(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207450
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】抜弾装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F41A 15/00 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
F41A15/00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-78434(P2014-78434)
(22)【出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2015-200443(P2015-200443A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】島原 健二
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第2244798(GB,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0240561(US,A1)
【文献】
米国特許第5430966(US,A)
【文献】
米国特許第3965795(US,A)
【文献】
実開平4−92189(JP,U)
【文献】
実開平1−74490(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41A 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砲身(10)内で停止した弾丸(11)を、前記砲身(10)の発射口(10B)から挿入した長手形状の抜弾部材(1)を付勢手段(13)により押圧して抜弾するようにした抜弾装置において、
前記抜弾部材(1)は、互いに直列接続されたネジ式支柱(3A)、支柱(3)、抜弾ヘッド(5)とからなり、
前記抜弾ヘッド(5)は、ガイド本体(5A)、前記ガイド本体(5A)に球軸受け(20)を介して接続されたロッド(5B)及び前記ロッド(5B)に接続されたヘッド本体(5C)からなり、
前記弾丸(11)の先端(11A)が前記ヘッド本体(5C)の弾丸受け凹部(5Ca)内に挿入される際に、前記弾丸(11)の姿勢に沿って前記弾丸受け凹部(5Ca)が前記球軸受け(20)を介して回動するように構成したことを特徴とする抜弾装置。
【請求項2】
前記ネジ式支柱(3A)は、ネジ付き支柱(21)及び前記ネジ付き支柱(21)に螺入されたネジ組立(22)からなり、前記ネジ組立(22)を回転させることにより、前記ネジ式支柱(3A)の全長を可変できることを特徴とする請求項1記載の抜弾装置。
【請求項3】
前記付勢手段(13)は、油圧又は空圧からなるシリンダからなることを特徴とする請求項1又は2記載の抜弾装置。
【請求項4】
砲身(10)内で停止した弾丸(11)を、前記砲身(10)の発射口(10B)から挿入した長手形状の抜弾部材(1)を付勢手段(13)により押圧して抜弾するようにした抜弾方法において、
前記抜弾部材(1)は、互いに直列接続されたネジ式支柱(3A)、支柱(3)、抜弾ヘッド(5)とからなり、
前記抜弾ヘッド(5)は、ガイド本体(5A)、前記ガイド本体(5A)に球軸受け(20)を介して接続されたロッド(5B)及び前記ロッド(5B)に接続されたヘッド本体(5C)からなり、
前記弾丸(11)の先端(11A)が前記ヘッド本体(5C)の弾丸受け凹部(5Ca)内に挿入される際に、前記弾丸(11)の姿勢に沿って前記弾丸受け凹部(5Ca)が前記球軸受け(20)を介して回動するように構成したことを特徴とする抜弾方法。
【請求項5】
前記ネジ式支柱(3A)は、ネジ付き支柱(21)及び前記ネジ付き支柱(21)に螺入されたネジ組立(22)からなり、前記ネジ組立(22)を回転させることにより、前記ネジ式支柱(3A)の全長を可変できることを特徴とする請求項4記載の抜弾方法。
【請求項6】
前記付勢手段(13)は、油圧又は空圧からなるシリンダからなることを特徴とする請求項4又は5記載の抜弾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抜弾装置及び方法に関し、特に、支柱の長さを自在に調整でき、回動できる弾丸受けにより弾丸の先端を受け、途中で停止した弾丸を確実に抜弾できるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の抜弾装置としては、抜弾装置自体を製作しているメーカーは極めて少なく、一般のデータ検索では、直接の抜弾に関する特許公報としては存在せず、参考として挙げると、図示しない特許文献1の「模擬砲弾発射筒」を示すことができる。
【0003】
従って、本出願人は、
図5及び
図6で示される本出願人製作の抜弾装置を開示している。
すなわち、
図5において符号1で示されるものは抜弾装置を構成するための長手形状の抜弾部材であり、前記抜弾部材1はその後端1Aから先端1Bへ向けて当て板2、支柱3、アダプタ4及び抜弾ヘッド5が互いに直列接続されている。
【0004】
図6は、弾丸11が前記砲身10の薬室12内で停止した場合に、この砲身10の発射口10Bから弾丸11へ向けて前記抜弾部材1を挿入して抜弾する場合を示している。
すなわち、前記抜弾部材1の先端1Bの抜弾ヘッド5が弾丸10の先端11Aの外周に嵌合し、この状態で砲身10の発射口10Bに取付けられた油圧シリンダ13の押圧体13Aを前進させると、抜弾部材1の抜弾ヘッド5が弾丸11の先端11Aを押圧するため、弾丸11はこの押圧力によって薬室12から基部10A外に押出され、非発射状態の弾丸11を回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-193999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の抜弾装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、従来の抜弾装置は、支柱とアダプタと抜弾ヘッドで構成されているため、予めその全長は、抜弾ヘッドが薬室内の弾丸に届くことを前提にした長さで予め固定されているため、弾丸が予め想定した位置よりも異なる場所で停止した場合には、抜弾ヘッドが弾丸に届かないと云う状態になり、弾丸の抜弾が不可能であった。
【0007】
また、前述の弾丸の発射時に、弾丸が薬室内で停止した場合には、弾丸が傾斜した状態(詳細には、
図4に示す状態)で停止しているため、この状態で、
図6のように抜弾部材を砲身内に挿入すると、弾丸の先端に抜弾ヘッドが当接し、この弾丸の先端に設けられている信管に抜弾ヘッドが接触するなどの恐れがあった。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、支柱の長さを自在に調整でき、回動できる弾丸受けにより弾丸の先端を受け、途中で停止した弾丸を確実に抜弾できるようにした抜弾装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による抜弾装置は、砲身内で停止した弾丸を、前記砲身の発射口から挿入した長手形状の抜弾部材を付勢手段により押圧して抜弾するようにした抜弾装置において、前記抜弾部材は、互いに直列接続されたネジ式支柱、支柱、抜弾ヘッドとからなり、前記抜弾ヘッドは、ガイド本体、前記ガイド本体に球軸受けを介して接続されたロッド及び前記ロッドに接続されたヘッド本体からなり、前記弾丸の先端が前記ヘッド本体の弾丸受け凹部内に挿入される際に、前記弾丸の姿勢に沿って前記弾丸受け凹部が前記球軸受けを介して回動するようにした構成であり、また、前記ネジ式支柱は、ネジ付き支柱及び前記ネジ付き支柱に螺入されたネジ組立からなり、前記ネジ組立を回転させることにより、前記ネジ式支柱の全長を可変できる構成であり、また、前記付勢手段は、油圧又は空圧からなるシリンダからなる構成であり、また、本発明による抜弾方法は、砲身内で停止した弾丸を、前記砲身の発射口から挿入した長手形状の抜弾部材を付勢手段により押圧して抜弾するようにした抜弾方法において、前記抜弾部材は、互いに直列接続されたネジ式支柱、支柱、抜弾ヘッドとからなり、前記抜弾ヘッドは、ガイド本体、前記ガイド本体に球軸受けを介して接続されたロッド及び前記ロッドに接続されたヘッド本体からなり、前記弾丸の先端が前記ヘッド本体の弾丸受け凹部内に挿入される際に、前記弾丸の姿勢に沿って前記弾丸受け凹部が前記球軸受けを介して回動する方法であり、また、前記ネジ式支柱は、ネジ付き支柱及び前記ネジ付き支柱に螺入されたネジ組立からなり、前記ネジ組立を回転させることにより、前記ネジ式支柱の全長を可変できる方法であり、また、前記付勢手段は、油圧又は空圧からなるシリンダからなる方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による抜弾装置及び方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、砲身内で停止した弾丸を、前記砲身の発射口から挿入した長手形状の抜弾部材を付勢手段により押圧して抜弾するようにした抜弾装置において、前記抜弾部材は、互いに直列接続されたネジ式支柱、支柱、抜弾ヘッドとからなり、前記抜弾ヘッドは、ガイド本体、前記ガイド本体に球軸受けを介して接続されたロッド及び前記ロッドに接続されたヘッド本体からなり、前記弾丸の先端が前記ヘッド本体の弾丸受け凹部内に挿入される際に、前記弾丸の姿勢に沿って前記弾丸受け凹部が前記球軸受けを介して回動するように構成したことにより、弾丸が砲身内の任意の位置で停止してもネジ式支柱によって支柱長の調整が自在であり、薬室内で弾丸が傾斜して停止している場合でも、弾丸の信管に接触することなく回動する弾丸受けで弾丸の弾頭部を押すことができるため、抜弾時の信管の損傷を防止することができる。
また、前記ネジ式支柱は、ネジ付き支柱及び前記ネジ付き支柱に螺入されたネジ組立からなり、前記ネジ組立を回転させることにより、前記ネジ式支柱の全長を可変できることにより、支柱の長さをネジ組立の回転により自在に調整でき、移動時には短縮させて運搬を容易化できる。
また、前記付勢手段は、油圧又は空圧からなるシリンダからなることにより、簡単な駆動源によって支柱の長さを調整でき、操作者の負荷を極めて小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による抜弾装置及び方法に用いる抜弾部材を示す平面図である。
【
図4】砲身内に本発明の抜弾部材が挿入され弾丸と結合した状態を示す拡大断面図である。
【
図5】従来の抜弾装置における抜弾部材を示す平面図である。
【
図6】
図5の抜弾部材を砲身内に挿入した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、支柱の長さを自在に調整でき、回動できる弾丸受けにより弾丸の先端を受け、途中で停止した弾丸を確実に抜弾できるようにすることである。
【実施例】
【0013】
以下、図面と共に本発明による抜弾装置及び方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものは、長手形状の抜弾装置の抜弾部材であり、この抜弾部材1は、その後端1Aから先端1Bに向けて互いに直列接続された当て板2、ネジ式支柱3A、支柱3、支柱3及び抜弾ヘッド5によって構成されている。
尚、前記後端1Aにおける当て板2には、油圧式及び空圧式等のシリンダからなる付勢手段13が当接され、この付勢手段13によって前記抜弾部材1を先端1B側に押圧することができるように構成されている。
【0014】
図2は、
図1の要部であるネジ式支柱3Aを拡大して示す平面図であり、このネジ式支柱3Aは、メスネジを内設したネジ付き支柱21内に付してこれより小径のオスネジを外周に有するネジ組立22が螺合されて構成されている。
前記ネジ組立22をネジ付き支柱21内に螺入する状態に応じて前記ネジ式支柱3Aの全長を任意の長さに可変させることができるように構成されている。
【0015】
図3は、
図1の要部である抜弾ヘッド5を示す拡大平面図であり、この抜弾ヘッド5は、ガイド本体5A、このガイド本体5Aに接続されたロッド5B及びこのロッド5Bに一体又は接続して設けられた弾丸受け凹部5Ca(
図4に示す)を有するヘッド本体5Cから構成されている。
前記ヘッド本体5Cの弾丸受け凹部5Ca内の内壁には、縦断面でみて舌片状をなし、輪状又は複数の単体をなす弾丸受け片5Cbが設けられており、この弾丸受け片5Cbは所定の弾性を有しているため、この弾丸受け凹部5Ca内に弾丸11の先端11Aが挿入する時の先端11Aの損傷を防ぎ、かつ、挿入後の前記先端11Aの収まり具合も極めて良好な状態となるように構成されている。
【0016】
次に、前述の構成において、本発明による抜弾装置を用いて抜弾する方法について述べる。
まず、
図4で示されるように砲身10内に装填して発射した弾丸11が、前記砲身10の薬室12内で施条(図示せず)に喰い込む前に薬室12内で停止すると、砲身10の軸心線Pに対して傾斜した状態となり、弾丸11の先端11Aは前記軸心線Pに対して若干上向きとなっている。
【0017】
前述の状態で、
図6で示されるように、予め砲身10の長さに応じてネジ式支柱3Aの長さを所定長さに調整した抜弾部材1を、前記砲身10内に挿入し、前記付勢手段13によって抜弾部材1を砲身10内に押し込むと、傾斜した前記弾丸11の先端11Aが前記ヘッド本体5Cの弾丸受け凹部5Ca内に入る時、前記ロッド5Bはその基部の球状部5Baと前記ガイド本体5Aの球状凹部5Aaの組合せからなる球軸受け20を介して回動しつつ前記先端11Aが弾丸受け凹部5Ca内に挿入する。
【0018】
すなわち、前記ヘッド本体5Cの弾丸受け凹部5Caがロッド5Bの回動を伴って弾丸11の先端11Aの外周に沿って前進できるため、弾丸11の信管が内蔵された先端11Aには衝突することなく安全に前記ヘッド本体5Cと弾丸11とを結合させることができる。
尚、前記先端11Aと弾丸受け凹部5Caの結合の際、前記弾丸受け凹部5Caの内壁に形成された弾丸受け片5Cbが前記先端11Aの外周に若干の弾性を伴って接触しているため、前記抜弾ヘッド5と弾丸11との結合が確実に保持される。
【0019】
前述の状態で、前記付勢手段13によって前記抜弾部材1を続けて前進させることにより、
図4で示された弾丸11は前記砲身10の基部10A(
図6で示す)側へ押し戻されて取り出され、抜弾作業が終了する。
尚、前述の弾丸11を押し戻す際に、前記弾丸11が基部10A側へ戻る時に、弾丸11の姿勢(傾斜状態)が例え変化した場合でも、前記先端11Aの変化と共にヘッド本体5Cの状態も前記球軸受け20を介して前記ロッド5Bが、周知のジョイスティックと同様の動きをするため、前記ヘッド本体5Cが前記先端11Aから離脱することはなく、安定した状態を保持しつつ抜弾を行うことができる。
【0020】
尚、前述した本発明による抜弾装置及び方法の要旨は、次の通りである。
すなわち、砲身10内で停止した弾丸11を、前記砲身10の発射口10Bから挿入した長手形状の抜弾部材1を付勢手段13により押圧して抜弾するようにした抜弾装置において、前記抜弾部材1は、互いに直列接続されたネジ式支柱3A、支柱3、抜弾ヘッド5とからなり、前記抜弾ヘッド5は、ガイド本体5A、前記ガイド本体5Aに球軸受け20を介して接続されたロッド5B及び前記ロッド5Bに接続されたヘッド本体5Cからなり、前記弾丸11の先端11Aが前記ヘッド本体5Cの弾丸受け凹部5Ca内に挿入される際に、前記弾丸11の姿勢に沿って前記弾丸受け凹部5Caが前記球軸受け20を介して回動する構成と方法であり、また、前記ネジ式支柱3Aは、ネジ付き支柱21及び前記ネジ付き支柱21に螺入されたネジ組立22からなり、前記ネジ組立22を回転させることにより、前記ネジ式支柱3Aの全長を可変できる構成と方法であり、また、前記付勢手段13は、油圧又は空圧からなるシリンダからなる構成と方法である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明による抜弾装置及び方法は、可動式の抜弾ヘッド5を用いているため、砲身内の弾丸に限ることなく、他の筒体内の物体の搬送等にも適用できる。
【符号の説明】
【0022】
1 抜弾部材
1A 後端
1B 先端
2 当て板
3 支柱
3A ネジ式支柱
4 アダプタ
5 抜弾ヘッド
5A ガイド本体
5Aa 球状凹部
5B ロッド
5C ヘッド本体
5Ba 球状部
5Ca 弾丸受け凹部
5Cb 弾丸受け片
10 砲身
10A 基部
10B 発射口
11 弾丸
11A 先端
12 薬室
13 付勢手段
20 球軸受け
21 ネジ付き支柱部
22 ネジ組立