(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るコンクリート型枠用断熱成形体、コンクリート型枠装置及びコンクリート施工方法について詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0021】
〔断熱成形体10〕
図1(a)は本発明に係る断熱成形体10の平面図であり、
図1(b)は断熱成形体10の裏面図であり、
図1(c)は断熱成形体10の斜視図である。断熱成形体10は、連接部11Cにおいて第1基材シート部11Aと第2基材シート部11Bとが後述の様に連接して成る基材シート11の一面に、連接部15Cにおいて第1断熱層15Aと第2断熱層15Bとが後述の様に連接して成る断熱層15が積層している。第1基材シート部11Aと第1断熱層15Aとの積層体を第1積層体10Aとし、第2基材シート部11Bと第2断熱層15Bとの積層体を第2積層体10Bとする。
【0022】
基材シート11は、約145mm四方の略正方形の平面視形状を有する第1基材シート部11Aと、約30mm四方の略正方形の平面視形状を有する第2基材シート部11Bとから成る厚さ約12μmのシートである。略直線である第1基材シート部11Aと第2基材シート部11Bとの連接部11Cの中心は、第1基材シート部11Aの外周辺のうちの一辺の中心に一致している。第1基材シート部11Aと第2基材シート部11Bとは連接部11Cにおいて連接している。連接部11Cにおける連接の態様の一例として、第1基材シート部11Aと第2基材シート部11Bとは、基材シート11が連接部11Cに沿って約3mm幅の破断孔11Dを約2.5mmのピッチで有するように、連接している。破断孔11Dの大きさやピッチは、後述の基材シート11の引張強度及び断熱層15の引裂強度によって、断熱成形体10をコンクリート型枠2から取り外す際に基材シート11が連接部11Cにおいて破断しないように、適宜調節することができる。なお、本発明に係る断熱成形体においては、基材シート11に破断孔11Dを設けずに、第1基材シート部11Aと第2基材シート部11Bとが連接部11Cの全てに渡って連続的に連接する構成を有していてもよい。
【0023】
基材シート11には、一例として、二軸延伸ポリエチレンフィルムや二軸延伸ポリプロピレンフィルムといった高い引張強度を有する基材フィルムに保持された合成樹脂クロス層を有するシートが用いられる。合成樹脂クロスとしては、種々の合成樹脂素材のフラットヤーンやスプリットヤーンからなる経糸と緯糸とで織成されて構成されたものを用いることができる。当該合成樹脂素材には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、などがある。当該合成樹脂素材には、更に、変成ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアリレート、その他液晶ポリマーおよびこれらの混合物などがある。
【0024】
基材シート11は、後述の様に断熱成形体10をコンクリート型枠2から取り外す際に、第2積層体10Bを引っ張っても破断しないだけの高い引張強度を有することが好ましい。
【0025】
基材シート11は、更にアルミニウム蒸着層等の遮熱層を有した多層構造を有していてもよい。遮熱層には例えば、輻射熱を反射する効果が高い(反射率が高い)素材であるアルミニウム、ステンレス、ニッケル、銀、銅などの金属系の箔、またはそれら金属を蒸着した金属系反射材蒸着フィルム、を用いることができる。又、遮熱層には、金属系以外の酸化チタン、セラミック粉などを蒸着した非金属系反射材蒸着フィルム、または織布等を用いることもできる。遮熱層は断熱層に比してごく薄い厚さによっても充分な遮熱効果を発現することができるため、断熱成形体10の保温効果を高めるのと同時に断熱成形体10の厚さを薄くすることができる。
【0026】
第1断熱層15Aは、厚さ約15mmで第1基材シート部11Aと同一の平面視形状を有する略直方体であって、第1基材シート部11Aに積層している。第2断熱層15Bは、厚さ約15mmで第2基材シート部11Bと同一の平面視形状を有する略直方体であって、第2基材シート部11Bに積層している。第1断熱層15Aと第2断熱層15Bとは、連接部11Cを通り断熱層15の厚み方向に略平行な面である連接部15Cにおいて連接している。連接部15Cにおける連接の態様の一例として、基材シート11に設けられた破断孔11Dが断熱層15の厚み方向に延伸して成る破断孔15Dが断熱層15内に設けられ、第1断熱層15Aと第2断熱層15Bとが連接部15Cの破断孔15D以外の部分において連接している。このような構造により、断熱成形体10においては、押圧により第1断熱層15Aと第2断熱層15Bとを容易に破断することができる。なお、破断孔15Dは、破断孔11Cと連続する必要はなく、押圧により第1断熱層15Aと第2断熱層15Bとを容易に破断することができるように大きさやピッチを適宜調節することができる。
【0027】
断熱層15には例えば、高い断熱性能を有する発泡性合成樹脂や繊維系断熱材などが用いられる。発泡性合成樹脂は、気泡膜に閉じ込めた空気の断熱性能により断熱効果を発揮することができる。発泡性合成樹脂としては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン(主にポリエチレンやポリプロピレン)の他、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン樹脂等を原料としたものが用いられる。発泡性合成樹脂の製造方法としては、ガスあるいは気化する溶剤を含有した樹脂粒子を予備発泡し更に金型内で発泡融着するビーズ発泡法や、押出機内でガスあるいは気化する溶剤を溶融させ高圧下でシート状等に押出しながら発泡する押出発泡法がある。繊維系断熱材は、細かな繊維の隙間に空気を保持することで、断熱効果を確保することができ、例えば、グラスウールやロックウールなどの無機繊維断熱材と、ポリエステルウール(PETウール)やセルロースファイバーのような有機繊維断熱材とがある。
【0028】
断熱層15は、後述の様に、第1断熱層15Aのコンクリート型枠2への脱着が容易になるように、柔軟性が高いことが好ましい。断熱層15はまた、上述の様に外部からの押圧によって第1断熱層15Aと第2断熱層15Bとが破断しやすい様に、引裂強度が小さいことが好ましい。
【0029】
図2は、第2積層体10Bの回動の様子を説明するための図である。第1断熱層15Aと第2断熱層15Bとが破断した後は、第2積層体10Bは、基材シート11が連接部11Cにおいて屈曲することにより、第1積層体10Aに対して回動可能となる。
図2(a)に示す状態では、基材シート11は連接部11Cにおいて屈曲しておらず、第1積層体10Aと第2積層体10Bとは同一の高さに配置され互いに当接している。一方、
図2(b)に示す状態では、基材シート11は連接部11Cにおいて約180度屈曲しており、第2積層体10Bは、矢印10Cに沿って回動し、基材シート11を介して第1積層体10Aの上に配置されている。第2積層体10Bは、基材シート11が連接部11Cにおいて屈曲することにより、
図2(a)に示す状態と
図2(b)に示す状態との間で回動することができる。
【0030】
次に、
図3を参照して、断熱成形体10の製造方法を説明する。まず、
図3(a)に示す様に、所定のサイズにカットされたシート状の断熱層15に同大の基材シート11を重ね合わせて、例えば接着剤により接着することにより、積層体16を得る。断熱層15及び基材シート11の接着は、少なくとも、後述の様に断熱成形体10をコンクリート型枠2から取り外す際に基材シート11と断熱層15とが乖離しないだけの接着力によって接着する。次に、
図3(b)に示す様に、複数の断熱成形体10の外周面が互いに密に接するように連なった状態を示す点線17において積層体16を所定のカッターにより切断することにより、複数の断熱成形体前駆体10aを切り出す。次に、断熱成形体前駆体10aに、連接部11C及び連接部15Cを通り断熱成形体前駆体10aの厚み方向に平行な約3mm幅の破断孔11D、15Dを、所定の器具により約2.5mmのピッチで設けることにより、断熱成形体10を得る(
図1(c)参照)。
【0031】
〔断熱成形体20〕
図4(a)は本発明に係る他の断熱成形体20の平面図であり、
図4(b)は断熱成形体20の裏面図であり、
図4(c)は断熱成形体20の斜視図である。断熱成形体20の素材及び層構造は断熱成形体10と同様であるのでその説明を省略し、以下では断熱成形体20の形状を説明する。
【0032】
断熱成形体20は、連接部21Cにおいて第1基材シート部21Aと第2基材シート部21Bとが連接して成る基材シート21の一面に、連接部25Cにおいて第1断熱層25Aと第2断熱層25Bとが連接して成る断熱層25が積層している。第1基材シート部21Aと第1断熱層25Aとの積層体を第1積層体20Aとし、第2基材シート部21Bと第2断熱層25Bとの積層体を第2積層体20Bとする。第1積層体20Aは、後述の凹部21Rと凹部25Rとから成り第2積層体20Bと同大の凹部20Rを、第2積層体20Bとの当接面とは反対側の面に有する。
【0033】
基材シート21は厚さ約12μmである。第2基材シート部21Bの平面視形状は約30mm四方の略正方形である。第1基材シート部21Aの平面視形状は、連接部21Cが含まれる外周辺とは反対側の外周辺の略中心に、第2基材シート部21Bの平面視形状と同一の約30mm四方の略正方形の凹部21Rを有した、約145mm四方の略正方形である。連接部21Cの中心は、第1基材シート部21Aの外周辺のうち連接部21Cが含まれる辺、すなわち、凹部21Rとは反対側の辺の中心に一致する。第1基材シート部21Aと第2基材シート部21Bとは連接部21Cにおいて連接している。連接部21Cにおける連接の態様の一例として、第1基材シート部21Aと第2基材シート部21Bとは、基材シート21が連接部21Cに沿って約3mm幅の破断孔21Dを約2.5mmのピッチで有するように、連接している。破断孔21Dの大きさやピッチは、基材シート21の引張強度及び断熱層25の引裂強度によって、断熱成形体20をコンクリート型枠2から取り外す際に基材シート21が連接部21Cにおいて破断しないように、適宜調節することができる。なお、本発明に係る断熱成形体においては、基材シート21に破断孔21Dを設けずに、第1基材シート部21Aと第2基材シート部21Bとが連接部21Cの全てに渡って連続的に連接する構成を有していてもよい。
【0034】
第1断熱層25Aは、厚さ約15mmで第1基材シート部21Aと同一の平面視形状を有する略直方体であって、第1基材シート部21Aに積層している。第2断熱層25Bは、厚さ約15mmで第2基材シート部21Bと同一の平面視形状を有する略直方体であって、第2基材シート部21Bに積層している。第1断熱層25Aは、第2断熱層25Bと同大の凹部25Rを、第2断熱層25Bとの当接面とは反対側の面に有する。第1断熱層25Aと第2断熱層25Bとは、連接部21Cを通り断熱層25の厚み方向に略平行な連接部25Cにおいて連接している。連接部25Cにおける連接の態様の一例として、基材シート21に設けられた破断孔21Dが断熱層25の厚み方向に延伸して成る破断孔25Dが断熱層25内に設けられ、第1断熱層25Aと第2断熱層25Bとが連接部25Cの破断孔25D以外の部分において連接している。このような構造により、断熱成形体20においては、押圧により第1断熱層25Aと第2断熱層25Bとを容易に破断することができる。なお、破断孔25Dは、破断孔21Cと連続する必要はなく、押圧により第1断熱層25Aと第2断熱層25Bとを容易に破断することができるように大きさやピッチを適宜調節することができる。
【0035】
図5は、第2積層体20Bの回動の様子を説明するための図である。第1断熱層25Aと第2断熱層25Bとが破断した後は、第2積層体20Bは、基材シート21が連接部21Cにおいて屈曲することにより、第2積層体20Aに対して回動可能となる。
図5(a)に示す状態では、基材シート21は連接部21Cにおいて屈曲しておらず、第1積層体20Aと第2積層体20Bとは同一の高さに配置され互いに当接している。一方、
図5(b)に示す状態では、基材シート21は連接部21Cにおいて約180度屈曲しており、第2積層体20Bは、矢印20Cに沿って回動し、基材シート21を介して第1積層体20Aの上に配置されている。第2積層体20Bは、作業者の手等によるわずかな力で、基材シート21が連接部21Cにおいて屈曲することにより、
図5(a)に示す状態と
図5(b)に示す状態との間で回動することができる。
【0036】
次に、
図6を参照して、断熱成形体20の製造方法を説明する。まず、
図6(a)に示す様に、所定のサイズにカットされたシート状の断熱層25に同大の基材シート21を重ね合わせて、例えば接着剤により接着することにより、積層体26を得る。断熱層25及び基材シート21の接着には、少なくとも、後述の様に断熱成形体20をコンクリート型枠2から取り外す際に基材シート21と断熱層25とが乖離しないだけの接着力によって接着する。次に、
図6(b)に示す様に、複数の断熱成形体20の外周面が互いに密に接するように連なった状態を示す点線27において積層体26を所定のカッターにより切断することにより、複数の断熱成形体前駆体20aを切り出す。次に、断熱成形体前駆体20aに、連接部21C及び連接部25Cを通り断熱成形体前駆体20aの厚み方向に平行な約3mm幅の破断孔21D、25Dを、所定の器具により約2.5mmのピッチで設けることにより、断熱成形体20を得る(
図4(c)参照)。
【0037】
上述の通り、断熱成形体20の第1積層体20Aは、第2積層体20Bと同大の凹部20Rを、第2積層体20Bとの当接面とは反対側の面に有する。したがって、
図6(b)の27Aで囲った部分に示す様に、1つの断熱成形体前駆体20aの第2積層体20Bは、隣接する断熱成形体前駆体20aの凹部20cに隙間無く当接した形状を有している。したがって、点線27において積層体26をカットしても断熱成形体前駆体20aに含まれない無駄な部分が生じることはないため、材料を最大限に活用でき、製造コストを低減することが可能となる。
【0038】
〔断熱成形体30〕
図7(a)は本発明に係る更に他の断熱成形体30の平面図であり、
図7(b)は断熱成形体30の裏面図であり、
図7(c)は断熱成形体30の斜視図である。断熱成形体30の素材及び層構造は断熱成形体10と同様であるのでその説明を省略し、以下では断熱成形体30の形状を説明する。
【0039】
断熱成形体30は、連接部31Cにおいて第1基材シート部31Aと第2基材シート部31Bとが連接して成る基材シート31の一面に、連接部35Cにおいて第1断熱層35Aと第2断熱層35Bとが連接して成る断熱層35が積層している。第1基材シート部31Aと第1断熱層35Aとの積層体を第1積層体30Aとし、第2基材シート部31Bと第2断熱層35Bとの積層体を第2積層体30Bとする。第1積層体30Aは第2積層体30Bが内接する貫通孔30Rを第1積層体30Aの略中心に有する。
【0040】
基材シート31は厚さ約12μmである。第2基材シート部31Bの平面視形状は約45mm四方の略正方形である。第1基材シート部31Aの平面視形状は、約145mm四方の略正方形の中心に、第2基材シート部31Bの平面視形状と同一の約45mm四方の略正方形の孔31R(
図8(b)参照)が、連接部31Cが外周辺の1つと平行となるように設けられた形状を有している。第1基材シート部31Aと第2基材シート部31Bとは連接部31Cにおいて連接している。当該連接の態様の一例として、第1基材シート部31Aと第2基材シート部31Bとは、基材シート31が連接部31Cに沿って約3mm幅の破断孔31Dを約2.5mmのピッチで有するように、連接している。破断孔31Dの大きさやピッチは、基材シート31の引張強度及び断熱層35の引裂強度によって、断熱成形体30をコンクリート型枠2から取り外す際に基材シート31が連接部31Cにおいて破断しないように、適宜調節することができる。なお、本発明に係る断熱成形体においては、基材シート31に破断孔31Dを設けずに、第1基材シート部31Aと第2基材シート部31Bとが連接部31Cの全てに渡って連続的に連接する構成を有していてもよい。
【0041】
第1断熱層35Aは、厚さ約15mmで第1基材シート部31Aと同一の平面視形状を有する略直方体であって、第1基材シート部31Aに積層している。第2断熱層35Bは、厚さ約15mmで第2基材シート部31Bと同一の平面視形状を有する略直方体であって、第2基材シート部31Bに積層している。第1断熱層35Aは、第2断熱層35Bが内接する貫通孔35R(
図8(b)参照)を第1断熱層35Aの略中心に有する。第1断熱層35Aと第2断熱層35Bとは、連接部31Cを通り断熱層35の厚み方向に略平行な連接部35Cにおいて連接し、第2断熱層35Bの連接部35C以外の側面においては連接せずに当接している。連接部35Cにおける連接の態様の一例として、基材シート31に設けられた破断孔31Dが断熱層35の厚み方向に延伸して成る破断孔35Dが断熱層35内に設けられ、第1断熱層35Aと第2断熱層35Bとが連接部35Cの破断孔35D以外の部分において連接している。このような構造により、断熱成形体30においては、押圧により第1断熱層35Aと第2断熱層35Bとを容易に破断することができる。なお、破断孔35Dは、破断孔31Cと連続する必要はなく、押圧により第1断熱層35Aと第2断熱層35Bとを容易に破断することができるように大きさやピッチを適宜調節することができる。
【0042】
図8は、第2積層体30Bの回動の様子を説明するための図である。第1断熱層35Aと第2断熱層35Bとが破断した後は、第2積層体30Bは、基材シート31が連接部31Cにおいて屈曲することにより、第1積層体30Aに対して回動可能となる。
図8(a)に示す状態では、基材シート31は連接部31Cにおいて屈曲しておらず、第1積層体30Aと第2積層体30Bとは同一の高さに配置され互いに当接している。一方、
図8(b)に示す状態では、基材シート31は連接部31Cにおいて約180度屈曲しており、第2積層体30Bは、矢印30Cに沿って回動し、基材シート31を介して第1積層体30Aの上に配置されている。上述の通り、断熱層35は高い柔軟性を有するため、作業者は、第1積層体30Aと第2積層体30Bとの間に指を押し込むなどして、第2積層体30Bを基材シート31側に引っ張り上げることができる。そして、第2積層体30Bは、作業者の手等によるわずかな力で、基材シート31が連接部31Cにおいて屈曲することにより、
図8(a)に示す状態と
図8(b)に示す状態との間で回動することができる。
【0043】
次に、
図9を参照して、断熱成形体30の製造方法を説明する。まず、
図9(a)に示す様に、所定のサイズにカットされたシート状の断熱層35に同大の基材シート31を重ね合わせて、例えば接着剤により接着することにより、積層体36を得る。断熱層35及び基材シート31の接着には、少なくとも、後述の様に断熱成形体30をコンクリート型枠2から取り外す際に基材シート31と断熱層35とが乖離しないだけの接着力によって接着する。次に、
図9(b)に示す様に、複数の断熱成形体30が互いに上下左右方向に密に接するように連なった状態を示す点線37Aにおいて積層体36を所定のカッターにより切断することにより、複数の断熱成形体前駆体30aを切り出す。次に、断熱成形体前駆体30aそれぞれについて、第1積層体30Aと第2積層体30Bとの連接部のうち連接部31C及び連接部35Cを除いた面を示す点線37Bに切り込みを入れ、当該面において第1積層体30Aと第2積層体30Bとを破断する。次に、断熱成形体前駆体30aに、連接部31C及び連接部35Cを通り断熱成形体前駆体30aの厚み方向に平行な約3mm幅の破断孔31D、35Dを、所定の器具により約2.5mmのピッチで設けることにより、断熱成形体30を得る(
図7(c)参照)。
【0044】
断熱成形体30は略正方形の平面視形状を有するため、
図9(b)に示す様に、断熱成形体前駆体30a同士は互いに隙間無く当接している。よって、点線37Aにおいて積層体36をカットしたとき、断熱成形体前駆体30aに含まれない無駄な部分が生じることはないため、材料を最大限に活用でき、製造コストを低減することが可能となる。更に、断熱成形体30は
図8(a)に示す状態において略直方体の外面を有するため、複数の断熱成形体30を収納する際の嵩張りを最小限に抑えることが可能となる。
【0045】
〔断熱成形体40〕
図10(a)は本発明に係る更に他の断熱成形体40の平面図であり、
図10(b)は断熱成形体40の裏面図であり、
図10(c)は断熱成形体40の斜視図である。
【0046】
断熱成形体40は、上から順に、基材シート41と、断熱層45と、基材シート42とが積層して形成されている。基材シート41及び42は基材シート11と同一の素材から成り、断熱層45は断熱層15と同一の素材から成る。断熱成形体40のうち、第1基材シート部41Aと、第1断熱層45Aと、第1基材シート部42Aとの積層体を第1積層体40Aとし、第2基材シート部41Bと、第2断熱層45Bと、第2基材シート部42Bとの積層体を第2積層体40Bとする。第1積層体40Aは第2積層体40Bが内接する貫通孔40Rを第1積層体40Aの略中心に有する。
【0047】
基材シート41は厚さ約12μmである。第2基材シート部41Bの平面視形状は約45mm四方の略正方形である。第1基材シート部41Aの平面視形状は、約145mm四方の略正方形の中心に、第2基材シート部41Bの平面視形状と同一の約45mm四方の略正方形の孔41R(
図11(b)参照)が、連接部41Cが外周辺の1つと平行となるように設けられた形状を有している。第1基材シート部41Aと第2基材シート部41Bとは連接部41Cにおいて、破断部分を有さず連続的に連接している。
【0048】
基材シート42は、厚さ約12μmであり、且つ、基材シート41と同様に、第1基材シート部42Aと第2基材シート部42Bとが連接部42Cで連接して形成されている。
【0049】
第1断熱層45Aは、厚さ約15mmで第1基材シート部41A、42Aと同一の平面視形状を有する略直方体であって、第1基材シート部41A及び42Aの間に積層している。第2断熱層45Bは、厚さ約15mmで第2基材シート部41Bと同一の平面視形状を有する略直方体であって、第2基材シート部41B及び42Bの間に積層している。第1断熱層45Aは、第2断熱層45Bが内接する貫通孔45R(
図11(b)参照)を第1断熱層45Aの略中心に有する。第1断熱層45Aと第2断熱層45Bとは、連接部41C及び42Cを通り断熱層45の厚み方向に略平行な連接部45Cにおいて、破断部分を有さず連続的に連接し、第2断熱層45Bの連接部45C以外の側面においては、連接せずに互いに当接している。
【0050】
図11は、第2積層体40Bの回動の様子を説明するための図である。第2積層体40Bは、基材シート41が連接部41Cにおいて、基材シート42が連接部42Cにおいて、それぞれ屈曲することにより、第1積層体40Aに対して回動可能となる。
図11(a)に示す状態では、基材シート41は連接部41Cにおいて屈曲しておらず、又、基材シート42は連接部42Cにおいて屈曲しておらず、第1積層体40Aと第2積層体40Bとは同一の高さに配置され互いに当接している。一方、
図11(b)に示す状態では、基材シート41は連接部41Cにおいて約45度屈曲しており、又、基材シート42は連接部42Cにおいて約45度屈曲しており、第2積層体40Bは、矢印40Cに沿って回動している。上述の通り、断熱層45は高い柔軟性を有するため、作業者は、第1積層体40Aと第2積層体40Bとの間に指を押し込むなどして、第2積層体40Bを基材シート41側又は42側に引っ張り上げることができる。そして、第2積層体40Bは、作業者の手等によるわずかな力で、基材シート41が連接部41Cにおいて屈曲し、基材シート42が連接部42Cにおいて屈曲することにより、
図11(a)に示す状態と
図11(b)に示す状態との間で回動することができる。
【0051】
次に、
図12を参照して、断熱成形体40の製造方法を説明する。まず、
図12(a)に示す様に、所定のサイズにカットされたシート状の断熱層45を挟むようにして、同大の基材シート41及び42を重ね合わせて、例えば接着剤によりこれらを接着することにより、積層体46を得る。断熱層45及び基材シート41、42の接着には、少なくとも、後述の様に断熱成形体40をコンクリート型枠2から取り外す際に基材シート41、42と断熱層45とが乖離しないだけの接着力によって接着する。次に、
図12(b)に示す様に、複数の断熱成形体40が互いに上下左右方向に密に接するように連なった状態を示す点線47Aにおいて積層体46を所定のカッターにより切断することにより、複数の断熱成形体前駆体40aを切り出す。次に、断熱成形体前駆体40aそれぞれについて、第1積層体40Aと第2積層体40Bとの連接部のうち連接部41C、42C及び45Cを除いた面を示す点線47Bに切り込みを入れ、当該面において第1積層体40Aと第2積層体40Bとを破断する。以上より、断熱成形体40を得る。
【0052】
断熱成形体40は略正方形の平面視形状を有するため、
図12(b)に示す様に、断熱成形体前駆体40a同士は互いに隙間無く当接している。よって、点線47Aにおいて積層体46をカットしたとき、断熱成形体前駆体40aに含まれない無駄な部分が生じることはないため、材料を最大限に活用でき、製造コストを低減することが可能となる。更に、断熱成形体40は
図11(a)に示す状態において略直方体の外面を有するため、複数の断熱成形体40を収納する際の嵩張りを最小限に抑えることが可能となる。
【0053】
断熱成形体40は、基材シート41に加えて基材シート42が断熱層45に積層されている為、断熱成形体10、20、30等に比して遮熱効果が向上している。断熱成形体40は更に、第1積層体40Aと第2積層体40Bとが連接部41C、42C及び45Cにおいて連続的に連接している為、断熱成形体10、20、30等に比して、第1積層体40Aと第2積層体40Bとの連接の強度が向上している。その結果、断熱成形体10、20、30等に比して、より強い力をかけて断熱成形体40をコンクリート型枠2から取り外すことが可能となる。
【0054】
以上、本発明に係る断熱成形体の例として断熱成形体10、20、30、40を説明したが、本発明に係る断熱成形体の形状はそれらの形状に限定されない。本発明に係る断熱成形体の第1積層体は、コンクリート型枠に設けられた枡の形状に合わせて、例えば長方形、台形、六角形等の多角形、円などの平面視形状を有する立体形状を有していてもよい。又、本発明に係る断熱成形体の第2積層体は、回動によって枡内に収まる形状であればよく、例えば長方形、台形、六角形等の多角形、円などの平面視形状を有する立体形状を有していてもよい。更に、本発明に係る断熱成形体においては、第1積層体に2つ又はそれ以上の数の第2積層体が連接していてもよい。
【0055】
〔コンクリート型枠装置1〕
次に、
図13及び
図14を参照して、本発明に係るコンクリート型枠装置1を説明する。コンクリート型枠装置1は、コンクリート型枠2と、コンクリート型枠2に取り付けられた断熱成形体10とから成る。
【0056】
図13は、コンクリート型枠2の斜視図である。コンクリート型枠2は、鋼製面板2aのコンクリート打設側とは反対の背面側に各リブが立設された構造を有する。具体的には、鋼製面板2aの外周縁に沿って立つ周辺リブ(縦リブ2b、横リブ2c)と、同周辺リブ2b、2cで囲まれた枠内を縦、横方向に仕切る中リブ(中縦リブ2d、中横リブ2e)とが設けられている。各リブ2b、2c、2d、2eには、ボルトやクリップ等の各種取付具を取り付けるための取付孔2fが設けられる。
【0057】
鋼製面板2の寸法は、一例として幅×長さが30×90cmの大きさである。幅30cmの面板2aの中央部には1本の中縦リブ2dが配置され、又、長さ90cmの面板2aの長手方向には中横リブ2eを、両端から15cmずつの位置に1本ずつ配置して両端寄りに15cm×15cmの正方形の枡4、4が形成される。更に、長手方向の中間には中横リブ2eを配置して、15cm×30cmの長方形の枡4’を2個ずつ2列に形成した構成とされている。各リブの面板2aから測った高さは約55mmである。また、各取付孔2fの中心の面板2aから測った高さは約22mmである。なお、面板2aの寸法は任意のものでよく、断熱成形体10の寸法に合わせて、断熱成形体10を嵌め込むことができる寸法に各リブを配置することができる。
【0058】
図14は本発明に係るコンクリート型枠装置1の斜視図である。コンクリート型枠2に設けられた正方形の枡4には、
図2に示す状態の断熱成形体10が1つずつ、第2積層体10Bを中縦リブ2dに当接させた状態で嵌め込まれている。各枡4の寸法は、第1積層体10Aの平面視形状の寸法と同一(15cm×15cm)であるので、各枡4には隙間が生じることなく断熱成形体10が嵌め込まれており、断熱成形体10の高い断熱効果を生かすことができる。また、コンクリート型枠2に設けられた長方形の枡4’には、
図4(b)に示す状態の断熱成形体10が2つずつ、第2積層体10Bを中縦リブ2dに当接させた状態で嵌め込まれている。各枡4’の寸法は、第1積層体10Aの平面視形状を2つ横に並べた寸法と同一(15cm×30cm)であるので、各枡4’には隙間が生じることなく断熱成形体10が嵌め込まれており、断熱成形体10の高い断熱効果を生かすことができる。
【0059】
第1積層体10Aの厚さは、各リブ2b、2c、2d、2eに設けられた取付孔2fの面板2aから測った高さよりも小さい。その為、
図14に示す様に、断熱成形体10がコンクリート型枠2に取り付けられている状態において、第2積層体10Bが当接するリブに設けられた取付孔2f以外の取付孔2fは、断熱成形体10によって隠れることはない。したがって、取付孔2fにボルトやクリップが取り付けられている場合であっても、枡4、4’に第1積層体10Aを嵌め込むことで、断熱成形体10をコンクリート型枠2に取り付けることが可能である。
【0060】
断熱成形体10は、上述の通り基材シート11が高い引張強度を有するため、第2積層体10Bを作業者の手等によって保持したまま引っ張る事で簡単にコンクリート型枠2から取り外すことができる。すなわち、第2積層体10Bが引っ張られても、基材シート11は破断することなく、基材シート11とこれに接着された第1積層体10Aと第2積層体10Bとが一体となって、コンクリート型枠2から取り外される。
【0061】
〔コンクリートの施工方法〕
次に、
図15を参照して、本発明に係るコンクリートの施工方法を説明する。まず、
図15(a)に示す様に、面板2aの背面(面板2aの各リブ2b、2c、2d、2eが設けられた面とは反対側の面)がコンクリート打設空間7に対向するように、複数のコンクリート型枠2をコンクリート打設空間7の外周面に設置する。コンクリート型枠2の配置の仕方は、コンクリート打設空間7の形状等によって適当なものを選んでよい。このとき、取付孔2fにクリップ40を取り付けて、コンクリート型枠2同士を固定する。コンクリート型枠2にバタ材(不図示)を取り付けることによって、コンクリート型枠2同士の接合を補強してもよい。
【0062】
次に、
図15(b)に示す様に、コンクリート打設空間7にコンクリート3を打設する。打設されたコンクリート3は、セメントの水和反応による発熱によって所定の期間温度が上昇する。その際、
図16に示す様に、コンクリート3の中心部の温度6aの上昇度合いが最も高く、表面に近づくほど、外気への放熱による影響で上昇度合いは小さくなり、表面の温度6bで上昇度合いは最も低くなる。また、コンクリート3の表面の温度6bは、中心部の温度6aよりも早くピークに達する。コンクリート3の温度上昇の度合いや期間は、コンクリート成分の配合や、温度、湿度等の施工条件に左右される。
【0063】
コンクリート3を打設した後で、コンクリート3の表面の温度6bがピークに達するTよりも前に、
図15(c)に示す様に、コンクリート型枠2の枡4、4’内に断熱成形体10を嵌め込む。コンクリート3の表面の温度6bがピークに達したか否かについては、周知のセンサー等でコンクリート温度を検出する事によって判定してもよいし、事前のシミュレーションによって得た温度上昇期間を過ぎたか否かによって判定してもよい。打設したコンクリート3の露出した部分には、保温効果を補完するために、断熱効果や遮熱効果の高いシートを適宜かけるなどしてもよい。
【0064】
その後、コンクリート3が硬化するのに充分な時間が経過したら、コンクリート型枠装置1を撤去する。その際、まず断熱成形体10が嵌め込まれた状態のままのコンクリート型枠2同士を解体し、その後、各コンクリート型枠2から断熱成形体10を取り外してもよい。或いは、コンクリート型枠2が設置されたまま、先に断熱成形体10をコンクリート型枠2から取り外し、その後コンクリート型枠2同士を解体してもよい。コンクリート型枠装置1を撤去した後、所望のコンクリート構造体が得られる。
【0065】
コンクリート型枠装置1においては、コンクリート3を打設した後で、コンクリート3の表面の温度6bがピークに達するTよりも前に断熱成形体10をコンクリート型枠2に取り付けた。したがって、コンクリート3の中心部の温度6aと表面の温度6bとの温度差が大きくなるのを抑え、温度ひび割れを抑止できる。同時に、断熱成形体10の取付けによりコンクリート3の保温効果が増すことで、コンクリート3に対する保温養生を充分に行うことができ、硬化後のコンクリート3の強度を向上させることが可能となる。
【0066】
なお、上述の説明においてはコンクリート型枠装置1について断熱成形体10を備える例を説明したが、断熱成形体10に代えて断熱成形体20、30、40その他の本発明に係る断熱成形体を用いても同様の効果が得られる。また、それら複数種の断熱成形体を任意に組み合わせることによっても同様の効果が得られる。