特許第6207509号(P6207509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207509固形腫瘍を治療するためのFAP活性化プロテアソーム阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207509
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】固形腫瘍を治療するためのFAP活性化プロテアソーム阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/10 20060101AFI20170925BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170925BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170925BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20170925BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 33/24 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20170925BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170925BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20170925BHJP
   C07K 5/103 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C07K5/10ZNA
   C07F5/02 CCSP
   A61K38/00
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61P9/10 101
   A61P9/10
   A61P17/06
   A61K31/337
   A61K31/506
   A61K31/7068
   A61K33/24
   A61K31/282
   A61K31/513
   A61K31/519
   A61K31/573
   A61K31/69
   A61P43/00 111
   C12N9/99
   C07K5/103
【請求項の数】14
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2014-528600(P2014-528600)
(86)(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公表番号】特表2014-527070(P2014-527070A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】US2012053140
(87)【国際公開番号】WO2013033396
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年8月28日
(31)【優先権主張番号】61/528,824
(32)【優先日】2011年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500356887
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ タフツ カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】バコヴチン,ウィリアム ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ホアン−セン
(72)【発明者】
【氏名】ポップラウスキ,サラ イー
【審査官】 松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/006473(WO,A1)
【文献】 特表2005−531540(JP,A)
【文献】 特表2010−523477(JP,A)
【文献】 Lawrence J. Milo et al.,Chemical and Biological Evaluation of Dipeptidyl Boronic Acid Proteasome Inhibitors for Use in Prodrugs and Pro-Soft Drugs Targeting Solid Tumors,Journal of Medicinal Chemistry,2011年,vol.54,pp.4365-4377
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式IIにより表される、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)活性化プロテアソーム阻害剤:
【化1】
式中、
1−(C=O)−はアシルN末端封鎖基を表し;
2は、H、低級アルキル、もしくはモノ−またはジ−ヒドロキシ置換低級アルキルを表し;
3は、H、ハロゲン、または低級アルキルを表し;
4は、存在しないか、もしくは低級アルキル、−OH、−NH2またはハロゲンを表し;
5は、大きい疎水性アミノ酸側鎖を表し;
11は、Hまたは低級アルキルを表し;および
該FAP活性化プロテアソーム阻害剤は、FAPにより開裂されて、
【化2】
により表されるプロテアソーム阻害剤を放出する。
【請求項2】
【化3】
が、
【化4】
からなる群より選択される、請求項1記載のFAP活性化プロテアソーム阻害剤。
【請求項3】
下記式IIIにより表される、請求項1記載のFAP活性化プロテアソーム阻害剤:
【化5】
式中、
1−(C=O)−はアシルN末端封鎖基を表し;
2は、H、低級アルキル、もしくはモノ−またはジ−ヒドロキシ置換低級アルキルを表し;
3は、H、ハロゲン、または低級アルキルを表し;
4は、存在しないか、もしくは低級アルキル、−OH、−NH2またはハロゲンを表し;
5は、大きい疎水性アミノ酸側鎖を表し;
6は、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環または−(CH2n−R7を表し;
7は、アリール、アラルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、−OHまたは−SHを表し;
11は、Hまたは低級アルキルを表し;
Wは、−CN、エポキシケトン、−CH=NR8
【化6】
を表し;
8は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R9、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R9、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R9、−C(=O)C(=O)NH2、−C(=O)C(=O)OR10を表し;
9は、各存在について独立して、置換または未置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、または複素環を表し;
10は、各存在について独立して、水素、もしくは置換または未置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、または複素環を表し;
1およびY2は、独立してまたは共に、OH、もしくはY1とY2が、環構造に5から8の原子を有する環を介して接続されている環状誘導体を含む、ヒドロキシル基に加水分解されることのできる基であり得;
50は、OまたはSを表し;
51は、N3、SH2、NH2、NO2または−OR10を表し;
52は、水素、低級アルキル、アミン、−OR10、または薬学的に許容される塩を表すか、もしくはR51とR52は、それらが結合したリン原子と一緒に、環構造に5から8の原子を有する複素環を完成し;
1はハロゲンであり;
2およびX3の各々はHまたはハロゲンを表し;および
mは、ゼロまたは1から8の範囲の整数であり、nは1から8の範囲の整数である。
【請求項4】
下記式により表される、請求項3記載のFAP活性化プロテアソーム阻害剤。
【化7】
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項記載のFAP活性化プロテアソーム阻害剤、および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項6】
効果量の請求項1から4いずれか1項記載のFAP活性化プロテアソーム阻害剤を含む、細胞におけるプロテアソーム機能を阻害するための組成物。
【請求項7】
効果量の請求項1から4いずれか1項記載のFAP活性化プロテアソーム阻害剤を含む、細胞における抗原提示を阻害するための組成物。
【請求項8】
治療的効果量の請求項1から4いずれか1項記載のFAP活性化プロテアソーム阻害剤を含む、癌、乾癬、再狭窄、または他の細胞増殖性疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項9】
治療的効果量の化学療法薬と同時投与される、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記化学療法薬が、ドセタキセル、パクリタキセル、メシル酸イマチニブ、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、5−フルオロウラシル、ペメトレキセド、メトトレキサート、ドキソルビシン、レナリドミド、デキサメタゾン、またはモノメチルオーリスタチンである、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記化学療法薬が、ドセタキセル、ゲムシタビン、カルボプラチン、またはドキソルビシンである、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記化学療法薬が、MG−132、PSI、フェルタミドB、ボルテゾミブ、CEP−18770、MLN−2238、MLN−9708、エポキソミシン、カルフィルゾミブ(PR−171)、NC−005、YU−101、LU−005、YU−102、NC−001、LU−001、NC−022、PR−957(LMP7)、CPSI(β5)、LMP2−sp−ek、BODIPY−NC−001、アジド−NC−002、ONX−0912、オムラリド、PS−519、マリゾミブ、ベラクトシンA、125I−NIP−L3VS、NC−005−VSまたはMV151である、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項13】
治療的効果量の請求項1から4いずれか1項記載のFAP活性化プロテアソーム阻害剤を含む、哺乳類におけるHIV感染を阻害するための医薬組成物。
【請求項14】
治療的効果量の請求項1から4いずれか1項記載のFAP活性化プロテアソーム阻害剤を含む、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)+間質細胞により媒介される局所免疫抑制および/または腫瘍サポート活性を低減するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、その全てを引用する、2011年8月30日に出願された、米国仮特許出願第61/528824号に優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、固形腫瘍を治療するためのFAP活性化プロテアソーム阻害剤に関する。
【背景技術】
【0003】
米国で4人に1人の死は癌によるものであり、二番目の死因は心臓病である。癌の中でも肺癌が主な死因であり、患者の大半は、診断時に局所進行性または転移性非小細胞肺癌(NSCLC)を患っている。女性では、乳癌が最も蔓延した癌であり、癌関連の二番目の死因である。
【0004】
固形癌の治療のための現行の標準治療は効き目が限られている。例えば、NSCLCにおいて、第一線の白金製剤を併用した化学療法に標的剤を加えることにより達成された改善にもかかわらず、生存率は芳しくないままである。転移性乳癌において、トラスツズマブの効き目は腫瘍抵抗性により限られている。第一線の療法後にNSCLCが進行した場合、承認された第二線の薬剤では控えめな生存率しか達成されない。
【0005】
より効果的な抗癌剤が必要とされているのが明らかである。ボルテゾミブ(Velcade(ベルケイド)(登録商標))などの多くの承認された制癌剤は、腫瘍細胞だけでなく正常な細胞も殺す細胞毒性薬である。これらの薬剤の治療効果は、正常な細胞よりも敏感な腫瘍細胞に依存し、それによって、臨床応答を比較的安全な薬剤投与量で達成できる;しかしながら、正常な組織に対する損傷は避けられず、しばしば治療が制限される。多発性骨髄腫(MM)の治療におけるボルテゾミブの成功後、プロテアソーム複合体の阻害が、化学療法への有効な新手法として現れた。多発性骨髄腫の治療における著しい効き目のために、ボルテゾミブが固形癌において試験されてきた。残念ながら、ボルテゾミブは、概して、臨床応答を生じていない。
【0006】
ボルテゾミブは、プロテアソームと呼ばれる細胞内タンパク質複合体を阻害する。プロテアソームは、細胞周期とアポトーシスの調節、癌細胞において調節不全にされたときに腫瘍の進行をもたらすプロセス、薬物耐性および異常免疫監視に関与するので、魅力的な薬剤標的である。細胞恒常性に関与するタンパク質を選択的に分解する20Sプロテアソームを阻害することにより、ボルテゾミブは、Bcl−2ファミリーのアポトーシス促進性(proapoptotic)部分を安定化し、NF−κBの活性化をもたらす2つの主要な経路を阻害し、ミスフォールド(misfolded)タンパク質を細胞内に蓄積させる;これらの効果の全ては、腫瘍細胞の致死に寄与する。NF−κBの活性化を遮断すると、アポトーシスが増加し、血管新生サイトカインの産生が減少し、腫瘍細胞のストローマへの接着が阻害され、免疫抑制が緩和される。
【0007】
しかしながら、癌を治療するためのボルテゾミブの幅広い使用は、全身毒性によって妨げられるようである。ボルテゾミブは健康な組織に分布して、下痢、疲労、体液鬱滞、低カリウム血症、低ナトリウム血症、低血圧症、倦怠感、吐き気、立ち眩み(orthostasis)、ボルテゾミブ関連末梢神経障害(BIPN)および血液毒性を引き起こす。血液毒性の中で、血小板減少症が最も重症である。ボルテゾミブの推奨投与量で、核内因子−κB(NF−κB)の阻害および変性タンパク質(unfolded protein)応答の誘発に対するMM細胞の独特な感受性により与えられるであろうMMの治療のための治療域がある。しかしながら、固形癌(例えば、前立腺癌、膵臓癌および乳癌)はそれほど敏感ではないようであり、ボルテゾミブの投与量を増加させることによって効き目を果たす試みは、用量制限毒性(DLT)によって妨げられてきた。ボルテゾミブの腫瘍への不十分な局所化は、固形癌における低い治療指数(TI)に寄与するようである。PC3前立腺腫瘍を持つマウスにおいて、14C−ボルテゾミブへの健康な臓器の曝露は、腫瘍の曝露より9倍大きかった。健康な組織におけるプロテアソームの阻害は、固形腫瘍におけるより大きいようである。それゆえ、健康な組織におけるプロテアソームの阻害によるDLTの障害を克服するために、腫瘍細胞中のプロテアソームを選択的に標的とする化合物を設計する必要がある。
【0008】
過去数十年に亘る広範囲に及ぶ労力は、特定の患者に合わせて調整された療法−いわゆる個別化医療に焦点を当ててきた。遺伝子塩基配列決定技術における進歩により、遺伝子型癌性組織に対して、癌の個別の遺伝子プロファイルを、それゆえ、腫瘍の成長を担うであろう具体的な突然変異または機能不全のタンパク質を特定することが、今では可能であり、次第に費用効果が高くなっている。次いで、そのような「ドライバー(driver)」タンパク質が、それらの機能を遮断し、それゆえ、癌を殺す薬剤の標的になるであろう。この手法は、理論的に聞こえるが、癌の予期せぬ遺伝的多様性およびゲノム不安定性により妨げられてきた。単一の腫瘍内に著しく異なる遺伝子型の癌が存在し、標的治療が多くの患者にとって効果的ではなくなるかもしれない。腫瘍中の癌細胞の大半が、単一の標的療法が効果的であるほど十分に類似の遺伝子構造を共有している場合でさえも、耐性突然変異を有する少数の癌細胞が治療に生き残り、初期の改善後に再発するかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
腫瘍を選択的に標的とする療法およびその効果が癌の遺伝子構造に依存しない細胞毒性薬によるその微環境が必要とされている。しかしながら、そのような療法は依然としてとらえどころがない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様は、A−Bにより表されるプロテアソーム阻害剤の活性化プロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、
Aは線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の基質を表し;
Bは、FAPによる開裂の産物としてプロドラッグから遊離形態で放出されたときに、500nM以下のKiを有する、プロテアソームのタンパク質分解活性を阻害するプロテアソーム阻害剤部分を表し;
AおよびBは、FAPにより酵素的に開裂されて、Bをその遊離形態で放出する結合により共有結合しており;
プロドラッグが、プロリルエンドペプチダーゼEC3.4.2126(PREP)に関するよりも、少なくとも10倍大きい、AおよびBを連結する結合のFAP開裂に関するkcat/Kmを有する。
【0011】
本発明の別の態様は、式I:
【0012】
【化1】
【0013】
により表されるFAP活性化プロテアソーム阻害剤、またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、
X−C(=O)NR11−R’5−はFAP基質配列を表し、XはN−アシルペプチジル基であり、−NR11−R’5は、FAPのP’1特異的サブサイトと結合するアミノ酸残基またはその類似体であり、FAP基質配列はFAPにより開裂されてNHR11−R’5−Rを放出し;
NHR11−R’5−Rはプロテアソーム阻害剤である。
【0014】
本発明の別の態様は、式:
R−Xaa1−Xaa2−Y
により表される化合物またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、
Rはアシル基であり;
Xaa1は、Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、およびTyrからなる群より選択され;
Xaa2は、Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、およびTyrからなる群より選択され;
Yは、
【0015】
【化2】
【0016】
である。
【0017】
本発明の別の態様は、薬剤組成物、および例えば、癌または他の細胞増殖性疾患の治療に、前記化合物および組成物を使用する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、ARI−2727DおよびARI−3996の合成を示している。以下の試薬を使用した:(a)HATU/DMF/DIPEA、95%;(b)ジオキサン中4MのHCl、100%;(c)HATU/DMF/DIPEA、90%;(d)ジオキサン中4MのHCl、100%;(e)tBu−Suc−Ser(tBu)−OH、HATU/DMF/DIPEA、90%;(f)Pd(OH)2−C/H2/メタノール、90%;(g)2727D、HATU/DMF/DIPEA、85%;(h)TFA/DCM、90%;(i)PhB(OH)2、ペンタン−水−アセトニトリル、70%。
図2図2は、ARI−3996の濃度の関数としての、FAPおよびPREPによるARI−3996のインビボ開裂の速度を示している。開裂は、LCMSを使用して、「弾頭(warhead)」ARI−2727の放出のアッセイによりモニタした。
図3図3は、DPP IV、DPP8、DPP9またはPREPではなく、FAPによるARI−3144((N−キノリン−4−カルボニル)−D−Ala−Pro−AMC)のインビトロ開裂を示している。開裂は、AMC離脱基の蛍光(励起、355nm;発光、460nm)を測定することによってモニタした。
図4図4は、膵臓腫瘍組織および血漿に関するヒトおよびマウスにおけるFAPタンパク質分解活性の比を示している。FAP活性は、ARI−3144蛍光原基質を使用して、腫瘍ホモジェネートおよび血漿においてエキソビボでアッセイした。
図5図5は、FAP発現HEK293細胞およびHPAF−11細胞の異種移植片におけるFAPタンパク質分解活性を示している。FAP活性は、ARI−3144アッセイを使用して分析した。
図6図6は、株化(〜200mm3)HPAF−II悪性腫瘍異種移植片を有するSCIDマウスにおけるそれぞれのMTDでのARI−3996およびボルテゾミブ(「ベルケイド」)の抗腫瘍活性の比較を示している。ARI−3996およびボルテゾミブは毎週二回(日(D)1/D4スケジュール)投与し、ARI−3996は5日連続で1日目から5日目まで与えた(Qdx5スケジュール)。アスタリスクは、対照と比較して、ARI−3996で治療したマウスにおける腫瘍サイズの著しい(p<0.05)減少を示す。
図7図7は、静脈注射の1時間後の組織と腫瘍への[14C]ボルテゾミブの分布を示している。このグラフとデータは、Adams等(71)から得た。データは、平均dpm/100mg組織および平均dpm/100μL血液である。
図8図8は、HPAF−II皮下注射腫瘍を有するSCIDマウスにおけるARI−3996および弾頭2727Dの組織分布を示している。担癌マウスに、50mg/kgのARI−3996を皮下注射した。組織は、ARI−3996の投与から1(A,B)、2(C,D)および3時間(n=2)後に採取し、組織抽出物中の薬剤濃度をLCMSにより決定した。
図9図9は、HPAF−II異種移植片を有するSCIDマウスに1日目と4日目に一日二回(b.i.d)50mg/kgで静脈(IP)および皮下(SQ)経路により投与したARI−3996の抗腫瘍効果を示している。ビヒクルに対する検定のためのダネットの事後検定による一元配置ANOVA(P<0.0001)。
図10図10は、6mg/kgのゲムシタビンを含む場合と含まない場合の50mg/kgのARI−3996の抗腫瘍活性を示している。ARI−3996は皮下注射で一日二回、ゲムシタビンは腹腔内注射で一日一回、毎週二回投与した。平均±標準誤差。2つの化合物は、一緒に投与したときに、強力な相乗効果を示す。
図11図11は、診断用蛍光原基質ARI−3144のマンガを示している。FAP認識部位は、FAPに特異的に結合し、酵素により開裂されて、蛍光性クマリン部分を放出する。
図12図12は、FAPに結合した後のARI−3144のマンガを示している。FAP認識部位が開裂されて、蛍光性クマリン部分を放出する。
図13図13は、ARI−3144がFAPの優れた基質であることを示している。
図14図14は、PREP、DPPIV、DPP8、DPP9、およびDPPIIによるARI−3144開裂の速度の蛍光測定を示している。ARI−3144はFAPに極めて選択的である。
図15図15は、ARI−2727Dに化学結合したFAP認識部位、およびFAP認識部位に結合している間は不活性のままであるプロテアソーム阻害剤を含有するプロドラッグARI−3996のマンガ(上部)、およびFAPにより開裂された後に起こること;活性「弾頭」ARI−2727DがFAP認識部位から放出されるマンガ(下部)を示している。
図16図16は、癌性および正常なマウスの組織におけるFAP活性を示している。腫瘍の中と周りのずっと高いFAP活性は、FAPがその組織内でアップレギュレートされていることを示している。
図17図17は、ヒト腫瘍細胞株およびHPAF−IIマウス腫瘍異種移植片におけるFAP活性を示している。FAP活性は、一般に、マウス腫瘍異種移植片よりもヒト腫瘍細胞株におけるほうが高い。FAP活性は、サンプルの収集と取扱い中のFAPのある程度の失活のために、示されているよりもさらに高いと思われる。
図18図18は、いくつかの組織におけるFAP活性のグラフを示している。FAP発現HEK腫瘍異種移植片は、FAP含有量について、ヒト膵臓腫瘍組織に匹敵する。
図19図19は、ビヒクル対照またはARI−3996いずれかで治療したマウスの平均腫瘍体積を示している。ARI−3996は免疫応答性マウスにおいて腫瘍の緩解を誘発する。
図20図20は、FAP発現HEK腫瘍異種移植片におけるARI−3996の抗癌活性を示している。
図21図21は、FAPノックアウトマウスの血漿が、ARI−2727を放出するためのARI−3996を活性化しないことを示している。
図22図22は、マウスにおける「ベルケイド」対ARI−3996の組織分布を示している。
図23図23は、マウスにおける「ベルケイド」対ARI−2727Dの組織分布を示している。ARI−3996は腫瘍の中と周りでARI−2727Dに開裂され、それゆえ、腫瘍内にARI−2727Dの蓄積を促進する。
図24図24は、直接投与からと、プロドラッグ形態のARI−3996としての投与からとの1時間後のARI−2727Dの組織分布(上部);およびARI−2727Dが蓄積する腫瘍対組織の平均比を示している。
図25図25は、多発性骨髄腫、正常な細胞、および固形腫瘍における「ベルケイド」対ARI−2727Dの細胞毒性を示している。
図26図26は、多発性骨髄腫、正常な細胞、および固形腫瘍における「ベルケイド」対ARI−2727D対ARI−3996の細胞毒性を示している。
図27図27は、様々なヒト癌細胞株におけるFAP活性を示している。
図28図28は、U266腫瘍を担持するマウスにおけるプロテアソーム阻害剤である「ベルケイド」およびARI−3996の抗癌作用を示している。
図29図29は、多数の公知のプロテアソーム阻害剤の化学構造と名称を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、固形腫瘍を選択的に標的とするように設計された、減少した毒性プロファイルを有する化合物に関する。ボルテゾミブ(「ベルケイド」)は、多発性骨髄腫の効果的な治療法であるが、その作用機構により、末梢神経障害および血小板の損失の用量制限毒性(DLT)が生じ、これにより、一般的な固形癌の治療が妨げられる。本発明の化合物は、健康な臓器内で不活性のままであり、腫瘍関連酵素と呼ばれる線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)により活性化されて、腫瘍において細胞毒性ボルテゾミブ様弾頭を放ち、それによって、固形腫瘍の安全な治療を妨げる、ボルテゾミブによる毒性副作用を減少させるように設計されている。
【0020】
本発明の化合物の選択的な標的化および減少した毒性により、遺伝子構造にかかわらず、固形癌を治療することが可能になる。さらに、腫瘍の近傍における前記化合物の選択的な活性化により、腫瘍中の細胞毒性薬の濃度が高くなるが、体の残りでは濃度が低い。高い局所濃度により、以前に可能であったよりも低い用量の薬剤で腫瘍が殺される。何故ならば、選択的に送達される能力が欠如した薬剤は体中を循環し、しばしば癌の治療のための最適状態に及ばない用量で、全身毒性を生じるからである。
【0021】
本発明は、腫瘍の免疫抑制特性を相殺することも可能にする。固形腫瘍は、しばしば癌性間質細胞により取り囲まれているので、患者の免疫系から保護されている。この免疫抑制は、間質細胞を殺すことによって除去できるが、「ベルケイド」を含む従来の化学療法ではそのようにできない。本発明は、間質細胞を殺すことができる。何故ならば、間質細胞は、FAPを過剰発現し、それゆえ、本発明の化合物を活性化して、弾頭を放出するからである。それゆえ、本発明は、腫瘍の直接の殺傷、または支持的な間質細胞の殺傷後の患者の免疫応答の再活性化により、結果として、自然の免疫応答による腫瘍の殺傷などの、多数の作用機構を有し得る。
【0022】
本発明のFAPアドレス部分、またはFAP結合部分は、様々な細胞毒性弾頭に化学的に付着していてよい。それゆえ、有効な標的および作用モードを有するどのようなプロテアソーム阻害剤も、請求項に記載された本発明との使用から恩恵を受けるであろう。抗癌活性を有する有効なプロテアソーム阻害剤のFAPアドレス部分へのコンジュゲーション(conjugation)(化学的付着)は、選択的な送達、増加した有効性、および減少した的はずれの毒性を与える。
【0023】
FAPアドレス部分の公知のプロテアソーム阻害剤へのコンジュゲーションは、プロドラッグと、概念的に異なるが、類似している。何故ならば、FAPアドレス部分は、FAPに結合し、体内に存在する他のプロテアーゼ、特に、DPPII、DPP8、DPP9、DPPIV、およびPREPよりも選択的にFAPにより開裂されるように設計されているからである。この酵素サブタイプの特異性は、解放された細胞毒性薬を腫瘍に送達する所望の効果のために必須である。
【0024】
抗癌活性を有する多くのプロテアソーム阻害剤が、当該技術分野で公知であり、共有結合阻害剤および非共有結合阻害剤にしたがって分類されるであろう。共有結合阻害剤はさらに、中でも、アルデヒド、ボロネート、エポキシケトン、ベータ−ラクトン、ビニルスルホン、およびα,β−不飽和カルボニルに分類される。アルデヒド類の例としては、MG−132、PSI、およびフェルタミド(fellutamide)Bが挙げられる。ボロネート類の例としては、ボルテゾミブ(「ベルケイド」)、CEP−18770、MLN2238、およびMLN9708が挙げられる。エポキシケトン類の例としては、エポキソミシン、カルフィルゾミブ(PR−171)、NC−005、YU−101、LU−005、YU−102、NC−001、LU−001、NC−022、PR−957(LMP7)、CPSI(β5)、LMP2−sp−ek、BODIPY−NC−001、アジド−NC−002、およびONX0912(オプロゾミブ)が挙げられる。ベータ−ラクトン類の例としては、オムラリド、PS−519、マリゾミブ、およびベラクトシンAが挙げられる。ビニルスルホン類の例としては、125I−NIP−L3VS、NC−005−VS、およびMV151が挙げられる。これらの阻害剤と他の阻害剤の議論と検証が、例えば、Kisselev et al. “Proteasome Inhibitors: An Expanding Army Attacking a Unique Target,” Chemistry and Biology 19, January 27, 2012, 99-115(引用する)に見つかるであろう。
【0025】
本発明に記載されたFAPアドレス部分を有するこれらのプロテアソーム阻害剤のいずれの化学的コンジュゲーションも、細胞毒性薬を、固形腫瘍および周りの間質細胞に選択的に送達することが期待されるであろう。FAPアドレス部分はFAPに選択的な基質であるので、FAPアドレス部分に付着する細胞毒性薬の身元は、選択的送達にとって重要ではない。FAPは、そのアドレス部分を弾頭に付着させる化学結合を開裂する;そのような化学結合は、中でも、例えば、エステル結合またはアミド結合であってよい。
【0026】
本発明の1つの態様は、A−Bにより表されるプロテアソーム阻害剤のFAP活性化プロドラッグ、またはその薬剤的に許容される塩であり、式中、
Aは線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の基質を表し;
Bは、FAPによる開裂の産物としてプロドラッグから遊離形態で放出されたときに、500nM以下のKiを有する、プロテアソームのタンパク質分解活性を阻害するプロテアソーム阻害剤部分を表し;
AおよびBは、FAPにより酵素的に開裂されて、Bをその遊離形態で放出する結合により共有結合しており;
プロドラッグが、プロリルエンドペプチダーゼEC3.4.2126(PREP)に関するよりも、少なくとも10倍大きい、AおよびBを連結する結合のFAP開裂に関するkcat/Kmを有する。
【0027】
特定の実施の形態において、前記プロテアソーム阻害剤部分の遊離形態は、前記プロドラッグに対して少なくとも10倍低い、インビトロの細胞のプロテアソーム活性を阻害するIC50を有する。
【0028】
特定の実施の形態において、前記プロテアソーム阻害剤部分の遊離形態は、前記プロドラッグに対して少なくとも10倍低い、プロテアソーム活性を阻害するKiを有する。
【0029】
特定の実施の形態において、前記プロテアソーム阻害剤部分の遊離形態は、前記プロドラッグより少なくとも5倍大きい、ヒトの細胞への細胞透過性を有する。
【0030】
特定の実施の形態において、前記プロドラッグは、前記プロテアソーム阻害剤部分の遊離形態よりも少なくとも5倍大きい、インビボの治療指数を有する。
【0031】
特定の実施の形態において、前記プロドラッグは少なくとも10のインビボの治療指数を有する。
【0032】
特定の実施の形態において、前記プロドラッグは、[(1R)−3−メチル−1−({(2S)−3−フェニル−2−[(ピラジン−2−イルカルボニル)アミノ]プロパノイル}アミノ)ブチル]ボロン酸よりも少なくとも10倍大きい最大耐性量を有する。
【0033】
特定の実施の形態において、前記プロテアソーム阻害剤部分の遊離形態は、ジペプチジル部分であり、これは、FAPによる開裂の開鎖産物としてプロドラッグから放出されたときに、時間の経過と共に、環化依存性不活性化を経験する。
【0034】
特定の実施の形態において、前記開鎖産物は、5時間以下のT1/2で、環化依存性不活性化を経験する。
【0035】
特定の実施の形態において、Aは、FAPの基質であるペプチドまたはペプチド類似体を表し、そのペプチドまたはペプチド類似体は、N末端封鎖基を含む。
【0036】
特定の実施の形態において、前記ペプチドまたはペプチド類似体は、長さが2〜10のアミノ酸残基である。
【0037】
特定の実施の形態において、前記ペプチドまたはペプチド類似体は、BにC末端結合している。
【0038】
特定の実施の形態において、前記ペプチドまたはペプチド類似体の少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然に生じないアミノ酸類似体である。
【0039】
特定の実施の形態において、前記N末端封鎖基は、生理学的pHで、前記プロテアソーム阻害剤の遊離形態に対して前記プロドラッグの細胞透過性を減少させる部分である。
【0040】
特定の実施の形態において、前記N末端封鎖基は、生理学的pHでイオン化される官能基を1つ以上含む。
【0041】
他の実施の形態において、前記N末端封鎖基は、生理学的pHでイオン化される官能基1つ以上により置換された(低級アルキル)−C(=O)−である。
【0042】
特定の他の実施の形態において、前記N末端封鎖基は、式−C(=O)−(CH21-10−C(=O)−OHにより表される。
【0043】
特定の実施の形態において、前記N末端封鎖基は1つ以上のカルボキシル基を含む。別の実施の形態において、N末端封鎖基はスクシニルである。
【0044】
特定の実施の形態において、Bは、共有結合または非共有結合プロテアソーム阻害剤である。
【0045】
特定の他の実施の形態において、Bは共有結合プロテアソーム阻害剤である。
【0046】
特定の実施の形態において、Bは、プロテアソームの活性部位にアミノ酸残基を有する共有結合付加物を形成できる求電子官能基をカルボキシ末端に有するジペプチジル部分である。
【0047】
特定の実施の形態において、前記求電子官能基は、アルデヒド、ボロン酸、ボロン酸エステル、エポキシケトン、ベータ−ラクトン、ビニルスルホン、またはα,β−不飽和カルボニルである。
【0048】
特定の実施の形態において、前記求電子官能基は、アルデヒド、ボロン酸、またはエポキシケトンである。
【0049】
別の実施の形態において、前記求電子官能基はエポキシケトンである。
【0050】
特定の実施の形態において、Bは、
【0051】
【化3-1】
【0052】
【化3-2】
【0053】
からなる群より選択される。
【0054】
特定の実施の形態において、Bは、
【0055】
【化4】
【0056】
からなる群より選択される。
【0057】
特定の他の実施の形態において、Bは、
【0058】
【化5】
【0059】
からなる群より選択される。
【0060】
本発明の別の態様は、上述した化合物に関し、ここで、Aは、化学結合によりBに付着した自己離脱性(self-eliminating)リンカーをさらに含んでいる。
【0061】
特定の実施の形態において、この自己離脱性リンカーは、p−アミノベンジルオキソカルボニル(PABC)または2,4−ビス(ヒドロキシメチル)アニリンである。
【0062】
本発明の別の態様は、式:
R−Xaa1−Xaa2−Y
により表される化合物またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、
Rはアシル基であり;
Xaa1は、Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、およびTyrからなる群より選択され;
Xaa2は、Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、およびTyrからなる群より選択され;
Yは、
【0063】
【化6】
【0064】
である。
【0065】
特定の実施の形態において、この化合物は、Xaa2のカルボキシル末端との化学結合およびYとの化学結合を有する自己脱離性リンカーをさらに含む。
【0066】
特定の実施の形態において、この自己離脱性リンカーは、p−アミノベンジルオキソカルボニル(PABC)または2,4−ビス(ヒドロキシメチル)アニリンである。
【0067】
特定の実施の形態において、Rは、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、およびメトキシスクシニルからなる群より選択される。
【0068】
特定の他の実施の形態において、Rはスクシニルまたはメトキシスクシニルである。
【0069】
別の実施の形態において、Rはスクシニルである。
【0070】
特定の実施の形態において、Xaa1は、Cys、Met、Ser、またはThrである。
【0071】
特定の他の実施の形態において、Xaa1はSerである。
【0072】
特定の実施の形態において、Xaa2は、Ala、Gly、Ile、Leu、またはValである。
【0073】
特定の実施の形態において、Xaa2はAlaである。
【0074】
特定の他の実施の形態において、Xaa2は(D)−Alaである。
【0075】
Yは、
【0076】
【化7】
【0077】
である。
【0078】
特定の実施の形態において、Rは、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、およびメトキシスクシニルからなる群より選択され、Xaa1は、Cys、Met、Ser、またはThrであり、Xaa2は、Ala、Gly、Ile、Leu、またはValであり、Yは、
【0079】
【化8】
【0080】
である。
【0081】
特定の実施の形態において、Rはスクシニルまたはメトキシスクシニルであり、Xaa1はSerであり、Xaa2はAlaであり、Yは、
【0082】
【化9】
【0083】
である。
【0084】
特定の実施の形態において、Rはスクシニルであり、Xaa1はSerであり、Xaa2は(D)−Alaであり、Yは、
【0085】
【化10】
【0086】
である。
【0087】
特定の実施の形態において、本発明は、
【0088】
【化11】
【0089】
により表される化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0090】
特定の実施の形態において、前記化合物は、
【0091】
【化12】
【0092】
により表される。
【0093】
本発明の別の態様は、式I:
【0094】
【化13】
【0095】
により表されるFAP活性化プロテアソーム阻害剤、またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、
X−C(=O)NR11−R’5−はFAP基質配列を表し、XはN−アシルペプチジル基であり、−NR11−R’5は、FAPのP’1特異的サブサイトと結合するアミノ酸残基またはその類似体であり、FAP基質配列はFAPにより開裂されてNHR11−R’5−Rを放出し;R11はHまたは低級アルキルを表し;
NHR11−R’5−Rはプロテアソーム阻害剤である。
【0096】
特定の実施の形態において、本発明は、式II:
【0097】
【化14】
【0098】
により表される、上述したFAP活性化プロテアソーム阻害剤に関し、式中、
1−(C=O)−はアシルN末端封鎖基を表し;
2は、H、低級アルキル、もしくはモノ−またはジ−ヒドロキシ置換低級アルキルを表し;
3は、H、ハロゲン、または低級アルキルを表し;
4は、存在しないか、もしくは低級アルキル、−OH、−NH2またはハロゲンを表し;
5は、大きい疎水性アミノ酸側鎖を表し;
11は、Hまたは低級アルキルを表し;
FAP活性化プロテアソーム阻害剤は、FAPにより開裂されて、
【0099】
【化15】
【0100】
により表されるプロテアソーム阻害剤を放出する。
【0101】
FAP活性化プロテアソーム阻害剤の特定の実施の形態において、
【0102】
【化16】
【0103】
は、
【0104】
【化17】
【0105】
からなる群より選択される。
【0106】
特定の実施の形態において、前記FAP活性化プロテアソーム阻害剤は、式III:
【0107】
【化18】
【0108】
により表され、式中、
1−(C=O)−はアシルN末端封鎖基を表し;
2は、H、低級アルキル、もしくはモノ−またはジ−ヒドロキシ置換低級アルキルを表し;
3は、H、ハロゲン、または低級アルキルを表し;
4は、存在しないか、もしくは低級アルキル、−OH、−NH2またはハロゲンを表し;
5は、大きい疎水性アミノ酸側鎖を表し;
6は、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環または−(CH2n−R7を表し;
7は、アリール、アラルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、−OHまたは−SHを表し;
11は、Hまたは低級アルキルを表し;
Wは、−CN、エポキシケトン、−CH=NR5
【0109】
【化19】
【0110】
を表し;
8は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R9、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R9、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R9、−C(=O)C(=O)NH2、−C(=O)C(=O)OR10を表し;
9は、各存在について独立して、置換または未置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、または複素環を表し;
10は、各存在について独立して、水素、もしくは置換または未置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、または複素環を表し;
1およびY2は、独立してまたは共に、OH、もしくはY1とY2が、環構造に5から8の原子を有する環を介して接続されている環状誘導体を含む、ヒドロキシル基に加水分解されることのできる基であり得;
50は、OまたはSを表し;
51は、N3、SH2、NH2、NO2または−OR10を表し;
52は、水素、低級アルキル、アミン、−OR10、または薬学的に許容される塩を表すか、もしくはR51とR52は、それらが結合したリン原子と一緒に、環構造に5から8の原子を有する複素環を完成し;
1はハロゲンであり;
2およびX3の各々はHまたはハロゲンを表し;
mは、ゼロまたは1から8の範囲の整数であり、nは1から8の範囲の整数である。
【0111】
特定の実施の形態において、本発明は、
【0112】
【化20】
【0113】
により表される、上述したFAP活性化プロテアソーム阻害剤に関する。
【0114】
本発明の別の態様は、ここに記載された化合物、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0115】
本発明の別の態様は、細胞におけるプロテアソーム機能を阻害する方法であって、その細胞に効果的な量のここに記載した化合物と接触させる工程を有してなる方法に関する。
【0116】
本発明の別の態様は、細胞における筋タンパク質の分解速度を低下させる方法であって、その細胞に効果的な量のここに記載した化合物と接触させる工程を有してなる方法に関する。
【0117】
本発明の別の態様は、細胞におけるNF−κBの活性を低減させる方法であって、その細胞に効果的な量のここに記載した化合物と接触させる工程を有してなる方法に関する。
【0118】
本発明の別の態様は、プロテアソーム依存性細胞内タンパク質の分解速度を低下させる方法であって、その細胞に効果的な量のここに記載した化合物と接触させる工程を有してなる方法に関する。
【0119】
本発明の別の態様は、細胞におけるp53タンパク質の分解速度を低下させる方法であって、その細胞に効果的な量のここに記載した化合物と接触させる工程を有してなる方法に関する。
【0120】
本発明の別の態様は、細胞におけるサイクリンの分解を阻害する方法であって、その細胞に効果的な量のここに記載した化合物と接触させる工程を有してなる方法に関する。
【0121】
本発明の別の態様は、細胞における抗原提示を阻害する方法であって、その細胞に効果的な量のここに記載した化合物と接触させる工程を有してなる方法に関する。
【0122】
本発明の別の態様は、癌、乾癬、再狭窄、または他の細胞増殖性疾患を治療する方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物を投与する工程を有してなる方法に関する。
【0123】
本発明の別の態様は、癌、乾癬、再狭窄、または他の細胞増殖性疾患を治療する方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物、および治療に効果的な量の化学療法薬を同時投与する工程を有してなる方法に関する。
【0124】
特定の実施の形態において、その化学療法薬は、ドセタキセル、パクリタキセル、メシル酸イマチニブ、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、5−フルオロウラシル、ペメトレキセド、メトトレキサート、ドキソルビシン、レナリドミド、デキサメタゾン、またはモノメチルオーリスタチンである。
【0125】
特定の他の実施の形態において、前記化学療法薬は、ドセタキセル、ゲムシタビン、カルボプラチン、またはドキソルビシンである。
【0126】
さらに他の実施の形態において、前記化学療法薬は、MG−132、PSI、フェルタミドB、ボルテゾミブ、CEP−18770、MLN−2238、MLN−9708、エポキソミシン、カルフィルゾミブ(PR−171)、NC−005、YU−101、LU−005、YU−102、NC−001、LU−001、NC−022、PR−957(LMP7)、CPSI(β5)、LMP2−sp−ek、BODIPY−NC−001、アジド−NC−002、ONX−0912、オムラリド、PS−519、マリゾミブ、ベラクトシンA、125I−NIP−L3VS、NC−005−VS、またはMV151である。
【0127】
本発明の別の態様は、癌を治療する方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物を投与する工程を有してなる方法に関する。
【0128】
特定の実施の形態において、その癌は固形腫瘍である。
【0129】
特定の他の実施の形態において、前記方法はさらに、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量の化学療法薬を投与する工程を含む。
【0130】
さらに他の実施の形態において、前記癌は固形腫瘍である。
【0131】
さらにまた他の実施の形態において、前記化学療法薬は、ドセタキセル、パクリタキセル、メシル酸イマチニブ、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、5−フルオロウラシル、ペメトレキセド、メトトレキサート、ドキソルビシン、レナリドミド、デキサメタゾン、またはモノメチルオーリスタチンである。
【0132】
別の実施の形態において、前記化学療法薬は、ドセタキセル、ゲムシタビン、カルボプラチン、またはドキソルビシンである。
【0133】
特定の実施の形態において、前記化学療法薬は、MG−132、PSI、フェルタミドB、ボルテゾミブ、CEP−18770、MLN−2238、MLN−9708、エポキソミシン、カルフィルゾミブ(PR−171)、NC−005、YU−101、LU−005、YU−102、NC−001、LU−001、NC−022、PR−957(LMP7)、CPSI(β5)、LMP2−sp−ek、BODIPY−NC−001、アジド−NC−002、ONX−0912、オムラリド、PS−519、マリゾミブ、ベラクトシンA、125I−NIP−L3VS、NC−005−VS、またはMV151である。
【0134】
本発明の別の態様は、哺乳類における筋肉量の損失速度を低減させる方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物を投与する工程を有してなる方法に関する。
【0135】
本発明の別の態様は、哺乳類におけるNF−κBの活性を低減させる方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物を投与する工程を有してなる方法に関する。
【0136】
本発明の別の態様は、哺乳類におけるプロテアソーム依存性細胞内タンパク質の分解速度を低下させる方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物を投与する工程を有してなる方法に関する。
【0137】
本発明の別の態様は、哺乳類におけるp53タンパク質の分解速度を低下させる方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物を投与する工程を有してなる方法に関する。
【0138】
本発明の別の態様は、哺乳類におけるサイクリンの分解を阻害する方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物を投与する工程を有してなる方法に関する。
【0139】
本発明の別の態様は、哺乳類における抗原提示を阻害する方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物を投与する工程を有してなる方法に関する。
【0140】
本発明の別の態様は、哺乳類における誘発性のNF−κB依存性細胞接着を阻害する方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物を投与する工程を有してなる方法に関する。
【0141】
本発明の別の態様は、哺乳類におけるHIV感染を阻害する方法であって、その必要のある哺乳類に、治療に効果的な量のここに記載された化合物を投与する工程を有してなる方法に関する。
【0142】
本発明の別の態様は、哺乳類において腫瘍により発現されるまたはその近傍にあるFAPの量を定量化する方法であって、
その哺乳類に、効果的な量の、式IV:
【0143】
【化21】
【0144】
式中、R12は蛍光団または発色団である、
により表される化合物を投与する工程;
その哺乳類を腫瘍の近傍において照射する工程;および
その腫瘍の近傍の蛍光の量を測定する工程;
を有してなる方法に関する。
【0145】
特定の実施の形態において、R12は、
【0146】
【化22】
【0147】
からなる群より選択される。
【0148】
特定の他の実施の形態において、R12は、
【0149】
【化23】
【0150】
である。
【0151】
本発明の別の態様は、腫瘍生検サンプルにより発現されるFAPの量を定量化する方法であって、
その腫瘍生検サンプルを、効果的な量の、式IV:
【0152】
【化24】
【0153】
式中、R12は蛍光団または発色団である、
により表される化合物を組み合わせ、それによって、混合物を形成する工程;
その混合物を照射する工程;および
その混合物中の蛍光の量を測定する工程;
を有してなる方法に関する。
【0154】
特定の実施の形態において、R12は、
【0155】
【化25】
【0156】
からなる群より選択される。
【0157】
特定の他の実施の形態において、R12は、
【0158】
【化26】
【0159】
である。
【0160】
本発明の別の態様は、前記哺乳類が、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、またはウシである、ここに記載された方法に関する。
【0161】
本発明の別の態様は、哺乳類がヒトである、ここに記載された方法に関する。
【0162】
本発明の別の態様は、前記化合物が、吸入、経口、静脈、舌下、眼、経皮、直腸、膣、局所、筋肉内、動脈内、くも膜下、皮下、頬、または鼻腔内により哺乳類に投与される、ここに記載された方法に関する。
【0163】
本発明の別の態様は、前記化合物が前記哺乳類に静脈投与される、ここに記載された方法に関する。
【0164】
本発明の別の態様は、FAP+間質細胞により媒介される局所免疫抑制および/または腫瘍サポート活性を低減する方法において、その必要のある患者に、治療に効果的な量の活性薬のプロドラッグを投与する工程を有してなり、その活性薬は、細胞毒性薬であるか、またはそのFAP+間質細胞に対するタンパク質発現または分泌を阻害し、前記プロドラッグよりもFAP+間質細胞に対して少なくとも2倍毒性であり、そのプロドラッグは、(i)FAP基質配列を含み、(ii)FAPによるFAP基質配列の開裂により前記活性薬に転化され(そのFAP基質配列は、プロリルエンドペプチダーゼEC3.4.2126(PREP)により開裂に関するよりも、少なくとも10倍大きい、FAPによる開裂に関するkcat/Kmを有する)、(iii)FAP+間質細胞によりインビボで選択的に活性薬に転化される、方法に関する。
【0165】
本発明の別の態様は、そのFAP基質配列が、他のS9プロリルエンドペプチダーゼによる開裂に関するよりも、少なくとも10倍大きい、FAPによる開裂に関するkcat/Kmを有する、ここに記載された方法に関する。
【0166】
本発明の別の態様は、前記プロドラッグが、式V:
【0167】
【化27】
【0168】
により表されるか、またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
X−C(=O)NR11−R’5−はFAP基質配列を表し、XはN−アシルペプチジル基であり、−NR11−R’5は、FAPのP’1特異的サブサイトと結合するアミノ酸残基またはその類似体であり、FAP基質配列はFAPにより開裂されてNHR11−R’5−Rを放出し;R11はHまたは低級アルキルを表し;
R’5およびRは、一緒に、細胞毒性薬、またはFAP+間質細胞の部位でさらに代謝されてその細胞毒性薬を形成する部分を形成する、ここに記載された方法に関する。
【0169】
本発明の別の態様は、前記プロドラッグが、式VI:
【0170】
【化28】
【0171】
により表されるか、またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
1−(C=O)−はアシルN末端封鎖基を表し;
Xaa(1)はアミノ酸残基であり;
Xaa(2)は、グリシン、または(D)−アミノ酸残基であり;
PROは、プロリン残基またはその類似体を表し;
Xaa(3)は、大きい疎水性アミノ酸残基であり;
前記プロドラッグは、FAPにより開裂されて、Xaa(3)−Rを放出し、Xaa(3)−Rは細胞毒性薬である、ここに記載された方法に関する。
【0172】
本発明の別の態様は、前記プロドラッグが、式VII:
【0173】
【化29】
【0174】
により表されるか、またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
1−(C=O)−はアシルN末端封鎖基を表し;
2は、H、低級アルキル、もしくはモノ−またはジ−ヒドロキシ置換低級アルキルを表し;
3は、H、ハロゲン、または低級アルキルを表し;
4は、存在しないか、もしくは低級アルキル、−OH、−NH2またはハロゲンを表し;
5は、大きい疎水性アミノ酸側鎖を表し;
11は、Hまたは低級アルキルを表し;
前記プロドラッグは、FAPにより開裂されて、細胞毒性薬
【0175】
【化30】
【0176】
を放出する、ここに記載された方法に関する。
【0177】
特定の実施の形態において、前記アシルN末端封鎖基は、生理学的pHで、前記細胞毒性薬に対して前記プロドラッグの細胞透過性を低減させる部分である。
【0178】
特定の実施の形態において、前記アシルN末端封鎖基は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、およびメトキシスクシニルからなる群より選択される。
【0179】
特定の実施の形態において、前記アシルN末端封鎖基は、生理学的pHでイオン化される官能基を1つ以上含む。
【0180】
特定の実施の形態において、前記アシルN末端封鎖基は1つ以上のカルボキシル基を含む。
【0181】
特定の実施の形態において、前記アシルN末端封鎖基は、生理学的pHでイオン化される官能基1つ以上により置換された(低級アルキル)−C(=O)−である。
【0182】
特定の実施の形態において、前記アシルN末端封鎖基は、アリール(C1〜C6)アシル、およびヘテロアリール(C1〜C6)アシルからなる群より選択される。
【0183】
特定の実施の形態において、前記アシルN末端封鎖基はアリール(C1〜C6)アシルであり、このアリール(C1〜C6)アシルは、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノールおよびアニリンからなる群より選択されるアリールにより置換された(C1〜C6)アシルである。
【0184】
特定の実施の形態において、前記アシルN末端封鎖基はヘテロアリール(C1〜C6)アシルであり、このヘテロアリール(C1〜C6)アシルは、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンからなる群より選択されるヘテロアリールにより置換された(C1〜C6)アシルである。
【0185】
特定の実施の形態において、前記アシルN末端封鎖基は、式−C(=O)−(CH21-10−C(=O)−OHにより表される。
【0186】
特定の実施の形態において、前記アシルN末端封鎖基はスクシニルである。
【0187】
特定の実施の形態において、Xaa(1)、Xaa(2)およびXaa(3)の少なくとも1つは、天然に生じないアミノ酸類似体である。
【0188】
本発明の別の態様は、前記細胞毒性薬がプロテアソーム阻害剤である、ここに記載された方法に関する。
【0189】
本発明の別の態様は、前記プロテアソーム阻害剤が、式VIII:
【0190】
【化31】
【0191】
により表されるか、またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
1−(C=O)−はアシルN末端封鎖基を表し;
2は、H、低級アルキル、もしくはモノ−またはジ−ヒドロキシ置換低級アルキルを表し;
3は、H、ハロゲン、または低級アルキルを表し;
4は、存在しないか、もしくは低級アルキル、−OH、−NH2またはハロゲンを表し;
5は、大きい疎水性アミノ酸側鎖を表し;
6は、アルキル、シクロアルキル、アリール、複素環または−(CH2n−R7を表し;
7は、アリール、アラルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、−OHまたは−SHを表し;
11は、Hまたは低級アルキルを表し;
Wは、−CN、エポキシケトン、−CH=NR5
【0192】
【化32】
【0193】
を表し;
8は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−C(X1)(X2)X3、−(CH2m−R9、−(CH2n−OH、−(CH2n−O−アルキル、−(CH2n−O−アルケニル、−(CH2n−O−アルキニル、−(CH2n−O−(CH2m−R9、−(CH2n−SH、−(CH2n−S−アルキル、−(CH2n−S−アルケニル、−(CH2n−S−アルキニル、−(CH2n−S−(CH2m−R9、−C(=O)C(=O)NH2、−C(=O)C(=O)OR10を表し;
9は、各存在について独立して、置換または未置換のアリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、または複素環を表し;
10は、各存在について独立して、水素、もしくは置換または未置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、または複素環を表し;
1およびY2は、独立してまたは共に、OH、もしくはY1とY2が、環構造に5から8の原子を有する環を介して接続されている環状誘導体を含む、ヒドロキシル基に加水分解されることのできる基であり得;
50は、OまたはSを表し;
51は、N3、SH2、NH2、NO2または−OR10を表し;
52は、水素、低級アルキル、アミン、−OR10、または薬学的に許容される塩を表すか、もしくはR51とR52は、それらが結合したリン原子と一緒に、環構造に5から8の原子を有する複素環を完成し;
1はハロゲンであり;
2およびX3の各々はHまたはハロゲンを表し;
mは、ゼロまたは1から8の範囲の整数であり、nは1から8の範囲の整数である。
【0194】
特定の実施の形態において、前記プロテアソーム阻害剤は、
【0195】
【化33】
【0196】
である。
【0197】
特定の実施の形態において、前記プロドラッグは、単独で投与されたときに、前記プロテアソーム阻害剤に関する治療指数よりも少なくとも2倍大きい治療指数を有する。
【0198】
本発明の別の態様は、前記プロドラッグが単剤療法で投与される、ここに記載された方法に関する。
【0199】
本発明の別の態様は、前記プロドラッグが、1種類以上の抗癌剤と共に併用療法で投与される、ここに記載された方法に関する。
【0200】
本発明の別の態様は、前記抗癌剤が共有結合プロテアソーム阻害剤である、ここに記載された方法に関する。
【0201】
本発明の別の態様は、前記抗癌剤が化学療法薬である、ここに記載された方法に関する。
【0202】
本発明の別の態様は、前記化学療法薬が、ドセタキセル、パクリタキセル、メシル酸イマチニブ、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、5−フルオロウラシル、ペメトレキセド、メトトレキサート、ドキソルビシン、レナリドミド、デキサメタゾン、またはモノメチルオーリスタチンである、ここに記載された方法に関する。
【0203】
本発明の別の態様は、前記化学療法薬が、ドセタキセル、ゲムシタビン、カルボプラチン、またはドキソルビシンである、ここに記載された方法に関する。
【0204】
本発明の別の態様は、前記化学療法薬が、MG−132、PSI、フェルタミドB、ボルテゾミブ、CEP−18770、MLN−2238、MLN−9708、エポキソミシン、カルフィルゾミブ(PR−171)、NC−005、YU−101、LU−005、YU−102、NC−001、LU−001、NC−022、PR−957(LMP7)、CPSI(β5)、LMP2−sp−ek、BODIPY−NC−001、アジド−NC−002、ONX−0912、オムラリド、PS−519、マリゾミブ、ベラクトシンA、125I−NIP−L3VS、NC−005−VS、またはMV151である、ここに記載された方法に関する。
【0205】
本発明の別の態様は、前記抗癌剤が免疫療法薬である、ここに記載された方法に関する。
【0206】
本発明の別の態様は、前記免疫療法薬が抗腫瘍抗体である、ここに記載された方法に関する。
【0207】
本発明の別の態様は、前記免疫療法薬が腫瘍抗原ワクチンまたは抗腫瘍樹状細胞ワクチンである、ここに記載された方法に関する。
【0208】
本発明の別の態様は、プロテアソーム活性の阻害により治療効果がもたらされる疾患の治療のための薬剤の製造におけるここに記載された化合物の使用に関する。
【0209】
本発明の別の態様は、薬学的に許容される賦形剤に配合された、ここに記載されたプロドラッグを、推奨投与量および患者へのその配合物の投与を説明する使用説明書(書面のおよび/または図解入り)と共に含む、パッケージ医薬品に関する。
【0210】
特定の実施の形態において、本発明の化合物および組成物は、化学療法と組み合わされてもよい。化学療法−悪性腫瘍における標準治療の要−の効き目は、化学療法薬によるNF−κBの活性化(腫瘍細胞のアポトーシス応答の阻害をもたらす)のために化学療法抵抗性により限られている。腫瘍細胞も、Bcl−2およびP−糖タンパク質の過剰発現により化学療法に抵抗する。プロテアソーム阻害剤(PI)は、NF−κBの活性化を抑制し、Bcl−2のアポトーシス促進性断片への開裂を誘発し、P−糖タンパク質の、癌細胞から化学療法薬を除去する活性形態への突然変異を防ぐことによって、これらの効果に対抗する。したがって、PIは、化学療法への補助薬として機能できる。この役割におけるボルテゾミブと比べると、ここに記載された化合物および組成物は、複合毒性を低減するであろう:例えば、ゲムシタビン、ドセタキセルまたはカルボプラチンに加えたボルテゾミブに関連する、増加したグレード3/4血液毒性(increased grade 3/4 hematologic toxicity)。化学療法薬は通常、休薬期間を設けたサイクルにおいて高用量で投与される。癌細胞の薬剤への曝露を長くし、血管新生を阻害するために、最近、化学療法薬のより連続した投与(メトロノミック(metronomic)化学療法)が開始された。低減した毒性のために、ここに開示された化合物および組成物は、メトロノミック化学療法と組み合わされた、より長い期間の投与に理想的に適しているであろう。
【0211】
定義
「アミノ酸」という用語は、天然であろうと合成であろうと、アミノ酸類似体および誘導体を含む、アミノ官能基および酸官能基の両方を含む全ての化合物を包含することが意図されている。特定の実施の形態において、本発明において考慮されるアミノ酸は、タンパク質中に見つかる天然に生じるアミノ酸、またはアミノ基とカルボキシル基を含有する、そのようなアミノ酸の天然に生じる同化または異化生成物である。天然に生じるアミノ酸は、以下のリストによる、アミノ酸の慣用名に対応する従来の三文字および/または一文字の省略形により完全に特定される。ここに記載された全てのアミノ酸は、別記しない限り、(D)−異性体と(L)−異性体の両方として考えられる。それらの省略形は、ペプチドの技術分野において受け入れられており、生化学命名法におけるIUPAC−IUB委員会により推奨されている。
【0212】
「アミノ酸残基」という用語によりアミノ酸を意味する。一般に、天然に生じるアミノ酸を指定するためにここに使用される省略形は、生化学命名法についてのIUPAC−IUB委員会の推奨に基づいている。Biochemistry (1972) 11:1726-1732)を参照のこと。例えば、Met、Ile、Leu、AlaおよびGlyは、それぞれ、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、アラニンおよびグリシンの「残基」を表す。残基は、カルボキシル基のOH部分およびα−アミノ基のH部分を除去することにより、対応するα−アミノ酸から誘導されるラジカルを意味する。
【0213】
「アミノ酸側鎖」という用語は、K. D. Kopple, “Peptides and Amino Acids”, W. A. Benjamin Inc., New York and Amsterdam, 1966, 2頁および33頁により定義されるように、主鎖を除いたアミノ酸残基の部分である;よくあるアミノ酸のそのような側鎖の例は、−CH2CH2SCH3(メチオニンの側鎖)、−CH(CH3)−CH2CH3(イソロイシンの側鎖)、−CH2CH(CH32 (ロイシンの側鎖)、またはH−(グリシンの側鎖)である。これらの側鎖は、主鎖Cα炭素に繋がっている。
【0214】
「アミノ酸類似体」という用語は、天然に生じるアミノ酸と構造的に類似の化合物であって、C末端のカルボキシル基、N末端のアミノ基または側鎖の官能基が化学修飾されている化合物を称する。例えば、アスパラギン酸−(ベータ−メチルエステル)はアスパラギン酸のアミノ酸類似体であり;N−エチルグリシンはグリシンのアミノ酸類似体であり;またはアラニンカルボキシアミドはアラニンのアミノ酸類似体である。
【0215】
ここに用いた「保護基」という句は、反応性官能基を、望ましくない化学反応から保護する置換基を意味する。そのような保護基の例としては、カルボン酸とボロン酸のエステル、アルコールのエーテル、アルデヒドとケトンのアセタールとケタールが挙げられる。例えば、ここに用いた「N末端保護基」または「アミノ保護基」という句は、合成手順中に望ましくない反応に対してアミノ酸またはペプチドのN末端を保護するために利用できる様々なアミノ保護基を称する。適切な基の例としては、例えば、ホルミル、ダンシル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、およびメトキシスクシニルなどのアシル保護基;例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)などの芳香族ウレタン保護基;t−ブトキシカルボニル(Boc)または9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などの脂肪族ウレタン保護基が挙げられる。
【0216】
ここに用いた「アミノ末端保護基」という用語は、典型的に有機合成に、特にペプチド合成に利用されるアミノ末端保護基を称する。アセチル、およびベンゾイルなどのアシル保護基;ベンジルオキシカルボニルなどの芳香族ウレタン保護基;tert−ブトキシカルボニルなどの脂肪族ウレタン保護基を含む公知の部類の保護基のいずれを利用しても差し支えない。例えば、Gross and Mienhoffer, Eds., The Peptides, Academic Press: New York, 1981;, Vol. 3, 3-88およびGreen, T. W.; Wuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed, Wiley: New York, 1991を参照のこと。好ましい保護基としては、アリール−、アラルキル−、ヘテロアリール−およびヘテロアリールアルキル−カルボニルおよびスルホニル部分が挙げられる。
【0217】
ここに用いたように、「生理学的条件」という用語は、温度、pH、イオン強度、粘度、および生存有機体に適合する、および/または生存哺乳類細胞において細胞内に典型的に存在する、類似の生化学的パラメータを称する。
【0218】
ここに用いた「プロドラッグ」という用語は、生理学的条件下で、治療的活性薬に転化される化合物を包含する。プロドラッグを製造する一般方法は、生理学的条件下で加水分解されて、所望の分子を現す選択された部分を含むことである。他の実施の形態において、プロドラッグは、宿主動物の酵素活性により転化される。
【0219】
ここに用いた「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される基剤」という句は、対象の化学物質を体のある臓器または部分から、体の別の臓器または部分への運搬または輸送に関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または被包材料などの、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各基剤は、配合物の他の成分に適合しており、患者に対して有害ではなく、実質的に非発熱性であるという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される基剤として働くことのできる材料のいくつかの例としては、(1)乳糖、ブドウ糖、およびショ糖などの糖;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロース、およびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび座薬蝋などの賦形剤;(9)ココナツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギニン酸;(16)発熱性物質が除去された蒸留水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;および(21)医薬配合物に利用される他の非毒性適合性物質が挙げられる。特定の実施の形態において、本発明の医薬組成物は、非発熱性である、すなわち、患者に投与されたときに、著しい温度上昇を誘発しない。
【0220】
「薬学的に許容される塩」という用語は、前記阻害剤の、比較的非毒性であり、無機酸および有機酸の付加塩を称する。これらの塩は、阻害剤の最終的な単離と精製の最中にその場で調製しても、または遊離塩基形態にある精製された阻害剤と適切な有機酸または無機酸と別々に反応させ、そのように形成された塩を単離することによって、調製しても差し支えない。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリル酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリル硫酸塩などが挙げられる。例えば、Berge et al. (1977) “Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと。
【0221】
他の場合、本発明の方法に有用な化合物は、1つ以上の酸性官能基を含有してよく、それゆえ、薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成できる。これらの場合の「薬学的に許容される塩」という用語は、阻害剤の、比較的非毒性である、無機酸および有機の塩基付加塩を称する。これらの塩は、同様に、阻害剤の最終的な単離と精製の最中にその場で調製しても、または遊離酸形態にある精製された阻害剤を、薬学的に許容される金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩などの適切な塩基と、アンモニアと、または薬学的に許容される有機の第一級、第二級、または第三級アミンと、別々に反応させることによって調製しても差し支えない。代表的なアルカリまたはアルカリ土類の塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウムの塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる(例えば、前出のBerge et al.を参照のこと)。
【0222】
治療における使用に関する化合物の「治療に効果的な量」は、所望の投薬計画(哺乳類、好ましくはヒトへの)の一部として投与されたときに、治療すべき疾患または健康状態もしくは美容目的の臨床的な許容できる基準にしたがって、例えば、任意の医療に適用できる妥当なベネフィット/リスク比で、症状を緩和するか、健康状態を改善するか、または病状の進行を遅らせる、製剤中の化合物の量を称する。
【0223】
「予防的または療法上の」治療という用語は、当該技術分野において認識されており、1種類以上の対象組成物の宿主への投与を含む。望ましくない健康状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床症状に先だってその組成物が投与される場合、その治療は予防的である(すなわち、望ましくない健康状態の進行から宿主を保護する)のに対し、望ましくない健康状態の症状の後に組成物が投与される場合、治療は、療法上のものである(すなわち、既存の望ましくない健康状態またはその副次的な悪影響を軽減する、改善する、または安定化させることを意図されている)。
【0224】
「自己離脱性リンカー」または「自壊性(self-immolative)リンカー」という用語は、所定の条件下で開裂されて2つの分子を放出する化学結合により2つ以上の分子を互いに結合させる一時的延長部分、スペーサまたはプレースホルダーユニットを称する。自己離脱性リンカーの例としては、以下に限られないが、p−アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)および2,4−ビス(ヒドロキシメチル)アニリンが挙げられる。自己離脱性または自壊性リンカーは、直鎖でも分岐鎖でもよく、同じ分子2つ以上を互いに連結しても、または2つ以上の異なる分子を互いに連結してもよい。自己離脱性または自壊性リンカーは、例えば、生理学的条件下、酸性条件下、塩基性条件下、または特定の化学剤の存在下で、減成する、分解する、または断片化する。
【0225】
上述したように、本発明の特定の化合物は、特有の幾何異性形態または立体異性形態で存在してよい。本発明は、本発明の範囲に含まれるものとして、シスおよびトランス異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、そのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含む、そのような化合物の全てを検討する。追加の非対称炭素原子が、アルキル基などの置換基に存在してもよい。そのような異性体の全て、並びにそれらの混合物は、本発明に含まれることが意図されている。
【0226】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが望ましい場合、非対称合成またはキラル補助基による誘導体化によって調製してよく、ここで、結果として得られたジアステレオマー混合物が分離され、補助基が開裂されて、純粋な所望のエナンチオマーが提供される。あるいは、分子が、アミノなどの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含有する場合、適切な光学活性の酸または塩基を有するジアステレオマー塩が形成され、その後、このように形成されたジアステレオマーの、分別結晶法または当該技術分野に周知のクロマトグラフ手段による分割と、その後、純粋なエナンチオマーの回収が行われる。
【0227】
脂肪族鎖は、以下に定義されるアルキル、アルケニルおよびアルキニルの部類を含む。直鎖脂肪族鎖は、未分岐の炭素鎖部分に限られる。ここに用いたように、「脂肪族基」という用語は、直鎖、分岐鎖、または環状の脂肪族炭化水素基を称し、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基などの、飽和および不飽和の脂肪族基を含む。
【0228】
「アルキル」は、特定の炭素原子の数、または仕様のない場合には30までの炭素原子を有する、完全に飽和した環式または非環式、分岐または未分岐の炭素鎖部分を称する。例えば、1から8の炭素原子のアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルなどの部分、およびこれらの部分の位置異性体である部分を称する。10から30の炭素原子のアルキルとしては、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ドコシル、トリコシルおよびテトラコシルが挙げられる。特定の実施の形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その主鎖に30以下の炭素原子(例えば、直鎖についてはC1〜C30、分岐鎖についてはC3〜C30)、より好ましくは20以下の炭素原子を有する。
【0229】
「シクロアルキル」は、各々が3から12の炭素原子を有する、単環または二環または架橋された飽和炭素環を意味する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造に5〜12の炭素原子を有し、より好ましくはその環構造に6〜10の炭素を有する。
【0230】
炭素数が他に特定されていない限り、ここに用いた「低級アルキル」は、上述したようなアルキル基であるが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルなどの、主鎖構造に1から10の炭素を、より好ましくは1から6の炭素原子を有するアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、同様の鎖長を有する。本出願の全体に亘り、好ましいアルキル基は低級アルキルである。特定の実施の形態において、アルキルとここに示された置換基は低級アルキルである。
【0231】
「アルケニル」は、特定の炭素原子の数、または炭素原子の数への制限が指定されていない場合には26までの炭素原子を有する、任意の環式または非環式、分岐または未分岐の不飽和炭素鎖部分であって、その部分に1つ以上の二重結合を有する炭素鎖部分を称する。6から26の炭素原子のアルケニルは、様々な異性体の形態での、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、デコセニル、トリコセニル、およびテトラコセニルにより例証され、ここで、不飽和結合は、その部分のどこに位置していても差し支えなく、その二重結合の周りで(Z)または(E)配置のいずれかを有し得る。
【0232】
「アルキニル」は、アルケニルの範囲のヒドロカルビル部分であるが、その部分に1つ以上の三重結合を有するヒドロカルビル部分を称する。
【0233】
「アルキルチオ」という用語は、そこに結合した硫黄部分を有する、先に定義したアルキル基を称する。特定の実施の形態において、「アルキルチオ」部分は、−(S)−アルキル、−(S)−アルケニル、−(S)−アルキニル、および−(S)−(CH2m−R1の内の1つにより表され、式中、mおよびR1は下記に定義されている。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0234】
ここに用いた「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、そこに結合した酸素部分を有する、先に定義されたアルキル基を称する。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」は、酸素により共有結合された2つの炭化水素である。したがって、そのアルキルをエーテルに変えるアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2m−R1の内の1つにより表せるような、アルコキシルであるか、またはそれに似ており、式中、mおよびR1は下記に定義されている。
【0235】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当該技術分野で認識されており、未置換アミンと置換アミンの両方、例えば、式:
【0236】
【化34】
【0237】
により表せる部分を称し、式中、
3、R5およびR6の各々は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R1を表すか、またはR3とR5が、それらが結合するN原子と一緒になって、その環構造に4から8の原子を有する複素環を完成し;R1は、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、またはポリシクリルを表し;mはゼロまたは1から8の範囲の整数である。特定の実施の形態において、R3またはR5の内の一方のみがカルボニルであり得、例えば、R3、R5、および窒素が一緒になってイミドを形成しない。さらにより特定の実施の形態において、R3およびR5(および必要に応じてR6)の各々は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、または−(CH2m−R1を表す。それゆえ、ここに用いた「アルキルアミン」という用語は、そこに結合した置換または未置換アルキルを有する、先に定義されたアミン基を意味し、すなわち、R3およびR5の少なくとも一方はアルキル基である。特定の実施の形態において、アミノ基またはアルキルアミンは塩基性であり、pKa>7.00を有する共役酸を有することを意味する、すなわち、これらの官能基のプロトン化形態は、約7.00より大きい、水に対するpKaを有する。
【0238】
ここに用いた「アリール」という用語は、環の各原子が炭素(すなわち、炭素環式アリール)であるか、または1つ以上の原子がヘテロ原子(すなわち、ヘテロアリール)である、3員から12員の置換または未置換単環芳香族基を含む。アリール基が、5から12員環、好ましくは6から10員環を含むことが好ましい。「アリール」という用語は、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通しており、環の少なくとも1つが芳香族であり、例えば、他方の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルであり得る、2つ以上の環を有する多環式環系も含む。炭素環式アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが挙げられる。ヘテロアリール基は、その環構造が1から4のヘテロ原子を含む、置換または未置換の芳香族である3から12員環構造、より好ましくは5から12員環、より好ましくは6から10員環を含む。ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが挙げられる。
【0239】
「ヘテロシクリル」または「複素環基」という用語は、その環構造が1から4のヘテロ原子を含む、3から12員環構造、より好ましくは5から12員環、より好ましくは6から10員環を含む。複素環は多環であっても差し支えない。ヘテロシクリル基の例としては、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンやピロリジノンなどのラクタム、スルタム、スルトンなどが挙げられる。この複素環は、上述したような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、カルボニル、カルボキシル、シリル、スルファモイル、スルフィニル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF3、−CNなどにより1つ以上の位置で置換されていても差し支えない。
【0240】
「カルボニル」という用語は、当該技術分野において認識されており、式:
【0241】
【化35】
【0242】
により表せるような部分を含み、式中、
Xは、結合であるか、酸素または硫黄を表し、R7は、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R1、または薬学的に許容される塩を表し、R8は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2m−R1を表し、mおよびR1は先に定義されたものである。Xが酸素であり、R7またはR8が水素ではない場合、その式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、R7が上述したようなものである場合、その部分はここでは、カルボキシル基と称され、特に、R7が水素である場合、その式は、「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R8が水素である場合、その式は「ギ酸イオン」を表す。一般に、上述した式の酸素原子が硫黄により置換された場合、その式は「チオカルビル」基を表す。Xが硫黄であり、R7またはR8が水素ではない場合、その式は、「チオエステル」基を表す。Xが硫黄であり、R7が水素である場合、その式は、「チオカルボン酸」基を表す。Xが硫黄であり、R8が水素である場合、その式は、「チオギ酸イオン」基を表す。他方で、Xが結合であり、R7が水素ではない場合、上述した式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R7が水素である場合、上述した式は「アルデヒド」基を表す。
【0243】
ここに用いた「チオキサミド」という用語は、式:
【0244】
【化36】
【0245】
により表せる部分を称し、式中、R1は、水素、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、またはアリールからなる群より選択され、好ましくは水素またはアルキルである。さらに、「チオキサミド誘導」化合物または「チオキサミド類似体」は、1つ以上のアミド基が、1つ以上の対応するチオキサミド基により置換されている化合物を称する。チオキサミドは、当該技術分野において「チオアミド」とも称される。
【0246】
ここに用いたように、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが考えられる。広い態様において、その許容される置換基は、有機化合物の、非環式および環式、分岐および未分岐、炭素環および複素環、芳香族および非芳香族の置換基を含む。代表的な置換基は、例えば、先に記載されたものを含む。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つ以上であって差し支えなく、同じであっても異なっても差し支えない。本発明の目的について、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満足する、ここに記載された有機化合物の任意の許容される置換基を有してよい。本発明は、有機化合物の許容される置換基によりどのような様式でも制限されることは意図していない。「置換」または「により置換された」とは、そのような置換が、置換される原子と置換基の許容される原子価にしたがい、その置換により安定な化合物、例えば、転位、環化、除去などによる転換を自発的に経ない化合物が生じるという暗黙の条件を含む。
【0247】
ここに用いたように、「ニトロ」という用語は、−NO2を意味し;「ハロゲン」という用語は、−F、−Cl、−Br、または−Iを表し;「スルフヒドリル」という用語は、−SHを意味し;「ヒドロキシル」という用語は、−OHを意味し;「スルホニル」という用語は、−SO2−を意味し;「アジド」という用語は、−N3を意味し;「シアノ」という用語は、−CNを意味し;「イソシアナト」という用語は、−NCOを意味し;「チオシアナト」という用語は、−SCNを意味し;「イソチオシアナト」という用語は、−NCSを意味し;「シアナト」という用語は、−OCNを意味する。
【0248】
「スルファモイル」という用語は、当該技術分野において認識されており、式:
【0249】
【化37】
【0250】
により表せる部分を含み、式中、R3およびR5は、先に定義されたようなものである。
【0251】
「スルフェート」という用語は、当該技術分野において認識されており、式:
【0252】
【化38】
【0253】
により表せる部分を含み、式中、R7は、先に定義されたようなものである。
【0254】
「スルホンアミド」という用語は、当該技術分野において認識されており、式:
【0255】
【化39】
【0256】
により表せる部分を含み、式中、R3およびR8は、先に定義されたようなものである。
【0257】
「スルホネート」という用語は、当該技術分野において認識されており、式:
【0258】
【化40】
【0259】
により表せる部分を含み、式中、R7は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。
【0260】
「スルホキシド」または「スルフィニル」という用語は、ここに用いたように、式:
【0261】
【化41】
【0262】
により表せる部分を称し、式中、R12は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル、およびアリールからなる群より選択される。
【0263】
ここに用いたように、任意の構造中に複数回現れる場合、各表現、例えば、アルキル、m、nなどの定義は、同じ構造の他のどこかの定義とは独立していることが意図されている。
【0264】
本発明の目的について、化学元素は、元素の周期表、CAS式、Handbook of Chemistry and Physics、第67版、1986〜87年、内表紙にしたがって特定される。
【実施例】
【0265】
本発明を一般的に説明してきたが、本発明は、本発明の特定の対応および実施の形態の説明目的だけのために含まれ、本発明を制限することが意図されていない、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【0266】
実施例1. ARI−3996および本発明のプロテアソーム阻害剤
ペプチドボロン酸を得るために先に記載された合成方法と分析方法を使用して、図1に示されるように、ARI−3996およびPI弾頭ARI−2727Dを合成した。ボルテゾミブは、Selleck ChemicalsまたはChemieTekから購入した。ARI−3996の各バッチを、ここに記載されたPREPに対するFAPによる選択的な開裂について確認した。
【0267】
以下の試薬を使用した:(a)HATU/DMF/DIPEA、収率95%;(b)ジオキサン中4MのHCl、収率100%;(c)HATU/DMF/DIPEA、収率90%;(d)ジオキサン中4MのHCl、収率100%;(e)tBu−Suc−Ser(tBu)−OH、HATU/DMF/DIPEA、収率90%;(f)Pd(OH)2−C/H2/メタノール、収率90%;(g)2727D、HATU/DMF/DIPEA、収率85%;(h)TFA/DCM、収率90%;(i)PhB(OH)2、ペンタン−水−アセトニトリル、収率70%。ペプチド、特に、ここに記載されたものなどのジペプチドおよびトリペプチドなどの短いペプチドの化学合成が、当該技術分野で周知であり、そのモジュール特性のために、十分に予測可能である。したがって、表1の合成方法またはペプチドに適用される標準的な固相合成方法が、式Iの任意の化合物を提供する上でうまくいくであろう。
【0268】
ARI−3996は、固形腫瘍中のプロテアソームをより選択的に標的にするように設計されたボルテゾミブ様細胞毒性薬のプロドラッグ版である(図15)。ARI−3996は、上皮腫瘍の反応性間質線維芽細胞の表面上の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)により開裂されるまで、不活性のままでいることによって、プロテアソーム阻害に関連する機構に基づくDLTを低減させるように設計された。FAPは、上皮腫瘍内で産生されるが、健康な組織では通常産生されないので(FAPは、多くの一般的な上皮腫瘍−肺癌、結腸癌、乳癌および膵臓癌の間質中で発現される)、ARI−3996は、神経組織または血小板が生成される骨髄中で活性化されるべきではない。ARI−3996は、全ての細胞にとって比較的非毒性であり、FAPによって活性化されるまでは、腫瘍細胞を殺すことができない。したがって、ARI−3996は、ボルテゾミブと関連するほどPNおよび血小板減少症がひどくない状態で、FAP産生腫瘍を殺すはずである。
【0269】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)は、FAPおよびプロリルエンドペプチダーゼ(PREP)が、内部プロリンのC末端側で開裂できる唯一の哺乳類のプロテアーゼである(ジペブチジルペプチダーゼ)DPP−IV−様サブファミリーに属するポスト−プロリル開裂セリンプロテアーゼである。FAPとは異なり、PREPは、構造的かつ普遍的に発現される。我々は、FAPにより選択的に活性化されるプロドラッグを製造するために必要なFAP対PREP開裂の特異的問題を解決した。FAPのP4〜P1の開裂特異性には、P1にプロリンを、P2にグリシンまたはD−アミノ酸を必要とし、P3に小さい非荷電アミノ酸を好み、P4ではほとんどのアミノ酸を許容する。我々は、P2のD−アラニンにより、予測されるように、FAPによる開裂が可能になるが、PREPによる開裂が妨げられることを発見した。それゆえ、ボルテゾミブ様アミノボロン酸ジペプチドAla(1−Nal)−BoroLeu(ARI−2727D)へのC末端ペプチド結合によるトリペプチドSuc−Ser−D−Ala−Proの連結により、Pro−Ala(1−Nal)結合のFAP開裂によってプロテアソーム阻害活性が選択的に解放されるプロドラッグARI−3996が生成される。インビトロにおいて、ARI−3996は、FAPにより開裂されるが、PREPによってはずっと少ない程度でしか開裂されず、質量分析法(図2)および蛍光Cel−Titer Blue(Promega)によるインビトロでの腫瘍細胞死滅のアッセイ(表1)により示されるように、細胞毒性「弾頭」ARI−2727Dを生成する。
【0270】
【表1】
【0271】
実施例2. 診断/患者階層化ツールとしてのARI−3144の使用
【0272】
【化42】
【0273】
ARI−3144の構造が上に示されており、その構造は、FAPにより開裂される化学構造を示す矢印を含んでいる。図11は、この化合物の診断用途の根底にある概念のマンガを示している。FAP認識部位が蛍光性クマリン(AMC)部分に化学結合している。ARI−3144のFAPへの結合後、化学結合の開裂が生じて(図12)、AMCからFAP認識部位が放出される。一度放出されたら、AMCは今では蛍光を発し、その濃度は、分光学的特性を測定することによって、定量化できる。
【0274】
蛍光性基質である、N−(キノリン−4−カルボニル)−D−Ala−Pro−AMC[AMC=7−アミノ−4−メチルクマリン](ARI−3144)のP2にあるD−アラニンは、他のDPP−IV−様プロテアーゼではなく、組換えFAPによって開裂されて、蛍光性AMCを放出するようなFAPの選択性を与える。図13に示されるように、ARI−3144はFAPの優れた基質であり、PREP、DPPIV、DPP8、DPP9、またはDPPIIによる開裂は検出されなかった(図14)。FAPは、子宮内膜を除いて、健康な組織においては構造的に発現されないと報告されているが、FAPタンパク質分解活性は血漿中で検出できる。卵巣腫瘍および前立腺腫瘍を除いて、一般的な上皮腫瘍(肺、結腸、乳房および膵臓)の間質線維芽細胞におけるFAP発現の誘発が、免疫組織化学分析およびmRNA分析によって示された。化学療法薬としてのARI−3996の有用性を評価するために、腫瘍におけるFAPタンパク質分解活性を測定する能力が必要である。今まで、ヒトまたはマウスの腫瘍において、FAP活性は定量化されていない。我々は、健康な組織および血漿に対するヒトの膵臓癌における増加したFAPタンパク質分解活性を実証するために、エキソビボのARI−3144アッセイを使用した。血漿に対する腫瘍関連FAP活性の増加が、ヒトの上皮癌における活性と同等である、ARI−3996の活性の調査のためのマウス腫瘍モデルを選択するアッセイを使用する。
【0275】
クマリン系の発色団以外に、結合にアミド結合が使用できる限り(すなわち、その発色団は、FAP認識部位のプロリンに結合するのに利用できる第一級アミノ基を有する)、他の広く使用されている発色団も同様に働くであろう。そのような一般に使用される発色団には、例えば、以下のものがある:
【0276】
【化43】
【0277】
実施例3. 腫瘍組織のFAPタンパク質分解活性がヒトの癌患者における活性と同等である、上皮癌のマウスモデル
先に記載したような標準的な連続蛍光分析において組織ホモジネートおよび血漿におけるFAPタンパク質分解活性を測定するために、FAP特異的蛍光性基質ARI−3144を使用した。
【0278】
フォックスチェースがんセンター(the Fox Chase Cancer Center)の14人の膵臓癌患者からの組織検体において、蛍光単位の変化(ΔFU)/分/mgタンパク質として表現された903.7±161.4の癌組織における平均(±SE)FAP活性を決定した。FAP活性は、1,200から3,000の範囲であった、4つの高発現の患者の間でばらついた。対照的に、scidマウスにおけるHPAF−II膵臓腺癌異種移植片は、たった200±12.5の平均活性しか示さなかった。マウスにおいて、血漿FAP活性の循環レベルは、いずれの種が腫瘍を持っているかにかかわらず、ヒトにおけるレベルよりも約6倍高いことを発見した。それゆえ、FAP活性の腫瘍:血漿の比は、ヒトにおいては少なくとも100:1であるが、HPAFII異種移植マウスにおいてはたった3:1である(図4および16)。
【0279】
ARI−3996などのFAP活性化プロドラッグのTIは、FAPタンパク質分解活性の全身レベルと腫瘍組織中のレベルとの間の差に依存すると予測される。ARI−3996は、HPAF−IIマウスにおいて著しい抗腫瘍活性を示した(以下参照)。しかしながら、HPAF−IIモデルは、ヒトの膵臓癌患者におけるFAP活性の腫瘍:全身比を正確には反映していない(図16および17)。固形癌においてボルテゾミブよりも安全かつ効果的なPIとしてのARI−3996の実現可能性を試験するために、腫瘍FAP活性がHPAF−II移植片におけるよりも約35倍高い癌モデルが必要である。FAPは、腫瘍形成中に反応性間質線維芽細胞中で誘発されるので、腫瘍FAP活性のレベルは、細胞株の異種移植片中よりも、ヒトの癌における間質の発達のパターンを反復するマウスモデルにおけるほうが高いはずである。2つの異なるモデルが見込みがあるようである。Lox−Stop−Lox(LSL)−K−rasG12DマウスにおけるCre−リコンビナーゼ誘発性肺腺癌モデルにおいて、内因性腫瘍発達が、組織学的にヒトの癌の間質に酷似したFAP+間質を誘発する。代わりのモデルが、免疫不全マウス中に直接移植された患者の腫瘍により与えられる。この移植されたヒトの腫瘍は、元の腫瘍の間質組織および脈管構造を維持すると報告されている。FAP活性は、Oncotestのhttp://www.oncotest.de/for-pharma/index.phpにより提供される十分に発達した間質を有するヒトの上皮癌の異種移植片のサンプルにおいて検定される。
【0280】
図5に示されるように、FAP発現HEK293異種移植片モデルを使用して、ヒトの癌患者に見られる腫瘍におけるのと同様の程度までFAPを過剰発現するヒト腫瘍をモデル化することができる。HEK293細胞株のFAP発現変異体は、scidマウスにおけるFAP+上皮細胞の腫瘍を形成する(69)。我々は、インビボでのFAP−HEK293腫瘍における6,000から12,500ΔFU/分/mgのFAP活性レベルを示した(図5)。したがって、FAP−HEK923モデルは、ARI−3996のTIの調査に適している。しかしながら、K−rasG12D−推進肺腫瘍および直接的な患者移植モデルとは異なる、HEK293モデルは、ヒトの癌におけるFAPの間質発現を模倣しない。
【0281】
さらに、図18に示されるように、FAP発現HEK腫瘍異種移植片は、ヒトの膵臓癌の腫瘍と一致するFAP活性を有する。一連のヒトの膵臓腫瘍サンプルは、ごくわずかから250(腫瘍FAP/血漿FAP)に及ぶFAP活性レベルを有した。図18の右手側は、HEKマウスの異種移植サンプルが、150〜270の腫瘍FAP/血漿FAPの比を示すことを示している。
【0282】
実施例4. HEK腫瘍異種移植マウスモデルの検証
HEK異種移植モデルにおけるFAP発現のレベルを決定した後、次に、40日間の研究において、ARI−3996の抗癌活性を評価した。図20がその結果を示している。印象的なことに、「ベルケイド」は腫瘍の成長をほとんど遅くしなかったのに対し、ARI−2727DおよびARI−3996の両方とも、強力な腫瘍の阻害を示した。ARI−2727Dは、FAP認識部位、すなわちアドレス部位を欠いているので、ARI−3996ほど有力ではないと予測される。ARI−2727Dは、時間の経過と共に、配座依存性不活性化も被る。それにもかかわらず、ARI−2727Dは、「ベルケイド」よりも著しく大きい阻害効果を示した。
【0283】
25mg/kgの用量で、ARI−3996は、腫瘍の成長のほぼ完全な阻害を示した。50mg/kgの用量でのHEK−モックモデル(図20の下図)においてさえ、ARI−3996は、十分に許容され、対照を超える阻害効果を示した。
【0284】
効き目のさらに別の試験として、ARI−3996を免疫応答性WT BALB/cマウスに投与した。図19が示すように、30日間の実験の過程に亘り、腫瘍の退行が観察された。
【0285】
実施例5. FAP+癌モデルにおける、ARI−3996、ARI−2727D、およびボルテゾミブの最大耐性量(MTD)および最小有効量(MED)
HPAF−II細胞株が異種移植されたマウスに投与された(腹腔内)ARI−3996は、100mg/kgのMTDで腫瘍の成長を著しく減少させた(図6)。ARI−3996の抗腫瘍効果が、単剤としておよびゲムシタビンとの組合せの両方で確認された(図9および10)。特に、ARI−3996が腹腔内の代わりに皮下で投与されたときに、極めて高い抗腫瘍効果が観察された(図9)。対照的に、HPAF−II腫瘍は、1mg/kgのMTDでのボルテゾミブでは効果がなかった(図6)。したがって、ARI−3996は、MTDに基づいてボルテゾミブよりも100倍安全であるようであり、上皮癌のモデルにおいてボルテゾミブより効き目が優れているようである。しかしながら、ARI−3996の抗腫瘍効果は、HPAF−II腫瘍における比較的低いレベルのFAP活性により制限されるようであり、FAP活性は、このプロドラッグを活性化するために必要である。上述したように、FAP腫瘍:血漿比は、ヒトの膵臓癌については、≧100:1であるのに対し、HPAF−II異種移植マウスにおいては3:1である(図4)。したがって、耐量レベルで癌患者において抗腫瘍効果を生じるためのARI−3996の可能性をよりよく判断するために、ARI−3996、ボルテゾミブおよびARI−2727DのMTDおよびMEDを、ヒトの癌におけるものと同等の腫瘍関連FAP活性について選択したマウスモデルにおいて比較する。
【0286】
MTDは、正常なマウスと担癌マウス(n=2匹の雌+2匹の雄)の群に段階的に増やす用量の化合物を週に2回(1日目と4日目)に投与する(腹腔内)ことによって決定する。担癌マウス対非担癌マウスにおける毒性の比較により、腫瘍FAPによるARI−3996の活性化が全身毒性に寄与するか否かが決定される。マウスの健康状態を毎日モニタし、マウスの体重を週に2回測定する。亜致死量のレベルで、健康障害および10%超の体重減を生じない最高の用量を、MTDと定義する。MEDは、週に2回化合物を投与した担癌マウス(処理具当たりn=5〜7)における抗腫瘍効果の用量反応から決定する。MEDは、試験マウスと対照マウスとの間の腫瘍サイズの比較について独立両側スチューデントt検定によって決定される、腫瘍成長における著しい減少を生じる最小用量として定義される。実験の詳細は、実験1において選択されたモデルに依存する。研究設計は、FAP標的抗癌剤であるGlu−boroProの抗腫瘍効果を実証するために先に記載したものと類似する。ARI−3996、ボルテゾミブおよび「弾頭」のARI−2727DのTIは、式:TI=MTD÷MEDにより計算される。LSL−K−rasG12DまたはOncotestマウスの入手可能性が限られている場合、毒性およびMTDは、FAP−HEK293異種移植scidマウスにおいて調査できる(図5)。
【0287】
実施例6. FAP+腫瘍における20Sプロテアソームの阻害、アポトーシスの誘発、および血管形成の減少を調査することによる、ARI−3996の抗腫瘍効果の機構の特徴付け
実施例5の終了時の最後の薬物投与から1時間後に、末梢血、腫瘍、脾臓および肝臓を採取する。プロテアソーム阻害のアッセイのために急速凍結したサンプルから組織溶解物を調製する。組織検体をホルマリン中に固定し、免疫染色とアポトーシスアッセイに適した条件下でパラフィン内に埋め込み、切断した。
【0288】
20Sプロテアソームのキモトリプシンサブユニット活性は、蛍光性基質のSucc−Leu−Leu−Val−Tyr−AMC(Enzo Life Science)を使用して決定する。ボルテゾミブおよびARI−2727Dは、全ての組織に分布し、用量依存様式で、全ての組織におけるプロテアソーム活性を均一に阻害することが期待される。このアッセイは、各動物における腫瘍組織と非腫瘍組織(例えば、脾臓)の対サンプルの間での比較のための独立両側スチューデントt検定を使用して、ARI−3996が腫瘍のプロテアソーム活性をより選択的に標的とするか否かを試験する。薬物治療に対して最適に応答した腫瘍の組織断面を、マウスCD34−特異的抗体(BD-Pharmingen)で免疫染色することによって、微小血管密度(MVD)について、対照と比較する。アポトーシスは、ApopTagペルオキシダーゼインサイチュアポトーシス検出キット(Millipore)を使用した、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介ニック末端標識(TUNEL)によって定量化する。盲検方式で事象を顕微鏡で計数し、ビヒクル治療腫瘍と薬物治療腫瘍との間の差の有意性を、処理群当たり少なくとも5匹のマウスについて、独立両側スチューデントt検定によって決定する。全身毒性の調査のために、組織もH&Eで染色する。
【0289】
我々は、血漿のFAPタンパク質分解活性が、腫瘍の状態にかかわらず、ヒトにおける(約10ΔFU/分)よりもマウスにおける(約60ΔFU/分)ほうが約6倍高いようであることを発見した。マウスモデルは、癌患者において可能なものに匹敵するARI−3996の全身毒性を過剰にレポートするかもしれない。このことは、ARI−3996によるFAPノックアウトマウスの治療によりさらに確認した。ノックアウトマウスにおいて(図21)、ARI−2727を放出するためのARI−3996の活性化が起こらなかったのに対し、FAP+マウスにおいては、放出された弾頭ARI−2727の濃度が150ng/mLに到達した。
【0290】
マウスの末梢血におけるより大きいプロドラッグ活性化により、ヒトにおけるよりも、ARI−2727D「弾頭」への全身曝露が大きくなり得る。マウスの毒性によれ、ARI−3996対ボルテゾミブについて、標的の10倍大きいTIの達成が妨げられる場合、FAPが遺伝的に欠損したマウス(FapLacZ/LacZ)における毒性を調査する(70)。我々は、FAP欠損マウスは、FAP特異的基質のARI−3144により検出できる著しいタンパク質分解活性を有さないことを示した(図1)。したがって、FAPが十分にあるマウス対FAP欠損マウスにおけるARI−3996のMTDの比較により、血漿FAP活性がどのように毒性に影響するかを決定する。ARI−3996が極めて著しい臨床前抗腫瘍活性を有するが、そのTIが、マウスにおける血漿FAP活性の基礎レベルのたるめに低下していることを発見した場合、我々は、実行可能性の試験が満たされたと考えるであろう。
【0291】
実施例7. FAP活性化プロドラッグARI−3996によるARI−2727Dの腫瘍送達の証拠
用量制限毒性(DLT)は、固形癌における腫瘍反応を生じるための十分に多い用量のボルテゾミブの投与を妨げる。ヒトPC−3膵臓腫瘍が皮下に異種移植されたマウスにおける臨床前結果は、DLTは、非癌組織のボルテゾミブへの曝露に対する、固形腫瘍のボルテゾミブへの低曝露のためであることを示唆している(図7)。ARI−3996は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)のタンパク質分解活性による開裂の際に、腫瘍部位での、ボルテゾミブ様PIであるARI−2727Dを放出するように設計されたプロドラッグである。FAPは主に、ヒトの上皮癌の間質中で発現されるので、ARI−3996は、PIへの腫瘍曝露を増加させ、健康な組織におけるボルテゾミブに対する曝露を減少させるはずである。
【0292】
ヒトのHPAF−II膵臓腺癌が異種移植されたSCIDマウスにおいて、我々は、50mg/kgの用量でARI−3996の一回の皮下注射後、肝臓、末梢血球(PBC)および腫瘍におけるARI−3996およびARI−2727Dの組織分布を比べた。投与から1、3および6時間後に、ボルテゾミブに関するように(図7)、完全なままのARI−3996への肝臓の曝露は腫瘍の曝露よりも大きく(図8のA、C、E)、プロドラッグへのPBCおよび腫瘍の曝露は3時間で同様である。しかしながら、全ての時点で、活性「弾頭」のARI−3996への腫瘍の曝露は、肝臓の曝露またはPBCの曝露のいずれも超えていた(図8のB、D、F)。
【0293】
マウスにおける「ベルケイド」対ARI−3996の組織分布のさらに別の評価(図22および23)が、「ベルケイド」は、腫瘍におけるよりも、心臓、腎臓、肝臓、脾臓、および肺においてずっと高い濃度に到達したことを示し、固形腫瘍に対する薬物の無効性は、腫瘍中の低濃度に起因することを示唆した。「ベルケイド」の高い毒性は、腫瘍中の蓄積を犠牲にして、臓器中の薬物の蓄積に起因するであろう。対照的に、ARI−3996は最初に肝臓中に主に蓄積する;ARI−2727Dを形成するためのFAP活性化/開裂は、より少ない量で肺と血漿中に、ずっと高い相対濃度で腫瘍中にARI−2727Dを形成する。それゆえ、ARI−2727Dは、ARI−3996のFAP活性化を通じて固形腫瘍に選択的に送達されている。
【0294】
最後に、FAPの活性化を、ARI−2727D腫瘍蓄積がそれによって生じている様式として確認した。図24において、注射の1時間後のARI−2727Dの濃度を、プロドラッグ形態(ARI−3996)の注射の1時間後のARI−2727Dの濃度と比較した。ARI−2727Dの直接の注射により、腎臓と肺に蓄積する薬物の濃度が最高になった;ARI−3996を注射した場合、ARI−2727Dの最高濃度は腫瘍で見つかり、それに肺と血漿が続いた。
【0295】
この結果により、ARI−3996は、非腫瘍組織に危害をあたえずに、活性PIへの腫瘍曝露を増加させることが示唆されるのが注目に値する。興味深いことに、HPAF−II腫瘍モデルにおいて、我々は、ボルテゾミブがマウスにおける1mg/kgの最大耐性量で著しい抗腫瘍活性を欠くのに対し(図6)、ARI−3996は、十分に許容され、50mg/kgで腫瘍サイズを著しく減少させる(図9および10)ことを発見した。ARI−3996に対するHFAP−II腫瘍反応は、固形腫瘍はプロテアソーム阻害に対して応答できるという我々の仮説を強固にする。FAP活性の腫瘍:血漿比は、HPAF−IIマウスにおいてはたった3:1であるのに対し、膵臓癌患者においては、その比は100:1以上である。したがって、我々は、ARI−3996の著しく大きい活性化を予測し、その結果、高い腫瘍:血漿FAPを有するマウスモデルにおける腫瘍反応のさらなる改善がさらなる研究において特定されるであろう。
【0296】
実施例8. 多発性骨髄腫、正常な細胞、および固形腫瘍における「ベルケイド」対ARI−2727DおよびARI−3996の細胞毒性
「ベルケイド」はMM患者において強力な臨床活性を有するが、最初に治療に反応した全患者において薬剤耐性が生じる。上皮腫瘍における間質線維芽細胞は、線維芽細胞増殖因子、上皮細胞増殖因子および形質転換増殖因子βなどのパラクリン増殖因子の供給源として、細胞外基質のリモデリングにより、腫瘍の発達と転移を促進する。プロテアソーム阻害の標的を腫瘍微環境にすることにより、ARI−3996は、間質線維芽細胞並びに悪性上皮細胞を死滅させるであろう。これは、腫瘍細胞自体よりも薬剤耐性を生じる傾向が少ない細胞型を殺すことにより、腫瘍を攻撃する機会を与えるであろう。
【0297】
図25および26は、多発性骨髄腫(MM)、正常な細胞、および様々な固形腫瘍に対する細胞毒性に関するARI−2727DおよびARI−3996対「ベルケイド」のさらなる生物学的評価を示している。図25は、「ベルケイド」およびARI−2727Dの両方が、様々なMM細胞株に対して極めて高い有効性を有し、正常な細胞に対してわずかに低い毒性を有することを示している。それらの毒性は、固形腫瘍に対してずっと低い。図26において、ARI−3996が、ARI−2727Dおよび「ベルケイド」と比べられている。その細胞毒性は、広範囲に亘り、特に固形腫瘍において、ずっと低い。
【0298】
これらの結果は、従来の癌化学療法における進行中の難題を解決する上での選択的送達の重要性を強調している。それらの結果は、細胞毒性薬を癌細胞に選択的に送達せずに、正常な細胞と癌細胞に対する等しい毒性を同様に示すことが多い。
【0299】
実施例9. ヒトの癌のFAP活性
どの癌が、本発明の化合物による治療から恩恵を受けるかを決定する1つの重要な態様。上述したように、FAPの発現は、正常なヒト組織において非常に低い。腫瘍からの数多くの組織サンプルを収集し、それらのFAP活性−発現レベルではない−を測定した。図27が示すように、実質的に全てのサンプルは、腫瘍対血清においてずっと高いレベルのFAP活性を示す。それゆえ、プロテアソーム阻害剤の影響を受けやすいほとんどの固形腫瘍は、本発明のFAP活性化プロドラッグによる治療に反応すると見込まれる。図4に示されるように、ヒトの腫瘍は、平均で、正常のヒト組織のFAP活性レベルに対して100:1の比を有する。
【0300】
実施例10. U266腫瘍を担持するマウスにおけるプロテアソーム阻害剤の抗癌作用
ARI−3996は、マウスMMモデルにおいて「ベルケイド」より効き目が一貫して優れていた。U266腫瘍異種移植片を担持するマウス(2匹の雌、2匹の雄)を2週間に亘り週に2回(1日目と4日目)、ビヒクル、ARI−3996、または「ベルケイド」のいずれかで治療した。図28に示されるように、ARI−3996は50mg/kg(MTDの半分)で投与し、「ベルケイド」は0.5mg/kg(これもMTDの半分)で投与した。腫瘍の阻害は、ELISA(μg/mL)および生物発光を使用して評価した。ARI−3996は、「ベルケイド」を上回る著しい利点を示した。「ベルケイド」の群では1匹が死亡したのに対し、ARI−3996の群の全てのマウスは生存し、「ベルケイド」の群に対して改善された結果となった。
【0301】
実施例11. 公知のプロテアソーム阻害剤へのFAP認識部位のコンジュゲーション
上述した実施例は、FAP認識部位(FAP特異性を与える短いペプチド鎖)は、ARI−2727Dに結合したときに、腫瘍およびその周りの間質細胞にその弾頭を選択的に送達することを実証しているので、同じFAP認識配列が他のプロテアソーム阻害剤に結合して、同じ効果を生じることができると結論づけるのが妥当である。多くの短いペプチド配列およびペプチド類似体配列がプロテアソームを阻害することが知られている。阻害剤/弾頭のN末端アミドによるこれらの配列のFAP認識部位への結合が、ARI−3996と同様の有効性、特異性、および(低い)毒性のプロドラッグを形成する。
【0302】
ほとんどの効き目のあるプロテアソーム阻害剤の多くは、求電子部分がカルボキシル末端を置換した、またはカルボキシル末端に加わった、2〜4のペプチドまたはペプチド類似体を含有する。この求電子部分は、プロテアソームの求核性残基を共有結合により修飾して、その触媒活性を損なう反応性種である。酵素を不活性化させるそのような方法は、文献において「自殺型阻害」と一般に称される。成功裏に立証された求電子部分の例としては、ボロネート、エポキシケトン、アルデヒド、シアネート、ビニルスルホン、α,β−不飽和カルボニル、およびケトアルデヒドが挙げられる。
【0303】
数多くの臨床的に関連したまたはそうではなく立証されたプロテアソーム阻害剤の構造が、図29に示されている。化学構造を注意深く検討することにより、特定の類似点が分かる。ほとんどが、求電子部分がカルボキシル末端に結合した、ジ−、トリ−、またはテトラ−ペプチドである。アミノ末端に、一般にアシル基またはアラシル基がある(ボルテゾミブ、CEP−18770、MLN2238、MLN9708、MG−132、PSI、125I−NIP−L3VS、カルフィルゾミブ、オプロゾミブ、エポキソミシン、PR−957、NC−005、NC−005−VS、YU−101、LU−005、YU−102、NC−001、LU−001、NC−022、CPSI、およびIPSI−001)。これらのアシル基またはアラシル基は、そうでなければ短いペプチドを分解するかもしれない非特異的プロテアーゼに対するプロテアソーム阻害剤の耐性を増加させるために存在する。
【0304】
図29に示された様々なプロテアソーム阻害剤に結合したこれらのN末端アシル基またはアラシル基が除去され、ここに記載されたFAP認識部位により置換された場合、その結果は、その特異性および毒性が、それらの親分子を上回って著しく改善されているであろう新規のFAP活性化プロテアソーム阻害剤であろう。
【0305】
引用文献
同等物
当業者は、決まり切った実験を使用するだけで、ここに記載された本発明の特定の実施の形態に対する多くの同等物を認識するか、または解明することができるであろう。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲により包含されることが意図されている。
【0306】
引用による包含
ここに列挙された米国特許および米国特許出願の公報の全てはここに引用される。
図1
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図27-2】
図27-3】
図28-1】
図28-2】
図29-1】
図29-2】