(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、受像面上へ液体インクを噴出する複数のインクジェットを作動させるプリントヘッドを有する。インクは、プリンタ内に位置合わせされるリザーバに貯蔵されることが可能である。このようなインクは、水性、油性、溶剤系またはUV硬化型インク、またはインクエマルジョンである可能性がある。他のインクジェットプリンタは、固体形式のインクを受け入れ、次にこの固体インクを溶かして、受像面上へ噴出させるための液体インクを生成する。これらの固体インクプリンタの場合、固体インクは、ペレット、インクスティック、グラニュールまたは他の形状である可能性がある。典型的には、インクローダ内に配置される固体インクペレットまたはインクスティックをインクローダが供給シュートまたはチャネルを介して溶融デバイスへ送出する。リザーバは、溶融インクを受け入れ、この溶融インクを1つまたは複数のプリントヘッドへ供給する。他のインクジェットプリンタは、ゲルインクを用いる。ゲルインクも、インクがプリントヘッドによる噴出に適するように、インクの粘性を変えるべく予め決められた温度まで加熱される。
【0003】
ある典型的な全幅インクジェットプリンタは、1つまたは複数のプリントヘッドを用いる。各プリントヘッドは、典型的には、画像を形成するために開放間隙より向こうの受像面へインク滴を噴出するための個々のノズルによるアレイを含む。受像面は、回転式印刷ドラムまたはエンドレスベルト等の、連続する記録媒体ウェブの表面、一連の媒体シートの表面または受像部材の表面である可能性がある。回転する表面へ印刷される画像は、後に、回転する表面と転写定着ローラとによって形成される転写定着ニップにおいて機械力により記録媒体へ転写されかつ定着される。
【0004】
あるインクジェットプリントヘッドにおいて、個々の圧電、熱または音響アクチュエータは、ファイアリング信号と呼ばれることもある電気電圧信号に応答してインクが充填された圧力チャンバからオリフィスを介してインクを噴出させる機械力を生成する。ファイアリング信号の振幅、周波数または持続時間は、各液滴において噴出されるインクの量に影響する。ファイアリング信号は、プリントヘッドコントローラにより、画像データに従って発生される。あるインクジェットプリンタは、画像データに従って受像部材上の特定のロケーションで個々のインク滴によるパターンを印刷することにより、印刷画像を形成する。インク滴が着弾するロケーションは、「インク滴ロケーション」、「インク滴ポジション」または「ピクセル」と呼ばれることがある。したがって、印刷オペレーションは、画像データに従った受像部材上へのインク滴の配置と見なされる可能性もある。
【0005】
連続するウェブまたは記録媒体上へ印刷する場合、媒体上へ配置されたインク滴は、典型的にはスプレッディングデバイスを用いて展延されかつ定着される。スプレッディングデバイスは、整合的なカバーリングを伴って構成される高負荷加圧ローラと、中実の非整合的な表面を有して構成される隣接する画像サイドローラとを含むことが可能であり、これらのローラは相互作用して媒体が引き込まれる高強度ニップを形成する。媒体上へのインクの展延および定着により、印刷オペレーションは、所望される画像品質およびパフォーマンスを達成することができる。時として、高負荷加圧ローラと画像サイドローラとが位置外れになれば、または、ニップの負荷が媒体の重量、幅またはエッジ見当合わせ位置に適合しなければ、媒体ウェブ内に皺ができる可能性がある。既存のインクジェットプリンタでは、オペレータが定期的にウェブの状態を点検し、皺が存在しているかどうかを目視で検出する。皺を検出すると、オペレータは、皺をなくすべく保全処置を実施する。結果的に、オペレータは、その重大度が容認し難い限度を超えるまで皺を検出できないことがある。さらに、皺が検出された後であっても、加圧ローラの適切な調整を可能にするために、オペレータはさらに、その皺がウェブ中心の内側であるか、外側であるかを決定しなければならない。したがって、皺状態が存在する間の連続的な印刷作業から生じるマシンの中断時間および材料の浪費を最小限に抑えるために、移動するウェブにおける皺の存在およびポジションを自動的に検出することが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図8は、本開示に関連するエレメントを有する、先行技術によるインクジェットプリンタ100を描いている。あるインクジェットプリンタは、本開示の目的に沿って、紙等の受像部材、別の印刷媒体、または回転画像ドラムまたはベルト等の間接部材の表面へインク滴を噴出するために1つまたは複数のインクジェットプリントヘッドを用いる。以下、ウェブにおける皺のポジションを識別するためのシステムおよび方法を、相変化インクを用いる
図8に描かれたプリンタ100を参照して説明するが、本明細書に開示するシステムおよび方法は、水性インク等の他の形式のインクを用いるプリンタ、または一連の媒体シート上へインクを噴出するプリンタにおいて使用されることが可能である。
【0010】
プリンタ100は、「相変化インク」でインク画像を印刷するように構成される。相変化インクは、室温では実質的に固体であるが、相変化インクの溶融温度まで加熱されると受像部材表面へ噴射される液体状態に遷移するインクを意味する。相変化インクの溶融温度は、固体である相変化インクを液体または溶融形式へと溶融することができる任意の温度である。ある実施形態において、相変化インクの溶融温度は、約70℃から140℃までである。代替実施形態において、プリンタに利用されるインクは、UV硬化性ゲルインクを含む。ゲルインクも、プリントヘッドのインクジェットエジェクタによって噴出される前に加熱される。本明細書において、液体インクは、溶融した固体インク、加熱されたゲルインク、または水性インク、インクエマルジョン、インク懸濁液、インク溶液またはこれらに類似するもの等の他の既知の形式のインクを指す。
【0011】
プリンタ100は、ダイレクトツーウェブ、連続媒体、相変化インクジェットプリンタの一例である。
図8に示されているように、プリンタ100は、20個のプリントモジュール80〜99と、コントローラ128と、メモリ129と、バッカローラ115と、バッカローラ116と、プレヒータローラ118と、アペックスローラ120と、レベラローラ122と、テンションセンサ152A〜152B、154A〜154Bおよび156A〜156Bと、エンコーダ160、162および164等の速度センサとを含む。プリントモジュール80〜99は、媒体経路Pに沿って順次位置合わせされ、印刷媒体114がプリントモジュールを通って進むにつれて印刷媒体114上へ画像を形成するための、最初のプリントモジュール80から最後のプリントモジュール99に至る印刷ゾーンを形成する。プリントモジュール80〜83は各々、マゼンタインクを提供する。プリントモジュール84〜87は各々、シアンインクを提供する。プリントモジュール88〜91は各々、イエローインクを提供する。プリントモジュール92〜95は各々、ブラックインクを提供する。プリントモジュール96〜99は各々、仕上げ塗りとしての透明インクを提供する。他の全ての関連において、プリントモジュール80〜99は略同一である。
【0012】
媒体ウェブ114は、ローラ115および116、プレヒータローラ118、アペックスローラ120およびレベラローラ122によって案内される媒体経路Pを介して進む。経路沿いには、ローラ115に隣接して、加熱されたプレート119が設けられる。
図8において、アペックスローラ120は「アイドラ」ローラであり、移動する媒体ウェブ114との係合に応答して回転するが、その他は印刷システム100内の如何なるモータまたは他の駆動機構からも分離されたローラであることを意味する。プレヒータローラ118、アペックスローラ120およびレベラローラ122は各々、媒体ウェブ114にその表面の一部によって係合するキャプスタンローラの例である。媒体経路Pの一方の端には、ブラシクリーナ124およびコンタクトローラ126が位置決めされる。
【0013】
印刷ゾーンに続く媒体経路P沿いには、1つまたは複数の「中間ヒータ」130が存在する。中間ヒータ130は、接触熱、放射熱、伝導熱および/または対流熱を用いて媒体の温度を制御することができる。中間ヒータ130は、媒体ウェブ114上のインクが定着アッセンブリ40を介して送られる際に、媒体ウェブ114上へ配置されたインクを所望される特性に適する温度に至らせる。ある実施形態において、中間ヒータを出る媒体の目標温度の有効範囲は、約35℃から約80℃までである。レベラローラ122は、インクおよび基材の温度を互いに15℃以内まで等化するという効果を有する。より低いインク温度では、線広がりがより少なくなり、より高いインク温度は透き通し(印刷反対側から画像が見えること)を引き起こす。中間ヒータ30は、基材温度およびインク温度を定着アッセンブリ40の温度より上0℃から20℃に調整する。
【0014】
中間ヒータ30に続いて、定着アッセンブリ40は、媒体ウェブ114へ画像を定着させるために媒体ウェブ114へ熱および/または圧力を加える。定着アッセンブリ40は、加熱される、または加熱されない加圧ローラ、放射ヒータ、加熱ランプおよびこれらに類似するものを含む、媒体へ画像を定着させるための任意の適切なデバイスまたは装置を含む。
図8の実施形態において、定着アッセンブリは、媒体ウェブ114へ予め決められた圧力、および実装によっては熱を加える「スプレッダ」40を含む。スプレッダ40の機能は、媒体ウェブ114上の個々のインク滴、インク滴の連なり、またはインクラインを扁平にすること、および圧力で、かつシステムによっては熱でインクを扁平にすることである。スプレッダ40は、媒体ウェブ114上に均一な画像を形成するために、インク滴を扁平にして隣接する滴間の空間を満たす。インクの展延に加えて、スプレッダ40は、インク層の凝集を増大させること、および/またはインク−ウェブの接着を増大させることによって、媒体ウェブ114へのインク画像の定着を向上させる。スプレッダ40は、間に形成されるニップ140において媒体ウェブ114へ熱および圧力を加えるために、画像側ローラ132および加圧ローラ138等のローラを含む。何れのローラも、媒体ウェブ114を約35℃から約80℃までの範囲内の温度に至らせるための加熱エレメントを含むことが可能である。代替実施形態において、定着アッセンブリは、印刷ゾーン後に、媒体ウェブ114の非接触加熱(圧力なし)を用いてインクを展延する。このような非接触性の定着アッセンブリは、放射ヒータ、UV加熱ランプおよびこれらに類似するもの等の任意の適切なタイプのヒータを用いて媒体ウェブ114を所望される温度まで加熱することができる。
【0015】
スプレッダ40は、画像側ローラ132に関連づけられる清掃/塗油ステーション(不図示)を含むことが可能である。本ステーションは、ローラ表面を清掃し、かつ/またはローラ表面へ剥離剤または他の物質の膜を塗布する。剥離剤材料は、約10〜200センチポアズの粘性を有するアミノシリコーンオイルであってもよい。ステーションからは、少量のオイルが媒体ウェブ114へ移動され、プリンタ100は、媒体ウェブ114のA4サイズ用紙部分当たり約1〜10mgを転写する。ある実施形態において、中間ヒータ130およびスプレッダ40は、これらの個々の機能が媒体ウェブ114の同一部分に対して同時に発生する単一のユニットに組み合わされる。別の実施形態において、媒体ウェブ114は、インクの展延を有効化するために、媒体ウェブ114が印刷ゾーンを出る際は高温に保持される。
【0016】
ウェブインバータ168は、媒体ウェブ114を、媒体経路の端136からインバータ経路P’を介して媒体経路の始まり134へと方向づけるように構成される。ウェブインバータ168は媒体ウェブ114を反転し、インバータ経路P’は、プリントモジュール80〜99が媒体ウェブ114の第1の側面に1つまたは複数の画像(第1の側面のインク画像)を形成した後に第2の側面に1つまたは複数のインク画像(第2の側面のインク画像)を形成するシングルエンジン(「メビウス」)両面印刷を有効化すべく、反転されたウェブをインレット134へ戻す。この動作モードにおいて、媒体ウェブ114の第1のセクションは、媒体ウェブの第2のセクションとタンデム式に媒体経路Pを介して移動し、第1のセクションは媒体ウェブの第1の側面でインク画像を受容し、かつ第2のセクションは第2の側面でインク画像を受容する。プリントモジュール80〜99は各々、媒体ウェブ114の双方のセクションへインク滴を噴出するように構成される。ローラ115、116、118、120および122も各々、媒体ウェブの第1および第2のセクションの双方に係合する。媒体ウェブ114の第2の側面に画像が形成された後、媒体ウェブ114は、媒体経路の端136を通過する。第1の側面のインク画像に対する第2の側面のインク画像の見当合わせは、両面画像を形成する。別の実施形態では、1つのプリントモジュールが記録媒体の幅をスパンするように構成され、よって、隣り合わせに位置決めされる2つのプリントモジュールを用いて、ウェブの第1および第2のセクションにインクが噴出される。
【0017】
プリントモジュール80〜99は各々、媒体ウェブ114の第1のセクションおよび媒体ウェブ114の第2のセクションの双方の幅に渡って配置されるプリントヘッドアレイを含む。プリントヘッドアレイにおける各プリントヘッド内のインクエジェクタは、媒体ウェブ114の第1および第2のセクションの双方の予め決められたロケーションへインク滴を噴出するように構成される。
【0018】
印刷システム100の様々なサブシステム、コンポーネントおよび機能の作動および制御は、コントローラ128およびメモリ129を用いて実行される。具体的には、コントローラ128は、媒体ウェブ114の速度およびテンションを監視して、プリントモジュール80〜99からインク滴を噴出するタイミングを決定する。コントローラ128は、プログラムされた命令を実行する汎用または専用プログラマブルプロセッサによって実装されることが可能である。コントローラ128は、コントローラ128が命令を読み取り、かつメモリ129内のプログラムされた機能の実行に必要なデータを読み取りかつ書き込むことができるように、メモリ129へ機能的に接続される。また、メモリ129は、媒体ウェブ114に使用される少なくとも1つの印刷媒体タイプによって印刷システムを作動するためのテンションレベルを識別する1つまたは複数の値を保持することもできる。これらのコンポーネントは、プリント基板カードに装備されること、または特定用途向け集積回路(ASIC)内の回路として装備されることが可能である。回路は各々、別のプロセッサで実装される場合もあれば、複数の回路が同一のプロセッサ上へ実装される場合もある。あるいは、これらの回路は、VLSI回路内に設けられる個別部品または回路によって実装されてもよい。また、本明細書に開示する回路は、プロセッサ、ASIC、個別部品またはVLSI回路の組合せによって実装されてもよい。
【0019】
エンコーダ160、162および164は各々、プレヒータローラ118、アペックスローラ120およびレベラローラ122へ機能的に接続される。エンコーダ160、162および164は各々、ローラ120、118および122の個々の角速度に対応する角速度信号を発生する速度センサである。エンコーダ160、162および164の典型的な実施形態は、これらのローラへ機能的に接続される磁石の動作に応答して信号を発生するように構成されるホール効果センサと、対応するローラの回転に伴う光ビームの周期的中断に応答して信号を発生する光学式ホイールエンコーダとを含む。コントローラ128は、角速度信号を受信するために、エンコーダ160、162および164へ機能的に接続される。コントローラ128は、発生される信号および各ローラの既知の半径を用いて各ローラ120、118および122の線速度を識別するように構成されるハードウェア回路、ソフトウェアルーチンまたはこれらの双方を含むことが可能である。
【0020】
テンションセンサ152A〜152B、154A〜154Bおよび156A〜156Bは各々、ガイドローラ117、アペックスローラ120およびポストレベラローラ123へ機能的に接続される。ガイドローラ117は、媒体経路P上でプレヒータローラ118より前に位置合わせされる。ポストレベラローラ123は、媒体経路P上でレベラローラ122の後に位置合わせされる。各テンションセンサは、対応するローラのポジションにおいて媒体ウェブ114へ加えられる引張り力に対応する信号を発生する。各テンションセンサは、媒体ウェブ114と対応するローラとの間の機械的引張り力に対応する信号を発生するように構成されるロードセルであることが可能である。
【0021】
媒体ウェブ114の2つのセクションが各ローラにタンデムに係合している
図8において、テンションセンサは各々、媒体ウェブ114の各セクション上のテンションを識別するために対にされている。媒体ウェブの一方の表面が各ローラに係合する実施形態では、単一のテンションセンサが代わりに使用されてもよい。テンションセンサ152A〜152Bは、媒体ウェブ114が印刷ゾーンに入ってプリントモジュール80〜99を通過する際の媒体ウェブ114上のテンションに対応する信号を発生する。印刷ゾーンは、インク塗布ゾーンまたは「噴射ゾーン」としても知られる。テンションセンサ154A〜154Bは、印刷ゾーンの中間位置でのアペックスローラ120周辺における媒体ウェブ114のテンションに対応する信号を発生する。テンションセンサ156A〜156Bは、媒体ウェブ114が印刷ゾーンを出る際のレベラローラ周辺における媒体ウェブのテンションに対応する信号を発生する。テンションセンサ152A〜152B、154A〜154Bおよび156A〜156Bは、コントローラ128が発生される信号を受信しかつ動作中のアペックスローラ118と媒体ウェブ114との間のテンションを監視できるように、コントローラ128へ機能的に接続される。
【0022】
図8のプリンタ100等の固体インクジェット(SIJ)プリンタでは、スプレッダ40内で媒体ウェブ114へ加えられる高い圧力によって、印刷画像がウェブ上へ定着される際にウェブ内に皺が形成される可能性がある。皺を除去することは可能であるが、そのためにオペレータは、媒体ウェブ114を目視検査してウェブの中心に対する皺のポジションを決定する必要がある。オペレータは、次に、加圧ローラ138上の負荷力を左右に調整して皺をなくす。皺を除去するためのこの手法に関する潜在的な問題点は、オペレータが皺の存在を識別するために常にウェブを点検し、かつ皺が存在すれば、そのポジションを調べなければならないことにある。このような状況においては、オペレータは人為的ミスにより、欠陥が事実上オペレータの注意を引くほど深刻なものとなるまで皺の発生に気づかないことがある。
【0023】
図1は、媒体ウェブ114における皺の存在およびポジションを識別するためのシステムを包含するように修正された先行技術によるプリンタ100’を示している。
図2において最も良く示されているように、修正されたプリンタ100’の媒体ウェブ114には、その片面または両面に、ウェブ114を通じてプロセス横断方向に内側ポジション310、センタポジション312および外側ポジション314(纏めて「基準ポジション」)を識別するポジションがマーキングされている。図示されている実施形態では、基準ポジション310、312、314をマーキングするために、少なくとも1つのプリントヘッドがウェブ114上へインクを噴出すべく作動される。基準ポジション310、312、314は、図示されているように、各々がプロセス方向Pへ延びる長さを有する個々の線としてマーキングされる。他の実施形態では、基準ポジション310、312、314は、フィデューシャルまたは光学文字認識(OCR)マークとしてマーキングされる。後に詳述するように、基準ポジション310、312、314を識別するマークは、限定された走査範囲内でマークを高速で検出できる任意の形式をとることが可能である。
【0024】
図2は、ウェブ上にポジションマークが形成された直後の基準ポジション310、312、314の公称ロケーションを示している。本開示の目的に沿って、文字Xと共に用いる以下の下付き文字は、図示されている様々なポジション間距離を指して使用され、(ci)=センタポジション312と内側ポジション310との間の距離、(co)=センタポジション312と外側ポジション314との間の距離、(io)=内側ポジション310と外側ポジション314との間の距離、(n)=示されているポジション間に皺がないウェブの「公称」状態、および(w)=示されているポジション間に少なくとも1つの皺があるウェブの「皺」状態、である。例えば、距離X
cinは、ウェブ114の状態が公称である場合、即ちセンタポジション312と内側ポジション310との間に皺が存在しない場合のセンタポジション312と内側ポジション310との間の距離を指す。
【0025】
基準ポジション310、312、314は、当初、各ポジション間のスペーシングを等しくしてウェブ114に形成される。基準ポジション310、312、314を形成するインクジェット間の距離は既知であることから、各基準ポジション310、312、314間のその形成時点での距離もまた等しい。したがって、センタポジション312と内側ポジション310との間の既知の距離は、内側の公称距離X
cinを画定し、かつセンタポジション312と外側ポジション314との間の既知の距離は、外側の公称距離X
conを画定する。同様に、内側ポジション310と外側ポジション314との間の既知の距離は、全体的な公称距離X
ionを画定する。
【0026】
再度
図1を参照すると、修正されたプリンタ100’は、コントローラ128へ機能的に接続されかつマーキングされた基準ポジション310、312、314に対応する画像データを生成するように構成される光学センサ322を含む。図示されている実施形態において、光学センサ322は、スプレッダ40の下流側に位置決めされるsラップローラ144に近接して位置合わせされている。sラップローラ142またはアイドラローラ142等のスプレッダ40より下流側の他のローラに近接する光学センサ322の位置合わせは、光学センサ322に、ウェブ114との、エッジのカールまたはウェブ内部のコックルに起因するウェブ距離またはプロファイルの変動のない定距離を提供する。
【0027】
図4は、ウェブ114上にマーキングされた基準ポジション310、312、314に対する光学センサ322の位置合わせを示している。光学センサ322は、マーキングされた基準ポジション310、312、314を検出するように位置合わせされた複数の密着イメージセンサを含む。図示された実施形態において、内側センサ410は、マーキングされた内側ポジション310を検出するように位置合わせされ、センタセンサ412は、マーキングされたセンタポジション312を検出するように位置合わせされ、かつ外側センサ414は、マーキングされた外側ポジション314を検出するように位置合わせされている。密着イメージセンサ410、412、414は、基準ポジション間の距離が公称X
cin、X
con、X
ionである場合に各基準ポジションがその関連のセンサの略中点を通過して移動するように位置合わせされる。よって、密着イメージセンサ410、412、414間の既知の距離は、セットアップ手順の一部として較正される。
【0028】
図4に示されている基準ポジション310、312、314は、画像エリア418間に位置決めされる文書間エリア416内にマーキングされている。ある実施形態では、基準ポジション310、312、314は、連続する各文書間エリア416において、ウェブ114に沿ってプロセス方向Pにマーキングされる。別の実施形態では、基準ポジション310、312、314は、1つおきの文書間エリア416において、ウェブ114に沿ってプロセス方向Pにマーキングされる。さらに別の実施形態では、基準ポジション310、312、314は、手動または自動的な保全手順の一部として断続的にマーキングされる。
【0029】
基準ポジション310、312、314を識別するための個別の印刷マークの使用は、ウェブの全幅を走査する必要がないことから、センサがプロセス横断方向に短いことを意味する短長の密着イメージセンサの使用を可能にする。例えば、
図1に描かれている修正されたプリンタ100’は、文書間エリア416における各印刷マークを検出するためにA8(50mm)長さのセンサを実装することができる。ある実際の実施形態では、修正されたプリンタ100’は、Lite−On(登録商標)DL115 A8 54.2mm 600dpi、2ミリ秒/ラインのCMOSセンサを実装して文書間エリア416における印刷マークを検出している。修正されたプリンタ100’の最大ウェブ速度500フィート/分で、1インチのマークは、文書間エリア416を10ミリ秒で通過し、Lite−On(登録商標)DL115センサによる1マーク当たり複数の読取りを可能にする。この実施形態におけるマークの長さは、画像エリア418間の文書間エリア416を基礎とし、プロセス方向Pに約25.4mmである。
【0030】
図3〜
図5は、ウェブ114における皺420の形成が、マーキングされた基準ポジション310、312、314の互いに対する、かつ密着イメージセンサ410、412、414に対するロケーションをどのように変化させるかを示している。図示されている実施形態では、皺420は、センタポジション312と外側ポジション314との間に形成されている。
図2と
図3との比較によって示されるように、ウェブの幅の一部がプロセス横断方向に折り畳まれ、または折れて皺420が形成されていることから、センタポジション312と外側ポジション314との距離は低減されている。したがって、皺420に起因するセンタポジション312と外側ポジション314との低減された距離は、外側の公称距離X
conより短い外側の皺距離X
cowを表す。センタポジション312と内側ポジション310との距離は、これらのポジション間のウェブ幅に皺420が影響しないことから、内側の公称距離X
cinのままである。内側ポジション310と外側ポジション314との距離は、同じく皺に起因して低減され、全体的な公称距離X
ionより短い全体的な皺距離X
iowを表す。
【0031】
図示されていないが、皺420がセンタポジション312と内側ポジション310との間に形成されていれば、これらのポジション間の距離は低減され、内側の公称距離X
cinより短い内側の皺距離X
ciwを表す。センタポジション312と外側ポジション314との距離は、これらのポジション間のウェブ幅に皺420が影響しないことから、外側の公称距離X
conのままである。内側ポジション310と外側ポジション314との距離は、皺に起因して低減され、全体的な皺距離X
iowを表す。
【0032】
次に、
図4および
図5を参照すると、密着イメージセンサ410、412、414の較正された位置合わせは、各センサが、その対応するマーキングされた基準ポジション310、312、314が目標ポジション422から移されているかどうかを検出できるようにする。基準ポジション310、312、314がその目標ポジションから移されていれば、センサにより生成される画像データは、コントローラ128がその移されたポジションの目標外れの距離424を計算することを可能にする。例えば、図示されている実施形態では、センタポジション312と外側ポジション314との間の皺420の形成によって、マーキングされた外側ポジション314はセンタポジション312へ向かって移されている。このポジションの目標外れ距離424は、マーキングされた外側ポジションの検出されたロケーションとその目標ポジション422との距離である。
【0033】
図6は、
図1の修正されたプリンタ100’のスプレッダ40を示す拡大斜視図である。
図6に示されている実施形態において、加圧ローラ138は、ピボット612を中心として回転可能な加圧アッセンブリ610へ付着される。ピボット612を中心とする加圧アッセンブリ610の回転は、ニップ140内の圧力を高める、または下げるために、加圧ローラ138の画像側ローラ132に対する相対的ポジションを調整する。加圧アッセンブリ610は、加圧アッセンブリ610および付着された加圧ローラ138を画像側ローラ132の方向へ、またはこれから遠方へと回転させるアクチュエータを含む。図示されている実施形態において、アクチュエータは、画像側ローラ132に渡る加圧ローラ138の力を調整するために独立的に表面を膨らませかつしぼませることができる内側のエアバッグ614および外側のエアバッグ616を含む。ある実施形態では、オペレータが手動ポンプを作動してエアバッグ614、616を膨らませ、またはしぼませ、ニップ圧力を調整する。別の実施形態では、コントローラ128が1つまたは複数の電空エアレギュレータを作動してエアバッグ614、616を膨らませ、またはしぼませる。
【0034】
ウェブが内側のエッジまたは外側のエッジの何れかで皺になりつつあれば、ニップの対応するエッジはより高速で回転する必要がある。一方のエッジをニップの中心よりも高速で動かすために、オペレータは、皺になりつつあるエッジへさらなる負荷をかける。例えば、内側のエッジが皺になりつつある実際的な一実施形態では、オペレータは、皺がなくなるまで、内側のエアバッグ614を膨らまし、内側のエッジにおける負荷を10kgf単位の増分で高める。外側のエッジで皺が発生しつつあれば、オペレータは、外側のエッジにおける負荷を高めるために、皺がなくなるまで外側のエアバッグ616を膨らます。負荷の増大によって皺がなくならず、かつ個々のエアバッグ614、616がエッジにその最大強度(NVM=567kg)を印加していれば、皺がなくなるまで反対のエアバッグ614、616に対する負荷が10kgf単位で低減される。本明細書に開示するシステムは、ウェブ114内部の皺の存在の自動検出を有効化し、かつさらに、ウェブの中心に対する皺のポジションを識別して、オペレータが皺をなくすために必要に応じてニップ圧力を調整できるようにする。
【0035】
図7には、移動するウェブにおける皺のポジションを識別するためのプロセス700のフロー図が示されている。コントローラは、プロセス700を実装するために、コントローラへ機能的に接続されたメモリに格納されるプログラムされた命令を実行するように構成される。以下の論考において、ある機能または行為を実行するプロセスの言及は、機能または行為を実行するために、1つまたは複数のコンポーネントを作動すべくメモリに格納されるプログラムされた命令を実行するコントローラを指す。以下、
図1〜
図6に示されている修正されたプリンタ100’を参照してプロセス700について述べる。
【0036】
プロセス700は、少なくとも1つのプリントヘッドを作動して移動するウェブ114上へインクを噴出し、内側ポジション310、センタポジション312および外側ポジション314(纏めて「基準ポジション」)をマーキングすることによって開始する(ブロック702)。本明細書において、「センタポジション」という言い回しは、プロセス横断方向におけるウェブの略中点または中心を指す。本明細書において、「内側ポジション」または「リアエッジ」という言い回し、および「外側ポジション」または「フロントエッジ」という言い回しは、センタポジションから離隔されてウェブの個々の側縁に接近する個別のポジションを指す。
【0037】
基準ポジション310、312、314がマーキングされると(ブロック702)、基準ポジション310、312、314に対応する画像データを生成するために密着イメージセンサ410、412、414が作動される(ブロック704)。ある実施形態において、密着イメージセンサ410、412、414は、ウェブ114上にマークしてプリントされた基準ポジション310、312、314の各セットについて画像データを生成するために連続的に動作する。別の実施形態では、ウェブ114上に位置決めされたトップオブフォーム(TOF)マークが、マーキングされた基準ポジション310、312、314の選択されたセットを検出すべく密着イメージセンサ410、412、414をトリガする。
【0038】
コントローラへ機能的に接続されるメモリに格納されるプログラムされた命令を実行するコントローラ128は、(i)センタポジション312と内側ポジション310との間で測定される内側距離X
ciと、(ii)センタポジション312と外側ポジション314との間で測定される外側距離X
coと、(iii)内側ポジション310と外側ポジション314との間で測定される全体距離X
ioを識別するために、生成された画像データを処理する(ブロック706)。全体距離X
ioが識別されると(ブロック706)、コントローラ128は、全体距離X
ioと全体的な公称距離X
ionとの間に差があるかどうかを決定する(ブロック708)。全体距離X
ioと全体的な公称距離X
ionとの間に差が存在しなければ、プロセス700は、ブロック706に関して記述した処理に戻り、マーキングされた新しい基準ポジションセットに関する個々の内側距離X
ci、外側距離X
coおよび全体距離X
ioの識別を続ける。全体距離X
ioと全体的な公称距離X
ionとの間に差が存在し、かつ全体距離X
ioが全体的な公称距離X
ionより短ければ、コントローラ128は、プリンタ100’に関連づけられる1つまたは複数のデバイスに皺の存在を表示させる(ブロック710)。ある実施形態において、コントローラは、プリンタに関連づけられるI/Oデバイスを作動してオペレータに皺を知らせる。別の実施形態では、コントローラは、オーディオデバイスを作動して皺の存在を信号で伝える。
【0039】
ウェブ内に皺が検出されれば(ブロック708および710)、プロセス700は、センタポジション312に対する皺のポジションを決定することにより継続する。例えば、
図7に示されているプロセス700の実施形態では、コントローラ128は、内側距離X
ciと内側の公称距離X
cinとの間に差が存在するかどうかを決定する(ブロック712)。内側距離X
ciと内側の公称距離X
cinとの間に差が存在し、かつ内側距離X
ciが内側の公称距離X
cinより短ければ、コントローラ128は、皺をセンタポジション312の内側として識別する(ブロック714)。内側距離X
ciと内側の公称距離X
cinとの間に差が存在しなければ、コントローラ128は、皺をセンタポジション312の外側として識別する(ブロック716)。皺がセンタポジション312の内側(ブロック714)または外側(ブロック716)の何れかとして識別された後、プロセスは、ブロック706に関連して先に述べたプロセスに戻り、マーキングされた新しい基準ポジションセットについて個々に内側距離X
ci、外側距離X
coおよび全体距離X
ioの識別を継続する。
【0040】
別の実施形態では、ブロック712に関連して述べた処理において、外側距離X
coと外側の公称距離X
conとの差が決定される。この実施形態において、外側距離X
coと外側の公称距離X
conとの間に差が存在し、かつ外側距離X
coが外側の公称距離X
conより短ければ、コントローラ128は、ブロック714において、皺をセンタポジション312の外側として識別する。外側距離X
coと外側の公称距離X
conとの間に差が存在しなければ、コントローラ128は、ブロック716において、皺をセンタポジション312の内側として識別する。この実施形態においても、皺がセンタポジション312の外側(ブロック714)または内側(ブロック716)の何れかとして識別された後、プロセスは、ブロック706に関連して述べたプロセスに戻り、マーキングされた新しい基準ポジションセットについて個々に内側距離X
ci、外側距離X
coおよび全体距離X
ioの識別を継続する。
図6を参照して先に論じたように、プロセス700によって皺のポジションが識別されると、オペレータまたはコントローラ128は、皺を排除すべく加圧ローラ138のポジションを調整することができる。