻度が従来法よりも多いため、従来法では見逃してきた気孔率の変動を測定できることができる。
【0068】
以上、本発明によれば、運搬機械上における造粒物の堆積形状に基づいて、簡単に造粒物の平均粒度や粒度分布を推定することができる。即ち、本発明では、従来のようにバッチサンプリングによる平均粒度の推定や粒度分布の取得に比べて、平均粒度や粒度分布をリアルタイム(例えば、1分以内)に把握することができる。また、短時間で造粒物の平均粒度等を把握することができるため、造粒プロセスで造粒物を製造したときの歩留を向上させることもできる。つまり、上述した造粒物の粒度推定方法を用いて、推定した造粒物の平均粒度、粒度分布等に基づいて、造粒プロセス、即ち、造粒装置を制御することができる。
【0069】
さて、鉱石の造粒プロセスでは、上述したように、推定した造粒物の見掛け比重や気孔率等に基づいて制御を行っている。つまり、造粒プロセスにおいて、時系列的に気孔率を推定して、気孔率が予め定められた管理値を逸脱した時に当該造粒プロセスにおける設定値等を変化させる。
図20は、ペレットの気孔率の変化を示したものである。
図20に示すように、ペレットの気孔率の範囲(管理値)が24〜27%とした。操作者は、ペレットの気孔率が管理値の範囲から外れないように、推定した気孔率(推定気孔率という)が管理値の下限値に近い24.5%を下回ったとき、或いは、推定気孔率が管理値の上限値に近い26.5を上回ったときに気孔率の修正操作を実施した。具体的には、
図20に示すように、時間が70分のとき、推定気孔率は24.5%をなっているため、操作者は、気孔率を増加させる必要があると判断し、生ボールの製造を行うディスクペレタイザの回転数を8.4rpmから8.2rpmに0.2rpm低下させた。ここで、ディスクペレタイザの回転数を8.4rpmに低下させてから、10分経過しても、推定気孔率が増加しないため、操業者はディスクペレタイザの回転数をさらに、8.2rpmから8.0rpmへ低下させた。そうすると、ペレットの推定気孔率は増加した。また、180分の地点において、推定気孔率が26.5%を超えたので、操作者は、管理値の上限である27%に接近したと判断し、気孔率の低減のためディスクペレタイザの回転数を、8.0rpmから8.2rpmに増加させた、また、230分の地点において、推定気孔率が24.5%を下回ったために、気孔率を増加させるため、ディスクペレタイザの回転数を8.2rpmから8.0rpmに低下させた。さらに、380分の地点において、推定気孔率が26.5%を上回ったため、気孔率を低減するためディスクペレタイザの回転数を8.0rpmから8.2rpmに増加させた。このように、生ボールを製造する際のディスクペレタイザの回転数を推定気孔率に対応して変化させることにより、ペレットの気孔率を管理値内にすることができた。
【0070】
さて、造粒プロセスとは造粒するためのプロセスであり、造粒とは、『百科事典マイペディア(平凡社、日立システムアンドサービス) 』によれば「ペレタイジングともいう。微細粒子からなる粉体を固めて球状にする処理。鉄鉱石の場合は、微粉鉱に少量の粘結剤と水を加え、ペレタイザーと呼ばれるドラムの中で粒子をころがして造粒し、1100℃程度で焼成する。」と説明されている。また、『世界大百科事典 第2版 平凡社』において、造粒とは「微細粒子からなる粉体を固めて粒状にすること。でき上がった粒状体に対しては、その製造法や技術分野により、ペレットpellet、顆粒(かりゆう)granule、マイクロカプセルmicrocapsuleなどの呼名がある。造粒についても,ペレットまたはペレタイジングpelletizing、顆粒化granulationなどの用語が使われている。練炭の製造などに古い歴史をもつブリケット化またはブリケティングbriquettingも一種の造粒技術である。」とあり造粒の専門文献である『造粒、株式会社化学工業社、昭和43年8月15日発行)には、造粒の実際例として「粉鉱石のペレット」がp102に紹介され、p107からプロセスの部分工程である焼成について記載されている。以上のように、造粒プロセスとは、転動造粒のみならず焼成まで含んでいる。そこで、鉄鉱石ペレットの焼成において、本発明を適用した変形例について説明する。
【0071】
図21は、鉄鉱石ペレットの製造プロセスにおいて、焼成以降の設備(グレートキルンシステム)を示している。
図21に示すように、鉄鉱石ペレットの製造プロセスでは、まず、水等のバインダを用いて粉鉱石類を造粒した生ボールを、グレートキルンシステム20にて、乾燥と焼成を施して強度を高めて成品ペレットを製造する。つまり、グレートキルンシステム20では、乾燥焼成設備のグレート炉21にて生ボールの乾燥および予熱して、キルン炉22にて温度を制御しつつ転動焼成することにより、生ボールからペレットを製造する。焼成後の鉄鉱石ペレットは、クーラー23にて冷却されて成品ペレットとなり、高炉へ送られる。
【0072】
このようなプロセスにおいては、高炉へ送られるペレットの品質を監視するため、クーラー23から高炉への搬送経路の途中で鉄鉱石ペレットの粒度や気孔率を監視している。ここでは、高炉で使用した場合におけるペレットの破壊防止や被還元性を確保するため、気孔率に上下限を設けて適正範囲とし、ペレット製造条件を制御してペレットの気孔率を適正範囲に納めるよう操業している。
【0073】
ペレットの気孔率の制御方法としては、造粒時の転動条件を制御して焼成ペレットにおける気孔率を制御したり、キルンバーナーの熱量制御によるキルン温度制御等を制御している。
図22は、ペレットの冷却設備から測定装置(レーザ距離計)までの経路を示したものである。
【0074】
キルン炉22にて転動焼成されたペレットはキルン炉22から排出された後、冷却設備である円形状のクーラー23にて約100℃まで冷却された後、クーラーフィーダ等を経由して、シュート24を介してベルトコンベア25に導かれる。ベルトコンベア25に導かれたペレットは、当該ベルトコンベア25上で堆積しながら高炉へ運搬される。測定器13であるレーザ距離計は、ベルトコンベア25の上方に設置される。詳しくは、レーザ距離計13は、シュート24の直ぐ近傍にあるベルトコンベア25上に設けられ、当該ベルトコンベア25上に堆積した造粒物堆積層(ペレット層)の堆積形状の測定に用いられる。レーザ距離計13による造粒物堆積層の堆積形状の測定の後、ペレットは、ベルトスケール26に運搬され、質量測定を受けた後、後続のベルトコンベア27により高炉工場へ送られる。なお、レーザ距離計による造粒物堆積層の堆積形状については、上述した方法と同様であるため説明を省略する。なお、鉄鉱石ペレットの生産量は400t/h、ベルトコンベアの速度は50m/分、ベルトコンベアの幅は800mmである。
【0075】
図23は、シュート、ベルトコンベア及びベルトスケールの平面図である。
図23に示すように、鉄鉱石ペレットは冷却工程(クーラ等)23にて冷却された後、傾斜したシュート24を滑り落ちながら、ベルトコンベア25上に堆積する。シュート24の傾斜方向とベルトコンベア25の進行方向とは、約90度の角度となるように、シュート24及びベルトコンベア25は直交して配置されている。また、レーザ距離計13の走査方向と、ベルトコンベア25の進行方向とは直交している。
【0076】
図24は、シュートを介してペレットがベルトコンベア上へ堆積する状態を示している。
図24に示すように、シュート24の上方から供給されたペレットは、重力により当該シュート24の斜面を下方に移動する。なお、シュート24は、水平に対して20度の角度で設置されている。ペレットは、シュート24の下端から幅800mmのベルトコンベア25に向けて飛び出す。慣性力と空気抵抗との影響により、小さなペレットは、ベルトコンベア25上においてシュート24の近傍に落下し、大きなペレットは、シュート24から離れた位置に落下する。即ち、ペレットにおいても上述した生ボールと落下原理は同じである。
【0077】
つまり、ベルトコンベア25の幅方向に亘って、造粒物堆積層である鉄鉱石ペレット層(ペレット層)が堆積し、当該ペレット層を構成する各ペレットの粒径は、ベルトコンベア25上で異なる。即ち、ベルトコンベア25上のペレット層において、シュート24に近い側の鉄鉱石ペレットの粒径は小さく、シュート24から離れるほど粒径は大きくなる。変形例においても、ベルトコンベア25上に堆積したペレットの堆積形状は、距離センサ13により測定する。即ち、上述した生ボールと同じ方法で、ペレットの堆積形状(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ)を求めると共に、ペレットの標準偏差等を推定する。
【0078】
図25は、ペレットの堆積位置と平均粒度との関係を示したもので、
図26は、ペレットの堆積ピーク高さと標準偏差との関係を示したものである。
図25に示す一次近似線が、堆積ピーク位置から平均粒度を求める検量線となる。また、
図26に示す一次近似線が、堆積ピーク高さから標準偏差(バラツキ)を求める検量線となる。
次に、ペレットの粒度の標準偏差と充填率に基づいて、ペレットの充填率を推定する。
図27は、ペレットの粒度の標準偏差と充填率との関係を示した図である。充填率=0.019X
3+0.152X
2−0.367X+0.883となった。Xは標準偏差である。なお、変形例では、ペレットを製造する装置が上述した実施形態と異なるため、ペレットの粒度の標準偏差と充填率との関係は、
図27に示す結果となった。
【0079】
また、生ボールと同様に、ペレットの堆積層の断面積、ペレットの堆積層の断面積、ペレットの堆積層の質量を求める。そして、生ボールと同様に、ペレットの堆積層の体積と充填率とからペレットの堆積層における見掛け体積(最密充填後の体積)を求める。また、ペレットの堆積層の質量と、ペレットの堆積層の見掛け体積とに基づいて、ペレットの見掛け比重を求める。
【0080】
さらに、ペレットの真比重式を求めて、当該真比重式からペレットの真比重を算出し、ペレットの真比重と、ペレットの見掛け比重とからペレットの気孔率を求める。この実施形態(変形例)では、特開昭61−204344号公報に示された推定式を用いて、ペレットの真比重を求めている。詳しくは、ペレットの真比重は、真比重=a+b×(T−Fe質量%)÷(100−LOI%)で求めた。a、bは定数であり、a=2.75、b=3.36を用いた。T−Feは、原料の平均の全鉄分(%)であり、LOIは、平均の強熱減量である。T−Fe及びLOIを求めるにあたっては、ペレットを構成する鉱石類の全鉄分をJISM8212を求めると共に、強熱減量をJISM882により求める。例えば、ペレットの各原料における全鉄分、強熱原料及び配合率が表3に示す値であるとする。この場合、平均の全鉄分(T−Fe)は、鉱石類(原料)の配合比率に、各原料の全鉄分を掛けてることにより求める。つまり、ペレットの各原料が表3である場合、平均の全鉄分(%)=鉱石Aの全鉄分x鉱石Aの配合比率+鉱石Bの全鉄分x鉱石Bの配合比率+鉱石Cの全鉄分x鉱石Cの配合比率+鉱石Dの全鉄分x鉱石Dの配合比率で求めることができる。全鉄分と同じ方法で、平均の強熱減量も求める。
【0081】
これにより、T−Fe(全鉄分の平均)は61.9質量%となり、強熱減量は2.71質量%となり、ペレットの真比重(真比重の推定値)は4.89となった。
図28は、上述した変形例において求めた見掛け比重及び気孔率と、測定までの時間を示したものである。なお、見掛け比重及び気孔率は、5分ごとの平均値を示している、
図28に示すように、従来法では、ポイントP4、P5に示すように、4時間毎に気孔率が求められていたが、本発明では瞬時に気孔率を求めることができた。また、本発明は数秒で気孔率を求めることができる結果となっているが、従来法による気孔率との値を見比べて見ても同じ値となっていて、本発明は、従来法に比べて測定精度は低下するものとはなっていない。また、従来法では、試料採取後、約4時間後に報告されるが、本発明では、測定後数秒で報告される。さらに測定頻度が従来法よりも多いため、従来法では見逃してきた気孔率の変動を測定できることができる。
【0082】
図29は、変形例に基づいて求めたペレットの気孔率の変化を示したものである。
図29に示すように、変形例でもペレットの気孔率の範囲(管理値)を26.5〜27.5%とした。
図29に示すように、時間が30分のとき、推定気孔率が管理値に近い値である27.3%をなっているため、操作者は、気孔率を減少させる必要があると判断し、キルン炉の焼成温度を1270℃から1290℃に上昇させた。また、230分の地点において、推定気孔率が26.7%を超えて管理値の下限値に近づいたので、操作者は、気孔率の増加のためにキルン炉の焼成温度を1290℃から1270℃に低下させた。
【0083】
以上述べたように、本発明の造粒物の見掛け比重・気孔率の推定方法を採用することによって、造粒物の堆積形状及び質量から造粒物の見掛け比重及び/又は気孔率を推定することができる。また、造粒プロセスの制御方法によれば、所定の気孔率を有する造粒物を安定的に製造することができる。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する領域を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。