特許第6207508号(P6207508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207508抗微生物性アイオノマー組成物およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207508
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】抗微生物性アイオノマー組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20170925BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20170925BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20170925BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20170925BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20170925BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170925BHJP
   D06M 15/21 20060101ALI20170925BHJP
   D06M 15/267 20060101ALI20170925BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20170925BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08L101/02
   A01N59/16 A
   A01N25/10
   A01N25/34 B
   B05D5/00 Z
   B05D7/24 302F
   D06M15/21
   D06M15/267
   C08K3/16
   C08K5/00
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-526530(P2014-526530)
(86)(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公表番号】特表2014-525481(P2014-525481A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】FI2012050803
(87)【国際公開番号】WO2013026961
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年3月6日
(31)【優先権主張番号】20115816
(32)【優先日】2011年8月22日
(33)【優先権主張国】FI
(31)【優先権主張番号】61/525,888
(32)【優先日】2011年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514045832
【氏名又は名称】アルゲンラボ グローバル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Argenlab Global Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】マーカス マキ
(72)【発明者】
【氏名】ユリ ニエミネン
(72)【発明者】
【氏名】ハリー ラアクソネン
(72)【発明者】
【氏名】サミ アレバ
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−510794(JP,A)
【文献】 米国特許第06224898(US,B1)
【文献】 特表2007−535573(JP,A)
【文献】 特表2001−508041(JP,A)
【文献】 特開2010−184883(JP,A)
【文献】 特開2004−115811(JP,A)
【文献】 特開2012−224563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン官能性カチオン性ポリマー化合物、ハロゲン化銀および安定剤物質を含む抗微生物性アイオノマー組成物であって、
前記アミン官能性ポリマーには、200および3,000,000の間の分子量(Mw)を有するポリエチレンイミンが含まれ、
前記安定剤物質が、アンモニウムカチオン、サッカリン、スルホンアミド官能基を有する有機物質および無機物質からなる群から選ばれる少なくとも一種である、
抗微生物性アイオノマー組成物。
【請求項2】
ハロゲン化銀は分子形態である、または、
ハロゲン化銀は塩化銀である、
請求項1に記載の抗微生物性アイオノマー組成物。
【請求項3】
前記安定剤物質が、サッカリン;シクラミン酸;スルファジアジン;アセスルファームおよびそれらのアルカリ金属またはアンモニウム塩;および塩化アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1または2に記載の抗微生物性アイオノマー組成物。
【請求項4】
ポリエチレンイミンの分子量(Mw)が約750乃至2,000,000である、請求項1〜3のいずれかに記載の抗微生物性アイオノマー組成物。
【請求項5】
(i)ポリエチレンイミンの70乃至99.99重量部と少なくとも一種のハロゲン化銀の0.01乃至30重量部とを少なくとも反応させることによって得られる、又は
(ii)ポリエチレンイミンの50乃至99.99重量部、少なくとも一種の非ハロゲン化物銀塩の0.01乃至50重量部、および、ハロゲン化水素またはアルカリ金属の若しくはアンモニウムのハロゲン化物塩を少なくとも反応させることによって得られる、
請求項1〜4のいずれかに記載の抗微生物性アイオノマー組成物。
【請求項6】
前記反応が、安定剤物質の存在下で行われる、請求項5に記載の抗微生物性アイオノマー組成物。
【請求項7】
ハロゲン化銀には、塩化銀が含まれ、ハロゲン化水素には、塩化水素が含まれ、およびアルカリ金属のハロゲン化物塩には、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムが含まれる、請求項5に記載の抗微生物性アイオノマー組成物。
【請求項8】
前記反応は溶剤マトリクスにおいて行われ、
前記溶剤マトリクスには、アルコール、水およびそれらの組合せが含まれる、
請求項5〜7のいずれかに記載の抗微生物性アイオノマー組成物。
【請求項9】
組成物の銀含量は、組成物の合計重量の約0.01乃至50%である、請求項1〜8のいずれかに記載の抗微生物性アイオノマー組成物。
【請求項10】
銀化合物対アミン化合物の重量比は、約1:100乃至100:1である、請求項1〜9のいずれかに記載の抗微生物性アイオノマー組成物。
【請求項11】
(i)200および3,000,000の間の分子量(Mw)を有するポリエチレンイミン、ハロゲン化銀および少なくとも一種の安定剤物質を共に反応させる工程、又は
(ii)200および3,000,000の間の分子量(Mw)を有するポリエチレンイミン、少なくとも一種の非ハロゲン化物銀塩、ハロゲン化水素および/またはアルカリ金属のハロゲン化物塩、および少なくとも一種の安定剤物質を共に反応させる工程、
を含み、
前記安定剤物質が、アンモニウムカチオン、サッカリン、スルホンアミド官能基を有する有機物質および無機物質からなる群から選ばれる少なくとも一種である、ポリマー抗微生物性アイオノマー組成物を生産する方法。
【請求項12】
(i)ポリエチレンイミンの70乃至99.99重量部と少なくとも一種のハロゲン化銀の0.01乃至30重量部とを少なくとも反応させる工程、又は
(ii)ポリエチレンイミンの70乃至99.99重量部、少なくとも一種の非ハロゲン化物銀塩の0.01乃至30重量部、およびハロゲン化水素またはアルカリ金属の若しくはアンモニウムのハロゲン化物塩を少なくとも反応させる工程、
が含まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
溶剤マトリクスにおいて
(i)ポリエチレンイミン、
(ii)ハロゲン化銀、および
(iii)少なくとも一種の安定剤物質
を共に反応させることが含まれる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
溶剤マトリクスにおいて
(i)非ハロゲン化物銀塩または銀錯体、
(ii)ハロゲン化水素、アルカリ金属のハロゲン化物塩またはそれらの組合せ、および
(iii)少なくとも一種の安定剤物質
を共に反応させることが含まれる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記反応させる工程が、溶剤マトリクスにおいて行われ、前記溶剤マトリクスが、アルコール、水またはそれらの組合せを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれかに記載のアイオノマー組成物または請求項11〜15のいずれかに記載の方法によって生産される組成物の、ホスト表面のコーティングのための使用。
【請求項17】
繊維、布およびバルク材料表面の群で、合成、半合成および天然の繊維、織物、不織布、編物、ペーパー、種々のポリマー表面、金属表面であってスチール表面のようなもの、種々のコーティング表面、木材表面および繊維、布およびバルク材料表面が含まれるものから選ばれるホスト表面をコーティングすることが含まれる、
請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記組成物を抗微生物剤として、脱臭剤として、または抗微生物性薬剤または脱臭剤用の添加剤として用いることが含まれる、請求項16または17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の背景 本発明の分野
【0002】
本発明はポリマー抗微生物性組成物に関する。特に、本発明は新しい抗微生物性アイオノマー組成物、そのものを調製する方法およびその使用に関する。
【0003】
関連技術の記載
【0004】
銀イオンの生物活性特性に基づいた抗微生物性技術は、目下のところ、科学界および抗微生物性表面技術を活用した産業の双方において抗微生物性材料の広範な応用分野での最も先進的な解決法に属すると広く認識されている。銀イオンは、多くの適用において安全な殺生物剤としての一般的な地位を有する。また、ほとんどの細菌種で、抗生物質耐性菌、例は、現在のところ、院内感染の形態において患者に深刻な健康脅威を生じさせるようなMRSAおよびNDM-1を含め、それらのものに対する銀の広い抗菌スペクトルは、銀イオンを特に興味深いものにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、医療部門では、病院の衛生状態の改善および感染の予防のための戦略は、医療環境での様々な表面を通した感染の広がりの観点をカバーするために拡張されている。相応して、抗微生物性材料およびコーティング技術の適用は、他の観点と一緒に院内感染に立ち向かうのに寄与する新しい補完的な手段として強調されてきた。
【0006】
多様な戦略が、繊維およびバルク材料表面上に抗微生物的に活性な、銀の放出面を形成するために利用されてきた。慣習的な戦略には典型的に、ナノ銀、銀ゼオライト、銀リン酸ジルコニウムおよび塩化銀含有二酸化チタン粒子のような銀含有粒子の、典型的には、担体材料を利用した種々の化学的手段によるその表面に対する付着が含まれる。別の慣習的な方法は、一定の表面材料の表面上への銀イオンまたは銀含有粒子の付着が提供されるように、その表面材料を化学的に処理することである。
【0007】
ナノ粒子銀(ナノ銀)は最近広範囲に研究され、健康および環境に対する潜在的に危険な材料として浮上し、それはもう一度新しい銀イオン技術の開発に向けた圧力を増加させている。
【0008】
消毒液、界面活性剤、塗料、ワックス/ポリマーコーティング、脱臭(「消臭」とも言う)液体および化粧品溶液などのような液体製品用の液状抗微生物性添加剤は、典型的には、くえん酸銀溶液または銀ゼオライトまたは粒子状銀分散物、コロイド銀の利用に基づく。
【0009】
今日まで、ポリマー担体系銀技術はあまり広く研究または開発されていない。機能性イオンポリマーに基づく技術は珍しい。
【0010】
国際特許出願公開WO(国際公開)2002/030204号明細書は新しい抗菌剤を開示し、そこでは、高沸点を有するアミン化合物または骨格または側鎖に塩基性窒素を有する水溶性ポリマーの窒素原子の孤立電子対は、銀イオンと配位結合している。抗菌性物質およびそれらを含む脱臭液も開示される。
【0011】
米国特許出願公開第2009246258号明細書は、表面コーティングを有する抗菌性および臭気吸着布基材を開示する。コーティングには、銀化合物およびそれらの組合せ、ハイパーブランチ(超分枝状)ポリエチレンイミン誘導体、クエン酸カリウム、無機塩化物、ポリウレタン結合剤、および架橋剤が含まれる。銀化合物は、銀リン酸ジルコニウム、銀ゼオライト、銀ガラス、およびそれらの任意の混合物または導電性銀含有ナノ粒子、イオン交換樹脂、ゼオライト、またはあるいは、置換されたガラス化合物からなる群より選ばれる。
【0012】
公表物によれば、ハイパーブランチポリエチレンイミン誘導体で、「h-PEI」と略記するものには、5乃至30個の炭素を有する一またはそれよりも多く(一以上)の線状炭化水素基に連結した少なくとも一種のハイパーブランチポリエチレンイミンが含まれる。好適な銀含有化合物は、商品名ALPHASANの下でMilliken & Company(ミリケン・アンド・カンパニー)から入手可能な銀リン酸ジルコニウム、商品名ZEOMICの下でSinanen(シナネン社)から入手可能な銀ゼオライト、および商品名IONPUREの下でIshizuka Glass(石塚硝子株式会社)から入手できる銀ガラスである。無機塩化物、特に塩化マグネシウムおよび塩化アンモニウムが好ましい。比率の範囲は1:10から5:1まで(塩化物対銀イオン)である。h-PEI誘導体はまた変色を受け、そしてクエン酸カリウムがh-PEIの黄変を低減または排除することが見出された。
【0013】
発明の概略
【0014】
本発明は、アミン官能性カチオン性ポリマーおよびハロゲン化銀を含む抗微生物性アイオノマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、抗微生物性アモルファスアイオノマー組成物は、少なくとも一種のアミン官能性ポリマーおよびハロゲン化銀を反応させることが含まれるプロセスによって得ることができる。あるいはまた、本組成物は、アミン官能性ポリマーおよび少なくとも一種の非ハロゲン化銀塩または複合体化合物(「錯化合物」とも言う)およびハロゲン化水素またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属またはアンモニウムのハロゲン化物塩を反応させることが含まれるプロセスによって得ることができる。
【0016】
たとえば、第一の好適な具体化では、抗微生物性アイオノマー組成物は、溶剤マトリクスにおいて、
−官能性アミン基を示す少なくとも一種のポリマー、および
−ハロゲン化銀
を共に反応させることによって得られる。
【0017】
別の好適な具体化では、本抗微生物性アイオノマー組成物は、溶剤マトリクスにおいて、
−官能性アミン基を示す少なくとも一種のポリマー、
−少なくとも一種の有機銀塩または複合体化合物および
−ハロゲン化水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩またはハロゲン化アンモニウム塩、またはそれらの組合せ
を共に反応させることによって得られる。
【0018】
さらに好適な具体化では、本抗微生物性アイオノマー組成物は、組成物において安定化成分(stabilizing components)を含むことによってさらにバランスをとり、そして調節される。さらに好ましい具体化では、安定化成分には、スルホンアミド基含有の有機物質(群)が含まれる。若干の具体化では、前記安定剤物質(said stabilizer substance)は、前記少なくとも一種の有機銀塩または複合体化合物の対アニオンまたはリガンドであってもよい。
【0019】
いくつかの具体化では、前記抗微生物性組成物は、架橋剤、疎水性改質剤(重合調整剤)、撥水剤、種々の安定剤および界面活性剤などのような追加の成分を含む。
【0020】
また、上記に開示した調製方法を組み合わせることもできる。
【0021】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物は、多種多様なホスト表面の被覆(コーティング)および処理のために使用することができる。
【0022】
さらに特に、本アイオノマー組成物は、主にクレーム1の特徴部分において述べたものによって特徴付けられる。
【0023】
本発明に従う方法は、クレーム25の特徴部分において述べたものによって特徴付けられる。
【0024】
アイオノマー組成物の使用は、クレーム31に述べたものによって特徴付けられる。
【0025】
本発明は著しい利益を提供する。大抵、この新しい組成物は、抗微生物性コーティング、抗微生物性および衛生的な(sanitizing)仕上げ、抗微生物性添加剤として、および新しい抗微生物性物質の形成のための抗微生物性成分としての使用に適切である。
【0026】
新しい抗微生物性アイオノマー組成物は特に、たとえば、繊維、布およびバルク材料表面などのような、種々の合成、半合成および天然繊維、織物、不織布、編物、紙(ペーパー類)、種々のポリマー表面、金属表面、種々のコーティング表面、木材表面(木肌)および繊維を含め、種々の基材のコーティングのために有用である。新しい抗微生物性アイオノマー組成物は特に、抗微生物性のおしぼり(ウェットワイプ、ウェットティッシュ類)、ハンド(手足、前肢)の衛生薬(サニタイザー類)液および化粧品のために有用である。
【0027】
本発明に従うアイオノマー組成物は、高められた抗微生物効果、光学性能および安定性を提供し、それは、ポリアミンポリマーと混合される異なる銀供給源を含む既知の抗菌性組成物のものを上回る。ポリアミンおよび銀のアイオノマーを有するハロゲン化物が、高められた接着性、抗微生物活性、銀イオン放出の制御および光学性能を提供することは明らかである。本発明に従うアイオノマー組成物は好適には粒子を含まない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明を、より一層詳しく、詳細な説明を用い、そして多数の実施例を参照して検討する。
【0029】
好適な実施形態の詳細な記載
【0030】
本発明では、アミン官能性ポリマー〔即ち、官能性アミン基を示すポリマー(「ポリマー」は「重合体」とも言う)〕およびハロゲン化金属のアイオノマーを含む新しい抗微生物性組成物が開示される。本発明に従うアイオノマー組成物の好適な実施形態によれば、組成物は、溶剤マトリクスにおいて、生産され、-そしてそれは従ってまた、溶剤マトリクスを含み、できれば、メチルアルコールまたはエチルアルコール、イソプロピルアルコールのようなアルコールまたは水およびそれらの組合せが含まれる。
【0031】
第一の好適な具体化(以下、「具体化」を「実施形態」と言う)では、アイオノマー組成物は、少なくとも一種のアミン官能性ポリマー(アイオノマープレポリマー、担体ポリマー)およびハロゲン化銀を共に反応させることによって得られる。別の好適な実施形態では、アイオノマー組成物は、少なくとも一種のアミン官能性ポリマー(アイオノマープレポリマー、担体ポリマー)、少なくとも一種の非ハロゲン化銀塩または複合体化合物およびハロゲン化水素および/またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属(以下には、共に「アルカリ金属」と指定する)のハロゲン化物塩を共に反応させることによって得られる。
【0032】
一実施形態では、アミン官能性ポリマー「担体」ポリマーは、ハロゲン化銀または銀塩または複合体化合物のいずれかと一緒に反応し、もっとも、後者の場合には、組成物は、本発明に特徴的な組成物を得るためにハロゲン化水素またはアルカリ金属ハロゲン化物塩(「ハロゲン化物化合物」)のいずれかによりハロゲン化(halidized)される。好適な実施形態では、少なくとも一種の安定剤成分/物質がそのシステム(組成物)に含まれる。双方の経路で、得られた生成物は、プロトンまたはアルカリ金属カチオンまたはアルカリ金属塩濃度での変動と無関係に同様の本質的な特性を有する。
【0033】
本発明の好適な実施形態では、前記アミン官能性アイオノマープレポリマーには、分枝状ポリエチレンイミン、線状ポリエチレンイミンまたは例は、分子量および一級:二級:三級-アミンの比率に関しての異なる特性を有する異なる品質の、対応するポリエチレンイミンの混合物が含まれる。また、ポリエチレンイミンのコポリマー(共重合体)も有用である。
【0034】
他の実施形態では、前記アミン官能性ポリマーには、ポリビニルアミン、ポリアクリルアミン、ポリアリールアミン、ポリエチレンイミン、ポリヘキサメチレン-ビグアニジンおよびポリビニルピリジンのような他の線状または分枝状ポリアミンが含まれる。種々のアミン官能性ポリマーの組合せは、本発明に対して特徴的な抗微生物性アイオノマー組成物を得るために適用されてもよい。
【0035】
アミン官能性ポリマーは、できれば好ましくは、200および3,000,000の間、中でも特に、約750乃至2,000,000の分子量(Mw)を有する可能性として分枝状のポリエチレンイミンを含み、またはそれからなるか、またはそれから本質的に構成される。
【0036】
さらなる例として、以下の実施形態を挙げることができる。すなわち、
−アミン官能性ポリマーがポリビニルアミンまたはビニルアミンの30-100モル-%を有するコポリマーである組成物、特に、アミン官能性ポリマーがポリビニルアミンとエチレンイミンとのグラフトポリマーである実施形態、
−アミン官能性ポリマーがポリアミドアミン(polyamidoamine)とエチレンイミンとのグラフトポリマーである組成物、
−アミン官能性ポリマーがポリアリールアミンコポリマーである組成物、および
−アミン官能性ポリマーがポリアクリルアミンである組成物。
【0037】
ポリマー成分が少なくとも一種の架橋剤により内部で架橋される組成物もまた意図される。
【0038】
若干の実施形態では、前記安定剤成分には、本発明に従って、様々なストレッサー(「ストレス因子」ともいう)で、たとえば、UV照射、熱、水分、酸化還元反応、pHおよび組成物に好ましくない変化を生じさせることがある他の要因のようなものに対して組成物内での銀の一部分の安定性を促進することが可能な一以上の有機または無機物質が含まれる。不利な効果には、組成物の本質的な化学構造において、および対応してたとえば、組成物の状態の外観において、変色、粒子形成および他の不利な効果が含まれる。
【0039】
本発明の好適な一実施形態において、前記安定剤には、スルホンアミド官能基(群、以下、「群」は複数可能であることを示す)を有する少なくとも一種の物質または化合物が含まれる。
【0040】
別の好適な実施形態において、前記安定剤には、アンモニウムカチオンが含まれる。
【0041】
別の好適な実施形態において、前記安定剤には、過剰塩化物アニオンが含まれる。
【0042】
別の好適な実施形態では、前記安定剤物質または安定剤物質の組合せは、サッカリン、シクラミン酸、スルファジアジン、アセスルファーム、塩化アンモニウムおよびアンモニウムサッカリンを含む群から選ばれる。
【0043】
特に好適な実施態様では、前記安定剤物質には、サッカリンが含まれる。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記安定剤物質には、例は、有機酸(たとえば、カルボン酸、スルホン酸およびアミノ酸のようなもの)、四級アンモニウム化合物、リン酸塩(ホスファート)、エステル、アルデヒド、ケトン、両性イオン化合物、チタナートおよびそれらの有機誘導体、シランおよびそれらの有機誘導体および有機硫黄化合物が含まれてよい。
【0045】
サッカリン(o-スルホベンゾイミド;1,2-ベンゾチアゾール-3(2H)-オン1,1-ジオキシド)は最も広く用いられる人工甘味剤の一種である。サッカリンのイミノ水素は酸性である。分子は対応するニトラニオン(nitranion)に簡単に変換することができる。サッカリナト(saccharinato)アニオンの錯体(配位)化学は非常に汎用性がある。それは金属中心に対して複数の配位部位を提供する。
【0046】
典型的な銀化合物、銀サッカリン(「銀サッカリナート」とも言う)(通常の形式:銀サッカリン二水和物)は、限られた溶解性を有する白色の固形粉末である。銀サッカリンは、典型的には、酸性形態のサッカリンおよび硝酸銀を反応させることによって、またはサッカリンナトリウムおよび一定の溶剤組成物における硝酸銀から、サッカリンの分子状態に依存して、沈殿を通じて生産することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記アミン官能性ポリマーの遊離アミン官能基は、それには、好適な実施形態では、ポリエチレンイミンが含まれ、ホスト材料(抗微生物性機能を提供するために本発明のアイオノマー組成物が添加される材料)および材料表面(本発明のアイオノマー組成物を含む材料で被覆される表面)に対して、前記組成物の付着における機能を有する。添加剤として用いるとき、ホスト材料/ホストマトリクスへの結合は、本発明に従うアイオノマー組成物のアミン官能性ポリマー骨格部分のアミン基および第二の材料の分子構造の間で、接着、例は、イオン結合または共有結合、または相互作用などを通して達成することができる。
【0048】
好適な一実施形態では、溶剤マトリクスには、エチルアルコールまたはメチルアルコールまたはイソプロパノールまたは水またはそれらの組合せが含まれる。溶剤の混合物は、たとえば、水性アルコール溶液/混合物などのようなものを用いることができる。前記抗微生物性アイオノマー組成物は、さらなる使用のために、前記溶剤マトリクスから、例は、溶剤を蒸発させることを通じて抽出することができる。尤も、典型的には、より一層実用的で、かつ、経済的な解決策は、組成物を、出発物質として溶剤マトリクス含有アイオノマー組成物と共に直接的に使用するためのさらなるプロセスを設計することである。
【0049】
本発明の別の実施形態によれば、銀カチオンは、非ハロゲン化物銀塩または銀錯体として、アイオノマー組成物中に送られ、それはアミン官能性ポリマー(群)と、好適な実施形態では、ポリエチレンイミンと反応し、次いで、ハロゲン化水素またはハロゲン化アルカリ金属塩またはそれらの組合せとの組成物の塩素化処理が続く。後者の実施形態に関連して、適切な非ハロゲン化銀塩または銀錯体には、例は、硝酸銀、酢酸銀、ステアリン酸銀、酸化銀、銀サッカリナート(サッカリン酸銀)、銀イミダゾール、くえん酸銀、銀メタクリラートおよびスルファジアジン銀が含まれる。いくつかの実施形態では、特定の銀塩の対イオン(アニオン)の化学的性質は、組成物の安定化に、および組成物からの銀イオンの移動を制御するのに利用される。
【0050】
アイオノマー組成物の銀含量は、約0.001乃至50%、特に、約0.01乃至30%、好ましくは、組成物の合計乾燥重量の約1または1.5から最大で25重量%までである。この場合において乾燥重量は、溶剤マトリクスの質量が計算から除外されるときの組成物の合計重量として規定される。
【0051】
好適な実施形態では、本発明に従うアイオノマー組成物は、あるプロセスによって得られ、それには、以下のステップが含まれる。
【0052】
まず、ポリエチレンイミン(PEI)のアルコール性または水性溶液が提供される。いくつかの実施形態では、PEIおよび溶剤の間の最適な比率〔w/w(重量/重量)〕は、銀イオン化合物の所望の量に応じて、1:0.01から1:100まで、特に、1:0.5から1:5までの範囲に及び、それは次のステップにおいて溶液中に供給されるものである。また、最適な溶剤比の評価は、使用されるポリエチレンイミンの分子量および溶液の粘度に依存する。PEIおよび溶剤の間の反応は典型的に発熱反応である。好適な実施形態において、混合物は、標準温度またはそれよりも低く冷却される(即ち、混合物は、25℃またはそれよりも低く、尤も、典型的には、混合物の液体部分の融点よりも高い温度にまで冷却される)。
【0053】
次に、固形の銀イオン供給源を溶液に供給し、そして混合する。たとえば、ハロゲン化銀はPEI溶液と反応し、その間に、粘度の増大はアイオノマーの形成を示す。銀含量およびPEI:溶剤比に応じて、透明な、黄色がかったまたはほとんど無色の銀アイオノマー組成物が形成される。
【0054】
アイオノマー組成物の銀含量は、PEI-溶液と反応する銀供給源、一実施形態では、塩化銀の量を調整することによって制御することができる。典型的に、銀化合物は、重量で0.1乃至10,000重量部、好ましくは、約1乃至1,000重量部、たとえば、アイオノマープレポリマーの各100重量部に対して、10乃至100重量部で使用される。このようにして、典型的には、銀化合物対アイオノマープレポリマーの重量比は、約1:100乃至100:1、特に、1-10:50-100である。
【0055】
特に好ましい実施形態には、アイオノマープレポリマーの70乃至99.99重量部およびハロゲン化銀の、または複合体化合物およびハロゲン化水素の、またはアルカリ金属またはアンモニウムハロゲン化物塩の0.01乃至30重量部を共に反応させることが含まれる。
【0056】
随意に、しかる後、安定剤化合物で、好適な実施形態では、酸形態のサッカリンおよび/またはサッカリンナトリウムおよび/またはアセスルファムカリウムが、組成物中に供給される。PEIおよび塩化銀によって形成されたアイオノマー溶液と一緒に混合するとき、前記酸形態のサッカリンまたはサッカリンナトリウムは、アイオノマー溶液中に可溶性にされ、安定なアイオノマー組成物が形成される。安定剤化合物は、ポリマー化合物を伴う銀化合物の組合せの100重量部ごとに対して1乃至50重量部の量で用いられる。典型的に、銀化合物および安定剤化合物の間の重量比は約1:10乃至10:1である。
【0057】
好適な実施形態には、アイオノマープレポリマーの50乃至98,99重量部、銀化合物の、または上記に説明したように、銀化合物およびハロゲン化物化合物の組合せの0.01乃至30重量部、および安定剤の1乃至20重量部を共に反応させることが含まれる。
【0058】
別の好適な実施形態では、PEIおよびアルコール性または水性溶液の溶液を最初に生産し、そして前述のように冷却する。その後、固形銀サッカリンをポリマー溶液中に送り、そして混合する。銀サッカリンはPEI溶液中に可溶性になり、そして透明な、黄色がかったまたはほぼ無色の銀アイオノマー複合体の溶液を形成する。その組成物の銀含有量は、たとえば、銀サッカリンの量を通して制御されうる。
【0059】
好適な実施形態では、その後、塩酸の水溶液を供給する。好適な一実施形態では、塩化物アニオンのモル量は銀カチオンのモル量に等しい。PEIおよび銀サッカリンの溶液を塩素処理するとき、瞬間的な白色沈殿を観察することができ、銀カチオンの少なくとも一部が可溶性PEI-銀錯体から塩素アニオンによって沈殿することが示唆され、尤も、想定される塩化銀の沈殿がさらに迅速に反応する。後者の現象はまた、塩化銀がポリマーのアミン官能基と独特なイオン結合を形成する傾向があることを示唆する。しかしながら、これは、観察された現象の一つだけの可能な説明であり、そして本発明の範囲を制限するものと決して解釈されるべきではない。
【0060】
銀カチオン供給源、典型的には、銀塩または複合体の分子構造は、必然的に、システム内への対応する対イオン(アニオン)またはリガンドの導入を通して、およびアイオノマー組成物との特異的相互作用を通して、銀アイオノマーの生産において役割を有する。
【0061】
考慮中の本発明に関連して観察された興味深い現象は、驚くべきことに、ハロゲン化物アニオン、好適な実施形態では、塩化物アニオンの存在は、アミン官能性銀アイオノマーにおいて、銀イオンと反応するそのアミン基を有するPEIのみを含むアイオノマーと比較したとき、高められた抗微生物性効果を産生する。
【0062】
好適な実施形態では、ポリエチレンイミン類(PEIs)は、本発明に従ってアミン官能性ポリマーとして適用される。PEIsは、重量あたりの最高のカチオン電荷を有するポリアミンおよびカチオン性ポリマーのクラスに属する。ホモポリマーのポリエチレンイミンの構造は、常に次のパターン:一つのアミン窒素および二つの炭素の基に従う。
【0063】
概して、PEIsは種々の極性表面に対して非常に効果的に付着する。カチオン性アンカーポイント(アミン類)を含む分枝状PEIsは、格別に高い接着性を有する種々の表面および基材への分子の固定を可能にする。本発明のいくつかの実施形態では、アイオノマー組成物のアミン基は種々の表面に架橋されてもよい。強い表面活性の特質に由来し、本発明に従うアイオノマー組成物は、たとえば、基材および接着剤における添加剤として、およびポリマーマトリクスにおけるビルディングブロック(基礎的構成要素)として適用されることができる。アミン官能性ポリマーと同様に、本発明に従うアイオノマー組成物は、極性溶媒において可溶性であり、そしてたとえば、水、エチルアルコールおよびメチルアルコールと任意の濃度で混和性である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明に従うアイオノマー組成物の特性は、種々の添加剤化合物(additive compounds)を伴う組成物およびアイオノマー組成物の特定の用途に適した組成物に従うアミン官能性ポリマーのアミン基を化学的に結合することを通して制御される。いくつかの実施形態では、添加剤には、アニオン性、非イオン性および他の非共有結合化合物(たとえば、非イオン性界面活性剤、カルボン酸の共役塩基、両性イオン化合物等のようなもの)または組成物のアミン基と共有結合される有機化合物(たとえば、エポキシまたはイソシアナート官能化有機化合物)が含まれうる。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明に従うアイオノマー組成物は、内部で、および/またはホスト表面、材料および組成物に対し、および/またはその範囲内で架橋されうる。いくつかの実施形態では、適用可能な架橋剤には、たとえば、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、チタナート、シランおよびアクリラートの機能性を有する物質が含まれる。
【0066】
本発明の抗微生物性アイオノマー組成物は、液状マトリクスに供給されるとき、組成物の合計重量から算出し、重量で0.0001乃至99%、特に、約0.001乃至90重量%、有利には、0.01乃至75重量%の乾物濃度を有する。以下の実施例に示されるように、組成物は、組成物の合計重量の約0.1乃至50重量%の乾物含量にまで容易に製造されることができる。そのような組成物は、意図する用途のために、濃縮し、または通常はなおいっそうの液体で希釈することができる。
【0067】
上記に基づいて、第1の実施形態では、本発明に従う組成物は、ポリマーの70乃至99.99%(重量で)および銀化合物で、銀塩のようなもの、特に、ハロゲン化銀、たとえば、AgClの0.01乃至30%(重量で)を含み、または代わりにそれらから構成される。割合は組成物の乾物の合計重量から計算される。典型的には、前記組成物は安定化化合物を含まない。
【0068】
第二の実施形態では、本発明に従う組成物は、ポリマーの50乃至98,99%(重量で) 、銀化合物で、銀塩のようなもの、特に、銀ハロゲン化物で、たとえば、AgClの0.01乃至30%(重量で)、および安定剤の1乃至20%(重量で)を含み、または代わりにそれから構成される。パーセンテージは組成物の乾物の合計重量から算出される(即ち、w/w)。
【0069】
後者の組成物は、液体、たとえば、アルコール、典型的には、1乃至6個の炭素原子を有する脂肪族アルコールのようなものの中に希釈することができる濃縮物として特に適している。
【0070】
組成物、たとえば、アルコール中で産生された濃縮物は、水中で希釈されるとき、さらなる安定剤を添加してもよい。概して、水性相中の安定剤の合計濃度は最大95%w/wまでであることができる。特に適切な追加の安定剤の例は塩化アンモニウムである。
【0071】
考慮中の本発明に従うアイオノマー組成物の接着特質を通して、組成物は薄膜および単分子層としてよく機能する。PEIsの特性から読み出すと(Retrieved)、本発明に従うアイオノマー組成物の1mgは、単分子層を有する無孔表面の2m2に近い面積をカバーすることができる。
【0072】
概して、本アイオノマー組成物の適用量は、ホスト表面上での銀の意図した濃度に依存する。典型的に、基材上の被覆層の合計重量の約0.001乃至10%の銀濃度が十分である。
【0073】
本発明に従うアイオノマー組成物は、カチオン性または非イオン性のシステムと直接適合性がある。カチオン性アミン基を有するPEI-骨格は、アニオン性分散体を分解し、または自然に化学的環境に依存して、本発明に従う組成物を含む修飾された分散体またはエマルジョンを生成することができる。アニオン性表面はイオン電荷のために組成物に強く付着する。いくつかの実施形態では、アニオン性または非イオン性の添加剤は、アイオノマー組成物の、たとえば、アニオン性システムとの適合性(相溶性)を向上させ、および改善するために、本発明に従う組成物中に組み込むことができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物は、たとえば、繊維、布およびバルク材料表面のようなホスト表面で、種々の合成、半合成および天然繊維、織物、不織布、編物、紙(ペーパー類)、種々のポリマー表面、鋼(スチール類)表面、種々のコーティング表面、木材表面および繊維、布およびバルク材料表面などを含めたものの被覆のため、そのようなものとして、または、たとえば、架橋剤、疎水性改質剤、撥水剤、種々の安定剤および界面活性剤などのような追加の成分を本発明に従う組成物と共に含むものとして適用される。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明に従うアイオノマー組成物は、アイオノマー組成物のPEI-骨格のカチオンの特質のために非常に効果的に多種多様な表面に付着し、様々な基材のコーティング目的のために使用することができる。良好な接着は、たとえば、セルロース系(セルロース質)生産物(cellulosic products)(例は、セルロース、レーヨンおよびビスコース)、タンパク質、ポリエステル、ポリアミド、塩素含有ポリマー、シリケート、シリシウムジオキサイド(二酸化ケイ素)、鉄、顔料、ペーパー、木材、綿、植物、スキン(皮、皮膚)、ヘア(毛、毛髪)、フィルムおよび繊維に対し達成される。平滑なポリオレフィン表面(PE、PP等)は、コーティング、接着剤またはポリマーフィルムのような一定の基材に結合させるために前処理しうる。効果的な前処理は酸化処理であり、それは格別に強力な接着を生じさせる。
【0076】
コーティングは、たとえば、ロールコーティング、スプレーコーティングまたはバスコーティングまたはプロセス類等によって達成することができる。アイオノマー組成物は、たとえば、アルコール類または水またはそれらの組合せにおいて、または他の適切な溶媒組成物において、問題のプロセスに関連して、本発明に従うアイオノマー組成物の最適な溶液および本発明に従うアイオノマー組成物の必要な厚さを得るために、希釈することができる。本発明に従う前記アイオノマー組成物の表面に対して付着を補助する物質で、たとえば、架橋剤、プライマー薬剤または物質等は、本組成物に組み込むことができる。前記補助性物質は、たとえば、溶媒システムに含まれるように用いられてよい。いくつかの実施形態において、前記ホスト表面は、たとえば、酸化、基材/プライマー層の付着および方法などを通して、本発明に従うアイオノマー組成物の付着を補助するために化学的に処理することができる。いくつかの実施形態において、本発明のアイオノマー組成物は、ホスト表面に対し、およびその上に共有結合により架橋されうる。
【0077】
大抵、希釈の後、希釈された組成物の銀濃度は元の組成物のもののの1/5乃至1/1000重量部である。
【0078】
他のいくつかの実施形態では、本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物は、前記抗微生物性アイオノマー組成物と適合性の種々の液状生産物マトリクス(ホスト材料)において抗微生物性添加剤として用いられる。本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物は、前記ホスト材料に、たとえば、それらの生産プロセスに関連して適切な単位プロセスの間、または仕上げステップとして、当然ながら、材料およびプロセスに応じて添加することができる。本発明によれば、新しい抗微生物性物質は、本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物および前記ホスト材料の相互作用を介して形成されてもよい(抗微生物性添加剤として用いるとき)。いくつかの実施形態では、本発明に従う前記アイオノマー組成物は、新しい抗微生物性材料および生産物を形成するために液状生産物マトリクスまたは中間生産物マトリクス用の添加剤として使用される。
【0079】
このような関係においては「液状生産物マトリクス」は、その使用、前記抗微生物性添加剤組成物とのその相互作用および使用後の問題の最終的な状態にかかわらず、任意の液状生産物または中間生産物を意味する。いくつかの実施形態において、本発明のアイオノマー組成物は、ホストマトリクスの成分と架橋されていてもよい。いくつかの模範的な適用には、本発明に従う前記アイオノマー組成物を新しい抗微生物性物質の形成のための抗微生物性添加物および/または成分として使用することができ、それには、以下のものが含まれる。すなわち、洗浄剤〔例は、化粧用/衛生上の洗浄剤(hygienic detergents)、シャワージェル、シャンプーおよび産業用洗浄剤〕、塗料、ワニス、フロアーコンディショナー/ポリッシュ(つや出し剤)、接着剤、ゲルコート、エポキシ材料、ポリウレタン、化粧品、消毒物質〔例は、消毒ハンドジェル、病院、公共空間および民生用アプリケーション、医療機器、湿ったティッシュ(モイストワイプ)のための液体〕、玉縁(シーミング)材料、医薬品、練り歯磨きおよび応用などである。
【実施例】
【0080】
以下において示す例は、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
例1
【0081】
本発明に従う抗微生物性組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン〔Lupasol(ルパゾール)WF、BASF、MW25 000〕の2.0グラムをエチルアルコールの8グラムに溶解し、そして冷却した。溶液を塩化銀0.295グラムと、クリアーな(澄んだ)溶液が形成されるまで室温で前記懸濁液を混合することによって一緒に反応させた。得られたアイオノマー組成物は、22.3%〔w/w(重量/重量)〕の乾燥含量(溶剤の質量を除外)および9.7%(w/w)の理論上の銀含量の乾燥質量を有した。
例2
【0082】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールG20水フリー、BASF、分子量1300)の約2.0gをエチルアルコールの6gと混合し、冷却した。溶液を0.724gの銀サッカリンと、クリアーな溶液が形成されるまで室温で前記懸濁液を混合することによって反応させた。プロセスは、連続混合下で1M塩酸の2.49mlを前記溶液に添加することによって継続した。光学的にクリアーなアイオノマー組成物のクリアー溶液が形成され、25.0%の乾燥含量(w/w)および乾燥質量の9.5%(w/w)の理論銀含量を有した。
例3
【0083】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールG20水フリー、BASF、分子量1300)の1.0グラムを、エチルアルコールの3グラムに可溶化し、冷却した。溶液を銀サッカリンの0.156グラムと、クリアーな溶液が形成されるまで室温で前記懸濁液を混合することによって一緒に反応させた。プロセスは、中間体組成物をEtOHと共に50mlの合計容量に希釈することによって継続した。最後に、混合条件下で1MのHC1の0.570mlを添加することによって、生成物を塩素で処理した。
比較例4
【0084】
抗微生物性組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールG20水フリー、BASF、分子量1300)の1.0グラムを、エチルアルコールの3グラムに可溶化し、冷却した。溶液を銀サッカリン0.156グラムと、クリアーな溶液が形成されるまで室温で前記懸濁液を混合することによって一緒に反応させた。生成物をEtOHで50.570mlの合計容量まで希釈した。
例5
【0085】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールPS、BASF、分子量750,000、水中濃度33%)の3.0グラムを、エチルアルコールの1グラムと混合し、冷却した。溶液を銀サッカリンの0.156グラムと、クリアーな溶液が形成されるまで室温で前記懸濁液を混合することによって一緒に反応させた。中間体組成物をEtOHで50mlの総容量に希釈した。最後に、組成物を、混合条件下で1MのHC1の0.570mlを添加することにより塩素化した。
比較例6
【0086】
抗微生物性組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールPS、BASF、分子量750,000、水中濃度33%)の3.0グラムを、エチルアルコールの1グラムと混合し、冷却した。溶液を銀サッカリンの0.156グラムと、クリアーな溶液が形成されるまで室温で前記懸濁液とを混合することによって一緒に反応させた。生成物をエチルアルコールで50.570mlの総容量にまで希釈した。
応用例7
【0087】
例2に記載のように生産した本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物を、アクリル系内装塗料に抗微生物性添加剤として適用した〔Tikkurila Harmony(チクリラ・ハーモニー)、白色、決定乾燥質量88%w/w〕。二つの試験バッチを、例2に従う組成物および塗料をそれぞれ1:10および1:20の混合比で混合することによって調製した。結果として得られた理論上の銀含量(乾燥重量の%)は対応して約0.3%および0.14%であった。
【0088】
双方のサンプル(試料)について、試験表面を、サンプル組成物によりPVCフィルムの二つの表面を塗布すること、および48時間標準温度で乾燥させることにより調製した。メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Methicillin Resistant Staphylococcias Aureus)(MRSA)に対する塗面の抗微生物効果を、規格ISO 22196に従って決定した。二つの塗面についての結果として、MRSAについての>41ogの低減が達成された。
応用例8
【0089】
例2に記載のように生産した本発明に係る抗微生物性アイオノマー組成物は、ワックス床コンディショニングおよび研磨材のための抗微生物性添加剤として適用した〔Johnson Diversey(ジョンソン・ディバーシー)、Jontec(ジョンテック)、決定乾燥質量28.6%w/w〕。テスト(試験)バッチは、例2に従うアイオノマー組成物を床コンディショニングおよび研磨材と1:10の混合比で混合することによって調製し、0.84%の理論上の銀含量(乾燥重量%)が得られた。テスト表面を準備した。作業溶液(希釈標準溶液)は、さらにテストバッチを1:20の比率において水道水で希釈することによって調製した(例2に従う組成物:Jontec)。希釈物をPVCフィルム上に広げ、そして48時間乾燥させ、表面上に青ざめた無色の(faint colorless)乾燥材料フィルムが残された。Methicillin Resistant Staphylococcus aureus(メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス)(MRSA)(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対するコンディショニングされた表面の抗微生物効果を、規格ISO 22196に従って測定した。本発明に従う抗微生物性組成物をドープされた希釈した床コンディショナーで処理した表面についての結果として、MRSAについて>41ogの低減が達成された。
応用例9
【0090】
例3および5において生産した本発明に係る抗微生物性アイオノマー組成物ならびに比較例4および6で生産した組成物を、編物のために抗微生物コーティング/抗微生物仕上げとして適用した。ポリエステル-綿ブレンド(65%-35%)の医療スクラブ布の四つのサンプル片(2,5×15cm2)を、例3(AE91)、4(AE92)、5(AE93)および6(AE94)において得られる組成物で処理した。サンプル布を30秒間希釈溶液中に浸漬した。浸漬サンプルをティッシュペーパー上室温で一晩乾燥させた。黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)に対する抗微生物効果をISO 20645規格に従って試験した。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示した結果によれば、塩素化アイオノマー組成物の抗微生物効果は、単独でPEIと銀サッカリンとを反応させることにより得られた組成物に比べて高いことが判明した。
応用例10
【0093】
一連の抗微生物処理は、不織ポリプロピレン(19.9g/m2)布(4サンプル、AE101-AE104)およびポリエステル-綿(65%-35%)ブレンド(212.5g/m2)医療スクラブ布(4サンプル、AE105-AE108)について行った。本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物は、溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールG20水フリー、BASF、分子量1300)の2.0グラムを、エチルアルコールの6.0グラムに溶解させ、そして冷却した。溶液を銀サッカリンの0.3グラムと、クリアーな溶液が形成されるまで室温で前記懸濁液を混合することによって一緒に反応させた。プロセスは、前記溶液に1M塩酸の1.140mlを添加することによって継続した。光学的にクリアーなアイオノマー組成物のクリアーな溶液が形成され、24.8%の乾燥含量(w/w)および4.7%(w/w)の乾燥質量の理論上の銀含量を有した。予め得られた本発明の抗微生物性アイオノマー組成物を含む一連の浴を調製した。浴組成を表2において示す。
【0094】
【表2】
【0095】
希釈溶液にサンプル布を浸漬することによって、布サンプルを抗微生物性アイオノマー組成物で処理した。浸漬したサンプルは、過剰な液体の一部を吸収するティッシュペーパー上で乾燥させた。処理した布の抗微生物コーティングおよび理論上の銀含量についての結果として生じた質量百分率を表3に挙げる。
【0096】
【表3】
【0097】
本発明の抗微生物性組成物で被覆した処理サンプル布の抗微生物効果を、黄色ブドウ球菌(Staphylococcous aureus)(ATCC6538)に対し、ISO 20743規格に従って試験した。結果を表4に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
適用される微生物学的テストが、たとえば、CE101-104のような非常に軽量の布を用いて試験したときには、限界を有することに注意しなければならない。限界を考慮することによって、非常に好首尾な抗微生物性能がすべてのサンプルについて達成された。
例11
【0100】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールWF、BASF、MW25,000)の2.0グラムを、エチルアルコールの8グラムに溶解し、冷却した。溶液を塩化銀0.295グラムと、クリアーな溶液が形成されるまで室温で前記懸濁液を混合することによって一緒に反応させた。プロセスは、サッカリンの0.378グラムを添加すること、およびクリアーな溶液が形成されるまで混合することにより継続した。
例12
【0101】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールP、BASF、MW750,000、水中濃度50%)の2.0グラムをエチルアルコールの5.460グラムと混合し、冷却した。溶液を塩化銀の0.345グラムと、クリアーな溶液が形成されるまで室温で前記懸濁液を混合することによって一緒に反応させた。プロセスはサッカリンの0.5グラムを添加することによって継続した。
例13
【0102】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールWF、BASF、MW25,000)の160グラムを、エチルアルコールの640グラムに対し可溶化し、冷却した。溶液を塩化銀の23.64グラムと、初期には高せん断ホモジナイザーで前記生産物を1分間均質化すること、そしてさらにはクリアーな溶液が形成されるまでマグネチックスターラーによるかき混ぜ下に室温で前記懸濁物を混合することによって一緒に反応させた。プロセスは、サッカリンの35.21グラムを添加することによって継続し、次いでクリアーな透明組成物が形成されるまで混合することを続けた。
例14
【0103】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールWF、BASF、MW 25,000)の2.1グラムを、脱イオン水1000mlに溶解した。溶液を、塩化銀の0.3グラム、サッカリンの0.16グラムおよび塩化アンモニウムの2グラムと室温で一緒に反応させ、クリアーなアイオノマー溶液をもたらした。
例15
【0104】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。ポリビニルアミン〔Catiofast(カチオファスト)GM、BASF〕の4グラムおよび分枝状ポリエチレンイミン(ルパゾールWF、BASF、MW25,000)の22.32グラムを、80.86グラムのイソプロパノールに溶解し、冷却した。溶液を塩化銀の3.88グラムと、クリアーな溶液が形成されるまで室温で前記懸濁液を混合することにより一緒に反応させた。プロセスは、サッカリンの2.08グラムを添加し、クリアーな溶液が形成されるまで混合することによって継続した。
例16
【0105】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物を溶剤マトリクスにおいて生産した。分枝状ポリエチレンイミン(ルパソールWF、BASF、MW25 000)の26.26グラムをイソプロパノール80.86グラムで可溶化した。溶液は、塩化銀3.88グラムと、クリアーな溶液が形成されるまで前記懸濁液を16℃の一定温度で混合することによって一緒に反応させた。プロセスは、サッカリンの2.08グラムを添加すること、およびクリアーな溶液が形成されるまで混合することによって継続した。
応用例17
【0106】
本発明に従う抗微生物性アイオノマー組成物は、種々の繊維および繊維生産物、たとえば、天然(例は、綿)、半合成(例は、ビスコース)および合成(例は、PET、PS、ナイロン、ポリアミド、ポリアクリロニトリルなど)の繊維および繊維生産物、それ自体または組合せ(反応または未反応のようなもの)で、種々の繊維/ヤーン(紡績糸ともいう)/テクスタイル(織物ともいう)の加工添加剤、改質剤、紡糸浴添加剤、仕上げ剤、潤滑剤、架橋剤、染料、コーティング剤、難燃剤および同様の他のものと共に応用されるようなものを含めたもののために、抗微生物性仕上げ/局所処理/コーティング剤として適用されることができる。抗微生物性アイオノマー組成物と組み合わせて用いられる様々な材料の組合せが、繊維表面上の最終的な仕上げ組成物の水溶性、銀の放出および対応する抗微生物性機能に関して完成した繊維に対する多様な特性を生じさせることは明らかである。
【0107】
この例で、例16に従う抗微生物性アイオノマー組成物は、例の材料としてビスコース繊維と共に抗微生物性繊維仕上げとして適用した。抗微生物性組成物は、実証される一連の異なるタイプの繊維およびテクスタイル処理剤と一緒に、より詳細には、合成およびセルロース系繊維およびテクスタイル〔ヌーバ(Nuva)2110 、クラリアント(Clariant)〕の撥水および撥油仕上げのための仕上げ剤、セルロース系繊維〔イマコール(Imacol)C〕のための低発泡性潤滑剤、セルロース系繊維のための蛍光増白剤〔ロイコフォア(Leucophor)BFB、クラリアント〕、ビスコースプロセス添加剤/クリーニング剤(アフィラン(Afilan)ZS、クラリアント)およびビスコース不織布仕上げ〔アフィランHSGV、クラリアント〕と共に適用した。
【0108】
表5に従う組成を伴う水性繊維仕上げ/処理浴FB1乃至FB5を調製した。各浴と関連して、乾燥ビスコース繊維〔1.3デシテックス(dtex)〕の3.3gのサンプルを水で予め加湿し(pre-moistured)、そして浴(T=60℃、容量100ml)中に3分間浸漬した。過剰の仕上げ溶液を、50%の水分含量(およそ6.6グラムのサンプルの湿重量)が得られるまで押圧により各サンプルの繊維塊から除去した。すべてのサンプルを40分間80℃で乾燥し、カーディングした(梳いた)。
【0109】
【表5】
【0110】
完成させ、そしてカーディングした繊維サンプルは、国際規格ISO 20743:2007(テキスタイル-抗菌完成品の抗菌活性の決定)に従い抗微生物効果の定量分析に供した。結果を表6に示す。
【0111】
【表6】
【0112】
種々の繊維ならびに抗微生物性組成物および乾燥プロセスと組み合わせて適用した熱を含む布仕上げ浴組成物は、たとえば、仕上げ剤の官能基および繊維または布に組み込まれたそれらのものの間の共有結合を誘導することを通して、仕上げの組合せ(AMアイオノマー組成物および特定浴の他の成分)の特定の化学構造の特性に自然に影響を与えることができる。このことは、再度、最終繊維表面仕上げ組成物の電荷および水溶性を変化させることができ、それに応じて、完成した繊維およびその生産されたテキスタイル生産物の洗浄耐久性を高めることができる。
応用例18
【0113】
例16に従う抗微生物性アイオノマー組成物は、抗微生物性繊維の仕上げ剤のような水性希釈として合成およびセルロース系繊維ならびにテキスタイル(ヌーバ2110、クラリアント)の撥水および撥油仕上げと一緒に適用した。AMアイオノマー組成物の熱およびUV耐性はさらに、組成物に安定剤として含まれるような塩化アンモニウムおよびサッカリンナトリウム二水和物と共に増加した。表7に従う100ml仕上げ浴を調製した。
【0114】
【表7】
【0115】
ビスコース繊維(1.3dtex)サンプルAE 181の3.3グラムを、例17に記載したような同様のステップおよび条件に従い、浴FB6で処理し、また一方、120℃の温度で10分間乾燥した。抗菌性の完成繊維サンプルAE181の抗菌活性を、国際規格ISO 20743:2007に準拠して測定した。結果として、3.9の優れた抗菌活性値がサンプルについて達成された。
応用例19
【0116】
例16に従う抗微生物性アイオノマー組成物は、抗微生物性繊維仕上げ剤として二つの水分散性架橋剤と一緒に適用した。アミン官能性ポリマーと一緒に使用する種々の架橋剤は、乾燥した仕上げマトリクスの水溶性を低下させる共有結合した繊維仕上げ構造をもたらす。例の中で、エピクロルヒドリンおよびジプロピレングリコール系エポキシ樹脂〔D.E.R 736P、Dow(ダウ)〕および水分散性ポリイソシアナート〔Easaqua(イーサクア)XD803、Perstorp(パーストープ)〕を架橋剤として適用した。表8に従う繊維処理浴溶液FS3を調製した。
【0117】
【表8】
【0118】
3.3グラムのビスコース繊維(1.3dtex)サンプルAE191を浴FB7で処理し、次いで例17に記載したように、同様の手順および条件を続けた。
【0119】
抗菌完成繊維の抗菌活性は国際規格ISO 20743:2007に準拠して測定した。その結果、 3.9の優れた抗菌活性値がサンプルについて達成された。
応用例20
【0120】
例16に従う抗微生物性アイオノマー組成物を、連続したマルチバスセットアップにおける自己乳状化(self-emusifiable)ポリイソシアナート型架橋剤と組み合わせられるように抗微生物性繊維仕上げ剤として適用した。表8に従う組成を有する三つの100ml水性繊維処理浴FB8.1-FB8.3を調製した。浴FS4.1において、抗微生物性アイオノマー組成物の耐熱性およびUV耐性は、組成物に対して塩化アンモニウムを組み込むことによって増加した。浴FB4.2には、ジイソシアナートタイプの架橋剤の水溶液が含まれた。
【0121】
【表9】
【0122】
乾燥ビスコース繊維(1.3dtex)の3.3グラムのサンプルを水で予め加湿し、そして浴FB8.1-FB8.3中に、浴当たり3分間、順次浸漬した(すべての浴について:T=60℃、容量100ml)。過剰な仕上げ溶液を、50%の水分含量(およそ6.6グラムのサンプルの湿重量)が得られるまで、押圧により各浴の後に繊維塊から除去した。最後に、サンプルを100℃で30分間乾燥し、そしてカーディングした。抗菌完成カーディング繊維の抗菌活性を、国際規格ISO 20743:2007に準拠して測定した。その結果、>4.3の優れた抗菌活性値がサンプルで達成された。
応用例21
【0123】
本発明に従って抗微生物性アイオノマー組成物は、抗微生物性薬剤および脱臭剤(deodorizing agent)および添加剤として、複数の表面消毒(surface disinfection)および衛生組成物および生成物で、例は、表面脱感染(surface desinfection)、ハンド消毒、靴および衣類の防臭剤(deodorant)およびおしぼりの液状生成物および組成物およびその他の同様なものなどを含めて適用することができる。
【0124】
表面処理用途における抗微生物性アイオノマー組成物によって提供される独特の利点の一つは、処理された表面上に設けられた薄いアイオノマー性の層(ionomeric layer)であり、液体溶媒を蒸発させた後、表面が殺菌性(microbicidal)のままにされる。
【0125】
一例として、イソプロピルアルコールは簡易化した実例の表面消毒製品として適用され、そして抗微生物性アイオノマー組成物は、希釈した抗微生物性アイオノマー組成物を形成する抗微生物性表面処理添加剤成分として本発明に従い適用された。抗微生物性アイオノマー組成物のストック溶液は、例16と同様にではあるがしかし、化粧品グレードのSP-012〔Nippon Shokubai(日本触媒)〕のポリエチレンイミンを用いて調製した。ストック組成物はさらに、イソプロピルアルコールの200部を用いて実例の生産物濃度に希釈した。実例の表面消毒生産物の殺菌活性を試験し、次いで規格EN 13697:2001(化学消毒剤の殺菌および/または抗真菌活性を評価するための定量的な非多孔質表面テスト)に従い、黄色ブドウ球菌について>log5.8(処理後0cfu=事実上の滅菌)の減少が示された。処理された表面上に残された薄い抗微生物性アイオノマー層の抗微生物性機能は次のように実証された。すなわち、組成物のフィルムがディップコーティングにより滅菌5×5cmPVCシートの表面上に広げられた。三つの同様に調製した反復サンプルを室温で24時間乾燥した。処理された表面の抗微生物性効果を試験し、次いで国際規格ISO 22196に従った。結果は黄色ブドウ球菌についてlog4減少を示した。