【文献】
太田憲 外2名,二重振子モデルによるゴルフスイングの数理解析,シンポジウム:スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス2011講演論文集,一般社団法人日本機械学会,2011年10月30日,p.447−452
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定手段は、競技者に取り付けたアクティブ・センサを用いて磁気運動捕捉手段により測定したパラメータまたは競技者に取り付けたパッシブなマーカまたはターゲットを用いて高速写真式運動捕捉手段により測定したパラメータを含む運動学的パラメータを測定するように動作可能である、請求項1乃至7の何れか1項に記載の装置。
前記測定手段は、磁気運動捕捉手段を備え、磁気参照フィールドにおいて前記クラブと複数の競技者セグメントの3D位置と3D方位を直接追跡するように動作可能であり、以下の技術または特徴、即ち、
前記測定手段が、グリップより下の前記クラブ・シャフトの上部にあるセンサを追跡することによって前記クラブを直接追跡すること、
前記測定手段が、右下腿、左下腿、右大腿、左大腿、骨盤、上中部胴体、右上腕、左上腕、右前腕、左前腕、右手、左手、および頭にあるセンサを追跡することにより、右下腿、左下腿、右大腿、左大腿、骨盤、上中部胴体、右上腕、左上腕、右前腕、左前腕、右手、左手、および頭を直接追跡すること、
前記測定手段が前腕にセンサを備えないこと、
前記測定手段が左上部胴体と右上部胴体にセンサを備えないこと、
前記測定手段が左足および右足にセンサを備えないこと、
前記測定手段と前記処理手段が、直接は追跡されないセグメントを、隣接セグメント上の直接追跡されたセンサを参照して間接的に追跡すること、
脚のセンサがストラップに取り付けられるように動作可能であり、かつ/または、骨盤と上中部胴体のセンサがジャケットに取り付けられるように動作可能であり、かつ/または、手のセンサが手袋に取り付けられるように動作可能であり、かつ/または、頭のセンサがキャップもしくは帽子に取り付けられるように動作可能であること、
下腿のセンサが、地盤反力を測定する装置からの金属信号干渉を回避するために前記下腿の上部付近に配置されるように動作可能であること、
金属シャフトのクラブに取り付けたセンサが、前記クラブからは離れた固定関係にある非金属部材に取り付けられること、
のうち1つを含むように動作可能である、請求項1乃至8の何れか1項に記載の装置。
前記測定手段は、競技者の足または脚に関連付けられた力を測定または決定するための手段を備え、前記測定手段および前記処理手段は、個々の脚における力の配分に関連するパラメータを測定するように動作可能であり、以下の技術または特徴、即ち、
前記測定手段および前記処理手段が地面と右足の接触点と右足から右臀部関節までの点のうち1つにおける力、および、地面と左足の接触点と左足から左臀部関節までの点のうち1つにおける力を測定し、前記処理手段が、測定した前記力を用いて個々の脚における力の配分を決定すること、
前記測定手段が、左足および右足と地面または固定表面との接触領域で生ずる地盤反力(GRF)を測定すること、
前記測定手段が1対の力プレートを用いてGRFを測定すること、
前記測定手段が地面と競技者の足の接触点における3次元の力を測定すること、
前記測定手段が1対の3軸力プレートを用いて3次元の力を測定すること、
前記測定手段が、運動捕捉システムの磁気参照フレームを、地面と競技者の足の接触点で測定した力と揃えること、
前記測定手段が、前記運動捕捉システムの前記磁気参照フレームの内部で動作するタ
ッチペンを用いて、運動捕捉システムの前記磁気参照フレームを地面と競技者の足の接触点で測定した力と揃えること、
のうち1つを実行するように動作可能である、請求項1乃至9の何れか1項に記載の装置。
前記測定手段および前記処理手段は、競技者の身体の3Dサーフェスの決定を用いて身体セグメント慣性パラメータ(BSIP)を測定または決定するように動作可能である、請求項1乃至16の何れか1項に記載の装置。
前記測定手段および前記処理手段は、運動捕捉により追跡されるタッチペンをセグメント面の代表的な部分にわたって動かし、一連のサーフェス点を測定し記録させ、前記セグメント面の形状を決定するために十分な点が収集されるまで点を収集し続け、前記セグメント面の形状を測定点から決定することによって、BSIPを測定または決定するように動作可能である、請求項17に記載の装置。
前記測定手段または決定手段および処理手段は、光深度測定を用いて競技者の身体の3Dサーフェスを決定するように動作可能である3Dカメラ手段を備える、請求項17に記載の装置。
前記測定手段または決定手段および処理手段は3Dカメラ手段を備え、前記3Dカメラ手段は、光深度測定を用いて競技者の身体の3Dサーフェスを測定または決定するように動作可能であり、かつ、以下のステップ、即ち、
前記測定手段または決定手段および処理手段が、競技者が姿勢および動きを実行したときに、セグメントの表面の部分を光深度測定により決定すること、
前記処理手段が、決定されたサーフェスの部分からセグメントの3D形状を決定すること、
前記測定手段または決定手段および処理手段が、競技者が別々に姿勢および動きを実行したときに、セグメント参照フレームと関節中心の推定値を光深度測定でない運動捕捉から決定すること、
前記処理手段が、追加の利用可能な情報を用いて、改善された関節中心の推定値を決定すること、
前記処理手段が、セグメントごとに、競技者の部分モデルを前記改善された関節中心の推定値と前記決定された参照フレームで構築すること、
前記処理手段が、前記セグメント参照フレームに適合された前記関節中心と3Dセグメント形状から競技者のモデルを構築すること、
前記処理手段が、所定の密度を前記3Dセグメント形状に適用すること、
前記処理手段が、構築された前記モデルおよび前記3Dセグメント形状に適用された密度からBSIPを決定すること、
を実行するように動作可能である、請求項17に記載の装置。
前記測定手段または決定手段および処理手段は3Dカメラ手段を備え、前記3Dカメラ手段は、光深度測定を用いて競技者の身体の3Dサーフェスを測定または決定するように動作可能であり、かつ、以下のステップ、即ち、
運動捕捉手段が競技者を測定すること、
前記運動捕捉手段と前記処理手段がセグメント位置と関節中心を運動捕捉参照フレームにおいて決定すること、
前記測定手段が、前記運動捕捉手段の前記運動捕捉参照フレームにおいて追跡される深さ測定手段を備え、前記測定手段および前記処理手段が、操作者により制御され、光深度測定を用いて、セグメントの表面の部分を前記運動捕捉参照フレームで測定すること、
前記測定手段および前記処理手段が、決定されたサーフェスの部分から、セグメントの3D形状を前記運動捕捉参照フレームで決定すること、
前記処理手段が、競技者のモデルをセグメント参照フレームに適合された前記関節中心と3Dセグメント形状から構築すること、
前記処理手段が、所定の密度を前記3Dセグメント形状に適用すること、
前記処理手段が、前記モデルと前記3Dセグメント形状に適用された密度とからBSIPを決定すること、
を実行するように動作可能である、請求項17または20の何れかに記載の装置。
前記測定手段および前記処理手段は、クラブ・ヘッドから、遠位から近位への方向へ移動する、前記測定手段により感知される1つまたは複数の点でのインパクトの衝撃波を、前記クラブ・シャフトと競技者を介して検出することによって、インパクト時刻を決定するように動作可能であり、前記処理手段は、経験的データを用いて、インパクト衝撃波が前記クラブ・ヘッドからインパクトが感知された点まで移動する際の遅延を許可するように動作可能である、請求項1乃至29の何れか1項に記載の装置。
測定パラメータは、磁気運動捕捉により測定されたパラメータまたは高速写真式運動捕捉により測定されたパラメータを含む運動学的パラメータを含む、請求項34乃至40の何れか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
運動パラメータを決定するためのシステム
幾つかの相対的に低速で低加速度の簡略化された人間の移動または身体部分の移動の運動パラメータが、筋肉筋電図検査、力プレート、および機器搭載型クラブを用いた技術により、様々な成功度合で先行技術において測定されている。しかし、これらの技術は、ゴルフのダウンスイングにおいて少数の非常に限られたNJPを、通常は困難でかつ制限された研究条件の下で測定するにすぎない。逆動力学および順力学を含む力学の原理を用いた他の技術も試行されているが、実用的なコーチング、トレーニング、または大規模データベース編成に使用できるのに十分な精度と利便性とが要求される、高加速の身体全体の高速な動きに関して実用的には全く成功していない。
【0016】
逆動力学では、関節の観測または測定された動きを生成するのに必要な、身体システムの関節にわたる正味の力とモーメントを計算する。当該身体システムは、自由に結合された剛性または実質的に剛性なセグメントの連鎖を含むタイプのものである。接続されたセグメントの連鎖を通じてステップ・バイ・ステップで計算が実行される。一般に、質量と線形な加速に関するニュートンの力学方程式を使用して質量中心の線形な加速を導出し、慣性モーメントと角加速度に関するオイラーの方程式を使用して質量中心周りの角加速度を導出する。しかし、逆動力学の原理または他の任意の手段を用いた、有意なコーチング、トレーニング、大規模データベースの編成、または一般的なゴルフ・スイングの有意な分析を可能とするのに十分な結果の収集において使用するのに十分な精度のレベルでのNJPの実用的な測定は、先行技術では身体全体のゴルフのダウンスイングにおいて上手く実現できていないように思われる。
【0017】
逆動力学を高速移動するゴルフのダウンスイングに適用する際に多数の問題が生じ、その多くの予見は自明ではない。1つの問題は、1つのセグメントで生じた計算誤差が、接続された身体セグメントの連鎖に沿ったさらなるセグメントの計算に受け継がれて増大する可能性がある点で生ずる。別の問題は、脚内の力および足での力に関する不確定性に関連して生ずる。さらなる問題は、左腕セグメントと右腕セグメントの連鎖の結合点における、閉じた運動学的連鎖にわたる計算の不確定性に関する。別の問題は、身体セグメントが剛性でありその関連パラメータが移動を通じて妥当なままであるという仮定から生ずる。実際には、セグメントは剛性ではなく、使用する技術によって、当該簡略化から生じた誤差を最小化しなければならない。さらなる問題は、スイングを通じた全セグメントの運動学的パラメータの正確な測定値を取得することに関する。これらの測定値はダウンスイングの高速移動により複雑化する。当該高速移動では、関節位置は決して直接的には可視ではなく、セグメントの外部面は頻繁に閉塞し、または、その位置がセグメントの他の部分に対して頻繁に変化する。別の問題は、クラブとボールの間のインパクトからのステップ変動から生ずる。さらなる問題は、運動捕捉システムからの信号の一般的な雑音特性から生ずる。この場合、変位情報を微分し二次微分して速度パラメータと加速度パラメータを取得するときに誤差が増大する。さらなる問題は、コーチングとトレーニングのニーズに対して十分に高速で費用効果的であり、かつ、実際のプレイを代表するように競技者が動きを実行できるように測定値を取得する必要性から生ずる。同様に、高速かつ費用効果的な方式で測定値を取得する必要性は、データベース収集、または、一般的なスイング分析を可能とするのに十分なデータの収集で生ずる。本発明ではこれらの問題の全てを特定し克服する。本発明は、身体パラメータ、地盤反力の測定、および他の関連外部力の計算を必要とする適切かつ改善された費用効果的なシステムおよび技術を、運動学的パラメータの測定と逆動力学の適用のための適切かつ改善されたシステムおよび技術とともに非常に具体的に組み合わせたものを備える。
【0018】
本例では、競技者とゴルフ・クラブは、単純で普遍的な回転関節と実質的に剛性な身体セグメントから成る接続システムとしてモデル化される。人間のセグメント化モデルの様々な配置が先行技術では知られているが、その全ては、ゴルフ・スイングの正確なモデル化を行うときに多数の欠点を有することが分かっている。本発明ではこれらの欠点を克服する。
【0019】
競技者の身体セグメントは、左足、左下腿、左大腿、右足、右下腿、右大腿、骨盤、中部胴体、上中部胴体、頭、左上部胴体、左上腕、左前腕、左手、右上部胴体、右上腕、右前腕および右手を含む。関節は、左足首、左膝、左臀部、右足首、右膝、右臀部、腰部、胸部、首、左内方肩部、左外方肩部、左肘、左手首、右内方肩部、右外方肩部、右肘、右手首、および手とクラブの間のグリップを含む。つま先と、つま先および足首の間の足の部分との間の潜在的な関節は、ゴルフのダウンスイングにおけるエネルギ生成にあまり寄与しないため無視する。頭と首の間の潜在的な関節も同様な理由で無視する。
【0020】
背骨は個々の椎骨の間に複数の関節を含むが、少数の関節によって移動を表現することが有利であることが分かっている。本例では、腰部、胸部および首の領域における背骨に沿った3つの特定の関節位置を使用する。腰部の領域における関節の高さを、腸骨稜の高さの外部解剖学的特徴点により定義する。当該高さは、第5腰部椎骨と仙骨の間のL5−S1分割の高さにほぼ等しい。ここで、高さとは直立位置にある競技者を指す。胸部領域の関節の高さは、剣状突起の高さ、または胸骨の底部の高さである外部解剖学的特徴点により定義され、第8胸椎、即ち、T8の高さにほぼ等しい。首領域の関節は、胸骨切痕および第7頸椎、即ち、C7の外部解剖マーカを通る線の高さによって定義される。多数の関節を使用してモデルの精度を高めてもよい。その選択は、分析結果と測定装置における精度と増大する複雑性とをバランスさせるものである。
【0021】
前後方向では、腰部領域と胸部領域の関節が、椎骨の中心と、前方向に少し行った距離、即ち、胴体の後部から前部への距離の約4分の1の距離との間に存在する点に配置される。これにより、胴体の旋回動作を大まかに決定する背骨の相対的な硬直性を認識する。屈曲が全ての椎骨で発生する可能性があり、背骨の前方に位置する胴体の大部分がその移動に何らかの影響を及ぼすと認識したうえで、関節を背骨の少し前方に配置してもよい。このように腰部関節と胸部関節を後方に配置することは、通常は、結合セグメントを含む先行技術のモデルでは提供されていない。先行技術のモデルでは、関節は一般に、前後方向において、胴体の中心に配置され、ゴルフ・スイングのような相対的に高速な回転運動において非常に大きな慣性モーメントの誤差を生じさせる。
【0022】
従来の生体力学では、隣接セグメントの境界は常に、当該セグメントを接続する関節の異なる側に存在するように構成される。しかし、これは通常は満足できる結果をもたらすけれども、常に最適な解決策を提供するわけではないことが試験で示されている。最適な位置の関節を、同心技術および固定同心技術と称する技術を含む、本明細書において後述する技術から見出すことができる。
【0023】
「グリップ」関節は、手とクラブ・シャフトの近位領域の間の関節に対応する。ダウンスイングの間、手とクラブ・シャフトの間でエネルギ生成を含む大幅な移動が発生することが分かっている。グリップ関節は複雑であり、クラブ・シャフトの中心軸またはその付近に配置された、左手と右手の間の点周りの1旋回として上手くモデル化することができる。ドライバ・クラブに対する計算では、回転軸を、例えば、シャフトの近位端から約12cm下方のシャフト中心軸上の点としてもよい。本明細書にわたって、「遠位」という用語は、競技者の身体および取り付けたクラブに沿った、クラブ・ヘッドまたは競技者の頭へ向かう方向を指し、「近位」という用語は、競技者の左足または右足と地面の間の接触点に向かう方向の、競技者の身体に沿った反対方向を指す。
【0024】
先行技術モデルのセグメント形状は一般に、関節にわたって生ずる実際の移動とは殆ど関係がなく、不正確なセグメントに起因する身体の部分に関して多大なエラーをもたらしうる。これは特に腰関節と肩関節に当てはまる。この場合、先行技術の四肢セグメントは、胴体にそこで隣接する中心軸周りの実質的に対称的な形状として常ににモデル化される。可能な場合は、本例ではこれを回避し、隣接四肢セグメントおよび胴体セグメントは概念上の移動面にほぼマッチする。
【0025】
肩を上部胴体と上腕の間の単一の回転関節で正確にはモデル化できないことが試験で示されている。したがって、上部胴体を3つのセグメントに分割し、上中部胴体、左上部胴体および右上部胴体と称する。左上部胴体は、左外方肩部関節を有する左上腕と、左内方肩部関節を有する上中部胴体に接続される。同様に、右上部胴体は、右外方肩部関節を有する右上腕に接続され、右内方肩部関節を有する上中部胴体に接続される。
【0026】
解剖学的には、肩関節群は複雑であり、その組成において曖昧さなくセグメントを分割することはできない。本発明の1態様では、上中部胴体セグメント、左上部胴体セグメント、および右上部胴体セグメントの間で分割する際の期待される誤差が、これらの関節にわたって生成されるパワーが大きいときでもセグメント間の相対移動の慣性効果が相対的に小さいために、逆動力学計算の全体精度に偶然殆ど影響を及ぼさないという認識を必要とする。
【0027】
図1は、内方肩部および外方肩部セグメントを有するモデルで使用される身体セグメントおよび関節の1例を示し、胴体、上腕、および大腿の間のセグメント境界が、関節の概念上の移動面と略同じ角度を成す。セグメント境界は点線で示され、関節は小円で示されている。図で用いる参照番号のインデックスを以下に示す。簡単のため、左側のセグメントと右側の関節に対する参照番号は図では省略してある。
1 頭(セグメント)
2 上中部胴体(セグメント)
3 右上部胴体(セグメント)
4 上腕(セグメント)
5 中部胴体(セグメント)
6 前腕(セグメント)
7 骨盤(セグメント)
8 右手(セグメント)
9 右大腿(セグメント)
10 右下腿(セグメント)
11 右足(セグメント)
12 首(関節)
13 左内方肩部(関節)
14 左外方肩部(関節)
15 胸部(関節)
16 左肘(関節)
17 腰部(関節)
18 左手首(関節)
19 左腰(関節)
20 左膝(関節)
21 左足首(関節)
【0028】
本例では、NJPを、以下の段落で説明する逆動力学の技術を用いて計算する。測定入力には、ダウンスイングの過程における、競技者の身体セグメントの位置に関する3次元(3D)データと、競技者の左足および右足で作用する地盤反力が含まれる。当該測定入力には、競技者の身体セグメントの特性に関する3Dデータも含まれる。当該特性を「身体セグメント慣性パラメータ」と称し、以下では「BSIP」と略すこととする。セグメントごとに、これらのBSIPは、関節位置、質量、質量分布または質量中心および主要な相互直交方向の各々における慣性モーメントを含む。
【0029】
4つのセグメントごとのニュートン・オイラー計算を競技者とクラブ・モデルの4つの先端から開始し、これらの先端は、左足と地面の接触点、右足と地面の接触点、クラブの遠位領域、および競技者の頭の遠位領域である。セグメントごとの計算は通常、腰部関節と胸部関節で終了し、これらの関節の各々で両方向から計算が理想的に行われ、近位から遠位への値と遠位から近位への値が両方の関節で取得される。腰部関節は、骨盤セグメントと中部胴体セグメントの間に配置され、胸部関節は、上中部胴体セグメントと中部胴体セグメントの間に配置される。腰部関節と胸部関節での逆動力学計算で使用される値は、遠位から近位への計算または近位から遠位への計算でより正確かつ信頼性が高いと期待されるものを選択することによって決定される。なぜならば、精度と信頼性の相対レベルは装置が異なれば変化しうるからである。
【0030】
左足から開始する連鎖における第1の関節での力とモーメント、即ち、左足首関節での力とモーメントは、足の移動の運動学的測定により検出される足の移動から生ずる重力と慣性力と、左足の近位端での以下では簡単のためGRFと称する地盤反力との3D結合から発見される。慣性力は、関連する足セグメントの加速度と関連する足のBSIPを計算に適用することによって発見される。重力は、質量分布から決定された質量と質量中心位置から計算される。次に、関節ごとの計算を、左足首から左膝、左臀部への遠位方向に行う。1組の同様な計算を、右足に対して別々に測定したGRFを用いて右足の近位端から実行する。2組の計算が骨盤セグメントで収束し、適切な加算処理により腰部関節でのモーメントと力ベクトルの計算を可能とする。関節ごとの計算を、腰部関節と胸部関節への遠位方向で継続する。
【0031】
大気引力と重力に起因する力を除いて、クラブの遠位端に加わる力とモーメントの正味の和はゼロである。なぜならば、遠位端が外部制約なしに移動するからである。大気引力は、クラブ・セグメントに対してはそれが相対的に高速であるため大きく、適切に考慮される。大気引力は、競技者の身体の大部分のセグメントに対しては相対的に小さく、殆どのケースでは考慮する必要はない。高精度が要求される場合には、手と腕、特に前腕に対する大気引力を許容するのが有利であろう。重力を全てのセグメントで考慮すべきである。クラブの遠位領域からの関節ごとの計算は近位方向に行われ、左手および右手への2つの経路にグリップ関節で分割される。これにより、逆動力学計算単体では正確に解決できない、力とモーメントの分割における潜在的な不確定性が生ずる。
【0032】
当該分割は、かかる課題に関する先行技術の情報を利用することによっては推定できない。なぜならば、スイング中の右腕と左腕の関節における関節パワーを正確に決定するための手段は過去に発見されておらず、左腕と右腕により行われる仕事の相対比は現時点では完全には知られていないと思われるからである。
【0033】
本発明ではこの課題を解決する。上記分割を、左手と右手で別々に握られたクラブ・シャフトの2つの部分の間の力を測定するように動作可能である機器搭載型クラブを用いて測定する。関連する力には、ダウンスイングにわたる当該2つの部分の間の分割点における定常的に変化する合力とモーメントが含まれる。これらの力をスイングと独立に測定し、あるいは、スイングの一般的な測定に沿って測定する。
【0034】
左手からの関節ごとの計算は、近位方向に左手首、左肘、左外方肩部および左内方肩部関節に向かって継続する。1組の同様な計算を右手から実行する。1組の計算を、頭セグメントから首へと近位方向に実施する。重力および大気引力を除いて、頭の遠位領域にある力とモーメントも同様に零である。なぜならば、頭も外部制約なしに移動するからである。左手、右手、および頭からの3つの組の計算が、上中部胴体セグメントで収束し、適切な加算処理により胸部関節でのモーメントと力ベクトルの計算を可能とする。
【0035】
計算が胸部関節から腰部関節へと続く。このように計算された値を腰部関節と胸部関節に対して両方向から取得する。高品質なデータが運動捕捉システムと力プレート・システムから取得される理想的な状況では、近位から遠位への値を使用して腰部関節でのNJPを計算し、遠位から近位への値を使用して胸部関節でのNJPを計算し、関節ごとの第2の値を監視チェックとして使用する。この理由は、計算における中部胴体セグメントの影響を最小化することである。中部胴体は、セグメント・パラメータを推定する際に最も大きな問題をもたらす。なぜならば、密度と質量中心を正確に推定するのが最も困難な大きなセグメントであるからである。密度推定は、肺胞の存在により複雑となっている。質量中心の推定は、呼吸と相対的に大量の柔軟な軟組織の存在とに起因する相対的に高い可動性により複雑となっている。当該セグメントの形状は、一般に、競技者が移動または前傾すると変化する。通常、胸部関節に遠位の全ての関節は近位から遠位への値を使用してNJPを計算し、腰部関節に近位の全ての関節は近位から遠位への値を使用してNJPを計算する。
【0036】
しかし、上述したもの以外の連鎖上の点までに非常に良好な品質の近位から遠位へのデータまたは遠位から近位へのデータを特定のシステムが有すると分かった場合には、当該良好なデータを通常は使用すべきである。遠位から近位へのデータの品質が全てのセグメントで良好である場合には、当該データを、骨盤セグメントと大腿セグメントの間の力の分割を確立するためにのみ使用される全てのセグメントと地盤反力に使用してもよい。現在の事例では、胸部関節に対して遠位から近位へ計算した値と腰部関節に対して近位から遠位へ計算した値を用いて最適な結果を発見した。
【0037】
図2は、上述の逆動力学計算の例における逆動力学計算の経路を示す図を示す。当該計算は腰部関節または胸部関節で終了する。
図2における略語「IDCPDF」および「IDCPPF」は、それぞれ、「逆動力学計算が遠位から行われること」および「逆動力学計算が近位から行われること」を示す。
【0038】
運動パラメータを決定するための装置
NJPを決定するための装置の例を次に説明する。当該装置は、とりわけ、コスト、および利便性が重要な、個々のコーチングおよびコーチングまたは分析に使用される大規模データベースの編成に適している。当該装置はまた、必要とされる場合に、異なる場所での容易な伝達と構成に適している。当該装置を使用して、ゴルフ・スイングの他の側面を決定し分析してもよい。当該側面には運動学的側面が含まれるが、本明細書では詳細には説明しない。コーチングと練習における直接的な使用に加えて、運動学的パラメータはセグメントの運動エネルギ・パラメータをの計算にも使用される。当該パラメータはとりわけ、生成されたエネルギの伝達の計算に使用される。
【0039】
当該装置は、ダウンスイングの過程で競技者の関節位置とGRFを追跡し測定し、競技者のBSIPを測定するための手段を備える。当該データは処理手段で処理され、結果が様々な形式で通信手段によりユーザに送信される。当該ユーザは、コーチ、競技者もしくは操作者であってもよく、または、他の装置もしくはシステムを含んでもよい。
【0040】
複雑または高速な運動学的移動を高精度で捕捉するための一般的な方法では、対象物に戦略的に配置したパッシブ・マーカの移動を捕捉する幾つかの高速カメラを用いる光学運動捕捉システムを使用する。しかし、かかるシステムは、移動面上の密接に配置された点の3D位置の測定において信頼度が低く不正確であるおそれがある。なぜならば、当該システムでは、測定する点ごとに少なくとも3つの光学パッシブ・マーカを定常的に曖昧さなく区別し参照できる必要があるからである。マーカは、競技者の移動中に頻繁に塞がれ、ゴルフのダウンスイング中に競技者の背骨に密接に配置された点の移動を正確に追跡する際、特定の問題に遭遇する可能性がある。高速光学システムではまた、一般にセットアップの時間が長く、大型の屋内研究室タイプの空間が必要である。当該システムはまた、通常、リアルタイムで動作することができない。これにより、コーチング・セッション中にフィードバックが利用可能であるという利点が失われるとともに、誤った結果の即時検出が妨げられる。リアルタイムで動作できれば、競技者とセットアップが利用可能である最中に、再試験を都合良く実行できるはずである。
【0041】
磁気運動捕捉システムは、場合によっては電磁気運動捕捉システムと呼ばれ、マーカ閉塞の問題を克服し、幾つかの形式で利用可能である。当該形式には、有線タイプや無線タイプ、およびACタイプやパルス状DCタイプがある。磁気運動捕捉システムは、一般に、光学システムより雑音のない出力信号を生成する。磁気運動捕捉システムは、幾つかの理由のため人間の移動に関する先行技術の研究ではあまり好まれない傾向がある。これらの理由の1つは、磁気運動捕捉システムではアクティブ・センサを競技者に取り付ける必要があることである。別の理由は、センサの取付けは困難であり、時間を消費しエラーが生じ易いということである。さらなる理由は、他の測定装置の部材を含む、特定の電気的に動作する部材が存在するためセンサが信号歪みを受けるということである。ゴルフ・スイング測定に関連して、さらなる理由は、クラブ・ヘッドまたはその付近にアクティブ・センサを取り付けるのは非現実的であり、このため、テイクアウェイおよびインパクトの瞬間を決定するときにクラブ・ヘッドの位置を直接検出できないことである。これらの問題の全ては、本例のシステムと装置で上手く克服される。試験により、有線ACタイプがダウンスイングの正確な測定に最も適していることが示されている。無線タイプやパルス状のDCタイプは、標本化速度が不十分であり、または、解像度と精度のレベルが不十分である。
【0042】
適切な有線のAC磁気運動捕捉システムの1例は、Polhemus Liberty(登録商標)システムにより与えられている。本例では、競技者に、身体とクラブの戦略的な点にアクティブ・センサを取り付け、全てのセグメントの位置および/または方位を、送信器により生成された参照磁界におけるスイングを介して追跡する。当該参照磁界は、場合によっては電磁界と呼ばれる。各センサは、ダウンスイングの過程を通じて6つの自由度を追跡する。当該自由度は、参照フィールドの3つの互いに垂直な軸の各々の周りの位置と角度方向を含む。動き追跡システムが、240Hzの典型的な更新率、約0.03inの静的な精度位置および約0.15°RMSの静的な精度方位でリアルタイムな移動データを提供する。
【0043】
左足、左下腿、左大腿、右足、右下腿、右大腿、骨盤、中部胴体、上中部胴体、頭、左上部胴体、左上腕、左前腕、左手、右上部胴体、右上腕、右前腕および右手を含む位置を、12個のセンサにより、18個のセグメントの競技者の身体モデルで上手く使用することができる。センサが、左下腿の上部後方領域、左大腿の後部、右下腿の上部後方領域、右大腿の後部、骨盤の片側、椎骨位置T12付近の中部胴体の後部、椎骨位置T8付近の上中部胴体の後部、左上腕の後部、右上腕の後部、左手の背面、右手の背面および競技者の頭の側面に取り付けられる。追加のセンサが、クラブの手のグリップ下方にあるクラブ・シャフトの前面上部に取り付けられる。
【0044】
各前腕は、手のセンサが手首関節を追跡し上腕センサが肘関節を追跡することによって追跡される。前腕セグメントの全体の移動は、手首関節と肘関節の位置と方位に従う典型的な前腕移動の知識に基づく適切なソフトウェア・アルゴリズムにより推定される。このアルゴリズムでは前腕の特性を考慮し、それにより、その長軸周りの単純な回転が肘の周りでは生じないが、より複雑な形の回転がさらに前腕に沿った領域の周りに生ずる。適切なセンサのタイプが現在利用可能であるので、前腕センサを省略することには、これらの相対的に高速移動するセグメント上の追加のセンサと配線による、コスト、複雑さ、および競技者の負担が削減されるという利点がある。適切なあまり目立たないセンサまたは無線センサが将来利用可能になる場合には、追跡精度を高めるように前腕の各々にセンサを配置することが有利であろう。
【0045】
センサを生体力学の研究室タイプの環境で人体に取り付けるための通常の先行技術の方法では、被験者が最小限の衣服を着用し、センサの全てを頭のセンサ以外は皮膚に直接接着しするように構成する。これは、解剖マーカ位置を正確に特定し、センサが試験中に正しい位置に留まることを保証するために本質的であると一般には考えられている。しかし、当該方法は、生体力学の試験手続きに慣れていない試験またはコーチングを受けるゴルフ競技者のような個人には適していない。当該方法は競技者には好ましくなく時間を消費するものであって、装置の設備や試験操作者の時間に関して高価なものである。これらの問題を克服し、特殊目的のセンサ、調節可能ストラップ、ハーネスまたはジャケットの取り付けを含むシステムを開示し、その詳細を本明細書の以降で与える。試験によれば、当該システムは先行技術の方法と比べて高いレベルの精度を与えることが示されている。
【0046】
前述のように、磁気運動捕捉システムには、局所環境における磁気関連材料からの問題ある干渉を受け易いという比較的不利な点がある。ACシステムの場合には、かかる材料は特に、適度な数の銅、アルミニウム、および何らかのタイプの鋼および鉄を含む高導電性の金属、または、大量もしくはそれに近い量の任意の金属を指す。これは、ゴルフのダウンスイングを測定する際の潜在的な難点をもたらす。なぜならば、ゴルフ・クラブと力プレートのような測定装置とは、一般に、かかる問題ある金属を含有するからである。問題ある金属はまた、床および天井の梁または内部鉄筋にも存在しうる。かかる金属による問題を本発明では様々な手段により克服する。
【0047】
天井または床の隣接する鋼梁または内部鉄筋のような静的な問題ある金属による潜在的な問題を、2つの主要な方法で扱う。第1に、可能な場合には、最小限の問題ある金属に関して試験領域を選択する。第2に、軽度から中程度の歪みを、運動捕捉システムの供給者から利用可能な補完的なマッピング・ソフトウェアを用いて補正する。マッピング・プロセスは一般に、位置および方位の歪みのレベルが3D空間を介して測定されるように、器具を、マップすべき3D空間を体系的に移動させることを含む。当該器具は、センサを等間隔に配置した垂直な非導電性のポールを備えてもよい。データをマッピング・ソフトウェアに入力して、動作追跡システムにより使用される補正アルゴリズムを計算する。
【0048】
大量または広範囲の問題ある金属の付近で移動するセンサに対しては、マッピング・プロセスは不十分であると分かることがある。これは、競技者が金属プラットフォームの力プレートに立った場合の足にセンサが配置されたときに生ずる可能性が高い。この問題を様々な方法で解決することができる。本例で使用する解決策では、足のセンサを省略し、下腿セグメントの上部領域に配置したセンサにより足首の位置および方位を追跡する。これらのセンサは、力プレートから大幅な歪みを回避するのに十分な高さに配置される。この解決策では、足は力プレートのサーフェスと接触したままであると仮定し、その位置は、ダウンスイングを介した典型的な足位置の知識と組み合わせて、足首の位置、競技者、および各力プレート上の足の圧力中心に基づいて適切なソフトウェア・アルゴリズムにより推定される。ダウンスイング中の足の移動が相対的に少なく足の速度が相対的に低いために、当該推定から生じるエラーは少ない。バックスイングおよびフォロースルーにおいて競技者の運動学的移動を正確に追跡する必要もある場合、足首の移動のみから予測するのがより困難な方式で足が頻繁に上げられ回転する場合には、代替的な配置が要求されるかもしれない。これを様々な方法で実現してもよい。例えば、力プレートからセンサを離して、力プレート上に配置された剛性の非金属プラットフォームに競技者が立ってもよい。当該方法を用いて、GRFを当該力プレートに上手く送信することができる。別の例では、センサを、足首の端付近に、競技者の靴の各々に取り付けた非金属の剛性のサポートに取り付け、センサを力プレートのレベルの十分上方に保つ。別の例では、非導電性の構成要素を有する力プレートを使用してもよい。かかるプレートは利用可能であるが、相対的に高価である。
【0049】
3D空間で固定されていない問題ある金属に対する解決策を見つけることができる。具体的には、金属クラブ・シャフトに取り付けたセンサからの信号の歪みに関して問題が生ずるおそれがある。本例ではシャフトから短い距離にセンサを配置する非金属アームを用いてセンサをシャフトに留めることにより、当該問題を金属シャフトに関して克服する。代替的に、クラブを非金属シャフトで使用することができるが、これについては競技者が自己のクラブまたはそれと同様な特性を有するクラブを用いることを前提としてもよい。
【0050】
図3は、ゴルフ・スイングにおける運動学的パラメータとGRFパラメータを測定するための装置の1例の略平面図を示す。本図で用いる参照番号のインデックスを以下に示す。略語「MMCS」とは、磁気運動捕捉システムを指す。
【0051】
1 ティーまたは開始位置にあるボール。ボールは矢印の方向に打たれる。
2 人工競技台表面
3 左足力プレート
4 右足力プレート
5 足の輪郭により表した競技者
6 力プレートに対する処理ユニットおよびインタフェース・ユニット
7 競技者セグメントとクラブ・シャフトに固定したMMCSセンサ
8 センサからMMCS処理ユニットおよびインタフェース・ユニットへの配線の供給接続
9 MMCSタッチペン
10 MMCS磁界送信器
11 MMCS処理ユニットおよびインタフェース・ユニット
12 装置プロセッサ
13 操作者インタフェース
【0052】
図3を参照すると、競技者が力プレートに立って、ボールを矢印で示す方向に打つ。図示していないが、MMCSセンサが、他所で説明するように、競技者セグメントとクラブ・シャフトに固定される。力プレートとMMCSがGRFパラメータと運動学的パラメータを記録し、GRFパラメータと運動学的パラメータが、各処理ユニットとインタフェース・ユニットにより処理され、装置プロセッサに渡される。試験操作者は、操作者インタフェースによりシステムを制御し監視する。MMCS磁界送信器は、上方位置に、センサ付近かつ競技者とクラブの移動の到達外に配置される。本図では競技者の片側に示してあるが、実際には、可能な限りセンサの付近にあるように競技者の背後に配置される。MMCSタッチペン・センサを使用して、MMCSの参照フレーム内部の競技者のBSIPに関連するパラメータを測定する。金属製力プレートを使用する場合には、競技者は通常、これらのパラメータを測定するときに当該プレートから移動している。
【0053】
腕ループにおける力の分割を、スイングの過程でグリップ関節での関連力または力分割を計算する機器搭載型クラブを用いて決定する。機器搭載型クラブは、グリップ関節で力を3次元で包括的に測定してもよく、または、機器搭載型クラブを簡略化して狭い関連力、例えば、グリップ関節での単純な曲げモーメントを測定してもよい。包括的な3D力を測定する場合には、これらは、グリップ関節に作用する完全な遠位の力を表すので、逆動力学計算で直接使用することができる。単純な曲げモーメント単体を測定する場合には、これらを使用して、腕ループにおける力の不確定性を解決するための追加入力を提供することによって、グリップ関節での力の分割を推定することができる。曲げモーメントと捩れの両方をグリップ関節で測定すると、改善された推定値が得られる。
【0054】
機器搭載型クラブを全てのスイングに使用できるが、本例ではこれを行わない。なぜならば、機器搭載型クラブは追加の配線で妨害されており、使用の際には通常のクラブよりも現実的でないからである。また、機器搭載型クラブによりルーチン試験中のデータ収集がさらに複雑化するはずである。本例では、競技者は、逆動力学計算に使用されるクラブと同種の機器搭載型クラブを用いて1つまたは複数のスイングを別々に実行する。スイングの過程における力プロフィールを測定し記録する。次いで、これらのプロフィールを、当該プロフィールが再度測定され更新される時刻まで、当該競技者による当該種類のクラブに関する全てのスイングに適用する。
【0055】
当該プロフィールをスイングの角度位置に取り付けて、当該プロフィールを試験スイングと正確に同期させることができる。当該取付けを、例えば、機器搭載型クラブに沿って運動捕捉システムを使用することによって、実行してもよい。あるいは、当該プロフィールを運動捕捉システムに取り付けた同様なサンプル・プロフィールとマッチし比較することによって、当該取付けを実行してもよい。これを、適切にプログラムしたプロセッサを用いて自動的に実行することができる。
【0056】
当該方法の変形には、代表的な幾人かの競技者に対してグリップ力分割を測定し、平均的な結果を試験されている競技者に適用することが含まれる。予め試験した競技者のサンプルの結果を適用するときに、スキル・レベルや形態レベルのような競技者の特性を考慮してもよい。
【0057】
1つの特定の例では、グリップ関節の軸レベルのシャフト直径の周りで、クラブ・シャフトの外面または内面に歪計を取り付けることによって機器搭載型クラブを構築する。当該歪計は、従来型の平衡ブリッジ構成で配置され、測定されている特定の力に対して適切に配置され、ゲージがシャフトの長軸に整列した曲げモーメントを測定し、シャフトの長軸に対して45°に整列した捩れを測定する。当該ゲージは従来式に較正され、グリップ領域が標準的なグリップ材料で再び覆われており、ゲージと配線が競技者に対して目立って見えることがないようになっている。当該歪計は、競技者のターゲット側の腕に沿ったクラブの近位端から伸びる配線によりシステム・プロセッサに接続される。当該ターゲット側の腕は、通常は、右利きの競技者に対しては左腕である。第2の例では、左手と右手のグリップ部分の間のグリップ点で標準的なクラブを分割し、両方の部分を、歪計が取り付けられる平坦領域を含む細長い金属部材と再結合することによって、機器搭載型クラブを構築する。
【0058】
機器搭載型クラブは機器搭載型のシャフト・グリップ部分を備えてもよい。当該グリップ部分は、広範囲のクラブに固定することができ、場合によっては、シャフト・グリップ部分とシャフトの残部分とクラブ・ヘッドの間のねじ込み継手により接続することができる。
【0059】
図4は、逆動力学計算においてこれらの技術を使用して予め試験したグリップ力のプロフィールを適用して左腕および右腕のループにおける不確定性を解決する必要なステップの幾つかを示す図を示す。略語「ID」とは「逆動力学」を指す。
【0060】
本明細書と諸請求項にわたって、プロセッサによる動作に言及する場合は、これらの動作は、ソフトウェアを用いたプロセッサによる動作を意味するものと通常は理解される。適切なかつ関連するアルゴリズムが必要に応じてソフトウェア内部で使用されるが、これらは、必要なアルゴリズムが当業者により実装できないものでない限りは、通常は具体的には述べず説明しないことは通常は理解される。また、プロセッサまたはシステム・プロセッサに言及する場合には、これは1つまたは複数のプロセッサを指し、プロセッサは一般にリモートに通信するので装置内部に配置されるかまたは当該装置からリモートに配置されるプロセッサを指すことは通常は理解される。プロセッサまたはシステムが利用可能なデータに言及する場合には、これは、プロセッサ内部のメモリ手段または遠隔位置からアクセス可能なメモリ手段から利用可能であるデータを指すこともある。また、メモリ内には保持されていないが、必要なときにプロセッサにより計算されるものを含む、他の方法でアクセス可能なデータを指すこともある。また、定期的に変更または更新されるデータベースから取得されるデータを指すこともある。
【0061】
競技者モデルと対照的に、ゴルフ・クラブは、その優れた機械的簡潔性と競争力ある商用上の重要性のため、先行技術の開発活動の対象となっている。幾つかのクラブ・モデルが先行技術において公知である。以下のアプローチとモデルは、本例で用いる競技者モデルと逆動力学計算での使用には満足できるものであることが分かっている。競技者は、大多数の競技者により使用されるクラブの範囲を十分に表す有限種のクラブので試験される。各クラブのタイプの関連する物理特性と慣性特性が決定され、各クラブのタイプは、スイング条件下でその3D屈曲動作を表す関連微分式を提供する専用ソフトウェア・パッケージを使用した有限要素法を用いる有限要素分析を受ける。各1組の結果が、高速カメラとクラブ上のパッシブ・マーカを用いた1組の1回きりの検証試験を受け、必要に応じて計算結果を調節して試験結果とマッチさせる。結果の式は、関連するクラブのタイプに対してシステム・プロセッサにより容易に実装され、スイングごとにシステムの運動捕捉センサにより測定される移動が、当該式への入力に対して主要な基礎をもたらす。前述のように、当該センサはシャフトのグリップ・エンドに配置される。
【0062】
図5は、これらの技術を使用して、同種のクラブに対する測定したグリップ・エンドの動きと所定のFEA式から、スイング中のクラブ・シャフトの偏差を決定する必要なステップの幾つかを示す図を示す。
【0063】
スイングの過程で競技者の左足と右足のGRF上のデータを含む入力を、2つの隣り合う力プレートを用いて取得する。当該力プレートは、直立するプラットフォームの各隅の下に配置した歪計または圧電変換器を伴う、既知の正方形または長方形のタイプである。当該力プレートは、垂直方向を含む、3つの互いに直交する軸上のGRFを測定するように動作可能である。より単純な単一の軸力プレートは、垂直な力を測定するのみであり、高精度な測定が要求される場合には適当ではない。なぜならば、当該力プレートでは、スイングで発生する力の大きな水平成分を考慮せず、力プレートと運動捕捉システムからの近位から遠位への逆動力学計算と遠位から近位への逆動力学計算の間に大幅なミスマッチが生ずるからである。競技者は、1つの足を各力プレートに乗せた自然な位置で立ってゴルフ・スイングを実行する。力プレート・センサからの信号はプロセッサに入力され、合力点の位置を特定する計算された圧力中心を含めて、競技者の脚の各々における力を記述する必要な入力信号に変換される。力プレートからのアナログ信号は、運動学的標本化と同期される標本化速度かつ運動学的速度の倍数である速度で、デジタル形式に変換される。例えば、運動学的標本化速度が240Hzである場合には、力プレート信号を960Hzで標本化してもよい。
【0064】
身体セグメント慣性パラメータの測定
逆動力学計算には、競技者のBSIPを測定する必要がある。当該BSIPの値は、従来は固定されていると仮定されている。BSIPを高レベルの精度と一貫性で決定することが重要である。なぜならば、接続された連鎖の端にない任意のセグメントにおける誤差により、誤差が逆動力学計算の連鎖に沿って関節から関節へと伝播して多大な影響を結果に及ぼすからである。システムを個々のコーチングに使用する場合、または、競技者の大規模データベースが生成されている場合には、競技者に対する最小限の不都合さでBSIPをを測定することも重要である。
【0065】
厳密な先行技術の生体力学の研究では、BSIPは一般に困難かつ時間を浪費する方法により測定される。当該方法には、高価な非接触型のスキャン法、不都合な浸水型の方法または面倒な1回きりの物理測定および計算が含まれる。あまり厳密でない先行技術の生体力学研究では、時間、費用、および不都合さのこれらの問題を克服するために、BSIPは、性別、年齢、体重および全身長のような人体測定値に基づいて選択した、母集団の一部の所定の平均値から頻繁に導出される。個々のセグメント・パラメータが、当該母集団から取得したこれらの標本から得られる平均に基づいて回帰式を適用することにより推定される。しかし、試験によれば、この計算はかなり不正確で信頼性が低いことが示されている。なぜならば、選択した母集団部分では通常は対象を正確に表現せず、当該回帰式は個々の身体形状の差異を説明できないからである。実際、この種の大部分のデータは、ゴルフ競技者で一般に生ずる広範囲の身体形状を表すグループではなく、測定が容易な死体または若い男女の運動選手の何れかから常に導出されているようである。
【0066】
本発明の1態様は、BSIPの誤差が、様々な種類の動きに関して非常に様々に、逆動力学計算に影響を及ぼすという認識に関する。具体的には、BSIPの誤差が、相対的に低速で単純な移動のタイプでは計算した力とトルクにおいて比例的に低くしばしば許容可能な誤差を生成、伝播する。この場合、逆動力学計算の適用が成功するかどうかは限定的であるが、ゴルフ・スイングのような高加速度な高速移動では、比例的に大きくかつ非常に深刻な誤差を生成、伝播し、特に、高速移動するより遠位のセグメントに対しては、計算において全く異なるレベルの慎重さが必要である。
【0067】
最高速度で移動し最高加速度のセグメントにおけるBSIP測定では最高精度が必要である。当該セグメントは、ゴルフ・スイングにおけるクラブである。これは偶発的である。なぜならば、クラブは特に、その特性において変形が相対的に限定的である無生物体であり、非常に正確な測定を受けやすいからである。事前に慎重に測定した有限個の代表的なクラブで試験することによって、この特性の利点を得ることができる。
【0068】
先行技術のアプローチで生ずる問題は2つの代表的な例で克服される。一方は触診に基づき、他方は3Dカメラ・システムの使用に基づく。前者を次に説明する。
【0069】
触診の例では、身体セグメントの形状および体積を、セグメントの境界にある特定の身体測定目印により定義されるセグメントの簡略幾何表現から計算する。中部胴体セグメントと上部胴体セグメントのモデル化には特に注意が必要である。中部胴体セグメントと上部胴体セグメントは、手とは異なり、密度の範囲が最大であり、剛性が最小の身体セグメントである。密度推定を各幾何ソリッドに使用する。当該ソリッドは、空洞部のないソリッドよりも密度が低い身体空洞部を含む。クラブを除いた18個のセグメント競技者身体モデルを、28個の幾何「ソリッド」に再分割する。当該ソリッドは、関節中心を定義しるために使用される89個の測定された身体計測用の目印により定義される。これら幾何ソリッドは、楕円錐台、準楕円体、および「胴体ソリッド」と呼ばれるものを含む。その主軸が垂直であるとき、胴体ソリッドは中央の垂直前後面に関して対称であり、水平断面は各端で半円を伴う長方形を含み、ソリッド全体は上端および下端で前後に対して平面で画される。上腕、前腕、大腿および下腿セグメントはそれぞれ2つの楕円錐台に分割される。足はそれぞれ、楕円錐台を含む。それぞれの手は胴体ソリッドを含む。頭は、楕円錐台上方の準楕円体を含む。上中部胴体、左上部胴体および右上部胴体は、「上部胴体」と称するグループを形成する。上部胴体、中部胴体および骨盤は、3つの、即ち、それぞれ1つと2つの胴体ソリッドを含む。
【0070】
ソリッドの大部分が、8つの目印により定義され、そのうち4つの各端が幅と深さを定義する。隣接するソリッドは目印を共有し、これは実用的である。身体中央部の2つのソリッドが、上部胴体、中部胴体および骨盤を含み、共通面で出会う場合は、当該共通面の境界は両方のソリッドに対して同一である。腕または足の何れかにおける同一幾何タイプの2つのソリッドが共通面で互いに出会う場合には、当該共通面の境界は両方のソリッドに対して同一であり、関節中心の間のソリッドの長軸は同一線上にある。関節中心は、複数の決定された目印に対する形状参照により計算される。当該参照は、関節中心を含む隣接セグメントの1つに対する何らかの固定された参照を有する。最も簡単な方法では、関節中心を、関節の水平点と中間点の間に構成された線の中点として推定し、これは関節レベルにあるとして知られる。これは、足首、膝、肘および手首の関節中心に対して良好な精度レベルを与えることが分かっている。同様な簡略化方法を他の関節に使用することができるが、線に沿った単純な中点ではなく、適切な距離とオフセットを使用し、関節レベルまたはその付近の水平、中央、前、および後ろの目印を使用する。あるいは、関節中心の推定値を回帰式の使用により取得することができる。この場合、回帰係数は、母集団の代表的な標本に対する画像化技術から事前に決定される。
【0071】
上述のように、楕円錐台は楕円形の錐台を含む。しかし、腰関節と外方肩部関節が傾斜面に配置され当該面の傾斜が関節の概念上の移動面に接近するように大腿セグメントと上腕セグメントの楕円錐台の面を傾斜させることによって、より良い解決策が得られる。対応する変更を、骨盤と中部胴体の隣接セグメントに行って、大腿セグメントと上腕セグメントの角度にマッチさせる。当該面を傾斜させることで慣性モーメント計算の簡潔性が減少するが、体重がこれらの関節を囲む領域内の正しいセグメントに属する精度が大幅に増大する。
【0072】
競技者が直立位置からスイング中の前傾位置に変更したときに、中部胴体セグメントの質量中心が大幅に変化する点で、さらに特定の問題が中部胴体セグメントで生じる。一般に、インパクト時の周囲では極端な前傾位置が生じる。競技者が前傾し、背骨を曲げ、胴体質量が背骨により阻止されているため後方に拡大することが防止されているので、質量中心の変化は相対的に柔軟な中部胴体セグメントの圧縮に部分的に起因するものである。質量中心の変化はまた、競技者が前傾した際の重力と、競技者がスイング中に回転した際の遠心力の影響に起因する。
【0073】
本例では、競技者のドライバ・クラブの通常アドレス位置のような、典型的な前傾位置にある競技者の1組のさらなるBSIP測定値を取得することによって質量中心の変化に対処する。追加の質量中心位置をこれらの測定値から計算し、システム・プロセッサが、ソフトウェアに書き込んだルーチンを用いて2つの質量中心値の間の中部胴体の質量中心位置を自動的に変更し、スイング角度を変更する。代替的な簡単かつあまり正確でない配置では、単一の適切な前傾位置からの質量中心、または、直立位置と前傾位置の間の適切な妥協点からの質量中心を使用し、スイング中の全ての位置に適用する。
【0074】
セグメントの質量ごとに、質量中心の位置と主慣性モーメントを、各ソリッドにわたる均一な密度を仮定し、以下のような適切な具体的な密度をこれらソリッドの各々の体積に適用することによって、計算する。1190kg/m
3および1050kg/m
3の値を下部ソリッドと大腿ソリッドに適用し、1130kg/m
3および1070kg/m
3の値を下部ソリッドと上腕ソリッドに適用し、1160kg/m
3の値を手に適用し、1110kg/m
3の値を頭ソリッドと脚ソリッドに適用し、1010kg/m
3の値を中部胴体ソリッドと骨盤ソリッドに適用し、1040kg/m
3および1010kg/m
3の値をそれぞれ上部胴体の上部ソリッドと下部ソリッドに適用し、920kg/m
3の値を上部胴体の2つの中央ソリッドに適用する。
【0075】
セグメントにわたる人体キャリパの適用を含めて、様々な先行技術方法が目印の物理測定を実行するために使用されている。しかし、かかる方法は、時間を浪費しエラーを起こしやすい。なぜならば、当該方法を、他のセグメント測定値に対して正しい空間関係で適用しなければならず、或る程度、ダウンスイング全体にわたって正確に追跡しなければならないからである。本例では、磁気運動捕捉システムの参照フィールド内部で動作する3Dタッチペンデジタイザを用いて、セグメントまたは関節に対して固定関係にある動作追跡システムのセンサの1つを参照して、身体計測用の目印を測定することによって、これらの潜在的な問題を克服する。
【0076】
タッチペンからの出力を、関連センサの局所座標系に関して運動捕捉システムにより直接記録する。競技者は、身体センサを取り付けられ、磁界内の適切な位置に立ち、その間に操作者が標識点に対してタッチペンの先端を動かすことによって競技者を測定する。本システムでは、競技者が特に前傾した場合を除いて測定するために、当該測定位置については、競技者の頭が立っており前方を見つめ、腕は下ろされているが夫々の手は脇から少し離れた位置にあり親指は前を向いて拳の中にあり、足は並行に離れている。タッチペンは、同様に磁界内でセンサに対して動作し、プロセッサは、様々なBSIPを計算するソフトウェア内部のテンプレートに対してタッチペンの点を関連付ける。競技者は当該プロセスを支援するために触診中もリラックスしたままであることが理想的であるが、競技者が測定中に動いても過度には影響を及ぼさない。なぜならば、センサがモデル全体の相対位置を追跡するからである。
【0077】
プロセスは幾つかの方法で促進される。当該システムは、システム・プロセッサにより制御される可聴通信手段を備える。当該手段は、操作者が精通している名前により一度に一回、測定すべき全ての目印を通って、目印を表示する。各ステップで、操作者がタッチペンの先端を標識に対して配置し、タッチペンのボタンを押す。これにより、位置がシステムにより記録され、システムが次の標識を可聴的に送信することがトリガされる。操作者は、指と手による観測と感触によりマーカの点を正確に識別するようにトレーニングされる。当該観測と感触を、しばしば、「触診」と称する。試験により、標識点をタッチペンで押下することによって軟組織の測定値を歪めないように特に注意が必要であることが示されている。これらの様々な手続きにより、高速な測定が促進され、エラーの可能性が最小化される。身体の片側の足、下腿、大腿、上腕、前腕、および手のセグメントの中央部の幾何測定値が自動的に反対側に適用されるように、競技者の身体の対称性を或る程度仮定するようにシステムを構成することによって、測定時間をさらに削減する。しかし、関節を定義する別々の目印を両側で測定して、関連するセンサが対応するセグメントの位置と方位を正確に追跡することを保証する。
【0078】
以下は、男性の競技者を測定するための本実施形態で用いる90個の解剖学的特徴点のリストであり、参照番号が、その位置の解剖学的説明の前の括弧において示されている。女性の競技者をより正確に測定するためには少々修正した版を用いる。この版は、胸のサイズを確立する追加の解剖学的特徴点を含む。(1)右足足の4本指、(2)右足中指、(3)右足中指、(4)右脚外果、(5)右脚後腓骨、(6)右脚中果、(7)右脚前距骨、(8)右脚横最大下腿、(9)右脚後最大下腿、(10)右脚中部最大下腿、(11)右脚前最大下腿、(12)右脚横大腿上顆、(13)右脚中部膝窩皺、(14)右脚中部大腿上顆、(15)右脚膝蓋骨中心、(16)右脚横中部大腿、(17)右脚後中部大腿、(18)右脚中部中部大腿、(19)右脚前中部大腿、(20)右脚大転子、(21)右脚後中部−鼠径部、(22)右脚前中部−鼠径部、(23)左足中指、(24)左脚外果、(25)左脚左中部果、(26)左脚横大腿上顆、(27)左脚中部大腿上顆、(28)左脚大転子、(29)臍孔、(30)右腸骨稜、(31)T12、(32)左腸骨稜、(33)RASIS(右前上方腸骨背骨)、(34)右RASIS、(35)右PSIS(後上方腸骨背骨)、(36)左PSIS、(37)左LASIS(左前上方腸骨背骨)、(38)LASIS、(39)ASIS(前上方腸骨背骨)中点、(40)胸骨切痕、(41)右肩峰突起、(42)T3、(43)左肩峰突起、(44)右後肩、(45)右腋窩、(46)右前肩、(47)中部胸骨、(48)T4、(49)右最大胸筋、(50)右最大横胸筋、(51)T6、(52)左最大横胸筋、(53)左最大胸筋、(54)左腋窩、(55)剣状突起(56)右下底肋骨、(57)T8、(58)左下底肋骨、(59)右腕三角筋付着部、(60)右腕中部上腕三頭筋、(61)右腕中部上腕筋、(62)右腕中部上腕二頭筋、(63)右腕横上腕上顆、(64)右腕肘頭、(65)右腕中部上腕上顆、(66)右腕上腕二頭筋付着部、(67)右腕横最大前腕、(68)右腕後最大前腕、(69)右腕中部最大前腕、(70)右腕前最大前腕、(71)右腕橈骨茎状突起、(72)右腕中部伸筋腱、(73)右腕尺骨茎状突起、(74)右腕中部屈筋腱、(75)右手第2指関節、(76)右手後第3指骨、(77)右手第5指関節、(78)右手前第3指骨、(79)左腕横上腕上顆、(80)左腕中部上腕上顆、(81)左腕橈骨茎状突起、(82)左腕尺骨茎状突起、(83)左手第2指関節、(84)左手第5指関節、(85)頭頂、(86)鼻梁、(87)右一時的下顎、(88)後頭粗面、(89)左一時的下顎。
【0079】
以下は、隣接セグメントの間の関節または境界にある目印がしばしば両方のセグメントにより共有される、目印のセグメント位置を示す。参照番号は、直前のパラグラフにおける括弧で示した参照番号を指す。右足1、2、3、右足首4、5、6、7、右下腿8、9、10、11、右膝12、13、14、15、右大腿16、17、18、19、20、21、22、左足23、左足首24、25、左下腿なし、左膝26、27、左大腿28、骨盤29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、中部胴体なし、上部胴体群40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、右上腕59、60、61、62、右肘63、64、65、66、右前腕67、68、69、70、右手首71、72、73、74、右手75、76、77、78、左上腕なし、左肘79、80、左前腕なし、左手首81、82、左手83、84、頭85、86、87、88、89。
【0080】
上中部胴体と腕センサは、競技者の身体付近のセンサを保持し位置づけるための縫い込み型のセンサ・ポケットおよび伸縮性Velcro(登録商標)ストラップを有する、特殊目的の調節可能で密着型のジャケットに取り付けられる。当該ジャケットは、空気循環を可能とし競技者の快適さを増すための網目材料から形成される。手のセンサは、手袋に取り付けられる。手袋も、縫い込み型のポケットおよび伸縮性Velcro(登録商標)保持ストラップを有する。脚センサは、伸縮性Velcro(登録商標)ストラップのポケットに取り付けられ、通常は、競技者が着用する軽量ズボンの外部に適合される。頭センサは、頭の移動に密接して追従する軽量の帽子に取り付けられる。センサの配線はジャケットの後部に向かい、その重みを支える。ここから配線が纏められて、中央データ収集手段へと目立たない吊り下げ式の臍帯タイプの配置できちんと尾を引くようになる。
【0081】
試験によれば、BSIPを計算するための方法により非常に満足できるレベルの精度がもたらされることが示されている。当該方法は相対的に高速で、信頼性が高く、便利であり、一般に1人の操作者が平均的な体格の人に対して全ての測定を約12分から15分で完了する。当該システムは、関節とクラブの運動捕捉に使用するのと同じ装置を使用するという点で、好都合であり費用効果的である。
【0082】
図6は、上述のように、BSIPをタッチペンで測定するための触診の例において必要なステップの幾つかを示す図を示す。略語MMCSとMOIはそれぞれ、「磁気運動捕捉システム」と「慣性モーメント」を指す。
【0083】
関節が2つの隣接セグメントの各々に設けた異なるセンサにより追跡される場合には、様々な定義された関節移動が生じたときに、関節を共有する2つのセグメントに関して固定されるように最も接近する点を求めるようにシステムをプログラミングすることによって、関節中心の位置を決定することができる。関節中心の最適な位置はこの点に対応する。簡単さのため、関節中心を見つけるための技術を「同心」技術と称する。定義された移動を選択して、ゴルフ・スイングに最も関連する特定の関節の可能な自由度を表すことができる。この決定の精度を、ゴルフ・スイングの限界内にあり、かつ、関節に対する皮膚の動きに起因するセンサの大幅なまたは過度の移動を引き起こさない規模で、快適に実行できる程度に大きく構成することによって、高めることができる。センサ位置を注意深く選択することによっても精度を高めることができる。例えば、センサを、下部の筋肉の活性化により妨害される可能性が低いセグメント面の領域に配置してもよい。例えば関節からの半径方向距離を増加させるようにセンサを配置し、センサ移動の影響を比例的に軽減することによって、精度をさらに高めることができる。前述のように、当該技術を単体で、または、幾何触診技術と組み合わせて使用して、関節中心を発見してもよい。
【0084】
臀部関節の場合には、関連センサは骨盤および大腿のセンサである。当該関節は、2つのセンサを用いた決定に特に適しており、3つの自由度で動作する真正球状関節に近い。定義された移動が腰の回転揺動を含んでもよい。膝関節の場合には、関連センサは上腿および下腿のセンサである。当該関節は真正球状関節としてはあまり正確には表されないので、当該方法を幾何触診技術と関連して使用してもよい。しかし、当該方法は、その主な屈曲移動および過屈曲移動が生じる面において関節中心の最良推定値をもたらす。
【0085】
関節が、第1のセグメントと称するその隣接セグメントの1つのセンサのみにより追跡される場合には、同心技術の変形を使用することもできる。当該事例では、競技者は、物理的に可能である限り、センサを有しない隣接セグメントと連鎖に沿った次のセグメントとの間の関節を意図的に固定し、当該次のセグメント上のセンサは固定された2つのセグメントの位置を一緒に追跡して、固定されたセグメントの対と上記第1のセグメントの間の関節が同心技術を受けるようにする。一般に、競技者は、競技者がセグメントを隣接させたままにし隣接する関節を互いに固定関係に固定することを容易にする、調べられている関節の特定の定義された移動を実行する。この変形は、本発明のさらなる態様を反映し、本明細書の他所で「固定同心」技術と称する。固定同心技術の特定の例を与える。ここでは、固定された手首関節を用いて肘関節の位置を発見し、固定された内方肩部関節を用いて外方肩部関節の位置を発見し、固定された外方肩部関節を用いて内方肩部関節の位置を発見する。
【0086】
関節セグメント・モデルに存在しない関節を固定することによって、固定同心技術を有利に使用して関節中心を決定することができる。例えば、本実施形態では、現実には首はモデルの首関節上方の背骨に沿った点で曲げることができるけれども、当該モデルは頭および上中部胴体の間の単一の首関節を含む。固定同心技術を使用して首関節の位置を決定する場合には、競技者は、定義された移動を実行するときに、関節上部の頭や解剖学的な首の部分を固定する。
【0087】
同心技術および固定同心技術を、本発明における幾つかの様々な方法で使用できることに留意されたい。例えば、同心技術および固定同心技術を使用して、競技者の解剖学的特徴点に対して一般に一回限りで関節中心を決定してもよく、その後に、特定の競技者の関連する目印を確立することによって関節中心を決定する。あるいは、同心技術および固定同心技術を直接使用して競技者の特定の関節中心を個別に決定することができる。
【0088】
BSIPを測定するためのサーフェス測定と深さカメラの使用
説明したタイプのタッチペン触診および幾何モデル化は一般にかなり便利でBSIPを決定する先行技術の方法よりかなり高い精度レベルを与えるが、本発明の別の態様は、競技者の身体の表面を実用的な方式でスキャンまたは測定するシステムを用いてさらに高い精度レベルを実現できるという洞察に関する。
【0089】
これを実現するための方法の第1の例は、タッチペン・センサのような磁気運動捕捉システムのセンサの1つを使用して、システム・ソフトウェア内部でセグメント面を生成し、次いでセグメント体積と体積分布をこれらの面から計算することである。操作者がセグメント面の有限個の関連する代表的な部分でタッチペンを迅速に実行し、その動作ボタンを押下して、一連のサーフェス点を測定し記録させることによって、面を生成する。セグメント面全体を正確な推定できるのに十分な点が記録されたとき、当該プロセスをプロセッサにより自動的に終了してもよい。操作者は、センサや他の分厚い衣服により遮られた面の部分を回避する。前述のように、操作者が、関節位置に関連付けられた解剖学的特徴点を測定する必要は残っている。
【0090】
競技者の身体の表面を、3Dまたは深さカメラ・システムで実用的に測定することもできる。これには、操作者のスキルをあまり必要とせず、装置を競技者と直接接触させるのが回避されるという追加の利点がある。試験によれば、3Dカメラ・システムは、セグメント形状や体積分布を決定する際の不正確さから生ずる、セグメントの慣性モーメントを決定する際の典型的な誤差を、前述のタッチペン触診と幾何モデル化を用いて測定する場合の約半分または3分の1に削減できることが示されている。
【0091】
3Dカメラ・システムは、構造化照明方式、飛行時間およびステレオ画像法を含む様々な公知な方法を使用して3D深さ情報を取得する。その3Dの深さを決定する能力により、対象を背景から分離する際に秀でたものとなる。3Dカメラは、画像処理、人体の関節セグメント・モデルの抽出および関節セグメント・モデルの動作追跡が可能な組込みソフトウェアを備えてもよい。この種の組込みソフトウェアを有するシステムは、以降で「高度3Dカメラ」と称するが、コンピュータ・ベースのゲームで広く使用されており、コンパクトで相対的に安価である。人間の標準的な関節セグメント・モデルは一般に20個の関節を含む。以下の例では、高度3Dカメラという用語は、3Dカメラ・システムの固有な部分ではないプロセッサで動作するソフトウェアを含む、結合モデルを抽出または追跡する任意のソフトウェアで動作する3Dカメラの組合せを指すと理解されるものとする。
【0092】
3Dカメラのような実用的なスキャン装置を用いたBSIPの測定には、前述のタッチペン触診方法に対して幾つかの潜在的な相対的な利点がある。これらのうち最も重要なものは、より高い精度と一貫性の可能性である。他の利点には、非常に短い時間とそれによるユーザ利便性の増大と試験費用の削減の可能性と、あまりスキルのない操作者を利用する可能性が含まれる。さらなる利点は、競技者と操作者の間の物理的な接触が回避される可能性に関する。3Dカメラのような装置を用いたBSIPの測定には潜在的な欠点もある。これらには、追加の装置のコストと複雑度、3Dカメラ・システムを開発し統合する際に必要なコストと時間、競技者がプロセスの一部において最小限の衣服を着用する必要があるという不快さがある。
【0093】
競技者の身体の表面を測定する実用的なシステムの第2の例では、3Dカメラ(3DC)を使用してセグメント形状に関連するパラメータを測定し、磁気運動捕捉システム(MMCS)と触診技術を使用して関節中心に関連するパラメータを測定し、2つのシステムが様々な時点または様々な位置にありうる段階で使用される。本例の変形では、3DCは高度3DCである。他種の運動捕捉システムおよび関節決定手続きを使用してもよい。
【0094】
セグメント形状に関連するパラメータを測定する段階では、競技者は最小限の衣服を着用して3DCの領域に立ち、関連する姿勢または動きを実行する。3DCまたは3DCとシステム・プロセッサの組合せにより競技者のセグメントの表面の可視部分を測定する。
【0095】
関節中心に関連するパラメータを測定する段階では、競技者は複数のセグメントにセンサを取り付けてMMCSの領域に立つ。操作者が競技者をセンサのタッチペンで触診し、システムが本明細書で一般的に前述したように関節中心を決定する。システム・プロセッサが、逆動力学計算に関連する形式で競技者のモデルの基礎を関節中心の位置から構成する。当該モデルはセグメント参照フレームを含む。本明細書にわたってプロセッサにより実行される動作に関する言及には、プロセッサ上で動作する従来式のソフトウェアにより実行される動作が含まれる。
【0096】
プロセッサは、セグメント形状に関連する情報を取得し、構築された形状を競技者の部分モデルに適合させる。これを様々な方法で実行してもよい。例えば、セグメント端を、結合されたセグメント連鎖における位置に関して、構築されたセグメント形状から決定してもよく、構築されたセグメント形状の関節中心はセグメント端に配置されていると仮定される。これにより、構築されたセグメント形状を部分モデルの関節中心にマッチさせることができる。あるいは、セグメント形状を、当該部分モデルにおいて構築された潜在的なセグメント形状範囲またはテンプレートにマッチさせてもよい。さらに代替的な例では、関節中心を、高度3Dカメラの関節決定能力を用いてセグメント形状に対して決定してもよい。当該能力には、画像処理、人体の関節セグメント・モデルの抽出および関節セグメント・モデルの動作追跡が可能な組込みソフトウェアが含まれる。次に、セグメント形状の関節中心を部分モデルの関節中心にマッチさせる。さらに代替的な例において、関節中心を、他所で説明するように、決定されたセグメントに対して同心技術または固定同心技術を用いて決定し、部分モデルの関節中心にマッチさせる。同心技術では、関節の移動が生じたときに、当該位置が2つの隣接セグメントに対して固定された点に最も近い点として決定される。固定同心技術では、関節の移動が生じ競技者が意図的に2つのセグメントの組合せの間の関節を固定したときに、当該位置を第1のセグメントおよび2つのセグメントの組合せに対して固定された点に最も近い点として決定する。ここで、当該位置は、隣接する第1のセグメントと隣接する2つのセグメントの組合せに共通である。
【0097】
各セグメント形状を関連セグメントの参照フレームまたは部分モデルの1組の関節中心に適合させるとき、プロセッサは関連密度をセグメントに適用して、関連する慣性モーメントを含めて競技者のBSIPを計算する。これらの密度値は、本明細書で前述したものと同一または同様であってもよい。
【0098】
通常、セグメント形状が光深度測定により決定される場合は、特定のセグメントの組合せをグループ化することがより都合が良い。具体的には、骨盤、中部胴体、上中部胴体および左および右上部胴体セグメントを含む幾分恣意的な胴体セグメントを、単一の結合セグメントとして測定し決定してもよい。なぜならば、複雑な形状は、恣意的であり測定または決定が相対的に困難であるコンポーネント・セグメントの間の概念的境界と対照的に、光深度決定により測定および決定が相対的に容易であるからである。直立対称位置、前傾位置、またはボール・アドレス位置にある結合された胴体セグメントを別々に測定し決定してもよい。部分モデルの外方肩部および臀部関節が既知であるときには、当該結合された胴体セグメントを相対的に容易に部分モデルに適合させることができる。
【0099】
これらの計算されたBSIPを他のスイング試験で使用してもよいが、同一な特性のセンサを競技者の身体の同一位置で発見できることを保証する手段が見つからない限り、スイング試験をMMCSで実行する度に関節中心の決定を繰り返す必要が通常は残っている。競技者がセグメントにわたる全体重と質量分布を大幅に変更しない限り、BSIPの詳細をスイング試験にわたって繰り返し使用してもよい。BSIPの詳細の変化のチェックを、競技者が従来型の測定基準を用いて全体重を変更したかどうかをチェックすることによって容易に行ってもよい。
【0100】
競技者の全体重と全ての競技者のセグメントの計算された質量の合計との比較に基づいて、全てのセグメントのBSIPを適切に調節することによって、BSIPの各主要測定で精度を改善してもよい。競技者の質量は、計算されたセグメントの質量に関して計算ソフトウェア内部で行った正確な測定基準および調節により容易に決定される。これらの改善を、競技者に対する最小限の不都合さで実現することができる。
【0101】
第1の段階では、3Dまたは高度3Dカメラを考慮して競技者を測定する。運動捕捉システムは使用されず、センサは競技者には配置されない。競技者は、最小限の衣服を着用し、着用する衣服は密着型である。必要ならば、競技者は密着型の帽子またはネットを着用して髪を頭付近に保つ。競技者は、スイング試験で使用されるもののと同一または同様な靴を着用する。競技者にプライバシと快適さを与えるために、この第1の段階を別の離れた空間で行ってもよい。指示により、競技者は、セグメントの形状と関節の位置を示すために選択される一連の姿勢と動きを実行する。具体的には、当該一連の姿勢と動きには、良く離れた脚と差し出した腕による姿勢を含めた、セグメント関節の咬合をクリアな高度3Dカメラ・ビューに公開する姿勢と動きが含まれる。当該一連の姿勢と動きには、競技者にとって実用的で、好都合で、快適である程度に端に近い位置を含めて、通常範囲の変位にわたる関節による姿勢が含まれる。この姿勢と動きには、前、後、側面のビューを表示するものが含まれる。この姿勢と動きには、また、バックスイングのトップに対応するもののような競技者の直立位置、および、インパクトに向かう位置に対応するもののような競技者の前傾位置に関連する姿勢と動きが含まれる。命令を操作者により与えてもよく、システムにより自動的に与えてもよく、または、ディスプレイ画面もしくは競技者による命令文書から読み出してもよい。
【0102】
本例での本方法の重要な利点は、このように3DC段階とMMCS段階を分離することから得られ、競技者は3Dプロセスにおいて最小限の衣服を着用するだけでよく、当該プロセスを、相対的なプライバシを有する主要試験領域から実行することができ、競技者は実際のスイング試験中において、より普通な衣服を着用することができる。3D段階での衣服を最小化することで、セグメント形状測定の潜在的な精度が高まる。
【0103】
図7は、上述のように、3Dカメラまたは高度3Dカメラを用いてBSIPを測定するためのシステムで必要な主要ステップの幾つかを示す図を示す。本例では、構築されたセグメント形状をセグメント参照フレームに適合させる。略語3DC、MMCSおよびBSIPはそれぞれ、「3Dカメラ」、「磁気運動捕捉システム」および「身体セグメント慣性パラメータ」を示す。
【0104】
競技者の身体の表面を測定する実用的なシステムの第3の例では、3Dカメラ(3DC)を再度使用して、第2の例で説明したのと同様な方法でセグメント形状に関連するパラメータを測定する。しかし、当該事例では、関節中心に関連するパラメータを、触診技術に対するリソースなしに測定し、3DCおよびMMCSを使用する。これにより、競技者を測定するのに必要な時間が減り、操作者に必要なスキル・レベルが低下するという追加の利点がある。また、個々の操作者のスキルの影響を減らすことによって、結果の一貫性も高まる。
【0105】
競技者は、複数のセグメントにセンサを取り付けたMMCSの領域に立って、姿勢と動きのルーチンを実行する。プロセッサは、セグメントのセンサの位置に対する、関節中心の位置に関連するパラメータをこれらの姿勢と動きから決定する。プロセッサはこれらのパラメータを、それに利用可能な他の情報とともに使用して、改善された関節中心の推定値を決定する。関節中心を決定するとき、プロセッサは本明細書の他所で説明したものに関連する様々な特定の技術を使用する。例えば、センサを取り付けた2つのセグメント間に関節が位置する場合には、関節中心は、同心技術と等価な技術により発見され、原則として2つのセンサに対して最小の移動を表す点として決定される。
【0106】
関節中心を決定する際にプロセッサが利用できる他の情報には、位置対称情報、関節中心の既知の関係情報、および既知の平均的な人間の形状に関する位置情報が含まれる。位置対称情報では、競技者が安定的な直立位置に立つときに、左足首、右足首、膝、腰、内方肩部、外方肩部、肘、および手首関節が、競技者と交差する垂直矢状面に関して対称であると仮定する。また、腰部、胸部および首関節が当該矢状面上に位置すると仮定する。位置対称では、左下腿、右下腿、大腿、上腕、および前腕の関節中心の間の等距離を仮定する。また、左臀部および右臀部から腰部までの間の関節中心、胸部から内方肩部までの間の関節中心、および内方肩部から外方肩部までの間の関節中心が等距離にあると仮定する。関節中心の間の既知の関係情報には、例えば、左臀部関節と右臀部関節の距離が人間の身体の全ての位置に対して実質的に一定のままであるという仮定が含まれる。他の方法により決定された個々の腰位置を、移動範囲にわたって腰の間の一定距離を最良に満たす位置を決定することによって、変更し改良してもよい。平均的な人間の形状に関する位置情報を主に使用して、内方肩部と外方肩部関節の形状のような、情報の測定がより困難であるギャップを埋める。例えば、同心技術または固定同心技術と等価な技術により決定されるような、高精度で決定できる関節間の長さに拡大縮小することによって、平均値を競技者モデルに適切に拡大縮小する。
【0107】
関節中心を決定する際にプロセッサが利用できる他の情報に、3DCから取得される関節中心の推定値を含めてもよい。この場合、3DCとは高度3DCである。かかる推定値を使用する場合には、3DCの領域で競技者により実行される姿勢と動きをさらに選択して関節の位置を示す。これらは、競技者にとって実用的で、好都合で、快適である程度に端に近い位置を含めて、通常範囲の変位にわたる関節による姿勢と動きを含む。これらには、良く離れた脚と差し出した腕による姿勢を含めた、セグメント関節の咬合をクリアな高度3Dカメラ・ビューに公開する姿勢と動きが含まれる。
【0108】
プロセッサ・ソフトウェア内部のアルゴリズムまたは1組のアルゴリズムは、全ての関節中心モデルを決定するときに、かかる利用可能な情報の全てを考慮する。適切な重み付けをその期待される精度レベルに関連する情報項目に適用する。例えば、3DCにより決定される膝および臀部の関節中心は、MMCSにより決定される膝および臀部の関節中心よりも低い重み付けを有する。第1の例と同様に、プロセッサは3DCおよびMMCSから取得したこれらの様々なデータを効果的に使用して、個々のセグメント参照フレームを決定されたセグメント形状と適合させた競技者のモデルを構築する。プロセッサは同様に、関連密度をセグメントに適用して、関連慣性モーメントを含む競技者のBSIPを計算する。
【0109】
図8は、競技者の身体の表面を測定するための手段が使用される、BSIPを測定するためのシステムの第3の例において必要なステップの幾つかを示す図を示す。本図では、
図6で用いたのと同様な略語を使用する。
【0110】
競技者の身体の表面を測定する実用的なシステムの第4の例では、第3の例で説明したのと同様に、3DカメラとMMCSを再度使用して、セグメント形状および関節中心に関連するパラメータを測定するが、当該事例では、3DカメラとMMCSの領域は共通位置を占有し、測定を同時に行うことができる。これにより、別々の3Dカメラ段階が必要でないという潜在的な利点がもたらされ、競技者と操作者に対する測定時間とコストを削減することができる。
【0111】
競技者は、複数のセグメントにセンサを取り付けた3Dカメラの領域とMMCSの領域に当時に立って、姿勢と動きのルーチンを実行する。プロセッサは、3DカメラとMMCSの参照フレームを整列させる。3Dカメラは、第2の例と第3の例で説明したのと同様にセグメント形状を決定する。プロセッサは、MMCSからの情報を含む全ての利用可能な情報を使用して、第3の例で説明したのと同様に関節中心を決定する。
【0112】
第2の例および第3の例と同様に、プロセッサは3DCとMMCSから取得したこれらの様々なデータを使用して、決定された関節中心を有し、個々のセグメント参照フレームを決定されたセグメント形状と適合させた、競技者のモデルを構築する。プロセッサは関連密度をセグメントに適用して関連慣性モーメントを含む競技者のBSIPを計算する。
【0113】
競技者に都合が良く快適である衣服の着用に関して妥協を行い、密着型で最小限の衣服を着用することによって、競技者の外観とサーフェスの深さのの歪みを最小化する。ジャケットの代わりに開放型の身体ベルトを使用して、MMCSセンサをサポートしてもよい。センサ、センサのサポート、センサの配線を許可または無視するようにシステム・ソフトウェアを配置してもよい。例えば、システム・ソフトウェアにより認識され適切に処理されるように、これらのコンポーネントを色付けしてもよい。システム・ソフトウェアは、衣服の厚みの許容度を所定の調整因子に基づいて推定するアルゴリズムを備える。
【0114】
図9は、競技者のセグメントの表面を測定するための手段が使用される、BSIPを測定するためのシステムの第4の例で必要なステップの幾つかを示す図を示す。本図では
図6で使用したのと同様な略語を使用する。
【0115】
競技者の身体の表面を測定する実用的なシステムの第5の例では、3Dカメラを磁気運動捕捉システムと関連して使用する。当該3Dカメラは、運動捕捉システム内部の磁界内で追跡されるセンサに対して固定関係で取り付けられる。これを、例えばシステムタッチペン・センサを3Dカメラに取り付けることによって構成してもよい。3Dカメラと取り付けたセンサとを使用して、競技者のセグメントの形状を測定する。
【0116】
第1の例と同様に、本方法には、セグメント形状を取得するために必要な特定の姿勢と動きを競技者が実行することに依存せずに、操作者が競技者をハンドヘルド装置でスキャンできるという潜在的な利点がある。カメラと取り付けたセンサとは、競技者の身体セグメントセンサと同じ磁界で追跡されるので、競技者がスキャンされているときに動いたかどうかは関係ない。この種の身体スキャンを一般に、1、2分未満で実行することができる。
【0117】
関節中心位置を、MMCSの磁界に対して、任意の適切な方法で測定してもよい。当該方法には、前述の例のうち任意の1つで説明したものまたはタッチペン触診方法を用いて前述したものが含まれる。関節中心位置を、センサに取り付けた3DCを用いて決定してもよく、または、当該方法と別の方法の組合せにより決定してもよい。
【0118】
以前の3つの例と同様に、プロセッサは3DカメラとMMCSから取得したこれらの様々なデータを効果的に使用して、決定された関節中心を有し、個々のセグメント参照フレームを決定されたセグメント形状と適合させた競技者のモデルを構築する。ここでも、プロセッサは関連密度をセグメントに適用して、関連慣性モーメントを含む競技者のBSIPを計算する。
【0119】
図10は、競技者の身体の表面を測定するための手段が使用される、BSIPを測定するためのシステムの第5の例で必要なステップの幾つかを示す図を示す。本図では
図6で使用したのと同様な略図を使用する。
【0120】
システムの具体的な要件に応じて、上述の5つの例からの要素の組合せを有利に使用してもよい。当該例で説明した方法を、高速カメラ・システムを含む、スイングの運動学的情報を取得するための主要な手段として使用される他種の運動捕捉システムに適用してもよい。
【0121】
装置および方法のさらなる詳細
逆動力学計算または同様な技術を上手く適用する際のさらなる問題は、ダウンスイングまたはスイングにわたって、競技者の移動およびBSIPに関してGRFが適用される点を正確に特定することにある。この特定は非常に重要である。なぜならば、当該特定における非常に小さな誤差でも、計算の精度に大きな影響を及ぼしうるからである。本例では、タッチペンを用いてシステムの参照フレームに関する力プレートの位置をさらに参照し、これらの関連測定の全てに対して高度に正確かつ統一された参照システムを使用することによって、この問題を克服する。力プレートが、タッチペンの動作と干渉するであろう金属を含む場合には、可動性で非金属の剛性較正器具を、力プレートの上の正確な位置に配置する。当該較正器具は、タッチペンが力プレート金属からの干渉なしに特定できる程度に十分な力プレート面上の距離にある標識点を含む。力プレートを参照して読取値を取得するときには、当該器具は外される。
【0122】
測定システムの別の潜在的な問題は、一般に利用可能なタイプのアクティブ・センサをクラブ・ヘッドまたはその付近に取り付けるという非実用性に関する。この非実用性は以下の理由で生ずる。当該センサは、クラブ・ヘッドの自然な移動と干渉する可能性が高く、インパクト時に故障するか除去される可能性が高く、センサ動作がクラブ・ヘッド内の金属からの干渉に直面する可能性が高い。これらにより、クラブ・ヘッドのセンサを用いてテイクアウェイとインパクトの瞬間を検出することが妨げられる。この問題は、以下の手段により現在の配置で克服される。クラブ・ヘッドの接触面の位置が、既述のようにタッチペンを用いてクラブ・シャフトに取り付けたセンサに関して登録される。これにより、クラブ面の位置を監視することができる。この場合、クラブ面とクラブ・シャフトの相対位置は、テイクアウェイのケースのように、不変のままである。したがって、テイクアウェイの時刻が、クラブ面がボールの領域から離れバックスイング移動へと続く時刻として決定される。しかし、この方法を使用してインパクト時刻を決定することはできない。その理由は、高速ダウンスイング中に作用する力からクラブ・シャフトとクラブ・ヘッドの間で大幅な相対移動が生ずるということと、運動捕捉システムのスキャン速度がインパクト時の高速なクラブ・ヘッドを正確に捕捉するには不十分であるということである。その代わり、ボールを打つクラブの音を別々に検出する、1つまたは2つの戦略的に配置したマイクロフォンを用いてインパクト時刻を決定する。マイクロフォン検出は運動学的測定と同期され、音速が許容される。2つのマイクロフォンを使用する場合には、第1のマイクロフォンでの検出と第2のマイクロフォンでの検出の時間差を使用して、インパクト領域で生じなかった検出音を取り除く。代替的な方法では、システム・センサまたは力プレートを使用してインパクト事象を検出し、衝撃波がクラブに沿って競技者の身体を通って力プレート・センサに伝播する短時間の遅延を許容する。クラブ・シャフト上のセンサを単体で使用してこの情報を正確に取得することはできない。なぜならば、そのスキャン速度があまりに低速であるからである。しかし、当該センサを使用して、力プレートの記録データ上で衝撃波を検出できる時間範囲を示すことはできる。力プレートのスキャン速度を上げて検出精度を高めることができる。通常、力プレートのスキャン速度をペナルティなしに上げることができる。なぜならば、力プレートは一般に、配線により検出されるアナログ信号を生成するからである。
【0123】
先行技術では、通常、運動捕捉システムと力プレートのセンサからの信号をを平滑化してランダムな信号雑音を削減する。一般に、平滑化はデジタル・フィルタを用いて実行される。一般的に使用されるけれども、移動平均フィルタのような単純なデジタル・フィルタは、信号の関連特徴の一部を除去してしまう傾向がある。バターワースロー・パスフィルタのようなより高度なデジタル・フィルタが高レベルのアプリケーションで頻繁に使用される。なぜならば、当該フィルタは信号特性をより良く保存するからである。本発明の1態様では、ゴルフ・スイングのような高加速動作およびインパクト事象で生じるような突発的な速度変化を含む特定の移動において逆動力学で使用されるような計算技術にフィルタリング信号を使用するときに、これらの先行技術のデジタル・フィルタのうち最良のものでも良く動作しないことを認識する。バターワース・タイプのフィルタは信号の周波数内容を隔離できるが、これらの成分が時間において生ずる時点を区別することはできない。当該フィルタはまた、インパクトにより生成されるものを含めて、より高い周波数の過渡信号を広げ、減衰させる傾向にある。当該フィルタはまた、様々な身体セグメントを追跡するセンサからの入力信号のような、或る範囲の信号を自動的にフィルタするときに問題を生じさせるおそれがある。なぜならば、当該フィルタは異なる最適周波数要件を有する傾向にあるからである。これは、かかるフィルタが通常は最適カットオフ周波数の選択により限定されることに起因する。なぜならば、異なるセンサからの信号は通常は異なる最適なカットオフ値を有し、同一のロー・パス・フィルタが一般に全ての運動捕捉センサまたは全ての力プレート・センサに使用されるからである。雑音ある位置データから取得された加速度に対する依存性のため、フィルタリングは逆動力学計算においては特に重要である。加速度は、位置データを時間に対して2回微分することにより得られ、信号内のランダムな誤差または雑音を拡大させ、大幅な誤差を計算にもたらす。さらに、逆動力学計算をセグメントの連鎖にわたって実行する際に、かかる誤差が蓄積される傾向がある。別の問題領域はインパクト事象に関する。当該事象周りの突発的で急激な速度変化と加速度変化により、位置信号の有意な差によっては時間導関数を取得することができない。なぜならば、データ収集速度がインパクト付近のクラブの速度に対して遅いからである。インパクト前データ単体を考慮する場合に、あまりに多くの時間微分データ点がインパクト前に失われるので、補間により上記問題を満足に解決することができない。インパクト前データとインパクト後データを、平滑化フィルタに提供されるデータに含める場合には、通常、インパクトにより生ずる真の加速度とデータ内の雑音により生ずる偽の加速度を区別することができず、一般にデータを過度に平滑化することとなる。
【0124】
先行技術におけるこれらの問題を様々な技術により克服する。かかる技術の1つは、信号の周波数内容を局所化できるフィルタを開発し使用することである。これを、ウェーブレット変換またはフーリエ変化のような変換手段によって雑音データを周波数領域に変換するフィルタにより実現することができる。別のかかる技術は、特定の身体セグメントの測定または特定の力プレート出力に関連付けられた各センサに、最適な性能を提供するように適切かつ個別に修正されたフィルタを提供することである。さらに別のかかる技術は、最終微分に先立つパラメータから雑音をフィルタするか除去することによってデータの微分に関連する問題を軽減することである。したがって、フィルタされた位置データを2回微分することによって加速度が得られる従来型の方法と対照的に、元のフィルタされていない位置データから取得されたフィルタされた速度データから加速度が得られる。
【0125】
これらの技術を
図11に示す。
図11は、フィルタされていない変位信号をフィルタされた加速信号に変換する必要なステップを示す略ブロック図を示す。
【0126】
本例では、ウェーブレットを使用して信号をフィルタする。信号の形状を様々なウェーブレットに分解し、閾値化して雑音を除去し、フィルタされた時系列信号に再変換する。システムは、本発明の装置で行われるように、信号周波数が変化するセンサからの様々な信号を用いて自動で動作するのに適している。
【0127】
最適なウェーブレット関数、または母ウェーブレットを選択して、信号の周波数内容の最良特性を取得するように特定のアプリケーションを適合させることが重要である。これは、様々なウェーブレットを試験(traialling)し、相互補正または自動補正方法を用いて補正係数を最大化するものを発見することによって行われる。当該方法は、どの程度母ウェーブレットがデータに良好に適合するか、即ち、どの程度母ウェーブレットが信号に類似するかに対してその規模が関連する係数を生成する。試験によれば、様々なセグメント移動を測定するセンサが通常は様々な最適な母ウェーブレットを有することが示されている。
【0128】
信号のウェーブレット表現を、近似値と詳細値に分けることによって分解する。当該近似値は信号の大規模な低周波数成分であり、当該詳細値は小規模の高周波数成分である。もとの信号は、2つの補完フィルタを通り、2つの信号、即ち、近似値と詳細値として発生する。当該分解プロセスは、当該信号が多数の低解像度成分に分解されるように、反復され、後続の近似値が分解される。この分解プロセスを最適化することが重要である。ウェーブレット・フィルタリング・プロセスの最中に、信号が先ずダイアデック(dyadic)長にトリミングまたはパディングされる。当該長さは2を何乗かしたものである。分解段階では信号を最大でJ−1のスケールに分解する。ここで、Jは指数であり、したがって、ダイアデック長1024の信号に対しては、信号を分解できる最大スケールはJ−1=10−1=9である。選択したウェーブレット・フィルタリング・プロセスは常に信号を最大スケールに分解し、閾値化を全てのレベルに適用できるようにする。
【0129】
次いで、分解された信号に対して強閾値化技術を行う。この場合、各分解レベルでのウェーブレット係数の振幅の標準偏差の倍数に設定した閾値に対して有意でない係数を排除することによって、雑音が除去される。これを、多数の信号にわたる経験的な観察と判定を用いて最適値を選択することによって実現する。
【0130】
変換依存性を平均化することによってデータの特異点付近に生じうるアーチファクトを抑制する際に、雑音の変換不変除去が有用であることも分かっている。最後に、フィルタされたウェーブレット信号を時系列信号に逆変換する。母ウェーブレット選択、分解、および閾値化プロセスを特定のセンサ・タイプごとに最適化するときには、これらの最適化されたパラメータを全ての別のアプリケーションで使用する。
【0131】
フィルタされた加速度および速度の出力を生の位置信号から取得するために、最終微分に先立つ変数に対してフィルタリングを実行する。したがって、実際、加速度が必要な場合には、変位ではなく速度をフィルタする。この解決策は、ゴルフ・スイングの磁気運動捕捉からの信号の試験により確立されたものである。この場合、変位と速度のフィルタリングの全ての組合せが試験されている。速度信号のフィルタリング単体で最適な結果が与えられることが分かっている。この結果が他種の運動捕捉システムからの信号に適用されるかどうかは不明である。
【0132】
図12は、これらの技術を使用して信号をフィルタする場合に必要なステップの幾つかを示す図を示す。
【0133】
前述のように、別の問題は、クラブ・ヘッドがボールに衝突するときに生ずる突発的な変化に関する。クラブ・ヘッドは、運動捕捉システムのスキャン速度よりもかなり短い期間で急激に減速し、インパクト事象を通じた加速データに不連続性をもたらす。上述の改善されたフィルタリング・システムを使用するときでも、これにより、インパクト直前直後の幾つかのスキャン期間に対して、時間に関する正確な2回微分が妨げられる。例えば、240Hzのスキャン速度と50m/sのクラブ・ヘッド速度でのインパクト前に4つのスキャン期間が失われると、約4.2msの間データが失われることとなる。その間、クラブ・ヘッドは、当該速度が継続する場合には200mmだけ移動するはずである。同様だがより少ないデータ紛失がインパクト後に生ずるはずである。このステップの変化が正しく考慮されずデータがインパクトを通じてフィルタまたは平滑化される場合には、雑音エラーが位置データから満足できるほどに除去された場合でも、インパクト周囲でデータの大幅な歪みが生ずる。変化するクラブ・ヘッドまたは速度プロフィールを決定する際の問題は、以下のように本発明で克服される。クラブ・ヘッドとボールの結合運動量が一定のままであり、クラブ・ヘッドとボールの質量が既知であるかまたは容易に決定できるので、ボール速度はインパクト後に測定され、クラブ・ヘッド速度のステップ変化を決定するために使用される。このステップ変化が、例えば、典型的なインパクト期間にわたって安定的な加速度で生ずると仮定してもよい。当該期間は約0.45msであることが分かっている。このステップ変化の知識を次に使用して、インパクトに近づくクラブ・ヘッドの速度を、インパクト中およびインパクト後に調節し、インパクト事象を介したクラブ・ヘッド速度の改善された構築を提供し、当該知識を使用して、インパクトまでの速度の最良推定測定値をインパクト前データから繋ぎ合わせて成形し、インパクト後データを用いてインパクト直後の速度の最良推定測定値を繋ぎ合わせて成形する。クラブ・ヘッド速度曲線を、インパクトまでフィルタし計算し、インパクト後からインパクトまで遡って計算し、インパクト時のクラブ・ヘッド速度の計算されたステップ変化を許容するように調節することが理想的である。当該計算に必要な情報はシステムに負荷を殆どまたは全くかけない。なぜならば、クラブ・ヘッドの質量は何れにしても一般的な逆動力学計算に対して既知でなければならず、ボールの質量は殆ど変化せず、大抵の試験ではボール速度をスイングの一般的評価として測定するからである。
【0134】
図13は、これらの技術を使用してインパクト事象を通じてクラブ・ヘッドの速度プロフィールの決定を改善する場合に必要なステップの幾つかを示す図を示す。
【0135】
品質保証
複雑な運動学的情報とGRFを時間制約のもとで測定するとき、または、多数の試験を処理しなければならない場合には、構成エラーが検出されないままで、コスト含有、および競技者に対する不都合さと苛立ちを伴う、台無しな試験が生じるおそれがある。本例では、これらの問題を、以下で説明するものを含めて様々な監視チェックまたは技術により最小化する。
【0136】
初期監視のチェックまたは技術では、身体計測用の目印またはサーフェス輪郭を測定し記録するにつれて、システム・ソフトウェアが競技者とクラブのモデルを操作者に対して即座に可視となるスクリーン上に徐々に構築するような配置構成が必要である。この可視モデルは、不正確な目印の測定またはセンサの不用意な移動のようなエラーを生じさせた競技者の移動を再現して、可視モデルにおいて自明な歪みを生成する。これにより、任意のかかるエラーを操作者に警告し、障害を早期に補正することができる。
【0137】
当該モデルに対して、システム・プロセッサによる自動チェックを有利に行ってもよい。競技者のBSIPを測定するときかつスイング試験が開始する前に、様々なチェックを自動的に実行することができる。かかるチェックの1つでは、下腿、大腿、上腕、および前腕の各々の左セグメントと右セグメントの間で、関節の間の計算された長さの対称性を比較する。別のかかるチェックでは、外方肩部回転関節、胸部関節、腰部関節、および臀部関節の間の線の中点を含む、競技者の背骨に関する点の配置を比較する。この背骨関連のチェックを、例えば、これらの点の1次多項式曲線からの偏差を測定することによって行ってもよい。さらなるチェックでは、重み付け基準で決定した重みとBSIP測定および計算から決定した重みの差異を比較して、衣服と靴の重みを当然なものとして見込む。
【0138】
スイング試験が進行中である間に、追加のチェックを自動的に実行することができる。かかるチェックの1つでは、計算された関節中心を監視する。この場合、前述のように、当該関節中心を、複数のセンサで関節を追跡することによって決定することができる。当該チェックを腰関節と膝関節に適用するのが最も有効である。別のかかるチェックでは、外方肩部回転関節、胸部関節、腰部関節、および臀部関節の間の線の中点を含む、競技者の背骨に関する点の配置を監視する。前述の初期背骨関連チェックと同様に、当該監視を、例えばこれらの点の1次多項式曲線からの偏差を測定することによって行ってもよい。
【0139】
少なくとも1つのスイング試験が完了し1組の逆動力学計算が実行されるまで実行できない幾つかの有利な自動チェックがある。この種の重要なチェックは、近位から遠位へのトルクおよび遠位から近位へのトルクの計算と、胸部関節および腰部関節のような、有意な計算が両方向に実行される関節でのパワーとの比較である。値のミスマッチが生じた場合には、これにより、センサの故障もしくは誤って配線されたセンサのような装置のエラー、または、身体の解剖学的特徴点またはセグメント面の測定におけるエラーを警告することができる。別のかかるチェックには、スイングを通じた総セグメント・エネルギの変化率と総結合関節パワーの変化率の比較がある。このチェックでは、クラブはセグメントとして扱われ、エネルギは運動エネルギと位置エネルギを含む。
【0140】
プロセッサは、これらの自動チェック結果に対して様々に応答してもよい。例えば、各チェックを2つの設定可能閾値レベルと関連付けてもよい。第1の閾値により、システム操作者に対する警告をトリガして、システムでのチェックを促してもよい。第2の閾値により、より深刻な警告をトリガして、問題が解決するまで試験の継続を妨げてもよい。当該システムは、かかる警告の全ての記録またはログを維持する。当該記録またはログは、システムとその動作の全部チェックとして有用である。
【0141】
一般的な進歩性の態様と利点
以上の段落で説明した本発明の様々な態様は、ゴルフ・スイングにおけるエネルギ生成と伝達を、逆動力学のような計算技術を用いて正確、実用的、かつ有用に測定できるという全く進歩的な洞察に関する。、有意な科学的分析において非常に大きな商用的利点に関する明らかな可能性があった先行技術ではこの実施に完全に失敗している。
【0142】
先行技術において進歩を妨げた多数の障害物を本発明により同時に克服して、好結果を達成する。当該結果には、関節でのエネルギ生成と、接続されたセグメント連鎖に沿った関節にわたるエネルギ伝達とに適切に着目し、それとともにスイングのダウンスイング部分に着目することが含まれる。また、当該結果には、ゴルフのダウンスイングで生ずる通常は高い加速度に関連した問題を認識し処理して、高加速度要素を有さない人間の動きを従来は必要とした高い精度でBSIPを計算することが含まれる。当該結果には、可動性の質量中心を有する腰部、胸部、内方肩部、外方肩部およびグリップ位置、および中部胴体セグメントにある、大幅に改善された関節で新たな関節セグメント・モデルを開発することが含まれる。さらに、当該結果には、地盤反力と腕の閉ループから生ずる不確定性に関連するパラメータを正確に測定することが含まれる。さらに、当該結果には、フィルタリング・システムおよびインパクト事象周囲のデータを測定し処理するための改善されたシステムの開発を含めて、本質的な加速度データを決定する改善された方法の開発が含まれる。
【0143】
これらの障害物を克服することで、真に実用的である有意な分析をもたらす非常に正確なシステムが得られ、したがって、非常に高い商用的価値がある可能性がある。当該システムでは、パラメータを人間により調節または操作せずに分析を完了することができ、高度な熟練者を必要とせずに完全に動作可能であるシステムを含む。結果のシステムを自動的にまたはほぼ自動的に動作させることもできる。幾つかのシステムの変形も、異なる場所での転送準備と構築に適している。
【0144】
結果のシステムはまた、過去の測定または分析から取得した運動学的データまたは運動データからの支援なしの使用に適している。測定は、競技者に好都合な高速かつ効率的な方式で実行される。測定と分析はまた、低単位コストで実行され、専門家や技術者を含めて、操作者の関与を殆ど必要とせずに実行される。
【0145】
さらに、結果のシステムは、良いプレイと悪いプレイの要素を調査し隔離するのに適している。当該要素を、専門家のレベルから大きなハンドキャップのスキル・レベルまでを含めて、ゴルフ・コーチングおよびトレーニングのシステムを開発し実行する際に使用することができる。結果のシステムはまた、エネルギ生成およびエネルギ伝達のパラメータを含む運動学的パラメータおよび運動パラメータを、実用的で有意な個々のゴルフ・コーチングに有用であるのに十分な精度で、かつ、同一の競技者による異なる記録されたスイングに対して有用かつ有意に比較され評価できる結果で、決定し計算するのに適している。結果のシステムはまた、実用的で有意なゴルフ・コーチングまたは有意なゴルフ・コーチングに関連する活動に使用可能なゴルフ・スイングのコンピュータ・モデルを駆動する際に使用するためのパラメータを十分な精度で決定し計算するのに適している。
【0146】
結果のシステムはまた、実用的で有意なゴルフ・コーチングまたは有意なゴルフ・コーチングに関連する活動に使用可能なゴルフ・スイング情報の大規模データベースで使用するための、競技者の身体およびクラブを通じた競技者の身体を通じたエネルギ生成およびエネルギ伝達を十分な精度で決定し計算するのに適している。かかるデータベースには、スイング・パラメータを予測するためにトレーニング神経回路網で使用するのに適したものが含まれる。
【0147】
一般に、スイング・パラメータは、計算において競技者の身体のモデルを利用し、当該モデルと測定し決定したスイング・パラメータとを利用したスイングの分析において使用される分析パラメータを計算して、測定および決定される。当該分析パラメータによりスイングを即時に分析してもよく、または、複数の分析パラメータを使用してスイングを分析してもよい。例えば、運動学的測定値と地盤反力測定値が、測定されたスイング・パラメータを含んでもよく、計算された分析パラメータが競技者の身体の特定の関節で生成されたエネルギを含んでもよい。この特定のデータにより即時情報を分析に与えてもよく、または、この特定のデータを例えばスイングにおける複数の他の決定された情報項目とともにシステム・プロセッサにより使用して、スイングのより一般的な分析またはスイングの具体的な態様の分析を与えてもよい。
【0148】
人工知能を用いた本発明の代替的な実施形態
本発明の代替的な実施形態では、NJPを、本明細書の他所で説明したNJPを決定するための技術を用いて編成したゴルフ・スイングの大規模かつ代表的なデータベースを用いてシステムおよび装置により決定する。当該データベースはGRFデータを含む。当該データベースを使用して、神経回路網システムのような人工知能システムをトレーニングし、新たなスイングのNJPをそのGRFパラメータの分析から予測または決定する。当該新たなスイングを「エンドユース」スイングを称することもある。GRFパラメータには、夫々の足および両足の組合せに関するGRFおよびモーメント、夫々の足および両足の組合せに関する圧力の中心が含まれる。GRFからのスイング・パラメータの予測は先行技術で公知であり、特許文献4に開示されている。
【0149】
人工知能システムは、1組の神経回路網を備え、GRFパラメータを含むトレーニング入力とNJPを含むトレーニング出力でトレーニングされる。これらは両方とも、データベースを準備したときの期間にわたって個々のスイングに対して記録されたデータから取得されたものである。トレーニングNJPは、早期データ収集期間中のGRF、BSIPおよび運動学的パラメータの測定または決定から計算される。結果のトレーニングされた回路網により、NJPを含む出力を新たな試験スイングに対して予測する。この場合、入力には、記録した新たな試験スイングのGRFパラメータが含まれる。番号付きのアイアンのクラブおよび木のクラブの各々に対して、別々の回路網を準備し使用するのが理想的である。しかし、実際には、ユーザは頻繁には全てのタイプは必要とせず、最も一般的に使用されるタイプまたは代表的なタイプに対する回路網で充分であろう。回路網をトレーニングして、タイプ間にスムーズな変換が存在する幾つかのクラブの種類に対応してもよい。例えば、5番アイアンおよび7番アイアンのスイングで適切にトレーニングした回路網が、中間の6番アイアンを試験する場合にその予測を正しく調節し、4番アイアンまたは8番アイアンを試験する場合にはより低い程度に調節する。なぜなら、5番アイアンと7番アイアンでのトレーニングにより、その結果を、クラブ番号の相違で生ずる相違に対して拡大縮小する能力が与えられるからである。本質的ではないが、追加のトレーニングと試験入力を使用して、回路網予測の精度を高めてもよい。好都合な関連入力には、競技者の性別、身長、年齢、およびプレイ・ハンディキャップ、または他のプレイ・スキル測定値のような、競技者の物理特性とスキル・レベルに関連する、単純で、曖昧でなく、かつ容易にアクセスできるデータが含まれる。
【0150】
トレーニング・データベースを編集するのに必要な装置は既述のものと同一または同様であるが、当該代替的な実施形態における競技者のNJPを決定するのに用いる装置では、トレーニングされた神経回路網に対するアクセスを含むかまたは有する力プレート、通信手段、処理手段およびソフトウェア手段のみが必要である。当該処理手段と通信手段がポータブル・コンピュータを備えてもよい。
【0151】
スイングの過程で、第1の実施形態で説明したのと同様に、隣り合う組の力プレートを用いて垂直および横のGRFを競技者の左足および右足に対して決定する。第2の実施形態の代替的な低コストの変形では、隣り合う力プレートは垂直力を決定するためにのみ動作可能であり、神経回路網のトレーニング入力は横力を含まない。前者の配置では、全ての利用可能な情報が捕捉され潜在的に高い精度をもたらすという相対的な利点がある。後者の配置では、構成が低コストで単純であり、重みと厚さが潜在的に削減されるという相対的な利点がある。競技者は1つの足を各力プレートに置いた自然な位置に立ってゴルフ・スイングを実行する。力プレート・センサからの信号をプロセッサに入力し、当該信号を、人工知能システムに対する必要な入力信号に変換する。力プレートが垂直力を決定するだけの場合には、当該信号を8個のかかる入力に変更する。当該入力は、左足と右足にかかる垂直力、夫々の足のCOPの水平成分、および両足に対する合力の水平成分である。力プレートがさらに横力を決定する場合には、信号を追加の入力に変換する。専ら垂直力を決定する場合には、垂直GRFを決定するための他の手段を考慮してもよい。当該手段には、可変の力を決定し両足を包含する高速な圧力パッド構成が含まれる。圧力パッドは一般に、低コストの力プレートに対して相対的に有利であり構造上の強度があまり必要でないが、一般に、高速において応答性が低く制度が低いという相対的な欠点がある。
【0152】
図14は、上述のように、トレーニングされた人工知能を用いてエンドユースNJPを予測または決定するための代替的な実施形態で必要なステップの幾つかを示す図を示す。略語NNは「神経回路網」を示す。
【0153】
人工知能を用いる代替的な実施形態には、前述の直接的な測定または決定の実施形態と比べて、以下を含む様々な相対的な利点がある。競技者は、力プレートのプラットフォームに立つ以外は、装置と接触しない。専門家またはサードパーティによる外部支援なしに、装置を競技者により操作することができる。当該装置の単位コストは非常に低く、準備または構成においてユーザの作業は殆どない。当該装置はよりコンパクトで、軽量であり、より堅牢で、効果的に保守不要である。当該装置は運搬と格納が容易である。これと釣り合いを保って、当該代替的な実施形態には、直接的な測定または決定の実施形態と比べて、以下を含む様々な相対的な欠点がある。当該装置は、他の装置により測定または決定されたパラメータを決定または予測できるのみであり、したがって、他の装置の能力に依存する。当該能力には、パラメータを測定または決定する際の精度レベルおよび制限事項が含まれる。一般に、当該装置は非常に不正確である可能性が高い。製品としては、かなり高額な1回きりの開始費用がかかり、大規模トレーニング・データベースの編成や神経回路網の準備が必要である。当該装置は、スイングの高精度な視覚的表現をあまり再現できない。当該装置は、運動学的パラメータを含む他のスイングのパラメータをあまり決定することができない。
【0154】
人工知能手段と光深度決定カメラを用いて運動パラメータを予測する本発明の代替的な実施形態
次に、ゴルフ・スイングの運動特性および運動学的特性を決定または分析するための本発明の代替的な実施形態を説明する。当該実施形態では、決定手段が、画像処理、人体の関節セグメント・モデルの抽出および関節セグメント・モデルの動き追跡が可能な組込みソフトウェアを備える3Dカメラのような、GRF決定手段と光深度決定手段を備える。前述のように、この種の組込みソフトウェアを有するシステムを「高度3Dカメラ」と称してもよい。当該システムは、コンピュータ・ベースのゲームで広く使用され、コンパクトであり相対的に安価である。
【0155】
決定した特性が、NJPのような運動特性を含んでもよい。当該システムは、GRF決定手段と光深度決定手段から取得したデータを結合し処理して、新たなまたは改善されたスイング関連データを決定または予測するように動作可能である。結合および処理のプロセスでは、記憶されたまたは利用可能な所定のスイング関連データを利用する。当該結果は相乗的であり、単体で動作するGRF決定手段または単体で動作する光深度決定手段の何れによっても同レベルの精度または同レベルの信頼性で決定できないデータを提供する。結合と処理のプロセスは、例えば1つまたは複数の神経回路網システムを備える人工知能手段により実行される。この場合、動きに関連する所定のデータが回路網トレーニング入力を含む。
【0156】
図15は、上述のように、代替的な実施形態で必要な基本ステップの幾つかを示す図を示す。当該ステップを使用して、エンドユース・スイングにおける新たなデータを決定または予測し、スイングを分析する。略語AIは「人工知能」を示す。
【0157】
光深度決定手段が、競技者のBSIPの決定に関して前述したのと同一または同様なタイプの3Dカメラまたは高度3Dカメラを備えてもよい。当該事例では、深さを決定する能力が、BSIPが決定される事例で使用されるようなサーフェスの3D輪郭を正確に測定または決定するのではなく、背景または競技者の身体から区別されたクラブまたは競技者の四肢のような、様々な深さに配置されたオブジェクトの外観を区別する際に特に使用される。かかる外観の区別は、高度3Dカメラがキャプチャ画像から、結合された形状を特定し抽出できるようにすることにおいて特に重要である。
【0158】
当該代替的な実施形態の1例を次に説明する。当該実施形態の装置は、高度3Dカメラ、1対の力プレート、処理手段および通信手段を備える。当該力プレートはGRFデータを決定するように動作可能である。当該高度3Dカメラは、キャプチャした3D画像または動きから剛性セグメントを有する結合モデルを示す画像または運動を抽出するように動作可能である。ゴルフ・スイングの大規模で代表的なデータベースからトレーニングした神経回路網の人工知能システムを用いてデータを結合し処理する。
【0159】
図16はかかる装置の1例の略平面図を示す。本図で用いる参照番号のインデックスを以下に示す。
【0160】
1 ティーまたは開始位置にあるボール。ボールは矢印の方向に打たれる。
2 人工競技台表面
3 左足力プレート
4 右足力プレート
5 足の輪郭により表した競技者
6 力プレートに対する処理ユニットおよびインタフェース・ユニット
7 競技者に面する3Dカメラ
8 装置プロセッサ
9 ユーザ・インタフェースと通信手段
10 電子装置を包含する筐体
【0161】
本発明の1態様は、GRF分析により取得されたデータと高度3Dカメラにより取得されたデータが逆方向の強みと弱みを有する傾向があり、したがって、考えられ提供されている適切な組合せ方法により相乗的に組み合せることができるという洞察に関する。高度3Dカメラとその関連ソフトウェアは、良好な精度レベルでゴルフ・スイングの特定の態様を再現することができる。これらは、競技者とクラブの静的な構成要素または相対的に低速移動する構成要素の全3D視覚表現、および、良好な視覚精度を有する割合で示された競技者の表現を含む。高度3Dカメラでは、カメラのビューでは明確に提供されないオブジェクトまたはパラメータの測定または決定は不十分である。これには、特定のタイプの回転移動、および、完全または部分的に不明瞭である移動が含まれる。また、本質的に自然界の運動であるパラメータも含まれる。高度3Dカメラでは、その相対的に低速なフレーム・レートのため、高速移動する構成要素の測定または決定は不十分である。当該フレーム・レートは一般に、大よそ1秒あたり30個のフレームまたはイメージである。クラブ・ヘッド速度が、インパクトに向かって大よそ50m/sの典型的な値である場合には、クラブ・ヘッドは、その速度がスイングの臨界期間で維持される場合に、イメージの間で1.6メートルを超えて移動する。対照的に、GRF分析は、データ捕捉要件を超える実用的な上限で、非常に高速なスキャン速度で行われる。GRF分析は、GRFとしてより容易に検出される大きな力を生成する傾向があるという意味で、高速移動するオブジェクトを検出するのに向いている。GRF分析は、GRFの運動性質のため、移動の可視性により影響を受けず、運動パラメータを決定するのに本質的に適している。GRF分析は、競技者のようなオブジェクトの3D視覚表現全体の再構築において相対的に不完全である。
【0162】
GRFは、本発明の他の実施形態で既に説明したもののような手段によりエンドユース・スイングにおいて決定される。GRF信号はプロセッサ手段に入力され、人工知能システムに対する必要な入力信号に変換される。これらのエンドユース入力を一般に「GRF入力」と称するものとする。
【0163】
高度3Dカメラは、本発明の別の実施形態で既述したものと同一または同様な特性のものであってもよい。当該カメラは、公知の大量生産型、低コスト・タイプのものであり、毎秒30フレームを下らないフレーム・レートで動作する。当該カメラには、対象の結合モデルを3Dイメージから抽出するように動作可能であるサポート・ソフトウェアが設けられている。当該カメラは、スイング中に競技者に面する方向を向いており、ターゲット方向と垂直な方向を向いている。様々な公知技術を用いて、カメラのイメージをスイング移動の3D関節セグメント・モデルに変換する。カメラのサポート・ソフトウェアを修正または補強して、ゴルフ・スイングの追跡精度を高めてもよい。例えば、当該ソフトウェアが姿勢のライブラリから直近のマッチを選択するタイプのものである場合には、この姿勢のライブラリに追加を行って、一般にゴルフ・スイングで生ずる姿勢のタイプを含めてもよい。データを3Dの関節セグメントの移動から抽出して、必要な運動学的パラメータおよび運動パラメータを決定するかまたはその決定に導く人工知能システムに対する入力を導出する。これらのエンドユース入力を一般に「カメラ入力」と称するものとする。当該入力は、神経回路網に対する入力として使用される。高度3Dカメラは、有用なパラメータをGRF決定システムと独立して決定することもできる。当該パラメータには、BSIPに関連するパラメータ、アドレス、テイクアウェイ、バックスイングのトップ、フォロースルーの終了、競技者とクラブの視覚表現のような、静止または低速の動きに関連する時刻が含まれる。
【0164】
人工知能システムは、様々な組のエンドユース入力を用いて様々な必要なエンドユース出力を予測するためにトレーニングされた1組の神経回路網を備える。通常、回路網エンドユース入力は全ての大幅なGRF入力と選択されたカメラ入力を含む。GRFでもカメラ入力でもない他のエンドユース入力を使用してもよい。様々な回路網を、様々な番号のウッドおよびアイアンのような様々なクラブの種類によるスイングを含む、様々な種類のスイングに使用することができる。
【0165】
当該回路網は、データベースに記録された個々の競技者のスイングに対して、エンドユースのカメラ入力と等価なGRFトレーニング入力および非運動トレーニング入力を含むトレーニング入力と、高精度な測定または決定を含むトレーニング出力でトレーニングされる。これらのトレーニング試験を、スキル、技術、およびトレーニングされた回路網を後に使用するときに発見される可能性のある故障を表す多数の競技者にわたる多数のスイングに対して実行する。これらのトレーニング試験を、例えば、磁気運動捕捉システムを用いて本明細書で前述したもののような装置で実行してもよい。線形な角速度およびセグメント加速度のような、エンドユースのカメラ入力と等価な運動学的トレーニング入力を磁気運動捕捉システムにより測定することができる。エンドユースのカメラ入力と「等価な」トレーニング入力の1例が、前面に投影したクラブ・シャフトの角速度により与えられる。当該前面は、カメラに面する垂直面である。当該入力を、磁気運動捕捉システムと高度3Dカメラの両方により決定することができ、例えば、1秒当たりの角度の同等で等価な値で表すことができる。関節位置やセグメント長の測定値のような、エンドユースのカメラ入力と等価な静的トレーニング入力を、磁気運動捕捉システムおよびタッチペンによって測定することもできる。
【0166】
BISPに関連するエンドユースのカメラ入力を、神経回路網に対する入力に適した方式で提示してもよい。例えば、当該入力を、段階的範囲にわたってゴルフ・スイングに影響を及ぼすことが知られている特定のBSIP特定を記述する1つまたは複数の値によって表してもよい。かかる段階的範囲が、内胚葉型、中胚葉型および外胚葉型の範囲のような、適切に修正された男性および女性の多様な形態学的範囲を含んでもよい。当該段階的範囲が、様々な範囲の競技者の身長、または、競技者の身長と体重の比率を含んでもよい。体重に関連するエンドユースのカメラ入力が、GRFデータから取得した体重に関する情報を利用してもよい。当該情報は、競技者が休憩しているときの競技者の体重に対応する。これらの範囲の各々を、零から1の範囲で実行される単純な正規化基準により表してもよい。エンドユースのカメラ入力とトレーニング入力を同じ基準で計算する。カメラ入力のBSIPに関連するデータを、磁気運動捕捉方法を用いた前述の実施形態において高度3Dカメラを用いてBSIPを決定するために既述したものと同様な方式で決定することができる。
【0167】
当該神経回路網を、エンドユースの光深度測定パラメータから取得できるデータと等価なタイプの光深度測定パラメータからのデータでトレーニングしてもよい。例えば、トレーニング入力を決定しエンドユース入力を決定するときと同様なまたは同一のタイプの高度3Dカメラを使用する場合、および、高度3Dカメラがイメージを姿勢のライブラリからのイメージとマッチさせる場合には、トレーニング入力が、スイングがトレーニング・スイングの関連部分を通って行われる際に生ずるマッチしたイメージに関する識別ラベルのシーケンスを含んでもよい。対応するエンドユース入力が、エンドユース・スイングがエンドユース・スイングの対応する部分を通って行われる際に生ずるマッチしたイメージに関する識別ラベルのシーケンスを含む。この種の入力を、高度3Dカメラではない3Dカメラで使用することもでき、装置プロセッサが、高度3Dカメラ・プロセッサにより実行される機能を実行する。カメラの種類や能力に応じて、他の様々なタイプの光深度測定トレーニング入力を両方のタイプのカメラで有効に使用することができる。幾つかの状況では、当該トレーニング入力とエンドユースのカメラを、それぞれ当該トレーニング入力とエンドユース競技者に関する同様な位置で位置づけることが必要かもしれない。しかし、特定の種類のカメラ入力では、データは結合された形状の3D表現へとシステム・プロセッサにより変換され、この場合、システムは当該トレーニング入力、エンドユースのカメラ、および競技者の相対位置に対して実質的に反応しない。
【0168】
エンドユースGRFパラメータと光深度測定パラメータを同時にまたは別々の時点で決定してもよい。両方のシステムからの決定が関連するタイプのものであり結合および処理しているときに同期される場合、例えば、GRFパラメータと深さ決定パラメータが等価な入力を含む場合に、同時の決定は有利である。GRFパラメータと深さ決定パラメータが、固定位置に関連する情報のような、関連するタイプのものではなく同期されない場合には、上記決定を別々の時点に実行するのがより好都合であるかもしれない。
【0169】
エンドユースの回路網出力はNJPを含む運動パラメータを含む。当該出力はまた、セグメントの線形な角加速度や加速度、および必要に応じて低速な動きを実行するように動作可能である競技者のマネキン・モデルをスイングを通じて駆動するのに必要なパラメータのような運動学的パラメータを含む。
【0170】
図17は、上述のように、エンドユースGRF決定手段、エンドユース高度3Dカメラおよび人工知能を用いてNJPおよび他のパラメータを決定または予測するための代替的な実施形態の例で必要なステップの幾つかを示す図を示す。略語NNおよび3DCはそれぞれ、「神経回路網」と「3Dカメラ」を指す。「データベース装置」および「データベース・プロセッサ」という用語は、データベースを編集し神経回路網をトレーニングする際に用いる装置を指す。「システム」という用語は、競技者のスイングを決定し分析する際に使用する装置を指す。本例では、3Dカメラはトレーニング段階では使用されず、3Dカメラ入力はデータベースには保持されない。
【0171】
「決定」および「予測」に関する用語は、神経回路網または人工知能からの出力に関して同義語と理解すべきである。「エンドユース」という用語は、本発明の最終的な使用を指し、例えば、神経回路網は、試験スイングまたはデータベースのスイングでトレーニングされるが、最終的にはエンドユース・スイングを分析するために使用される。
【0172】
運動パラメータを分析し解釈する装置と方法を備えた本発明の代替的な実施形態
本発明はまた、スイングのエネルギ生成とエネルギ伝達のパラメータの解釈と通信を含む、ゴルフ・スイングを分析するためのシステムと装置を提供する。これらのパラメータを本発明の前述の実施形態の何れかにより決定してもよい。さらに、本発明の諸態様は以下の実現と開示に関する。
【0173】
パターン化された高加速度のゴルフ・スイングにおけるエネルギ生成は、主に、特定の関節に関する離散動作ブロックで生ずる。この場合、身体はかかる関節により接続された十分剛性の身体セグメントの系としてモデル化される。簡単のため、特定の関節により行われる仕事に関連するかかるエネルギ・ブロックを、以下では「ブロック」と称する。関節に関連付けられたエネルギは、任意の時点で関節において最も関連するパラメータが、関節パワーであるか、または、エネルギが当該関節で生成されている速度であり、或る時点のセグメントでの関連パラメータがその運動エネルギであるという点で、セグメントに関連付けられたエネルギとは異なる。関節パワー曲線は、時間とともに、曲線下の領域で表される関節により生成されたエネルギに関連付けられる。このように、ブロックは、関節パワーの関連パラメータと、特定の時間変化する関節パワー曲線に関連付けられたエネルギのブロックを含む。本明細書の他所で開示するように、ブロックを、好都合かつ低コストで動作する装置とシステムを用いて典型的な分析またはコーチング手続きに対して正確に測定することができる。かかる能力を有する装置またはシステムは先行技術において公知ではない。分析結果を、ブロックのシーケンスとして、時間または任意の関連する時系列変数として、人間またはプロセッサ手段に有利に送信することができる。適切に提示されたときには、かかる分析結果を、コーチおよび競技者を含めて、非技術系または非専門家の人により容易かつ直感的に理解することができる。
【0174】
熟達したプレイでは、良好なブロックは通常、主に立ち上がり、保持、および減衰の部分を含む。これらは、関節にあるトルクを負、零、または低レベルから立ち上げるように筋肉群に指示し、当該トルクを安定または緩やかに増加および減少するレベルに保持し、次いで当該トルクを低、零、または負のレベルに減衰させるように指示する、脳および中枢神経システムからの潜在意識的な通信に関連付けられると理解されている。
【0175】
スイングに関する測定可能な関連する良好なブロックには、一般に、以下の関節に関連付けられるブロックがある。即ち、右足首および左足首、右および左膝、右および左臀部、腰部、胸部、首、右内方肩部および左内方肩部、右外方肩部および左外方肩部、右肘および左肘、右手首および左手首ならびに手とクラブの間のグリップである。各関節は通常、少なくとも1つのブロックを生成し、幾つかの関節が2つ以上のブロックを生成するので、分析に利用できる全数は約18からその何倍かの間であってもよい。本発明の1態様は、1組の少ない数のブロックが同時に分析され、当該1組のブロックの間に有用または有意な相関関係の存在が認められる場合には当該1組のブロックが直感的な個人的分析に従うという洞察を含む。ブロック数を単一の同時分析において制限すべき範囲は、ユーザの知識と経験に依存する。例えば、アマチュアの競技者が自分のスイングを分析するには、かかる分析に関して長い経験を有するプロのコーチよりも少ない数のブロックを用いたより単純な分析が必要である。アマチュアの競技者に対する典型的な数値限定は約8であり、これは、分析されている異なる関節または関節の組合せの数を指す。経験ある分析者に対する等価な典型的な数値限定は約12である。多くの研究では、期間をダウンスイングに限定することによって分析が容易になる。なぜならば、バックスイングの関節パワーはの大きさは相対的に小さく、フォロースルーの関節パワーは全ての重要なインパクト事象に従うので相対的に重要でないからである。
【0176】
初期分析または概要分析では、ブロックの数を、以下を含む様々な手段により削減する。関節が幾つかのブロックを生成する場合には、最大のブロックに対して小さいものを最初に削除する。グリップ、頭および足首関節のような相対的に小さいブロックを生成する関節を最初に削除してもよい。同時に動作することもある関節または一般にサブグループとしてユーザにより認識される関節を結合し、最初のグループとして扱ってもよい。かかるグループには、右手首および左手首、右肘および左肘、右足首および左足首、右外方肩部および左外方肩部、右内方肩部および左内方肩部、ならびに4つの外方肩部関節と内方肩部関節全ての組合せが含まれる。一般に、右臀部と左臀部および右膝と左膝は同時に動作せず、このようなグループ化には従わない。
【0177】
特定の初期関係または比較の決定を容易にする組を選択することによってブロック数を削減することもできる。例えば、重要な関係には、特定のブロックの近位から遠位へのシーケンスがある。当該ブロックの1つには、ターゲット側の腰、腰部、胸部、結合された肩、結合された肘および結合された手首がある。他のかかる組には、最も強力な関節、即ち、右臀部、左臀部、腰部、胸部、結合された右肩および結合された左肩の初期分析が含まれる。この種の別の組には、下半身および足関節を含む組、および、上半身、腕およびグリップ関節を含む組がある。
【0178】
ブロックの分析を、標準化された条件を課してブロックの形状を簡略化することによって有利に促進することができる。便宜上、このように簡略化したブロックを「簡略化ブロック」と称することとする。この簡略化の目的には、プロットの無関係性の排除と、データの雑音または計算における雑音の増幅に起因し、ブロックの主要な特徴を強調しあまり重要でない特徴を抑制することによって表示を簡略化したことに起因する不規則性の平滑化がある。
【0179】
図18は、装置がゴルフ・スイングを分析する場合に一般に必要なステップの幾つかを示す図を示す。当該装置は、関節パワーの時間プロットを簡略化ブロックに変換し少ない数の簡略化ブロックを有する集合を選択するように動作可能なソフトウェアとアルゴリズムを具備したプロセッサ手段を備える。この場合、当該集合は有用または有意な相互関係を有する。当該事例では、当該プロセッサとアルゴリズムはまた、一般に熟達したプレイを表すと認識されたものに対する集合内の簡略化ブロック間の相互関係をチェックする。例えば、当該集合を選択するための基礎が近位から遠位へのシーケンスに関連する場合には、熟達したプレイで見つかった受け入れられたシーケンスに従わない簡略化ブロックをユーザに自明な何らかの方法で強調する。その強調度合は、一般に熟達したプレイを表すと認識されるものから簡略化ブロックが変化する度合とともに変化する。当該通信手段は、様々な組の簡略化ブロックのメニューをユーザに提供する。当該ユーザは必要に応じて様々な組の簡略化ブロックを選択する。
【0180】
熟達したプレイからの変形を強調するのを、当該装置により様々な方法で実行してもよい。例えば、簡略化ブロックの輪郭を色付けして、当該簡略化ブロックが表す関節パワーを、一貫した対比色で提示された一般に隣接する簡略化ブロックとマッチさせてその特定を支援してもよい。簡略化ブロックの中心を色付けまたは陰影化して、一般に熟達したプレイと認識されるものからの適合または変形を表現してもよい。例えば、当該中心を、未熟なプレイにマッチすると判定された度合とともに変化するピンクから赤の陰影で色付けし、熟達したプレイにマッチすると判定された度合とともに変化するライト・グリーンからミッド・グリーンの陰影で色付けしてもよい。
【0181】
簡略化ブロックを、様々な方法で時間的な関節パワーのプロットから構築してもよい。例えば、ブロックが正の時間変化する関節パワーのプロットを含み、当該プロットと時間軸で囲まれた領域が行われた仕事に対応する場合には、正のブロックを、時間軸と立ち上がり、保持および減衰のプロットにより囲まれた、時間軸より上の幾何領域として表してもよい。同様に、負のブロックを、時間軸より下の同様な幾何領域として表してもよい。上の1例では、ブロックは、4つの直線、即ち、線形な立ち上がり、線形な保持、および線形な減衰から成る四辺形で表される。幾つかのケースでは、三角形が生ずるように当該線のうち2つが同一線上にあってもよい。便宜上、かかる簡略化ブロックを「クワッド」、または、関節パワーがそれぞれ正および負である正のクワッドと負のクワッドと称することとする。勿論、関節パワーが正または負の値をとることもある。当該値が正である場合には、運動エネルギまたは位置エネルギが、競技者、クラブ、ボール、および環境を含むシステムに等価な割合で加えられることを示す。当該値が負である場合には、これは、運動エネルギまたは位置エネルギが当該システムから等価な割合で吸収または抽出されることを示す。
【0182】
以下で(i)乃至(iv)とラベルを付したもののようなルールを、個々の関節でのエネルギ生成を表すクワッドに有利に適用してもよい。(i)クワッドは、単一の立ち上がりブロック、単一の関節にわたるエネルギ生成の可能な保持および減衰と思われるものに最も適合するものを提供することを試みる。範囲外のバラバラなエネルギ生成は無視する。(ii)当該クワッドは、それが囲む領域が実際の曲線と時間軸で囲まれる領域に等しく、範囲外のバラバラなエネルギ生成は含まない。(iii)クワッドの線により、最も適合するものを曲線の立ち上がり、保持、および減衰に対して試みる。(iv)時間変化する関節パワー曲線が負から正に変化する場合、またはその逆の場合には、正および負の両方の曲線部分と時間軸で囲まれた領域はそれぞれ、別々のクワッドを保証するのに十分な大きさであり、結果の隣接する正および負のクワッドは時間軸の上の共通点を共有すべきである。
【0183】
上の2番目のルールに関して、曲線と時間軸の間の領域を様々な方法で定義してもよい。例えば、当該領域が、曲線が最初に時間軸を離れる点から曲線が最後に時間軸に戻る点までの領域全体を含んでもよい。あるいは、当該領域が、立ち上がり線が時間軸と交わる場所に対応する、クワッドが開始すると認められる点から、減衰線が時間軸と交わる場所であるクワッドが終了すると認められる点までの曲線の下の領域を含んでもよい。あるいは、後者の代替手段には、時間軸の上の2つの点が明確に定義されるという利点があり、前者の例では、曲線が時間軸の上に明確な開始点と終了点を常には有さず、または、かかる点が存在する場合には、意図した作業ブロックおよび簡略化ブロックとそれらが正しく関連付けられないかもしれない。
【0184】
本装置では、曲線が単一のブロックを含むと認められる場合には、プロセッサおよびソフトウェアが自動的に以下の単純なアルゴリズムを用いてクワッドを決定する。試験開始点と思われるものを、クワッドで表現すべき関節パワー曲線の先頭付近の時間軸で選択する。3つの直線は、端と端を結合して当該曲線に適合させる。最終点も時間軸の上にあり、当該3つの線の下にある領域は当該曲線の下の領域に等しい。これら3つの線は第1の試験クワッドを含む。試験クワッドと当該曲線の間の二乗誤差和を計算する。次に、第1の開始点付近の時間軸の上の第2の試験開始点を選択し、第2の試験クワッドを同様に構築し、その誤差を同様に計算する。誤差の相対的な大きさに応じて、プロセッサが、試験開始点をさらに選択し、さらに戻るかまたは時間軸に沿って、最小誤差をもたらす点に到着し、最後に選択されたものを提供されるクワッドとして選択する。当該プロセスのこれらの基本ステップを
図19に示す。第1の試験開始点が最適点付近に落ちる可能性を高めるようにアルゴリズムを構成することによって当該プロセスを高速化してもよい。例えば、直線を、立ち上がり部分の傾斜を代表する可能性が高い曲線の所定部分に最も適合させてもよく、試験クワッドの開始点を当該直線と時間軸との交点とする。当該所定の部分を、例えば、表すべき曲線のほぼ最初の3分の1としてもよい。あるいは、試験を曲線の末端から開始してもよい。この場合、決定された部分を、例えば、表すべき曲線のほぼ最後の3分の1としてもよい。
【0185】
図20乃至22は、ゴルフ・スイングの特性を表す1組のクワッドの構築における段階を示す。本図で用いる参照番号のインデックスを以下に示す。
1 バックスイングのトップからインパクトまでの、零のパワーの時間軸
2 インパクトでの垂直軸と時間マーカ
3 インパクト前約0.29秒の、クラブのバックスイングのトップにある垂直軸と時間マーカ
4 約700Wの関節パワーでのプロットの上限
5 左臀部関節パワーのプロット、即ち、第1の主要ブロック
6 胸部関節パワーのプロット
7 腰部関節パワーのプロット、即ち、主要ブロック
8 腰部関節パワーのプロット、即ち、副次ブロック
9 結合肩関節パワーのプロット
10 右臀部関節パワーのプロット
11 結合肘関節パワーのプロット
12 左臀部関節パワーのプロット、即ち、第2の主要ブロック
13 結合手首関節パワーのプロット
14 非常に大規模なブロックを生成する関節に関連付けられた、関節パワーのプロット
15 左腰クワッド、即ち、第1のクワッド
16 胸部クワッド
17 腰部クワッド、即ち、主要クワッド
18 腰部クワッド、即ち、副次クワッド
19 結合肩クワッド
20 右腰クワッド
21 結合肘クワッド
22 左腰クワッド、即ち、第2のクワッド
23 結合手首クワッド
24 クラブ・シャフト角度が180°、即ち前面で上方向に垂直である垂直時間マーカ
25 クラブ・シャフト角度が前面で135°である、垂直時間マーカ
26 クラブ・シャフト角度が90°、即ち、前面で水平である垂直時間マーカ
27 クラブ・シャフト角度が前面で45°である、垂直時間マーカ
【0186】
次に
図20を参照する。
図20は、ダウンスイングに限定され、左臀部、腰部、胸部、結合された肩、結合された肘および結合された手首に対する熟達したプレイにおける近位から遠位へ向かうシーケンス特性の傾向で一般に生ずるブロックを示す、典型的な1組の関節パワー・プロットを示す。左臀部は、大多数の右利きの競技者についてターゲット側の腰である。主要なプロットの半分を点線で示して、当該プロットを実線の近傍プロットから区別するのを支援する。当該データはダウンスイングと有限個の関節パワーに制限されているが、様々な重複プロットを直感的に理解するのは依然として相対的に困難であることは理解される。
【0187】
図21は、クワッド形式の簡略化ブロックに変換された
図20の関節パワー・ブロックのプロットを示す。
図20では、参照番号14で示した相対的に有意でないサイズのブロックは排除してある。仕事ブロックの特性は単純であり比較が非常に容易であることは理解される。その相対的なサイズ、位置、立ち上がり、保持および減衰の速度は相対的に明白かつ自明である。これは、特に、異なる関節に関連付けられたクワッドが異なる対比色で示される実際に表示される集合に当てはまり、一貫した色が利用可能なプロットの範囲にわたって特定の関節に使用される。時間とクラブ・シャフト角度によりマークされた期間にわたって簡略化ブロックを左から右に進め、身体の良く知られた関節を表現することは、現実には観測も感知もできない抽象的なアイデアを実際にはかかる簡略化ブロックが表すとしても、ほぼ全ての競技者とコーチにより迅速かつ直感的に理解できるように思われる。図から、競技者の腰部関節パワーが2つの点で異常または準最適であることが容易に分かる。理想的な近位から遠位へのシーケンスで期待されるように、腰部の関節パワーは胸部の関節パワーより前に開始するが、初期の腰部の関節パワーは相対的に小さく、胸部の関節パワーの開始後に開始する非常に大きなブロックとして再開する前に終了する。
【0188】
図22は、
図20の関節パワーのプロットに重ね合わせた
図21の構築されたクワッドを示す。
【0189】
様々な代替的な簡略化ブロック形式を使用することができる。これらの1つはクワッド形式と同様であるが、4つではなく5つの直線を使用し、ここでも時間軸を境界線の1つとする。5番目の線により、簡略化ブロックの輪郭を元の曲線の形状とマッチさせることができるが、構築が複雑化し、提供された形状を理解できる容易さが低下する。なぜならば、当該形状はもはや、単一の立ち上がり、単一の保持および単一の減衰の特性を使用するように強制されないからである。
【0190】
別の代替的な簡略化ブロック形式では、直線の立ち上がり線、直線の減衰線および単純な接合部または曲線でブロックを画し、元のプロットの形状を部分的に追従して、立ち上がりと減衰線の間のギャップを橋渡しし、当該線を基礎となる時間軸に接続する。単純なアルゴリズムを使用して、立ち上がりと減衰線を元のプロットにマッチさせ、簡略化ブロックの領域を、元のプロットと時間軸により画される領域に等しくさせる。曲線部分が、最も適合する低次の多項式に従ってもよい。
【0191】
さらに代替的な簡略化ブロック形式では、例えば低次の多項式の曲線を用いることによって、時間軸ではなく直線を提供し、平滑な曲線を元のプロット全体に適合させる。次に、以前の代替手段と同様に、簡略化ブロックの領域を元のプロットと時間軸により画される領域に等しくする。
【0192】
図23は、
図20の結合された肩関節パワーのプロットに適用される簡略化ブロック形式の幾つかの例を示す。図(a)は、プロットに適合されたクワッドを示し、当該クワッドは図(b)で別々に示されている。当該クワッドは、プロットの立ち上がり特性と減衰特性を正確に示すが、関節パワー・プロットに存在する関節パワーへと続く初期低レベルは省略していることは理解される。図(c)は、同一の結合された肩プロットに適合された5辺の簡略化ブロック形式を示し、当該簡略化ブロックが図(d)で別々に示されている。当該事例では、プロットの形状全体は非常にマッチしているが、簡略化ブロックには2つの異なる立ち上がり速度という複雑性がある。図(e)は、直線が、立ち上がり線と減衰線のギャップを橋渡しするために使用される立ち上がり部分と減衰部分および低レベル多項式に適合され、時間軸と立ち上がり線の間のギャップにも適合される形式を示す。当該簡略化ブロックが図(f)に別々に示されている。当該事例では減衰線の適合が良好なため、当該減衰線が時間軸まで続いている。曲線全体に適合された低次の多項式の例は図面には示していない。なぜならば、図(e)および図(f)で示すのと非常に類似しており、立ち上がり線と減衰線が僅かな曲率を表しているからである。図(g)および(h)は、立ち上がり線と減衰線に適合するように先行部を確実に与える対策を講じない場合に生じうる潜在的な問題の1例を示す。当該事例では、クワッドの利用可能な線の1つを使用して、立ち上がりと減衰の間の領域を保持するのではなく、関節パワーに続く初期低レベルを表現している。これは通常、望ましくないと考えられるので、主要な立ち上がりまたは減衰の事象が関節パワーの弱い先行部分または後続部分にわたって支配するようにクワッド・アルゴリズムを構築する。
【0193】
スイングの分析において、様々な種類の簡略化ブロック形式を使用するのが有利である場合がある。例えば、初期分析を実行する場合、または、ディスプレイに多数の簡略化ブロックが存在する場合には、単純なクワッド形式により最良の解決策を提供することができる。しかし、より詳細な分析がスイングの特定部分に対して実行されている場合には、さらなるプロットの詳細を保持する簡略化ブロック形式でより適切な解決策を提供することができる。選択した標準形式が不十分であることが判明した場合には、或る簡略化ブロック形式を別の形式に自動的に切り替えるように動作可能であるアルゴリズムを使用してもよい。例えば、クワッド形式を通常使用するが2つの強い立ち上がりまたは減衰が存在し、共に同様なレベルの有意性をもつ速度が存在する場合には、当該形式を当該特定の簡略化ブロックに対して4つの直線クワッドから5つの直線形式に自動的に切り替えてもよい。
【0194】
前述のように、クワッドと他の簡略化ブロック形式は、熟達したプレイにおける競技者の脳と筋肉群の間の相互作用の、プロセッサによる幾何表現である。当該クワッドは、潜在意識的にスイッチオンされ離散パッケージにおいて脳により保持およびスイッチオフされる正の個々の関節パワーに対応し、離散パッケージにおいて脳によりスイッチオンされ、保持され、スイッチオフされているもの以外の任意のシーケンスには制御プロセスが通常現れないと仮定する。大部分の個々の関節に関連付けられた筋肉群は、これらの個々の関節に対する別々の隣接クワッドが重複はしないけれども、切欠きクワッドまたは簡略化ブロックとして完全に分離するかまたは互いに隣接するように、一体的に作用する。場合によっては、背骨の特定の想定関節に関連する筋肉群が、一体的には作用しない別々の副次筋肉群を含んでもよい。これが行われる場合には、別々の隣接するクワッドまたは簡略化ブロックが重複してもよい。
【0195】
場合によっては、個々の関節に対応するエネルギのブロックが、複数の簡略化ブロックまたはクワッドを含んでもよい。これが、少なくとも2つの異なる場面で生じてもよい。これらの場面の1つでは、ブロックが時間軸の上で零に低下する前に、減衰に対する命令が、脳または中枢神経システムにより立ち上がりへの命令に変更されるように見える。当該事例では、ブロックは2つ以上の切欠き簡略化ブロックまたはクワッドに分割される。別の場面では、同一の関節にわたって作用する複数の組の筋肉群が存在し、これらがその関節パワー・レベルの立ち上がりと減衰を別々に開始するように見える。当該事例では、ブロックは複数の重複する簡略化ブロックまたはクワッドに分割される。
【0196】
単一の関節パワーエネルギのブロックが、切欠き簡略化ブロックまたはクワッドに分割するための潜在的候補と認められる場合には、以下の基準が満たされる場合に当該ブロックが分割される。当該第1の基準は、パワー曲線が、当該ブロックを表し、少なくとも2つの最大ピーク値を含み、2つのピーク値の間の最小値が当該2つのピーク値のうち小さい方の特定部分より小さくなければならないということである。他の基準は、比例的な値に関し、結果の分割された簡略化ブロックまたはクワッドのピーク値が設定閾値を超え、その領域またはエネルギ値が設定閾値を超えなければならず、その領域またはエネルギ値が当該関節の全ての正値の設定パーセント閾値を超えなければならないという要件を含んでもよい。以下の基準が、低ハンディキャップの熟練競技者に対して満足できるものであることが分かっている。第1の基準は、約0.58の閾値部分である。当該比例的な値の基準は一般に、約7ワットの閾値ピーク値、および、約0.3ジュールの領域またはエネルギ値、および、約3%の全領域またはエネルギ値の割合を含む。ブロックを2つの切欠き簡略化ブロックまたはクワッドに形成する場合には、これらは2つのピークから時間軸までの間では特定の最小値から伸びる共有された垂直面を含むが、それ以外は簡略化ブロックまたはクワッドは既述のように形成される。クワッドのケースでは、切欠きクワッドの各々は5つの真っ直ぐな辺を含むが、幾つかの事例ではこれらの辺の一部が同一線上にあってもよい。最小値の点は、切欠きクワッドの隅の1つを含む。同一の基準が再分割部分に適用される場合には、上記の基準により分割したブロックは同様にさらに分割される。ブロックがその先端および末端の両方において切欠きクワッドに分割される場合には、結果の二重切欠きクワッドは前と同様に6つの辺を含み、幾つかの事例では、これらの辺の一部が同一線上にあってもよい。最小値の点が当該二重切欠きクワッドの2つの隅を含む。
【0197】
図24は、上述のように、ブロックをクワッドと切欠きクワッドに分割する際に必要なステップの幾つかを示す図を示す。
【0198】
熟達したダウンスイングでは、或る程度の重複が様々な関節のクワッドおよび簡略化ブロックに対して常に生じ、当該重複は、移動全体に動力供給するのに必要な関節の動きの範囲に起因するものであると考えられることが試験により示されている。熟達したダウンスイングでは、同一の関節に関連するクワッドおよび簡略化ブロックが通常は膝、腰、肩回転および肘関節では重複しないことが示されている。しかし、腰部関節と胸部関節の場合には重複する場合もあると思われる。この理由は、腰部関節と胸部関節のより複雑かつ異なる性質によるものであると考えられている。この場合、幾分異なる組の筋肉が異なる面における移動に関連付けられる。
【0199】
図25は、関節パワー曲線を含むブロックを1つもしくは2つのクワッドまたは簡略化ブロックに変換できる様々な方法を示す。本図で用いる参照番号のインデックスを以下に示す。
1 関節パワー曲線
2 2つのピーク値のうち小さい方の垂直高さ
3 2つのピーク値のうち大きい方の垂直高さ
4 2つのピークのうち最小値の垂直高さ
5 関節パワー曲線から構築した単一のクワッド
6 関節パワー曲線の初期部分から構築した第1の切欠きクワッド
7 関節パワー曲線の残りの部分から構築した第2の切欠きクワッド
8 関節パワー曲線の初期部分から構築した第1の重複クワッド
9 関節パワー曲線の残りの部分から構築した第2の重複クワッド。第1の重複クワッドと区別するために点線で示してある。
【0200】
次に
図25を参照すると、関節パワー曲線を、1つまたは複数の簡略化ブロックに正しく変換すべきかどうかが視覚的には明らかでない例として示されている。プロセッサ・システム内部で記憶された様々な基準を用いて適切な変換戦略に関して判定するためのアルゴリズムをプロセッサのソフトウェア内部で使用する。前述のように、これらの基準をゴルフ・スイング・データの経験的分析に基づいて設定して、関節パワーを立ち上がらせる脳からの1つまたは2つの潜在意識命令をブロックが実際に表現するかどうかを判定し、当該ブロック内部で独立に作用する1つまたは2つの筋肉群が存在するかどうかを判定する。図面でそれぞれ参照番号(2)および(4)で示したピーク間の最小値の垂直高さに対する小さい方のピークの垂直高さの割合に基づく基準を前述のように使用してもよい。クワッド形式が使用され、ブロックを分割すべきでないと当該基準が示す場合には、一般に、図面のクワッド(5)で示した単一のクワッドが生ずる。ブロックを2つの部分に分割すべきと当該基準が示し、1つの主要筋肉群だけが関与する場合には、一般に図で切欠きクワッド(6)および(7)として示した2つの切欠きクワッドが生ずる。しかし、ブロックを2つの部分に分割すべきと上記基準が示すが2つの実質的に独立な筋肉群が関与する場合には、一般に図で重複クワッド(8)および(9)で示した2つの重複クワッドが生ずる。切欠きクワッドおよび重複クワッドの分割の基準値は、それらが経験的試験と観測に基づくので、異なってもよい。
【0201】
ディスプレイ画面または印刷ドキュメントのような視覚的形態でプロセッサがクワッドを人間のユーザに提供する場合には、親しみ易い時間関連マーカを時間軸に沿って示すのが有利であることが分かっている。特に有用なマーカには、180°、90°、45°、および通常は0°付近で生ずるインパクトのような、容易に理解される基本位置の、前面におけるクラブ・シャフト角度がある。これらのマーカを、例えば、
図21に示すような画面またはドキュメント上の垂直線として示してもよい。基本クラブ・シャフト位置におけるゴルファーの小型の図的表現は、これらの垂直線に対応し、有用でありうる。他の重要な目印には、腰、肩およびクラブが各ダウンスイング移動を開始する前に最大回転位置に到達する時点のような、バックスイングのトップに関連付けられた様々な点が含まれる。システム・インタフェースおよびソフトウェアを、ユーザが容易にかかるマーカをディスプレイ上で任意または個別に追加または削除するように有利に配置してもよい。
【0202】
利用と分析
本発明に従って、様々な技術を用いて関節パワー・ブロックの分析結果をゴルフ・スイングに実用的に適用することができる。当該技術には、競技者またはゴルフ・コーチのような専門家により表示されたブロックもしくはクワッド・パターンの直接的な分析、または、プロセッサによるブロックまたはクワッド・パターンの自動的な分析がある。当該自動的な分析結果の結果は、競技者またはコーチに伝えられる。当該結果をクワッドまたは簡略化ブロック形式で表示する場合には、総エネルギ値、全期間、立ち上がり速度、減衰速度、および保持値が増大、安定、または低下するかどうかを含めて、各クワッドまたは簡略化ブロックの個々の特性を分析することができる。他のクワッドまたは簡略化ブロック値との関係も重要である。これらの特性の一部の関連は既に説明した。分析技術には、スイングのクワッドまたは簡略化ブロックのパターンを同一の競技者による他のスイングのパターンと比較することが含まれる。当該比較を競技者の過去のスイングの履歴で行って、例えば、コーチのプログラムを所定期間実施した際の進歩をチェックしてもよい。当該比較を、一連の直近のスイングで行って、スイングの個々のクワッドまたは簡略化ブロックのパターンの一貫性をチェックしてもよい。当該比較をさらに他のクラブで実行したスイングで行って、例えば、どのように競技者がドライバのような長距離クラブの使用スキルを、最大距離は要求されないがエネルギの同じ効率性、スムーズな生成と伝達が依然として望ましいスイングに変換したかをチェックしてもよい。分析技術がさらに、適切な専門家モデルの等価なスイングまたはスイング範囲に関連するクワッドまたは簡略化ブロックのパターンとの比較を含んでもよい。当該基準が、例えば、個々の関節パワーの作業量とその領域により表したクワッドまたは簡略化ブロックとの比較、相対座標位置とクワッドもしくは簡略化ブロックの重心の比較、または、立ち上がりの相対角度とクワッドもしくは簡略化ブロックの減衰の比較のような、統計分析に基づいてもよい。ゴルフ・スイングは複雑な動作であり、最適なエネルギ生成と伝達をもたらすと経験的に知られているクワッドまたは簡略化ブロックのパターンとの比較によりさらなる洞察を得ることができる。当該専門家モデルは、分析のもとでスイングと競技者に対して適切に調節された、専門家の競技者によるスイングの合成に基づく。これらの分析技術を、コーチもしくは競技者により直接実行してもよく、または、プロセッサにより自動的に実行してもよい。競技者からの過去の結果を、プロセッサによりアクセスでき分析において自動的に使用できるメモリのログに保持してもよい。
【0203】
本発明を用いた結果の試験と分析は、以下の点を示唆している。クワッドまたは簡略化ブロックがよりスムーズかつ深く立ち上がって減衰し、必要な仕事量を少ない重複度合いで伝達することが、より熟達したスイングの特性である。当該スイングでは、正確で適切な近位から遠位へのシーケンスを達成する傾向にある。同様に、試験によれば、徐々に未熟となるダウンスイングでは、次第に大量のブロックまたはクワッドの重複が生じ、あまり良好でない明確な立ち上がりと減衰が生じ、次第に近位から遠位に向かわないシーケンスが存在することが示されている。また、次第に熟達するダウンスイングには大量のパワーとエネルギが一般にクワッドまたは簡略化ブロックに含まれることが観測されている。低ハンディキャップの競技者は、高ハンディキャップの競技者と比べて、これらの競技者が同じ体力とフィットネスをもっていても、約2倍のブロックまたはクワッドのパワーを伝えることが頻繁に観測されている。試験によれば、さらに、良好かつ適度に熟達したダウンスイングでは、競技者は一般に同種のクラブを用いたスイングに対して、クワッドまたは簡略化ブロックの形状と大きさを含めて、非常に類似したクワッドまたは簡略化ブロックのシーケンスを再現することが示されている。この特徴は特に重要である。なぜならば、競技者は一般に、ダウンスイングを表す特徴的なブロックまたはクワッドの性質を表すことが示されているからである。当該特徴により、また、トレーニング・プログラムが促進され、クワッドまたは簡略化ブロックの形状とシーケンスを監視し、適切な動作過程を決定するために使用することができる。この特徴により、プレイにおいて問題または悪化が生じた場合に、競技者の過去のクワッドまたは簡略化ブロックの形状とシーケンスの記録をチェックするための手段がもたらされる。
【0204】
セグメント・エネルギ
セグメント・エネルギのクワッドまたは簡略化ブロックを、スイングの過程にわたって時間に対してプロットしたセグメント・エネルギの変化率曲線により表した時間変化するセグメント・エネルギの変化のブロックに対して構築してもよい。関節パワーのクワッドまたは簡略化ブロックと異なり、当該クワッドまたは簡略化ブロックは関節ではなくセグメントと関連付けられ、エネルギ生成よりエネルギ伝達に対してより密接に関連付けられる。当該クワッドまたは簡略化ブロックを関節パワーのクワッドと同様な4つの直線形式で構築できるが、当該クワッドまたは簡略化ブロックは、脳または中枢神経システムによる立ち上がり、保持および減衰命令を表現しないという点で異なり、したがって、元の形式または、時間軸により画される平滑化曲線のような他の幾何形式で示してもよい。当該クワッドまたは簡略化ブロックは、正の形式または負の形式で現れ、その両方のタイプは典型的なスイングに固有なエネルギ伝達プロセスにおいて重要である。セグメント・エネルギのブロックを分割し、異種の時間変化するセグメント・エネルギの変化に対して別々に示してもよい。例えば、別々のブロックを運動エネルギと位置エネルギに対して示すことができる。
【0205】
セグメント・エネルギのクワッドまたはブロックを、関節パワーのクワッドまたは簡略化ブロックに沿って有利に使用してもよい。当該クワッドまたはブロックは、関節パワーのクワッドまたは簡略化ブロックと同様な範囲の値を有し、したがって、同一スケールおよび同一単位のパワーをプロット座標で用い、プロット曲線下方の領域で表されるエネルギ単位を用いて、関節パワーのクワッドまたは簡略化ブロックと同一のプロットで容易に示すことができる。当該クワッドまたはブロックは、個々の競技者に対して特徴的なパターンで生ずる傾向にあり、これらの発生パターンには、競技者のスキルに相関する特性がある。これらの特徴は、関節パワーのクワッドまたは簡略化ブロックを用いる競技者には馴染みのあるものであり、直感的理解の開発を支援するものである。
【0206】
当該システムは、コーチング方法に多大な影響を及ぼす可能性がある。なぜならば、複雑な技術的情報をコーチまたは未熟な技術者に理解可能とすることができ、過去にはコーチまたは未熟な技術者には不可能であったかもしれない事項を直感的に理解できるからである。当該システムはまた、大量の関連情報を単一のチャートまたはスクリーンに表示することができ、多数の非技術者がもつ、グラフィカルに表示された情報に対する一般的な嫌悪感を克服するものである。本発明を以下の段落で要約する。
【0207】
システムはゴルフ・スイングを分析して、競技者の身体の逆動力学と詳細なモデル化を用いて、競技者の身体で生成された個々の関節パワーを高い精度レベルで決定する。深さカメラを使用して身体セグメント形状を測定し、磁気運動捕捉システムおよび3D力プレート・システムを使用してスイング・パラメータを測定する。
【0208】
当該システムは、高度な熟練技術者を必要とせずに迅速に分析結果を生成し、個々のコーチングと大規模なゴルフ・スイングのデータベースの編成に適している。
【0209】
代替的なシステムでは、ゴルフ・スイングを分析して、競技者の身体で生成された個々の関節パワーを含むスイング・パラメータを予測し、プロセッサと人工知能手段を利用する。深さカメラと力プレート・システムを使用して、プロセッサと人工知能手段への入力を測定する。当該人工知能手段が、ゴルフ・スイングの大規模データベースからの、運動捕捉、深さカメラ、および力プレート関連のパラメータでトレーニングされる。当該システムは、即時に分析結果を生成し、コーチまたは他者からの支援なしに競技者により使用することができる。
【0210】
さらに代替的なシステムでは、その本質的な特徴をユーザが直感的に理解できまたは別の装置がより容易に処理できる形式で抽出し通信する形式へと、複雑な関節パワー・データを変換することによってゴルフ・スイングを分析するプロセッサを備える。プロセッサは、特殊目的のアルゴリズム手段を利用して、関節パワー・データを離散ブロックに変換し、当該離散ブロックを有限個の有意な関連グループへと選択し、有意でない細部を除去し、競技者の脳または中枢神経システムからの基本的な立ち上がり命令と減衰命令を強調するようにその一般的形状を構成する。
【0211】
本発明は、本明細書で説明した具体的な詳細に限定されず、添付の方法と装置のクレームで定義した本発明の範囲から逸脱しない様々な修正および変形が可能であることは理解される。