特許第6207427号(P6207427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207427好適回転速度の決定方法、発電システムの制御方法及びその制御方法を使用する発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207427
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】好適回転速度の決定方法、発電システムの制御方法及びその制御方法を使用する発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20170925BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H02P9/00 E
   H02P9/04 J
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-41921(P2014-41921)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-171157(P2015-171157A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小林 和伸
(72)【発明者】
【氏名】田中 大樹
(72)【発明者】
【氏名】伊瀬 敏史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 友史
(72)【発明者】
【氏名】小幡 真之
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−100478(JP,A)
【文献】 特表2002−502337(JP,A)
【文献】 特開2002−235575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線を備える固定子と二次巻線を備える回転子とを有する二次励磁誘導発電機と、
前記回転子を駆動する駆動源と、
交流側が前記一次巻線に接続された第一電力変換器と、
交流側が前記二次巻線に接続された第二電力変換器と、
前記第一電力変換器の直流側と前記第二電力変換器の直流側とを接続する直流部に接続された蓄電装置と、
前記一次巻線と電力負荷とを選択的に接続する切替スイッチと、を備え、
前記駆動源として、回転速度を調整自在なエンジンを備えた発電システムにおける前記電力負荷に所定の電力負荷量Ploadを供給する場合の前記エンジンの好適回転速度の決定方法であって、
任意の回転速度ω及び任意の電力負荷量Ploadに対する二次励磁誘導発電機の損失である発電機損失Plossの関係を示す発電機損失指標を使用して、前記所定の電力負荷量Pload及び仮回転速度ωで発電システムを運転した場合の発電機損失Plossを求める発電機損失導出工程と、
前記発電機損失導出工程で導出された発電機損失Plossに基づいて、発電機効率ηd及び前記エンジンから前記二次励磁誘導発電機に入力される駆動用の機械入力Pmを導出する発電機効率・機械入力導出工程と、
前記発電機効率・機械入力導出工程で導出される機械入力Pmと前記仮回転速度ωから二次励磁発電機にかかるトルクTを導出するトルク導出工程と、
前記トルク導出工程で導出されるトルクTと前記仮回転速度ωから、エンジン効率ηeを求めるエンジン効率導出工程とを実行し、
前記発電機効率・機械入力導出工程で導出された発電機効率ηdと、前記エンジン効率導出工程で導出されたエンジン効率ηeから、その積値ηd×ηeとしての発電システム総合効率ηを導出する総合効率導出工程とを、前記所定の電力負荷量Pload、異なった仮回転速度ωで順次実行し、
順次導出される前記仮回転速度ωに対する前記発電システム総合効率ηが最大となる仮回転速度ωを、前記所定の電力負荷量を電力負荷に供給する場合の好適回転速度ωとする好適回転速度の決定方法。
【請求項2】
請求項1の好適回転速度決定方法で決定される好適回転速度を目標回転速度とし、
前記エンジンを前記目標回転速度で駆動するとともに、外部の電力系統からの電力の供給を受けることなく、前記蓄電装置からの電力供給により、前記電力負荷に所望の目標周波数の出力電力を供給する自立運転に関して、
前記切替スイッチが開状態とされ前記一次巻線が前記電力負荷に接続されていない無負荷状態で、前記エンジンを前記目標回転速度よりも速い無負荷時回転速度で駆動するとともに、前記一次巻線の出力電力を前記目標周波数の出力電力に制御する待機運転工程を実行し、
その後、前記切替スイッチを閉状態として前記一次巻線を前記電力負荷に接続する負荷接続工程を実行する発電システムの制御方法。
【請求項3】
一次巻線を備える固定子と二次巻線を備える回転子とを有する二次励磁誘導発電機と、
前記回転子を駆動する駆動源と、
交流側が前記一次巻線に接続された第一電力変換器と、
交流側が前記二次巻線に接続された第二電力変換器と、
前記第一電力変換器の直流側と前記第二電力変換器の直流側とを接続する直流部に接続された蓄電装置と、
前記一次巻線と電力負荷とを選択的に接続する切替スイッチと、を備え、
前記駆動源として、回転速度を調整自在なエンジンを備えた発電システムであって、
任意の回転速度ω及び任意の電力負荷量Ploadに対する二次励磁誘導発電機の損失である発電機損失Plossの関係を示す発電機損失指標と、前記エンジンの回転速度とトルクとに対するエンジン効率の関係を示すエンジン効率指標とを記憶した記憶部と、
前記記憶部に記憶された発電機損失指標を使用して、前記所定の電力負荷量Pload及び仮回転速度ωで運転した場合の発電機損失Plossを求める発電機損失導出部と、
前記発電機損失導出部で導出された発電機損失Plossに基づいて、発電機効率ηd及び前記エンジンから前記二次励磁誘導発電機に入力される駆動用の機械入力Pmを導出する発電機効率・機械入力導出部と、
前記発電機効率・機械入力導出部で導出される機械入力Pmと前記仮回転速度ωから二次励磁発電機にかかるトルクTを導出するトルク導出部と、
前記トルク導出部で導出されるトルクTと前記仮回転速度ωから、前記記憶部に記憶されたエンジン効率指標を使用してエンジン効率ηeを求めるエンジン効率導出部と、
前記発電機効率・機械入力導出部で導出された発電機効率ηdと、前記エンジン効率導出部で導出されたエンジン効率ηeから、その積値ηd×ηeとしての発電システム総合効率ηを導出する総合効率導出部とを備え、 前記所定の電力負荷量Pload、異なった仮回転速度ωで前記発電システム総合効率ηを求めるとともに、
順次導出される前記仮回転速度ωに対する前記発電システム総合効率ηが最大となる仮回転速度ωを、前記所定の電力負荷量を電力負荷に供給する場合の好適回転速度ωとする好適回転速度決定部を備えた発電システム。
【請求項4】
請求項3の好適回転速度決定部で決定される好適回転速度を目標回転速度とし、
前記エンジンを前記目標回転速度で駆動するとともに、外部の電力系統からの電力の供給を受けることなく、前記蓄電装置からの電力供給により、前記電力負荷に所望の目標周波数の出力電力を供給する自立運転を行う自立運転制御部が、
前記切替スイッチが開状態とされ前記一次巻線が前記電力負荷に接続されていない無負荷状態で、前記エンジンを前記目標回転速度よりも速い無負荷時回転速度で駆動するとともに、前記一次巻線の出力電力を前記目標周波数の出力電力に制御する待機運転工程を実行する待機運転制御部と、
その後、前記切替スイッチを閉状態として前記一次巻線を前記電力負荷に接続する負荷接続工程を実行する負荷接続制御部とを備える発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次巻線を備える固定子と二次巻線を備える回転子とを有する二次励磁誘導発電機と、前記回転子を駆動する駆動源としてのエンジンと、交流側が前記一次巻線に接続された第一電力変換器と、交流側が前記二次巻線に接続された第二電力変換器と、前記第一電力変換器の直流側と前記第二電力変換器の直流側とを接続する直流部に接続された蓄電装置と、前記一次巻線と電力負荷とを選択的に接続する切替スイッチと、を備えた発電システムの運転技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、風力発電や揚水式発電のような、発電機に入力される軸入力回転速度が変化する駆動源を、軸入力回転速度に対し出力電力の周波数を変化させることができる二次励磁誘導発電機とともに用いることで、出力電力の周波数を目標周波数(50〔Hz〕又は60〔Hz〕)に制御できる発電システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1では、二次励磁誘導発電機を風力発電や揚水式発電に用いる発電システムが開示されているだけであるが、例えば、二次励磁誘導発電機の回転子を駆動する駆動源としてエンジンを用いることができれば(本願の発電システムに相当)、出力電力の周波数を目標周波数(50〔Hz〕又は60〔Hz〕)に制御できながら、エンジンの回転速度を自由に選択でき、発電効率の向上を図ることができる。
【0003】
一方、従来、発電機の駆動源をエンジンとする発電システムとして、発電機に同期発電機を用いたエンジンコージェネレーションシステムが知られている。
【0004】
同期発電機を用いたエンジンコージェネレーションシステムでは、出力電力の周波数が駆動源の回転速度に影響されるため、駆動源であるガスエンジンを電力系統の系統周波数に同期した一定の回転速度で運転する必要がある。例えば、系統周波数が60Hzのエリアでは、同期発電機の極数に応じて、60Hzの整数分の1である900rpm(15Hz)、1200rpm(20Hz)、1800rpm(30Hz)といった離散的な回転速度で運転する必要がある。従って、エンジンコージェネレーションシステムでは、同期発電機で目標周波数(50〔Hz〕又は60〔Hz〕)を出力するためのエンジンの回転速度が一定の回転速度に制約されるため、出力を定格から低下させる際に、発電効率が大きく低下することになる。
【0005】
また、発電システムとして、エンジンコージェネレーションシステムを用いる場合には、電力系統から電力の供給を受けない状態においても、電力負荷に対して電力を供給自在とする非常用電源として自立運転できることが重要である。自立運転では、電力負荷に対して所望の目標周波数の出力電力を供給するために、エンジンを所定の目標回転速度で駆動させた後、電力負荷に接続して、電力負荷に目標周波数の出力電力を供給する。
ここで、エンジンコージェネレーションシステムを電力負荷に接続する場合、エンジンへの負荷が増大することから、一時的にエンジンの回転速度が低下する。そして、このような回転速度の低下に伴い、出力電力の周波数が低下する。
【0006】
従って、発明者らは、発電効率の低下を防止しながら、自立運転時に電力負荷に接続する際に、出力電力の周波数が低下するのを防止することを目的として、先に説明した二次励磁誘導発電機、駆動源としてのエンジン、第一電力変換器、第二電力変換器、蓄電装置、切替スイッチとを備えた発電システムに対する制御として、駆動源であるエンジンを目標回転速度で駆動し、外部から電力供給を受けることなく、蓄電装置から電力を供給することで電力負荷に所望の目標周波数の出力電力を供給自在とする自立運転に移行する場合に、無負荷状態で、エンジンを目標回転速度より速い無負荷時回転速度で駆動するとともに、出力電力を目標周波数に制御する待機運転工程を実行し、その後、電力負荷に接続する負荷接続工程を実行することを提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−027766号公報
【特許文献2】特開2012−100478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示のシステムでは、自立運転に移行する段階における周波数の低下を防止できるが、例えば、実際の所定の電力負荷に対して発電システム特にエンジンをどのような回転速度(例えば、通常運転時の目標回転速度)で運転するのが発電システムとして有利かに関しては、未だ技術は確立されていない。
即ち、現状では、ガスエンジンの効率が高い回転速度で使用する、例えば、エンジンを、本来その効率が高い定格状態で運転する程度の技術しか確立されていない。
従って、一次巻線を備える固定子と二次巻線を備える回転子とを有する二次励磁誘導発電機と、前記回転子を駆動する駆動源としてのエンジンとを備えた発電システムにおいて、電力負荷との関係で、その効率が高い好適運転速度で運転する動作点に関して、改良の余地がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次励磁誘導発電機を備え、所定の電力負荷に対応してエンジンから駆動力を得てその電力負荷を満たす発電を行なう発電システムにおいて、システムとしての総合効率を高くすることができる、エンジンの好適回転速度の決定方法を提供するとともに、その方法で得られる好適回転速度で発電を行なう発電装置の制御方法及び発電システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る好適回転速度の決定方法の第1特徴構成は、
一次巻線を備える固定子と二次巻線を備える回転子とを有する二次励磁誘導発電機と、
前記回転子を駆動する駆動源と、
交流側が前記一次巻線に接続された第一電力変換器と、
交流側が前記二次巻線に接続された第二電力変換器と、
前記第一電力変換器の直流側と前記第二電力変換器の直流側とを接続する直流部に接続された蓄電装置と、
前記一次巻線と電力負荷とを選択的に接続する切替スイッチと、を備え、
前記駆動源として、回転速度を調整自在なエンジンを備えた発電システムにおける前記電力負荷に所定の電力負荷量Ploadを供給する場合の前記エンジンの好適回転速度の決定方法であって、
任意の回転速度ω及び任意の電力負荷量Ploadに対する二次励磁誘導発電機の損失である発電機損失Plossの関係を示す発電機損失指標を使用して、前記所定の電力負荷量Pload及び仮回転速度ωで、発電システムを運転した場合の発電機損失Plossを求める発電機損失導出工程と、
前記発電機損失導出工程で導出された発電機損失Plossに基づいて、発電機効率ηd及び前記エンジンから前記二次励磁誘導発電機に入力される駆動用の機械入力Pmを導出する発電機効率・機械入力導出工程と、
前記発電機効率・機械入力導出工程で導出される機械入力Pmと前記仮回転速度ωから二次励磁発電機にかかるトルクTを導出するトルク導出工程と、
前記トルク導出工程で導出されるトルクTと前記仮回転速度ωから、エンジン効率ηeを求めるエンジン効率導出工程とを実行し、
前記発電機効率・機械入力導出工程で導出された発電機効率ηdと、前記エンジン効率導出工程で導出されたエンジン効率ηeから、その積値ηd×ηeとしての発電システム総合効率ηを導出する総合効率導出工程とを、前記所定の電力負荷量Pload、異なった仮回転速度ωで順次実行し、
順次導出される前記仮回転速度ωに対する前記発電システム総合効率ηが最大となる仮回転速度ωを、前記所定の電力負荷量を電力負荷に供給する場合の好適回転速度ωとする点にある。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明に係る発電システムの第1特徴構成は、
一次巻線を備える固定子と二次巻線を備える回転子とを有する二次励磁誘導発電機と、
前記回転子を駆動する駆動源と、
交流側が前記一次巻線に接続された第一電力変換器と、
交流側が前記二次巻線に接続された第二電力変換器と、
前記第一電力変換器の直流側と前記第二電力変換器の直流側とを接続する直流部に接続された蓄電装置と、
前記一次巻線と電力負荷とを選択的に接続する切替スイッチと、を備え、
前記駆動源として、回転速度を調整自在なエンジンを備えた発電システムであって、
任意の回転速度ω及び任意の電力負荷量Ploadに対する二次励磁誘導発電機の損失である発電機損失Plossの関係を示す発電機損失指標と、前記エンジンの回転速度とトルクとに対するエンジン効率の関係を示すエンジン効率指標とを記憶した記憶部と、
前記記憶部に記憶された発電機損失指標を使用して、前記所定の電力負荷量Pload及び仮回転速度ωで運転した場合の発電機損失Plossを求める発電機損失導出部と、
前記発電機損失導出部で導出された発電機損失Plossに基づいて、発電機効率ηd及び前記エンジンから前記二次励磁誘導発電機に入力される駆動用の機械入力Pmを導出する発電機効率・機械入力導出部と、
前記発電機効率・機械入力導出部で導出される機械入力Pmと前記仮回転速度ωから二次励磁発電機にかかるトルクTを導出するトルク導出部と、
前記トルク導出部で導出されるトルクTと前記仮回転速度ωから、前記記憶部に記憶されたエンジン効率指標を使用してエンジン効率ηeを求めるエンジン効率導出部と、
前記発電機効率・機械入力導出部で導出された発電機効率ηdと、前記エンジン効率導出部で導出されたエンジン効率ηeから、その積値ηd×ηeとしての発電システム総合効率ηを導出する総合効率導出部とを備え、
前記所定の電力負荷量Pload、異なった仮回転速度ωで前記発電システム総合効率を求めるとともに、
順次導出される前記仮回転速度ωに対する前記発電システム総合効率ηが最大となる仮回転速度ωを、前記所定の電力負荷量を電力負荷に供給する場合の好適回転速度ωとする好適回転速度決定部を備える点にある。
【0012】
上記の特徴構成によれば、駆動源として、回転速度を調整自在なエンジンを備えているので、二次励磁誘導発電機を用いるとともに、その発電機の駆動源としてエンジンを用いるシステムとすることができる。したがって、第二電力変換器の作動等を制御することで、二次励磁誘導発電機の軸入力回転速度に対し出力電力の周波数を変化させることができるため、出力電力の周波数を目標周波数(50〔Hz〕又は60〔Hz〕)に制御しながら、エンジンの回転速度を自由に選択することができる。ひいては発電効率の向上を図ることができる。
【0013】
さらに、好適回転速度の決定方法或いは発電システムには、その発電システムにおいて、エンジンを所定の回転速度で働かせ、所定の電力量を発電した場合の発電機損失の関係である発電機損失指標を備え、またエンジンに関して、そのエンジンを所定の回転速度で働かせ、所定のトルクを発生させる場合のエンジン効率の指標であるエンジン効率指標を備えておく。
【0014】
そして、予め判明している電力負荷量に対して、その電力負荷量に見合う程度の発電を行なえる程度の回転速度でエンジンを働かせた場合の発電機損失を加味して、その状態における発電機効率とエンジン効率とを求め、その積値を発電システムの総合効率とする。このような導出過程を経て導出される発電システムの総合効率は、エンジンの回転速度が仮に設定されたものであるため、この回転速度の最適化が必要となる。
【0015】
一方、本願においては、一定の電力負荷量に見合う発電を発電機で行なう場合に必要となるエンジンの出力(本願における機械入力)は、先に説明した手順で導出することができる。
【0016】
エンジン効率指標は、回転速度及びトルクに関して、例えば図5(b)、図6(b)に示すような三次元山形の指標となるため、一定の電力負荷量に見合う発電を発電機で行なう場合に必要となるエンジンの出力(本願における機械入力、図5(b)、図6(b)において太破線で示す)を辿りながら、繰り返し演算により、例えば山登り法を採用して最適解を導出することが可能となる。
【0017】
よって、本願に係る好適回転速度の決定方法では、発電機損失導出工程、発電機・機械入力導出工程、トルク導出工程、エンジン効率導出工程、総合効率導出工程を順次繰り返して実行し、発電機効率とエンジン効率の積としての発電システム総合効率が最大となる回転速度を導出する。
結果、電力負荷量の電力を最も高い効率で発電できる回転速度を得て、発電システムを良好に運転できる。
【0018】
さらに、発電システムにあっては、記憶部、発電機損出導出部、発電機効率・機械入力導出部、トルク導出部、エンジン効率導出部、総合効率導出部を備え、好適回転速度決定部を備えることで、決定される好適回転速度をエンジンに対する目標回転速(目標回転速度指令値)とすることにより、発電システムを電力負荷量に見合った高い効率で運転できる。
【0019】
本発明に係る発電システムの制御方法の第1特徴構成は
請求項1の好適回転速度決定方法で決定される好適回転速度を目標回転速度とし、
前記エンジンを前記目標回転速度で駆動するとともに、外部の電力系統からの電力の供給を受けることなく、前記蓄電装置からの電力供給により、前記電力負荷に所望の目標周波数の出力電力を供給する自立運転に関して、
前記切替スイッチが開状態とされ前記一次巻線が前記電力負荷に接続されていない無負荷状態で、前記エンジンを前記目標回転速度よりも速い無負荷時回転速度で駆動するとともに、前記一次巻線の出力電力を前記目標周波数の出力電力に制御する待機運転工程を実行し、
その後、前記切替スイッチを閉状態として前記一次巻線を前記電力負荷に接続する負荷接続工程を実行する点にある。
【0020】
また、本発明に係る発電システムの第2特徴構成は、
請求項3の好適回転速度決定部で決定される好適回転速度を目標回転速度とし、
前記エンジンを前記目標回転速度で駆動するとともに、外部の電力系統からの電力の供給を受けることなく、前記蓄電装置からの電力供給により、前記電力負荷に所望の目標周波数の出力電力を供給する自立運転を行う自立運転制御部が、
前記切替スイッチが開状態とされ前記一次巻線が前記電力負荷に接続されていない無負荷状態で、前記エンジンを前記目標回転速度よりも速い無負荷時回転速度で駆動するとともに、前記一次巻線の出力電力を前記目標周波数の出力電力に制御する待機運転工程を実行する待機運転制御部と、
その後、前記切替スイッチを閉状態として前記一次巻線を前記電力負荷に接続する負荷接続工程を実行する負荷接続制御部とを備える点にある。
【0021】
上記の特徴構成によれば、自立運転において、待機運転工程を行った後、負荷接続工程を行うので、一次巻線を電力負荷に接続する負荷接続工程を行う際には、エンジンの回転速度を目標回転速度よりも速い無負荷時回転速度に設定する(なお、発電機に二次励磁誘導発電機を採用しているため、軸入力回転速度に対し出力電力の周波数を変化させることができ、回転速度を無負荷時回転速度に設定した場合でも、出力電力の周波数を所定の目標周波数に制御することができる)。そして、回転速度を無負荷時回転速度に設定し、エンジンのフライホイールに運動エネルギーを蓄えておくことで、電力負荷接続時の回転速度の大幅な低下を抑制し、出力電力の周波数の変動を抑えることができる。
すなわち、上記特徴構成によれば、二次励磁誘導発電機の特性を活用しながら、自立運転時において、電力負荷に接続する際の出力電力の周波数の低下を抑制できる。そして、この周波数の低下の抑制は、出力電力の周波数を短時間で目標周波数を収束させることに寄与する。その結果、発電効率の低下を防止しながら出力電力の周波数の低下を防止することが可能となるため、より大きな電力負荷に接続することが可能となり、非常用電源としての価値が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】二次励磁誘導発電機を用いた発電システムの概略構成図
図2】本発明に係る発電システムの制御装置の制御ブロック図
図3】発電機損失を計算したシミュレーションモデルを示す図
図4】山登り法による回転速度決定の手順を示すフローチャート
図5】山登り法による回転速度決定のパターン例を示す図
図6】山登り法による回転速度決定のパターン例を示す図
図7】本発明に係る発電システムの自立運転の制御を示すフロー図
図8】本発明に係る発電システムのガス回転速度の制御を示すグラフ図
図9】本発明に係る発電システムの出力電力の周波数の変動を示すグラフ図
図10】負荷率と好適なガスエンジンの無負荷時回転速度の関係を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る発電システムの実施形態について図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されるものではなく、同様の作用効果を奏する構成であれば種々の改変が可能である。
【0024】
1.発電システムの全体構成
図1は、制御装置100(図2参照)の制御対象となる発電システム1を示す。この発電システム1は、二次励磁誘導発電機(二重給電巻線型誘導発電機)2と、ガスエンジン3と、第一電力変換器11と、第二電力変換器12と、蓄電装置5と、第一スイッチ21と、第二スイッチ22と、第三スイッチ23とを備えている。そして、二次励磁誘導発電機2は、電力系統(商用電力系統)4と同じ周波数(例えば、50[Hz]や60[Hz])の電力(三相の交流電力)を発電し、当該電力を、電力を消費する負荷7や電力系統4に供給することが可能に構成されている。ガスエンジン3は回転速度制御部103から目標回転速度ω*(目標回転速度指令)を受けて駆動される。なお、負荷7としては、例えば、冷暖房設備が備える室内機や室外機、或いは電灯等がある。本実施形態では、第三スイッチ23及び負荷7が、それぞれ、本発明における「切替スイッチ」及び「電力負荷」に相当する。
【0025】
発電システム1は、電力系統4から電力の供給を受けた状態でシステムを起動することが可能であるとともに、電力系統4から電力の供給を受けていない状態(第二スイッチ22が開状態とされる状態)においても、蓄電装置5から供給される電力によりシステムを起動(自立起動)することが可能に構成されている。
【0026】
二次励磁誘導発電機2は、一次巻線(図示せず)を備える固定子2b(ステータ)と、二次巻線(図示せず)を備える回転子2a(ロータ)と、を有している。固定子2bが備える一次巻線は、第一スイッチ21及び第二スイッチ22を介して電力系統4に接続されている。また、固定子2bが備える一次巻線は、第一スイッチ21及び第三スイッチ23を介して負荷7にも接続されている。一方、回転子2aが備える二次巻線は、フィルタ回路10、第二電力変換器12、直流部13、第一電力変換器11、フィルタ回路10、変圧器6、及び第二スイッチ22を介して電力系統4に接続されている。また、回転子2aが備える二次巻線は、フィルタ回路10、第二電力変換器12、直流部13、第一電力変換器11、フィルタ回路10、変圧器6、及び第三スイッチ23を介して負荷7にも接続されている。
【0027】
以下の説明では、固定子2bが備える一次巻線側を「二次励磁誘導発電機の一次側」とし、回転子2aが備える二次巻線側を「二次励磁誘導発電機の二次側」とする。よって、二次励磁誘導発電機2の一次側に発生する電力(電圧、電流)の周波数が、負荷7や電力系統4に供給される電力の周波数となる。
【0028】
ガスエンジン3は、二次励磁誘導発電機2の回転子2aに機械的に連結されており、当該回転子2aを回転駆動する。ガスエンジン3の出力軸は、本例では、回転子2aと一体回転するように直結されており、ガスエンジン3の回転速度と回転子2aの回転速度とは等しくなる。なお、ガスエンジン3の出力軸と回転子2aとの間に、歯車機構を設ける構成とすることもできる。ガスエンジン3は都市ガスを燃料とするエンジンであり、本例では、電力に加えて別途需要のある熱を並行して供給することができるコジェネレーション設備の一角を担っている。本発明では、このようなガスエンジン3として、例えば、定格出力が1[kW]、数十[kW]、或いは数[MW]等のものを採用することができる。
【0029】
第一電力変換器11は、交流側(図1における右側)が第一スイッチ21を介して二次励磁誘導発電機2の固定子2b(一次巻線)に接続されているとともに、第二スイッチ22を介して電力系統4に接続されており、更に第三スイッチ23を介して負荷7に接続されている。また、第一電力変換器11は、直流側(図1における左側)が直流部13に接続されている。第二電力変換器12は、交流側(図1における左側)が二次励磁誘導発電機2の回転子2a(二次巻線)に接続されている。また、第二電力変換器12は、直流側(図1における右側)が直流部13に接続されている。そして、これらの第一電力変換器11及び第二電力変換器12のそれぞれは、直流側の直流電力を交流電力に変換(逆変換)して交流側に供給するインバータとしての機能と、交流側の交流電力を直流電力に変換(順変換)して直流側に供給するコンバータとしての機能と、の双方を果たすことが可能に構成されている。
【0030】
このような第一電力変換器11や第二電力変換器12は、複数(例えば6個)のスイッチング素子を備えて構成される。スイッチング素子としては、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)やIGBT(insulated gate bipolar transistor)等の種々の構造のパワートランジスタを採用することができる。そして、第一電力変換器11や第二電力変換器12にはPWM(pulse width modulation:パルス幅変調)信号が入力され、当該PWM信号に基づきスイッチング素子がスイッチング動作(オンオフ動作)を行う。なお、第一電力変換器11や第二電力変換器12を作動させるためのPWM信号は、制御装置100により生成される(図2参照)。
【0031】
図1に示すように、第一電力変換器11の交流側及び第二電力変換器12の交流側の双方には、インダクタンスとコンデンサとからなるフィルタ回路10が設けられている。このフィルタ回路10は、スイッチング素子のスイッチングにより発生した高周波成分を除去するフィルタであり、このフィルタ回路10により、第一電力変換器11や第二電力変換器12からの出力電圧波形が正弦波状に変換される。
【0032】
また、図1に示すように、第一電力変換器11の交流側に設けられたフィルタ回路10より二次励磁誘導発電機2側(電力系統4側)には、変圧器6が設けられている。以下の説明では、「変圧器の一次側」は、変圧器6の第一電力変換器11側(図2における符号「#1」を付した側)を指し、「変圧器の二次側」は、変圧器6の二次励磁誘導発電機2側(電力系統4側、図2における符号「#2」を付した側)を指す。
【0033】
直流部13は、第一電力変換器11の直流側と第二電力変換器12の直流側とを接続する部分である。直流部13にはキャパシタ8が備えられているとともに、蓄電装置5が接続されている。蓄電装置5は、発電システム1の自立起動時に必要となる電力を供給する。また、蓄電装置5を利用して、負荷7や電力系統4に供給される電力の変動を抑えることも可能である。蓄電装置5は、例えば、蓄電池や電気二重層キャパシタ等で構成され、直流部13に対して電力を供給して放電すること、及び直流部13から電力の供給を受けて充電することが可能に構成される。なお、蓄電装置5と直流部13との間にスイッチを介在させることもできる。
【0034】
第一スイッチ21は、二次励磁誘導発電機2の固定子2b(一次巻線)と第一電力変換器11とを選択的に接続する。第二スイッチ22は、電力系統4と第一電力変換器11とを選択的に接続する。第一スイッチ21は、第二スイッチ22と協働して、二次励磁誘導発電機2の固定子2b(一次巻線)と電力系統4とを選択的に接続するとともに、第三スイッチ23と協働して、二次励磁誘導発電機2の固定子2b(一次巻線)と負荷7とを選択的に接続する。また、第二スイッチ22は、第三スイッチ23と協働して、電力系統4と負荷7とを選択的に接続する。
【0035】
第一スイッチ21、第二スイッチ22、及び第三スイッチ23のそれぞれは、制御装置100のスイッチ制御部104(図2参照)が生成する開閉信号に基づき開閉制御される。これらのスイッチは、例えば、電磁石の動作によって開閉する電磁接触型のスイッチ等とすることができる。
【0036】
以上のような構成を備えた発電システム1は、発電電力の周波数(電圧、電流の周波数)に関して自由度の高いシステムとなっている。詳細な説明は省略するが(詳細については、例えば上記特許文献1参照)、発電システム1の発電電力の出力電力の周波数(二次励磁誘導発電機2の一次側に誘起される一次側電圧v1(図4参照)の周波数)をf1とし、回転子2aの回転周波数をf0とし、回転子2aの二次巻線を励磁するために当該二次巻線に供給される交流電流(交流電圧)の周波数をf2とすると、「f1=f0+f2」となる。
ここで、回転子2aの回転周波数f0は、回転子2aの回転速度をm[rpm]とし、二次励磁誘導発電機2の磁極数をnとして、「f0=m×n/120」から求まる。
【0037】
例えば、回転子2aの回転速度が1100[rpm]であり、二次励磁誘導発電機2の磁極数が「6」の場合には、回転子2aの回転周波数f0は55[Hz]となる。よって、この場合に、第二電力変換器12を制御して二次巻線に周波数が5[Hz]の交流電流(交流電圧)を供給すれば(f2=5[Hz])、周波数が目標周波数である60[Hz]の交流電力を得ることができる。また、逆に、第二電力変換器12を制御して二次巻線から周波数が5[Hz]の交流電流(交流電圧)を取り出せば(f2=−5[Hz])、周波数が目標周波数である50[Hz]の交流電力を得ることができる。なお、回転子2aの回転速度(すなわち、ガスエンジン3の回転速度)は、同期回転速度以外の任意の回転速度を選択することができる。なお、同期回転速度は、電力系統4の周波数が目標周波数である60[Hz]であり、二次励磁誘導発電機2の磁極数が「6」である場合には、1200[rpm]となる。
【0038】
このように、回転子2aの回転速度(すなわち、ガスエンジン3の回転速度)が同一であっても、回転子2aの二次巻線に供給する交流電流の周波数f2(上記のように、当該二次巻線から交流電流を取り出す場合には負の値となる。)を変えることで出力電力の周波数f1を変化させることができる。よって、例えば、目標周波数が50[Hz]のエリアと60[Hz]のエリアとで同一の仕様のガスエンジン3を用いることができるという利点がある。また、以降に詳細に説明するように、ガスエンジン3の回転速度を電力負荷に応じて適切に選択することで、本願にいう発電システム1の総合効率が高い状態で適切な運転を行なえる。
【0039】
2.制御装置の構成
次に、制御装置100の構成について、図2に基づいて詳細に説明する。ここで、図2に示すように、二次励磁誘導発電機2の一次側に発生する有効電力及び無効電力を、それぞれ、第一有効電力P1及び第一無効電力Q1とする。また、二次励磁誘導発電機2の二次側に供給される有効電力及び無効電力を、それぞれ、第二有効電力P2及び第二無効電力Q2とする。さらに、二次励磁誘導発電機2の一次側から第一電力変換器11側に供給される有効電力及び無効電力を、それぞれ、第三有効電力P3及び第三無効電力Q3とする。そして、図2におけるこれらの電力の流れを示す矢印は、当該電力の値が正の場合の流れ方向を示している。なお、本例では、無効電力の正負に関して、遅れ無効電力(遅れ位相の無効電力)が正の場合を正とし、遅れ無効電力が負の場合を負としている。ここで、「遅れ無効電力が正」とは、電流が電圧に対して位相が進んでいる場合を意味し、「遅れ無効電力が負」とは、電流が電圧に対して位相が遅れている場合を意味する。なお、抵抗成分が無視できる場合には、電流と電圧の位相差は90度となる。
【0040】
図2に示すように、制御装置100は、第一電力変換器11の動作を制御する第一制御部101と、第二電力変換器12の動作を制御する第二制御部102と、第一スイッチ21、第二スイッチ22、及び第三スイッチ23の開閉状態を制御するスイッチ制御部104と、を備えている。さらに、この制御装置100には、電力負荷量に見合って発電を行なうためのエンジンの回転速度を決定するための好適回転速度決定部150、及びこの好適回転速度決定部150において決定された好適回転速度を目標回転速度としてエンジン3に指令する回転速度制御部103を備えている。これらの機能部は、互いに共通の或いはそれぞれ独立のCPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実装されて構成されている。また、これらの機能部は、デジタル転送バス等の通信線を介して互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。ここで、これらの機能部がソフトウェア(プログラム)により構成される場合には、当該ソフトウェアは、演算処理装置が参照可能なRAMやROM等の記憶手段に記憶される。
【0041】
制御装置100は、第一制御部101及び第二制御部102を作動させて、電力系統4から電力の供給を受けていない状態(第二スイッチ22(図1参照)が開状態とされる状態)で、蓄電装置5から供給される電力によりシステムを起動(自立起動)することが可能にも構成されている。以下、第二制御部102及び第一制御部101の構成について順に説明する。
【0042】
2−1.第二制御部の構成
第二制御部102は、第二電力変換器12の動作(具体的には、第二電力変換器12が備えるスイッチング素子のスイッチング動作)を制御する機能部である。第二制御部102は、第二電力変換器12の動作を制御し、第二電力変換器12が発生した交流電力を回転子2aが備える二次巻線に供給することが可能に構成されている。すなわち、第二制御部102は、第二電力変換器12により回転子2aの二次巻線を励磁する工程(以下、「二次側励磁工程」という。)を実行する二次側励磁手段として機能する。
【0043】
本実施形態では、第二制御部102は、二次側励磁工程として、一次側電圧v1に基づく電圧フィードバック制御を行う。そのため、発電システム1は、一次側電圧v1を検出する電圧センサ(図示せず)を備えている。そして、第二制御部102は、後述するように、発電システム1の自立起動時に、この電圧フィードバック制御を実行する。
【0044】
具体的には、第二制御部102は、図2に示すような機能部を備えており、一次側電圧v1をフィードバック値とし、一次側電圧指令値V1*を指令値として、電圧フィードバック制御を実行する。なお、第二制御部102にて実行される電圧フィードバック制御処理の流れについては、図2に示すブロック図より明らかであるため、ここでは、その流れについて簡単に説明する。なお、以下の制御処理の説明においては、図2における各機能部に記載された文字を鉤括弧(「」)で囲んだもので、当該文字に対応する機能部を表す。本実施形態では、一次側電圧指令値V1*が、本発明における「目標電圧値」に相当する。
【0045】
電圧センサにて検出された一次側電圧v1は、「PLL」に入力される。「PLL」は、PLL(Phase Locked Loop)処理を行うことで一次側電圧v1の角速度(角周波数)ωを検出し、その情報を「1/s」に出力する。「1/s」は、「PLL」から送られてきた角速度を積分する積分処理を行い、三相二相変換の基準となる第一基準位相θ1を導出する。
【0046】
電圧センサにて検出された一次側電圧v1は、「dq←abc」にも入力される。「dq←abc」では、第一基準位相θ1に基づき、一次側電圧v1を、三相(a相、b相、c相)の交流座標系(abc座標系)から二相の回転座標系(dq座標系)に変換して、一次側電圧v1のd軸成分v1d及びq軸成分v1qを導出する。なお、本例では、一次側電圧v1のq軸成分v1qがゼロとなるように第一基準位相θ1が設定されている。
【0047】
そして、「dq←abc」にて求められた一次側電圧v1のd軸成分v1d及びq軸成分v1qが「v1dq=√(v1d2+v1q2)」に送られ、一次側電圧v1の振幅値v1dqが算出される。そして、この振幅値v1dqと、二次励磁誘導発電機2の出力電圧の指令値(目標値)であるV1*とが比較され、その差がゼロになるように「PI」にて比例積分制御演算(PI制御演算)が行われる。なお、一次側電圧指令値V1*は、必要に応じて(巻線の結線方法等に応じて)係数が乗算された後、振幅値v1dqとの比較が行われる。例えば、一次側電圧指令値V1*が線間電圧の実効値で表される場合に、当該係数を「√(2/3)」とすることができる。
【0048】
「PI」は、PI制御演算を行い、電圧指令値のd軸成分urd及びq軸成分urqを導出する。そして、電圧指令値のd軸成分urd及びq軸成分urqは「dq→abc」に送られ、dq座標系からabc座標系への二相三相変換が実行される。なお、上記のように、本例では、一次側電圧v1のq軸成分v1qがゼロとなるように第一基準位相θ1が設定されているため、電圧指令値のq軸成分urqはゼロとなる。よって、本例では、「PI」は電圧指令値のd軸成分urdのみを求め、当該d軸成分urdが「dq→abc」に入力されるとともに、「dq→abc」には電圧指令値のq軸成分urqとして「0」が入力される。
【0049】
また、一次側電圧v1の角速度ω0と回転子2aの角速度ωr(上記の回転周波数f0×2π)との差(ω0−ωr)に基づき「1/s」が第二基準位相θ2を導出する。なお、回転子2aの角速度ωrは、図示しない磁極位置センサ(レゾルバ等)により検出する構成とすることができる。そして、「dq→abc」は、この第二基準位相θ2に基づき、電圧指令値のd軸成分urd及びq軸成分urqに対して二相三相変換を実行し、実行結果を「PWM」に出力する。そして、「PWM」は、「dq→abc」から送られてきた三相の電圧指令値に基づき、第二電力変換器12が備えるスイッチング素子をスイッチング制御するためのPWM信号(ゲート駆動信号)を生成する。
【0050】
以上が、第二制御部102が実行する電圧フィードバック制御の流れである。なお、詳細な説明は省略するが、発電システム1の通常運転時において、第二制御部102を、二次励磁誘導発電機2の一次側に発生する第一有効電力P1や第一無効電力Q1をフィードバック値としてフィードバック制御(電力フィードバック制御)を行うように構成することができる。このような構成では、抵抗成分が無視できる定常状態において、第一有効電力P1を、二次励磁誘導発電機2の二次側を流れる電流である二次側電流i2のd軸成分(二次側d軸電流)によって制御でき、第一無効電力Q1を、二次側電流i2のq軸成分(二次側q軸電流)によって制御できる。すなわち、第一有効電力P1及び第一無効電力Q1を互いに独立に制御することができる。
【0051】
2−2.第一制御部の構成
第一制御部101は、第一電力変換器11の動作(具体的には、第一電力変換器11が備えるスイッチング素子のスイッチング動作)を制御する機能部である。第一制御部101は、第一電力変換器11の動作を制御し、第一電力変換器11が発生した交流電力を、固定子2bが備える一次巻線に供給することが可能に構成されている。すなわち、第一制御部101は、第一電力変換器11により固定子2bの一次巻線を励磁する工程(以下、「一次側励磁工程」という。)を実行する一次側励磁手段として機能する。
【0052】
本実施形態では、第一制御部101は、一次側励磁工程として、第一電力変換器11の交流側に流れる電流(本例では、変圧器二次側電流ig)に基づく電流フィードバック制御を行う。そのため、発電システム1は、変圧器二次側電流igを検出する電流センサ30を備えている。そして、第一制御部101は、後述するように、発電システム1の自立起動時に、この電流フィードバック制御を実行する。
【0053】
具体的には、第一制御部101は、図2に示すような機能部を備えており、変圧器二次側電流igをフィードバック値とし、電流指令値Ig*を指令値として、電流フィードバック制御を実行する。なお、第一制御部101にて実行される電流フィードバック制御処理の流れについては、図2に示すブロック図より明らかであるため、ここでは、その流れについて簡単に説明する。なお、以下の制御処理の説明においては、上記第二制御部102の説明と同様、図2における各機能部に記載された文字を鉤括弧で囲んだもので、当該文字に対応する機能部を表す。
【0054】
電流センサ30にて検出された変圧器二次側電流igは、「dq←abc」に入力される。「dq←abc」には、上記の第一基準位相θ1も入力される。そして、「dq←abc」は、当該第一基準位相θ1に基づき、変圧器二次側電流igに対して三相二相変換を実行し、変圧器二次側電流igのd軸成分igd及びq軸成分igqを導出する。
【0055】
そして、変圧器二次側電流igのd軸成分igdと、電流指令値Ig*のd軸成分Igd*とが比較され、その差がゼロになるように「PI」にてPI制御演算が実行され、その結果に対して制御性向上のための非干渉制御が実行される。具体的には、「PI」の出力に(−1)を乗じたものとω0×Lg×igqとの和を導出する。そして、この導出結果に対して一次側電圧v1のd軸成分v1dを加算し、電圧指令値のd軸成分ugdが導出される。ここで、Lgは、変圧器6の正相リアクタンスを二次側換算して求めたインダクタンスである。
【0056】
同様に、変圧器二次側電流igのq軸成分igqと、電流指令値Ig*のq軸成分Igq*とが比較され、その差がゼロになるように「PI」にてPI制御演算が実行され、その結果に対して制御性向上のための非干渉制御が実行される。具体的には、「PI」の出力に(−1)を乗じたものからω0×Lg×igdを減算したものを導出する。そして、この導出結果に対して一次側電圧v1のq軸成分v1q(本例では「0」)を加算し、電圧指令値のq軸成分ugqが導出される。
【0057】
「abc←dq」は、第一基準位相θ1に基づき、電圧指令値のd軸成分ugd及びq軸成分ugqに対して二相三相変換を実行し、実行結果を「PWM」に出力する。そして、「PWM」は、「abc←dq」から送られてきた三相の電圧指令値に基づき、第一電力変換器11が備えるスイッチング素子をスイッチング制御するためのPWM信号(ゲート駆動信号)を生成する。
【0058】
以上が、第一制御部101が実行する電流フィードバック制御の流れである。なお、後述するように、発電システム1の自立起動時には、第一制御部101は、第三無効電力Q3を制御する。そして、本例では、上記のように、一次側電圧v1のq軸成分v1qはゼロとなる。よって、第三無効電力Q3は、変圧器二次側電流igのq軸成分igqにより制御することができる。この場合、電流指令値Ig*は、少なくともそのq軸成分Igq*を有する。一方、第三有効電力P3は、変圧器二次側電流igのd軸成分igdにより制御することができるため、第三有効電力P3を積極的に制御する場合には、電流指令値Ig*は、d軸成分Igd*を有する。
【0059】
また、詳細な説明は省略するが、発電システム1の通常運転時において、第一制御部101を、直流部13の電圧Vdcをフィードバック値として、当該電圧Vdcが一定になるようにフィードバック制御を行うように構成することができる。
【0060】
3.自立運転の制御
自立運転とは、ガスエンジン3を目標回転速度で駆動するとともに、電力系統4からの電力の供給を受けることなく、蓄電装置5からの電力供給により、負荷7に目標周波数(50〔Hz〕又は60〔Hz〕)の出力電力を供給するための運転である。この自立運転については、自立運転制御部としての制御装置100が行うように構成されている。
以下では、図4を参照して、電力供給の対象となる負荷7に対応して、発電システム1を、その好適な効率(ほぼ最高の効率)で運転するため、本願独特の回転速度の決定方法に関して述べるとともに、図7を参照して、制御装置100において実行される発電システム1の自立起動から負荷7に接続するまでの制御(自立運転の制御)について説明する。ここでは、自立起動において接続される負荷7の電力負荷量は予め判明しているとして説明する。この種の電力負荷量としては、所謂「重要負荷」の電力負荷量が例示される。
【0061】
以下、説明する自立運転の制御は、制御装置100の各機能部を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実行される。これらの各機能部がプログラムにより構成される場合には、制御装置100が有する演算処理装置が、各機能部を構成するプログラムを実行するコンピュータとして動作する。自立運転の制御に関して、制御装置100において主な機能を果たす部位は、下記する回転速度制御部103と好適回転速度決定部150である。
【0062】
3−0.目標回転速度ω*の決定
以下、所定の電力負荷量に対応して、発電システム1を最も総合発電効率の高い状態で運転するために、本願発電システム1が備える構成に関して説明する。
【0063】
図1図2に示すように、本願に係る発電システム1には、その回転速度制御部103に付属の機能部位として好適回転速度決定部150が設けられ、この好適回転速度決定部150が、予め判明している電力負荷量Ploadに対して、当該発電システム1を最も効率のよい状態(二次励磁発電機効率及びエンジンの効率を総合的にみて最も高くする状態)で運転するためのエンジンの回転速度引いては回転子2aの回転速度)を決定するように構成されている。
この好適回転速度決定部150により決定される好適回転速度ω*が、回転速度制御部103からガスエンジン3に指令される「目標回転速度ω*」となる。
【0064】
この好適回転速度決定部150には、任意の回転速度ω及び任意の電力負荷量Ploadに対する二次励磁誘導発電機2の損失である発電機損失Plossとの関係を示す発電機損失指標M1と、エンジンの回転速度とトルクとに対するエンジン効率の関係を示すエンジン効率指標M2とを記憶した記憶部151と、
この記憶部151に記憶された発電機損失指標M1を使用して、前記所定の電力負荷量Pload及び仮回転速度ωで発電システムを運転した場合の発電機損失Plossを求める発電機損失導出部152と、
発電機損失導出部153で導出された発電機損失Plossに基づいて、発電機効率ηd及びエンジンから二次励磁誘導発電機に入力される駆動用の機械入力Pmを導出する発電機効率・機械入力導出部154と、
発電機効率・機械入力導出部154で導出される機械入力Pmと前記仮回転速度ωから二次励磁発電機にかかるトルクTを導出するトルク導出部155と、
トルク導出部155で導出されるトルクTと前記仮回転速度ωから、記憶部151に記憶されたエンジン効率指標M2を使用してエンジン効率ηeを求めるエンジン効率導出部156と、
発電機効率・機械入力導出部154で導出された発電機効率ηdと、前記エンジン効率導出部156で導出されたエンジン効率ηeから、その積値ηd×ηeとしての発電システム総合効率ηを導出する総合効率導出部157とが備えられている。
【0065】
〔発電機損失指標M1〕
以下の表1に、この発電機損失指標M1の一例を示した。
同表において、列は回転速度〔rpm〕を、行は電力負荷量〔W〕を示している。内部の各要素が発電機損失〔W〕を示している。
【0066】
発電機損失の導出に当たっては、図3に示すモデルを使用するとともに、二次励磁誘導発電機の制御は文献(「巻線形誘導発電機を適用したガスエンジンコージェネレーションシステムの停電始動御及び自立運転時の制御方法の検討」大道哲夫、三浦友史、伊藤敏史、佐藤裕紀電気学会半導体電力変換研究会 SPC−11−029(2011))で示された方法を用いた。
また、シミュレーションソフトとしては「PSCAD/EMTDC」(Manitoba HVDC Research Centre Inc.製)を用いて計算した。
【0067】
基本的なシミュレーションアルゴリズムは、電力負荷Ploadと発電システムの回転速度ωを入力とし,回転速度指令値ω*をエンジンに出力するものである。
【0068】
【表1】
【0069】
〔エンジン効率指標M2〕
エンジン効率指標M2の例は、図5(b)、図6(b)に示す図のような指標であり、横軸が回転速度〔rpm〕を示し、縦軸がトルク〔N・m〕に対応している。そしてエンジン効率ηe(ηe<ηeb<ηec<ηd・)は、同図に概略楕円内の領域として示されており、アルファベットが進むに従って、エンジン効率が高くなる領域を示している。
【0070】
発電機損失導出部153は、先に説明した発電機損失指標M1を使用して、所定の電力負荷量Pload及び仮回転速度ωで発電システムを運転した場合の発電機損失Plossを求める。表1に示す発電機損失指標M1を使用する場合は、所定の電力負荷量Pload及び仮回転速度ωの動作点を囲む表上の四点の発電機損出Plossのデータを使用して面要素四点補間法により当該運転状態における発電機損失Plossを導出する。
【0071】
発電機効率・機械入力導出部154は、発電機損失導出部153で導出された発電機損失Plossに基づいて、発電機効率ηdを、ηd=(Pload−Ploss)/Ploadとして導出する。一方、ガスエンジン3から前記二次励磁誘導発電機2に入力される駆動用の機械入力Pmを、Pm=Pload+Plossとして導出する。
【0072】
さらに、トルク導出部155は、発電機効率・機械入力導出部154で導出される機械入力Pmと仮回転速度ωから二次励磁発電機にかかるトルクTをT=Pm/(2π×ω/60)として導出する。
【0073】
エンジン効率導出部156は、本例では、図5(b)、図6(b)に示すようなエンジン効率マップとして構成される指標M2を使用して、トルク導出部155で導出されるトルクTと仮回転速度ωからエンジン効率ηeを求める。
【0074】
そして、総合効率導出部157において、発電機効率・機械入力導出部154で導出された発電機効率ηdと、エンジン効率導出部156で導出されたエンジン効率ηeから、その積値ηd×ηeとしての発電システム総合効率η=ηd×ηeを導出する。
【0075】
従って、好適回転速度決定部150は、所定の電力負荷量Pload、異なった仮回転速度ωで発電システム総合効率を逐次求める構成が採用されているとともに、総合効率ηが最大となる仮回転速度ωを探索する探測手段(所謂、山登り法に従った探索演算処理機能部152)を備え、所定の収束条件を満たすことにより、総合効率ηが最大となる仮回転速度ωを見出すように構成されている。そして、逐次導出される仮回転速度ωに対する発電システム総合効率ηが最大となる仮回転速度ωを、所定の電力負荷量を負荷7に供給する場合の好適回転速度ωと決定する。
【0076】
結果、所定の電力負荷量Ploadに対して、駆動用のエンジン3と二次励磁誘導発電機2を備えた発電システム1において、当該所定の電力負荷量Ploadに対して、総合効率を最大の状態で、運転することができる。
【0077】
以下、図4図5図6に基づいて、目標回転速度の決定手順について説明する。
図4は、決定に際して実行される処理フローを示す。
先ず、決定の対象とする電力負荷量Ploadを取り込む(ステップ#1)。
この電力負荷量Ploadとしては、例えば、停電時に給電することが必要となる重要負荷のみに対する給電量、或いは、所定の時間帯ごとに給電することが必要とされると予想される予想給電量が該当する。
【0078】
ステップ#1で取り込まれた電力負荷量Ploadに対して、初期仮回転速度ω0を設定する(ステップ#2)。この設定に対して、予め初期仮回転速度ω0のテーブルを用意しておき、そのテーブルから電力負荷量Ploadに対応した予め初期仮回転速度ω0を設定することができる。
【0079】
このようにして設定される電力負荷量Pload及び仮回転速度ωに対して、電力機損出導出部153が発電機損失Plossを導出する(ステップ#3:発電機損出導出工程)。
【0080】
次に、発電機効率・機械入力導出部154が、発電機損失導出工程で導出された発電機損失Plossに基づいて、発電機効率ηd及びエンジンから二次励磁誘導発電機2に入力される駆動用の機械入力Pmを導出する(ステップ#4:発電機効率・機械入力導出工程)。ここで、機械入力Pmはガスエンジン3が発生すべき駆動力に対応する。
【0081】
次に、トルク導出部155が、発電機効率・機械入力導出工程で導出される機械入力Pmと仮回転速度ωから二次励磁発電機にかかるトルクTを導出する(ステップ#5:トルク導出工程)。
【0082】
次に、エンジン効率導出部156が、トルク導出工程で導出されるトルクTと仮回転速度ωから、エンジン効率指標M2に従って、エンジン効率ηeを求める(ステップ#6:エンジン効率導出工程)。
【0083】
さらに、総合効率導出部157が、発電機効率・機械入力導出工程で導出された発電機効率ηdと、エンジン効率導出工程で導出されたエンジン効率ηeから、その積値ηd×ηeとしての発電システム総合効率ηを導出する(ステップ#7:総合効率導出工程)とを実行する。
【0084】
そして、探索演算処理機能部152において、山登り法に従って発電システム総合効率ηが一定の収束条件を満たしているか否かが判定される(ステップ#8:収束判定工程)。
判定条件を満たしていると判定した場合(ステップ#8:yes)は、その判断段階の仮回転速度ωを、前記所定の電力負荷量を負荷7に供給する場合の好適回転速度ω*とする(ステップ#10)。
一方、判定条件を満たしていないと判定した場合(ステップ#8:no)は、仮回転速度ωの補正を行い(ω=ω+Δω)、再度、ステップ#3〜ステップ#8を、山登り法に
従って繰り返す。
結果、山登り法により、総合効率ηを最大とする回転速度ω*を得ることができる。この回転速度ω*は、ガスエンジン3に対する回転速度の指令値ω*となる。
【0085】
図5図6は、初期仮回転速度ω0の設定値が、好適な回転速度に対して、大きい側に設定されたた場合の山登り法による処理(パターンA:図5)と、小さい側に設定された場合の山登り法による処理(パターンB:図6)を示すものである。図5では、動作点1、1´、2、3、4、5、6の順に探索が進む。図6では、動作点1、2、3、4、5の順に探索が進む。
【0086】
パターンAは、Δω変更した場合に効率が上昇する場合に相当し、図5(a)に示す1の状態から+Δωを行なって効率が低下した場合(1→1‘)は、Δωの符号を入れ替える(−ω)。1→2→3とΔωの探索幅で回転速度を変更する(−ωずつ変更)。2→3で効率が低下するので、3の回転速度から符号を反転させて、Δ0.5ωの探索幅で回転速度を変更する(+0.5ωずつ変更)。そして、4→5で効率が低下するので、5の回転速度から符号を反転させて、Δ0.5×0.5ωの探索幅で回転速度を変更する(+0.25ωずつ変更)。
さらに、探索幅を0.5倍ずつ狭めていきながら探索を繰り返し、決められた回数(例えば:20回)または前回の符号が反転するまでの探索での最高効率点とする。この収束条件としては、現在の効率を比較して、効率向上幅がΔηがある値未満(例:Δη<+1
.0%)の場合に収束したと判断できる。
【0087】
パターンBは、図6(a)に示す1の状態から±Δωを行なって効率が必ず低下する場合(1→2又は1→3)は、探索幅Δωを0.5倍する。そして、±Δ0.5ω変更して効率が必ず低下する場合は、探索幅をさらに0.5倍して探索を行う(1→4又は1→5)。効率が上昇する条件まで繰り返し行う。効率が上がった回転速度を見つけた場合(図示する場合は5)、5の回転速度から、前回の探索幅を0.5倍してさらにパターンAと同様の探索を行う。
結果、山登り法による、好適回転速度の探測(収束)を良好に行なえる。
【0088】
以上が、エンジンの好適回転速度の探索過程の説明である。
以下、目標回転速度とする前の待機運転工程、負荷接続工程に関して、図7図10を使用して説明する。
【0089】
図7は、ガスエンジン3により回転子2aが駆動されているとともに第三スイッチ23が開状態とされる無負荷状態において、第一スイッチ21が閉状態とされるとともに第二スイッチ22が開状態とされる状態から、発電システム1(二次励磁誘導発電機2)を自立起動し、負荷7に電力を供給するまでの処理の流れを示している。なお、第二スイッチ22が開状態ではなく閉状態とされているが、電力系統4から電力が供給できない状態にある場合も、ここで説明する処理を同様に行うことができる。ガスエンジン3は、例えばセルモータで起動された後に、負荷7(回転子2aを回転するのに必要なエネルギを除く)に接続されていない状態で所定回転速度まで加速され、負荷7に接続されていない無負荷状態では、当該所定回転速度で安定しているとする。また、発電システム1の自立起動時には、蓄電装置5は直流部13に電力を供給可能な状態とされ、自立起動のための電力を、必要に応じて、回転子2aが備える二次巻線や固定子2bが備える一次巻線に供給する。
【0090】
3−1.自立起動(昇圧工程、一次側励磁工程)
図7に示すように、制御装置100は、第一電力変換器11及び第二電力変換器12の内の第二電力変換器12のみを第二制御部102により作動させ、昇圧工程を実行する(ステップ#1)。ここで、「昇圧工程」とは、二次側励磁工程により一次側電圧v1を一次側電圧指令値V1*まで昇圧させる昇圧処理を行う工程である。すなわち、「昇圧工程」の実行後に、一次側電圧v1と一次側電圧指令値V1*とが等しくなる。この昇圧工程において、第二制御部102は、上述した電圧フィードバック制御を実行する。
【0091】
ここで、一次側電圧指令値V1*は、上記のように、二次励磁誘導発電機2の出力電圧(一次側電圧v1)を定める電圧であり、線間電圧の実効値換算で、例えば、200[V]、3300[V]、6600[V]等に設定することができる。なお、一次側電圧指令値V1*は、設定値に向ってスロープ状に上昇させる構成とし(ソフトスタート)、一次側電圧v1の振幅をスロープ状に増加させるのが安定性の観点から好適である。例えば、線間電圧の実効値換算で、400[V/sec]の割合で一次側電圧指令値V1*を設定値まで上昇させることができる。
【0092】
なお、一次側電圧v1を相電圧(例えばa相の相電圧)で表した場合の振幅の最大値(ピーク値)をv1am(単位[V])とし、一次側電圧指令値V1*が線間電圧の実効値(単位[V])であるとすると、本実施形態では、v1am=V1*×√(2/3)となった状態が、一次側電圧v1と一次側電圧指令値V1*とが等しくなった状態である。このように、「一次側電圧v1が一次側電圧指令値V1*まで昇圧した状態」及び「一次側電圧v1と一次側電圧指令値V1*とが等しい状態」、並びにこれらと同義の文言は、必要に応じて(巻線の結線方法等に応じて)係数を乗じるなどした後に、v1の値とV1*の値とが互いに等しくなった状態を意味する。
【0093】
第二制御部102による昇圧工程の実行後、すなわち、一次側電圧v1が一次側電圧指令値V1*まで昇圧された後、制御装置100の第一制御部101は、第一電力変換器11を作動させ、一次側励磁工程を実行する(ステップ#2)。なお、第一制御部101は、一次側励磁工程として、上述した電流フィードバック制御を実行する。具体的には、第一制御部101は、第一電力変換器11を、第一電力変換器11が無効電力(本例では、正の遅れ無効電力)を発生するように制御する。この場合、第三無効電力Q3は負の値となり、第三スイッチ23が開状態とされているため、第一無効電力Q1も負の値(第三無効電力Q3とほぼ等しい値)となる。これにより、第一電力変換器11から二次励磁誘導発電機2の固定子2bが備える一次巻線に、正の遅れ無効電力が供給される。すなわち、第一制御部101は、一次側励磁工程として、第一電力変換器11から一次巻線に無効電力(本例では、正の遅れ無効電力)を供給する制御を行う。
【0094】
第一制御部101は、一次側励磁工程を行うに際し、所望の遅れ無効電力(第三無効電力Q3)の大きさに応じた電流指令値Ig*を設定する。なお、上記のように、本例では、第三無効電力Q3は、変圧器二次側電流igのq軸成分igqにより制御することができる。よって、第一制御部101は、電流指令値Ig*として、少なくともq軸成分Igq*がゼロ以外の値を持つものを設定する。なお、第一電力変換器11に、正の遅れ無効電力とともに有効電力も積極的に発生させる場合には、電流指令値Ig*として、d軸成分Igd*もゼロ以外の値を持つものを設定する。
【0095】
なお、電流指令値Ig*は、設定値に向ってスロープ状に上昇させる構成とし(ソフトスタート)、変圧器二次側電流igの振幅をスロープ状に増加させるのが、安定性の観点から好適である。例えば、電流指令値Ig*が、変圧器二次側電流igのある相(例えばa相)の線電流igaの振幅の最大値(単位[V])に、√(3/2)を乗じたものである場合に、電流指令値Ig*を、6[V/sec]の割合で設定値まで上昇させることができる。
【0096】
なお、第二制御部102は、一次側電圧v1が一次側電圧指令値V1*まで昇圧された後も二次側励磁工程を実行し、一次側電圧v1を一次側電圧指令値V1*に維持するように第二電力変換器12を制御する。すなわち、ステップ#2においては、第一制御部101が電流フィードバック制御を実行しているとともに、第二制御部102が電圧フィードバック制御を実行している。そして、この状態では、二次励磁誘導発電機2が必要とする電力の一部が第一電力変換器11から無効電力として供給されるため、一次側電圧v1を一次側電圧指令値V1*に維持するために二次巻線に供給する必要がある電力(少なくとも第二無効電力Q2)は、昇圧工程(ステップ#1)の完了時よりも少なくなる。よって、第一電力変換器11から一次巻線に供給される正の遅れ無効電力の増加に合わせて、第二電力変換器12が発生する電力(第二電力変換器12から二次巻線に供給される電力)が減少するように、第二制御部102が第二電力変換器12を制御する。このような構成とすることで、第二電力変換器12から二次巻線に供給される電力が過大になるのを抑制することが可能となっている。
【0097】
なお、本例では、第一電力変換器11から一次巻線に供給される正の遅れ無効電力の増加に合わせて第二電力変換器12から二次巻線に供給される電力を減少させるに際し、二次巻線に流れる電流(二次側電流i2)を減少させるように構成されている。なお、二次側電流i2の減少とともに、二次励磁誘導発電機2の二次側に誘起される電圧である二次側電圧v2も減少させる構成とすることもできる。
【0098】
一次側励磁工程(ステップ#2)の実行後においては、一次側電圧v1が一次側電圧指令値V1*とされているとともに、二次励磁誘導発電機2の一次巻線に供給される無効電力や、二次励磁誘導発電機2の二次巻線に供給される電力が、所望の値となっている。この状態が、負荷7との接続が可能になった一次側電圧確立状態である。
【0099】
以上のように、制御装置100(第一制御部101及び第二制御部102)は、無負荷状態で、一次側励磁工程と二次側励磁工程との双方を実行して、言い換えれば、第一電力変換器11及び第二電力変換器12の双方を作動させて、二次励磁誘導発電機2の一次側に発生する一次側電圧v1を一次側電圧指令値V1*とする一次側電圧確立工程(一次側電圧確立処理)を実行する。そして、本例では、上記のように、昇圧工程の後、一次側電圧v1を一次側電圧指令値V1*に維持した状態で、第一電力変換器11から一次巻線に供給される正の遅れ無効電力を増加させるとともに、第二電力変換器12から二次巻線に供給される電力を減少させるように構成されている。すなわち、本例では、一次側電圧確立工程は、昇圧工程を実行した後に一次側励磁工程を開始する、遅延型一次側電圧確立工程(遅延型一次側電圧確立処理)とされている。
【0100】
3−2.待機運転及び負荷7への接続(待機運転工程、負荷接続工程)
制御装置100は、遅延型一次側電圧確立工程(ステップ#1及びステップ#2)の実行によって一次側電圧v1が確立され、自立運転状態になると、第三スイッチ23が開状態で負荷7に接続されていない無負荷状態で、ガスエンジン3を目標回転速度よりも速い無負荷時回転速度で駆動するとともに、二次励磁誘導発電機2の一次巻線の出力電力を目標周波数の出力電力に制御する待機運転工程を実行する(ステップ#3)。制御装置100の回転速度制御部103、第一制御部101、及び、第二制御部102を備えた制御装置100により、待機運転工程を実行するように構成されている。制御装置100内に備えられる待機運転工程を実行させる制御機能部位を「待機運転制御部110」と呼ぶ。
【0101】
そして、待機運転工程(ステップ#3)の実行後、第三スイッチ23を閉状態として一次巻線を負荷7に接続する負荷接続工程を実行する(ステップ#4)。上述の如く、制御装置100には、第三スイッチ23の開閉状態を制御するスイッチ制御部104を備えており、そのスイッチ制御部104、第一制御部101、及び、第二制御部102を備えた制御装置100により、負荷接続工程を実行するように構成されている。これにより、二次励磁誘導発電機2で発電した電力が、電力を必要とする負荷7に供給される。このような自立運転が実行可能となることで、電力系統4から切り離された状態でも、発電システム1から重要負荷(負荷7)に給電することが可能となり、停電時の非常用電源としての役割を担うことが可能となる。制御装置100内に備えられる負荷接続工程を実行させる制御機能部位を「負荷接続待制御部120」と呼ぶ。
【0102】
以下、図8及び図9により、待機運転工程(ステップ#3)における制御及び当該制御による効果を説明する。
【0103】
図8は、発電システム1におけるガスエンジン3の回転速度の制御を示すグラフ図である。図8では、発電システム1におけるガスエンジン3の回転速度の制御の様子を実線で、従来技術の同期発電機を発電機として用いた場合の制御の様子を破線で示している。図8のガスエンジン3の目標回転速度は1200[rpm]であるところ、本実施形態に係る発電システム1では、自立運転状態かつ無負荷状態の待機運転工程である図8(A)の範囲では、ガスエンジン3を目標回転速度1200[rpm]より高い1500[rpm](無負荷時回転速度)で運転する。この目標回転速度が、例えば、先に説明した重要負荷(負荷7)の電力負荷量と見合う好適回転速度の一例となる。
【0104】
そして、図8(B)において、第三スイッチ23を閉状態とし、発電システム1を定格負荷の30%の負荷7に接続している。図8(C)に見られるように、負荷7への接続により、本実施形態においてもガスエンジン3の回転速度は低下するが(実線)、回転速度の時間当たりの低下は従来技術(破線)に比べて緩やかである。
【0105】
ガスエンジン3の回転速度を図8のように制御した場合の発電システム1の出力電力の周波数f1の変化を、図9に示す。図9(A)(B)(C)は夫々、図8(A)(B)(C)のタイミングに対応している。
【0106】
図9において、負荷7への接続以前の(A)の範囲では、図8(A)に示したように、ガスエンジン3を目標回転速度1200[rpm]より高い無負荷時回転速度1500[rpm]で駆動している。この図9(A)の範囲では、制御装置100により二次励磁誘導発電機2を制御することで、発電システム1の出力電力の周波数f1を目標周波数の60[Hz]に安定させている。すなわち、回転子2aの回転周波数f0に基づいて回転子2aの二次巻線を励磁するために当該二次巻線に供給される交流電流の周波数f2を制御装置100により制御することで、出力電力の周波数f1を目標周波数の60[Hz]に安定させている。
【0107】
図9(B)で負荷7に接続されると、従来技術(破線)と同様に、本実施形態(実線)においても、発電システム1の出力電力の周波数f1は一旦低下する(図9(C))。しかし、本実施形態(実線)における出力電力の周波数f1の低下は、従来技術(破線)に比べて小さい。すなわち、図8(C)に見られるように、負荷7への接続直後は、ガスエンジン3の回転速度の変化が大きいため、本実施形態においても出力電力の周波数f1はわずかに低下するが、本実施形態において、その後のガスエンジン3の回転速度の変化は従来技術に比べて緩やかであるため、電力負荷接続時の出力電力の周波数f1の変動を抑えることができ、図9(C)のように、目標周波数である60[Hz]で一定に制御することができる。
【0108】
このように、本発明に係る発電システムの制御方法及び制御装置によれば、従来の制御方法及び制御装置を用いた場合に比べて電力負荷接続時の出力電力の周波数の低下を抑えることができるため、より大きい電力負荷に接続することが可能となる。
【0109】
なお、図8(C)では、負荷7への接続後に、目標回転速度1200[rpm]とは異なる、目標回転速度の近傍の回転速度1250[rpm]になるようにガスエンジン3の回転速度を制御しているが、これは、第二電力変換器12により二次巻線に供給する周波数の制御を常時行いながら、負荷7に目標周波数の電力を供給する例をであるためである。従って、回転速度は必ずしも上記のように制御する必要はなく、負荷7への接続後は上記の周波数制御を行わず、回転速度を目標回転速度1200[rpm]とする構成としてもよい。
【0110】
3−3.待機運転工程における好適な無負荷時回転速度の設定
図10を用いて、待機運転工程における好適な無負荷時回転速度の設定について説明する。図10は、電力負荷接続時の発電システム1の出力電力の周波数f1の低下を5%以内に収めることを目標とした場合の、好適なガスエンジン3の無負荷時回転速度を示すグラフ図である。なお、図10に係る発電システム1において、ガスエンジン3の最大回転速度は1500[rpm]である。
【0111】
電力負荷にて消費する全電力に対して一次巻線に接続する負荷7の接続負荷電力の割合である負荷率が30%以下の図10(i)の範囲では、負荷率が0%の場合の回転速度1250[rpm]に始まり、負荷率が30%の場合の回転速度1500[rpm]までの間では、ガスエンジン3の最大回転速度である1500[rpm]以下の回転速度で、電力負荷接続時の発電システム1の出力電力の周波数f1の低下を、目標の範囲である5%以内に収めることができる。従って、図10(i)の範囲では、無負荷時回転速度は、負荷率(接続される負荷7の大きさ)の増加に応じて速くなる、負荷に接続した場合の出力電力の周波数f1の低下を目標の範囲である5%以内に収めることが可能な回転速度に設定するのが好適である。
【0112】
一方、負荷率が定格負荷の30%〜60%である図10(iii)の範囲では、電力負荷接続時の発電システム1の出力電力の周波数f1の低下を5%以内に抑えるためには、ガスエンジン3を最大回転速度1500[rpm]を超える回転速度で駆動することが必要となる。しかし、機械的な制約上、ガスエンジン3を、最大回転速度1500[rpm]を超える回転速度で駆動することはできない。従って、図10(iii)の範囲では、電力負荷接続時の発電システム1の出力電力の周波数f1の低下をできる限り抑えるためには、無負荷時回転速度をガスエンジン3の最大回転速度である1500[rpm]に設定するのが好適である。
【0113】
以上のように、発電システム1の大型化を極力抑えつつ、電力負荷接続時の発電システム1の出力電力の周波数f1の低下をできる限り目標の範囲に抑えるためには、無負荷時回転速度は、接続する負荷7の大きさ(負荷率)に応じて、負荷7に接続した場合の出力電力の周波数f1の低下を目標の範囲に収めることが可能な回転速度以上かつ前記最大回転速度以下の回転速度、又は、ガスエンジン3の最大回転速度、のいずれかに設定するのが好適である。
【0114】
また、上記のように、無負荷時回転速度を負荷率に応じて設定することで、発電システムの大型化を極力抑えつつ、電力負荷接続時の出力電力の周波数の低下をできる限り目標の範囲に抑えることができる、好適な無負荷時回転速度を設定することができる。
【0115】
なお、負荷率の増加に応じて無負荷時回転速度を速く設定することが好適な図10(i)の負荷率の範囲と、負荷率の増加によらず無負荷時回転速度を一定の値(最大回転速度)に設定することが好適な図10(iii)の負荷率の範囲との境界となる図10(ii)の負荷率を、無負荷時回転速度の設定方法を切り替える基準値である設定負荷率として設定することで、制御装置100は、好適な無負荷時回転速度の設定を行うことができる。
【0116】
なお、図10(iv)は、発電システム1に接続できる電力負荷の限界を示す負荷率である。接続される電力負荷にとって、供給される電力の周波数f1が大きく変動することは好ましくない。従って、発電システム1に接続できる負荷7の上限は、当該負荷7を接続した場合の発電システム1の出力電力の周波数f1の低下度合いにより、許容限界が設定される。
図10において、機械的な制約により回転速度が制限される図10(iii)の範囲では、電力負荷接続時の発電システム1の出力電力の周波数f1は、負荷率の増加に伴って、目標の範囲(5%)を超えて低下する。
そして、負荷率が60%となる図10(iv)において、電力負荷接続時の発電システム1の出力電力の周波数f1の低下は、許容限界である15%に達する。このため、発電システム1では、負荷率が60%を超える電力負荷の接続は認めない。従って、図10(iv)を超える範囲では、回転速度は記されておらず(図10(v))、境界となる図10(iv)が、発電システム1に接続できる電力負荷の限界を示す負荷率となる。
【0117】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係るその他の実施形態を説明する。なお、以下の各々の実施形態で開示される特徴は、その実施形態でのみ利用できるものではなく、矛盾が生じない限り、別の実施形態にも適用可能である。
【0118】
(1)上記の実施形態では、好適な自立運転時の無負荷時回転速度の設定として、図10では、電力負荷接続時の発電システム1の出力電力の周波数f1の低下を5%に収めることを目標とした場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものでなく、接続される負荷7の性質に応じて、出力電力の周波数f1の低下の目標の範囲を、例えば3%や10%とすることもできる。また、図10では、接続できる電力負荷の限界として、出力電力の周波数が15%低下する電力負荷を、接続できる電力負荷の限界とする場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものでなく、接続される負荷7の性質に応じて、接続できる電力負荷の限界を、例えば出力電力の周波数が10%や20%低下する電力負荷とすることもできる。
【0119】
(2)上記の実施形態では、一次側電圧確立工程が、遅延型一次側電圧確立工程である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、二次側励磁工程による昇圧工程が終了する前に、一次側励磁工程を開始する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。すなわち、一次側励磁工程と二次側励磁工程とを同時に並行して実行しながら、一次側電圧v1を一次側電圧指令値V1*まで昇圧させ、一次側電圧v1の確立を行う構成とすることができる。この場合において、一次側励磁工程と二次側励磁工程とを同時或いはほぼ同時に開始する構成とすることができる。このように一次側励磁工程と二次側励磁工程とを並行して実行して一次側電圧v1を一次側電圧指令値V1*まで昇圧させる構成では、上記実施形態に比べ、二次側電流i2の最大値をより低く抑えたり、二次側電流i2が過大な状態とされる時間をより短く抑えたりすることが可能となる。
【0120】
(3)上記の実施形態では、一次側励磁工程では、変圧器二次側電流igに基づき電流フィードバック制御を実行する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、一次側励磁工程で、変圧器6の一次側の電流や図2における電流センサ30よりも固定子2b側における電流に基づき電流フィードバック制御を実行する構成とすることもできる。
【0121】
(4)上記の実施形態では、第一制御部101による電流フィードバック制御、及び第二制御部102による電圧フィードバック制御の双方が、比例積分制御演算(PI制御演算)に基づくものである構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、比例積分制御演算に代えて比例積分微分制御演算(PID制御演算)を実行する構成とすることもできる。
【0122】
(5)上記の実施形態では、一次側励磁工程では、第一電力変換器11の交流側に流れる電流(変圧器二次側電流ig)に基づき電流フィードバック制御を行い、二次側励磁工程では、一次側電圧v1に基づき電圧フィードバック制御を行う構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、一次側励磁工程及び二次側励磁工程の少なくとも何れかを、フィードバック制御以外の制御方法(例えば、フィードフォワード制御等)にて巻線の励磁を行う工程とすることも可能である。
【0123】
(6)上記の実施形態では、一次側電圧確立工程において、第二電力変換器12から二次巻線に供給される電力を減少させるに際し、二次巻線に流れる電流(二次側電流i2)を減少させる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、二次巻線に流れる電流(二次側電流i2)を減少させずに二次側電圧v2のみを減少させる構成とすることも可能である。
【0124】
(7)上記の実施形態では、第一制御部101が第一電力変換器11の制御に用いる基準位相が、第二制御部102が導出する第一基準位相θ1とされる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一制御部101がPLL機能部を備え、第一電力変換器11の制御に用いる基準位相を、例えば、変圧器6の二次側の電圧に基づきPLL処理で求める構成とすることができる。この場合、第一制御部101は、変圧器二次側電圧を基準としたdq座標系で制御を行う構成となる。
【0125】
(8)上記の実施形態では、一次側励磁工程において、第一電力変換器11に正の遅れ無効電力を発生させ、第一電力変換器11から一次巻線に正の遅れ無効電力を供給する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、二次励磁誘導発電機2や発電システム1全体の構成によっては、一次側励磁工程において、第一電力変換器11に負の遅れ無効電力を発生させ、第一電力変換器11から一次巻線に負の遅れ無効電力を供給する構成とすることも可能である。
【0126】
(9)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0127】
1 発電システム
2 二次励磁誘導発電機
2a 回転子
2b 固定子
3 ガスエンジン
4 電力系統
5 蓄電装置
7 負荷(電力負荷)
11 第一電力変換器
12 第二電力変換器
13 直流部23 第三スイッチ(切替スイッチ)
100 制御装置
f1 出力電力の周波数
v1 一次側電圧
v2 二次側電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10