特許第6207487号(P6207487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207487
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】自脱型コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 67/00 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   A01D67/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-194137(P2014-194137)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-63770(P2016-63770A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】浜西 正
(72)【発明者】
【氏名】大森 美樹雄
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−116940(JP,A)
【文献】 特開2011−177040(JP,A)
【文献】 特開2011−188747(JP,A)
【文献】 特開2012−005358(JP,A)
【文献】 米国特許第04724661(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 67/00 − 69/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に昇降可能に設けられる刈取部と、
前記刈取部を弾性的に支持可能なバランス機構と、を備え、
前記バランス機構は、前記機体に設けられる機台と、前記機台から前上がりの傾斜姿勢で前記刈取部に向かって延びるガイド部材と、前記ガイド部材に移動可能に支持されるバネ受け部材と、前記バネ受け部材と前記機台との間に介装されるバネと、前記バネ受け部材に連結されると共に前記機台に形成される開口部を貫通する軸部材と、前記軸部材のうち前記開口部よりも前記機体側の部分に設けられると共に前記軸部材が前記開口部から抜け出すのを阻止する抜止め部と、を有する自脱型コンバイン。
【請求項2】
前記抜止め部は、前記開口部の径よりも大きなフランジ部によって構成されている請求項1に記載の自脱型コンバイン。
【請求項3】
前記軸部材に、前記バネのバネ長さを調整する調整ナットが螺合され、
前記フランジ部が前記調整ナットと一体に形成されている請求項2に記載の自脱型コンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の前部に昇降可能に設けられる刈取部と、刈取部を弾性的に支持可能なバランス機構と、を備える自脱型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような自脱型コンバインとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。特許文献1に記載の自脱型コンバインは、機体の前部に昇降可能に設けられる刈取部(文献では「刈取り部」)と、刈取部を弾性的に支持可能なバランス機構(文献では「バランス支持手段」)と、を備えている。
【0003】
バランス機構は、機体に設けられる機台(文献では「バネ受け台」)と、機台から前上がりの傾斜姿勢で刈取部に向かって延びるガイド部材(文献では「支軸」)と、ガイド部材に移動可能に支持されるバネ受け部材(文献では「先端側バネホルダ」)及び基端側バネホルダと、バネ受け部材と基端側バネホルダとの間に介装されるバネ(文献では「バランスバネ」)と、バネ受け部材と基端側バネホルダとに亘って設けられると共にバネ受け部材に連結される軸部材と、を有している。特許文献1に記載の自脱型コンバインでは、刈取部が昇降範囲のうち所定の下降作業範囲に位置すると、刈取部がバネ受け部に当接し、バネが圧縮操作される。こうして、刈取部がバランス機構によって弾性的に支持されることにより、刈取部の接地圧が軽減されるため、刈取部の地面への突っ込みを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−245530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自脱型コンバインでは、バネ受け部材がガイド部材に移動可能に支持されているところ、バネ受け部材がバネの付勢力によって刈取部側に大きく移動した場合、バネ受け部材がガイド部材から脱落することが懸念される。
【0006】
上記状況に鑑み、バネ受け部材がガイド部材から脱落するのを防止することが可能な自脱型コンバインが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、
機体の前部に昇降可能に設けられる刈取部と、
前記刈取部を弾性的に支持可能なバランス機構と、を備え、
前記バランス機構は、前記機体に設けられる機台と、前記機台から前上がりの傾斜姿勢で前記刈取部に向かって延びるガイド部材と、前記ガイド部材に移動可能に支持されるバネ受け部材と、前記バネ受け部材と前記機台との間に介装されるバネと、前記バネ受け部材に連結されると共に前記機台に形成される開口部を貫通する軸部材と、前記軸部材のうち前記開口部よりも前記機体側の部分に設けられると共に前記軸部材が前記開口部から抜け出すのを阻止する抜止め部と、を有することにある。
【0008】
本特徴構成によれば、バネ受け部材がバネの付勢力によって刈取部側に大きく移動した場合でも、軸部材が開口部から抜け出すのが抜止め部によって阻止される。これにより、バネ受け部材の刈取部側への移動が阻止されるため、バネ受け部材がガイド部材から脱落するのを防止することができる。
【0009】
さらに、本発明において、
前記抜止め部は、前記開口部の径よりも大きなフランジ部によって構成されていると好適である。
【0010】
本特徴構成によれば、抜止め部を簡単に構成することができると共に、軸部材が開口部から抜け出すのを確実に阻止することができる。
【0011】
さらに、本発明において、
前記軸部材に、前記バネのバネ長さを調整する調整ナットが螺合され、
前記フランジ部が前記調整ナットと一体に形成されていると好適である。
【0012】
本特徴構成によれば、部品点数の削減による低コスト化が可能であると共に、調整ナットを軸部材に螺合するだけで、フランジ部を軸部材に簡単に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】自脱型コンバインを示す左側面図である。
図2】刈取部がバランス機構によって弾性的に支持された状態を示す左側面図である。
図3】バランス機構を示す断面図である。
図4】刈取部の昇降とバランス機構の状態との関係を示す左側面図である。
図5】別実施形態に係るフランジ部を示す断面図である。
図6】第一の別実施形態に係るバランス機構を示す断面図である。
図7】第二の別実施形態に係るバランス機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。
【0015】
〔自脱型コンバインの全体構成〕
図1には、自脱型コンバインを示している。この自脱型コンバインは、クローラ式の走行装置1と、走行装置1で支持される機体フレーム2(本発明に係る「機体」に相当)と、を備えている。機体フレーム2の前端部には、植立穀稈を刈り取る刈取部3が昇降可能に設けられている。機体フレーム2上において、刈取部3の後方には、運転部4が設けられていると共に、運転部4の後方には、刈取穀稈を脱穀する脱穀装置5と、穀粒を貯留するグレンタンク6と、が左右方向に隣り合う状態で設けられている。
【0016】
〔刈取部〕
刈取部3は、複数条刈りに構成されている。刈取部3は、例えば、二条刈りに構成されているが、三条刈り以上に構成されていてもよい。刈取部3は、左右方向に延びる軸心X1周りで揺動することにより、上昇非作業位置と下降作業位置との間で昇降するように構成されている。
【0017】
刈取部3は、植立穀稈を分草する分草具7と、分草具7で分草された植立穀稈を引き起こす引起装置8と、引起装置8で引き起こされた植立穀稈を切断する切断装置9と、刈取穀稈を脱穀装置5に供給するように後方に搬送する搬送装置10と、備えている。分草具7は、前後方向に延びる分草具フレーム11の前端部に取り付けられている。分草具フレーム11の下側には、接地可能なソリ12が取り付けられている。
【0018】
刈取部3は、軸心X1から前下がりの傾斜姿勢で延びる刈取主フレーム13を備えている。刈取主フレーム13は、軸心X1周りで揺動可能に構成されている。刈取主フレーム13と機体フレーム2とに亘って、油圧式の昇降シリンダ14が設けられている。昇降シリンダ14が伸縮することにより、刈取主フレーム13が軸心X1周りで揺動する。
【0019】
図2に示すように、刈取主フレーム13の下側には、左右方向に延びる軸心X2周りで揺動可能な揺動操作アーム15が設けられている。揺動操作アーム15の下端部は、刈取主フレーム13に連結されている。刈取主フレーム13が軸心X1周りで揺動することにより、揺動操作アーム15が刈取主フレーム13と一体的に軸心X2周りで揺動する。機体フレーム2の前端部には、刈取部3を弾性的に支持可能なバランス機構16が設けられている。
【0020】
〔バランス機構〕
図2及び図3に示すように、バランス機構16は、機台17と、一対のガイドロッド18(本発明に係る「ガイド部材」に相当)と、第一バネ受け19(本発明に係る「バネ受け部材」に相当)と、第二バネ受け20と、バネ21と、ボルト軸22(本発明に係る「軸部材」に相当)と、一対の調整ナット23と、抜止めナット24と、を有している。
【0021】
機台17は、機体フレーム2の前端部に設けられている。機台17は、バネ21を支持する支持座17Aを有している。支持座17Aには、略円形状の開口部17aが形成されている。開口部17aの径は、調整ナット23の径及び抜止めナット24のナット部27の径よりも大きく形成されている。
【0022】
一対のガイドロッド18は、支持座17Aから前上がりの傾斜姿勢で刈取主フレーム13に向かって延びるように、支持座17Aに固定されている。一対のガイドロッド18には、第一バネ受け19及び第二バネ受け20が摺動可能に支持されている。
【0023】
バネ21は、第一バネ受け19と第二バネ受け20との間に介装されている。バネ21には、伸縮可能なカバー26が外嵌されている。バネ21のうち刈取部3側の端部は、第一バネ受け19に支持されている。バネ21のうち機体フレーム2側の端部は、第二バネ受け20に支持されている。第二バネ受け20と支持座17Aとの間には、シム25が設けられている。
【0024】
ボルト軸22は、開口部17aを貫通する状態で第一バネ受け19と第二バネ受け20とに亘って設けられている。ボルト軸22の頭部22aには、第一バネ受け19がバネ21の付勢力によって当接されている。すなわち、ボルト軸22の頭部22aは、第一バネ受け19に連結されている。また、ボルト軸22の軸部22bのうち少なくとも先端部側には、ネジ加工が施されている。
【0025】
一対の調整ナット23は、ボルト軸22の軸部22bのうち第二バネ受け20よりも機体フレーム2側の部分に螺合されている。一対の調整ナット23を第二バネ受け20の裏面に当接させた状態で、一対の調整ナット23を締付けることにより、バネ21のバネ長さ(初期長さ)を調整することができる。
【0026】
抜止めナット24は、ボルト軸22の軸部22bのうち一対の調整ナット23よりも機体フレーム2側の部分に螺合されている。抜止めナット24は、ナット部27と、フランジ部28(本発明に係る「抜止め部」、「フランジ部」に相当)と、を有している。
【0027】
フランジ部28は、ナット部27を介してボルト軸22に螺合されている。フランジ部28は、ボルト軸22の軸部22bのうち開口部17aよりも機体フレーム2側の部分に設けられている。フランジ部28は、開口部17aの径よりも大きな略円形状の部材、例えば、座金によって構成されている。この場合、フランジ部28(座金)の一側面と他側面に、短ナットと長ナットを夫々溶接で固定することにより、抜止めナット24を構成することができる。なお、フランジ部28の形状は、開口部17aの径よりも大きなものであれば、略円形状に限定されるものではない。
【0028】
〔バランス機構の動作〕
図4に示すように、刈取部3が昇降範囲Rのうち上昇非作業範囲R1に位置すると、揺動操作アーム15が第一バネ受け19から離れるので、バランス機構16が刈取部3に支持作用しない。そして、刈取部3が昇降範囲Rのうち下降作業範囲R2に位置すると、揺動操作アーム15が第一バネ受け19に当接し、バネ21が揺動操作アーム15によって圧縮操作される。こうして、刈取部3がバランス機構16によって弾性的に支持されることにより、刈取部3の接地圧が軽減されるため、刈取部3の地面への突っ込みを抑制することができる。
【0029】
ここで、刈取部3の上昇に伴って、第一バネ受け19がバネ21の付勢力によって刈取部3側に大きく移動した場合でも、フランジ部28が支持座17Aの裏面に当接した状態で開口部17aを刈取部3側に通過しない。すなわち、ボルト軸22が開口部17aから刈取部3側に抜け出す(言い換えると、ボルト軸22が開口部17aを刈取部3側に通過する)のがフランジ部28によって阻止される。これにより、第一バネ受け19の刈取部3側への移動が阻止されるため、第一バネ受け19が一対のガイドロッド18から脱落するのを防止することができる。なお、本実施形態では、バネ21が初期長さの状態で、フランジ部28が支持座17Aの裏面に当接するように、抜止めナット24の位置が設定されている。
【0030】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、フランジ部28がナット部27を介してボルト軸22に螺合されているが、図5に示すように、フランジ部28がボルト軸22に直接螺合されていてもよい。
【0031】
(2)上記実施形態では、調整ナット23と抜止めナット24とが別体に形成されているが、図6に示すように、抜止めナット124として一体に形成されていてもよい。すなわち、フランジ部28が調整ナットと一体に形成されていてもよい。
【0032】
(3)上記実施形態において、バランス機構16は、第二バネ受け20を有しているが、図7に示すように、第二バネ受け20を廃止してもよい。すなわち、バネ21のうち機体フレーム2側の端部が、機台17(支持座17A)に直接支持されていてもよい。この場合、フランジ部28を支持座17Aの裏面に当接させた状態で、抜止めナット24を締付けることにより、バネ21のバネ長さ(初期長さ)を調整することができる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態及び上記別実施形態に限定されるものではなく、その他種々の変更が可能である。また、上記実施形態及び上記別実施形態は、矛盾の生じない限り、適宜組み合わせたり又は省略したりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、刈取部を備える自脱型コンバインに利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
2 機体フレーム(機体)
3 刈取部
16 バランス機構
17 機台
17a 開口部
18 ガイドロッド(ガイド部材)
19 第一バネ受け(バネ受け部材)
21 バネ
22 ボルト軸(軸部材)
23 調整ナット
28 フランジ部(抜止め部、フランジ部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7