【文献】
Appl. Environ. Microbiol., 2002, Vol.68, No.4, pp.1604-1609
【文献】
Appl. Environ. Microbiol., 1998, Vol.64, No.3, pp.1079-1085
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2に記載の組換え微生物であって、EMPPがグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化により、またはグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を遺伝子改変されていない微生物と比較して低減するように遺伝子改変されていることによりさらに減少している、または不活性化されている、前記組換え微生物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に従う微生物は、生成されるアセチル−CoAの流れ(flux)を増大させるためにホスホケトラーゼ活性を有することを特徴とする。通常、微生物はグルコースをエムデン−マイヤーホフ−パルナス経路によりピルベートに変換し、次いでそれを酵素ピルビン酸デヒドロゲナーゼによりアセチル−CoAに変換することができる。しかし、この変換はCO
2の放出を伴い、従って有用な代謝産物の生成において用いられたかもしれない1個の炭素原子が失われる。従って、微生物中のアセチル−CoAの量を増大させるため、炭素原子の喪失を避けるためにアセチル−CoAが異なる経路を介して形成されるのが望ましい。ホスホケトラーゼ活性を有する微生物を用いることにより、ホスフェートおよびフルクトース−6−リン酸がエリトロース−4−リン酸およびアセチルリン酸に変換され、ホスホトランスアセチラーゼがさらにアセチルリン酸を炭素原子を失うことなくアセチル−CoAに変換する。従って、結局、ホスホケトラーゼ活性を有する微生物を用いることによりアセチル−CoAの収率を増大させることができる。そのような微生物は、炭素原子を失うことなくグルコースをアセチル−CoAに変換することができる。ホスホケトラーゼが天然に、または異種性に発現される組み換え微生物が米国特許第7,785,858号および米国特許第7,253,001号において開示されている。
【0016】
用語“ホスホケトラーゼ活性”は、本発明において用いられる際、以下の反応:
【0018】
に従ってD−キシルロース−5−リン酸をD−グリセルアルデヒド−3−リン酸に変換することができる、または上記で示した反応を触媒することができ、且つ以下の反応:
【0020】
に従ってD−フルクトース−6−リン酸をD−エリトロース−4−リン酸に変換することもできる酵素活性を意味する。
【0021】
前者のホスホケトラーゼ類は通常EC 4.1.2.9に分類され、後者はEC 4.1.2.22に分類される。両方のタイプのホスホケトラーゼ類を本発明の範囲において用いることができる。
図1は、本明細書で記述されるようなホスホケトラーゼの2つの選択肢を用いる反応全体に関するスキームを示す。
【0022】
この酵素活性は、当該技術で既知のアッセイにより測定することができる。そのようなアッセイに関する例を下記の実施例の節において示す。
【0023】
本発明の状況において、ホスホケトラーゼ活性を有する微生物は、例えば天然にホスホケトラーゼ活性を有する微生物、または天然にホスホケトラーゼ活性を有さず、ホスホケトラーゼを発現するように遺伝子改変されている微生物、または天然にホスホケトラーゼ活性を有する微生物であって、前記の微生物におけるホスホケトラーゼ活性を増大させるように遺伝子改変されている、例えばホスホケトラーゼをコードする核酸、例えばベクターを用いて形質転換されている微生物であることができる。
【0024】
生得的に、すなわち天然にホスホケトラーゼ活性を有する微生物は当該技術で既知であり、そのいずれも本発明の状況において用いることができる。
【0025】
本発明の状況において、その微生物は、天然にホスホケトラーゼ活性を有しないがホスホケトラーゼの発現を可能にするヌクレオチド配列を含むように遺伝子改変されている微生物であることも可能である。同様に、その微生物は、天然にホスホケトラーゼ活性を有するが、例えばホスホケトラーゼをコードする外来性のヌクレオチド配列の導入によりそのホスホケトラーゼ活性を高めるように遺伝子改変されている微生物であってもよい。
【0026】
目的の酵素を発現させるための微生物の遺伝子改変は、下記で詳細に記述されるであろう。
【0027】
本発明に従う微生物中で発現されるホスホケトラーゼは、あらゆるホスホケトラーゼ、特に原核または真核生物からのホスホケトラーゼであることができる。例えばラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)からの原核生物のホスホケトラーゼが記述されており、実施例の節において例が示されている。
【0028】
本発明の好ましい態様において、そのホスホケトラーゼは、実施例の節において示されるSQ0005によりコードされるようなアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列に少なくともn%同一である配列を含み、且つホスホケトラーゼの活性を有する酵素であり、nは10〜100の整数、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。
【0029】
好ましくは、同一性の程度はそれぞれの配列を上記で言及したSEQ ID NOのいずれか1つのアミノ酸配列と比較することにより決定される。比較される配列が同じ長さを有しない場合、同一性の程度は好ましくは、より長い配列中のアミノ酸残基と同一であるより短い配列中のアミノ酸残基の百分率またはより短い配列中のアミノ酸残基と同一であるより長い配列中のアミノ酸残基の百分率のどちらかを指す。配列の同一性の程度は、好ましくはCLUSTALのような適切なコンピューターアルゴリズムを用いて当該技術で周知の方法に従って決定することができる。
【0030】
特定の配列が例えば参照配列に対して80%同一であるかどうかを決定するためにClustal分析法を用いる場合、初期設定が用いられてよく、またはその設定はアミノ酸配列の比較に関して好ましくは以下の通りである:マトリックス:blosum 30;オープンギャップペナルティー:10.0;エクステンドギャップペナルティー:0.05;遅延分岐(Delay divergent):40;ギャップ分離距離:8。ヌクレオチド配列の比較に関して、エクステンドギャップペナルティーは好ましくは5.0に設定される。
【0031】
好ましくは、同一性の程度はその配列の完全な長さにわたって計算される。
【0032】
本発明に従う微生物中で発現されるホスホケトラーゼは天然に存在するホスホケトラーゼであることができ、またはそれは例えば、例えば酵素活性、安定性等を変化もしくは向上させる変異もしくは他の変化の導入により天然に存在するホスホケトラーゼから派生したホスホケトラーゼであることができる。
【0033】
タンパク質の所望の酵素活性を改変する、および/または向上させるための方法は当業者に周知であり、それには例えばランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発およびそれに続く所望の特性を有する酵素の選択またはいわゆる“指向性進化”のアプローチが含まれる。
【0034】
例えば、原核細胞における遺伝子改変に関して、ホスホケトラーゼをコードする核酸分子をDNA配列の組み換えによる変異誘発または配列改変を可能にするプラスミド中に導入することができる。標準的な方法(Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, 米国、ニューヨークを参照)は、塩基交換を実施することを、または天然もしくは合成の配列を付加することを可能にする。DNA断片をその断片に相補的なアダプターおよびリンカーを用いることによりライゲーションすることができる。さらに、適切な制限部位を提供する、または余分なDNAもしくは制限部位を除去する工学的手段を用いることができる。挿入、欠失または置換が可能である場合において、インビトロ変異誘発、“プライマー修復”、制限またはライゲーションを用いることができる。一般に、配列分析、切断解析(restriction analysis)ならびに生化学および分子生物学の他の方法が分析法として実施される。次いで結果として得られたホスホケトラーゼ変異体を、上記で記述されたようなアッセイにより、所望の活性、例えば酵素活性に関して、特にそれらの増大した酵素活性に関して試験する。
【0035】
上記で記述されたように、本発明の微生物はホスホケトラーゼをコードする核酸分子の導入により遺伝子改変されている微生物であってよい。従って、好ましい態様において、その組み換え微生物は増大したホスホケトラーゼ活性を有するように遺伝子改変されている組み換え微生物である。これは、例えばその微生物をホスホケトラーゼをコードする核酸を用いて形質転換することにより達成することができる。微生物の遺伝子改変の詳細な記述がさらに下記で与えられるであろう。好ましくは、その微生物中に導入された核酸分子はその微生物に関して異種性である核酸分子であり、すなわちそれは前記の微生物中に天然には存在しない。
【0036】
本発明の状況において、“増大した活性”は、その遺伝子改変された微生物中の酵素の、特にホスホケトラーゼの発現および/または活性が、対応する改変されていない微生物におけるよりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%または50%、さらにもっと好ましくは少なくとも70%または80%、そして特に好ましくは少なくとも90%または100%高いことを意味する。さらにもっと好ましい態様において、その発現および/または活性における増大は、少なくとも150%、少なくとも200%、または少なくとも500%であってよい。特に好ましい態様において、その発現は対応する改変されていない微生物におけるよりも少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも100倍、そしてさらにもっと好ましくは少なくとも1000倍高い。
【0037】
用語“増大した”発現/活性は、その対応する改変されていない微生物が対応する酵素、例えばホスホケトラーゼを発現せず、従ってその改変されていない微生物中の対応する発現/活性がゼロである状況も含む。
【0038】
細胞中の所与のタンパク質の発現のレベルを測定するための方法は当業者には周知である。1態様において、発現のレベルの測定は、対応するタンパク質の量を測定することにより行われる。対応する方法は当業者には周知であり、それにはウェスタンブロット、ELISA等が含まれる。別の態様において、発現のレベルの測定は、対応するRNAの量を測定することにより行われる。対応する方法は当業者には周知であり、それには例えばノーザンブロットが含まれる。
【0039】
ホスホケトラーゼの酵素活性を測定するための方法は当該技術で既知であり、既に上記で記述されている。
【0040】
本発明に従う微生物は、さらにホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化により、もしくは改変されていない微生物と比較してホスホフルクトキナーゼ活性を低減することにより、減少した、もしくは不活性化されたエムデン−マイヤーホフ−パルナス経路(EMPP)を有すること、またはホスホフルクトキナーゼ活性を有しないことを特徴とする。従って、その微生物は、ホスホフルクトキナーゼ活性が含まれるEMPPを天然に有しているがそのホスホフルクトキナーゼ活性が完全に消滅するように、もしくはそれが対応する改変されていない微生物と比較して低減するように、のいずれかで改変、特に遺伝子改変されている微生物であるか、またはその微生物は、天然にホスホフルクトキナーゼ活性を有しない微生物であるかのどちらかである。
【0041】
上記で既に言及したように、グルコースがEMPPにより処理されてアセチル−CoAになる場合、最後の段階におけるCO
2の放出により1個の炭素原子が失われる。ホスホケトラーゼを導入することにより、この喪失を回避することができる。フルクトース−6−リン酸はホスホケトラーゼに関する基質であることから、アセチル−CoAにおける収率を増大させるためにはフルクトース−6−リン酸のプールが微生物中で高レベルで保たれることが望ましい。フルクトース−6−リン酸はエムデン−マイヤーホフ−パルナス経路の酵素、すなわちホスホフルクトキナーゼ、に関する基質でもあることから、本発明の組み換え微生物は、改変されていない微生物と比較して低減したホスホフルクトキナーゼ活性を有するか、あるいはホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)が不活性化されている。このことは、フルクトース−6−リン酸または多くのフルクトース−6−リン酸がもはやエムデン−マイヤーホフ−パルナス経路により処理され得ないため、フルクトース−6−リン酸の流れがホスホケトラーゼに、そしてCO
2の喪失のないアセチル−CoAの生成に向けられることを確実にする。ホスホケトラーゼが天然に、または異種性に発現され、且つ低減したホスホフルクトキナーゼ活性を有する組み換え微生物が米国特許第7,785,858号において開示されている。
【0042】
“ホスホフルクトキナーゼ活性”は、ATPおよびフルクトース−6−リン酸をADPおよびフルクトース−1,6−二リン酸に変換する酵素活性(EC 2.7.1.11)を意味する。この酵素活性は、例えばKotlarz et al. (Methods Enzymol. (1982) 90, 60-70)により記述されたような、当該技術で既知のアッセイにより測定することができる。
【0043】
用語“ホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化により、もしくは改変されていない微生物と比較してホスホフルクトキナーゼ活性を低減することにより、減少した、もしくは不活性化されたエムデン−マイヤーホフ−パルナス経路(EMPP)を有することを特徴とする微生物”は、好ましくは、ホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化または改変されていない微生物と比較したホスホフルクトキナーゼ活性の低減が、前記の不活性化または低減をもたらす微生物の遺伝子改変によって達成されている微生物を指す。
【0044】
好ましい態様において、本発明の組み換え微生物は、ホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化により不活性化されたエムデン−マイヤーホフ−パルナス経路(EMPP)を有する組み換え微生物である。本発明の状況におけるホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性は、その微生物中に存在するホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)が、それらがもはや発現されない、および/または機能するホスホフルクトキナーゼの合成をもたらさないように不活性化されていることを意味する。不活性化は当該技術で既知の多くの異なる方法により達成することができる。その不活性化は、例えばホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の破壊により、または選択マーカーの導入による前記の遺伝子(単数または複数)の完全な欠失により達成することができる。あるいは、ホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)のプロモーターに、その遺伝子がもはやmRNAに転写されないように変異導入することができる。当該技術で既知のホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)を不活性化するための他の方法は、以下の方法である:mRNAがもはやタンパク質に翻訳されることができないように、ホスホフルクトキナーゼ遺伝子(単数または複数)の転写産物に相補的なヌクレオチド配列を有するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること、RNAi作用により前記の遺伝子(単数または複数)の発現を抑制するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること;前記の遺伝子(単数または複数)の転写産物を特異的に切断する活性を有するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること;またはコサプレッション作用により前記の遺伝子(単数または複数)の発現を抑制するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること。これらのポリヌクレオチドはベクター中に組み込むことができ、それを形質転換により微生物中に導入してホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化を達成することができる。
【0045】
本発明の状況における用語“不活性化”は、好ましくは完全な不活性化、すなわちその微生物がホスホフルクトキナーゼ活性を示さないことを意味する。これは、特に、用いられる増殖条件とは無関係にその微生物がホスホフルクトキナーゼ活性を示さないことを意味する。好ましくは、“不活性化”は、その微生物中に存在するホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)がその酵素の発現を妨げるように遺伝子改変されていることを意味する。これは、例えば、その遺伝子もしくはその一部の欠失(ここで、その一部の欠失は、酵素の発現を妨げる)により、またはコード領域もしくはプロモーター領域のいずれかにおけるその遺伝子の破壊(ここで、その破壊は、タンパク質が発現しない作用もしくは機能不全のタンパク質が発現する作用を有する)により達成することができる。
【0046】
好ましい態様において、本発明の組み換え微生物は、改変されていない微生物と比較してホスホフルクトキナーゼ活性を低減することにより減少したエムデン−マイヤーホフ−パルナス経路(EMPP)を有する組み換え微生物である。好ましくは、この低減はその微生物の遺伝子改変により達成される。これは、例えばプロモーターおよび/または酵素のランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発ならびにそれに続く所望の特性を有するプロモーターおよび/または酵素の選択により、または上記で記述されたような相補的核酸配列もしくはRNAi作用により達成することができる。微生物の遺伝子改変の詳細な記述がさらに下記で与えられるであろう。
【0047】
本発明の状況において、“低減した活性”は、遺伝子改変された微生物における酵素の、特にホスホフルクトキナーゼの発現および/または活性が、対応する改変されていない微生物におけるよりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%または50%、さらにもっと好ましくは少なくとも70%または80%、そして特に好ましくは少なくとも90%または100%低いことを意味する。細胞中の所与のタンパク質の発現のレベルを測定するための方法は、当業者には周知である。ホスホフルクトキナーゼの低減した酵素活性を測定するためのアッセイは当該技術で既知である。
【0048】
別の態様において、本発明に従う微生物は、ホスホフルクトキナーゼ活性を有しない微生物である。これは好ましくはそのような微生物が天然にホスホフルクトキナーゼ活性を有しないことを意味する。これはそのような微生物が天然にそのゲノム中にホスホフルクトキナーゼ活性を有する酵素をコードするヌクレオチド配列を含有しないことを意味する。そのような微生物の例は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)(J. S. Suo et al., Nat. Biotechnol. 23:63 (2005))およびラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)(C. Fleige et al., Appl. Microb. Cell Physiol. 91:769 (2011))である。
【0049】
本発明に従う微生物は、さらにグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化により、もしくは改変されていない微生物と比較してグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を低減することにより減少した、もしくは不活性化されたペントースリン酸経路(PPP)の酸化分枝を有すること、またはグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有しないことを特徴とする。従って、その微生物は天然にグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性が含まれるPPPを有するがそれがそのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性が完全に消滅するように、もしくはそれが対応する改変されていない微生物と比較して低減するように、のいずれかで改変、特に遺伝子改変されている微生物であるか、またはその微生物は天然にグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有しない微生物であるかのどちらかである。
【0050】
ペントースリン酸経路の酸化分枝を減少させる、または不活性化することは、グルコース−6−リン酸がもはやそのペントースリン酸回路により引き出されないと考えられるため、アセチル−CoAにおける収率をさらに増大させる。その微生物における全てまたはほとんど全てのグルコース−6−リン酸がフルクトース−6−リン酸に変換されると考えられ、次いでそれがさらにアセチル−CoAに変換されるであろう。
【0051】
“グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性”は、グルコース−6−リン酸およびNADP
+を6−ホスホグルコノ−δ−ラクトンおよびNADPHに変換する酵素活性を意味する(EC 1.1.1.49)。この酵素活性は、例えばNoltmann et al. (J. Biol. Chem. (1961) 236, 1225-1230)により記述されたような、当該技術で既知のアッセイにより測定することができる。
【0052】
用語“グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化により、もしくは改変されていない微生物と比較してグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を低減することにより、減少した、もしくは不活性化されたペントースリン酸経路(PPP)の酸化分枝を有することを特徴とする微生物”は、好ましくは、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化または改変されていない微生物と比較したグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性の低減が、前記の不活性化または低減をもたらす微生物の遺伝子改変によって達成されている微生物を指す。
【0053】
好ましい態様において、本発明の組み換え微生物は、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化により不活性化されたペントースリン酸経路(PPP)の酸化分枝を有する組み換え微生物である。本発明の状況におけるグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化は、その微生物中に存在するグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)が、それらがもはや発現されない、および/または機能するグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼの合成をもたらさないように不活性化されていることを意味する。不活性化は当該技術で既知の多くの異なる方法により達成することができる。その不活性化は、例えばグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の破壊により、または選択マーカーの導入による前記の遺伝子(単数または複数)の完全な欠失により達成することができる。あるいは、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)のプロモーターに、その遺伝子がもはやmRNAに転写されない方法で変異導入することができる。当該技術で既知のホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)を不活性化するための他の方法は、以下の方法である:mRNAがもはやタンパク質に翻訳されることができないように、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(単数または複数)の転写産物に相補的なヌクレオチド配列を有するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること、RNAi作用により前記の遺伝子(単数または複数)の発現を抑制するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること;前記の遺伝子(単数または複数)の転写産物を特異的に切断する活性を有するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること;またはコサプレッション作用により前記の遺伝子(単数または複数)の発現を抑制するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること。これらのポリヌクレオチドはベクター中に組み込むことができ、それを形質転換により微生物中に導入してグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化を達成することができる。
【0054】
本発明の状況における用語“不活性化”は、好ましくは完全な不活性化、すなわちその微生物がグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を示さないことを意味する。これは、特にその微生物が用いられる増殖条件と無関係にグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を示さないことを意味する。
【0055】
好ましくは、“不活性化”はその微生物中に存在するグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)がその酵素の発現を妨げるように遺伝子改変されていることを意味する。これは、例えばその遺伝子もしくはその一部の欠失(ここで、その一部の欠失は、酵素の発現を妨げる)により、またはそのコード領域もしくはプロモーター領域のいずれかにおけるその遺伝子の破壊(ここで、その破壊は、タンパク質が発現しない作用もしくは機能不全のタンパク質が発現する作用を有する)により達成することができる。
【0056】
好ましい態様において、本発明の組み換え微生物は、改変されていない微生物と比較してグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を低減することにより減少したペントースリン酸経路(PPP)の酸化分枝を有する組み換え微生物である。好ましくは、この低減はその微生物の遺伝子改変により達成される。これは、例えばプロモーターおよび/または酵素のランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発ならびにそれに続く所望の特性を有するプロモーターおよび/または酵素の選択により、または上記で記述されたような相補的核酸配列もしくはRNAi作用により達成することができる。微生物の遺伝子改変の詳細な記述がさらに下記で与えられるであろう。
【0057】
本発明の状況において、“低減した活性”は、遺伝子改変された微生物における酵素の、特にグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼの発現および/または活性が、対応する改変されていない微生物におけるよりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%または50%、さらにもっと好ましくは少なくとも70%または80%、そして特に好ましくは少なくとも90%または100%低いことを意味する。細胞中の所与のタンパク質の発現のレベルを測定するための方法は、当業者には周知である。グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼの低減した酵素活性を測定するためのアッセイは当該技術で既知である。
【0058】
別の態様において、本発明に従う微生物は、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有しない微生物である。これは好ましくはそのような微生物が天然にグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有しないことを意味する。これはそのような微生物が天然にそのゲノム中にグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードするヌクレオチド配列を含有しないことを意味する。そのような微生物の例は、アシネトバクター・バイリイ(Acinetobacter baylyi)(Barbe et al., Nucl. Acids Res. 32 (2004), 5766-5779)、超好熱性の門の古細菌、例えばスルフォロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)(Nunn et al., J. Biol. Chem. 285 (2010), 33701-33709)、サーモプロテウス・テナックス(Thermoproteus tenax)、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)およびピクロフィルス・トリリダス(Picrophilus torridus)(Reher and Schoenheit, FEBS Lett. 580 (2006), 1198-1204)である。
【0059】
さらなる態様において、本発明に従う微生物はさらに、フルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有すること、好ましくはグルコースで増殖させた際にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有することを特徴とする。フルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼは、フルクトース−1,6−二リン酸をフルクトース−6−リン酸および遊離のホスフェートに加水分解する糖新生に関与している酵素である。しかし、基本的に全ての生物において、グルコースの存在下ではフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性は抑制されており、グルコースはEMPPにより処理される(解糖)。ホスホケトラーゼ活性を有し、且つホスホフルクトキナーゼ活性を有しない、またはホスホフルクトキナーゼ活性が低減している、もしくはそのホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子が不活性化されている本発明の微生物では、ホスホケトラーゼ(EC 4.1.2.9またはEC 4.1.2.22)によるフルクトース−6−リン酸の変換によるアセチル−CoAの収率を、フルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性の存在を確実にすることにより、例えばグルコースの存在下でのフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼの抑制解除により高めることができる。フルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性の存在は、結果としてフルクトース−1,6−二リン酸アルドラーゼにより生成されたフルクトース−1,6−二リン酸のフルクトース−6−リン酸への再利用をもたらし、次いでそれをホスホケトラーゼ経路により再度アセチル−CoAに変換することができる。実際、ホスホケトラーゼの産物アセチルリン酸は酵素リン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.8)の作用によりアセチル−CoAに相互変換する。従って、本発明の組み換え微生物はアセチル−CoAをグルコースから3:1に近い化学量論で生成することができる。その反応の合計は式2で示される:
【0061】
用語“フルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性”は、フルクトース−1,6−二リン酸およびH
2Oをフルクトース−6−リン酸およびホスフェートに変換する酵素活性を意味する(EC 3.1.3.11)。この酵素活性は、例えばHines et al. (J. Biol. Chem. (2007) 282, 11696-11704)により記述されたような当該技術で既知のアッセイにより測定することができる。用語“フルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性”および“フルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ”は、それらがフルクトース−1,6−二リン酸アルドラーゼ/ホスファターゼ活性を示すという意味で二機能性である酵素も含む。そのような二機能性酵素はほとんどの古細菌および深く分岐している細菌系統において発現しており、ほとんどの場合で熱安定性である。そのような酵素は、例えばサーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)、サルフォロバス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)、イグニコックス・ホスピタリス(Ignicoccus hospitalis)、センアーケウム・シンビオサム(Cenarchaeum symbiosum)、サルフォロバス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricas)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーモプロテウス・ニュートロフィラス(Thermoproteus neutrophilus)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)および多くの他の細菌に関して報告されている(例えばSay and Fuchs (Nature 464 (2010), 1077); Fushinobu et al. (Nature 478 (2011), 538; Du et al. (Nature 478 (2011), 534を参照)。
【0062】
用語“グルコースで増殖させた際のフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性”は、その微生物が、その微生物をグルコースで増殖させた際にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有する酵素を発現することを意味する。“グルコースで増殖させた”は、その微生物を炭素源として特にグルコースを含有する培地中で増殖させることを意味する。好ましくは、この用語はその微生物を唯一の炭素源としてグルコースを含有する培地中で増殖させることを意味する。
【0063】
本発明の状況において、特にグルコースで増殖させた際にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有する微生物は、例えば特にグルコースで増殖させた際に天然にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有する微生物、または特にグルコースで増殖させた際に天然にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有さず、かつ特にグルコースで増殖させた際にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼを発現するように遺伝子改変されている微生物であることができる。それは、特にグルコースで増殖させた際に天然にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有する微生物であって、前記の微生物におけるホスホケトラーゼ活性を増大させるために遺伝子改変されている、例えばフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼをコードする核酸、例えばベクターを用いて形質転換されている微生物であることもできる。
【0064】
特にグルコースで増殖させた際に、生得的に、すなわち天然にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有する微生物は当該技術で既知であり、そのいずれも本発明の状況において用いることができる。
【0065】
本発明の状況において、その微生物は、特にグルコースで増殖させた際に天然にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有しないが特にグルコースで増殖させた際にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼを発現することができるように遺伝子改変されている微生物であることも可能である。これは、例えばフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子のプロモーターに、その微生物をグルコースで増殖させた際にもはやその遺伝子が抑制されない方法で変異導入することにより達成することができ、またはそのプロモーターをその微生物をグルコースで増殖させた際に制御されない別のプロモーター、例えば構成的プロモーターで置き換えることができる。
【0066】
同様に、その微生物は、特にグルコースで増殖させた際に天然にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有するが、例えばフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼをコードする外来性のヌクレオチド配列の導入により特にグルコースで増殖させた際のそのフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を高める/増大させるように遺伝子改変されている微生物であってもよい。
【0067】
目的の酵素を発現させるための微生物の遺伝子改変は、下記で詳細に記述されるであろう。
【0068】
本発明に従うフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼは天然に存在するフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼであることができ、またはそれは例えば、例えば酵素活性、安定性等を変化もしくは向上させる変異もしくは他の変化の導入により天然に存在するフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼから派生したフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼであることができる。タンパク質の所望の酵素活性を改変する、および/または向上させるための方法は当業者に周知であり、上記で記述されている。次いで結果として得られたフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ変異体をそれらの特性、例えば酵素活性または制御に関して試験する。フルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼの酵素活性を測定するためのアッセイは当該技術で既知である。1態様において、そのフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼはフィードバック阻害により制御されない酵素である。
【0069】
好ましい態様において、その組み換え微生物は増大したフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼ活性を有するように遺伝子改変されている。これは例えばその微生物をフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼをコードする核酸を用いて形質転換することにより達成することができる。微生物の遺伝子改変の詳細な記述がさらに下記で与えられるであろう。
【0070】
本発明の状況において、“増大した活性”は、グルコースで増殖させた際のその遺伝子改変された微生物中の酵素の、特にフルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼの発現および/または活性が、グルコースで増殖させた際の対応する改変されていない微生物におけるよりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%または50%、さらにもっと好ましくは少なくとも70%または80%、そして特に好ましくは少なくとも90%または100%高いことを意味する。さらにもっと好ましい態様において、その発現および/または活性における増大は、少なくとも150%、少なくとも200%、または少なくとも500%であってよい。特に好ましい態様において、その発現は特にグルコースで増殖させた際の対応する改変されていない微生物におけるよりも少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも100倍、そしてさらにもっと好ましくは少なくとも1000倍高い。
【0071】
細胞中の所与のタンパク質の発現のレベルを測定するための方法は当業者には周知である。1態様において、発現のレベルの測定は、対応するタンパク質の量を測定することにより行われる。対応する方法は当業者には周知であり、それにはウェスタンブロット、ELISA等が含まれる。別の態様において、発現のレベルの測定は、対応するRNAの量を測定することにより行われる。対応する方法は当業者には周知であり、それには例えばノーザンブロットが含まれる。
【0072】
フルクトース−1,6−二リン酸ホスファターゼの酵素活性を測定するための方法は当該技術で既知である。
【0073】
別の態様において、本発明に従う微生物は、さらにEMPPがグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化により、または改変されていない微生物と比較してグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を低減することによりさらに減少している、または不活性化されていることを特徴とする。グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼを減少させる、または不活性化することによりEMPPをさらに下流の段階においてさらに減少させることは、微生物において生成され得るグリセルアルデヒド3−リン酸の解糖を通じてのアセチル−CoAへの処理(それによりピルビン酸デヒドロゲナーゼにより触媒される最後の段階におけるCO
2の放出により1個の炭素原子が失われるであろう)が行われない、またはほとんど行われないであろうことを確実にする。従って、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を減少させる、または不活性化することによりEMPPを遮断することは、全体的な流れがホスホケトラーゼに向けられることをさらに確実にする。
【0074】
“グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性”は、グリセルアルデヒド3−リン酸、ホスフェートおよびNAD
+を3−ホスホ−D−グリセロイルリン酸およびNADH+H
+に変換する酵素活性を意味する(EC 1.2.1.12)。この活性は、例えばD’Alessio et al. (J. Biol. Chem. (1971) 246, 4326-4333)により記述されたような、当該技術で既知のアッセイにより測定することができる。
【0075】
用語“グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化により、または改変されていない微生物と比較してグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を低減することにより減少した、または不活性化されたエムデン−マイヤーホフ−パルナス経路(EMPP)を有することを特徴とする微生物”は、好ましくはグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化または改変されていない微生物と比較したグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性の低減が、前記の不活性化または低減をもたらす微生物の遺伝子改変によって達成されている微生物を指す。
【0076】
好ましい態様において、本発明の組み換え微生物は、EMPPがグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化により、または改変されていない微生物と比較してグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を低減することによりさらに減少している、または不活性化されている組み換え微生物である。本発明の状況におけるグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性は、その微生物中に存在するグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)が、それらがもはや発現されない、および/または機能するグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼの合成をもたらさないように不活性化されていることを意味する。不活性化は当該技術で既知の多くの異なる方法により達成することができる。その不活性化は、例えばグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の破壊により、または選択マーカーの導入による前記の遺伝子(単数または複数)の完全な欠失により達成することができる。あるいは、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のプロモーターに、その遺伝子(単数または複数)がもはやmRNAに転写されない方法で変異導入することができる。当該技術で既知のグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)を不活性化するための他の方法は、以下の方法である:mRNAがもはやタンパク質に翻訳されることができないように、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(単数または複数)の転写産物に相補的なヌクレオチド配列を有するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること、RNAi作用により前記の遺伝子(単数または複数)の発現を抑制するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること;前記の遺伝子(単数または複数)の転写産物を特異的に切断する活性を有するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること;またはコサプレッション作用により前記の遺伝子(単数または複数)の発現を抑制するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること。これらのポリヌクレオチドはベクター中に組み込むことができ、それを形質転換により微生物中に導入してグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化を達成することができる。
【0077】
本発明の状況における用語“不活性化”は、好ましくは完全な不活性化、すなわちその微生物がグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を示さないことを意味する。これは、特にその微生物が用いられる増殖条件と無関係にグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を示さないことを意味する。
【0078】
好ましくは、“不活性化”はその微生物中に存在するグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(単数または複数)がその酵素の発現を妨げるように遺伝子改変されていることを意味する。これは、例えばその遺伝子もしくはその一部の欠失(ここで、その一部の欠失は、酵素の発現を妨げる)により、またはそのコード領域もしくはプロモーター領域のいずれかにおけるその遺伝子の破壊(ここで、その破壊は、タンパク質が発現しない作用もしくは機能不全のタンパク質が発現する作用を有する)により達成することができる。
【0079】
好ましい態様において、本発明の組み換え微生物は、改変されていない微生物と比較してグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を低減することにより減少したEMPPを有する組み換え微生物である。好ましくは、この低減はその微生物の遺伝子改変により達成される。これは、例えばプロモーターおよび/または酵素のランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発ならびにそれに続く所望の特性を有するプロモーターおよび/または酵素の選択により、または上記で記述されたような相補的核酸配列もしくはRNAi作用により達成することができる。微生物の遺伝子改変の詳細な記述がさらに下記で与えられるであろう。
【0080】
本発明の状況において、“低減した活性”は、遺伝子改変された微生物における酵素の、特にグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼの発現および/または活性が、対応する改変されていない微生物におけるよりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%または50%、さらにもっと好ましくは少なくとも70%または80%、そして特に好ましくは少なくとも90%または100%低いことを意味する。細胞中の所与のタンパク質の発現のレベルを測定するための方法は、当業者には周知である。グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼの低減した酵素活性を測定するためのアッセイは当該技術で既知である。
【0081】
本発明の状況における用語“微生物”は、細菌を、ならびに真菌、例えば酵母を、そして藻類および古細菌をも指す。1つの好ましい態様において、その微生物は細菌である。原則としてあらゆる細菌を用いることができる。本発明に従うプロセスにおいて用いられるために好ましい細菌は、バシラス、クロストリジウム、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)、ザイモモナスまたはエシェリキア(Escherichia)属の細菌である。特に好ましい態様において、その細菌はエシェリキア属に属し、さらにもっと好ましくは大腸菌種に属する。別の好ましい態様において、その細菌はシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)種に、またはザイモモナス・モビリス種に、またはコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)種に属する。
【0082】
別の好ましい態様において、その微生物は真菌、より好ましくはサッカロミセス、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)またはピキア(Pichia)属の真菌、そしてさらにもっと好ましくは出芽酵母、分裂酵母、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリベロマイセス・マルキシアナス(Kluyveromyces marxianus)、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・トルラ(Pichia torula)またはピキア・ユチリス(Pichia utilis)種の真菌である。
【0083】
その組み換え微生物が細菌であるより好ましい態様において、そのPEP依存性PTSトランスポーターをコードしている遺伝子(単数または複数)が不活性化されている。本発明の状況において、不活性化は、微生物中に存在するPEP依存性PTSトランスポーターをコードする遺伝子(単数または複数)が、それらがもはや機能するPEP依存性PTSトランスポーターを発現しない、および/またはその合成をもたらさないように不活性化されていることを意味する。PEP依存性PTSトランスポーターをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化は、その細菌がもはやPEP依存性PTSトランスポーターによりグルコースを輸送することができないような不活性化であるべきである。
【0084】
(例えば大腸菌、B.サブティリス(B.subtilis)からの)PEP依存性PTSトランスポーターが当該技術で既知である。PEP依存性PTSトランスポーターの不活性化の例が下記の実施例の節において示されている。
【0085】
不活性化は当該技術で既知の多くの異なる方法により達成することができる。その不活性化は、例えばPEP依存性PTSトランスポーターをコードする遺伝子(単数または複数)の破壊により、または選択マーカーの導入による前記の遺伝子(単数または複数)の完全な欠失により達成することができる。あるいは、PEP依存性PTSトランスポーターをコードする遺伝子(単数または複数)のプロモーターに、その遺伝子がもはやmRNAに転写されない方法で変異導入することができる。当該技術で既知のPEP依存性PTSトランスポーターをコードする遺伝子(単数または複数)を不活性化するための他の方法は、以下の方法である:mRNAがもはやタンパク質に翻訳されることができないように、PEP依存性PTSトランスポーター遺伝子(単数または複数)の転写産物に相補的なヌクレオチド配列を有するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること、RNAi作用により前記の遺伝子(単数または複数)の発現を抑制するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること;前記の遺伝子(単数または複数)の転写産物を特異的に切断する活性を有するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること;またはコサプレッション作用により前記の遺伝子(単数または複数)の発現を抑制するRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させること。これらのポリヌクレオチドはベクター中に組み込むことができ、それを形質転換により微生物中に導入してPEP依存性PTSトランスポーターをコードする遺伝子(単数または複数)の不活性化を達成することができる。
【0086】
用語“組み換え”は、本発明の微生物が野生型もしくは改変されていない微生物と比較して上記で定義されたような酵素をコードする核酸分子を含有するように、または野生型もしくは改変されていない微生物と比較して上記で定義されたような酵素をコードする遺伝子が欠失されているように遺伝子改変されていることを意味する。
【0087】
上記で定義されたような酵素をコードする核酸分子は、単独で、またはベクターの一部として用いることができる。
【0088】
その核酸分子は、さらにその核酸分子中に含まれるポリヌクレオチドに作動可能に(operably)連結された発現制御配列を含むことができる。本記述全体を通して用いられる用語“作動的に(operatively)連結された”または“作動可能に連結された”は、発現がその発現制御配列と適合性の条件下で達成されるような方式で発現させるためのポリヌクレオチド中の1個以上の発現制御配列およびコード領域の間の連結を指す。
【0089】
発現は、異種性DNA配列の、好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写を含む。真菌における、ならびに細菌における発現を確実にする調節エレメントは当業者に周知である。それらはプロモーター、エンハンサー、終結シグナル、標的化シグナル等を含む。さらに下記でベクターに関する説明と関連して例が与えられている。
【0090】
核酸分子と関連する使用のためのプロモーターは、その由来に関して、および/または発現させるべき遺伝子に関して同種または異種であってよい。適切なプロモーターは、例えば構成的発現に適しているプロモーターである。しかし、外的影響により決定される時点においてのみ活性化されるプロモーターを用いることもできる。人工の、または化学的に誘導することができるプロモーターをこの状況において用いることができる。
【0091】
そのベクターはさらに、そのベクター中に含有される前記のポリヌクレオチドに作動可能に連結された発現制御配列を含むことができる。これらの発現制御配列は、細菌または真菌における翻訳可能なRNAの転写および合成を確実にするのに適していてよい。
【0092】
加えて、分子生物学において通常の方法(例えばSambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, 米国、ニューヨークを参照)により、改変された生物学的特性を有する可能性のあるポリペプチドの合成をもたらす様々な変異をそのポリヌクレオチド中に挿入することが可能である。アミノ酸配列の改変が例えばそのポリペプチドの生物学的活性または制御に影響を及ぼす位置における点変異の導入が考えられる。
【0093】
さらに、改変された基質または生成物特異性を有する変異体を調製することができる。好ましくは、そのような変異体は増大した活性を示す。あるいは、基質結合活性を失うことなくその触媒活性が消滅した変異体を調製することができる。
【0094】
さらに、上記で定義されたような酵素をコードするポリヌクレオチド中への変異の導入は、前記のポリヌクレオチドによりコードされる酵素の遺伝子発現速度および/または活性を低減または増大させることを可能にする。
【0095】
遺伝子改変された細菌または真菌に関して、上記で定義されたような酵素またはこれらの分子の一部をコードするポリヌクレオチドを、DNA配列の組み換えによる変異誘発または配列改変を可能にするプラスミド中に導入することができる。標準的な方法(Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, 米国、ニューヨークを参照)は、塩基の置換を実施することを、または天然もしくは合成の配列を付加することを可能にする。DNA断片は、その断片にアダプターおよびリンカーを適用することにより、互いに連結することができる。さらに、適切な制限部位を提供する、または余分なDNAもしくは制限部位を除去する工学的手段を用いることができる。挿入、欠失または置換が可能である場合において、インビトロ変異誘発、“プライマー修復”、制限またはライゲーションを用いることができる。一般に、配列分析、切断解析ならびに生化学および分子生物学の他の方法が分析法として実施される。
【0096】
従って、本発明によれば、上記のポリヌクレオチド、核酸分子またはベクターを真菌または細菌中に導入することを含め、真菌または細菌を遺伝子改変することにより組み換え微生物を生成することができる。
【0097】
本発明は、上記のポリヌクレオチド、核酸分子もしくはベクターを用いて遺伝子改変された、または遺伝子改変された細菌もしくは真菌を生成するための上記で言及された方法により得ることができる組み換え微生物、特に細菌および真菌に、ならびにそのような形質転換された細菌もしくは真菌に由来し、上記で定義されたようなポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含有する細胞に関する。好ましい態様において、その宿主細胞は、それがゲノム中に安定に組み込まれたポリヌクレオチドを含有するような方式で遺伝子改変されている。
【0098】
そのポリヌクレオチドは、上記で記述された活性のいずれかを有するポリペプチドの生成をもたらすように発現される。様々な発現系の概要は、例えばMethods in Enzymology 153 (1987), 385-516に、Bitter et al. (Methods in Enzymology 153 (1987), 516-544)に、およびSawers et al. (Applied Microbiology and Biotechnology 46 (1996), 1-9)、Billman-Jacobe (Current Opinion in Biotechnology 7 (1996), 500-4)、Hockney (Trends in Biotechnology 12 (1994), 456-463)、Griffiths et al., (Methods in Molecular Biology 75 (1997), 427-440)に含まれている。酵母発現系の概要は、例えばHensing et al. (Antonie van Leuwenhoek 67 (1995), 261-279)、Bussineau et al. (Developments in Biological Standardization 83 (1994), 13-19)、Gellissen et al. (Antonie van Leuwenhoek 62 (1992), 79-93)、Fleer (Current Opinion in Biotechnology 3 (1992), 486-496)、Vedvick (Current Opinion in Biotechnology 2 (1991), 742-745)およびBuckholz (Bio/Technology 9 (1991), 1067-1072)により与えられている。
【0099】
発現ベクターは文献において広く記述されてきた。原則として、それらは選択マーカー遺伝子および選択された宿主中での複製を確実にする複製起点だけでなく、細菌またはウイルスのプロモーター、およびほとんどの場合において転写に関する終結シグナルも含有する。そのプロモーターおよび終結シグナルの間に、一般にコードDNA配列の挿入を可能にする少なくとも1個の制限部位またはポリリンカーが存在する。対応する遺伝子の転写を天然に制御しているDNA配列を、それが選択された宿主生物中で活性である場合、プロモーター配列として用いることができる。しかし、この配列を他のプロモーター配列と交換することもできる。その遺伝子の構成的発現を確実にするプロモーターおよびその遺伝子の発現の計画的な制御を可能にする誘導可能なプロモーターを用いることが可能である。これらの特性を有する細菌およびウイルスのプロモーター配列は文献において詳細に記述されている。微生物(例えば大腸菌、出芽酵母)における発現のための制御配列は、その文献において十分に記述されている。下流の配列の特に高い発現を可能にするプロモーターは、例えばT7プロモーター(Studier et al., Methods in Enzymology 185 (1990), 60-89)、lacUV5、trp、trp−lacUV5(DeBoer et al., in Rodriguez and Chamberlin (編者), Promoters, Structure and Function; Praeger, ニューヨーク, (1982), 462-481; DeBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983), 21-25)、lp1、rac(Boros et al., Gene 42 (1986), 97-100)である。好ましくは誘導可能なプロモーターがポリペプチドの合成に関して用いられる。これらのプロモーターは、しばしば構成的プロモーターよりも高いポリペプチド収量をもたらす。最適なポリペプチドの量を得るため、2段階プロセスがしばしば用いられる。まず、宿主細胞を最適な条件下で比較的高い細胞密度まで培養する。第2段階において、用いられるプロモーターのタイプに応じて転写を誘導する。この点において、ラクトースまたはIPTG(=イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)により誘導することができるtacプロモーターが特に適切である(deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80 (1983), 21-25)。転写に関する終結シグナルもその文献において記述されている。
【0100】
本発明に従うポリヌクレオチドまたはベクターを用いた宿主細胞の形質転換は、例えばSambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, 米国、ニューヨーク;Methods in Yeast Genetics, A Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1990において記述されているような標準的な方法により実施することができる。その宿主細胞を、特にpH値、温度、塩濃度、通気、抗生物質、ビタミン類、微量元素等に関して、用いられるその特定の宿主細胞の要求を満たす栄養培地中で培養する。
【0101】
本発明の別の観点において、その組み換え微生物はさらに、それがアセチル−CoAをアセトンに変換することができることを特徴とする。そのような組み換え微生物を提供するための方法は、例えば欧州特許第2,295,593号において開示されている。本発明の状況における用語“アセチル−CoAをアセトンに変換することができる”は、その生物/微生物がアセトンのアセチル−CoAからの生成を可能にする酵素活性を提供する酵素の存在により細胞内でアセトンを生成する能力を有することを意味する。
【0102】
アセトンは特定の微生物、例えばクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、バシラス・ポリミクサ(Bacillus polymyxa)およびシュードモナス・プチダにより産生される。アセトンの合成はクロストリジウム・アセトブチリカムにおいて最もよく特性付けられている。それは2分子のアセチル−CoAが縮合されてアセトアセチル−CoAになる反応(反応段階1)で開始される。この反応はアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.9)により触媒される。次いでアセトアセチル−CoAは酢酸または酪酸との反応によりアセトアセテートに変換され、結果としてアセチル−CoAまたはブチリル−CoAの生成ももたらされる(反応段階2)。この反応は例えばアセトアセチルCoAトランスフェラーゼ(EC 2.8.3.8)により触媒される。アセトアセチルCoAトランスフェラーゼは様々な種から、例えばそれがatoAD遺伝子によりコードされている大腸菌から、またはそれがctfAB遺伝子によりコードされているクロストリジウム・アセトブチリカムから既知である。しかし、他の酵素、例えば3−オキソ酸CoAトランスフェラーゼ(EC 2.8.3.5)またはコハク酸CoAリガーゼ(EC 6.2.1.5)もこの反応を触媒することができる。
【0103】
最後に、アセトアセテートはアセトアセテートデカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.4)により触媒される脱炭酸段階(反応段階3)によりアセトンに変換される。
【0104】
上記で記述された反応段階1および2ならびにそれらを触媒する酵素はアセトン合成に特徴的なものではなく、様々な生物で見付けることができる。対照的に、アセトアセテートデカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.4)により触媒される反応段階3はアセトンを産生することができる生物においてのみ見付かっている。
【0105】
好ましい態様において、本発明の組み換え微生物は、天然にアセトンを産生する能力を有する微生物である。従って、好ましくはその微生物はクロストリジウム、バシラスまたはシュードモナス属に、より好ましくはクロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキ、クロストリジウム・セルロリティカム、バシラス・ポリミクサまたはシュードモナス・プチダ種に属する。
【0106】
別の好ましい態様において、本発明の組み換え微生物は、天然にアセトンを産生しない生物/微生物に由来するが、アセトンを産生するように、すなわちその微生物におけるアセトンの産生を可能にするために必要な遺伝子(単数または複数)を導入することにより遺伝子改変されている微生物である。原則としてあらゆる微生物をこの方法で遺伝子改変することができる。アセトンの合成の原因である酵素は上記で記述されている。対応する酵素をコードする遺伝子は当該技術で既知であり、所与の微生物をアセトンを産生するように遺伝子改変するために用いることができる。上記で記述されたように、アセトン合成の反応段階1および2はほとんどの生物において天然に起こる。しかし、反応段階3はアセトン合成に特徴的かつ重要である。従って、好ましい態様において、天然にアセトンを産生しない微生物に由来する遺伝子改変された微生物は、脱炭酸によるアセトアセテートのアセトンへの変換を触媒する酵素、例えばアセトアセテートデカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.4)をコードするヌクレオチド配列を含有するように改変されている。この酵素をコードするいくつかの生物からのヌクレオチド配列、例えば以下の生物からのadc遺伝子が当該技術において既知である:クロストリジウム・アセトブチリカム(Uniprot受入番号P23670およびP23673)、クロストリジウム・ベイジェリンキ(クロストリジウムMP;Q9RPK1)、クロストリジウム・パストウリアヌム(Clostridium pasteurianum)(Uniprot受入番号P81336)、ブラディリゾビウム種(Bradyrhizobium sp.)(株BTAi1/ATCC BAA−1182;Uniprot受入番号A5EBU7)、ブルクホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)(ATCC 10399 A9LBS0)、ブルクホルデリア・マレイ(Uniprot受入番号A3MAE3)、ブルクホルデリア・マレイ FMH A5XJB2、ブルクホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)(Uniprot受入番号A0B471)、ブルクホルデリア・アンビファリア(Burkholderia ambifaria)(Uniprot受入番号Q0b5P1)、ブルクホルデリア・フィトフィルマンス(Burkholderia phytofirmans)(Uniprot受入番号B2T319)、ブルクホルデリア種(Uniprot受入番号Q38ZU0)、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)(Uniprot受入番号B2TLN8)、ラルストニア・ピケッティ(Ralstonia pickettii)(Uniprot受入番号B2UIG7)、ストレプトマイセス・ノガレーター(Streptomyces nogalater)(Uniprot受入番号Q9EYI7)、ストレプトマイセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)(Uniprot受入番号Q82NF4)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(Uniprot受入番号Q5ZXQ9)、ラクトバシラス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)(Uniprot受入番号Q1WVG5)、ロドコッカス種(Rhodococcus spec.)(Uniprot受入番号Q0S7W4)、ラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)(Uniprot受入番号Q890G0)、リゾビウム・レグミノサルム(Rhizobium leguminosarum)(Uniprot受入番号Q1M911)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)(Uniprot受入番号Q03B66)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)(Uniprot受入番号Q0BLC9)、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythreae)(Uniprot受入番号A4FKR9)、コラルカエウム・クリュプトフィルム(Korarchaeum cryptofilum)(Uniprot受入番号B1L3N6)、バシラス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)(Uniprot受入番号A7Z8K8)、コクリオボルス・ヘテロストロフス(Cochliobolus heterostrophus)(Uniprot受入番号Q8NJQ3)、スルフォロブス・アイランディカス(Sulfolobus islandicus)(Uniprot受入番号C3ML22)、およびフランシセラ・ツラレンシス亜種ホラークティカ(holarctica)(OSU18株)。
【0107】
より好ましくは、その微生物は、上記で言及されたアセトン合成の反応段階2、すなわちアセトアセチルCoAのアセトアセテートへの変換を触媒することができる酵素をコードする核酸分子で形質転換されるように遺伝子改変されている。
【0108】
さらにもっと好ましくは、その微生物は、上記で言及されたアセトン合成の反応段階1、すなわち2分子のアセチル−CoAのアセトアセチルCoAへの縮合を触媒することができる酵素をコードする核酸分子で形質転換されるように遺伝子改変されている。
【0109】
特に好ましい態様において、その微生物は、上記で言及されたアセトン合成の反応段階1を触媒することができる酵素をコードする核酸分子および上記で言及されたアセトン合成の反応段階2を触媒することができる酵素をコードする核酸分子で、または上記で言及されたアセトン合成の反応段階1を触媒することができる酵素をコードする核酸分子および上記で言及されたアセトン合成の反応段階3を触媒することができる酵素をコードする核酸分子で、または上記で言及されたアセトン合成の反応段階2を触媒することができる酵素をコードする核酸分子および上記で言及されたアセトン合成の反応段階3を触媒することができる酵素をコードする核酸分子で、または上記で言及されたアセトン合成の反応段階1を触媒することができる酵素をコードする核酸分子および上記で言及されたアセトン合成の反応段階2を触媒することができる酵素をコードする核酸分子および上記で言及されたアセトン合成の反応段階3を触媒することができる酵素をコードする核酸分子で形質転換されるように遺伝子改変されている。
【0110】
上記で言及された遺伝子改変された微生物を調製するための方法は、当該技術で周知である。従って、一般に、その微生物はその微生物におけるそれぞれの酵素の発現を可能にするDNAコンストラクトで形質転換される。そのようなコンストラクトは通常、それぞれの宿主細胞中での転写および翻訳を可能にする制御配列、例えばプロモーターおよび/またはエンハンサーおよび/または転写ターミネーターおよび/またはリボソーム結合部位等に連結された問題のコード配列を含む。先行技術は既に、アセトンを産生することができるように遺伝子改変されている微生物を記述している。特に、例えばクロストリジウム・アセトブチリカムからの遺伝子が大腸菌中に導入され、それにより天然にアセトンを産生しない細菌である大腸菌におけるアセトンの合成を可能にしている(Bermejo et al., Appl. Environ. Microbiol. 64 (1998); 1079-1085; Hanai et al., Appl. Environ. Microbiol. 73 (2007), 7814-7818)。特に、Hanai et al.(同書)は、大腸菌におけるアセトン産生を達成するためにはアセトアセテートデカルボキシラーゼ(例えばクロストリジウム・アセトブチリカムからのアセトアセテートデカルボキシラーゼ)をコードする核酸配列を導入すれば十分であることを示しており、これは上記で言及された反応段階1および2を触媒する大腸菌中の内在性の酵素(すなわち大腸菌のatoBおよびatoAD遺伝子の発現産物)はアセトン産生のための基質を提供するのに十分であることを示している。
【0111】
本発明の別の観点において、その組み換え微生物はさらに、それがアセチル−CoAをアセトンに変換できることおよびアセトンをイソブテンに変換できることを特徴とする。そのような組み換え微生物を提供するための方法は、例えばEP−A 2,295,593(欧州特許第09 17 0312号)、国際公開第2010/001078号および欧州特許第10 18 8001号において開示されている。
【0112】
本発明の別の観点において、その組み換え微生物は、それがアセチル−CoAをアセトンに変換できることおよびアセトンをプロパンに変換できることを特徴とする。そのような組み換え微生物を提供するための方法は、例えばHanai et al., Appl. Environ. Microbiol. 73 (2007), 7814-7818において開示されている。
【0113】
当業者は、本発明の微生物へのさらなる遺伝子改変は本発明の微生物が供給原材を生成物に変換する有効性における向上をもたらし得ることを認識するであろう。例えば、天然の微生物は一般にホルメート、アセテート、ラクテート、スクシネート、エタノール、グリセロール、2,3−ブタンジオール、メチルグリオキサールおよび水素のような生成物を生成し;その全てが糖からの例えばアセトン、イソブテンまたはプロペンの生成に対して有害であろう。そのような望まれない副産物の排除または実質的な低減は、それらの生成をもたらす重要な酵素活性の排除または低減により達成することができる。そのような活性には、以下の活性からなる群が含まれるが、それらに限定されない:
アセチル−CoA+ホルメート = CoA+ピルベート(例えば、ピルベートホルメートリアーゼ(EC 2.3.1.54)としても知られているホルメート C−アセチルトランスフェラーゼにより触媒される;大腸菌−pflBに関して、NCBI−遺伝子ID:945514);
ATP+アセテート = ADP+アセチルリン酸(例えば、アセテートキナーゼ(EC 2.7.2.1)により触媒される;大腸菌−ackAに関して、NCBI−遺伝子ID:946775);
(R)−ラクテート+NAD
+ = ピルベート+NADH+H
+(例えば、L−ラクテートデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)により触媒される;大腸菌−ldhAに関して、NCBI−遺伝子ID:946315);
ホスフェート+オキサロアセテート = ホスホエノールピルベート+HCO
3−(例えば、ホスホエノールピルベートカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.31)により触媒される;大腸菌−ppcに関して、NCBI−遺伝子ID:948457);
ATP+オキサロアセテート = ADP+ホスホエノールピルベート+CO
2(例えば、ホスホエノールピルベートカルボキシキナーゼ(ATP)(EC 4.1.1.49)により触媒される;大腸菌−pckに関して、NCBI−遺伝子ID:945667);
スクシネート+アクセプター = フマレート+還元されたアクセプター(例えば、スクシネートデヒドロゲナーゼ(EC 1.3.99.1)により触媒される;frdAおよびfrdBを含む大腸菌に関して、NCBI−遺伝子ID:それぞれ948667および948666);
2−オキソカルボキシレート(例えばピルベート) = アルデヒド(例えばアセトアルデヒド)+CO
2(例えば、ピルベートデカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.1)により触媒される));
アセトアルデヒド+CoA+NAD
+ = アセチル−CoA+NADH+H
+(例えば、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)(EC 1.2.1.10)により触媒される;大腸菌−adhEに関して、NCBI−遺伝子ID:945837);
sn−グリセロール 3−ホスフェート+NAD(P)
+ = グリセロンホスフェート(glycerone phosphate)+NAD(P)H+H
+(例えば、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ[NAD(P)
+](EC 1.1.1.94)により触媒される;大腸菌−gpsAに関して、NCBI−遺伝子ID:948125);
2ピルベート = 2−アセトラクテート+CO
2(例えば、アセトラクテートシンターゼ(EC 2.2.1.6)により触媒される;大腸菌−ilvHおよびilvIに関して、NCBI−遺伝子ID:それぞれ947267および948793);
グリセロンホスフェート = メチルグリオキサール+ホスフェート(例えば、メチルグリオキサールシンターゼ(EC 4.2.3.3)により触媒される;大腸菌−mgsAに関して、NCBI−遺伝子ID:945574);および
ホルメート+H
+ = CO
2+H
2(例えば、ホルメートヒドロゲンリアーゼ(EC 1.12.1.2と一緒でのEC 1.2.1.2)により触媒される;大腸菌−fdhF(EC 1.2.1.2)に関して、NCBI−遺伝子ID:948584)。
【0114】
従って、好ましい態様において、本発明に従う微生物は、上記で列挙された酵素活性の1種類以上が排除されている、または低減していることを特徴とする。
【0115】
当業者はさらに、本発明の微生物における調節エレメントに対する遺伝子改変は本発明の微生物が供給原材を生成物に変換する有効性における向上につながり得ることを認識するであろう。大腸菌内で、そのような遺伝子改変には以下の遺伝子改変からなる群が含まれるが、それらに限定されない:
−嫌気性増殖の全体的な制御因子であるfnr遺伝子(NCBI−遺伝子ID:945908)を欠失させる;および
−RNAポリメラーゼ、シグマS(シグマ38)因子であるrpoS遺伝子(NCBI−遺伝子ID:947210)を欠失させる。
【0116】
従って、別の好ましい態様において、本発明に従う微生物はこれらの欠失の少なくとも1種類を示す。
【0117】
本発明のさらなる観点は、グルコースのアセチル−CoAへの変換のための本発明の組み換え微生物の使用である。化学構造におけるアセチル−CoA(アセチル補酵素Aとしても知られている)は、補酵素A(チオール)および酢酸の間のチオエステルであり、有用な代謝産物の生成のための重要な前駆体分子である。次いで、アセチル−CoAはさらに組み換え微生物により有用な代謝産物、例えばL−グルタミン酸、L−グルタミン、L−プロリン、L−アルギニン、L−ロイシン、スクシネートおよびポリヒドロキシブチレートに変換されることができる。
【0118】
本発明の別の観点は、アセチル−CoAをアセトンに変換することができる本発明の組換え微生物の、グルコースのアセトンへの変換のための使用である。
【0119】
本発明のさらなる観点は、アセチル−CoAをアセトンに、およびアセトンをイソブテンに変換することができる本発明の組換え微生物の、グルコースのイソブテンへの変換のための使用である。
【0120】
また、本発明のさらなる観点は、アセチル−CoAをアセトンに、およびアセトンをプロペンに変換することができる本発明の組換え微生物の、グルコースのプロペンへの変換のための使用である。
【0121】
従って、本発明は、上記で言及された組み換え微生物をアセトンおよび/またはイソブテンおよび/またはプロペンの生成を可能にする条件下で培養し、そのアセトンおよび/またはイソブテンおよび/またはプロペンを単離する、アセトンおよび/またはイソブテンおよび/またはプロペンのグルコースからの生成のための方法にも関する。その微生物を、その酵素反応(単数または複数)が起こるのを可能にする適切な培養条件下で培養する。その特定の培養条件は用いられる特定の微生物に依存するが、当業者には周知である。その培養条件は、一般にそれらがそれぞれの反応のための酵素をコードする遺伝子の発現を可能にするような様式で選択される。化学的誘導物質による、または温度シフトによる遺伝子発現の誘導のような、特定の遺伝子の発現を培養の特定の段階において向上および微調整するための様々な方法が当業者に既知である。
【0122】
別の好ましい態様において、本発明に従う方法はさらに、その反応から脱ガスする(degassing)ガス状の生成物、特にイソブテンまたはプロペンを収集する工程、すなわち例えばその培養物から脱ガスする生成物を回収する工程が含まれる。従って、好ましい態様において、その方法はその反応の間にガス状の形態の下でイソブテンまたはプロペンを収集するための系の存在下で実施される。
【0123】
実際、短いアルケン類、例えばイソブテンおよびプロペンは室温および大気圧においてガス状の状態を取っている。従って、本発明に従う方法は、工業的規模で実施される場合常に非常に費用のかかる工程であるその生成物のその液体培養液からの抽出を必要としない。そのガス状炭化水素の排出および貯蔵ならびにそれらの可能性のあるそれに続く物理的分離および化学的変換は、当業者に既知のあらゆる方法に従って実施することができる。
【0124】
本発明は、以下の限定的でない図および実施例への参照によりさらに記述される。
【0125】
図1は、ホスホケトラーゼ活性EC 4.1.2.9およびEC 4.1.2.22のどちらか一方または両方を用いるホスホケトラーゼ経路によるアセチル−CoAのグルコース−6−リン酸からの生成に関する2つのスキームを示す。
【実施例】
【0126】
一般的な方法および材料
ライゲーションおよび形質転換に関する手順は当該技術で周知である。以下の実施例における使用に適した技法は、Sambrook J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor, ニューヨーク, 1989、およびSambrook J.(上記)において見付けることができる。
【0127】
細菌培養物の維持および増殖に適した材料および方法は当該技術で周知である。以下の実施例における使用に適した技法は、Manual of Methods for General Bacteriology (Philipp Gerhardt, R.G.E. Murray, Ralph N. Costilow, Eugene W. Nester, Willis A. Wood, Noel R. Krieg and G. Briggs Philips, 編者)において見付けることができる。
【0128】
細菌細胞の増殖および維持のために用いられる全ての試薬および材料は、別途明記しない限りSigma-Aldrich Company (ミズーリ州セントルイス)から入手した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2-1】
【0131】
【表2-2】
【0132】
【表2-3】
【0133】
【表2-4】
【0134】
【表3-1】
【0135】
【表3-2】
【0136】
【表3-3】
【0137】
【表4-1】
【0138】
【表4-2】
【0139】
【表4-3】
【0140】
【表4-4】
【0141】
遺伝子ノックアウトのための染色体組み込み
DNAを染色体の特定の領域中に組み込むために、その挿入するDNAの標的となる染色体部位への相同性および選択可能なマーカーが必要とされる。そのマーカーを組み込み後に容易に除去することができるならば好都合である。FRT/Flpリコンビナーゼ系は、そのマーカーを除去するための機構を提供する。FRT部位はFlpリコンビナーゼに関する認識部位である。Flpは部位特異的リコンビナーゼであり、直列反復する認識部位から間にあるDNAを切り出す。
【0142】
標的となる染色体部位へのホモロジーアームを含有し、且つFRT(Datsenko KA. And Wanner BL., Proceedings of the National Academy of Sciences, 2000, Vol. 97, No. 12, pp. 6640-6645)部位に隣接される選択可能なマーカーをコードする組み込みカセットを、pKD46(Datsenko KA. And Wanner BL., Proceedings of the National Academy of Sciences, 2000, Vol. 97, No. 12, pp. 6640-6645)を有する標的細胞中に形質転換する。成功した組み込み体を、その細胞のその抗生物質の存在下での増殖により選択する。続いて、pKD46をその細胞からキュアリングし(cured)、次いで抗生物質遺伝子の除去のためにリコンビナーゼプラスミドをその組み込み体中に導入する。FRTカセットを含有する株を、FlpリコンビナーゼをコードするpCP20プラスミドを用いて形質転換する(Datsenko KA. And Wanner BL., Proceedings of the National Academy of Sciences, 2000, Vol. 97, No. 12, pp. 6640-6645)。組み込まれたマーカーを除去した後、そのリコンビナーゼプラスミドをその組み込み体からキュアリングする。
【0143】
実施例1:株GBE1014の構築
この節の目的は、GBE1014と名付けられた大腸菌株の構築を記述することであり、それに関してPEP依存性のグルコース取り込みがPTS輸送遺伝子の欠失により不活性化されており、ATP依存性のグルコース取り込みが可能になっており、エムデン−マイヤーホフ−パルナス経路(EMPP)がホスホフルクトキナーゼ遺伝子の欠失により不活性化されており、ペントースリン酸経路(PPP)がグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の欠失により不活性化されている。
【0144】
構築はGBE0901を用いて開始された。GBE0901は、ptsHおよびptsI遺伝子が含まれるbp2531736から2533865まで(NCBIゲノムデータベース)の本来のヌクレオチド配列がSEQ SQ0001で置き換えられた大腸菌(Escherichia coli,(Migula)Castellani and Chalmers)株MG1655(ATCC #700926)である。この欠失はPEP依存性ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)に影響を及ぼし、結果として株GBE0901においてPEP依存性のグルコース取り込みが不活性化される。ptsHI遺伝子の欠失はPCRにより検証され、オリゴヌクレオチド0635および0638(それぞれSEQ RC0001およびRC0002として示される)がプライマーとして用いられた。結果として得られた0.4KbpのPCR産物を同じプライマーを用いて配列決定した。
【0145】
株GBE0901をLB培地中で培養し、GBE0901細胞をエレクトロコンピテントにした。エレクトロコンピテントなGBE0901細胞をpKD46(Datsenko KA. And Wanner BL., Proceedings of the National Academy of Sciences, 2000, Vol. 97, No. 12, pp. 6640-6645)と名付けられたプラスミドを用いて形質転換し、次いでアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養した。GBE0901細胞のプラスミドpKD46を用いた形質転換は、株GBE0902を生成した。プラスミドpGBE0688はそれ自身のプロモーターの制御下に置かれたスペクチノマイシンに対する耐性遺伝子を与える。この耐性カセットの配列を表3において示す(SEQ SQ0002)。
【0146】
プラスミドpGBE0688を鋳型としてプライマー0633および0634(それぞれSEQ RC0003およびRC0004として示される)と共に用いて1.3KbpのPCR産物を生成した。この1.3KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE0902細菌中に形質転換し、次いでその形質転換混合物をスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、37℃で一夜培養して株GBE0903を生成した。株GBE0903において、zwf、edd、およびeda遺伝子により構成されるDNA配列を欠失させた。これらの遺伝子はそれぞれグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、6−ホスホグルコネートデヒドロゲナーゼ、および2−ケト−3−デオキシ−6−ホスホグルコネートアルドラーゼをコードしている。この欠失したzwf、edd、およびeda遺伝子を含むDNA配列はスペクチノマイシン耐性カセットにより置き換えた。zwf、edd、およびeda遺伝子の有効な欠失を確かめるため、プライマー1036および1037(それぞれSEQ RC0005およびRC0006として示される)を用いてPCR増幅を実施した。最終的な1.9KbpのPCR産物が得られた。この1.9KbpのPCR産物を、同じプライマー1036および1037を用いて配列決定した。
【0147】
次いで株GBE0903をLBプレート上に蒔き、37℃で培養し、単離されたコロニーをグルコースを炭素源として含む(2g/L)MSプレート上でスクリーニングした(Richaud C., Mengin-Leucreulx D., Pochet S., Johnson EJ., Cohen GN. and Marliere P; The Journal of Biological Chemistry; 1993; Vol. 268; No. 36; pp. 26827-26835)。37℃で48時間の培養後、コロニーが見えるようになり、それをグルコース(2g/L)を補ったMS液体培地に移した。この37℃での一夜培養は、pKD46プラスミドの喪失を誘導した。1つの分離株は7時間の倍加時間を有しており、GBE1000と名付けられた。
【0148】
株GBE1000をエレクトロコンピテントにした。GBE1000エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpKD46を用いて形質転換し、次いでアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養した。GBE1000細胞のプラスミドpKD46を用いた形質転換は、株GBE1001を生成した。
【0149】
プラスミドpGBE0687はそれ自身のプロモーターの制御下に置かれたアプラマイシンに対する耐性遺伝子を与える。この耐性カセットの配列を表3において示す(SEQ SQ0003)。
【0150】
プラスミドpGBE0687を鋳型としてプライマー0629および0630(それぞれSEQ RC0007およびRC0008として示される)と共に用いて1.2KbpのPCR産物を生成した。結果として得られた1.2KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1001細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をアプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。次いでプレートを37℃で一夜培養してGBE1005_pKD46と名付けられた新しい株を生成した。株GB1005_pKD46において、ホスホフルクトキナーゼ遺伝子pfkAを欠失させ、アプラマイシン耐性カセットにより置き換えた。pfkA遺伝子の欠失が起きたことを確かめるため、プライマー0619および0620(それぞれSEQ RC0009およびRC0010として示される)を用いてPCR増幅を実施した。この1.7KbpのPCR産物を、同じプライマー0619および0620を用いて配列決定した。プラスミドpKD46の喪失を確かめるため、株GBE1005_pKD46をLBプレート上に蒔き、42℃で一夜培養した。プラスミドpKD46の喪失を、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いて30℃で一夜培養し、LBプレート上に蒔いて37℃で一夜培養することにより検証した。結果として得られた株は37℃で培養したLBプレート上で増殖し、GBE1005と名付けられた。GBE1005細胞はアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0151】
スペクチノマイシンカセットはzwf_edd_eda遺伝子の対応する座位に位置しており、アプラマイシンカセットはpfkA遺伝子の対応する座位に位置していた。スペクチノマイシンおよびアプラマイシン耐性遺伝子を含有する耐性カセットを切り出すため、株GBE1005をプラスミドpCP20(Datsenko KA. And Wanner BL., Proceedings of the National Academy of Sciences, 2000, Vol. 97, No. 12, pp. 6640-6645)を用いて形質転換して株GBE1005_pを得た。アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上での30℃における一夜培養の後、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に再度画線し、30℃で一夜培養した。次いで単離されたコロニーをLBプレート上に蒔き、42℃で一夜培養し、それはpCP20プラスミドの喪失を引き起こした。次いで、その2個の耐性カセットの有効な切り出しおよびpCP20プラスミドの喪失を確かめるため、単離されたコロニーをスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して37℃で一夜培養し、アプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して37℃で一夜培養し、アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して30℃で一夜培養し、LBプレート上に画線して37℃で一夜培養した。結果として得られた株は37℃で培養したLBプレート上で増殖し、GBE1006と名付けられた。GBE1006細胞は、スペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上、アプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上、およびアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0152】
株GBE1006をエレクトロコンピテントにし、GBE1006エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpKD46を用いて形質転換した。次いで形質転換体細胞をアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、プレートを30℃で一夜培養してGBE1010と名付けられた新しい株を得た。プラスミドpGBE0688を鋳型として、オリゴヌクレオチド0631および0632(それぞれSEQ RC0011およびRC0012として示される)をプライマーとして用いることにより、PCR産物を生成した。結果として得られた1.3KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1010細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。プレートを37℃で一夜培養して株GBE1014_pKD46を生成した。株GBE1014_pKD46において、ホスホフルクトキナーゼ遺伝子pfkBを欠失させ、欠失したDNA配列はスペクチノマイシン耐性遺伝子を含有するカセットにより置き換えた。pfkB遺伝子の欠失が起きたことを確かめるため、プライマー0621および0622(それぞれSEQ RC0013およびRC0014として示される)を用いてPCR増幅を実施した。この最終的な2.2KbpのPCR産物を、同じプライマー0621および0622を用いることにより配列決定した。
【0153】
プラスミドpKD46の喪失を誘導するため、株GBE1014_pKD46をLBプレート上に蒔き、プレートを42℃で一夜培養した。プラスミドpKD46の喪失を、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いて30℃で一夜培養し、LBプレート上に蒔いて37℃で一夜培養することにより確かめた。結果として得られた37℃で培養したLBプレート上で増殖している株をGBE1014と名付けた。GBE1014細胞はアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0154】
実施例2:株GBE0929の構築
株GBE0901を37℃のLBプレート上に蒔き、単離されたコロニーをグルコースを炭素源として含む(2g/L)MSプレート上でスクリーニングした。37℃で48時間の培養後、コロニーが見えるようになった。1つの分離株は5時間の倍加時間を有しており、GBE0929と名付けられた。
【0155】
実施例3:株GBE1344の構築
GBE0129と名付けられた株を用いて構築を開始した。GBE0129はMG1655大腸菌細菌(ATCC #700926)である。
【0156】
株GBE0129をLB培地中で培養し、GBE0129細胞をエレクトロコンピテントにした。エレクトロコンピテントなGBE0129細胞をプラスミドpKD46を用いて形質転換し、次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養してGBE0170と名付けられた新しい株を生成した。
【0157】
プラスミドpGBE0687を鋳型として、オリゴヌクレオチド0633および0634(それぞれSEQ RC0003およびRC0004として示される)をプライマーとして用いてPCR産物を生成した。結果として得られた1.2KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE0170細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をアプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。プレートを37℃で一夜培養した。この培養はpKD46プラスミドの喪失を誘発し、GBE1339と名付けられた新しい株の作成をもたらした。株GBE1339において、zwf遺伝子によりコードされるグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、edd遺伝子によりコードされる6−ホスホグルコネートデヒドロゲナーゼおよびeda遺伝子によりコードされる2−ケト−3−デオキシ−6−ホスホグルコネートアルドラーゼが不活性であった。連続するzwf、edd、およびeda遺伝子を欠失させ、アプラマイシン耐性遺伝子を含有するカセットで置き換えた。zwf、edd、およびeda遺伝子の欠失が有効であることを確かめるため、プライマー1036および1037(それぞれSEQ RC0005およびRC0006として示される)を用いてPCR増幅を実施した。この1.8KbpのPCR産物を、同じプライマー1036および1037を用いて配列決定した。
【0158】
株GBE1339をエレクトロコンピテントにし、GBE1339エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpKD46を用いて形質転換した。次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養して株GBE1340を生成した。プラスミドpGBE0688を鋳型として、オリゴヌクレオチド0629および0630(それぞれSEQ RC0007およびRC0008として示される)をプライマーとして用いることにより、PCR産物を生成した。結果として得られた1.3KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1340細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。プレートを37℃で一夜培養して株GBE1341_pKD46を生成した。株GBE1341_pKD46において、ホスホフルクトキナーゼをコードするpfka遺伝子をスペクチノマイシン耐性遺伝子で置き換えた。pfka遺伝子の欠失が有効であることを確かめるため、プライマー0619および0620(それぞれSEQ RC0009およびRC0010として示される)を用いてPCR増幅を実施した。この1.8KbpのPCR産物を、同じプライマー0619および0620を用いて配列決定した。株GBE1341_pKD46に関してプラスミドpKD46の喪失を誘導するため、GBE1341_pKD46細胞をLBプレート上に蒔き、42℃で培養した。プラスミドpKD46の喪失を、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いて30℃で一夜培養し、LBプレート上に蒔いて37℃で一夜培養することにより検証した。結果として得られた37℃で培養したLBプレート上で増殖している株はGBE1341であった。GBE1341はアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0159】
それぞれzwf_edd_edaおよびpfkA遺伝子の以前の座位に位置しているアプラマイシンおよびスペクチノマイシン耐性遺伝子を含有する耐性カセットを切り出すため、株GBE1341をプラスミドpCP20を用いて形質転換してGBE1341_pと名付けられた新しい株を得た。アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上での30℃における一夜培養の後、単離されたコロニーを、30℃でさらに一夜培養するため、アンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に再度画線した。次いで単離されたコロニーをLBプレート上に蒔き、42℃で一夜培養した。この42℃での培養はpCP20プラスミドの喪失を誘発した。最終的に、その2個の耐性カセットの切り出しおよびpCP20プラスミドの喪失を確かめるため、単離されたコロニーをスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して37℃で一夜培養し、アプラマイシン(50μg/ml)を補ったLBプレート上に画線して37℃で一夜培養し、アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して30℃で一夜培養し、LBプレート上に画線して37℃で一夜培養した。37℃で培養されたLBプレート上で増殖している生成された株を、GBE1342と名付けた。GBE1342細胞は、スペクチノマイシン(50μg/ml)を補ったLBプレート上、アプラマイシン(50μg/ml)を補ったLBプレート上、およびアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上では増殖しなかった。
【0160】
株GBE1342をエレクトロコンピテントにし、GBE1342細胞をプラスミドpKD46を用いて形質転換した。次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔き、30℃で一夜培養して株GBE1343を得た。PCR産物を実施し、プラスミドpGBE0688を鋳型として、オリゴヌクレオチド0631および0632(それぞれSEQ RC0011およびRC0012として示される)をプライマーとして用いた。結果として得られた1.3KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1343細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、続いて37℃で一夜培養した。新しい株が生成され、GBE1344_pKD46と名付けられた。株GBE1344_pKD46において、ホスホフルクトキナーゼをコードするpfkb遺伝子を欠失させ、スペクチノマイシン耐性カセットで置き換えた。pfkB遺伝子の欠失が有効であることを確かめるため、プライマー0621および0622(それぞれSEQ RC0013およびRC0014として示される)を用いてPCR増幅を実施した。得られた2.2KbpのPCR産物を、同じプライマー0621および0622を用いて配列決定した。
【0161】
プラスミドpKD46の喪失を誘導するため、株GBE1344_pKD46をLBプレート上に蒔き、42℃で一夜培養した。プラスミドpKD46の喪失を、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いて30℃で一夜培養し、LBプレート上に蒔いて37℃で一夜培養することにより確かめた。37℃で培養されたLBプレート上で増殖している生成された株をGBE1344と名付けた。GBE1344細胞はアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上では増殖しなかった。
【0162】
実施例4:プラスミドpGBE0457の構築
この節の目的は、大腸菌株においてラクトコッカス・ラクティスからのホスホケトラーゼYP_003354041.1の発現を可能にするプラスミドの構築を記述することである。
【0163】
プラスミドpGBE0123はプラスミドpUC18(New England Biolabs)の改変版であり、改変されたマルチクローニングサイト(MCS)を含有する。pUC18からの本来のMCS(HindIII制限部位からEcoRI制限部位まで)を、配列SQ0004で置き換えた(表3)。そのプラスミドpGB0123は、2種類の組み換えタンパク質のPlacプロモーターの制御下での発現を可能にする。
【0164】
【表5】
【0165】
L.ラクティスのホスホケトラーゼ遺伝子を、大腸菌中での最適な発現のためにGeneArt(登録商標)(Invitrogen)によりコドン最適化した。加えて、Hisタグをその遺伝子の5’位に付加し、追加の停止コドンを3’位に付加した(SQ0005)。その遺伝子構築はPacIおよびNotI制限部位により隣接されており、プラスミドpGBE0421内で提供された。
【0166】
クローニング実験のため、PCR産物および制限断片をQIAquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いてゲル精製した。制限酵素およびT4リガーゼ(New England Biolabs,マサチューセッツ州ベヴァリー)を製造業者の推奨に従って用いた。
【0167】
プラスミドpGBE0421を制限酵素PacIおよびNotIにより消化して2.6Kbpの生成物を作成した。pGB0123プラスミドを同様に制限酵素PacIおよびNotIにより消化してその2.6Kbpの制限断片にライゲーションした。結果として得られたプラスミド(pGBE0457)を、プライマー1061、1062、1063、1064および1065(それぞれSEQ RC0015、RC0016、RC0017、RC0018およびRC0019として示される)を用いて配列決定した。
【0168】
ラクトコッカス・ラクティスからのホスホケトラーゼの発現を、その組み換えタンパク質のHisトラップを用いた精製(Protino Ni−IDA 1000キット、Macherey Nagel)後にタンパク質ゲル上で確かめた。精製は製造業者の推奨に従って行った。2種類の異なる基質:キシルロース−5−リン酸およびフルクトース−6−リン酸に対するホスホケトラーゼ活性を検出するため、精製された酵素を用いた酵素アッセイも実施した。その実験手順は、溶液のpHが7.5であり、1mMのMgCl2を添加したことを除いて、Leo Meile et al., (Journal of Bacteriology, May 2001, p.2929-2936)により用いられた実験手順と同じであった。この酵素アッセイに関して、10μgの精製されたタンパク質を75μlの反応に添加した。特異的な活性(形成されたアセチル−Pのμmol/分/mgタンパク質)は、D−キシルロース−5−リン酸およびD−フルクトース−6−リン酸に関してそれぞれ2815μmol/分/mgタンパク質および1941μmol/分/mgタンパク質であった。
【0169】
実施例5:プラスミドpGBE0096の構築
大腸菌におけるアセトン生成の原因となるプラスミドの構築は、Bermejo LL., Welker NE. and Papoutsakis ET., Applied and Environmental Microbiology, 1998, Vol. 64, No. 3, pp. 1076-1085において記述されているプラスミド構築に基づいていた。
【0170】
株クロストリジウム・アセトブチリカムを注文した(ATCC 824)。この株からのゲノムDNAは、細菌の染色体およびpSOL1と名付けられたプラスミドで構成されている。ctfAおよびctfB遺伝子をpSOL1プラスミドからプライマー0070および0071(それぞれSEQ RC0020およびRC0021として示される)を用いてPCR増幅した。そのPCR産物の5’末端においてBamHI制限部位およびそのPCR産物の3’末端においてEcoRV制限部位を導入した。結果として得られた1.3KbpのPCR産物を制限酵素BamHIおよびEcoRVを用いて消化し、次いで同様に制限酵素BamHIおよびEcoRVを用いて消化したpGB0689(pBluescript IIファージミド、Agilent Technologies)とライゲーションした。結果として得られたプラスミド(pGBE0690)をプライマー1066および1067(それぞれSEQ RC0022およびRC0023として示される)を用いて配列決定した。
【0171】
adc遺伝子およびその遺伝子のターミネーターをpSOL1プラスミドからプライマー0072および0073(それぞれSEQ RC0024およびRC0025として示される)を用いてPCR増幅した。PCR増幅は、5’末端におけるEcoRV制限部位および3’末端におけるSalI制限部位の挿入を可能にした。結果として得られた0.8KbpのPCR産物を制限酵素EcoRVおよびSalIを用いて消化した。pGBE0690プラスミドを同様に制限酵素EcoRVおよびSalIを用いて消化し、次いでその0.8KbpのPCR産物とライゲーションした。結果として得られたプラスミド(pGBE0691)をプライマー1066、1067、1068および1069(それぞれSEQ RC0022、RC0023、RC0026およびRC0027として示される)を用いて配列決定した。
【0172】
プラスミドpGBE0691を制限酵素BamHIおよびSalIを用いて消化して2.2Kbpの産物を作成した。その2.2Kbpの制限断片はcftA、cftBおよびadc遺伝子を含有していた。pGBE0051プラスミド(pUC19,New England Biolabs)を同様に制限酵素BamHIおよびSalIを用いて消化し、次いで2.2Kbpの制限断片とライゲーションした。結果として得られたプラスミド(pGBE0692)を、プライマー1066、1067、1068および1069(それぞれSEQ RC0022、RC0023、RC0026およびRC0027として示される)を用いて配列決定した。
【0173】
クロストリジウム・アセトブチリカム(ATCC 824)ゲノムDNAからのthl遺伝子およびその対応するthlプロモーターを、プライマー0074および0075(それぞれSEQ RC0028およびRC0029として示される)を用いてPCR増幅した。PCR増幅は、5’末端におけるKpnI制限部位および3’末端におけるBamHI制限部位の挿入を可能にした。結果として得られた1.4KbpのPCR産物を制限酵素KpnIおよびBamHIを用いて消化し、pGBE0692に関しても同様に消化した。消化されたpGBE0692プラスミドをその1.4KbpのPCR産物とライゲーションした。結果として得られたプラスミドpGBE0693をプライマー1066、1067、1068、1069、1070、1071、1072、1073および1074(それぞれSEQ RC0022、RC0023、RC0026、RC0027、RC0030、RC0031、RC0032、RC0033およびRC0034として示される)を用いて配列決定した。
【0174】
プラスミドpGBE0124はプラスミドpSU18(Borja Bartolome, Yolanda Jubete, Eduardo Martinez and Fernando de la Cruz, Gene, 1991, Vol. 102, Issue 1, pp. 75-78)の改変版であり、それは改変されたマルチクローニングサイト(MCS)を含有する。pSU18からの本来のMCS(EcoRI制限部位からHindIII制限部位まで)を、配列SEQ SQ0006で置き換えた(表3)。そのプラスミドpGBE0124は、2種類の組み換えタンパク質のPlacプロモーターの制御下での発現を可能にする。プラスミドpGBE0693を制限酵素KpnIおよびSalIを用いて消化して3.5Kbpの産物を作成した。pGBE0124プラスミドを同様に制限酵素KpnIおよびSalIを用いて消化し、次いで3.5Kbpの制限断片にライゲーションした。結果として得られたプラスミド(pGBE0096)をプライマー1066、1067、1068、1069、1070、1071、1072、1073および1074(それぞれSEQ RC0022、RC0023、RC0026、RC0027、RC0030、RC0031、RC0032、RC0033およびRC0034として示される)を用いて配列決定した。
【0175】
実施例6:株GBE1346およびGBE1347によるアセトン生成
プラスミドの関連する株中への形質転換の記述
株GBE0129をエレクトロコンピテントにし、GBE0129エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpGBE0096を用いて形質転換した。次いで形質転換体をクロラムフェニコール(25μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、プレートを30℃で一夜培養して株GBE0329を生成した。
【0176】
株GBE1344をエレクトロコンピテントにし、GBE1344エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpGBE0457およびpGBE0096の両方を用いて形質転換した。次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)およびクロラムフェニコール(25μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養して株GBE1345を得た。
【0177】
株GBE0329およびGBE1345からの単離されたコロニーを、炭素源としてのグルコース(2g/L)とクロラムフェニコール(25μg/ml)とを含有するMSプレート上でスクリーニングした。これらのプレートを30℃で培養して、それぞれ株GBE1346およびGBE1347を得た。30℃で4日間の培養後、コロニーをグルコース(2g/L)およびクロラムフェニコール(25μg/ml)を含有するMS液体培地に移し、30℃で3日間培養した。
【0178】
フラスコ条件の記述
発酵実験に関して、50mMリン酸二カリウムの代わりに200mMのリン酸二カリウムを含むMS培地を用いた。結果として得られた培地をMSPと名付けた。
【0179】
グルコース(10g/L)およびクロラムフェニコール(25μg/ml)を含有する400mlのMSP液体培地に、株GBE1346の前培養物または株GBE1347の前培養物のどちらかを植え付けた。最初のOD
600は0.1であった。その400mlの培養物をスクリューキャップで密封された500mlのボトル中で、30℃、170rpmの速度で培養した。2mlの分割量(aliquots)を1日、2日、3日、6日、7日、および8日後に採取した。それぞれの分割量の試料に関して、ボトルを10秒間開けた。
【0180】
分析法の記述
分割量を濾過し、グルコース濃度をグルコース(HK)アッセイキット(GAHK20−1KT,Sigma)を製造業者の推奨に従って用いて決定した。アセトン濃度を、ガスクロマトグラフ450−GC(Bruker)および以下のプログラムを用いるガスクロマトグラフィーにより決定した:
−カラム:DB−WAX(123−7033,Agilent Technologies)
−インジェクタースプリット/スプリットレス:T°=250℃
−オーブン:
○80℃で6分間
○220℃まで1分ごとに10℃
○220℃で7分間
○カラム流速:1.5ml/分(窒素)
−検出器FID:T°=300℃
結果
[アセトン]生成(mM)/[グルコース]消費(mM)の比率は、株GBE1347に関して株GBE1346に関するよりも高い。
【0181】
実施例7:株GBE1350およびGBE1351によるアセトン生成
プラスミドの関連する株中への形質転換の記述
株GBE0929をエレクトロコンピテントにし、GBE0929エレクトロコンピテント細胞をpGBE0096と名付けられたプラスミドを用いて形質転換した。次いで形質転換体をクロラムフェニコール(25μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔き、プレートを30℃で一夜培養して株GBE1348を得た。
【0182】
株GBE1014をエレクトロコンピテントにし、プラスミドpGBE0457およびpGBE0096の両方を用いて形質転換した。次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)およびクロラムフェニコール(25μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔き、プレートを30℃で一夜培養して株GBE1349を得た。
【0183】
株GBE1348およびGBE1349からの単離されたコロニーを、炭素源としてのグルコース(2g/L)とクロラムフェニコール(25μg/ml)とを含有するMSプレート上でスクリーニングした。これらのプレートを30℃で4日間培養し、それぞれ株GBE1350およびGBE1351を得た。次いで単離されたコロニーをグルコース(2g/L)およびクロラムフェニコール(25μg/ml)を含有するMS液体培地に移した。GBE1350およびGBE1351細胞を30℃で培養した。
【0184】
フラスコ条件の記述
グルコース(10g/L)およびクロラムフェニコール(25μg/ml)を含有する400mlのMSP培地に、株GBE1350の前培養物または株GBE1351の前培養物のどちらかを植え付けた。最初のOD
600は0.1であった。その400mlの培養物をスクリューキャップで密封された500mlのボトル中で、30℃、170rpmの速度で培養した。2mlの分割量を1日、2日、3日、6日、7日、および8日後に採取した。それぞれの分割量の試料に関して、ボトルを10秒間開けた。
【0185】
分析法の記述
分割量を濾過し、グルコース濃度をグルコース(HK)アッセイキット(GAHK20−1KT,Sigma)を製造業者の推奨に従って用いて決定した。アセトン濃度を、ガスクロマトグラフ450−GC(Bruker)および以下のプログラムを用いるガスクロマトグラフィーにより決定した:
−カラム:DB−WAX(123−7033,Agilent Technologies)
−インジェクタースプリット/スプリットレス:T°=250℃
−オーブン:
○80℃で6分間
○220℃まで1分ごとに10℃
○220℃で7分間
○カラム流速:1.5ml/分(窒素)
−検出器FID:T°=300℃
結果
[アセトン]生成(mM)/[グルコース]消費(mM)の比率は、株GBE1351に関して株GBE1350に関するよりも高かった。
【0186】
【表6】
【0187】
実施例8:プラスミドpGBE1020の構築
この節の目的は、大腸菌株においてラクトコッカス・ラクティスからのホスホケトラーゼYP_003354041.1の発現を可能にし、且つアセトンの生成も可能にするプラスミドの構築を記述することである。
【0188】
L.ラクティスのホスホケトラーゼ遺伝子を、pGBE0421プラスミドから、プライマー1516および1517(それぞれSEQ RC0035およびRC0036として示される)を用いてPCR増幅した。
【0189】
PCR増幅は、5’末端におけるEcoRI制限部位およびリボソーム結合部位(RBS)ならびに3’末端におけるKpnI制限部位の挿入を可能にした。結果として得られた2.5KbpのPCR産物を、制限酵素EcoRIおよびKpnIを用いて消化した。pGBE0123プラスミドを同様に制限酵素EcoRIおよびKpnIを用いて消化し、次いでその2.5KbpのPCR産物とライゲーションした。結果として得られたプラスミド(pGBE0928)をプライマー1061、1062、1063、1064および1065(それぞれSEQ RC0015、RC0016、RC0017、RC0018およびRC0019として示される)を用いて配列決定した。
【0190】
プラスミドpGBE0096を制限酵素KpnIおよびNotIを用いて消化して3.6Kbpの産物を作成した。pGBE0928プラスミドを同様に制限酵素KpnIおよびNotIを用いて消化し、その3.6Kbpの制限断片にライゲーションした。結果として得られたプラスミド(pGBE1020)を、プライマー1994、1995、1996、1997、1998、1999、2000、2001、2002および2003(それぞれSEQ RC0037、RC0038、RC0039、RC0040、RC0041、RC0042、RC0043、RC0044、RC0045およびRC0046として示される)を用いて配列決定した。
【0191】
実施例9:プラスミドpGBE1021の構築
この節の目的は、大腸菌株においてアセトンの産生を可能にするプラスミドの構築を記述することである。
【0192】
プラスミドpGBE0096を制限酵素KpnIおよびNotIを用いて消化して3.6Kbpの産物を作成した。
【0193】
pGBE0123プラスミドを同様に制限酵素KpnIおよびNotIを用いて消化し、次いでその3.6KbpのPCR産物とライゲーションした。結果として得られたプラスミド(pGBE1021)を、プライマー1994、1995、1996、1997、1998、1999、2000、2001、2002および2003(それぞれSEQ RC0037、RC0038、RC0039、RC0040、RC0041、RC0042、RC0043、RC0044、RC0045およびRC0046として示される)を用いて配列決定した。
【0194】
実施例10:株GBE2264およびGBE2265によるアセトン生成
プラスミドの関連する株中への形質転換の記述
株GBE0129をエレクトロコンピテントにし、GBE0129エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpGBE1021を用いて形質転換した。次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、プレートを30℃で一夜培養して株GBE2262を生成した。
【0195】
株GBE1344をエレクトロコンピテントにし、GBE1344エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpGBE1020を用いて形質転換した。次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養して株GBE2263を得た。
【0196】
株GBE2262およびGBE2263からの単離されたコロニーを、炭素源としてのグルコース(2g/L)とアンピシリン(100μg/ml)とを含有するMSプレート上でスクリーニングした。これらのプレートを30℃で培養して、それぞれ株GBE2264およびGBE2265を得た。30℃で4日間の培養後、コロニーをグルコース(2g/L)、酵母抽出物(0.1g/L)およびアンピシリン(100μg/ml)を含有するMS液体培地に移し、30℃で3日間培養した。
【0197】
フラスコ条件の記述
グルコース(10g/L)、酵母抽出物(0.1g/L)およびアンピシリン(100μg/ml)を含有するMSP液体培地(200ml)に、株GBE2264の前培養物または株GBE2265の前培養物のどちらかを植え付けた。最初のOD
600は0.1であった。その200mlの培養物をスクリューキャップで密封された250mlのボトル中で、30℃、170rpmの速度で培養した。分割量(2ml)を1日、2日、4日、5日、および6日後に採取した。それぞれの分割量の試料に関して、ボトルを10秒間開けた。
【0198】
分析法の記述
分割量を濾過し、グルコース濃度をAgilent HPLC(1260 Infinity)およびガードカラム(Agilent,PL Hi−Plex Hガードカラム,PL1170−1830)を伴うHi−Plexカラム(Agilent,PL1170−6830)を用いたHPLC分析により決定した。
【0199】
−注入量:20μl
−溶媒組成:[H
2SO
4]:5.5mM
−カラムの温度:65℃
−RID(G1362A):温度設定:35℃
アセトンを濾過された分割量から酢酸メチルと混合することにより抽出した(2体積の濾過された分割量に関して1体積の酢酸メチル)。アセトン濃度を、ガスクロマトグラフ450−GC(Bruker)および以下のプログラムを用いるガスクロマトグラフィーにより決定した:
−カラム:DB−WAX(123−7033,Agilent Technologies)
−インジェクター:
○スプリット比:10
○T°=250℃
−オーブン:
○50℃で9分間
○180℃まで1分ごとに20℃
○180℃で5分間
○カラム流速:1.5ml/分(窒素)
−検出器FID:T°=300℃
結果
[アセトン]生成(mM)/[グルコース]消費(mM)の比率は、株GBE2265に関して株GBE2264に関するよりも高かった。
【0200】
実施例11:株GBE1283の構築
株GBE0929を、グルコースを炭素源として含有する(2g/L)MSプレート上に蒔いた。単離されたコロニーをグルコース(2g/L)を含有するMS液体培地に移し、30℃で3日間培養した。グルコース(2g/L)を含有するMS液体培地(100ml)に、株GBE0929の前培養物を植え付けた。最初のOD
600は0.1であった。その100mlの培養物を1Lのエルレンマイヤー中で、30℃、170rpmの速度で培養した。OD
600が1を上回った際に、その培養物の分割量を採取し、新しい培養のための種菌として用いた(100mlの培養物を、1Lのエルレンマイヤー中で、30℃、170rpmの速度で培養した)。株GBE0929を10回継代培養して株GBE1283を得た。
実施例12:株GBE2256の構築
株GBE1283をLB培地中で培養し、GBE1283細胞をエレクトロコンピテントにした。エレクトロコンピテントなGBE1283細胞をpKD46プラスミドを用いて形質転換し、次いでアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養した。GBE1283細胞のプラスミドpKD46を用いた形質転換は、株GBE1284を生成した。
【0201】
プラスミドpGBE0688を鋳型としてプライマー0629および0630(それぞれSEQ RC0007およびRC0008として示される)と共に用いて1.2KbpのPCR産物を生成した。結果として得られた1.2KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1284細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。次いでプレートを37℃で一夜培養してGBE2252_pKD46と名付けられた新しい株を生成した。株GB2252_pKD46において、ホスホフルクトキナーゼ遺伝子pfkAを欠失させ、スペクチノマイシン耐性カセットにより置き換えた。pfkA遺伝子の欠失が起きたことを確かめるため、プライマー0619および0620(それぞれSEQ RC0009およびRC0010として示される)を用いてPCR増幅を実施した。この1.7KbpのPCR産物を、同じプライマー0619および0620を用いて配列決定した。プラスミドpKD46の喪失を確かめるため、株GBE2252_pKD46をLBプレート上に蒔き、42℃で一夜培養した。プラスミドpKD46の喪失を、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いて30℃で一夜培養し、LBプレート上に蒔いて37℃で一夜培養することにより検証した。結果として得られた株は37℃で培養したLBプレート上で増殖し、GBE2252と名付けられた。GBE2252細胞はアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0202】
株GBE2252をエレクトロコンピテントにし、GBE2252エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpKD46を用いて形質転換した。次いで形質転換体細胞をアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、プレートを30℃で一夜培養してGBE2253と名付けられた新しい株を得た。
【0203】
プラスミドpGBE0687を鋳型として、オリゴヌクレオチド0631および0632(それぞれSEQ RC0011およびRC0012として示される)をプライマーとして用いることにより、PCR産物を生成した。結果として得られた1.3KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE2253細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をアプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。プレートを37℃で一夜培養して株GBE2256_pKD46を生成した。株GBE2256_pKD46において、ホスホフルクトキナーゼ遺伝子pfkBを欠失させ、欠失したDNA配列はアプラマイシン耐性遺伝子を含有するカセットで置き換えた。pfkB遺伝子の欠失が起きたことを確かめるため、プライマー0621および0622(それぞれSEQ RC0013およびRC0014として示される)を用いてPCR増幅を実施した。この最終的な2.2KbpのPCR産物を、同じプライマー0621および0622を用いて配列決定した。
【0204】
プラスミドpKD46の喪失を誘導するため、株GBE2256_pKD46をLBプレート上に蒔き、プレートを42℃で一夜培養した。プラスミドpKD46の喪失を、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いて30℃で一夜培養し、LBプレート上に蒔いて37℃で一夜培養することにより確かめた。結果として得られた37℃で培養したLBプレート上で増殖している株をGBE2256と名付けた。GBE2256細胞はアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0205】
実施例13:株GBE1518の構築
プラスミドpGBE0688を鋳型としてプライマー0633および1109(それぞれSEQ RC0003およびRC0047として示される)と共に用いて1.3KbpのPCR産物を生成した。この1.3KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1284細菌中に形質転換し、次いでその形質転換混合物をスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、37℃で一夜培養して株GBE1433を生成した。株GBE1433において、zwf遺伝子により構成されるDNA配列を欠失させた。この欠失したzwf遺伝子を含むDNA配列は、スペクチノマイシン耐性カセットにより置き換えた。zwf遺伝子の有効な欠失を確かめるため、プライマー1036および1110(それぞれSEQ RC0005およびRC0048として示される)を用いてPCR増幅を実施した。最終的な1.5KbpのPCR産物が得られた。この1.5KbpのPCR産物を、同じプライマー1036および1110を用いて配列決定した。
【0206】
株GBE1433をエレクトロコンピテントにした。GBE1433エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpKD46を用いて形質転換し、次いでアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養した。GBE1433細胞のプラスミドpKD46による形質転換は、株GBE1436を生成した。
【0207】
プラスミドpGBE0687を鋳型としてプライマー0629および0630(それぞれSEQ RC0007およびRC0008として示される)と共に用いて1.2KbpのPCR産物を生成した。結果として得られた1.2KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1436細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をアプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。次いでプレートを37℃で一夜培養してGBE1441_pKD46と名付けられた新しい株を生成した。株GB1441_pKD46において、ホスホフルクトキナーゼ遺伝子pfkAを欠失させ、アプラマイシン耐性カセットにより置き換えた。pfkA遺伝子の欠失が起きたことを確かめるため、プライマー0619および0620(それぞれSEQ RC0009およびRC0010として示される)を用いてPCR増幅を実施した。この1.7KbpのPCR産物を、同じプライマー0619および0620を用いて配列決定した。プラスミドpKD46の喪失を確かめるため、株GBE1441_pKD46をLBプレート上に蒔き、42℃で一夜培養した。プラスミドpKD46の喪失を、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いて30℃で一夜培養し、LBプレート上に蒔いて37℃で一夜培養することにより検証した。結果として得られた株は37℃で培養したLBプレート上で増殖し、GBE1441と名付けられた。GBE1441細胞はアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0208】
スペクチノマイシンカセットはzwf遺伝子の対応する座位に位置しており、アプラマイシンカセットはpfkA遺伝子の対応する座位に位置していた。スペクチノマイシンおよびアプラマイシン耐性遺伝子を含有する耐性カセットを切り出すため、株GBE1441をプラスミドpCP20を用いて形質転換して株GBE1441_pを得た。アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上での30℃における一夜培養の後、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に再度画線し、30℃で一夜培養した。次いで単離されたコロニーをLBプレート上に蒔き、42℃で一夜培養し、それはpCP20プラスミドの喪失を引き起こした。次いで、その2個の耐性カセットの有効な切り出しおよびpCP20プラスミドの喪失を確かめるため、単離されたコロニーをスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して37℃で一夜培養し、アプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して37℃で一夜培養し、アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して30℃で一夜培養し、LBプレート上に画線して37℃で一夜培養した。結果として得られた株は37℃で培養したLBプレート上で増殖し、GBE1448と名付けられた。GBE1448細胞は、スペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上、アプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上、およびアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0209】
株GBE1448をエレクトロコンピテントにし、GBE1448エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpKD46を用いて形質転換した。次いで形質転換体細胞をアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、プレートを30℃で一夜培養してGBE1449と名付けられた新しい株を得た。プラスミドpGBE0688を鋳型として、オリゴヌクレオチド0631および0632(それぞれSEQ RC0011およびRC0012として示される)をプライマーとして用いることにより、PCR産物を生成した。結果として得られた1.3KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1449細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。プレートを37℃で一夜培養して株GBE1518_pKD46を生成した。株GBE1518_pKD46において、ホスホフルクトキナーゼ遺伝子pfkBを欠失させ、欠失したDNA配列はスペクチノマイシン耐性遺伝子を含有するカセットにより置き換えた。pfkB遺伝子の欠失が起きたことを確かめるため、プライマー0621および0622(それぞれSEQ RC0013およびRC0014として示される)を用いてPCR増幅を実施した。この最終的な2.2KbpのPCR産物を、同じプライマー0621および0622を用いることにより配列決定した。
【0210】
プラスミドpKD46の喪失を誘導するため、株GBE1518_pKD46をLBプレート上に蒔き、プレートを42℃で一夜培養した。プラスミドpKD46の喪失を、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いて30℃で一夜培養し、LBプレート上に蒔いて37℃で一夜培養することにより確かめた。結果として得られた37℃で培養したLBプレート上で増殖している株をGBE1518と名付けた。GBE1518細胞はアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0211】
実施例14:株GBE1420の構築
プラスミドpGBE0688を鋳型としてプライマー0633および0634(それぞれSEQ RC0003およびRC0004として示される)と共に用いて1.3KbpのPCR産物を生成した。この1.3KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1284細菌中に形質転換し、次いでその形質転換混合物をスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、37℃で一夜培養して株GBE1287を生成した。株GBE1287において、zwf、edd、およびeda遺伝子により構成されるDNA配列を欠失させた。この欠失したzwf、edd、およびeda遺伝子を含むDNA配列はスペクチノマイシン耐性カセットにより置き換えた。zwf、edd、およびeda遺伝子の有効な欠失を確かめるため、プライマー1036および1037(それぞれSEQ RC0005およびRC0006として示される)を用いてPCR増幅を実施した。最終的な1.9KbpのPCR産物が得られた。この1.9KbpのPCR産物を、同じプライマー1036および1037を用いて配列決定した。
【0212】
株GBE1287をエレクトロコンピテントにした。GBE1287エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpKD46を用いて形質転換し、次いでアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養した。GBE1287細胞のプラスミドpKD46による形質転換は、株GBE1337を生成した。
【0213】
プラスミドpGBE0687を鋳型としてプライマー0629および0630(それぞれSEQ RC0007およびRC0008として示される)と共に用いて1.2KbpのPCR産物を生成した。結果として得られた1.2KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1337細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をアプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。次いでプレートを37℃で一夜培養してGBE1353_pKD46と名付けられた新しい株を生成した。株GB1353_pKD46において、ホスホフルクトキナーゼ遺伝子pfkAを欠失させ、アプラマイシン耐性カセットにより置き換えた。pfkA遺伝子の欠失が起きたことを確かめるため、プライマー0619および0620(それぞれSEQ RC0009およびRC0010として示される)を用いてPCR増幅を実施した。この1.7KbpのPCR産物を、同じプライマー0619および0620を用いて配列決定した。プラスミドpKD46の喪失を確かめるため、株GBE1353_pKD46をLBプレート上に蒔き、42℃で一夜培養した。プラスミドpKD46の喪失を、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いて30℃で一夜培養し、LBプレート上に蒔いて37℃で一夜培養することにより検証した。結果として得られた株は37℃で培養したLBプレート上で増殖し、GBE1353と名付けられた。GBE1353細胞はアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0214】
スペクチノマイシンカセットはzwf_edd_eda遺伝子の対応する座位に位置しており、アプラマイシンカセットはpfkA遺伝子の対応する座位に位置していた。スペクチノマイシンおよびアプラマイシン耐性遺伝子を含有する耐性カセットを切り出すため、株GBE1353をプラスミドpCP20を用いて形質転換して株GBE1353_pを得た。アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上での30℃における一夜培養の後、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に再度画線し、30℃で一夜培養した。次いで単離されたコロニーをLBプレート上に蒔き、42℃で一夜培養し、それはpCP20プラスミドの喪失を引き起こした。次いで、その2個の耐性カセットの有効な切り出しおよびpCP20プラスミドの喪失を確かめるため、単離されたコロニーをスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して37℃で一夜培養し、アプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して37℃で一夜培養し、アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に画線して30℃で一夜培養し、LBプレート上に画線して37℃で一夜培養した。結果として得られた株は37℃で培養したLBプレート上で増殖し、GBE1368と名付けられた。GBE1368細胞は、スペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上、アプラマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上、およびアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0215】
株GBE1368をエレクトロコンピテントにし、GBE1368エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpKD46を用いて形質転換した。次いで形質転換体細胞をアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、プレートを30℃で一夜培養してGBE1371と名付けられた新しい株を得た。プラスミドpGBE0688を鋳型として、オリゴヌクレオチド0631および0632(それぞれSEQ RC0011およびRC0012として示される)をプライマーとして用いることにより、PCR産物を生成した。結果として得られた1.3KbpのPCR産物をエレクトロコンピテントなGBE1371細菌中に形質転換し、その形質転換混合物をスペクチノマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔いた。プレートを37℃で一夜培養して株GBE1420_pKD46を生成した。株GBE1420_pKD46において、ホスホフルクトキナーゼ遺伝子pfkBを欠失させ、欠失したDNA配列はスペクチノマイシン耐性遺伝子を含有するカセットにより置き換えた。pfkB遺伝子の欠失が起きたことを確かめるため、プライマー0621および0622(それぞれSEQ RC0013およびRC0014として示される)を用いてPCR増幅を実施した。この最終的な2.2KbpのPCR産物を、同じプライマー0621および0622を用いることにより配列決定した。
【0216】
プラスミドpKD46の喪失を誘導するため、株GBE1420_pKD46をLBプレート上に蒔き、プレートを42℃で一夜培養した。プラスミドpKD46の喪失を、単離されたコロニーをアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いて30℃で一夜培養し、LBプレート上に蒔いて37℃で一夜培養することにより確かめた。結果として得られた37℃で培養したLBプレート上で増殖している株をGBE1420と名付けた。GBE1420細胞はアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上では増殖しなかった。
【0217】
実施例15:株GBE2268およびGBE2269によるアセトン生成
プラスミドの関連する株中への形質転換の記述
株GBE1283をエレクトロコンピテントにし、GBE1283エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpGBE1021を用いて形質転換した。次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、プレートを30℃で一夜培養して株GBE2266を生成した。
【0218】
株GBE1420をエレクトロコンピテントにし、GBE1420エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpGBE1020を用いて形質転換した。次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養して株GBE2267を得た。
【0219】
株GBE2266およびGBE2267からの単離されたコロニーを、炭素源としてのグルコース(2g/L)とアンピシリン(100μg/ml)とを含有するMSプレート上でスクリーニングした。これらのプレートを30℃で培養して、それぞれ株GBE2268およびGBE2269を得た。30℃で4日間の培養後、コロニーをグルコース(2g/L)、酵母抽出物(0.1g/L)およびアンピシリン(100μg/ml)を含有するMS液体培地に移し、30℃で3日間培養した。
【0220】
フラスコ条件の記述
グルコース(10g/L)、酵母抽出物(0.1g/L)およびアンピシリン(100μg/ml)を含有するMSP液体培地(200ml)に、株GBE2268の前培養物または株GBE2269の前培養物のどちらかを植え付けた。最初のOD
600は0.1であった。その200mlの培養物をスクリューキャップで密封された250mlのボトル中で、30℃、170rpmの速度で培養した。分割量(2ml)を1日、2日、4日、5日、6日、7日および8日後に採取した。それぞれの分割量の試料に関して、ボトルを10秒間開けた。
【0221】
分析法の記述
分割量を濾過し、グルコース濃度をAgilent HPLC(1260 Infinity)およびガードカラム(Agilent,PL Hi−Plex Hガードカラム,PL1170−1830)を伴うHi−Plexカラム(Agilent,PL1170−6830)を用いたHPLC分析により決定した。
【0222】
−注入量:20μl
−溶媒組成:[H
2SO
4]:5.5mM
−カラムの温度:65℃
−RID(G1362A):温度設定:35℃
アセトンを濾過された分割量から酢酸メチルと混合することにより抽出した(2体積の濾過された分割量に関して1体積の酢酸メチル)。アセトン濃度を、ガスクロマトグラフ450−GC(Bruker)および以下のプログラムを用いるガスクロマトグラフィーにより決定した:
−カラム:DB−WAX(123−7033,Agilent Technologies)
−インジェクター:
○スプリット比:10
○T°=250℃
−オーブン:
○50℃で9分間
○180℃まで1分ごとに20℃
○180℃で5分間
○カラム流速:1.5ml/分(窒素)
−検出器FID:T°=300℃
結果
[アセトン]生成(mM)/[グルコース]消費(mM)の比率は、株GBE2269に関して株GBE2268に関するよりも高かった。
【0223】
実施例16:株GBE2272およびGBE2273によるアセトン生成
プラスミドの関連する株中への形質転換の記述
株GBE2256をエレクトロコンピテントにし、GBE2256エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpGBE1020を用いて形質転換した。次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレート上に蒔き、プレートを30℃で一夜培養して株GBE2270を生成した。
【0224】
株GBE1518をエレクトロコンピテントにし、GBE1518エレクトロコンピテント細胞をプラスミドpGBE1020を用いて形質転換した。次いで形質転換体をアンピシリン(100μg/ml)を補ったLBプレート上に蒔いた。プレートを30℃で一夜培養して株GBE2271を得た。
【0225】
株GBE2270およびGBE2271からの単離されたコロニーを、炭素源としてのグルコース(2g/L)とアンピシリン(100μg/ml)とを含有するMSプレート上でスクリーニングした。これらのプレートを30℃で培養して、それぞれ株GBE2272およびGBE2273を得た。30℃で4日間の培養後、コロニーをグルコース(2g/L)、酵母抽出物(0.1g/L)およびアンピシリン(100μg/ml)を含有するMS液体培地に移し、30℃で3日間培養した。
【0226】
フラスコ条件の記述
グルコース(10g/L)、酵母抽出物(0.1g/L)およびアンピシリン(100μg/ml)を含有するMSP液体培地(200ml)に、株GBE2272の前培養物または株GBE2273の前培養物のどちらかを植え付けた。最初のOD
600は0.1であった。その200mlの培養物をスクリューキャップで密封された250mlのボトル中で、30℃、170rpmの速度で培養した。分割量(2ml)を1日、2日、4日、5日および6日後に採取した。それぞれの分割量の試料に関して、ボトルを10秒間開けた。
【0227】
分析法の記述
分割量を濾過し、グルコース濃度をAgilent HPLC(1260 Infinity)およびガードカラム(Agilent,PL Hi−Plex Hガードカラム,PL1170−1830)を伴うHi−Plexカラム(Agilent,PL1170−6830)を用いたHPLC分析により決定した。
【0228】
−注入量:20μl
−溶媒組成:[H
2SO
4]:5.5mM
−カラムの温度:65℃
−RID(G1362A):温度設定:35℃
アセトンを濾過された分割量から酢酸メチルと混合することにより抽出した(2体積の濾過された分割量に関して1体積の酢酸メチル)。アセトン濃度を、ガスクロマトグラフ450−GC(Bruker)および以下のプログラムを用いるガスクロマトグラフィーにより決定した:
−カラム:DB−WAX(123−7033,Agilent Technologies)
−インジェクター:
○スプリット比:10
○T°=250℃
−オーブン:
○50℃で9分間
○180℃まで1分ごとに20℃
○180℃で5分間
○カラム流速:1.5ml/分(窒素)
−検出器FID:T°=300℃
結果
[アセトン]生成(mM)/[グルコース]消費(mM)の比率は、株GBE2273に関して株GBE2272に関するよりも高かった。
【0229】
【表7】