特許第6207433号(P6207433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207433通信優先度設定装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207433
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】通信優先度設定装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/859 20130101AFI20170925BHJP
   H04L 12/70 20130101ALI20170925BHJP
【FI】
   H04L12/859
   H04L12/70 100Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-48084(P2014-48084)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-173352(P2015-173352A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】福元 徳広
(72)【発明者】
【氏名】横田 英俊
(72)【発明者】
【氏名】小頭 秀行
【審査官】 宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−155600(JP,A)
【文献】 特開2012−215943(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0265897(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/142616(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00−12/26,12/50−12/955
H04B7/24−7/26,H04W4/00−99/00
H04M3/00,3/16−3/20,3/38−3/58,7/00−7/16,11/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの優先度を設定する通信優先度設定装置であって、
前記通信トラヒックのパケットを抽出するパケット抽出部と、
前記パケット抽出部によって抽出された前記パケットの情報に基づいて前記通信トラヒックの通信フローを構築し、通信フローを記憶する通信フロー記憶部に記憶させる通信フロー構築部と、
前記通信フロー構築部によって構築された前記通信フローに基づいて、前記通信トラヒックが前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したか否かを判定するトラヒック判定部と、
前記トラヒック判定部によって前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定された前記通信トラヒックをフォアグラウンドトラヒックに分類し、前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定されなかった前記通信トラヒックをバックグラウンドトラヒックに分類するトラヒック分類部と、
前記トラヒック分類部によって前記フォアグラウンドトラヒックに分類された前記通信トラヒックの通信の優先度を上げる設定をし、前記バックグラウンドトラヒックに分類された前記通信トラヒックの通信の優先度を下げる設定をする優先度設定部と、
前記通信フロー構築部によって構築された前記通信フローに基づいて、一つの前記通信フローに含まれるコンテンツの個数を取得するコンテンツ数取得部と、を備え、
前記トラヒック判定部は、さらに、
前記コンテンツ数取得部によって取得された前記コンテンツの個数が、コンテンツ数閾値より大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合に、前記通信トラヒックを前記ユーザの操作に基づいて発生した前記通信トラヒックと判定する、通信優先度設定装置。
【請求項2】
前記通信フロー構築部によって構築された前記通信フローに基づいて、前記ユーザ端末がアクセスするサーバの個数であって一つの前記通信フローに含まれる個数を取得するサーバ数取得部をさらに備え、
前記トラヒック判定部は、前記サーバ数取得部によって取得された前記サーバの個数が、サーバ数閾値より大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合に、前記通信トラヒックを前記ユーザの操作に基づいて発生した前記通信トラヒックと判定する、
請求項1に記載の通信優先度設定装置。
【請求項3】
前記通信フロー記憶部に記憶された前記通信フローに基づいて、前記通信フローの時系列の周期性を解析する周期性解析部をさらに備え、
前記トラヒック判定部は、前記周期性解析部によって前記通信フローが周期性を有するか否かを判断し、有しないと判断した場合に、前記通信トラヒックを前記ユーザの操作に基づいて発生した前記通信トラヒックと判定する、請求項1又は2に記載の通信優先度設定装置。
【請求項4】
前記通信フロー構築部によって構築された前記通信フローに基づいて、アップロードのデータ量と、ダウンロードのデータ量との比率を取得するロード量比率取得部をさらに備え、
前記トラヒック判定部は、前記ロード量比率取得部によって取得された前記比率が所定の関係を示すか否かを判断し、所定の関係を示すと判断した場合に、前記通信トラヒックを前記ユーザの操作に基づいて発生した前記通信トラヒックと判定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の通信優先度設定装置。
【請求項5】
通信フロー記憶部を備える通信優先度設定装置により、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの優先度を設定する方法であって、
前記通信優先度設定装置が
前記通信トラヒックのパケットを抽出するパケット抽出ステップと、
前記パケット抽出ステップにおいて抽出された前記パケットの情報に基づいて前記通信トラヒックの通信フローを構築し、前記通信フロー記憶部に記憶させる通信フロー構築ステップと、
前記通信フロー構築ステップにおいて構築された前記通信フローに基づいて、前記通信トラヒックが前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したか否かを判定するトラヒック判定ステップと、
前記トラヒック判定ステップにおいて前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定された前記通信トラヒックをフォアグラウンドトラヒックに分類し、前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定されなかった前記通信トラヒックをバックグラウンドトラヒックに分類するトラヒック分類ステップと、
前記トラヒック分類ステップにおいて前記フォアグラウンドトラヒックに分類された前記通信トラヒックの通信の優先度を上げる設定をし、前記バックグラウンドトラヒックに分類された前記通信トラヒックの通信の優先度を下げる設定をする優先度設定ステップと、
前記通信フロー構築ステップにおいて構築された前記通信フローに基づいて、一つの前記通信フローに含まれるコンテンツの個数を取得するコンテンツ数取得ステップと、を備え、
前記トラヒック判定ステップは、さらに、
前記コンテンツ数取得ステップにおいて取得された前記コンテンツの個数が、コンテンツ数閾値より大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合に、前記通信トラヒックを前記ユーザの操作に基づいて発生した前記通信トラヒックと判定する、方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通信優先度設定装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信優先度設定装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、通信の優先制御を行い快適な通信サービスを行うための技術として、通信の種類毎に通信品質クラスを設定し、ネットワーク上で通信品質クラスに基づいた優先制御を行うDiffServ(Differentiated Services)が広く利用されている(非特許文献1参照)。
【0003】
また、ユーザの体感品質に与える影響が大きいトラヒックをネットワーク上で判別し、制御を行う手法が知られている。具体的には、TCPのポート番号によりアプリケーション種別を判定し、優先制御を行う手法を開示する特許文献1及び特許文献2が知られている。
【0004】
特許文献1のネットワーク通信システムは、TCP/IP通信によるトークンリングLANにおいて、ポート番号に予め優先度を定める。LLC副層のプロトコルとして、ネットワーク層から受け取ったデータ内の、トランスポート層において付加されたTCPヘッダ又はUDPヘッダに含まれる送信元ポート番号を読み取り、該送信元ポート番号を予め定められた優先度に変換し、該優先度をデータフレームのACフィールドに設定する機能を有する優先伝送プロトコルを用いる。
【0005】
特許文献2のパケット伝送装置は、優先制御情報を記憶する優先制御情報記憶手段と、ネゴーシエーション時に使用される、特定ポート番号を持つパケットを監視し、該当するパケットのIPアドレスを抽出するパケット簡易検査手段と、抽出されたIPアドレスを持つパケットを監視し、該当するパケットを、TCP/UDPレベルにおいて解析し、データ通信時のポート番号の情報を取得するパケット詳細検査手段と、詳細検査結果に該当するパケットの優先度を高優先度とする優先度設定手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−191323号公報
【特許文献2】特開2003−87300号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Definition of the Differentiated Services Field(DS Field) in the IPv4 and IPv6 Headers, http://tools.ietf.org/html/rfc2474
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、DiffServ技術の利用にあたっては、適切な通信品質クラスを設定する必要がある。この設定には、ユーザの体感品質に与える影響が大きい特定のアプリケーションを高い通信品質クラスに設定する方法が主流であった。この方法は、通信提供者とアプリケーション提供者が同一である場合は上手く機能するが、通信提供者とアプリケーション提供者が異なる場合はいわゆる「共有地の悲劇」問題が発生するため、正しい制御が困難となるという問題がある。
【0009】
上述の問題を回避するために、特許文献1や特許文献2では、ネットワーク上でパケットのポート番号を参照し、アプリケーションを判別することにしている。しかしながら、近年ではTCPポート80番に代表される特定のポート番号のトラヒックが大半を占めるようになり、ポート番号を用いた優先制御は現実的な手段ではなくなりつつある。
【0010】
そこで、ポート番号に代わり、通信トラヒックに基づいて、ユーザが体感する通信の品質を向上させる装置が求められている。
【0011】
本発明は、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの品質であって、ユーザが体感する通信の品質を向上させる通信優先度設定装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
現在のスマートフォンやPCは様々な種類のトラヒックを生んでいるが、それらは以下の二種類に大別できる。
1.フォアグラウンドトラヒック:ユーザの操作により生まれる通信トラヒック(ユーザ操作によるWebページ閲覧等)
2.バックグラウンドトラヒック:ユーザの操作とは無関係に生み出される通信トラヒック(ソフトウェアの自動更新等)
これらのうち、フォアグラウンドトラヒックはユーザの体感品質に与える影響が大きいため、優先制御を行うことが望ましい。一方でバックグラウンドトラヒックは優先度を下げたとしても、ユーザ体感品質への影響は軽微であると考えられる。本発明では、トラヒックを二種類に分別し、それぞれに異なる優先度を設定することで、ユーザの満足度を総合的に向上させる。
具体的には、以下のような解決手段を提供する。
【0013】
(1) 通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの優先度を設定する通信優先度設定装置であって、前記通信トラヒックのパケットを抽出するパケット抽出部と、前記パケット抽出部によって抽出された前記パケットの情報に基づいて前記通信トラヒックの通信フローを構築し、通信フローを記憶する通信フロー記憶部に記憶させる通信フロー構築部と、前記通信フロー構築部によって構築された前記通信フローに基づいて、前記通信トラヒックが前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したか否かを判定するトラヒック判定部と、前記トラヒック判定部によって前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定された前記通信トラヒックをフォアグラウンドトラヒックに分類し、前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定されなかった前記通信トラヒックをバックグラウンドトラヒックに分類するトラヒック分類部と、前記トラヒック分類部によって前記フォアグラウンドトラヒックに分類された前記通信トラヒックの通信の優先度を上げる設定をし、前記バックグラウンドトラヒックに分類された前記通信トラヒックの通信の優先度を下げる設定をする優先度設定部と、を備える通信優先度設定装置。
【0014】
(1)の構成によれば、通信優先度設定装置は、通信トラヒックのパケットを抽出し、抽出したパケットの情報に基づいて通信トラヒックの通信フローを構築し、通信フロー記憶部に記憶させ、構築した通信フローに基づいて、通信トラヒックがユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したか否かを判定し、ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定した通信トラヒックをフォアグラウンドトラヒックに分類し、ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定しなかった通信トラヒックをバックグラウンドトラヒックに分類し、フォアグラウンドトラヒックに分類された通信トラヒックの通信の優先度を上げる設定をし、バックグラウンドトラヒックに分類された通信トラヒックの通信の優先度を下げる設定をする。
【0015】
すなわち、(1)に係る通信優先度設定装置は、ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定した通信トラヒックをフォアグラウンドトラヒックに分類し、通信の優先度を上げ、ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定しなかった通信トラヒックをバックグラウンドトラヒックに分類し、優先度を下げる設定をする。フォアグラウンドトラヒックに分類された通信トラヒックは、ユーザが体感する通信の品質に直接的に関係するトラヒックであり、バックグラウンドトラヒックに分類された通信トラヒックは、ユーザが体感する通信の品質に直接的に関係するトラヒックではない。
したがって、(1)に係る通信優先度設定装置は、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの品質であって、ユーザが実際に体感する通信の品質を向上させることができる。
【0016】
(2) 前記通信フロー構築部によって構築された前記通信フローに基づいて、一つの前記通信フローに含まれるコンテンツの個数を取得するコンテンツ数取得部をさらに備え、前記トラヒック判定部は、前記コンテンツ数取得部によって取得された前記コンテンツの個数が、コンテンツ数閾値より大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合に、前記通信トラヒックを前記ユーザの操作に基づいて発生した前記通信トラヒックと判定する、(1)に記載の通信優先度設定装置。
【0017】
すなわち、ユーザの操作による通信トラヒックは多くのコンテンツを同時に取得する傾向にあるので、(2)に係る通信優先度設定装置は、一つの通信フローに含まれるコンテンツの個数がコンテンツ数閾値より大きいと判断した場合に、ユーザの操作に基づいて発生した通信トラヒックと判定する。
したがって、(2)に係る通信優先度設定装置は、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの品質であって、ユーザが実際に体感する通信の品質を確実に向上させることができる。
【0018】
(3) 前記通信フロー構築部によって構築された前記通信フローに基づいて、前記ユーザ端末がアクセスするサーバの個数であって一つの前記通信フローに含まれる個数を取得するサーバ数取得部をさらに備え、前記トラヒック判定部は、前記サーバ数取得部によって取得された前記サーバの個数が、サーバ数閾値より大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合に、前記通信トラヒックを前記ユーザの操作に基づいて発生した前記通信トラヒックと判定する、(1)又は(2)に記載の通信優先度設定装置。
【0019】
すなわち、ユーザの操作による通信トラヒックは多くのコンテンツを取得するために、複数のサーバへ同時にアクセスする傾向にあるので、(3)に係る通信優先度設定装置は、一つの通信フローに含まれるサーバの個数がサーバ数閾値より大きいと判断した場合に、ユーザの操作に基づいて発生した通信トラヒックと判定する。
したがって、(3)に係る通信優先度設定装置は、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの品質であって、ユーザが実際に体感する通信の品質を確実に向上させることができる。
【0020】
(4) 前記通信フロー記憶部に記憶された前記通信フローに基づいて、前記通信フローの時系列の周期性を解析する周期性解析部をさらに備え、前記トラヒック判定部は、前記周期性解析部によって前記通信フローが周期性を有するか否かを判断し、有しないと判断した場合に、前記通信トラヒックを前記ユーザの操作に基づいて発生した前記通信トラヒックと判定する、(1)から(3)のいずれか一項に記載の通信優先度設定装置。
【0021】
すなわち、ユーザの操作による通信トラヒックは周期性を持つ傾向がないので、(4)に係る通信優先度設定装置は、周期性がないと判断した場合に、ユーザの操作に基づいて発生した通信トラヒックと判定する。
したがって、(4)に係る通信優先度設定装置は、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの品質であって、ユーザが実際に体感する通信の品質を確実に向上させることができる。
【0022】
(5) 前記通信フロー構築部によって構築された前記通信フローに基づいて、アップロードのデータ量と、ダウンロードのデータ量との比率を取得するロード量比率取得部をさらに備え、前記トラヒック判定部は、前記ロード量比率取得部によって取得された前記比率が所定の関係を示すか否かを判断し、所定の関係を示すと判断した場合に、前記通信トラヒックを前記ユーザの操作に基づいて発生した前記通信トラヒックと判定する、(1)から(4)のいずれか一項に記載の通信優先度設定装置。
【0023】
すなわち、ユーザの操作による通信トラヒックはアップロードやダウンロードのどちらにも偏らない傾向があるので、(5)に係る通信優先度設定装置は、アップロードのデータ量と、ダウンロードのデータ量との比率が偏っていないと判断した場合に、ユーザの操作に基づいて発生した通信トラヒックと判定する。
したがって、(5)に係る通信優先度設定装置は、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの品質であって、ユーザが実際に体感する通信の品質を確実に向上させることができる。
【0024】
(6) (1)に記載の通信優先度設定装置が実行する方法であって、前記パケット抽出部が、前記通信トラヒックのパケットを抽出するパケット抽出ステップと、前記通信フロー構築部が、前記パケット抽出ステップによって抽出された前記パケットの情報に基づいて前記通信トラヒックの通信フローを構築し、前記通信フロー記憶部に記憶させる通信フロー構築ステップと、前記トラヒック判定部が、前記通信フロー構築ステップによって構築された前記通信フローに基づいて、前記通信トラヒックが前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したか否かを判定するトラヒック判定ステップと、前記トラヒック分類部が、前記トラヒック判定ステップによって前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定された前記通信トラヒックをフォアグラウンドトラヒックに分類し、前記ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定されなかった前記通信トラヒックをバックグラウンドトラヒックに分類するトラヒック分類ステップと、前記優先度設定部が、前記トラヒック分類ステップによって前記フォアグラウンドトラヒックに分類された前記通信トラヒックの通信の優先度を上げる設定をし、前記バックグラウンドトラヒックに分類された前記通信トラヒックの通信の優先度を下げる設定をする優先度設定ステップと、を備える方法。
【0025】
したがって、(6)に係る方法は、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの品質であって、ユーザが実際に体感する通信の品質を向上させることができる。
【0026】
(7) コンピュータに、(6)に記載の方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【0027】
したがって、(7)に係るプログラムはコンピュータに、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの品質であって、ユーザが実際に体感する通信の品質を向上させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの品質であって、ユーザが体感する通信の品質を向上させることができる。
さらに、本発明によれば、限られた通信リソースを適切に配分することで、ユーザの満足度を向上させることが可能となる。また、通信トラヒックの平滑化も可能となり、設備投資の抑制が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一の実施形態に係る通信優先度設定装置の構成を示す図である。
図2】本発明の一の実施形態に係る通信優先度設定装置の通信フロー記憶部の例を示す図である。
図3】本発明の一の実施形態に係る通信優先度設定装置の処理を示すフローチャートである。
図4図3に続く処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
フォアグラウンドトラヒックとバックグラウンドトラヒックの識別においては、様々な情報が利用可能である。具体的には、以下の情報を用いる事も好ましい。これらは発明の実施形態の一例であり、その他の統計的な情報やヒューリスティックな情報を用いる事も好ましい。
1.同時に取得するコンテンツ数(一般にフォアグラウンドトラヒックは多くのコンテンツを同時に取得する傾向にある)
2.複数サーバへの同時アクセス(一般にフォアグラウンドトラヒックは多くのコンテンツを取得するために、複数のサーバへ同時にアクセスする傾向にある)
3.定期的な通信の有無(一般にバックグラウンドトラヒックは周期性を持つ傾向がある)
4.アップロード量とダウンロード量のバランス(一般にバックグラウンドトラヒックはアップロードかダウンロードのどちらかに偏る傾向がある)
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一の実施形態に係る通信優先度設定装置10の構成を示す図である。
通信優先度設定装置10は、パケット抽出部11と、通信フロー構築部12と、トラヒック判定部13と、トラヒック分類部14と、優先度設定部15と、通信フロー記憶部31とを備え、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの優先度を設定する。さらに、通信優先度設定装置10は、コンテンツ数取得部131と、サーバ数取得部132と、周期性解析部133と、ロード量比率取得部134とを備える。以下、各部について説明する。
【0032】
パケット抽出部11は、通信トラヒックのパケットを抽出する。具体的には、パケット抽出部11は、通信データを入力し、入力した通信データに基づいて、通信データを構成するパケットを抽出する。
【0033】
通信フロー構築部12は、パケット抽出部11によって抽出されたパケットの情報に基づいて通信トラヒックの通信フローを構築し、通信フローを記憶する通信フロー記憶部31に記憶させる。具体的には、通信フロー構築部12は、パケットの属性(例えば、送信元/送信先IPアドレス、送信元/送信先ポート番号、プロトコル番号等)が共通であるパケットを同一の通信フローとみなし、一つの通信フローとして通信フロー記憶部31に、通信時刻と共に記憶させる。通信時刻は、例えば、通信フローの開始時刻とみなすことが可能な時刻でよい。
【0034】
トラヒック判定部13は、通信フロー構築部12によって構築された通信フローに基づいて、通信トラヒックがユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したか否かを判定する。具体的には、トラヒック判定部13は、コンテンツ数取得部131、サーバ数取得部132、周期性解析部133、及びロード量比率取得部134による情報に基づいて判定する。
【0035】
コンテンツ数取得部131は、通信フロー構築部12によって構築された通信フローに基づいて、一つの通信フローに含まれるコンテンツの個数を取得する。トラヒック判定部13は、コンテンツ数取得部131によって取得されたコンテンツの個数が、コンテンツ数閾値より大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合に、通信トラヒックをユーザの操作に基づいて発生した通信トラヒックと判定する。
【0036】
サーバ数取得部132は、通信フロー構築部12によって構築された通信フローに基づいて、ユーザ端末がアクセスするサーバの個数であって一つの通信フローに含まれる個数を取得する。トラヒック判定部13は、サーバ数取得部132によって取得されたサーバの個数が、サーバ数閾値より大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合に、通信トラヒックをユーザの操作に基づいて発生した通信トラヒックと判定する。
【0037】
周期性解析部133は、通信フロー記憶部31に記憶された通信フローに基づいて、通信フローの時系列の周期性(例えば、通信フローの開始時刻や時間間隔が定期的であること)を解析する。トラヒック判定部13は、周期性解析部133によって通信フローが周期性を有するか否かを判断し、有しないと判断した場合に、通信トラヒックをユーザの操作に基づいて発生した通信トラヒックと判定する。
例えば、周期性解析部133は、通信フロー記憶部31に記憶された通信フローの通信時刻を解析し、一定時刻ごと(例えば、0時ごと)又は一定時刻から所定の範囲内の時刻ごと(例えば、0時5分の通信フローと翌日の0時13分の通信フローとのように±15分以内の同一時刻とみなせるような時刻ごと)に通信が行われているか否かを解析する。また、周期性解析部133は、通信フロー記憶部31に記憶された通信フローの通信時刻に基づいて通信フローの時間間隔を解析し、定期的な時間間隔(例えば、1時間ごと)又は所定の範囲内での定期的な時間間隔(例えば、55分後の通信フローと、その後65分後の通信フローとのように±15分以内での同一とみなせる時間間隔ごと)で通信が行われているか否かを解析する。
【0038】
ロード量比率取得部134は、通信フロー構築部12によって構築された通信フローに基づいて、アップロードのデータ量(UL)と、ダウンロードのデータ量(DL)との比率を取得する。トラヒック判定部13は、ロード量比率取得部134によって取得された比率が所定の関係を示すか否かを判断し、所定の関係を示すと判断した場合に、通信トラヒックをユーザの操作に基づいて発生した通信トラヒックと判定する。具体的には、トラヒック判定部13は、ダウンロードのデータ量に対するアップロードのデータ量の比率が所定のアップロード比率より高く(UL/DL>C)、かつ、アップロードのデータ量に対するダウンロードのデータ量の比率が所定のダウンロード比率より高い(DL/UL>D)場合に、通信トラヒックをユーザの操作に基づいて発生した通信トラヒックと判定する。
【0039】
トラヒック分類部14は、トラヒック判定部13によってユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定された通信トラヒックをフォアグラウンドトラヒックに分類し、ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定されなかった通信トラヒックをバックグラウンドトラヒックに分類する。
【0040】
優先度設定部15は、トラヒック分類部14によってフォアグラウンドトラヒックに分類された通信トラヒックの通信の優先度を上げる設定をし、バックグラウンドトラヒックに分類された通信トラヒックの通信の優先度を下げる設定をする。
具体的には、優先度設定部15は、優先度を上げるための情報又は下げるための情報を優先度制御装置(図示せず)に対して出力する。優先度制御装置は、入力した優先度情報に基づいて、通信の優先度を変更したり、使用する帯域を変更したりする。
なお、優先度設定部15は、優先度情報に基づいて、通信の優先度を変更したり、使用する帯域を変更したりする制御を行うとしてもよい。
【0041】
さらに、トラヒック判定部13は、コンテンツ数取得部131により取得されたコンテンツ数による判定と、サーバ数取得部132により取得されたサーバ数による判定と、周期性解析部133によって解析された周期性による判定と、ロード量比率取得部134によって取得されたデータ量の比率による判定とについて、それぞれの判定に対して設けた重み付けにより総合的に判定するとしてもよい。
【0042】
図2は、本発明の一の実施形態に係る通信優先度設定装置10の通信フロー記憶部31の例を示す図である。図2が示すように、通信フロー記憶部31は、構築された通信フローと、その通信フローの通信時刻(例えば、通信フローの開始時刻)を記憶する。通信フロー記憶部31に記憶された通信フローを解析することにより、一つの通信フローにおけるコンテンツ数(ユーザ端末によって同時に取得されたコンテンツ数)、アクセスサーバ数(ユーザ端末によって同時にアクセスされたサーバ数)、通信フローの周期性(例えば、通信フローの開始時刻や時間間隔が定期的であること)、ロード量の比率(ダウンロードのデータ量とアップロードのデータ量との比率)等の情報が取得される。
【0043】
図3及び図4は、本発明の一の実施形態に係る通信優先度設定装置10の処理を示すフローチャートである。通信優先度設定装置10は、コンピュータ及びその周辺装置が備えるハードウェア並びに該ハードウェアを制御するソフトウェアによって構成され、以下の処理は、それぞれの制御部(例えば、CPU)が、OSの下で所定のソフトウェアに従い実行する処理である。
【0044】
ステップS101において、CPU(パケット抽出部11)は、パケットを抽出する。より具体的には、CPUは、通信データを入力し、入力した通信データに基づいて、通信データを構成するパケットを抽出する。
【0045】
ステップS102において、CPU(通信フロー構築部12)は、通信フローを構築する。より具体的には、CPUは、パケットの属性(例えば、送信元/送信先IPアドレス、送信元/送信先ポート番号、プロトコル番号等)が共通であるパケットを同一の通信フローとみなし、一つの通信フローとして通信フロー記憶部31に、通信時刻と共に記憶させる。
【0046】
ステップS103において、CPU(トラヒック判定部13)は、通信フローが構築されているか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPUは処理をステップS104に移し、この判断がNOの場合、CPUは処理を終了する。
【0047】
ステップS104において、CPU(トラヒック判定部13、コンテンツ数取得部131)は、通信フローにおけるコンテンツ数がコンテンツ数閾値より大きいか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPUは処理をステップS109に移し、この判断がNOの場合、CPUは処理をステップS105に移す。
【0048】
ステップS105において、CPU(トラヒック判定部13、サーバ数取得部132)は、通信フローにおけるアクセスするサーバ数がサーバ数閾値より大きいか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPUは処理をステップS109に移し、この判断がNOの場合、CPUは処理をステップS106に移す。
【0049】
ステップS106において、CPU(トラヒック判定部13、周期性解析部133)は、通信フローにおける通信が周期性を有しないか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPUは処理をステップS109に移し、この判断がNOの場合、CPUは処理をステップS107に移す。
【0050】
ステップS107において、CPU(トラヒック判定部13、ロード量比率取得部134)は、ダウンロードのデータ量に対するアップロードのデータ量の比率が所定のアップロード比率より高く(UL/DL>C)、かつ、アップロードのデータ量に対するダウンロードのデータ量の比率が所定のダウンロード比率より高い(DL/UL>D)か否かを判断する。この判断がYESの場合、CPUは処理をステップS109に移し、この判断がNOの場合、CPUは処理をステップS108に移す。
【0051】
ステップS108において、CPU(トラヒック分類部14、優先度設定部15)は、通信トラヒックをバックグラウンドトラヒックに分類し、優先度を下げる設定をする。その後、CPUは、処理を終了する。
【0052】
ステップS109において、CPU(トラヒック分類部14、優先度設定部15)は、通信トラヒックをフォアグラウンドトラヒックに分類し、優先度を上げる設定をする。その後、CPUは、処理を終了する。
【0053】
本実施形態によれば、通信優先度設定装置10は、通信トラヒックのパケットを抽出し、抽出したパケットの情報に基づいて通信トラヒックの通信フローを構築し、通信フロー記憶部31に記憶させ、構築した通信フローに基づいて、通信トラヒックがユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したか否かを判定し、ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定した通信トラヒックをフォアグラウンドトラヒックに分類し、ユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したと判定しなかった通信トラヒックをバックグラウンドトラヒックに分類し、フォアグラウンドトラヒックに分類された通信トラヒックの通信の優先度を上げる設定をし、バックグラウンドトラヒックに分類された通信トラヒックの通信の優先度を下げる設定をする。
通信トラヒックがユーザ端末におけるユーザの操作に基づいて発生したか否かの判定は、一つの通信フローに含まれるコンテンツの個数がコンテンツ数閾値より大きいか否かの判断と、一つの通信フローに含まれるサーバの個数がサーバ数閾値より大きいか否かの判断と、通信フローが周期性を有するか否かの判断と、及びアップロードのデータ量とダウンロードのデータ量との比率が偏っているか否かの判断とに基づいて行われる。
したがって、通信優先度設定装置10は、通信ネットワークにおけるユーザ端末に起因する通信トラヒックの品質であって、ユーザが実際に体感する通信の品質を向上させることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0055】
例えば、バックグラウンドトラヒックの優先度を積極的に下げるとしてもよい。バックグラウンドトラヒックに分類した通信トラヒックは、例えば、ソフトウェアの自動更新や、天気情報を定期的に取得するような通信トラヒックであるので、ユーザが体感する通信の品質に直接的に関係する通信トラヒックではない。そこで、バックグラウンドトラヒックに分類された通信トラヒックの優先度を積極的に下げたり、使用する帯域を積極的に変更することにより、通信の混雑度を緩和し、結果的にフォアグラウンドトラヒックに分類された通信トラヒックについても、ユーザが実際に体感する通信の品質を向上させることができる。
【0056】
通信優先度設定装置10の処理のフローチャートにおいて、コンテンツ数がコンテンツ閾値より大きくなく、アクセスするサーバ数がサーバ閾値より大きくなく、周期性を有し、データ量の比率が偏っている場合に、バックグラウンドトラヒックと分類したが、この4条件のうちの少なくとも一つの条件によって判定してバックグラウンドトラヒックと分類してもよい。また、この4条件のうちの少なくとも二つ以上の条件を組み合わせて判定してバックグラウンドトラヒックと分類してもよい。通信優先度設定装置10は、通信トラヒックの特徴に合わせて、この4条件を組み合わせることによって、通信トラヒックをバックグラウンドトラヒックに確実に分類することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 通信優先度設定装置
11 パケット抽出部
12 通信フロー構築部
13 トラヒック判定部
14 トラヒック分類部
15 優先度設定部
131 コンテンツ数取得部
132 サーバ数取得部
133 周期性解析部
134 ロード量比率取得部
31 通信フロー記憶部
図1
図2
図3
図4