特許第6207506号(P6207506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207506再充電可能電気化学セル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207506
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】再充電可能電気化学セル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0563 20100101AFI20170925BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20170925BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170925BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20170925BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20170925BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20170925BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01M10/0563
   H01M10/0585
   H01M10/052
   H01M2/16 F
   H01M2/18 Z
   H01M4/58
   H01M4/80 C
   H01M2/16 L
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-525414(P2014-525414)
(86)(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公表番号】特表2014-527695(P2014-527695A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】EP2012065727
(87)【国際公開番号】WO2013024045
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年6月19日
(31)【優先権主張番号】13/209,357
(32)【優先日】2011年8月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517005824
【氏名又は名称】アレヴォ・インターナショナル・エス・アー
【氏名又は名称原語表記】ALEVO INTERNATIONAL S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ボルク,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ジンク,ロラン
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−502177(JP,A)
【文献】 特開平10−188938(JP,A)
【文献】 米国特許第06511773(US,B1)
【文献】 特開昭63−143759(JP,A)
【文献】 特表2010−528431(JP,A)
【文献】 特開昭61−183867(JP,A)
【文献】 特表2010−509719(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0189536(US,A1)
【文献】 実開平07−034555(JP,U)
【文献】 特開昭62−237679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05 −10/0587
H01M 2/14 − 2/18
H01M 4/00 − 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、正極(11)と、負極(10)と、SO及びセルの活性金属の伝導性塩を含み、実質的に有機物質を含まない電解液(9)とを有する再充電可能リチウムバッテリセルであって、
前記極(11)がグラスファイバー繊維材料から形成されたシース(13)に包まれ、
グラスファイバー繊維材料から形成された前記シース(13)の面範囲が前記極(11)の面範囲よりも大きく、それによって、前記グラスファイバー繊維材料が前記極の端(14)を超えて延出し、
前記極(11)を両側から被覆する前記グラスファイバー繊維材料の二つの層(15,16)は、前極(11)のエッジで互いに接続されてエッジ接続部(17)を形成し
前記セルの全ての正極(11)は、各々グラスファイバー繊維材料から形成されたシースに包まれ、電極スタック(20)において、前記負極と交互に前記セル中に配置され、
電極(10,11)及び前記シース(13)の面寸法は、前記正極(11)の前記シース(13)の外形寸法と前記負極(10)の外形寸法とが少なくとも一つの寸法において一致するように互いに合せられていることを特徴とする再充電可能リチウムバッテリセル。
【請求項2】
前記正極(11)は組成がLiM’M”(XOの活物質を含み、
式中、M’は、元素Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる
群より選択される少なくとも一つの金属であり、
M”は、周期表の2、3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14、15
及び16族の金属からなる群より選択される少なくとも一つの金属であり、
Xは、元素P、Si及びSからなる群より選択され、
xは、0よりも大きく、
yは、0よりも大きく、
zは、0又は0よりも大きく、
aは、0よりも大きく、
bは、0又は0よりも大き
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリセル。
【請求項3】
前記正極(11)は組成がLiM’M”(XOの活物質を含み、
式中、M’は、Feであり、
M”は、周期表の2、3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14、15及び16族の金属からなる群より選択される少なくとも一つの金属であり、
Xは、Pであり、
xは、0よりも大きく、
yは、0よりも大きく、
zは、0又は0よりも大きく、
aは、0よりも大きく、
bは、0である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のバッテリセル。
【請求項4】
前記正極(11)の厚み(d)は、0.25mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項5】
前記シース(13)の前記グラスファイバー繊維材料の厚み(D)は、最大0.3mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項6】
前記シース(13)の前記グラスファイバー繊維材料の厚み(D)は、0.05mm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項7】
前記グラスファイバー繊維材料が織布であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項8】
前記シース(13)の前記グラスファイバー繊維織布の糸密度が各方向において5本/cm以上であることを特徴とする請求項に記載のバッテリセル。
【請求項9】
前記電極(10,11)は、三次元多孔性金属構造体を有する伝導性要素(30)を備え、前記多孔性金属構造体は、前記電極(10,11)の全体の厚み(d)にわたって延出し、且つ活物質が多孔性金属構造体中に均等に分布されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項10】
前記負極(10)の数は、グラスファイバー繊維材料から形成されたシースによって包まれた前記正極(11)の数よりも一つ多いことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項11】
両極性の電極から形成される電極スタック(20)は、グラスファイバー繊維材料から形成された、又はポリマーフィルムから形成されたスタックシース(25)によって囲まれ、前記バッテリセルの前記ハウジング(1)が導電性材料から構成され、前記スタックシースが前記ハウジングに対する電気絶縁体となることを特徴とする請求項10に記載のバッテリセル。
【請求項12】
前記エッジ接続部(17)は、熱可塑性ポリマーによって形成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項13】
前記電解液(9)は、SOをベースにしており、前記電解液が伝導性塩のモル当りSOを1.5モル以上を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項14】
前記グラスファイバー繊維材料がポリマーからなるコーティングで被覆されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のバッテリセル。
【請求項15】
前記エッジ接続部(17)の形成のために、ポリマーは、前記グラスファイバー繊維材料に塗布され、前記グラスファイバー繊維材料の層は、前記グラスファイバー繊維材料が前記ポリマーによって接合されるように、前記エッジで共に押圧されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載のバッテリセルの製造方法。
【請求項16】
前記ポリマーは、溶融状態まで加熱される熱可塑性ポリマーであり、前記グラスファイバー繊維材料の層は、前記熱可塑性ポリマーが固化するように前記エッジで冷却されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶融状態への加熱は、超音波と前記エッジに接触する機械部品からの熱伝導とへの同時曝露によって行われることを特徴とする請求項16に記載の方法
【請求項18】
前記熱可塑性ポリマーは、押し出しによって塗布され、前記ポリマーは、粒状形態で押し出しノズルへ送られ、そこで前記塗布の直前に溶融状態へ加熱されることを特徴とする請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
記熱可塑性ポリマーは、前記グラスファイバー繊維材料へフィルム状ストリップとして塗布されることを特徴とする請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーは、溶媒に溶解され、溶解された形態で前記グラスファイバー繊維材料へ塗布されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極、負極及び伝導性塩を含む電解液を有する再充電可能リチウムバッテリセルに関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能バッテリセルは、多くの技術分野において非常に重要なものである。これらのセルは、比較的小さな電流レベルのみが必要とされる、携帯電話等の用途にしばしば使用される。また、高電流用途のバッテリセル(高電流セル)に対する要求は大きく、車両の電気的駆動力が特に重要である。本発明は、特に、高電流用途にも適したセルに関する。
【0003】
重要な要求は、高エネルギー密度である。セルは、可能な限り単位重量当たり及び単位容量当たりで多くの電気エネルギーを含むことが意図されている。これに関して、リチウムは、活性金属として特に有利である。
【0004】
再充電可能リチウムセルは、実際には、略もっぱらリチウムイオンセルである。それらの負極は銅被覆カーボンで構成され、リチウムイオンは、充電中に蓄えられる。また、正極は、活性金属のイオンを吸収するのに適した挿入材料で構成される。通常、正極は、アルミニウム伝導性要素上に被覆されるコバルト酸リチウムをベースにしている。両電極は、非常に薄い(典型的には、厚み100μm未満)。充電中、活性金属のイオンは、正極から放電されて負極へ挿入される。放電中は、この逆のプロセスが起こる。イオンは、必要なイオン移動度を有する電解液によって電極間を搬送される。リチウムイオンセルは、有機溶媒又は溶媒混合物(例えば、エチレンカーボネートベース)に溶解されたリチウム塩(例えば、LiPF)からなる電解液を含む。以降これらを“有機リチウムイオンセル”と称する。
【0005】
有機リチウムイオンセルは、安全性に問題がある。安全性のリスクは、特に、有機電解液によって引き起こされる。リチウムイオンセルが引火又は爆発すると、電解液の有機溶媒が可燃性物質を形成する。このような危険を回避するために、追加の対策、特に、充電及び放電のプロセスの非常に正確な調整と、バッテリ設計における追加の安全対策とを講じなければならない。例えば、セルは、故障時に溶融し、セル内の電流の流れを遮断するコンポーネントを含んでいる。しかしながら、これらの対策はコスト、容量、重量の増加をもたらし、エネルギー密度を減少させる。
【0006】
これらの問題は、特に、バッテリセルが高電流用途で開発される場合に重大である。安定性及び長期間にわたる動作の安全性への要求が特に強い。ここで、高電流セルと称されるセルは、5mA/cm以上、好ましくは10mA/cm以上、より好ましくは50mA/cm以上、特に好ましくは100mA/cm以上の、電極表面積に対する電流容量(以降、“面積比電流容量”と称する)を有するセルである。
【0007】
特に以下の要求を満足する改良された再充電可能バッテリセルに対する強い要求がある:
‐非常に良好な電気性能値、特に、高電流値に結び付いた高エネルギー密度(出力密度)
‐車両におけるより危険な操作状況下であっても安全であること
‐長い耐用年数、特に使用可能充放電サイクル数が多いこと
‐最小コスト、即ち、コスト対効果に優れた材料及び最大限単純な製造方法
‐オーバーロード性能及び深い放電性能等の更に重要な実用上の要求
【0008】
特許文献1は、これらの部分的に相反する要求をこれまでよりも実質的に良好な方法で満足するバッテリセルについて記述する。これは、本発明のバッテリセルにおいても好適に実施される以下の特別な構成によって特徴付けられる:
a)電解液はSOを含む。これはSOベースの電解液であること好ましい。この用語は、単に低濃度の添加物としてSOを含むのではなく、電解液に含まれ且つ電荷搬送を引き起こす伝導性塩におけるイオンの移動度が、少なくとも部分的にSOによって保証される程度に、SOの濃度が高い電解液を指すために本発明で使用される用語である。電解液は実質的に有機物質を含まないことが好ましい。“実質的に”とは、存在し得る任意の有機物質の量が少なく、安全上の問題を提起しないという意味で理解されるべきである。
b)正極は組成物LiM’M”(XOの組成を持つ活物質を含み、式中、
M’は、元素Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群より選択される少なくとも一つの金属であり、
M”は、周期表の2、3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、14、15及び16族の金属からなる群より選択される少なくとも一つの金属であり、
Xは、元素P、Si及びSからなる群より選択され、
xは、0よりも大きく、
yは、0よりも大きく、
zは、0又は0よりも大きく、
aは、0よりも大きく、
bは、0又は0よりも大きい。
【0009】
元素Xは、好ましくはPである。特に好ましくは、M’は、金属Feであり、特に好ましくは、bは0である。リン酸鉄リチウムは、正極の特に好適な活物質である。
【0010】
正極の特に好適な活物質は:
LiFeP
LiFePO
LiFe(SO
LiFeSOFであり、
ここで、添え字x、y、z及びaは、上記解釈を有する。
【0011】
活物質は、原子構造のコンポーネント部分ではない追加のドーピングを含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2011/098233号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この従来技術に基づいて、本発明は、改良された機能及び動作の安全性を有するセルを作り出すことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この技術的問題は、ハウジングと、正極と、負極と、SO及びセルの活性金属の伝導性塩を含む電解液とを有する再充電可能電気化学バッテリセルによって解決され、このセルは、電極の少なくとも一つがグラスファイバー繊維材料から形成されるシースに包まれ、グラスファイバー繊維材料から形成されるシースの面範囲は、電極の面範囲よりも大きく、それによって、グラスファイバー繊維材料はシース電極の端を超えて延出し、電極を両側から被覆するグラスファイバー繊維材料の二つの層は、エッジ接続部によって電極のエッジで互いに接続される。また、本発明の主題は、そのようなバッテリセルを製造するための方法を含む。
【0015】
本発明に従う特徴の組み合わせにより、セルの機能が顕著に改良され得る。特に、本発明において、電極をシースで包むことは、より均一なイオン移動とイオン分布とを生じることが分かった。特に負極におけるイオン分布が均一になるほど、充電可能な電極の活物質が多くなり、その結果、セルの使用可能容量が増す。同時に、これは、不均一な充電とそれによる活性金属の析出に関連し得る危険とを防止する。これらの利点は、セルの正極がグラスファイバー繊維材料から形成されるシース(以降、“グラスファイバーポーチ”とも称する)で包まれる場合に最も効果的である。これは、電極の活物質を除いて電極設計が完全に対称的であっても、電極の極性によっては効果が異なることを意味する。
【0016】
活物質は各電極の不可欠なコンポーネントであり、その充電状態は、セルの活性金属表面のイオン、特にリチウムイオンがセルの充電又は放電中に活物質内へ吸収される時に変化する。このプロセスによって放出された電子は、電極の一部でもある電気伝導性要素へ搬送される。
【0017】
既に述べたように、本発明は、特許文献1に従った再充電可能リチウムバッテリセルにおいて使用されることが好ましい。この書類の開示内容全体が本明細書で参考として援用される。例えば、本発明は、更なる詳細が得られる、引用された書類に実質的に記述された以下の特別な特徴を組み込む:
‐正極は、非常に厚く、最小厚みが、0.25mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmの順序で特に好適である。正極の最大厚みは、好ましくは、2mm、特に好ましくは、1.5mmである。
‐正極は、特に金属発泡体の形態において三次元多孔性金属構造体を有する伝導性要素を有する。この多孔性金属構造体が正極の全体の厚みにわたって実質的に延出すると特に好ましい。更に好適な実施形態では、正極の活物質は、前記電極の伝導性要素を形成する三次元多孔性金属構造体に実質的に均等に分布される。
‐負極は、リチウムイオンを吸収する活物質としてカーボンを含むことが好ましい。また、負極は、非常に厚いことが好ましく、最小厚みが、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.8mmの順序で特に好ましい。負極の厚みは、好ましくは、最大1.5mm、特に好ましくは、最大1.0mmである。
‐電解液は、伝導性塩の量に比較して相対的に高い濃度のSOを含み、SOの最小濃度値が、伝導性塩のモル当り1.5モル、2モル、2.5モル、3モル、4モル、4.5モル、5モル、6モルの順序で特に好ましい。好ましくは、SOの最大濃度は、伝導性塩のモル当り20モルである。
【0018】
本発明で扱われる問題に対する解決策は、無機の、好ましくはSOベースの電解液の使用に関連する多くの困難な問題に直面した。これらの問題は、有機電解液を有する従来のセルの場合には存在しない。
‐電解液は、非常に活性が高い。グラスファイバー繊維材料及びエッジ接続部は、SO電解液及びその過充電生成物に対して安定でなければならない。これは、適切な材料の選択を厳しく制限する。
‐グラスファイバー繊維材料という用語は、非常に細い糸や繊維から形成される複合構造体、特に、織布、編布、及び不織布を指す。繊維構造体は、電気化学セルの製造における重要な工程の問題に関連する。
‐繊維構造体及びグラスファイバーの滑らかな表面は、グラスファイバー層のエッジでの深刻なほころびとなる。これは、その機能を妨げ、アセンブリを困難にする。
‐電気化学セルに使用可能なグラスファイバー材料は、非常に細いファイバーからなる。セルの充電容量とその電気化学的特性とを最適化するために、グラスファイバー繊維材料は、可能な限り細くすべきである。本発明の実際のテストでは、例えば、全体の厚みが120μmの材料が使用された。そのため、材料は非常にフレキシブル(曲げられる)である。従って、アセンブリを単純にし得る自然な剛性を事実上有しない。アセンブリとセルの機械的安定性とに有利な機械的強度が得られるエッジで一度だけ接続が行われる。
‐既に述べたように、本発明は、比較的厚い正極と共に使用されることが好ましい。セルの放電容量を最大化するために、グラスファイバーポーチが電極の外形寸法を超えて延出するマージンは、可能な限り狭くすべきである。これは、エッジ領域における材料の延性及びエッジ接続の機械的強度に対する大きな要求となる。
【0019】
これらの問題点にもかかわらず、本発明において、電極、特に正極をグラスファイバーポーチで覆うことは、可能なだけでなく、特に有利でもあり、この有利さは、上述されたように、特にイオン移動の改良された均一性によるものであることが分かった。
【0020】
更なる利点は、後で説明される好適な実施形態を考慮して得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のバッテリセルの分解斜視図である。
図2図1のセルにおける電極スタックの一つの正極及び二つの負極の斜視図である。
図3図1のセルの電極スタック及びまだ折り曲げられていない電極スタックのスタックシースの斜視図である。
図4】正極の斜視図であり、正極の内部構造を記述するための概略拡大抜粋を含む。
図5図2のシースで包まれた正極のラインV−Vに沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を、図面に示される実施形態によってより詳細に以下で説明する。そこで示される特別な特徴は、本発明の好適な形態を作るために単独で又は組み合わせて使用され得る。
【0023】
図1は、頂部でのみ開口する下方部品2と下方部品2の上部開口を閉鎖するカバー部品3とを備えるハウジング1を有する、本発明の電気化学セルを示す。示されている好適な形態では、ハウジングは、プリズム(立方体)の形状で実施される。しかしながら、他のハウジング設計も可能であり、特に好ましくは、コイル状の電極を有する円筒形状のものも可能である。ハウジング壁は、セルの電解液に対して耐食性があり、起こり得る過充電生成物に対して耐性がある、ステンレス鋼等の耐久性のある金属で構成されることが好ましい。多くの用途のために、特に自動車工学において、ハウジングは、10年を超える耐用年数を有するべきである。
【0024】
示される好適な形態では、カバー部品3は、四つのポート、即ち、二つの給電部5及び6と、充填ポート7と、安全ポート8とを有する。給電部5及び6は、各々絶縁リング29で着座されて給電孔を密封し、カバー部品3に対して必要な電気絶縁を確保する一つの導体ロッド28を有する。給電部5及び6は、夫々、正極及び負極の端子ワイヤ23及び24へ電気的に接続される。
【0025】
好ましくは、給電部は、ガラスから金属への給電部であり、絶縁リング29は、例えば、レーザ溶接によってカバー部品3へ且つ導体ロッド28へ封止接続されるようにガラス材料で構成される。導体ロッド28は、ハウジング内部へ延出する。導体ロッド28は、中実構造のものであり、セルの電気接続に使用され得る。端子ワイヤ23,24は、セル内部で導体ロッド28の下端へ溶接され得る。また、端子ワイヤ23,24は、金属プレートの形態で実施され得る。
【0026】
導体ロッド28の少なくとも一方が、その内部にチャネルを有し、このチャネルがセルの内部と外部との間の出口開口として使用される実施形態も可能である。端子ワイヤは、導体ロッド28のチャネルを通して送ることができる。次に、開口5,6は、気密シールで閉鎖、例えば溶接され、その結果、セルは、気密シールによって永続的に封止される。電極は並列に接続される。明瞭化のために、この目的に必要な電気接続は、図面には示されていない。
【0027】
示される好適な形態では、充填ポート7は、セルの内側と外側との間の必要な接続を確保してセルを電解液で充填する通路チャネルを有する接続パイプ30を備える。通路チャネルは、適切な媒体で充填した後、例えば、溶接によって閉鎖され、セルは永続的に気密になる。
【0028】
安全ポート8は、好ましくは、セルの内圧が所定値を超えた時に勢いよく開く又は外れる表面層を有する。破壊するように設計されるディスク31(破裂ディスク)の表面層は、金属で形成されることが好ましい。セルの作動状態において、ハウジングは、密閉されることが好ましい。更に、図示の要素の1つ以上(ガラスから金属への給電部、電解液充填ポート及び破裂ディスク)はレーザ溶接によってカバー部品3上の対応するポートへ接合される。また、レーザ溶接方法を用いて、ハウジング1の下方部品2へカバー部品3を接続することが好ましい。
【0029】
図2に二つの負極10と一つの正極11とが示されている。電極の各々は、夫々セルの対応する給電(気密シールされた)部5及び6への接続のために、夫々端子ワイヤ23及び24を有する。勿論、金属プレート等も使用可能である。電極は、平らなプレートの形態である。即ち、面寸法(長さ及び幅)に比較して非常に薄い。面方向(表面領域の長さ及び幅)における寸法は、合わせて“面範囲”と呼ばれる。
【0030】
示される好適な形態では、正極(好ましくは、セルの全ての正極)は、グラスファイバー繊維材料から形成されたシース13(グラスファイバーポーチ)に包まれている。シースの面範囲は電極の面範囲よりも大きく、その境界14は図2に点線で示される。両側で電極を被覆するグラスファイバー繊維材料の二つの層15及び16は、エッジ接続部17を有する電極11のエッジで互いに接続される。エッジ接続部17は、グラスファイバーポーチ13の又はそのポーチ内に位置する電極11の四つのエッジの内の少なくとも二つ、好ましくは三つ、即ち、ボトムエッジと上方へ延出するサイドエッジとに沿って延出することが好ましい。エッジ接続部は、それが存在するエッジでつながっている。しかしながら、用途のタイプによって、エッジ接続部は不連続であってもよい。空間内で特定の向きで使用されるため、その向きと無関係に機能する必要のない(自動車バッテリのセル等の)セルにおいて、上方エッジのエッジ接続部を省略することができる。一方の側で開口するグラスファイバーポーチは、セルの電極の緊密なパッキングとバッテリの動作中に生じる膨張のためにシースに収まった電極の確実な保持を保証しており、そのため、電極が滑落又は飛び出すことはない。それにもかかわらず、これらのタイプの用途において、特にセルの向きと無関係に作動されるセルの場合にも、シースの全てのエッジにおけるエッジ接続部は有利である。この場合、端子ワイヤの通過を許容するのに十分な途切れを一つのみ有する。
【0031】
異なる繊維ファイバー複合構造体は、グラスファイバー繊維材料に適している。重要な例は、グラスファイバーから形成された織布、不織布、及び編布である。繊維ファイバー複合構造体は、シングルフィラメントガラス糸及びマルチフィラメントガラス糸(グラスファイバー糸)の両方から構成され得る。マルチフィラメントグラスファイバー糸から形成された布が特に好ましい。
【0032】
特に好適なグラスファイバー繊維材料のパラメータの詳細な仕様は、示すことができない。なぜなら、グラスファイバー繊維材料の異なるパラメータ(例えば、糸密度、糸サイズ、モノフィラメント又はマルチフィラメント、コーティング材料の全体の厚み)間に複雑な相互関係が存在するからである。しかしながら、本発明の教示に基づいて、更に努力することなく、対象となる特定のグラスファイバー繊維材料の適性をテストすることができる。
【0033】
そうする場合、セルの外側での事前テストで提案されたグラスファイバー繊維材料の以下の特性を最初にテストすると好都合である。
‐電解液への湿潤性
‐SOベースの電解液に対する耐性
‐過充電生成物、特に塩化アルミニウム及び塩化スルフリルに対する耐性
‐電解液との接触後の機械的安定性
‐電気短絡テスト
‐アセンブリ(ハンドリング、切断、スタッキング、セルへの挿入等)中の機械的安定性
‐エッジ接続部を作るための良好な接着性
【0034】
選択されるテストは、材料の将来の使用を考慮するものでなければならない。例えば、材料がその動作に過充電生成物が生じないセルに使用される場合、過充電生成物に対する安定性は必要ない。スタックシースとなることが意図される材料は、必ずしも電解液に対して湿潤可能である必要はない。
【0035】
これらの事前テストで有用であると証明された材料は、次に、テストセルに組み込まれる。それらの特性は、特に複数の充放電サイクルにわたっての電気容量に関して、及び、極端な動作条件(迅速な充電及び/又は放電)下における安全性に関して審査される。
【0036】
発明者等の現在の知識に従うと、グラスファイバー繊維材料の厚みは最大300μm、好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下である。より厚い材料で達成可能な電気セル特性の更なる改良は、一般的に、追加の材料に関連するエネルギー密度のロスを正当化しない。
【0037】
他方、グラスファイバー繊維材料の厚みは、最低値を下回るべきではない。なぜなら、本発明において、追及されるセルの電気データに対する改良が望ましい範囲で達成されないことが分かったからである。グラスファイバー繊維材料の厚みは、好ましくは50μm以上であり、この値は、60、70、80、90μmの順序で特に好適である。
【0038】
糸密度(TPI)も、実際に成功するために重要である。グラスファイバー布の好適な形態では、糸密度は、布の縦糸及び横糸に対応する二つの空間的方向で異なってよい。より低い密度を有する方向において、糸密度は、好ましくは5本/cm以上、好ましくは10本/cm以上、より好ましくは20本/cm以上であるべきである。
【0039】
グラスファイバー繊維材料の形成に使用されるマルチフィラメントグラスファイバー糸(ガラスフィラメント糸とも称する)は、しばしば所謂“陶砂(サイズ)”で被覆され、この陶砂は、布を織る等の更なる処理を促進する。陶砂は、でんぷんと油で構成され得る。
【0040】
完全に自由な、従って被覆されていない、グラスファイバー表面が必ずしも有利でないことが分かった。特に良好な結果は、グラスファイバーが適切なポリマーコーティングを備えるグラスファイバー繊維材料で得られた。コーティングは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、FEP(パーフルオロエチレンプロピレン)、THV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビリニデンからなるターポリマー)、PFA(パーフルオロアルコキシポリマー)等の含フッ素ポリマーや、アミノシラン、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を含有することが好ましい。このようなタイプのコーティングは、グラスファイバー繊維材料の機械的安定性を改良できる。加えて、セルの安全性における更なる利点が得られる。フッ素化ポリマーの場合、これは、金属リチウムの析出が生じると、リチウムがコーティングのフッ素と反応してフッ化リチウム(LiF)を形成するという事実によって説明され得る。この反応は、短絡を防止することができる。リチウムの析出がより大きく生じたとしても、フッ素コーティングとの反応に起因してグラスファイバー繊維材料は高密度となり、更なる反応は起こらず、イオン輸送は織物材料によって阻止される。これは、強力な短絡反応を防止又は停止する。本発明の実際のテストにおいて、被覆されたグラスファイバー繊維材料が使用された場合、電気容量の改良された安定性が複数の充放電サイクルにわたって得られることが分かった。
【0041】
図3は、4本の負極10と3本の正極11とで構成される電極スタックを示し、正極11の各々は、グラスファイバーポーチ13で包まれている。電極10,11は、電極スタック20中に交互に配置されている。一般的に言えば、シースに入ってない電極(好ましくは、負極)は、グラスファイバーポーチを有する電極(好ましくは、正極)よりも一つ多いことが好ましい。これは、電極スタック20の外端面21がシースに入っていない電極表面(好ましくは、負極の)によって形成されることになる。
【0042】
上述のように、セルのハウジング1は、金属又は他の導電性材料から構成されることが好ましい。電気接点がハウジング1の壁に存在しないようにスタックシース25として指定される外側シースで電極スタック20を包むことが有利であると証明された。図3において、このスタックシース25は、電極スタック20の周りに折り曲げられる前の状態で示されている。スタックシース25の部分表面25aは、電極スタック20の一端で負極10上に折り曲げられ、部分表面25bは、電極スタック20の他端で負極10上に折り曲げられる。部分表面25c及び25dは、電極10及び11のエッジによって形成される電極スタック20の側面上に折り曲げられる。最後に、部分表面25eは、電極10及び11の下方エッジによって形成される電極スタック20の基部エリア上に折り曲げられる。
【0043】
スタックシースの適切な材料は、上述のグラスファイバー繊維材料である。しかしながら、グラスファイバーポーチの場合より要求水準が低いため、他の絶縁材料も適切である。スタックシースに使用可能な他の材料は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)から形成されたポリマーフィルム、特にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、FEP(パーフルオロエチレンプロピレン)、THV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビリニデンからなるターポリマー)、PFA(パーフルオロアルコキシポリマー)等の含フッ素ポリマーから形成されるフィルムである。
【0044】
電極スタック20及びハウジング1の寸法は、図1に示されるように、電極スタック20がハウジング1へ挿入可能なように互いに整合されている。電極スタック20(スタックシース25に収まっている)の境界とハウジングの内壁との間の隙間は、セルのエネルギー密度を最大にし、ハウジング内の電極の不要な動きを防止するために、可能な限り小さくすべきである。
【0045】
電極10,11を含むハウジング1は、充填ポート7を介して電解液9で充填される(図1)。液の量は、好ましくは電解液の表面がグラスファイバーポーチ13の上限より下の平面に延出するように計算される。一般的に、その設計は、負極10と正極12との間のイオンの移送がシース13のグラスファイバー繊維材料を通してのみ可能であるようにすべきである。
【0046】
図4は、二つの概略拡大抜粋によって、好適な正極の内部構造体を示している。この正極は、三次元多孔性金属構造体を有する伝導要素30を有する。伝導要素30は、金属発泡体によって形成されることが好ましく、多孔性金属構造体が実質的に正極の全体厚みdを超えて延出するのが特に好ましい。正極の活物質33、例えば、リン酸鉄リチウムは、多孔性金属構造体の孔中に位置し、均一に分布することが好ましい。更なる詳細は、上述の特許文献1から得られる。本発明において、特に有利な結果は、ここで記述された電極のタイプとここで記述されるグラスファイバーポーチの組み合わせで得られることが分かった。
【0047】
特許文献1で記述される電極は、非常に厚い。この厚みに起因して、更に、伝導性要素に使用される多孔性金属構造体の鋭いエッジに起因して、グラスファイバーポーチとの組み合わせで更なる問題が予想された。一方、繊維グラスファイバー材料は、面積当りの弾力性が低いが、厚い電極は、グラスファイバーポーチのエッジで比較的激しい材料変形をもたらす。加えて、鋭いエッジに起因する細いグラスファイバーへの損傷のリスクが特に高い。
【0048】
図5において、エッジ接続部17は、断面で示される。好ましくは、ポーチ13のグラスファイバー繊維材料へ塗布され、溶融状態まで加熱される熱可塑性ポリマー35によって形成される。従って、グラスファイバー繊維材料の層は、共にエッジへ押圧され、冷却され、熱可塑性ポリマーが固化する。熱可塑性ポリマーの例は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、THV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビリニデンからなるターポリマー)、PFA(パーフルオロアルコキシポリマー)である。この例では、シースの両側のエッジ曲率が同じである。また、エッジ曲率が異なる、又は一方の側が平面で他方の側のみ湾曲している実施形態も可能である。
【0049】
シース13のグラスファイバー材料の厚み(厚みD)と電極11の厚み(厚みd)との比率に関して、図5は縮尺どおりではない。厚みd及びDの好適な値は、既に述べた通りである。
【0050】
無機電解質溶液のグラスファイバー繊維材料の処理において当業者が予想する問題にもかかわらず、本発明では、バッテリセルの製造方法の発展に成功した。その発展の本質的態様は、電極、特に正極のシース13の形成における最大限可能な度合いの自動化を達成することであった。グラスファイバー繊維材料からシースのエッジ接続部17を形成することは極めて重要であり、最も大きな問題が克服されなければならない態様であった。
【0051】
エッジ接続部は、本発明に従って、適切なポリマーをグラスファイバー繊維材料へ塗布することによって形成される。グラスファイバー繊維材料の層15,16は、共にエッジへ押圧され、それによって、グラスファイバー材料が接合される。ポリマーは、少なくとも被接合層15,16の一方のエッジへ塗布される。適切なポリマーはTHVである。
【0052】
エッジストリップはポリマーで被覆され、グラスファイバー繊維材料の層の面方向(幅)における対応する寸法の比率が5%以下であることが好ましい。特に好ましくは、層の面方向の寸法の3%以下、一層好ましくは、2%以下である。
【0053】
エッジ接続部を作るための好適な方法は、塗布され且つ溶融状態まで加熱される熱可塑性ポリマーを使用する。他のステップでは、被接合グラスファイバーポーチの二つの層は、エッジで、即ち、ポリマーで被覆される領域において圧縮される。圧縮された層は冷却され、ポリマーは固化する。このように、信頼できる接続部が二つの層の間で形成される。グラスファイバー繊維材料の二つの層からの糸がこのように共に接続さる。
【0054】
勿論、好適な製造方法のステップの幾つかは、異なる順序で実行されてもよい。特にポリマー材料の塗布とその溶融状態への加熱とを備えるステップは、異なる順序で行われてもよい。例えば、溶融熱可塑性ポリマーをグラスファイバー繊維材料の層のエッジ領域へ塗布することができる。熱可塑性ポリマーの塗布は、好ましくは押し出しによって実行される。
【0055】
更に好適な実施形態において、熱可塑性ポリマーは、薄いストリップ、例えば、ストリップ状フィルムの形態で塗布されてもよい。この場合、エッジの二つの層は、圧縮され、ポリマーが溶融状態に達するまでポリマーフィルムと共に加熱される。
【0056】
特に好適な実施形態では、ポリマーの溶融状態への加熱は、グラスファイバー繊維材料のエッジに対する追加の熱源への同時曝露によって支援される。例えば、その支援は、超音波や赤外線放射によって提供され得る。超音波や熱伝導に対する同時曝露は、グラスファイバー層の少なくとも一方のエッジと接触する機械部品によって行われることが好ましい。本発明において、特に加熱されたソノトロード(超音波ホーン)の使用が溶融状態へのポリマーの加熱を支援するために好適であり、溶融時間の短縮、ひいては、方法の実行を促進する。これは、製造の自動化において得られるバッチサイズを拡大することができる。
【0057】
本発明において、エッジ接続部を作る更なる手段が研究された。本方法の他の好適な変形例では、適切なポリマーを溶媒に溶解する。その溶液を、グラスファイバー繊維材料の層の一方へ塗布することが好ましい。第2の層が上に配された後、両層は、共に圧縮される。溶媒は、例えば、室温で蒸発する。エッジを溶媒に適合した温度まで加熱して蒸発を促進する。従って、ポリマーのみがエッジを接続するために残り、エッジ接続部を提供する。溶解されたポリマーを塗布する際、ポリマーは完全に透過可能な状態になく、グラスファイバー繊維材料から漏れる。このように、信頼できる、安定した耐久性のあるエッジ接続部が得られる。
【0058】
バッテリセルを製造するための方法のプロセス全体において、正極は、最初にシースに包まれる。シースの形成では、グラスファイバー繊維材料の層を最初に広げてよく、その上に、正極10が置かれる。ポリマーは、一緒に接続される層のエッジに塗布される。この後、第2の層の追加とエッジでの二つの層の圧縮とが続く。
【0059】
或いは、二つの層が最初に上下に配され、次に、グラスファイバーポーチが形成されてもよい。次に、正極は、少なくとも一端が開口しているグラスファイバーポーチへ挿入され得る。
【0060】
シースに包まれた正極は、負極と交互にスタックされる。この構成では、電極スタックが初めと終わりの両方で負極を備える。更なる方法のステップにおいて、電極スタックはスタックシースによって包まれる。次に、全体が包まれた電極スタックは、バッテリセルハウジング内へ挿入され更なるステップで電気接続される。ハウジングが閉鎖された後、そのハウジングは、充填ポートを介して電解液で充填され、次に、閉鎖され、気密封止されたセルが得られる。
図1
図2
図3
図4
図5