【文献】
Mume, Eskender; Lynch, Daniel E.; Uedono, Akira; Smith, Suzanne V.,Investigating the binding properties of porous drug delivery systems using nuclear sensors (radiotracers) and positron annihilation lifetime spectroscopy-Predicting conditions for optimum performance,Dalton Transactions,2011年,40(23),6278-6288
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
担体剤が、抗体または断片、抗体の可変領域またはナノボディ、タンパク質、ペプチド、炭水化物、核酸、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖、リポソーム、siRNA、RNA、DNA、ssDNA、ヌクレオチド、量子ドット、マイクロ粒子、ナノ粒子、生体分子認識層、ポリマー、細胞成分、デンドリマー、多糖、アミノ酸、ミセル、ナノゲル、マイクロゲル、ナノチューブ、薄膜、酵素、オリゴペプチドおよびステロイドからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
金属イオンが、Cu、Tc、Ga、In、Co、Re、Fe、Au、Ag、Rh、Pt、Bi、Cr、W、Ni、V、Pb、Ir、Zn、Cd、Mn、Ru、Pd、Hg、Zr、Sc、Rb、SrおよびTiからなる群から選択される、請求項12または13に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本用途の主題に関して本発明者らは、クリプタンド化合物またはクリプテート化合物が別の分子とカップリングしている、新規化合物を作製する努力を行ってきた。しかし、本発明者らは、所望の生成物を形成するためにクリプテート化合物からテンプレート金属(例えば、Cu(II))を除去するのに必要な還元条件のために、目的化合物の多くを作製するための従来技術の反応機構を使用することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、式(I)を有する第1の化合物
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、
R
1およびR
2はそれぞれ、水素、ハロゲン、CH
3、COOH、NO
2、CH
2OH、H
2PO
4、HSO
3、CN、C(=O)NH
2およびCHOからなる群から独立して選択され、
n=2、3または4であり、
Xはそれぞれ独立して選択され、NHまたはSであるが、但し、少なくとも1つのXはNHであり、
Zはそれぞれ任意選択の間隔基(spacing group)であり、存在する場合、Zは、任意選択で置換されているC
1〜C
10アルキル、任意選択で置換されているアリール、および任意選択で置換されている複素環からなる群から独立して選択され、
Yはそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されているアラルキル、任意選択で置換されている複素環、イソチオシアネート、シアノ、-NH-COCH
2Br、-COOR'および-NH-CO-CH=CH-COOR'からなる群から独立して選択され、R'は水素、任意選択で置換されているアルキル、または任意選択で置換されているアリールであるが、但し、少なくとも1つのYは第一級アミンであるか、またはそれを含有する)と、
カルボニル基(例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸またはエステル)を含有する第2の化合物とをカップリングする方法を提供する。本方法は、
式(I)を有する化合物を、実質的にすべてのカップリングが第一級アミンにおいて起こる反応条件にさらすステップ、および
カルボニル基を含有する第2の化合物を、式(I)を有する化合物と反応させカップリングさせるステップを含む。
【0015】
本発明者らは、実質的にカップリングのすべてがクリプタンド化合物の第一級アミンにしか起こらないようにするために、クリプタンド化合物(例えば、diamsarまたは式(I)の他の化合物)がテンプレート金属(例えばCu(II))を含有する必要がないことを驚くべきことに発見した。本発明者らは、シッフ塩基縮合反応を行わせる条件を、都合よく使用されている反応条件から変更することにより、実質的にカップリング反応のすべてが、第一級アミンにしか起こらないことを発見した。この分野における従来技術はすべて、金属錯体、または第二級アミンを不活性化するための保護基のどちらか一方を使用することを教示しているので、この発見はとりわけ予期しないものであった。
【0016】
本発明の方法は、金属錯体または第二級アミンを不活性化するための保護基の使用を必要とせず、また式(I)のクリプタンド(またはクリプテート)化合物と別の化合物とをカップリングする従来技術の方法よりも少ないステップしか必要としない。したがって、本発明の方法は、より迅速に、かつ従来技術の方法よりも安価に行うことができる。本発明者らは、本発明の方法が、カップリングされたクリプタンドまたはクリプテート化合物を製造する際の消耗品の費用および所要時間に、認識可能なほどの削減をもたらし得ることを見いだした。本発明者らはまた、本発明の方法は、一置換クリプタンド化合物またはクリプテート化合物の収率が、従来技術の方法(最大約30%)と比較すると、より高くすることができる(最大約45%)ことを驚くべきことに見いだした。
【0017】
本発明の方法では、テンプレート金属(例えば、Cu(II))を除去する必要がないので、テンプレート金属を除去するための従来技術の方法により必要な還元反応を次に行う必要がない。したがって、こうした還元反応の間に還元されるであろう官能基を含有するカップリングされたクリプタンド化合物を、今や容易に合成することができる。
【0018】
式(I)の化合物は、金属イオンと錯体形成されなくてもよい。式(I)の化合物は、金属を含まない化合物とすることができる。
【0019】
本発明はまた、第1の態様の方法により作製される生成物を包含する。該生成物は、金属イオンを用いて錯体形成されなくてもよい。該生成物は、金属を含まなくてもよい。
【0020】
一実施形態では、式(Ia)を有する第1の化合物
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、
R
1およびR
2はそれぞれ、水素であり、
n=2であり、
XはそれぞれNHであり、
Zはそれぞれ存在せず、
Yはそれぞれ、NH
2である)と
アルデヒド基を含有する第2の化合物とをカップリングする方法が提供される。本方法は、
式(Ia)を有する化合物を、実質的にすべてのカップリングが第一級アミンにおいて起こる反応条件にさらすステップ、および
アルデヒド基を含有する第2の化合物を、式(Ia)を有する化合物と反応させカップリングさせるステップを含む。
【0023】
実質的にすべてのカップリングが第一級アミンにおいて起こる条件は、pH約4.5を含み得る。反応は、プロトン性溶媒、例えば水性および/またはアルコール性溶媒中で行うことができる。
【0024】
別の実施形態では、式(Ib)を有する第1の化合物
【0025】
【化5】
【0026】
(式中、
R
1およびR
2はそれぞれ、水素であり、
n=2であり、
XはそれぞれNHであり、
一方のZは存在せず、他方のZは、-(p-C
6H
4)-CH
2NHであり、
Yはそれぞれ、NH
2である)と
-COOH基を含有する第2の化合物とをカップリングする方法が提供される。本方法は、
式(Ia)を有する化合物を、実質的にすべてのカップリングが-(p-C
6H
4)-CH
2NHに結合している第一級アミンにおいて起こる反応条件にさらすステップ、および
-COOH基を含有する第2の化合物を、式(Ib)を有する化合物と反応させカップリングさせるステップを含む。
【0027】
したがって、第2の態様では、本発明は、式(II)を有する化合物
【0028】
【化6】
【0029】
(式中、
R
1およびR
2はそれぞれ、水素、ハロゲン、CH
3、COOH、NO
2、CH
2OH、H
2PO
4、HSO
3、CN、C(=O)NH
2およびCHOからなる群から独立して選択され、
n=2、3または4であり、
Xはそれぞれ独立して選択され、NHまたはSであるが、但し、少なくとも1つのXはNHであり、
Zはそれぞれ任意選択の間隔基であり、存在する場合、Zは、任意選択で置換されているC
1〜C
10アルキル、任意選択で置換されているアリール、および任意選択で置換されている複素環からなる群から独立して選択され、
Aはそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されているアラルキル、任意選択で置換されている複素環、イソチオシアネート、シアノ、-NH-COCH
2Br、-COOR'、-NHCR
3R
4R
5および-NH-CO-CH=CH-COOR'からなる群から独立して選択されるが、但し、少なくとも1つのAは-NHCR
3R
4R
5であるかまたはそれを含有し、
R'は水素、任意選択で置換されているアルキル、および任意選択で置換されているアリールからなる群から選択され、
R
3およびR
4は、H、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
5は、還元条件下で還元される官能基または官能基を含有する化学種である)
を提供する。
【0030】
式(II)の化合物はR
5を含有し、R
5は、従来技術によりカップリングされたクリプテート化合物からテンプレート金属(例えばCu(II))を除去するのに必要な還元条件下で還元されるであろう官能基または官能基を含有する化学種である。官能基または官能基を含有する化学種は、パラジウム/炭もしくは水素化ホウ素ナトリウムにより、またはその両方により還元可能なものとすることができる。カップリングされたクリプテート化合物からテンプレート金属を除去する際、官能基が還元されるので、こうした化合物は、カップリングされたクリプテート化合物がCu(II)などのテンプレート金属を含有する中間体を経て直接合成することは不可能であろう。R
5は、例えば、アルケンおよびアルキン、ニトロ基、マレイミド基、フタルイミド基、または他のある還元性基とすることができる、またはそれらを含有することができる。
【0031】
式(II)の化合物は、金属イオンと錯体形成されていなくてもよい。式(II)の化合物は、金属を含まない化合物とすることができる。式(II)の化合物は、錯体形成していなくてもよい。あるいは、それは、場合により1つまたは複数の上記式のXにより金属原子または金属イオンと錯体形成していてもよい。
【0032】
一部の実施形態では、R
5は、還元条件下で還元されるであろう官能基により置換されている、任意選択で置換されているアルキル、アリールまたは複素環である。特定の実施形態では、R
5は、還元条件下で還元される官能基により置換されている、任意選択で置換されているアルキル、アリールまたは複素環であり、R
1およびR
2はそれぞれ水素であり、n=2であり、XはそれぞれNHである。
【0033】
一部の実施形態では、R
5は以下の構造
【0034】
【化7】
【0035】
(式中、R
OXは還元条件下で還元される官能基である)
を有する。
【0036】
特定の実施形態では、R
5は、上記の構造を有しており、R
1およびR
2はそれぞれ、水素であり、n=2であり、XがそれぞれNHである。
【0037】
一部の実施形態では、R
5中の官能基は、-NO
2、-N
3、-C≡CH、-C≡N、-O-(CR
1R
2)
m-NH
2、-(CR
1R
2)
m-SH、-C(=O)-O-CH
3、-C(=O)-O-(CR
1R
2)
m-CH
3、
【0038】
【化8】
【0039】
(式中、R
1およびR
2は、上で定義した通りであり、mは1〜8である)
からなる群から選択される。
【0040】
一部の実施形態では、R
1、R
2、R
3およびR
4はHであり、nは2であり、XはそれぞれNHである。
【0041】
本発明はまた、第1の態様の方法により作製される、第2の態様(または以下の第3の態様)による化合物も包含する。
【0042】
第3の態様では、本発明は、以下の構造
【0043】
【化9-1】
【化9-2】
【化9-3】
【化9-4】
【化9-5】
【0044】
(式中、nは、1〜5の整数であり、上記の構造中の「Cl、Br、I」という引用は、示した(パラ)位、またはメタ位もしくはオルト位にCl、BrまたはI原子を有する異なる化合物のことを指す)
のいずれか1つを有する化合物を提供する。
【0045】
本発明はまた、上で挙げた構造と類似の構造を有するが、クリプタンド化合物中のキレートを形成している原子を連結しているエチレン基が、プロピレン基またはブチレン基(すなわち、nは式(I)の化合物において3または4である)により置き換えられている化合物も提供する。
【0046】
本発明はまた、上で挙げた構造と類似の構造を有するが、クリプタンド化合物中のキレートを形成している1〜5個の間(例えば、1、2、3、4または5個)のアミンが、S(すなわち、式(I)の化合物において1〜5個の間のXがSである)により置き換えられている化合物も提供する。
【0047】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法により生成される、一置換クリプタンドまたはクリプテート化合物を提供する。本発明の第4の態様の例示的な化合物は、以下である。
【0048】
【化10】
【0049】
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法により生成される、二置換クリプタンドまたはクリプテート化合物を提供する。本発明の第5の態様の例示的な化合物は、以下である。
【0050】
【化11】
【0051】
第6の態様では、本発明は、少なくとも1種の担体剤(例えば、分子認識単位)にコンジュゲートされている本発明の第2から第5の態様による少なくとも1つの化合物を含む、コンジュゲート化合物を提供する。
【0052】
本発明の第2から第6の態様の実施形態では、本化合物は金属イオンと錯体形成している。他の実施形態では、本化合物は、金属イオンと錯体形成されていない。特に、本化合物が金属イオンと錯体形成している場合、該化合物のクリプタンド環系のヘテロ原子に錯体形成することができる。
【0053】
第7の態様では、本発明は、本発明の第2から第6の態様による化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0054】
第8の態様では、本発明は、対象における疾患の診断方法、放射線イメージング方法、または疾患の放射線治療方法を提供する。本方法は、有効量の本発明の第2から第6の態様による化合物もしくはその薬学的に許容される塩の放射能標識錯体、または本発明の第7の態様による医薬組成物を対象に投与するステップを含む。
【0055】
第9の態様では、本発明は、疾患の診断、放射線イメージング、または疾患の放射線治療のための医薬の製造における、本発明の第2から第6の態様による化合物またはその薬学的に許容される塩の放射能標識錯体の使用を提供する。
【0056】
第10の態様では、本発明は、対象における疾患の診断方法、イメージング方法、または疾患の治療方法を提供する。本方法は、有効量の本発明の第2から第6の態様による化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または本発明の第7の態様による医薬組成物を対象に投与するステップを含む。
【0057】
第11の態様では、本発明は、疾患の診断、イメージング、または疾患の治療のための医薬の製造における、本発明の第2から第6の態様による化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0058】
第12の態様では、本発明はキットを提供する。キットは、第1の容器に本発明の第2から第6の態様による化合物またはその薬学的に許容される塩、および第2の容器に金属イオンを含有する化学種を含む。
【発明を実施するための形態】
【0059】
上で議論した通り、本発明は、式(I)を有する第1の化合物
【0061】
(式中、
R
1およびR
2はそれぞれ、水素、ハロゲン、CH
3、COOH、NO
2、CH
2OH、H
2PO
4、HSO
3、CN、C(=O)NH
2およびCHOからなる群から独立して選択され、
n=2、3または4であり、
Xはそれぞれ独立して選択され、NHまたはSであるが、但し、少なくとも1つのXはNHであり、
Zはそれぞれ任意選択の間隔基であり、存在する場合、Zは、任意選択で置換されているC
1〜C
10アルキル、任意選択で置換されているアリール、および任意選択で置換されている複素環からなる群から独立して選択され、
Yはそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されているアラルキル、任意選択で置換されている複素環、イソチオシアネート、シアノ、-NH-COCH
2Br、-COOR'および-NH-CO-CH=CH-COOR'からなる群から独立して選択され、R'は水素、任意選択で置換されているアルキル、または任意選択で置換されているアリールであるが、但し、少なくとも1つのYは第一級アミンであるか、またはそれを含有する)と、
カルボニル基を含有する第2の化合物とをカップリングする方法を提供する。本方法は、
式(I)を有する化合物を、実質的にすべてのカップリングが第一級アミンにおいて起こる反応条件にさらすステップ、および
カルボニル基を含有する第2の化合物を、式(I)を有する化合物と反応させカップリングさせるステップ
を含む。
【0062】
本発明の方法には、式(I)の化合物が、カルボニル基(例えば、アルデヒドまたはケトン)を含有する第2の化合物とイミンの形成を経てカップリングするシッフ塩基縮合が含まれる。有利には、本発明の方法は、クリプタンド化合物においてテンプレート金属(例えば、Cu(II))の非存在下で行うことができる。本方法は、金属または金属イオンと錯体形成していない式(I)の化合物、特に、該化合物のクリプタンド環系が、金属または金属イオンと錯体形成していない化合物を使用して行うことができる。本方法には、式(I)の化合物が、カルボニル基(例えば、カルボン酸)を含有する第2の化合物とアミドの形成を経てカップリングするアミド形成も含まれる。
【0063】
本発明者らは、クリプタンドおよびクリプテートをベースとする化合物のポートフォリオを拡張しようとした際に、基本となるマレイミド基含有のクリプタンド化合物またはクリプテート化合物の、一連の新規な一置換および二置換誘導体を作製しようとした。しかし、本発明者らは、それらの誘導体は、マレイミド基を還元することなく、クリプテート化合物からCu(II)イオンを除去することができず、マレイミド基は最終生成物を不活性にすることが分かった。したがって、本発明者らは、それらの方法を再評価することに決め、シッフ塩基縮合前およびその間の反応条件を注意深く制御することにより、第二級アミンがさらに反応を受けるのを効果的に保護して所望の生成物を選択的に得るために、テンプレート金属(または、他の有機保護基)を持たせる必要が実際にはないことを驚くべきことに発見した。
【0064】
理論に拘泥されることを望むものではないが、本発明者らは、式(I)の化合物において、第一級アミンは少なくとも塩基性のアミンであると考えている。本発明者らは、縮合反応、例えばシッフ塩基縮合を適切に遅くすると、第二級アミンが不活性(恐らく、第二級アミンがプロトン化される、および/または立体的に込み合うため)になり、かつ第一級アミンがカルボニル含有化合物のカップリングに対する優先部位となることを驚くべきことに見いだした。
【0065】
その後、本発明者らは、シッフ塩基縮合反応を制御するために適用することができる様々な反応条件の包括的な検討を行った(例えば、除熱、反応のモル比の低下、水などの極性溶媒および温和な酸性条件の使用)。本発明者らは、驚くべきことに、Cu(II)金属イオンのテンプレート剤の非存在下でも所望の一置換クリプタンド化合物を形成することができるばかりか、一部の場合、二置換クリプタンド化合物の生成を実質的に低減することができることも見いだした。こうして、本発明の方法を使用して一部の一置換クリプタンド化合物をより高い収率で得ることができる。
【0066】
一部の実施形態では、本方法は、式(I)を有する化合物を、少なくともいくらかの水を含む溶媒に溶解して、溶液を形成するステップ、およびこの溶液にカルボニル基を含有する第2の化合物を加えるステップを含む。これらの化合物の第一級アミンおよびカルボニル基は、互いに反応してイミン基を形成し、こうして両化合物がカップリングする。これらの式(I)の化合物と第2の化合物のモル比は、約1:0.8〜1:3、または約1:1〜1:3、1:1.5〜1:3、1:2〜1:3、1:0.8〜1:2、1:0.8〜1:1.5、または1:1〜1:2の間、例えば約1:0.8、1:0.9、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:2、1:2.5または1:3とすることができる。反応は、通常の空気雰囲気下で行うことができる。反応は、非無水条件下で行うことができる。
【0067】
溶媒はプロトン性であってもよい。溶媒は、水性であってもよい。溶媒は、アルコール性であってもよい。溶媒は、アルコール性と水性の両方であってもよい。溶媒は、例えば、水と1種または複数のエタノール、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランおよびプロパノールの混合物としてもよい。例えば、溶媒は、10%〜50%の間の水を含んでもよい。あるいは、溶媒は水であってもよく、またはエタノールであってもよい。以前には、本発明において使用される化合物と類似のものが関与するシッフ塩基縮合反応は、一般に、水を含まない溶媒(乾燥エタノールなど)、または反応中に生成する水の除去を促進するモレキュラーシーブの存在下で行われ、こうして平衡をイミン形成側にしていた。
【0068】
一部の実施形態では、溶液は温和な酸性である。溶媒は、pHが約3〜6.5の間、または約3.5〜6.5、4〜6.5、4.5〜6.5、5〜6.5、5.5〜6.5、または6〜6.5の間を有することができる。pHは、約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6または6.5とすることができる。
【0069】
一部の実施形態では、溶液のpHは、約4〜約5、または約3〜5、4〜6である。
【0070】
一部の実施形態では、温和な酸性条件は、溶液に酢酸を添加することにより、またはギ酸を添加することにより、あるいは塩酸などを添加することによりもたらされる。一般に、温和な酸性条件は、溶液に酸を添加することによりもたらすことができる。酸は、無機酸であってもよく、または有機酸、例えばカルボン酸であってもよい。いくつかの場合では、溶液を所望のpHに緩衝させる。溶媒がエタノールである場合、温和な酸性条件を生じさせるために使用する酸は、有機酸、例えば酢酸とすることができる。溶媒が水である場合、温和な酸性条件を生じさせるために使用する酸は、無機酸、例えば塩酸とすることができる。
【0071】
一部の実施形態では、還元剤(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素還元剤)が、溶液に加えられる。還元剤は、式(I)の化合物の第一級アミンとアルデヒド基を含む化合物とのカップリングにより生成するイミン基をアミン基に還元し、こうして、式(I)の化合物が第2の化合物にアミン基を介してカップリングしている、カップリングされたクリプタンド化合物またはクリプテート化合物となる。したがって、還元剤は、選択的な還元剤とすることができる。それは、温和な還元剤であってもよい。それは、反応中に形成される初期縮合生成物中に存在している他の官能基を還元することなく、イミンをアミンに還元することができる還元剤とすることができる。
【0072】
通常、還元剤は、式(I)の化合物と第2の化合物が反応してイミン基が形成し、こうしてカップリングするのに十分な時間が与えられた後、溶液に添加される。この反応に関与する具体的な化合物に応じて、これには、数分間から数日間かかることがある。あるいは、還元剤は、式(I)の化合物または第2の化合物が溶液に加えられるのと同時(または、その直後、あるいはその前でも)に溶液に加えてもよい。
【0073】
一部の実施形態では、本方法は、カップリング反応生成物を分離するさらなる1つまたは複数のステップを含む。これは、式(I)を有する未反応化合物、一置換クリプタンド化合物、およびYがそれぞれ第一級アミンであるかまたはそれらを含有する場合、二置換クリプタンド化合物を分離するステップである。この分離は、例えばメタノール、クロロホルムまたはジクロロメタンの混合物からなる溶離液を使用したフラッシュクロマトグラフィーにより、メタノール、アセトニトリルおよび/もしくは水の混合物の溶離液を使用するC18カラムを用いることにより、または水、メタノールもしくはエタノールからの沈殿により行うことができる。
【0074】
本発明の方法を使用して生成することができる例示的な化合物には、以下が含まれる
【0075】
【化13-1】
【化13-2】
【化13-3】
【化13-4】
【化13-5】
【化13-6】
【0076】
(式中、nは、1〜5の整数(すなわち、1、2、3、4または5)である)。
【0077】
特に興味深い2つの化合物は以下の通りである。
【0079】
これらの化合物は、本発明の方法における式(I)の化合物として、他の化合物とカップリングするのに使用することができる。メチル基またはエチル基は、この基が結合しているアミン(別の第二級アミン)におけるさらなる反応を防止する。したがって、第2の化合物は、第一級アミンだけを介してそれらの化合物とカップリングすることしかできず、これにより、より多くの所望の生成物が得られる。
【0080】
これらの多くの化合物の合成は、実施例で述べることにする。
【0081】
上で議論した通り、本発明の方法は、還元条件下で還元される官能基を含有する、クリプタンドまたはクリプテートをベースとする化合物を生成するために使用することができる。したがって、式(II)を有する化合物
【0083】
(式中、
R
1およびR
2はそれぞれ、水素、ハロゲン、CH
3、COOH、NO
2、CH
2OH、H
2PO
4、HSO
3、CN、C(=O)NH
2およびCHOからなる群から独立して選択され、
n=2、3または4であり、
Xはそれぞれ独立して選択され、NHまたはSであるが、但し、少なくとも1つのXはNHであり、
Zはそれぞれ任意選択の間隔基であり、存在する場合、Zは、任意選択で置換されているC
1〜C
10アルキル、任意選択で置換されているアリール、および任意選択で置換されている複素環からなる群から独立して選択され、
Aはそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、任意選択で置換されているアミノ、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されているアラルキル、任意選択で置換されている複素環、イソチオシアネート、シアノ、-NH-COCH
2Br、-COOR'、-NHCR
3R
4R
5および-NH-CO-CH=CH-COOR'からなる群から独立して選択されるが、但し、少なくとも1つのAは-NHCR
3R
4R
5であるかまたはそれを含有し、
R'は水素、任意選択で置換されているアルキル、および任意選択で置換されているアリールからなる群から選択され、
R
3およびR
4は、H、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
5は、還元条件下で還元される官能基または官能基を含有する化学種である)
も提供される。
【0084】
式(II)を有する化合物は、従来技術によりカップリングされたクリプテート化合物からテンプレート金属(例えばCu(II))を除去するのに必要な還元条件下で還元される官能基を含有し、したがって、従来技術の方法により容易に生成することができない。しかし、この官能基は、クリプタンド化合物がR
5(すなわち-NHCR
3R
4R
5)にカップリングすることにより、シッフ塩基中間体をアミン基に還元するのに必要な条件下では、十分に安定している。式(II)の化合物は、水素化ホウ素またはシアノ水素化ホウ素の存在下で還元される官能基を含有することができる。
【0085】
一部の実施形態では、R
5は、還元条件下で還元される官能基を有する、任意選択で置換されているアルキル、アリールまたは複素環である。
【0086】
一部の実施形態では、R
5は以下の構造
【0088】
(式中、R
OXは、還元条件下で還元される官能基である)
を有する。
【0089】
一部の実施形態では、還元条件下で還元される官能基は、-NO
2、-N
3、-C≡CH、-C≡N、-O-(CR
1R
2)
m-NH
2、-(CR
1R
2)
m-SH、-C(=O)-O-CH
3、-C(=O)-O-(CR
1R
2)
m-CH
3、
【0091】
(式中、R
1およびR
2は、上で定義した通りであり、またmは1〜8である)
である。
【0092】
一部の実施形態では、式(II)の化合物は、分子認識単位(以下で議論する)などの担体剤にコンジュゲートすることができる。それは、R
5の官能基を介してカップリングしてもよい。代替的実施形態では、式(II)の化合物は、この化合物を含有する薬物を対象に投与した後、該化合物を対象における特定の臓器および組織内に局在化させることが可能な化学的性質を有することができる。一部の実施形態では、R
5の官能基は、こうした化学的性質をもたらすことができる。
【0093】
例えば、R
5の官能基は、疎水性であってもよく、または親水性であってもよい。疎水性構成体(hydrophobic entity)を有することにより、肝臓により金属イオンまたは金属イオン放射性核種と錯体形成している本発明の化合物のクリアランスが促進される一方、親水性構成体は、肝臓から主に排泄される。例えば、化合物Cu-diamsarがbalb/sマウスに投与されると、マウスの腎臓から速やかに排泄されるが、化合物Cu-sar(これは、クリプテートケージの頂位上の2つの第一級アミンが欠如している点で、Cu-diamsarとは異なる)は、balb/sマウスの腎臓において、比較的より長い期間保持される。
【0094】
本発明の化合物の頂位を修飾することにより、腎臓の糸球体ろ過または肝臓機能などの臓器の機能特性の標的化が可能になるか、または血管透過性・滞留性亢進効果(EPR)のモニタリングが可能になることになるのは当然である。後者の効果とは、炎症および/またはがんの部位などにおける血管透過性の増大を伴う組織において、高分子量の非標的薬物およびプロドラッグが集積することによる機構のことである。
【0095】
一部の実施形態では、式(II)の化合物中のR
1およびR
2はHである。
【0096】
一部の実施形態では、XはそれぞれNHである。
【0098】
一部の実施形態では、式(II)の化合物中のR
1およびR
2はHであり、XはそれぞれNHであり、nは2である。
【0099】
式(II)の化合物が、ヒドリド還元剤(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、またはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素還元剤)の使用が含まれる方法により形成される実施形態では、R
3およびR
4の少なくとも一方、場合により両方がHである。
【0100】
式(II)の化合物が、クリプタンド前駆体化合物とアルデヒドとの反応により形成される実施形態では、R
3およびR
4の少なくとも一方、場合により両方がHである。
【0101】
さらに、本発明の化合物のプロドラッグが、本発明の範囲内にある。通常、プロドラッグとは、本発明の化合物の官能基誘導体であり、その誘導体は、インビボで本明細書に記載されている用途に必要な化合物に容易に変換される。プロドラッグの選択および調製の一般的な手順は、当業者に公知であり、また例えば、H.Bundgaard(編)のDesign of Prodrugs、Elsevier、1985年に記載されている。
【0102】
「本発明の化合物」という言い回しは、本発明の第2から第6の態様の化合物を意味するものと理解すべきである。
【0103】
担体剤
本発明の化合物は、対象に投与されると、対象の生体の特定の位置に、該化合物を送達することができるよう、担体剤にコンジュゲートされてもよい。
【0104】
該担体剤は、例えば、分子認識単位とすることができる。分子認識単位とは、生体内の特定の抗原または受容体部位を認識する分子のことであり、一旦それらが対象に投与されると、予測可能な方法で処理される。例えば、いくつかの分子認識単位は、腫瘍または異常細胞に特異的もしくは優先的に結合する能力がある。こうした分子認識単位の例は、特異的結合対(例えば抗体/抗原対など)の一部分を含む。
【0105】
分子認識単位には、抗体、タンパク質、ペプチド、炭水化物、核酸、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖、リポソーム、siRNA、RNA、DNA、ssDNA、ヌクレオチド、生体分子認識層、細胞成分、デンドリマー、多糖、アミノ酸、酵素、オリゴペプチドおよびステロイドが含まれる。分子認識単位は、一般に、抗体、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはオリゴ糖である。特に、分子認識単位は、一般には抗体、より一般にはモノクローナル抗体、その断片、可変領域またはナノボディである。
【0106】
一実施形態では、分子認識単位は、完全抗体もしくは断片、その可変領域またはナノボディ、またはこれらのいずれかのアナログとすることができるが、但し、抗体は特異的結合領域を含むものとする。抗体は、ヒト化モノクローナル抗体もしくは断片、その可変領域またはナノボディとすることができる。抗体はまた、組み換え抗体であってもよい。抗体は、任意の数の抗原決定基に対して特異的であってもよいが、一般には、1つの抗原決定基に対して特異的である。
【0107】
担体剤は、例えば、粒子または表面とすることができる。例えば、担体剤は、量子ドット、マイクロ粒子、ナノ粒子、ポリマー、ミセル、ナノゲル、マイクロゲル、ナノチューブまたは薄膜とすることができる。こうした担体剤は、電子常磁性共鳴分光法(EPR)などの医学技法、または薬物送達もしくはステント用途において使用することができる。
【0108】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、担体剤の各々の特性を利用するために、2種以上の担体剤にコンジュゲートしてもよい。例えば、本発明の化合物は、ナノ粒子および抗体またはペプチドにコンジュゲートすることができる。あるいは、抗体またはペプチドは、特異的標的化の手助けをするための粒子に結合してもよい。
【0109】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、リンカー基(アミン、ヒドロキシル、チオシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ニトロ、マレイミド、シアノまたはアジドなど)を介して担体剤にコンジュゲートされてもよい。本発明の方法において使用される第2の化合物は、例えば、こうしたリンカー基を含んでいてもよい。式(II)の化合物は、例えば、R
5の官能基を介して担体剤にコンジュゲートされてもよい。
【0110】
本発明の化合物の担体剤へのコンジュゲートは、例えば、リンカー基を、担体剤中に存在しているチオール基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、芳香族基または複素芳香族基と反応させることにより実現することができる。例えば、アミノ基またはヒドロキシ基の形態のリンカー基を担体剤の遊離カルボキシル基と反応させることができる。カルボジイミドなどのカップリング剤を、コンジュゲート反応を促進するために使用するのが適している。
【0111】
本発明のコンジュゲート化合物は、いずれか1つの担体剤に結合している、本発明の化合物の2種以上の分子を含有することができる。
【0112】
金属イオンまたは金属イオン放射性核種との錯体形成
本発明の化合物は、クリプタンド環系内で錯体形成している、金属イオンまたは金属イオン放射性核種を含有することができる。これらの化合物は、この化合物が金属イオンと錯体形成するよう、金属イオンと錯体形成をしていない本発明による前記化合物を、金属イオンにさらすことにより合成することができる。
【0113】
適切な金属イオンまたは金属イオン放射性核種には、Cu、Tc、Ga、In、Co、Re、Fe、Au、Ag、Rh、Pt、Bi、Cr、W、Ni、V、Pb、Ir、Zn、Cd、Mn、Ru、Pd、Hg、Zr、Sc、Rb、SrおよびTiのイオンが含まれる。
【0114】
金属イオン放射性核種は、一般に、少なくとも2つの酸化状態、最も一般には+2、+3、+4または+5の酸化状態を有する金属イオンを含む。放射能標識金属錯体は、例えば、
48V、
52Fe、
52mMn、
52Mn、
55Co、
60Cu、
61Cu、
62Zn、
62Cu、
63Zn、
64Cu、
66Ga、
68Ga、
81Rb、
83Sr、
89Zr、
94mTc、
94Tc、
110In、
67Cu、
67Ga、
111In、
99mTc、
188Re、
186Re、
195mPt、
191Ptおよび
105Rhのイオンを含有することができる。
【0115】
本発明の化合物の金属錯体形成は、当分野で公知の手順を使用して達成することができる。例えば、
64Cuによる本発明の化合物の放射能標識は、水溶液中の化合物に
64Cuの酢酸水溶液を添加し、室温で約30分未満の間、インキュベートすることにより実現することができる。
【0116】
担体剤にコンジュゲートされており、かつ金属イオンまたは金属イオン放射性核種と錯体形成している本発明の化合物は、クリプタンド化合物(すなわち、クリプテート化合物)の金属錯体を担体剤にコンジュゲートするか、あるいはクリプタンド化合物を担体剤にコンジュゲートした後に、得られたコンジュゲート化合物を、金属イオンまたは金属イオン放射性核種の供給源と反応させることにより調製することができる。
【0117】
こうして、本発明は、インビボでのイメージングおよび治療のための
48V、
52Fe、
52mMn、
52Mn、
55Co、
60Cu、
61Cu、
62Zn、
62Cu、
63Zn、
64Cu、
66Ga、
68Ga、
81Rb、
83Sr、
89Zr、
94mTc、
94Tc、
110In、
67Cu、
67Ga、
111In、
99mTc、
188Re、
186Re、
195mPt、
191Ptおよび
105Rhなどの放射性核種の金属イオンなどを、モノクローナル抗体、受容体特異的タンパク質、ペプチド、またはオリゴヌクレオチドなどの担体剤に結合させる方法を提供する。
【0118】
本発明の化合物は、それらに非金属のガンマまたはベータを放出する放射性核種(例えば
3Hまたは
131I)を含有させることにより、放射能標識することもできる。こうした放射能標識化合物は、当分野で公知の技法を使用して調製することができる。
【0119】
非放射性核種の金属イオンは、本発明の化合物と錯体形成して、次いで、疾患の診断、イメージングまたは治療に使用することができる。例えば、MnまたはFeのイオンが錯体形成されている本発明の化合物は、MRI剤として有用となり得る。
【0120】
本発明の化合物は、通常、溶液で、金属イオン(任意選択で、金属イオン放射性核種)を含有する第1の容器、および本発明の錯体形成されていない化合物を含有する第2の容器を含む、キットの形態で提供することができる。該キットは、使用直前に、放射線化学者、技術者、放射線調剤師、医師などが、第1の容器および第2の容器の中身を混合して、これにより錯体形成した化合物を得ることができるよう、上記の者達に供給することができる。
【0121】
医薬組成物
本発明は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物にも関する。
【0122】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される塩とは、不適当な毒性、刺激、アレルギー反応などがなく、ヒトおよび他の動物の組織に接触させて使用するのに適しており、かつ合理的な利益/リスク比の釣り合いがとれている塩のことである。薬学的に許容される塩は、当分野において周知である。
【0123】
適切な本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、本発明の化合物を、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸、酒石酸、またはクエン酸などの薬学的に許容される酸と混合することにより調製することができる。したがって、適切な本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、酸付加塩が含まれる。
【0124】
本発明の化合物は、認識されている手順により、薬学的に許容される塩に変換することができる。例えば、S.M.Bergeらは、J. Pharmaceutical Sciences、(1977)、66、1〜19頁において、薬学的に許容される塩について詳細に記載している。塩は、本発明の化合物の最終単離および精製の間にインサイチュ(in situ)で、またはそれとは別に適切な有機酸により遊離塩基官能基を反応させることにより調製することができる。代表的な酸付加塩にはさらに、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、および無毒性のアンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、および以下に限定されないが、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチルアミン塩などのアミン陽イオンが含まれる。
【0125】
本発明の化合物が医療用途において使用されない場合、他の塩(すなわち、薬学的に許容されない塩)を使用することができることが理解されよう。
【0126】
疾患の処置または放射線イメージングに使用する場合、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩は単独で投与してもよい。
【0127】
しかし、それらは、本化合物および薬学的に許容される1種または複数の担体を含む医薬製剤として投与されるのが一般に好ましい。一般に、本発明の医薬製剤は、当業者に公知の方法に従って調製することができ、したがって、薬学的に許容される担体、賦形剤および/またはアジュバントを含むことができる。
【0128】
医薬製剤は、通常、懸濁剤、溶液剤または他の適切な製剤の形態の製剤を含む。アジュバントを一緒に含むまたは含まない生理的に許容される懸濁媒体を使用してもよい。医薬製剤は、一般に液剤形態、さらにより一般には、注射可能な形態をしている。さらにより一般には、注射可能な製剤は、当分野において認識されている適切な生理的に許容される担体に溶解される。
【0129】
担体、賦形剤およびアジュバントは、製剤の他の成分と相溶しているという点で「許容される」ものであり、またそのレシピエントに有害であってはならない。
【0130】
薬学的および獣医学的に許容される担体または賦形剤の例は、脱イオン水または蒸留水、食塩水、ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブオイル、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油などの植物をベースとする油(ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブオイル、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ラッカセイ油またはココナッツ油など)、メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリソルポキサンなどのポリシロキサンを含むシリコーンオイル、揮発性シリコーン、流動パラフィン、軟質パラフィンまたはスクアランなどの無機油、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、低級アルカノール、例えばエタノールまたはイソプロパノール、低級アラルカノール、低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールまたはグリセリン、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピルまたはオレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル、ポリビニルピリドン(polyvinylpyrridone)、寒天、カラギーナン、トラガントガムまたはアラビアガム、および石油ゼリーである。通常、1種または複数の担体は、組成物の10重量%〜99.9重量%を形成することになる。
【0131】
注射可能な液剤または懸濁剤としての投与に関すると、無毒性の非経口的に許容される賦形剤または担体は、リンガー溶液、等張生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノールおよび1,2-プロピレングリコールを含むことができる。
【0132】
アジュバントには、通常、エモリエント剤、乳化剤、増粘剤、防腐剤、殺菌剤および緩衝剤が含まれる。
【0133】
非経口投与可能な組成物を調製する方法は、当業者に明らかであり、例えばRemington's Pharmaceutical Science、第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.においてより詳細に記載されている。
【0134】
これらの製剤は、標準的な経路、例えば、局所、経皮、腹腔内、頭蓋内、脳室内、大脳内、膣内、子宮内、経口、直腸または非経口(例えば、静脈内、髄腔内、皮下または筋肉内)経路により投与することができる。
【0135】
特定の実施形態では、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩は、徐放させるよう、生分解性ポリマーに配合することができ、このポリマーは、薬物送達が望まれるまたは埋め込まれる場所(例えば、腫瘍の部位)の近傍に埋め込まれ、その結果、活性剤がゆっくりと系統的に放出される。浸透圧ミニポンプを使用し、直接的に、例えば、転移増殖またはその腫瘍への血管供給などの関心の向けられる部位に、カニューレを介した高濃度の活性剤の制御送達を実現することもできる。
【0136】
診断、イメージングおよび治療の方法
本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩は、心臓血管疾患、神経疾患、自己免疫疾患、感染性疾患および腫瘍学などの疾患の診断方法、イメージング方法、および治療方法において使用することができる。特定の状態には、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、呼吸器合胞体ウイルス感染症、肺がん、リンパ腫、結腸直腸がん、乳がん、肝臓がん、神経芽細胞腫、前立腺がん、膀胱がん、および子宮頸がん、ならびに卵巣がんが含まれる。
【0137】
本発明は、対象における疾患の診断方法、放射線イメージング方法、または疾患の放射線治療方法であって、有効量の放射能標識した本発明の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または本発明の医薬組成物を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0138】
本発明はまた、対象における疾患の診断方法、イメージング方法、または疾患の治療方法であって、有効量の本発明の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または本発明の医薬組成物を対象に投与するステップを含む方法も提供する。
【0139】
通常、対象に投与される本発明の化合物は、分子認識単位(例えば、モノクローナル抗体またはその断片、可変領域またはナノボディ、ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖、リポソーム、または特異的結合対の一部)にコンジュゲートしたカップリングされたクリプタンド化合物またはクリプテート化合物を含む。こうしたコンジュゲート分子は、投与後、対象のある種の臓器および組織中に、かなり特異的に局在化することが知られている。しかし、上で議論した通り、担体剤にコンジュゲートされていない本発明の化合物は、投与後、対象のある種の臓器または組織中に、局在化し得る。例えば、クリプタンド化合物またはクリプテート化合物が、インターカレート化学種とカップリングしている本発明の化合物は、DNAに対して親和性を有してもよい。こうした化合物はまた、インビボでDNAをインターカレートするために、該化合物が患者の細胞核に入り込むことができるようになる分子認識単位にコンジュゲートすることもできる。
【0140】
一部の実施形態では、本発明の治療方法には、細胞毒性剤として有用な本発明の化合物を使用することが含まれる。例えば、放射能標識した本発明の化合物は、がん、異常細胞障害の処置、および腫瘍の処置に使用することができる。こうした用途では、放射能標識化合物は、それが腫瘍または異常細胞に選択的に結合することができるよう、担体剤にコンジュゲートされてもよい。
【0141】
治療方法には、通常、有効量の放射能標識した本発明の化合物を対象に投与するステップが含まれる。有効量または用量は、診断用途に必要な放射活性の所望量、対象、特にその臓器および組織を暴露させない安全な必要量と有害な放射線量とのバランスに依存する。所与の任意の用途に対する適切な用量は、関連分野の技術者により決定することができる。
【0142】
通常、処置は、状態の期間を対象とし、また接触期間は、通常、状態の期間を対象にするであろう。さらに、個々の用量の最適量および間隔は、処置される状態の性質および程度、投与形態、投与経路および投与部位、ならびに処置される特定の状態の性質により決まることは、当業者には明らかとなろう。定められた日数の間、1日あたりに投与される用量数などの処置の最適な道筋は、処置決定試験の慣用的な道筋を使用して、当業者により確認することができることも当業者には明らかとなろう。
【0143】
疾患の処置に使用する場合、本発明の化合物は単独で投与してもよい。しかし、本化合物はまた、疾患を処置するために患者に慣用的に投与される他の化学療法用処置と組み合わせて投与されてもよい。例えば、腫瘍は手術により慣用的に処置することができ、本発明の化合物は、微小転移巣の休止状態を延長し、かつ残存しているあらゆる原発腫瘍の増殖を安定化して阻害するために投与される。
【0144】
通常、固形腫瘍の処置に使用する場合、本発明の化合物は、アドリアマイシン、タキソール、フルオロウリシル(fluorouricil)、メルファラン、シスプラチン、アルファインターフェロン、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキセートおよびプレドニソン)、エトポシド、mBACOD(メトルトレキセート(methortrexate)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびデキサメタソン)、PROMACE/MOPP(プレドニソン、メトトレキセート(w/ロイコビン(leucovin)救助療法)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニソンおよびプロカルバジン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンジオインヒビン(angioinhibin)、TNP-470、ペントサンポリスルフェート、血小板因子4、アンジオスタチン、LM-609、SU-101、CM-101、テクガラン(Techgalan)、サリドマイド、SP-PGなどの化学療法剤と共に投与されてもよい。他の化学療法剤には、メクロレタミン、メルファン、クロラムブシル、シクロホスファミドおよびイフォスファミドを含むナイトロジェンマスタードなどのアルキル化剤、カルムスチン、ロムスチン、セムスチンおよびストレプトゾシンを含むニトロソ尿素、ブスルファンを含むスルホン酸アルキル、ダカルバジンを含むトリアジン、チオテパおよびヘキサメチルメラミンを含むエチエニミン、メトトレキセートを含む葉酸類似体、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシドを含むピリミジン類似体、6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニンを含むプリン類似体、アクチノマイシンDを含む抗腫瘍性抗生物質、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトマイシンCおよびメトラマイシンを含むアントラサイクリン、タモキシフェンおよびコルチコステロイド(cortiosteroid)を含むホルモンおよびホルモン拮抗剤、ならびにシスプラチンおよびブレキナールを含む種々の作用剤が含まれる。
【0145】
放射能標識され、かつ分子認識単位(とりわけ、放射能標識した抗体)にコンジュゲートされている本発明の化合物は、特に、医学において、例えば特定の組織タイプへの局在化、および細胞障害の治療に有用である。放射能標識した抗体を使用して、金属イオンをインビトロおよびインビボの両方における特定の組織タイプに向かわせることもできる。治療における本発明の化合物の例示的な用途を以下に記載する。
【0146】
こうした化合物は、例えば、結腸、卵巣、リンパ腫、乳房および/または膀胱のがんあるいはアポトーシスに特異的なモノクローナル抗体を放射能標識するために使用することができる。別の例示的な使用には、診断および治療のための、結腸がんの転移に特異的なモノクローナル抗体の放射能標識におけるものである。
【0147】
モノクローナル抗体の形態で分子認識単位にコンジュゲートされており、かつ
67Cu(ベータおよびガンマ放出体)ならびに
64Cu(ポジトロンおよびベータ放出体)により放射能標識されている本発明の化合物は、放射免疫シンチグラフィ(RIS)(SPECTおよびPET)ならびに放射性免疫療法(RIT)と組み合わせて使用することができる。
【0148】
インターカレーターとカップリングされており、モノクローナル抗体にコンジュゲートされており、かつ
59Fe、
195mPtまたは
64Cuなどのオージェ放出同位体(auger emitting isotope)により放射能標識されている本発明の化合物は、細胞核に送達することができ、ここで、オージェ放出が使用されてDNAを切断することができる。
【0149】
本発明はまた、インビトロおよびインビボにおける、イメージング剤としての本発明の化合物の使用にも関する。イメージングは、例えば、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、もしくは蛍光イメージングなどの放射線イメージング技法、または磁気共鳴イメージング(MRI)もしくは蛍光イメージングなどの、必ずしも放射性同位元素を必要としないイメージング技法とすることができる。したがって、本発明の化合物はまた、MRI剤、PET剤、SPECT剤または蛍光イメージング剤として使用することもできる。
【0150】
例えば、MRI用途では、本発明の化合物は、常磁性金属イオン(通常、Fe(III)またはMn(II))と一緒に提供され、また画像を増強するための造影剤として使用することができる。さらに、こうした化合物は、医薬製剤の形態で提供することができ、この場合、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される担体、添加剤またはビヒクルと一緒に存在する。
【0151】
これらのイメージング剤は、投与後に、対象の特定の臓器および組織に局在化することになる。その後に、この局在濃度を検知することができる。一部の実施形態では、イメージング剤は単に、対象における特定の臓器または組織中に局在化を起こさせる化学的性質を有する、本発明の化合物とすることができる。代替的実施形態では、イメージング剤は、担体剤にコンジュゲートされている本発明の化合物であってもよい。
【0152】
診断方法は、通常、有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を対象に投与し、続いて、その化合物が特定の領域に局在化しているかどうかを確認するため、適切な期間の後に該対象をモニタリングするステップが必要となろう。例えば、その対象の特定部位への放射能標識錯体の局在化により証拠づけられるように、本方法は、がんの存在または非存在を発見するために使用することができる。通常、モニタリングステップは、がんが存在している場合、任意のがんの位置に関する情報を提供する。放射能標識錯体の有効量または用量は、診断用途に必要な放射活性の所望量、対象、特にその臓器および組織を暴露させない安全な必要量と有害な放射線量とのバランスに依存する。所与の任意の用途に対する適切な用量は、関連分野の技術者により決定することができる。
【0153】
例えば、一実施形態では、放射線イメージングは蛍光イメージングであり、イメージング化合物は、以下である。
【0155】
金属イオンをクリプタンド配位子に取り込ませることにより、蛍光特性および金属イオンの特性(例えば、放射活性または不対電子)の両方が、イメージング、診断または処置において利用されるバイモーダルシステム(bi-modal system)を可能にし得る。
【0156】
本発明の化合物は、バイオマーカーとしても有用となり得る。バイオマーカーとは、心臓血管疾患、神経学、自己免疫疾患、感染性疾患および腫瘍学において使用するために設計されたものである。バイオマーカーは、特定の治療に対する患者の応答を予測するために使用して、早期発見またはマーカーのスクリーニングを可能にする、処置中の疾患に対する応答および転帰の可能性(治療には関わらない)を評価する、あるいは臨床的有益性またはその欠如を予測することができる。
【0157】
バイオマーカーは、創薬開発過程中における決定を合理化するために使用することができ、薬物の消耗を低減することができる。それらは、薬物開発の以下の段階の間に使用することができる。
化合物のスクリーニング
発見の目的化
作用機序の理解
毒性安全性および安全性評価
前臨床および臨床スクリーニングへの編入
薬物効果の定期的な追跡
【0158】
本発明の化合物はまた、他の分野でも適用される。例えば、本発明の化合物は、ポリマーなどの固体表面に結合させて、金属イオンの濃縮または水の精製に使用することができる。あるいは、本発明の化合物は電極表面に結合させて、特定の金属イオンの検出に使用することができる。
【0159】
上で挙げた説明から理解される通り、本発明は、疾患の診断、予後および治療のための、サルコファジン(sarcophagine)、すなわちクリプタンド/クリプテート型化合物の製造に関する。クリプタンド/クリプテート化合物は、分子認識単位などの広範な担体剤にコンジュゲートされて、および/または適切な放射性同位元素により放射能標識されて、放射性医薬品を形成することができる。これらの官能基化クリプタンド/クリプテートの合成は、費用効果がより高く、収率がより高い新規な方法により行われる。本方法はまた、以前には調製されなかった、広範な新規のクリプタンドおよびクリプテート型化合物の合成も可能にする。
【0160】
上で記載された処置方法および/または診断方法は、ヒト対象に適用することができる。それらは、非ヒト対象、例えば非ヒト哺乳動物、非ヒト脊椎動物などに適用することができる。
【0161】
本発明の少なくとも好ましい実施形態の他の利点は以下を含んでいる。
・サルコファジンの製造に必要な消耗品の費用、時間および装置の認識可能なほどの削減(所望のサルコファジン誘導体100gを生成するために必要な時間は約40%改善され、またその費用は>30%削減することができる)。
・合成に保護基を必要としないので、最終生成物の収率は最大化される。
・合成を制御して、一置換化学種を主に生成することができ、それ故に、前駆体ケージは、再使用するためにリサイクルすることができる。
【0162】
化学用語の定義
本明細書において引用される任意選択の置換基は、アミノ、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、シアノ、チオシアノ、アルキル、アルコキシ、ハロゲノアルキル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボキシル、アルコキシカルボキシル、カルバモイル、ピリドイルアミノ、カルボキシアルキル-カルバモイル、N-カルボキシルアルキルカルバモイル、スルホ、スルファモイル、場合により1つまたは複数のアルキル置換基を有するモノもしくはジアルキル化またはフェニル化スルファモイル、アルキルスルホニル、アルコキシスルホニル、場合によりヒドロキシル含有フェニルスルホニルおよびフェノキシスルホニルからなる群から選択することができる。
【0163】
用語「アルキル」は、1〜20個の間の炭素原子(好ましくは1〜7個の間の炭素原子)を含む、直鎖もしくは分岐アルキル基、あるいは環式アルキル基を指す。直鎖アルキル基の例には、メチル、プロピルまたはデシルが含まれ、分岐アルキル基の例には、イソ-ブチル、tert-ブチルまたは3-メチル-ヘキシルが含まれる。環式アルキル基の例には、シクロヘキシル、および縮合アルキル環式環系が含まれる。
【0164】
用語「アリール」または「アリール基」とは、任意の芳香族置換基のことを指す。芳香族置換基は、好ましくは1個の芳香族環から4個までの縮合芳香族環および5〜50個の環原子を含有する。芳香族基は、4n+2の非局在化π電子を含有する環状の共役分子構成体であり、n=0または正の整数(4n+2のHuckel則)である。この規則に従うどのような芳香族基も、アリールの定義範囲内にある。アリール基は、炭素環式(すなわち、炭素および水素しか含有していない)であってもよく、または複素芳香族(すなわち、炭素、水素、および少なくとも1つのヘテロ原子を含有する)であってもよい。アリール基は、フェニルなどの単環式アリール基、またはナフチルもしくはアントリルなどの多環式アリール基であってもよい。アリール基の例には、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基などが含まれる。用語「アリール」はまた、任意の置換度を有する芳香環を記載するために使用される。
【0165】
用語「アラルキル」は、1つまたは複数のアリール基により置換されているアルキル基を指す。こうした基の例は、ベンジル、2-フェニルエチルおよび1-フェニルエチルである。
【0166】
用語「複素環」、「複素環式」または「複素環式基」とは、1〜5個の間の環、かつ3〜50個(好ましくは5〜7個)の間の環原子を有しており、それらの少なくとも1個の原子が、ヘテロ原子である、任意の環式基のことを指す。ヘテロ原子は、1個または複数のO、N、S、SiおよびPから選択することができる。ある実施形態では、ヘテロ環式基は、5員、6員または7員の複素環式基(単環複素環式基)である。複素環式基のサブクラスの1つは、複素芳香族(またはヘテロアリール)基であり、これは、1個または複数のO、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含有する芳香族基である。こうした複素芳香族基も、アリール基の定義の範囲内にある。「複素環式基」、「複素芳香族基」、または「ヘテロアリール基」の一部の具体例には、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラゾリン、イミダゾリジン、ピペリジンなどの部分が含まれる。
【0167】
用語「環式」は、広義では、3〜50個の間の環原子を有する、環式基、および連結または縮合環系を指すのに使用され、これらは、炭素環式(炭素環原子しか含有していない)、または複素環式(炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有する)であってもよく、また飽和または不飽和であってもよい。環数は、1〜5個の間が適しており、好ましくは1個または2個であり、2個以上の環が存在する場合、任意の2個が連結していてもよく、または縮合していてもよく、あるいは別個の基を介してカップリングしていてもよい。
【0168】
用語「クリプタンド」とは、共有結合により一緒に保持される3つ以上の結合部位を含有する環式または多環式集合部分(assembly)を含み、別の分子構成体、すなわちゲスト(陽イオン、陰イオンまたは中性化学種)を、(結合部位の同じ総濃度において)該集合部分の別個の部分よりも強力に結合する(したがって空洞内に「隠す」)ように分子空洞を画定する、分子構成体のことを指す。こうして形成される付加物は、「クリプテート」と呼ばれる(http://www.chemicool.com/definition/cryptand.htmn)。本発明において使用される代表的なクリプタンド基は以下であり、
【0170】
また対応するクリプテート基は、以下である。
【0172】
用語アミドは、基-C(O)NRR'を含有する置換基を指し、RおよびR'は、H、アルキル基、アリール基またはアルキル-アリール基から選択され、これらの基は既に定義されている。用語「イミド」は、基-C(O)NRC(O)R'を含有する置換基を指し、RおよびR'は、H、アルキル基、アリール基またはアルキル-アリール基から選択される。用語「イミン」は、基-C(=NR)R'を含有する置換基を指し、RおよびR'は、H、アルキル基、アリール基またはアルキル-アリール基から選択される。用語「アミジン」は、基-C(=NR)NR'R"を含有する置換基を指し、R、R'およびR"は、H、アルキル基、アリール基またはアルキル-アリール基から選択される。
【0173】
用語「アミン」は、アミノ基-NH
2、さらにまた第二級および第三級アルキルアミノ、アリールアミノおよびアルキルアリールアミノ基を指す。「アリールアミノ基」の例には、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、イソプロピルジフェニルアミノ基、t-ブチルジフェニルアミノ基、ジイソプロピルジフェニルアミノ基、ジ-t-ブチルジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基などが含まれる。「アルキルアミノ基」の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基などが含まれる。
【0174】
「ニトロ」は、-NO
2を指す。「シアノ」は、-C≡Nを指す。「ヒドロキシ」は、-OHを指す。「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指す。
【0175】
「エーテル」は、エーテル基R-O-R'を含有する基を指し、RおよびR'は、H、アルキル基、アリール基またはアルキル-アリール基から選択され、これらの基は既に定義されている。
【0176】
「カルボニル基」は、カルボニル基C=Oを含有する置換基を指す。こうした基には、例として、ケトン(-C(O)R)、アルデヒド(-CHO)、エノン(-C(O)-CR=CR'R")、アシルハライド(-C(O)-ハロゲン)、カーボネート(R-O-C(=O)-O-R')および酸無水物(-C(O)-O-C(O)-R')が含まれ、R、R'およびR"はそれぞれ、アルキルまたはアリール基である。他の例には、エステル(-CO
2R)、カルボン酸(-CO
2H)およびアミド(-CONRR')が含まれる。さらに、当業者により理解されるように、用語「カルボニル基」は、以下に限定されないが、アセタールおよびチオケトンを含めた、カルボニル含有官能基の官能性等価体も包含する。
【0177】
「カルボキシル」は、カルボキシレート基(RCO
2-)を含有する置換基を指し、Rは、例としてアルキルまたはアリールである。「カーバメート」は、カーバメート基-O-C(=O)-NRR'を含有する置換基を指し、RおよびR'は、通常、アルキルまたはアリールであり、あるいは一緒になって環を形成してもよい。
【0178】
「スルフィド」は、-SRのことを指し、Rは、例としてH、アルキルまたはアリールである。「スルホ」は、-S(=O)
2-Rなどの-S(=O)
2-単位を含有する基を指し、Rは、例として、アルキルまたはアリールである。「スルホキシド」は、-S(=O)-Rなどの-S(=O)-単位を含有する基を指し、Rは、例として、アルキルまたはアリールである。
【0179】
(実施例)
(実施例1)
sarar-NO
2およびsarar-(NO
2)
2の合成
【0181】
このスキームは、sarar-NO
2[1-N-(4-ニトロベンジル)-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン]およびsar(ar-NO
2)
2[1,13-N,N-ビス-(4-ニトロベンジル)-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン]の合成を要約している。
【0182】
diamsar(200mg)をエタノール(10mL)に溶解し、酢酸を使用して(注:塩酸は、diamsarを溶液から析出させるので、酢酸の代わりに使用することはできない)pHを4.5に調節した。この溶液に、エタノール(10mL)中のp-アミノベンズアルデヒド(100mg)の混合物を室温で15分間かけて滴下して加えた。得られた溶液を、1時間撹拌した。この時間の後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(40mg)のエタノール(10mL)溶液を15分間かけて滴下して加えた。得られた溶液を18時間撹拌した後、30℃の水浴を備えたロータリーエバポレータで溶媒を留去した。この後、1時間、高真空にした。次に、残渣をアセトニトリル(2x10mL)により抽出し、0.45μmのフィルターによりろ過した。30℃の水浴を備えたロータリーエバポレータにより溶媒を再度留去し、続いて、1時間高真空にした。残渣を再度アセトニトリルにより抽出し、さじ1杯分の中性のアルミナを加えた後、30℃の水浴を備えたロータリーエバポレータにより溶媒を再度留去し、続いて、2時間高真空にした。次に、乾燥アルミナを25cmの中性アルミナカラム上にのせた。10%メタノール、90%ジクロロメタン(300mL)、次いで20%メタノール、80%ジクロロメタンの移動相を使用することにより、SarAr-(NO
2)
2として帯域(band)1を除き、帯域2は所望の化合物であるSarAr-NO
2 95mg(34%)、および帯域3は無反応diamsarであった。
SarAr-NO
2
【0186】
(実施例2)
sarar-マレイミドおよびsarar-(マレイミド)
2の合成
【0188】
このスキームは、sarar-マレイミド[1-N-(ベンジル-マレイミド)-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン]およびsarar-(マレイミド)
2[1,13-N,N-ビス(ベンジル-マレイミド)-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン]の合成を要約している。
【0189】
SarAr-マレイミドおよびSarAr-(マレイミド)
2は、エタノール10mLにdiamsar(200mg)を加え、次いで酢酸を用いて(注:塩酸は、diamsarを溶液から析出させるので、酢酸の代わりに使用することはできない)pHを4.5に調節することにより生成した。この溶液に、エタノール(10mL)中のp-マレイミドベンズアルデヒド(120mg)の混合物を15分間かけて滴下して加える。この溶液を、1時間撹拌する。この時間の後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(40mg)のエタノール10mL溶液を15分間かけて滴下して加える。この溶液を18時間撹拌した後、30℃の水浴を備えたロータリーエバポレータで溶媒を留去し、次いで1時間高真空にする。残渣をアセトニトリル(2x10mL)により抽出し、0.45μmのフィルターによりろ過した。30℃の水浴を備えたロータリーエバポレータにより溶媒を再度留去し、続いて、1時間高真空にした。残渣を、再度アセトニトリルにより抽出し、さじ1杯分の中性のアルミナを加えた後、30℃の水浴を備えたロータリーエバポレータにより溶媒を再度留去し、続いて、2時間高真空にした。次に、乾燥アルミナを25cmの中性アルミナカラム上にのせた。10%メタノール、90%ジクロロメタン(300mL)、次いで20%メタノール、80%ジクロロメタンの移動相を使用することにより、SarAr-マレイミドとSarAr-(マレイミド)
2の両方を混合物として取り出した。
SarAr-マレイミド
【0193】
(実施例3)
sarar-オキシ-プロピルアミン(proplyamine)の合成
【0195】
このスキームは、sarar-オキシ-プロプリアミン[1N-(オキシプロプリアミン)-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン]の合成を要約している。
【0196】
水6mLにdiamsar(156mg)を溶解し、5M HCl(約286μL)を使用してpHを4.0に調節した。この溶液に、THF10mL中の4-(3-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)プロプロキシ)ベンズアルデヒド154mgを加えた。この溶液を2分間撹拌し、その時間の後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(312mg)の水溶液1mLを加えた。得られた溶液を37℃で1時間撹拌した後、30℃の水浴を備えたロータリーエバポレータで溶媒を留去した。残渣を50mL水に溶解し、ジクロロメタン(4x20mL)で抽出した。有機相を蒸発させた。アセトニトリル30mLを残渣に加え、60℃で10分間、加熱した。アセトニトリル溶液を0.22μmのフィルターユニットによりろ過した。所望の生成物を含有するアセトニトリル溶液を蒸発させた。フタルイミド含有生成物は、水:メタノールのグラジエント[100%水と0.1%ギ酸で10分、次いで水に対して40%メタノールと0.1%ギ酸]を使用して、逆相HPLCにより精製した。所望の化合物は、24.5分にカラムから溶出した。溶媒を減圧下で蒸発させた。白色残渣をNMRおよびMSにより分析した。
【0198】
フタルイミド含有生成物(11mg)をメタノール(10mL)に溶解し、この溶液にヒドラジン一水和物(13μL)を加えた。得られた溶液を一晩還流して撹拌した後、30℃の水浴を備えたロータリーエバポレータで溶媒を留去した。所望の化合物は、水:メタノールのグラジエント[100%水と0.1%ギ酸で10分、次いで水に対して40%メタノールと0.1%ギ酸]を使用して、逆相HPLCにより精製した。所望の化合物は、7.6分でカラムから溶出した。溶媒を減圧下で蒸発させた。白色残渣をMSにより分析した。質量仕様:ESI/MS、m/z=478.3[M+H]
+。
【0199】
(実施例4)
diamsar-CH
3およびdiamsar-(CH
3)
2の合成
diamsar-CH
3[1-N-メチル)-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン]およびDiamsar-(CH
3)
2[1,13-N,N-ビス-(メチル)-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン]は以下の方法で合成した。
【0200】
diamsar(50.0mg、0.16mmol)を水(1mL)に溶解した。この溶液のpHを1M HCl溶液を添加することにより4.5に調節した。次に、水中のホルムアルデヒド10μLをこの混合物に加えた。反応を室温で1〜60分放置した。MS分析により、主に一置換diamsarといくらかのdiamsarの存在が示される。次に、10当量の水素化ホウ素ナトリウムを含む水にイミンを溶解し、この反応混合物を70℃でおよそ4時間(あるいは80℃で1.5時間)加熱する。得られた粗生成物は、フラッシュクロマトグラフィー(移動相としてCH
2Cl
2/MeOH、9:1)により精製し、diamsar-CH
3が得られた。質量仕様:ESI/MS、m/z=327[M+H]
+(還元の一置換イミン)、およびm/z=329[M+H]
+(還元後)。質量仕様:ESI/MS、m/z=339[M+H]
+(還元の二置換イミン)、およびm/z=341[M+H]
+(還元後)。
【0201】
(実施例5)
sarar-DOPの合成
【0203】
sarar-DOP(N-(4-((8-アミノ-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザ-ビシクロ[6,6,6]イコサン-1-イルアミノ)メチル)フェニル)-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アセトアミド)を以下の方法で合成することができる。
【0204】
水(1mL)中のSarAr(54.9mg、0.13mmol)に、3,4-ジドロキシフェニル酢酸(21.9mg、0.13mmol、水200μL中)およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(75.4mg、0.39mmol、水200μL中)の溶液を加えた。この混合物を37℃で1時間撹拌した。所望の化合物は、水:メタノールのグラジエント[100%水で20分、続いて水に対して70%メタノール]を使用した逆相HPLCにより未反応試薬から精製した。所望の化合物は、47分にカラムから溶出した。メタノールを減圧下で蒸発させ、生成物を含有する水相を一晩凍結乾燥した。白色残渣をNMRおよびMSにより分析した。
【0206】
本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、多くの修正がなされてもよいことは、本発明の当業者であれば、理解されよう。
【0207】
本発明の以下の特許請求の範囲、および上記の説明において、表現の言い回しまたは必要な暗示により、文脈が別の面を必要とする場合を除き、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変化形は包括的な意味、すなわち、明記した特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加が排除することなく使用される。
【0208】
(実験例6)
ベンジルdiamsarおよびビス-ベンジルdiamsarの合成
【0210】
ベンジルdiamsarおよびビス-ベンジルdiamsarは、水30mLにdiamsar(300mg)を加え、次に、5M HCl(約550μL)を使用してpHを4.0に調節することにより生成した。この溶液に、ベンズアルデヒド75μLを加えた。この溶液を2分間撹拌し、その時間の後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(361mg)の水溶液10mLを加えた。この溶液を1時間撹拌した後、37℃の水浴を備えたロータリーエバポレータで溶媒を留去した。残渣を水50mLに溶解し、ジクロロメタン(2x20mL)により抽出した。水相を蒸発させた。エタノール30mLを残渣に加え、90℃で10分間、加熱した。エタノール溶液を白色固体からデカンテーションし、0.22μmのフィルターユニットによりろ過した。所望の生成物を含有するエタノール溶液を蒸発させた。化合物(6、7)は、水:メタノールのグラジエント[100%水と0.1%ギ酸で20分、次いで水に対して40%メタノールと0.1%ギ酸]を使用して、逆相HPLCにより精製した。所望の化合物6および7は、それぞれ7.3分および27.6分にカラムから溶出した。メタノールを減圧下で蒸発させ、生成物を含有する水相を、一晩凍結乾燥した。白色残渣をNMRおよびMSにより分析した。
ベンジルdiamsar
【0214】
(実施例7)
エチニル-ベンジルdiamsarの合成
【0216】
エチニル-ベンジルdiamsarは、水60mLにdiamsar(300mg)を加え、次に、5M HCl(約550μL)を使用してpHを4.0に調節することにより生成した。この溶液に、エタノール40mL中の4-エチニル-ベンズアルデヒド249mgを加えた。この溶液を2分間撹拌し、その時間の後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(361mg)の水溶液10mLを加えた。この溶液を1時間撹拌した後、残渣を脱脂綿によりろ過し、37℃の水浴を備えたロータリーエバポレータで溶媒を留去した。残渣を水50mLに溶解し、ジクロロメタン(1x10mL)により抽出した。水相を蒸発させた。エタノール30mLを残渣に加え、90℃で10分間、加熱した。エタノール溶液を白色固体からデカンテーションし、0.22μmのフィルターユニットによりろ過した。所望の生成物を含有するエタノール溶液を蒸発させた。所望の化合物は、水:メタノールのグラジエント[100%水と0.1%ギ酸で20分、次いで水に対して40%メタノールと0.1%ギ酸]を使用して、逆相HPLCにより精製した。所望の化合物は、27.5分にカラムから溶出した。溶媒を減圧下で蒸発させた。白色残渣をNMRおよびMSにより分析した。
エチニル-ベンジルdiamsar