特許第6207437号(P6207437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207437
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ギア式伝動機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/06 20060101AFI20170925BHJP
   A01C 15/00 20060101ALI20170925BHJP
   A01C 15/04 20060101ALI20170925BHJP
   F16D 11/00 20060101ALI20170925BHJP
   F16H 55/08 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F16H1/06
   A01C15/00 G
   A01C15/04
   F16D11/00 Z
   F16H55/08
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-53389(P2014-53389)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-175465(P2015-175465A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 宗之
(72)【発明者】
【氏名】池田 太
(72)【発明者】
【氏名】向井 猛
(72)【発明者】
【氏名】園田 義昭
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健次
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−254494(JP,A)
【文献】 実開昭50−077670(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/00− 1/26
F16D 11/00−23/14
F16H 51/00−55/30
A01C 15/00−23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って延び且つ軸芯方向両側部が回転自在に固定部に支持された駆動軸と、前記駆動軸からの動力により駆動される被駆動装置と、前記被駆動装置から前記所定方向に沿って片持ち状に延出された従動軸と、前記駆動軸に一体回転自在に取り付けられた平ギア式の駆動ギアと、前記従動軸に一体回転自在に取り付けられて前記駆動ギアと噛み合い連動する平ギア式の従動ギアとが備えられ、
前記駆動ギア及び前記従動ギアのうちの少なくともいずれか一方が、複数の歯夫々の歯先部のうち前記被駆動装置側の箇所に、前記被駆動装置側端部に近づくほど径方向内方側に位置する傾斜状部分が形成され、
伝動下手側にてギア離脱用の設定値以上の駆動負荷が掛かると、前記従動軸が撓んで前記駆動ギアと前記従動ギアとの噛み合いが外れて前記駆動軸の回転を許容するギア式伝動機構。
【請求項2】
前記傾斜状部分は、その先端面が回転軸芯方向視で径方向外方側に膨らむ中膨らみ状の湾曲面に形成されている請求項1記載のギア式伝動機構。
【請求項3】
前記先端面の回転方向上手側箇所が小さい曲率半径の湾曲面に形成され、前記先端面の回転方向下手側箇所が大きい曲率半径の湾曲面に形成されている請求項2記載のギア式伝動機構。
【請求項4】
前記駆動軸と前記駆動ギアとの間に、クラッチ離脱用の設定値に対応する駆動負荷が伝動下手側に掛かると、前記駆動軸と前記駆動ギアとを連動する入状態から、前記駆動軸と前記駆動ギアとの連動を断つ切状態に切り換わる伝動クラッチが備えられ、
前記伝動クラッチは、クラッチ操作体と、前記クラッチ操作体が付勢されて噛み合う噛み合い部と、前記入状態に向けて前記クラッチ操作体を前記噛み合い部に付勢する付勢機構とを備え、
前記付勢機構は、前記クラッチ離脱用の設定値に対応する駆動負荷が伝動下手側に掛かると、前記クラッチ操作体が前記付勢機構の付勢力に抗して噛み合いを解除して、前記伝動クラッチが前記入状態から前記切状態に切り換わる付勢力に設定されており、
前記クラッチ離脱用の設定値は、前記ギア離脱用の設定値よりも大きい値に設定されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のギア式伝動機構。
【請求項5】
前記被駆動装置が、固定部に支持される第1ケース部と、その第1ケース部に対して揺動自在に支持され且つ前記第1ケース部に接続される閉状態と前記第1ケース部から離間して前記第1ケース部を開放させる開状態とにわたって姿勢変更自在な第2ケース部と、前記閉状態において前記第2ケース部を保持する保持機構とが備えられ、
前記従動軸が回転操作自在に前記第2ケース部に支持され、前記閉状態において前記従動ギアと前記駆動ギアとが噛み合う状態となり、前記開状態において前記従動ギアが前記駆動ギアから離間するように構成され、
前記被駆動装置は、その内部において、前記ギア離脱用の設定値よりも大きく且つ前記クラッチ離脱用の設定値よりも小さい値に設定された装置開放用の設定値以上の駆動負荷が発生すると、前記保持機構の保持状態を解除して前記第2ケース部を開状態に切り換え可能に構成されており、
前記保持機構として、前記第2ケース部に揺動支持されて、前記閉状態において前記第1ケース部に係止する開閉レバーを備え、
前記開閉レバーは、前記装置開放用の設定値以上の駆動負荷が発生すると、前記係止が解除される係止保持力に設定されている請求項4記載のギア式伝動機構。
【請求項6】
前記第2ケース部が前記開状態に切り換わると、そのことを報知する報知手段が備えられている請求項5記載のギア式伝動機構。
【請求項7】
前記被駆動装置が、前記従動ギアの回転に伴って、貯留部に貯留されている粉粒体を所定量ずつ繰出す粉粒体繰出し装置である請求項1〜6のいずれか1項に記載のギア式伝動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギア式伝動機構に関し、詳しくは、駆動軸からの動力により駆動される被駆動装置が備えられ、その被駆動装置から片持ち状に延出された従動軸に備えられた従動ギアと、駆動軸に備えられた駆動ギアとが噛み合い連動するように構成されているギア式伝動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のギア式伝動機構の従来構成として、例えば、圃場に肥料を供給するための施肥装置に適用したものとして、次のように構成したものがあった。
【0003】
被駆動装置として、粉粒状の肥料を貯留タンクから所定量ずつ繰出すための粉粒体繰出し装置が備えられ、この粉粒体繰出し装置に駆動軸からの動力をギアの噛み合い連動により伝達させて駆動するようになっている。
【0004】
すなわち、粉粒体繰出し装置から機体横方向に沿って片持ち状に従動軸が延設され、その従動軸の延設側先端部に平ギア式の従動ギアが一体回転自在に備えられる。又、機体横方向に沿って備えられて、軸芯方向両側部が回転自在に固定部に支持された駆動軸が備えられ、その駆動軸に平ギア式の従動ギアが一体回転自在に備えられ、その駆動ギアと従動ギアとが噛み合う状態で備えられ、動力を伝達することができるようになっている。
【0005】
そして、駆動ギア及び従動ギアは、複数の歯の夫々が回転軸芯方向の全幅にわたって歯先部までの高さが同じ高さになるような形状にて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−327634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したようなギア式伝動機構では、例えば、被駆動装置(粉粒体繰出し装置)の内部において、粉粒体が水分等によって固まったり、小石等の固い夾雑物が混入する等の要因により円滑な回転操作が行えなくなって過大な駆動負荷が発生することがある。
【0008】
このような過大な駆動負荷が発生した場合に駆動軸への動力伝達が継続して行われると、駆動ギアは回転し続けようとするが、従動ギアは回転できない状態となる。その結果、従動ギアが駆動ギアからの駆動力を受けて、従動ギアが駆動ギアから離れる方向に向けて、片持ち状に延設されている従動軸が撓み変形することがある。
【0009】
このように従動軸が撓み変形すると、図12に示すように、駆動ギア38と従動ギア39との噛み合い箇所において、互いの歯が斜め方向に噛み合う状態となり、歯における回転軸芯方向一端側箇所だけが部分的に噛み合う状態となる。このような部分的な噛み合い状態が発生すると、その部分的な噛み合い箇所に駆動軸から伝達される駆動力が集中的に掛かることになり、その噛み合い箇所が破損するおそれがある。
特に、低コスト化並びに装置の軽量化のために、駆動ギアと従動ギアとを合成樹脂材の成形品にて構成した場合には、上記したようなギアの破損のおそれが大きいものとなっていた。
【0010】
ところで、上記したように片持ち状の従動軸が撓み変形しないように支持強度を高めてギア式伝動機構の強度を向上することも考えられるが、このように構成すると、伝動系統におけるギア式伝動機構とは異なる箇所において、動力断続用のクラッチ等の複雑な伝動構造を有する箇所が損傷することがあり、修理に手間がかかり、その後の動力伝達が適正に行えないものとなる等の不利がある。
【0011】
そこで、複雑な伝動構造を有する他の装置の損傷を回避させることが可能なものでありながら、伝動下手側で過大な駆動負荷が生じても、ギアが破損するおそれが少ないギア式伝動機構が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るギア式伝動機構の特徴構成は、
所定方向に沿って延び且つ軸芯方向両側部が回転自在に固定部に支持された駆動軸と、前記駆動軸からの動力により駆動される被駆動装置と、前記被駆動装置から前記所定方向に沿って片持ち状に延出された従動軸と、前記駆動軸に一体回転自在に取り付けられた平ギア式の駆動ギアと、前記従動軸に一体回転自在に取り付けられて前記駆動ギアと噛み合い連動する平ギア式の従動ギアとが備えられ、
前記駆動ギア及び前記従動ギアのうちの少なくともいずれか一方が、複数の歯夫々の歯先部のうち前記被駆動装置側の箇所に、前記被駆動装置側端部に近づくほど径方向内方側に位置する傾斜状部分が形成され、
伝動下手側にてギア離脱用の設定値以上の駆動負荷が掛かると、前記従動軸が撓んで前記駆動ギアと前記従動ギアとの噛み合いが外れて前記駆動軸の回転を許容する点にある。
【0013】
本発明によれば、何らかの要因により被駆動装置の内部において過大な駆動負荷が発生した場合、駆動ギアは伝達される駆動力により回転を継続しようとするが、従動ギアは過大負荷によって回転が阻止されているから、従動ギアが駆動ギアからの駆動力を受けて、従動ギアが駆動ギアから離れる方向に向けて従動軸が撓み変形して、駆動ギアと従動ギアとの噛み合いが外れて駆動軸の回転が許容される。このように従動軸が撓み変形すると、駆動ギアと従動ギアとが相対的に斜め姿勢で噛み合う状態となる。
【0014】
そして、駆動ギア及び従動ギアのうちの少なくともいずれか一方が、斜め姿勢で噛み合うことになる被駆動装置側の箇所において、被駆動装置側端部に近づくほど径方向内方側に位置する傾斜状部分が形成されるので、駆動ギアの歯先部と従動ギアの歯先部とは、一方側のギアの傾斜状部分と他方側のギアの真っ直ぐな歯先部分とが広い範囲にわたって接触する状態となり、そのように広い範囲にわたって接触する状態から従動ギアと駆動ギアとが離間して駆動ギアが空回りすることになる。その結果、歯先部の狭い箇所に集中的に駆動力が掛かることを回避することができる。
【0015】
従って、被駆動装置の内部において過大な駆動負荷が発生した場合であっても、従動軸が撓み変形して駆動軸の回転が許容されるので、複雑な伝動構造を有する他の装置の損傷を回避させることが可能となり、しかも、駆動ギア及び従動ギアにおいて、歯先部の狭い箇所に集中的に駆動力が掛かることを回避することが可能であり、駆動ギア及び従動ギアが破損するおそれが少ないものとなる。
【0016】
本発明においては、前記傾斜状部分は、その先端面が回転軸芯方向視で径方向外方側に膨らむ中膨らみ状の湾曲面に形成されていると好適である。
【0017】
前記傾斜状部分は、従動軸が撓み変形して駆動ギアと従動ギアとが離間したのち、駆動ギアの歯先部と従動ギアの歯先部とが最初に接触し始める箇所である。そして、本構成によれば、傾斜状部分の先端面が中膨らみ状の湾曲面に形成されているから、両ギアが離間したのちに接触し始めるときに、湾曲面に沿って滑らかに相手側のギアの歯先部を案内しながら接触し始めることができ、ショックの少ない状態で噛み合い始めることができる。
【0018】
本発明においては、前記先端面の回転方向上手側箇所が小さい曲率半径の湾曲面に形成され、前記先端面の回転方向下手側箇所が大きい曲率半径の湾曲面に形成されていると好適である。
【0019】
本構成によれば、傾斜状部分の回転方向上手側箇所は、従動軸が撓み変形して駆動ギアと従動ギアとが離間するときに、駆動ギアの歯先部と従動ギアの歯先部とが最後に接触する箇所である。そして、傾斜状部分における先端面の回転方向上手側箇所が小さい曲率半径の湾曲面に形成されているので、駆動ギアと従動ギアとが離間する際には、広い範囲にわたって接触する状態からそのまま離間することになり、破損を少なくすることができる。
【0020】
離間したのち駆動ギアと従動ギアとが最初に接触し始めるときには、相手側のギアの歯先部が、傾斜状部分の回転方向上手側箇所に接触すれば、そのまま駆動する状態となる。そして、相手側のギアの歯先部が、傾斜状部分の回転方向下手側箇所に接触した場合には、傾斜状部分の先端面の回転方向下手側箇所が大きい曲率半径の湾曲面に形成されているから、接触し始めるときに、湾曲面に沿って滑らかに相手側のギアの歯先部を案内しながら接触し始めることができ、ショックの少ない状態で噛み合い始めることができる。
【0021】
本発明においては、前記駆動軸と前記駆動ギアとの間に、クラッチ離脱用の設定値に対応する駆動負荷が伝動下手側に掛かると、前記駆動軸と前記駆動ギアとを連動する入状態から、前記駆動軸と前記駆動ギアとの連動を断つ切状態に切り換わる伝動クラッチが備えられ、
前記伝動クラッチは、クラッチ操作体と、前記クラッチ操作体が付勢されて噛み合う噛み合い部と、前記入状態に向けて前記クラッチ操作体を前記噛み合い部に付勢する付勢機構とを備え、
前記付勢機構は、前記クラッチ離脱用の設定値に対応する駆動負荷が伝動下手側に掛かると、前記クラッチ操作体が前記付勢機構の付勢力に抗して噛み合いを解除して、前記伝動クラッチが前記入状態から前記切状態に切り換わる付勢力に設定されており、
前記クラッチ離脱用の設定値は、前記ギア離脱用の設定値よりも大きい値に設定されていると好適である。
【0022】
本構成によれば、作業状態では、伝動クラッチを入状態にして駆動軸と駆動ギアとを連動させて被駆動装置に動力を伝達することができる。一方、非作業状態では、伝動クラッチを切状態にしておくことで、駆動軸と駆動ギアとの間の連動を遮断して、被駆動装置に無用な動力が伝達されないようにすることができる。
【0023】
そして、伝動クラッチは、入状態に切り換えられていても、伝動クラッチよりも伝動下手側にてクラッチ離脱用の設定値以上の駆動負荷が掛かると、噛み合い式連動部が付勢機構の付勢力に抗して切状態に切り換わるので、駆動軸に伝達される動力が他の装置に対して掛かることがない。
【0024】
つまり、駆動ギアと従動ギアとの噛み合い外れが適正に行われないような状況であっても、噛み合い式連動部と付勢機構とを備えた伝動クラッチの構成を有効利用して、過大な負荷に起因して他の装置が破損することを未然に回避できる。
【0025】
本発明においては、前記被駆動装置が、固定部に支持される第1ケース部と、その第1ケース部に対して揺動自在に支持され且つ前記第1ケース部に接続される閉状態と前記第1ケース部から離間して前記第1ケース部を開放させる開状態とにわたって姿勢変更自在な第2ケース部と、前記閉状態において前記第2ケース部を保持する保持機構とが備えられ、
前記従動軸が回転操作自在に前記第2ケース部に支持され、前記閉状態において前記従動ギアと前記駆動ギアとが噛み合う状態となり、前記開状態において前記従動ギアが前記駆動ギアから離間するように構成され、
前記被駆動装置は、その内部において、前記ギア離脱用の設定値よりも大きく且つ前記クラッチ離脱用の設定値よりも小さい値に設定された装置開放用の設定値以上の駆動負荷が発生すると、前記保持機構の保持状態を解除して前記第2ケース部を開状態に切り換え可能に可能に構成されており、
前記保持機構として、前記第2ケース部に揺動支持されて、前記閉状態において前記第1ケース部に係止する開閉レバーを備え、
前記開閉レバーは、前記装置開放用の設定値以上の駆動負荷が発生すると、前記係止が解除される係止保持力に設定されていると好適である。
【0026】
本構成によれば、被駆動装置は、その内部において、例えば、処理物が詰まる等の異常により所定の駆動負荷が発生すると、保持機構の保持状態が解除されて第2ケース部が開状態に切り換わり、第1ケース部が開放される。このように開放状態になることで、作業者は、異常状態であることを確認することができ、その内部における異常に対する対策を採ることができる。そして、従動軸が第2ケース部に支持されており、第2ケース部が開状態に切り換わると、従動ギアが駆動ギアから離間する状態となる。
【0027】
第2ケース部が開状態に切り換わるための所定の駆動負荷は、ギア離脱用の設定値よりも大きい値に設定された装置開放用の設定値以上の駆動負荷であるから、被駆動装置の内部にて異常が発生して、駆動ギアと従動ギアとの噛み合い外れが適正に行われないような状況であっても、装置開放用の設定値以上の駆動負荷であれば、第2ケース部が開状態に切り換わることによって、従動ギアと駆動ギアとを離間させることができる。
【0028】
さらに、装置開放用の設定値は、クラッチ離脱用の設定値よりも小さい値に設定されているので、被駆動装置の内部にて異常が発生した場合に、噛み合い式連動部が付勢機構の付勢力に抗して切状態に切り換えられて、伝動クラッチを強制的に切り状態になる前に、第2ケース部が開状態に切り換えるので、伝動クラッチに無理な力がかかって損傷するおそれを少なくした状態で、異常状態に対応できるものとなる。
【0029】
本発明においては、前記第2ケース部が前記開状態に切り換わると、そのことを報知する報知手段が備えられていると好適である。
【0030】
本構成によれば、第2ケース部が前記開状態に切り換わると、報知手段によりそのことを報知するので、作業者が、被駆動装置の内部で異常が発生したことを認識することができ、その後の対策を採り易いものとなる。
【0031】
本発明においては、前記被駆動装置が、前記従動ギアの回転に伴って、貯留部に貯留されている粉粒体を所定量ずつ繰出す粉粒体繰出し装置であると好適である。
【0032】
本構成によれば、駆動軸からの動力によって従動ギアが回転すると、被駆動装置は、貯留部に貯留される肥料等の粉粒体を所定量ずつ繰出して圃場等に供給することができる。そして、このような粉粒体が貯留される貯留部は、水分によって粉粒体が固まったり、小石等の夾雑物が混入されていることもあり、そのことに起因して粉粒体繰出し装置が詰まって駆動負荷が過大になるおそれがあるが、そのような異常が発生しても、粉粒体繰出し装置を駆動するための伝動機構が損傷することを回避させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】田植機の全体側面図である。
図2】田植機の全体平面図である。
図3】施肥装置の正面図である。
図4】施肥装置の横断平面図である。
図5】施肥装置の側面図である。
図6】肥料繰出し機構の側面図である。
図7】肥料繰出し機構の縦断側面図である。
図8】肥料繰出し機構のケース開放状態の側面図である。
図9】肥料繰出し機構の縦断正面図である。
図10】肥料繰出し機構の縦断正面図である。
図11】正常時のギア噛み合い箇所の縦断正面図である。
図12】撓み変形時のギア噛み合い箇所の縦断正面図である。
図13】ギア式伝動機構の縦断側面図である。
図14】従動ギアの一部斜視図である。
図15】金型の断面図である。
図16】従動ギアの側面図である。
図17】別実施形態のギア式伝動機構の縦断側面図である。
図18】別実施形態のギア式伝動機構の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るギア式伝動機構の実施形態を乗用型の田植機に適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0035】
〔全体構成〕
図1に示すように、田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5が備えられ、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とが備えられ、走行機体3の後部には施肥装置9が備えられている。そして、走行機体3の後方には、リフトシリンダ10を備えたリンク機構11を介して苗植付装置12が昇降自在に装着されている。
【0036】
苗植付装置12は、図2に示すように、8条植えに構成され、4つの植付伝動ケース13、植付伝動ケース13に支持される一対の回転ケース14、夫々の回転ケース14に備えた2つの植付爪15、5つの接地フロート16、及び、マット状苗が載置される苗載せ台17夫々を備えている。そして、植付け作動時には、苗載せ台17に載置したマット状苗の下端から植付爪15により苗を1株ずつ切り出して田面に植え付けるよう構成されている。
【0037】
各植付爪15による苗植付け箇所の横側付近には施肥用の溝を形成する作溝器18が1個ずつ接地フロート16に固定する状態で備えられている。この作溝器18にはその上端部にホース19が接続されている。植え付け作動と連係して圃場面に植え付けられた苗の近傍位置に作溝器18が溝を形成し、この溝に対して施肥装置9から肥料が供給される。
【0038】
〔施肥装置〕
施肥装置9について説明する。
図3,4,5に示すように、施肥装置9は粉粒体としての粉粒状の肥料を貯留する貯留ホッパー20(貯留部の一例)と、貯留ホッパー20の下側に配置された4つの粉粒体繰出し装置としての肥料繰出し機構21(被駆動装置の一例)とを備える。貯留ホッパー20は透明樹脂製の容器であり、機体フレーム22から固定立設された支持フレーム23に固定されている。この支持フレーム23は丸パイプフレーム部23aと角パイプフレーム部23bとを備えている。
【0039】
貯留ホッパー20は走行機体3の幅方向に沿った長辺を有するほぼ直方体形状であり内部が4つの貯留空間に仕切られている。これらの各貯留空間の下側に一つの肥料繰出し機構21が配設され、貯留ホッパー20の4つの貯留空間から各肥料繰出し機構21に肥料が送られる。
【0040】
図7に示すように、肥料繰出し機構21は、貯留ホッパー20の下方に配置された繰出ケース24と、繰出ケース24に内装された繰出ロール25及びブラシ26とを備えている。繰出ケース24は、貯留ホッパー20の下端に支持された第1ケース部としての上部繰出ケース27と、繰出ロール25を間に挟むように上部繰出ケース27の下方開口部に連設された第2ケース部としての下部繰出ケース28とを備える。繰出ロール25は、上部繰出ケース27と下部繰出ケース28の境界部に横向き姿勢の軸芯を中心にして回転自在に備えられ、ブラシ26は毛先が繰出ロール25の外周に接触するように配置されている。
【0041】
貯留ホッパー20に貯留されている肥料は自重により上部繰出ケース27に流入する。繰出ロール25の外周には肥料が入り込む凹部25aが周方向に沿って複数形成されており、この繰出ロール25の軸芯と同軸芯に配置した繰出軸29(従動軸の一例)が図8において時計回り(矢印で示す方向)に回転することで凹部25a内にある肥料が下部繰出ケース28に送られる。このとき余分となる肥料はブラシ26ですり切られるため、凹部25aに入り込んでいる所定量ずつの肥料が繰り出されることになる。
【0042】
繰出軸29は、走行機体3のミッションケース5から後方に延出された伝動軸30により供給される動力により回転駆動される。つまり、図3,5に示すように、伝動軸30及び回転アーム31は走行機体3の左右中央に配置され、左右の機体フレーム22の間に配置されている。伝動軸30に回転アーム31が連結され、回転アーム31の偏芯位置に作動ロッド32が上方に延出するように連結されている。このような構成により、伝動軸30とともに回転アーム31が回転駆動した際には作動ロッド32が上下往復運動を行い、この作動ロッド32の上下往復運動は調節機構33を介して駆動ロッド34へ伝えられる。
【0043】
調節機構33は、詳述はしないが、作動ロッド32から伝えられる駆動力の作動ストロークを調節して駆動ロッド34に伝える作動量調節手段(不図示)が内装され、作動ロッド32の1作動当たりの繰出ロール25の回転角度を変更して肥料の繰出し量の調整を行うことができるようになっている。
【0044】
図3図7に示すように、繰出ケース24の後部位置には、施肥装置9の車体横幅方向全幅にわたって延びる長尺の駆動軸35が配置されている。この駆動軸35は、車体横幅方向に適宜間隔をあけて複数備えられた軸受け部36及び繰出ケース24に固定取付された支持部材(図示せず)によって、軸芯方向両側部において回転自在に支持されている。軸受け部36及び繰出ケース24は支持フレーム23にて支持されており、駆動軸35は受け部36及び支持部材を介して固定部としての支持フレーム23により軸芯方向両側部が安定的に支持されている。
【0045】
駆動軸35の右側端部にはワンウエイクラッチ37が備えられ、このワンウエイクラッチ37のアームに対して、調節機構33の駆動ロッド34が連動連結されている。機体側から伝達される回転動力により駆動ロッド34が上下往復運動するが、駆動軸35はワンウエイクラッチ37の作用により一定方向にのみ回転駆動される。
【0046】
そして、駆動軸35の動力が4つの肥料繰出し機構21に伝達されるように構成されている。図4,6に示すように、4つの肥料繰出し機構21の夫々に対応して、駆動軸35と一体回転する平ギア式の駆動ギア38が、各繰出ケース24の近傍に備えられている。又、繰出ロール25と一体回転する繰出軸29に一体的に平ギア式の従動ギヤ39が繰出ケース24の側方外部に備えられ、この従動ギヤ39と駆動ギア38とが噛み合い連動する状態で備えられている。
【0047】
従って、この施肥装置9では、苗植付作業が行われる際には、伝動軸30からの駆動力が、作動ロッド32、調節機構33、駆動ロッド34を介してワンウエイクラッチ37に伝えられ、駆動軸35の駆動ギア38に噛み合う従動ギア39が回転する結果、繰出軸29と一体的に繰出ロール25が回転し、貯留ホッパー20の肥料が繰り出され、施肥が行われる。このように走行機体3からの動力が肥料繰出し機構21に伝達されるギア式伝動機構が備えられている。
【0048】
上記したような肥料繰出し機構21により繰出された肥料は、電動ブロア40より供給される搬送風によりホース19を通って作溝器18に供給されるようになっている。
【0049】
すなわち、図1図4に示すように、搬送風を作り出す電動ブロア40が運転座席8の後方下方側箇所に配設されている。この電動ブロア40は、電動モータ40aをファンケース40bに連結した構造を有しており、ファンケース40bに内蔵したファン40cが電動モータ40aで駆動されることによりファンケース40bから搬送風を供給する。
【0050】
図4,6に示すように、肥料繰出し機構21の前部側には、電動ブロア40からの搬送風が送り込まれる筒状の送風ダクト41が、機体横幅方向に沿って横長姿勢で配設されている。送風ダクト41には、各肥料繰出し機構21における下部繰出ケース28と連通接続された送風管路42が接続されている。送風管路42には、搬送管43を介してホース19の一端部が接続され、ホース19の他端部には作溝器18が接続されている。
【0051】
施肥が行われる際には、繰出ロール25の回転により上部繰出ケース27の肥料が下部繰出ケース28の下部空間に送り出され、送風管路42には送風ダクト41からの搬送風が供給される。次に、下部空間に送り出された肥料は搬送風の圧力により搬送管43に送られ、更に、搬送風とともにホース19から作溝器18に搬送され作溝器18を介して圃場面に供給される。
【0052】
図6,7に示すように、施肥装置9の上部繰出ケース27と下部繰出ケース28とは、上部繰出ケース27の下端後方に形成した係合孔27aと、下部繰出ケース28の後方上端に形成した係合片28aとが係合する係合部にて枢支連結されている。そして、下部繰出ケース28が、上部繰出ケース27の下方側の開放部を覆う閉状態と、上部繰出ケース27の下方側の開放部を開放する開状態とにわたって、係合部付近に位置する第1横向き軸心X1回りで揺動開閉自在に構成されている。上部繰出ケース27は、貯留ホッパー20に位置固定状態で支持され、貯留ホッパー20は固定部としての支持フレーム23にて支持されている。
【0053】
下部繰出ケース28は、保持機構としての開閉レバー44によって閉状態に維持されている。開閉レバー44は下部繰出ケース28に対して横向き軸心X3回りで揺動自在に支持され、開閉レバー44の上方に設けられた係合凹部44aを上部繰出ケース27の係合凸部27bに係止させるロック状態に切り換えておくことで、下部繰出ケース28を閉状態に維持することができる。
【0054】
開閉レバー44を、手動で、横向き軸心X3回りで下方に揺動操作することで、係合凹部44aを係合凸部27bから係合解除すると、図8に示すように、下部繰出ケース28を開状態にして上部繰出ケース27を開放する状態に切り換えることができる。このように、下部繰出ケース28を開状態にすると、繰出ロール25が外方に露出する状態となるので、上部繰出ケース27、下部繰出ケース28、繰出ロール25の点検や清掃等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0055】
又、詳述はしないが、搬送管43が下部繰出ケース28に対して横向き軸心X2回りで揺動開閉自在に枢支連結され、下部繰出ケース28に揺動自在に支持された連結レバー45を搬送管43に設けられた係合ピン46に係合することによって、搬送管43を閉状態に維持することができる。又、係合ピン46との係合を解除するように連結レバー45を揺動操作することで、搬送管43を下部繰出ケース28に対して開放姿勢に揺動操作することができる。
【0056】
繰出ケース24における下部繰出ケース28は、上記したように、開閉レバー44をロック状態に切り換えておくことで、下部繰出ケース28を閉状態に維持することができるが、肥料繰出し作業が継続して行われるに伴って、何らかの要因により繰出ケース24内部で詰まりが発生して繰出ロール25を円滑に回転駆動することができず、繰出ケース25内部の圧力が高くなることがある。そのような詰まりに起因して装置開放用の設定値以上の駆動負荷がかかると、開閉レバー44のロック状態が自動的に解除されて下部繰出ケース28が開状態に切り換わるように、開閉レバー44による係止保持力が設定されている。
【0057】
そして、このように手動操作によらずに、開閉レバー44のロック状態が解除されることがあるので、図8に示すように、下部繰出ケース28の近傍に、下部繰出ケース28が閉状態から開状態に切り換わったことを検知する検知センサSが設けられ、施肥作業中に検知センサSが検知状態になると、操縦部7に備えられた報知手段としての警報ブザーBZを作動させて運転者に報知するようにしている。
【0058】
図4,6に示すように、肥料繰出し機構21の後部側には、電動ブロア40からの搬送風が送り込まれる筒状の回収ダクト47が、機体横幅方向に沿って横長姿勢で配設されている。図示はしないが、この回収ダクト47には、施肥作業中には、電動ブロア40からの搬送風の供給が停止され、作業終了後に、貯留ホッパー20に残留している肥料を回収する際に電動ブロア40からの搬送風の供給されるように構成されている。又、回収作業の際には、肥料繰出し機構21の後部側に設けられた排出用シャッター48を開状態に切り換えて、残留肥料が回収ダクト47に案内されるように構成されている。詳細な説明は省略するが、この排出状態への切り換えは、切換レバー49(図6参照)にて行うようになっている。
【0059】
〔伝動クラッチ〕
図9,10に示すように、4つの肥料繰出し機構21の夫々において、駆動軸35と駆動ギア38との間には噛み合い式の伝動クラッチ50が備えられ、4つの肥料繰出し機構21は、各別に、肥料供給を行う作動状態と供給を停止する停止状態とに切り換え可能に構成されている。
【0060】
前記各伝動クラッチ50は、駆動軸35と駆動ギア38とを連動状態にしてそれらを一体回転させる入状態と、駆動軸35と駆動ギア38との連動を断って相対回動を許容する切状態とに切り換え自在な噛み合い式連動部51と、噛み合い式連動部51を入状態に向けて付勢する付勢機構としてのコイルバネ52とを備えている。
【0061】
すなわち、図11に示すように、駆動軸35は、外形が六角形状に形成され、軸受部材53を介して相対回動自在に駆動ギア38が外嵌装着されている。又、駆動軸35における駆動ギア38の軸芯方向横側箇所に位置する状態で、駆動軸35に対して一体回動自在に且つ軸芯方向にスライド自在にクラッチ操作体54が外嵌装着されている。このクラッチ操作体54の駆動ギア38とは反対側に、このクラッチ操作体54を駆動ギア38に向けてスライド移動するように弾性付勢するコイルバネ52が備えられている。
【0062】
駆動ギア38及びクラッチ操作体54の夫々が対向する側面には、噛み合うことによってそれらが一体回動自在に連動連結する状態となる噛み合い部55が形成されている。又、コイルバネ52のクラッチ操作体54とは反対側箇所に、駆動軸35に固定される状態でバネ受け具56が備えられ、コイルバネ52は、噛み合い部55が噛み合うようにクラッチ操作体54を押圧付勢するように圧縮状態で設けられている。
【0063】
従って、クラッチ操作体54と噛み合い部55とにより噛み合い式連動部51が構成され、コイルバネ52の付勢力により噛み合い式連動部51が入状態に向けて付勢される構成となっている。
【0064】
この伝動クラッチ50は、図示しない手動操作具の手動操作に基づいて、クラッチ入状態(噛み合い部55が噛み合っている状態)からクラッチ切状態(噛み合い部55の噛み合い状態が解除された状態)に切り換えることができるように構成されている。
【0065】
すなわち、図9,10に示すように、駆動軸35と平行な手動で回動自在な回動操作軸59が備えられ、この回動操作軸59に一体回動自在にクラッチ操作体54に係合する操作カム58が備えられている。回動操作軸59が回動することで、操作カム体58がクラッチ操作体54に係合作用して噛み合い部55の噛み合い状態を解除するようにスライド操作して、クラッチ操作体54をコイルバネ52の付勢力に抗してスライドさせてクラッチ切状態に切り換えることができる。
【0066】
又、伝動クラッチ50は、クラッチ入状態に切り換えられて、施肥作業を実行しているときにおいて、その伝動クラッチ50よりも伝動下手側において、予め設定されたクラッチ離脱用の設定値以上の駆動負荷が掛かると、自動的にクラッチ切状態に切り換わるようになっている。つまり、クラッチ離脱用の設定値以上の駆動負荷が掛かると、入状態にあるクラッチ操作体54がコイルバネ52の付勢力に抗してスライドして噛み合い部55の噛み合い状態が解除されて、駆動軸35と駆動ギア38との相対回動を許容する状態となる。このことにより、伝動機構中の他の装置が過大な駆動負荷に起因した無理な力により破損することを回避させることができる。
【0067】
〔駆動ギア及び従動ギア〕
次に、駆動ギア38及び従動ギア39について説明する。
駆動ギア38及び従動ギア39は、夫々、合成樹脂材にて一体成形された樹脂製ギアにて構成されている。図9図12に示すように、駆動ギア38は、複数の歯61の夫々が回転軸芯方向の全幅にわたって歯先部までの高さが同じ高さとなるような形状にて構成されている。これに対して、従動ギア39は、図9図12、及び、図14に示すように、複数の歯62夫々の歯先部のうち肥料繰出し機構21側の箇所に、肥料繰出し機構21側端部に近づくほど径方向内方側に位置する傾斜状部分63が形成されている。
【0068】
すなわち、従動ギア39は、回転軸芯と直交する方向に沿う側面視にて、複数の歯62の歯先部62aにおける回転軸芯方向一端側箇所が斜め方向に切り欠かれた形状となっており、上記した傾斜状部分63が形成されている。具体的には、歯先部62aにおける回転軸芯方向中央部付近よりも肥料繰出し機構21側寄りの約半分の領域において、肥料繰出し機構21側端部に近づくほど径方向内方側に位置するように斜め姿勢の傾斜状部分63が形成されている。
【0069】
説明を加えると、従動ギア39と繰出軸29とは合成樹脂材にて一体成形されており、繰出軸29が合成樹脂製であることから、肥料繰出し機構21において処理物が詰まる等の異常により、予め設定されているギア離脱用の設定値以上の駆動負荷が掛かると、従動ギア39が駆動ギア38から離れる方向に繰出軸29が撓み変形することが可能なように構成されている。そのことにより、駆動ギア38と従動ギア39との噛み合いが外れて駆動軸35の回転を許容することができるようになっている。
【0070】
上述したように繰出軸29が撓み変形すると、図12に示すように、駆動ギア38と従動ギア39との噛み合い箇所において、互いの歯61,62が斜め方向に噛み合う状態となる。しかし、このような斜め方向での噛み合い状態であっても、従動ギア39の歯先部62aのうち肥料繰出し機構21側箇所に傾斜状部分63が形成されているから、駆動ギア38が空回りする状態になるまでの間、従動ギア39の歯62と駆動ギア38の歯61とは比較的幅広の領域で接触する状態を維持することができる。そして、そのように比較的幅広の領域で接触する状態から従動ギア39の歯62と駆動ギア38の歯61が離間して駆動ギア37が空回りすることになる。その結果、歯先部62aの狭い箇所に集中的に駆動力が掛かることがなく、従動ギア39や駆動ギア38が破損することを回避し易いものとなる。
【0071】
従動ギア39における上記した傾斜状部分63は、図13に示すように、その先端面63Aの回転方向上手側箇所63A1及び回転方向下手側箇所63A2の夫々が小さい曲率半径の湾曲面に形成され、回転方向上手側箇所63A1と回転方向下手側箇所63A2との間の中間部は平坦な面にて形成されている。
【0072】
このように構成することで、傾斜状部分63が形成された箇所における歯元部分では、周方向に沿う幅は他の歯62と同じような広幅に形成されており、繰出軸29が撓み変形した場合において、駆動ギア38が空回りする状態になる直前まで歯62の肉厚の部分にて駆動力を受止めて回転駆動される状態となるので、歯先が破損するおそれが少ないものとなる。
【0073】
傾斜状部分63は、最も径方向内方側の箇所であっても、ピッチ円に対応する位置(駆動ギア38の歯61が接触し始める箇所に対応する位置)Pよりも小さくならないようにしてあり、駆動ギア38との噛み合いによる伝動状態に悪影響を与えないようにしている。
【0074】
そして、上記したような、繰出軸29の撓み変形により駆動ギア38が空回りし始めるときの駆動負荷、すなわち、ギア離脱用の設定値は、開閉レバー44のロック状態が自動的に解除されて下部繰出ケース28が開状態に切り換わるときの駆動負荷、すなわち、装置開放用の設定値よりも小さい値に設定されている。又、前記装置開放用の設定値は、駆動軸35と駆動ギア38との相対回動を許容して強制的にクラッチ切状態となるときの駆動負荷、すなわち、前記クラッチ離脱用の設定値よりも小さい値に設定されている。
【0075】
つまり、前記ギア離脱用の設定値が最も小さく、前記装置開放用の設定値が前記ギア離脱用の設定値よりも大きい値であり、前記クラッチ離脱用の設定値が、前記装置開放用の設定値よりもさらに大きい値に設定されている。その結果、駆動負荷が過大になったときは、先ず最初に、繰出軸29の撓み変形に伴って従動ギア39が駆動ギア38から離間して駆動ギア38が空回りする状態になり、他の装置に過大な負荷が掛かることを回避できるようになっている。
【0076】
〔従動ギアの作製方法〕
次に、従動ギア39の作製方法について説明する。
この従動ギア39は、溶融した合成樹脂材(溶融材の一例)を金型70の内部に注入して成形する射出成型によって作製する。金型70の内部は、予め従動ギア39の外形に沿うように加工形成されており、溶融した合成樹脂材を金型70に形成された複数のゲート74から注入して硬化させることで所望の形状のギアを成形することができる。
【0077】
説明を加えると、図15に示すように、金型70は、上型71と下型72とからなり、それら上型71と下型72とを合わせて注入用の空間73(キャビティ)を形成する。そのように上型71と下型72とを合わせた状態で、複数のゲート74から溶融した合成樹脂材を注入する。
【0078】
従動ギア39は繰出軸29と一体的に成形されるが、金型70は、従動ギア39の回転軸芯方向の繰出軸29とは反対側の端縁(軸芯方向一端部に対応する箇所)に対応する位置にゲート74を備えている。
【0079】
図16に示すように、従動ギア39の歯数が15個であり、ゲート74の個数は3個である。従動ギア39の谷部76に相当する位置に3つのゲート74を分散配置させて設け、それら3つのゲート74から溶融樹脂をキャビティ73内に注入する。
【0080】
このようにして従動ギア39を作製することで、3つのゲート74から注入された溶融樹脂が各ゲート74からキャビティ73内に流れ込み、各ゲート74の中間部に位置する歯62の山部77に対応する箇所において、溶融樹脂が合流することによりウエルドラインLが形成される。
【0081】
ウエルドラインLは、3つのゲート74夫々の中間部において合計3本形成されるが、上記したような歯数(15)とゲート数(3)との関係を設定することで、各ウエルドラインLが全て歯62の山部77に対応する箇所に形成される。その結果、ウエルドラインLが形成される箇所は、山部77であるから厚みがあるので、過大な駆動負荷がかかって従動ギア39に強い力が作用しても、ウエルドラインLにて破損するおそれが少なく耐久性に優れたものとなる。
【0082】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、従動ギア39の傾斜状部分63における先端面63Aの回転方向上手側箇所63A1及び回転方向下手側箇所63A2の夫々が小さい曲率半径の湾曲面に形成されるものを示したが、このような構成に代えて、次のように構成するものでもよい。
【0083】
図17に示すように、傾斜状部分63の先端面63Aが回転軸芯方向視で径方向外方側に全体に緩やかに膨らむ中膨らみ状の湾曲面に形成されるものでもよい。又、図18に示すように、先端面63Aの回転方向上手側箇所63A1が小さい曲率半径R1の湾曲面に形成され、先端面63Aの回転方向下手側箇所63A2が大きい曲率半径R2の湾曲面に形成されるものでもよい。
【0084】
(2)上記実施形態では、駆動ギア38は、複数の歯61の夫々が回転軸芯方向の全幅にわたって歯先部までの高さが同じ高さとなるような形状にて構成され、従動ギア39に傾斜状部分63が形成されるものを示したが、このような構成に代えて、従動ギア39が、複数の歯62の夫々が回転軸芯方向の全幅にわたって歯先部までの高さが同じ高さとなるような形状にて構成され、駆動ギア38に傾斜状部分63が形成されるものであってもよく、又、駆動ギア38及び従動ギア39の夫々に、傾斜状部分63が形成されるものであってもよい。
【0085】
(3)上記実施形態では、駆動ギア38及び従動ギア39が夫々、合成樹脂材にて一体成形にて構成されるものを示したが、それらが金属材にて構成されるものでよい。
【0086】
(4)上記実施形態では、伝動クラッチ50が、伝動下手側にてクラッチ離脱用の設定値以上の駆動負荷が掛かると、入状態から切状態に切り換わり可能に構成されるものを示したが、このような構成に代えて、駆動負荷が過大であっても切り換わることなく、伝動クラッチが手動操作でのみ切換可能な構成としてもよい。
【0087】
(5)上記実施形態では、肥料繰出し機構21は、装置開放用の設定値以上の駆動負荷が発生すると、下部繰出ケース28を開状態に切り換え可能であり、下部繰出ケース28を開状態に切り換わると報知手段としての警報ブザーBZを作動させるようにしたが、このような構成に代えて、次のように構成してもよい。
【0088】
(5−1)報知手段としてブザーに代えてランプを点灯させる構成としてもよく、ブザーとランプを併用してもよい。
(5−2)報知手段を備えずに、下部繰出ケース28を開状態に切り換っても報知しないようにしてもよい。
(5−3)駆動負荷が過大であっても下部繰出ケース28が開状態に切り換わることなく、手動操作でのみ下部繰出ケース28を閉状態から開状態に切り換え可能に構成するものでもよい。
【0089】
(6)上記実施形態では、被駆動装置が粉粒体繰出し装置である場合を示したが、被駆動装置としては、これとは異なる別の種類の装置を備えるものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、駆動軸からの動力により駆動される被駆動装置が備えられ、その被駆動装置から片持ち状に延出された従動軸に備えられた従動ギアと、駆動軸に備えられた駆動ギアとが噛み合い連動するように構成されているギア式伝動機構に適用できる。
【符号の説明】
【0091】
20 貯留部
21 被駆動装置
23 固定部
27 第1ケース部
28 第2ケース部
29 従動軸
35 駆動軸
38 駆動ギア
39 従動ギア
44 保持機構
50 伝動クラッチ
51 噛み合い連動部
52 付勢機構
62 歯
62a 歯先部
63 傾斜状部分
63A 先端面
63A1 回転方向上手側箇所
63A2 回転方向下手側箇所
BZ 報知手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18