(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207470
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】後打ち材一体型の橋梁用伸縮装置の製造方法及び施工方法
(51)【国際特許分類】
E01C 11/02 20060101AFI20170925BHJP
E01D 19/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
E01C11/02 A
E01D19/06
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-133292(P2014-133292)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-951(P2016-951A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】598149688
【氏名又は名称】山陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】赤木 亘
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−005236(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0154247(US,A1)
【文献】
特開昭54−081635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00−17/00
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合って配される一対の橋梁本体の対向縁部にそれぞれ設置して固定するための一対のコンクリート部と、
前記一対の橋梁本体の変位を吸収するために前記一対のコンクリート部の遊間に配されて前記一対のコンクリート部を連結する弾性体部分と、前記一対のコンクリート部のそれぞれにおける、前記弾性体部分の下側となる箇所に配される一対の荷重支持板とで構成された伸縮部とを、
工場製作により一体化することを特徴とする後打ち材一体型の橋梁用伸縮装置の製造方法。
【請求項2】
橋梁本体に埋設されたアンカーボルトを通して固定するためのアンカー孔が、橋軸直角方向に間隔を隔てた状態で、前記一対のコンクリート部のそれぞれに加工された請求項1記載の後打ち材一体型の橋梁用伸縮装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法で製造された後打ち材一体型の橋梁用伸縮装置を、施工現場でコンクリートを打設・養生することなく橋梁本体に固定する橋梁用伸縮装置の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁用伸縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁用伸縮装置とは、ゴムや弾性シール材などの弾性体と鋼材を組み合わせたもの、又はその其々による構造の伸縮装置を工場製作し、施工現場で橋梁に埋設されたアンカーボルトとで伸縮装置を溶接固定し、後打ち材としてコンクリートを打設することによって橋梁本体1と伸縮装置の一体化をはかっていた。
【0003】
コンクリートの打設・養生には、施工規模に応じた人員と日数を必要とし、天候や気温によって作業内容や時間も変わるため管理に習熟したものが必要となる。伸縮装置を先付けする場合には、型枠装置の設置やコンクリート打設・養生後の脱型作業もあり、現場での管理項目は多岐にわたっていた。
【0004】
近年では、橋梁本体の長寿命化という観点から、伸縮装置部のみの取換え・補修工事などが多くなっているが、一度設置した伸縮装置を取換えるには、あらかじめ交通を一部又は全面規制し、コンクリートを削岩機などではつり取壊すとともに既設の伸縮装置を取り外した後、新しい伸縮装置を再度設置し、後打ちコンクリートを打設・養生し、交通解放しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−290913 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の橋梁用伸縮装置では、伸縮装置本体は工場製作するため、ある一定の品質が保証されるものの、施工現場でのコンクリート打設には時間と作業員の熟練度を必要とし、出来型に差異が生じることも少なくなく、コンクリートの施工不良や伸縮装置の破損につながるなどの問題がある。
【0007】
また、伸縮装置の取替え工事においては、交通を長時間規制することにより、交通障害をきたしたり、コンクリートをはつる際には、大きな騒音や粉塵などが発生するため周辺環境への影響も考慮する必要があるうえ、新しい伸縮装置を再度設置するためには、伸縮装置の新設時と同様の作業を再度施工現場で行う必要がある。
【0008】
本発明では、以上のような背景技術の問題点に鑑み、施工現場でのコンクリート打設・養生を必要とせず、作業員の熟練度に左右されない製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の後打ち材一体型の橋梁用伸縮装置は、橋梁本体1の変位を吸収する伸縮部4と、橋梁本体1と伸縮部4とを一体化させることが主目的のコンクリート部2とを備えている。
【0010】
本発明は、伸縮部4とコンクリート部2とが工場製作により一体化されていることが特徴である。
【0011】
コンクリート部2には、製品につき橋軸直角方向に少なくとも左右1組のアンカー孔3の加工が施されており、橋梁に埋設されたアンカーボルト7をこのアンカー孔3に通しナット6で固定することによって、本発明品と橋梁本体1とは一体化されている。
【0012】
本発明品の伸縮部4は、ゴムなどの弾性体や本体が鋼材からなる鋼製構造のものや、ゴムなどの弾性体に荷重支持鋼板9のような鋼材を組み合わせた構造のものからなっている。
【0013】
本発明の設置面となる橋梁箱抜き部8は、あらかじめ均しモルタルや、箱抜き型枠を用いて平坦性が確保された状態になっており、製品の設置を容易に行うことができる。
【0014】
本発明のコンクリート部2は、鉄筋により補強されているため、車輛による繰り返し荷重にも耐えうる構造となっている。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1) 本発明は、伸縮部4と後打ち材であるコンクリート部2が工場製作により一体化されているので、施工現場でのコンクリート打設・養生に要する日数や手間を短縮・省略するとができる。
(2) (1)により、製作者・作業者の熟練度に左右されることなく、工場管理され均一化された製品を提供することができる。
(3) 本発明は、アンカー孔にアンカーボルトを通すことで設置しているため、ナットを取り外すことによって、用意に取替えが可能である。
(4) (3)により、伸縮装置の取替え工事の際に発生する、コンクリートの取壊しなどは必要ないため、騒音や粉塵の心配もなくなる。また、コンクリートを再度打設・養生をする必要もなくなるため、施工時間の短縮を図ることが可能となり、工費節減にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施にかかる橋梁用伸縮装置を示す一部断面にした斜視図。
【
図2】本発明の実施形態を示す橋梁用伸縮装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
以下に、一つの実施の形態について、
図1〜
図3を参照して説明する。本発明は、橋梁の変位を吸収する伸縮部4とこの伸縮部を橋梁に固定するためのコンクリート部からなっている。コンクリート部2は伸縮部4と一体化されており、
図1に示すように、伸縮部4の左右に橋梁の橋軸直角方向にわたって設置されている。
【0018】
図1に示すように、本発明のコンクリート部2には、橋軸直角方向に少なくとも左右1組のアンカー孔3の加工がされている。橋梁本体に埋設されたアンカーボルト7をこのアンカー孔に通し、ナット固定することにより、橋梁と一体化されている。アンカー孔3は、
図3に示すように、アンカーボルト7を通す貫通孔部10とナット固定するための座ぐり孔部11とからなっている。これにより、車輛の通行面にナットを飛び出させることなく、コンクリート部2にナットを内蔵させることができる。アンカーボルト7をナット6で固定した後は、アンカー孔3をモルタルやキャップにより埋めることで、通行面の平坦性は確保される。
【符号の説明】
【0019】
1a,1b 橋梁本体
2a,2b コンクリート部
3a,3b アンカー孔
4 伸縮部
5 遊間
6a,6b ナット
7a,7b アンカーボルト
8a,8b 橋梁箱抜き部
9a,9b 荷重支持板
10a,10b 貫通孔部
11a,11b 座ぐり孔部