(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
輸液チューブと連通する血管内留置用カテーテルまたは留置針の先端開口部を患者の静脈内または腸管に留置して薬剤,血液,栄養剤のいずれかを送液するための輸液ポンプであって、
前記薬剤を送液する際に前記輸液チューブの閉塞を検出する閉塞センサと、
前記閉塞センサの出力電圧が供給される制御部と
を備え、
前記閉塞センサは、
複数のマグネットを有し直線移動可能に配置された移動部材と、
前記輸液ポンプの本体側に固定され、前記輸液チューブの閉塞による前記輸液チューブの径方向の変化に追従して前記移動部材が直線移動するのに伴って生じる前記複数のマグネットの磁束の変化を検出して、前記輸液チューブの前記径方向の変化を前記出力電圧に変えるホール素子と
を有し、
前記制御部は、前記移動部材の異なる移動距離を予め定めた複数位置間で移動距離を増加させる際に、前記複数の位置毎に、前記ホール素子に対して予め定めた複数の付与電圧を印加して、前記複数の位置毎に与えた前記複数の付与電圧の中から前記付与電圧を選択することで、前記複数の位置に対する前記ホール素子の前記出力電圧の直線性を得る構成とした
ことを特徴とする輸液ポンプ。
前記閉塞センサが前記輸液チューブの閉塞を検出した場合に、前記制御部の指令により警告を出す警告手段を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の輸液ポンプ。
前記輸液ポンプの本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が配置され、前記輸液ポンプの本体の下部分は、前記薬剤を送液するための前記輸液チューブを配置する領域であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す輸液ポンプをW方向から見た図である。
【0014】
図1と
図2に示す輸液ポンプ1は、患者に対して、例えば集中治療室(ICU、CCU,NICU)等での例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤等の薬剤(薬液ともいう)の注入処置、栄養剤の注入処置、輸血等を比較的高い精度で比較的長時間行うことに用いられる持続注入ポンプである。
この輸液ポンプ1は、例えば薬剤ライブラリから使用する薬剤を選択して、その選択した薬剤を送液するために用いられる。この薬剤ライブラリは、薬剤ライブラリデータベース(DB)において、予め登録された薬剤名を含む薬剤の投与設定群である薬剤情報である。医療従事者は、この薬剤ライブラリを用いることにより、複雑な投与設定をその都度行わなくても良く、薬剤の選択および薬剤の設定が図れる。
【0015】
図2に示すように、輸液ポンプ1は、薬剤171を充填した薬剤バッグ170から、クレンメ179と輸液チューブ200と留置針172を介して、患者Pの血管内に正確に送液することができる。薬剤は輸液剤ともいう。輸液チューブは輸液ラインともいう。
輸液ポンプ1は、本体カバー2と取手2Tを有しており、取手2TはN方向に伸ばしたりT方向に収納したりすることができる。この本体カバー2は、本体ともいい、耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されており、仮に薬剤等がかかっても輸液ポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防滴処理構造を有している。このように、本体カバー2が防滴処理構造を有しているのは、上方に配置されている薬剤バッグ170内の薬剤171がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散して付着することがあるためである。
【0016】
まず、輸液ポンプ1の本体カバー2に配置された要素について説明する。
図1と
図2に示すように、本体カバー2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が配置されている。表示部3は、画像表示装置であり、例えばカラー液晶表示装置を用いている。この表示部3は、日本語表記による情報表記だけでなく、必要に応じて複数の外国語による情報の表示を行うことができる。表示部3は、本体カバー2の上部分2Aの左上位置であって、開閉カバー5の上側に配置されている。本体カバー2の上部分2Aは、本体カバー2の上半分の部分である。本体カバー2の下部分2Bは、本体カバー2の下半分の部分である。
輸液ポンプ1の本体カバー2の上部分2Aには、情報を表示する表示部3と、複数の操作ボタンを有する操作パネル部4が配置され、輸液ポンプ1の本体カバー2の下部分2Bは、薬剤を送液するための送液部材である輸液チューブ200を配置する領域である。これにより、医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、輸液ポンプ1による薬剤の送液作業を行うことができる。そして、医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。このため、輸液ポンプ1の操作性が良好である。
【0017】
図2では、表示部3には、一例として薬剤投与の予定量(mL)の表示欄3B、薬剤投与の積算量(mL)の表示欄3C、充電履歴の表示欄3D、流量(mL/h)の表示欄3E等が表示されているが、
図1に示す表示部3ではこれらの表示内容の図示は、図面の簡単化のために省略している。表示部3は、この他に警告メッセージを表示することもできる。また、表示部3は、LED(発光ダイオード)のバックライトを点灯することで、例えば「黄色の表示画面」から、医療従事者に対する警告画面である「白色の表示画面」に表示変更することができる。
操作パネル部4は、本体カバー2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置され、操作パネル部4には、操作ボタンとしては、図示例では、例えば動作インジケータの機能を果たすランプ4A(LEDなどで形成され、正常動作時には緑色に点滅または点灯、異常動作時には赤色に点滅または点灯)、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E、電源スイッチ4F等が配置されている。
【0018】
図1に示すように、本体カバー2の下部分2Bには、蓋部材としての開閉カバー5が回転軸5Aを中心として、R方向に開閉可能に設けられている。開閉カバー5は、X方向に沿って長く形成されている板状の蓋部材である。チューブ装着部50と送液駆動部60は、開閉カバー5の内側に配置されている。このチューブ装着部50には、例えば軟質塩化ビニル等の可撓性の熱可塑性樹脂製の輸液チューブ200をセットして、この開閉カバー5を閉じることで、輸液チューブ200は、チューブ装着部50において、X方向(T方向)に沿って水平に装着できる。
なお、
図1と
図2におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。X方向は、送液方向であるT方向と平行であり輸液ポンプ1の左右方向である。Y方向は、輸液ポンプ1の前後方向である。
【0019】
図3は、
図1と
図2に示す輸液ポンプ1の開閉カバー5を開いて、輸液チューブ200を装着するためのチューブ装着部50を示す斜視図である。
図3に示すように、チューブ装着部50と送液駆動部60は、輸液ポンプ1の本体下部1B側に設けられており、チューブ装着部50と送液駆動部60は、表示部3と操作パネル部4の下部においてX方向に沿って設けられている。チューブ装着部50は、
図2に示すように開閉カバー5を、回転軸5Aを中心としてCR方向に閉じると開閉カバー5により覆うことができる。
【0020】
医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、チューブ装着部50への輸液チューブ200の装着を行って、開閉カバー5を閉じることができる。そして、医療従事者は、本体カバー2の上部分2Aの表示部3の情報を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。これにより、医療現場において、輸液ポンプ1の操作性を向上することができる。
図3に示すように、チューブ装着部50は、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、チューブクランプ部270と、右側位置の第1輸液チューブガイド部54と左側位置の第2輸液チューブガイド部55を有している。
【0021】
図3に示すように、チューブ装着部50の付近には、輸液チューブ200をセットする際に、正しい送液方向であるT方向を明確に表示するための輸液チューブ設定方向表示部150が設けられている。この輸液チューブ設定方向表示部150は、例えば複数の矢印151により構成されている。輸液チューブ設定方向表示部150は、例えばチューブ装着部50の下部に直接印刷しても良いし、シール状の部材に印刷したものをチューブ装着部50の下部に貼り付けても良い。輸液チューブ設定方向表示部150は、開閉カバー5の内側にセットされた輸液チューブ200による薬剤171の正しい方向の送液方向(T方向)を明示するために配置されている。
これにより、医療従事者が、
図3の開閉カバー5をCS方向に開けて、チューブ装着部50を開放して、このチューブ装着部50に対して輸液チューブ200を装着する際に、輸液チューブ200による薬剤の送液方向であるT方向を明示できる。このため、医療従事者が、誤って輸液チューブ200を逆方向に装着してしまうことを確実に防ぐことができる。
【0022】
次に、
図3に示す開閉カバー5の構造例を説明する。
図3に示すように、開閉カバー5は、輸液ポンプ1を軽量化するために、薄い成型樹脂部材により作られている板状の部材である。これにより、開閉カバー5の重量を軽減でき、構造を簡単化することができる。開閉カバー5は、チューブ装着部50を、回転軸5Aを中心としてCS方向とCR方向に沿って開閉可能に覆うことができるようにするために、2つのヒンジ部2H、2Hにより本体カバー2の本体下部2Bに対して支持されている。2つのヒンジ部2H、2Hは、第1フック部材5Dと第2フック部材5Eにそれぞれ対応して配置されている。
【0023】
図2と
図3に示すように、開閉カバー5の表面側には、右上部分に開閉操作レバー260が設けられている。開閉カバー5の内面側には、輸液チューブ押さえ部材500と、第1フック部材5Dと第2フック部材5Eが設けられている。この輸液チューブ押さえ部材500は、X方向に沿って長く矩形状かつ面状の突出部として配置されており、輸液チューブ押さえ部材500は、送液駆動部60に対面する位置にある。輸液チューブ押さえ部材500は、送液駆動部60に沿ってX方向に平坦面を有しており、輸液チューブ押さえ部材500は、開閉カバー5をCR方向に閉じることで、送液駆動部60との間で輸液チューブ200の一部分を押し付けて挟むようになっている。
医療従事者は、表示部3に表示されている表示内容を確認しながら、輸液チューブ200を輸液ポンプ1の本体の下半分の部分に水平方向に沿ってセットでき、輸液チューブ200がチューブ装着部50にセットされた後に、開閉カバー5は輸液チューブ200を覆うことができる。
【0024】
図3に示すように、第1フック部材5Dと第2フック部材5Eは、本体下部1B側の固定部分1D、1Eに対してそれぞれ機械的に同時に掛かることにより、開閉カバー5は、
図2に示すように、本体下部1Bのチューブ装着部50を閉鎖した状態に保持する。この第1フック部材5Dと第2フック部材5Eと、本体下部1B側の固定部分1D、1Eは、開閉カバー5のダブルフック構造部300を構成している。
【0025】
図3に示すチューブクランプ部270は、開閉カバー5を閉じることにより、輸液チューブ200の途中部分をクランプして閉塞させる。チューブクランプ部270は、左側の固定部分1Eの近傍であって、左側の第2フック部材5Eに対応する位置に配置されている。医療従事者が輸液チューブ200をX方向に水平にセットして、医療従事者が開閉カバー5をCR方向に閉じると、チューブクランプ部270は、輸液チューブ200の途中の一部分を閉塞できる。
【0026】
図3に示すように、第1輸液チューブガイド部54は、本体下部1Bおいて向かって右側部分に設けられ、第2輸液チューブガイド部55は、本体下部1Bにおいて向かって左側部分に設けられている。第1輸液チューブガイド部54は、輸液チューブ200の上流側200Aをはめ込むことで保持でき、第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200の下流側200Bをはめ込むことで保持でき、輸液チューブ200をX方向に沿って水平方向に保持するようになっている。このように、水平方向に保持された輸液チューブ200は、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、送液駆動部60と、下流閉塞センサ53と、そしてチューブクランプ部270に沿って、T方向に沿ってはめ込んで固定される。
【0027】
図3に示すように、第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200の下流側200Bの一部分を着脱可能に挟んで保持するために、本体下部1Bの側面部分1Sに形成された溝部分である。第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200を開閉カバー5とチューブ装着部50との間に挟み込んで潰してしまうことが無いように、チューブ装着部50内に確実に装着できる。
【0028】
図3に示す気泡センサ51は、輸液チューブ200内に生じる気泡(空気)を検出するセンサであり、例えば気泡センサ51は、ポリブタジエン等の熱可塑性樹脂等で形成された軟質塩化ビニルなどの輸液チューブ200の外側から、輸液チューブ200内に流れる薬剤中に含まれる気泡を監視する超音波センサである。超音波センサの超音波発振部から発生する超音波を輸液チューブ200内に流れる薬剤に当てることで、薬剤における超音波の透過率と、気泡における超音波の透過率とが異なることから、超音波受信部は、その透過率の差を検出して気泡の有無を監視する。気泡センサ51は、押し当て部材320と受け部材330を有している。超音波発振部は押し当て部材320に配置されている。超音波受信部は受け部材330に配置されている。
【0029】
図3に示す上流閉塞センサ52は、輸液チューブ200の上流側200Aにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサであり、下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200の下流側200Bにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサである。上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、同じ構成である。輸液チューブ200が閉塞する場合としては、例えば送液しようとする薬剤の粘度が高いか、薬剤の濃度が高い等の場合である。
【0030】
図3に示すように、開閉カバー5の内面側には、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の対応する位置に、それぞれ押圧部材452、453が設けられている。医療従事者が、
図3に示すようにチューブ装着部50に輸液チューブ200をセットした後に、
図2に示すように開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5側の押圧部材452と押圧部材453が輸液チューブ200の一部分を上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53側にそれぞれ押し当てることができる。このため、直径が異なる複数種類の輸液チューブ200の内の何れのサイズの輸液チューブ200が輸液ポンプ1に装着されても、開閉カバー5を閉じると上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200の閉塞状態を検出できる。
【0031】
図4は、輸液ポンプ1の電気的な構成例を示している。
図4に示すように、輸液ポンプ1は、輸液ポンプ1全体の動作を判断・制御を行なう制御部100を有している。送液駆動部60は、駆動モータ61と、この駆動モータ61により回転駆動される複数個のカムを有するカム構造体62と、このカム構造体62の各カムにより移動される複数のフィンガを有するフィンガ構造体63を有している。
カム構造体62は、複数のカム、例えば複数のカム62A〜62Fを有しており、フィンガ構造体63は、複数のカム62A〜62Fに対応して複数のフィンガ63A〜63Fを有している。複数のカム62A〜62Fは互いに位相差を付けて配列されており、カム構造体62は、駆動モータ61の出力軸61Aに連結されている。
【0032】
図4に示す制御部100の指令により、送液駆動部60は、駆動モータ61と、この駆動モータ61の出力軸61Aが回転すると出力軸61Aに軸支されたカム構造体62に設けられた偏心カム62A〜62Fが回転し、複数のフィンガ63A〜63Fを順次Y方向に所定ストローク分(上死点と下死点との距離分)進退させる。駆動モータ61としては、ステップモータを用いている。
複数のフィンガ63A〜63Fが順番にY方向に所定ストローク分進退することで、輸液チューブ200はT方向に沿って開閉カバー5の輸液チューブ押さえ部材500に対して押し付けられる。このため、輸液チューブ200内の薬剤は、T方向に送液することができる。すなわち、複数のフィンガ63A〜63Fが個別駆動されることで、複数のフィンガ63A〜63Fが輸液チューブ200の外周面をT方向に沿って順次押圧して輸液チューブ200内の薬剤の送液を行う。このように、制御部100が、複数のフィンガ63A〜63Fの蠕動運動を制御することにより、フィンガ63A〜63Fを順次前後進させ、あたかも波動が進行するようにして、輸液チューブ200の閉塞点をT方向に移動させることで、輸液チューブ200をしごいて、留置針172を通じて、患者Pの血管内に薬剤を送液するようになっている。
【0033】
輸液ポンプ1の制御部100は、CPU(中央制御部)チップを採用している。制御部100は、全体的な動作の判断・制御を行うために、例えばワンチップのマイクロコンピュータを用いており、ROM(読み出し専用メモリ)101,RAM(ランダムアクセスメモリ)102、不揮発性メモリ103、そしてクロック104を有する。クロック104は、所定の操作により現在時刻の修正ができ、現在時刻の取得や、所定の送液作業の経過時間の計測、送液の速度制御の基準時間の計測等ができる。
【0034】
図4に示す制御部100は、電源スイッチボタン4Fと電源切り替え用のスイッチ111、表示部ドライバ130と表示部3、駆動モータ61、スピーカ131、ブザー132、ランプ3W、気泡センサ51、上流閉塞センサ52、下流閉塞センサ53、通信ポート140、操作パネル(操作ボタン)4と、温度センサ99と、ナースセンタ側の情報端末600に接続されており、これらの周辺要素の管理と制御を行っている。表示部3、スピーカ131、ブザー132、動作インジケータの機能を果たすランプ4A(LEDなどで形成され、正常動作時には緑色に点滅または点灯、異常動作時には赤色に点滅または点灯)の少なくとも1つあるいは全部は、輸液チューブ200内で閉塞が生じたことを制御部100が認識すると、制御部100の指令により医療従事者に対して警告を出すための警告手段である。これにより、医療従事者は、輸液チューブ200が閉塞したことを直ちに認識して、輸液ポンプ1の駆動モータ61を停止させて、薬剤の送液動作を停止させることができる。
温度センサ99は、輸液ポンプ1の置かれている環境の温度を検出して、制御部100の温度信号TESを送る。
【0035】
スイッチ111は、電源コンバータ部112とバッテリ113を切り換えることで、電源コンバータ部112とバッテリ113の一方から制御部100に対して電源供給する。電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。バッテリ113は、例えばリチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池である。
また、制御部100は、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53にも接続されている。これにより、制御部100は、輸液チューブ200内の閉塞状態の監視をもすることができる。
図4と
図5に示すように、輸液ポンプ1が例えば病棟に置かれている場合に、ナースセンタ側の情報端末600は、輸液ポンプ1から離れたナースセンタ650に置かれており、上述した表示部3、ランプ4A、スピーカ131、ブザー132と同様の表示部3T、ランプ3WT、スピーカ131T、ブザー132Tを有している。表示部3T、スピーカ131T、ブザー132T、ランプ3WTの少なくとも1つあるいは全部は、輸液チューブ200内で閉塞が生じたことを制御部100が認識すると、制御部100の指令により医療従事者に対して警告を出すための警告手段である。これにより、ナースセンタ650に居る医療従事者は、輸液チューブ200が閉塞したことを直ちに認識して、輸液ポンプ1の駆動モータ61を停止させて、薬剤の送液動作を停止させることができる。
【0036】
図4の表示部ドライバ130は、制御部100の指令により表示部3を駆動して、
図2に例示する情報内容や警告メッセージを表示し、LED(発光ダイオード)のバックライトを点灯させることで、例えば「黄色の表示画面」から、医療従事者に対する警告画面である「白色の表示画面」に表示変更することができる。これにより、医療従事者が視覚で認知できる可能性を高める。エラー表示用のランプ4Aは、制御部100の指令により、点灯する。スピーカ131は、制御部100の指令により各種の警告内容を音声により告知することができる。ブザー132は、制御部100の指令により各種の警告を音により警告することができる。
同様にして、制御部100の指令により表示部3Tを駆動して、
図2に例示する情報内容や警告メッセージを表示し、LED(発光ダイオード)のバックライトを点灯させることで、例えば「黄色の表示画面」から、医療従事者に対する警告画面である「白色の表示画面」に表示変更することができる。これにより、医療従事者が視覚で認知できる可能性を高める。エラー表示用のランプ4Aは、制御部100の指令により、赤色で点滅または点灯する。スピーカ131Tは、制御部100の指令により各種の警告内容を音声により告知することができる。ブザー132Tは、制御部100の指令により各種の警告を音により警告することができる。
【0037】
図4において、気泡センサ51からの気泡検出信号S1と、上流閉塞センサ52からの輸液チューブ200の上流側が閉塞したことを示す上流閉塞信号S2と、そして下流閉塞センサ53からの輸液チューブ200の下流側が閉塞したことを示す下流閉塞信号S3は、制御部100に供給される。
上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越えて、薬剤を送液できない状態を検出することができる。輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越える原因としては、
図2に示す輸液用の留置針172の先端が患者Pの血管内から外れるいわゆる「針外れ」が生じた場合や、輸液チューブ200内が詰まって閉塞している場合、輸液チューブ200の一部がつぶれているまたは折れている場合、高粘度の薬剤を使用している場合等である。
【0038】
図4において、制御部100は、RS−232C(RS:Recommended Standard;EIA(米国電子工業会)により規格化された通信方式のシリアル入出力インターフェース)や有線の通信方式や無線LANや赤外線通信等により、通信ポート140を通じて、例えば、デスクトップコンピュータのようなコンピュータ141に対して双方向に通信可能である。このコンピュータ141は、薬剤データベース(DB)160に接続されており、薬剤データベース160に格納されている薬剤ライブラリMFは、必要に応じてコンピュータ141を介して、制御部100に取得して、制御部100の不揮発性メモリ103に記憶させることができる。制御部100は、記憶した薬剤ライブラリMFを基にして、例えば
図2に示す表示部3には薬剤ライブラリMF等を表示することができる。
なお、薬剤情報MFとしては、例えば、薬剤メーカ名,薬剤名,薬剤投与の予定量(mL)の上限・下限値,流量(mL/h)の上限・下限値,禁忌情報等である。
【0039】
図4を参照すると、
図4に示す上流閉塞センサ52は、輸液チューブ200の上流側200Aにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出して、制御部100に対して、輸液チューブ200の上流側が閉塞したことを示す上流閉塞信号S2を送るためのセンサである。
図2の輸液チューブ200の上流側200Aが閉塞した場合には、
図2に示す薬剤171を充填した薬剤バッグ170から、クレンメ179を介して輸液チューブ200の上流側200Aへ薬剤171が流れ込もうとするが、上流側200Aの閉塞により閉塞しており、しかも送液駆動部60が駆動しているので、上流側200Aの直ぐ下流側の部分は陰圧になる。これに対して、下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200の下流側200Bにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出して、輸液チューブ200の下流側が閉塞したことを示す下流閉塞信号S3を送るためのセンサである。
図2の輸液チューブ200の下流側200Bが閉塞した場合には、送液駆動部60が駆動により上流側から送られてくる薬剤171が下流側200Bの閉塞により送ることができないので、下流側200B内は陽圧になる。
【0040】
図5は、
図4に示す輸液ポンプ1の電気的な構成例の中の一部を、さらに詳しく示すブロック図である。
図6は、上流閉塞センサ52および下流閉塞センサ53の構造例を示す分解斜視図である。
図5に示すように、制御部100の例えば不揮発性メモリ103には、付与電圧テーブル900が予め記憶されている。また、制御部100には温度センサ99が接続されている。
図6に例示するように、上流閉塞センサ52および下流閉塞センサ53は同じ構造を有している。チューブ装着部50の表面50Sには、穴部400が設けられている。この穴部400には、プラスチック製の枠部材401がはめ込まれており、枠部材401は長方形の開口部402を有している。プラスチック製のプランジャ403は、穴部400内の収容穴部404内に挿入されており、プランジャ403は基部405と先端部406とスプリング407を有している。
【0041】
この開口部402には、プランジャ403の先端部406がはめ込まれている。スプリング407の一端部は基部405に取り付けられ、スプリング407の他端部は収容穴部404内の突起409に取り付けられている。収容穴部404の内面には、ホール素子410が配置されている。基部405には、2つのマグネット411,412が配置されている。
【0042】
このような構造を採用することにより、枠部材401を穴部400に装着し、基部405はスプリング407を保持しながら、開口部402と収容穴部404内に挿入するだけで、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、チューブ装着部50の表面50Sに対して簡単に装着することができ、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の組み立て作業性を向上できる。
一方、
図4に示すように、開閉カバー5の内面側には、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の対応する位置に、それぞれ押圧部材452、453が設けられている。押圧部材452、453は、スプリング441を介して対面している枠部材401側に押される構造である。押圧部材452は第1押圧部材であり、押圧部材453は第2押圧部材である。
【0043】
このため、医療従事者が、
図3に示すようにチューブ装着部50に輸液チューブ200をセットした後に、
図2に示すように開閉カバー5を閉じると、開閉カバー5側の第1押圧部材452と第2押圧部材453が、輸液チューブ200の一部を上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53側にそれぞれ押し当てることができる。このため、輸液チューブ200の外径が、製造上の公差のために若干バラツキが有る場合や、輸液チューブ200の製造メーカが違っている場合でも、輸液チューブ200は、開閉カバー5を閉じれば、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200に必ず押し当てられて、輸液チューブ200の閉塞状態を精度よく検出できるようになっている。
【0044】
上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の構造をさらに具体的に説明する。
図2に示すように、開閉カバー5を閉じると、
図6に示すように輸液チューブ200は、押圧部材452(453)とプランジャ403の先端部406の間において、付勢部材としてのスプリング407,441の各付勢力により挟まれて保持される。プランジャ403は、ホール素子410に対して直線移動可能な移動部材の一例である。もし、輸液チューブ200が閉塞したことで輸液チューブ200の直径が変わると、先端部406が輸液チューブ200の直径の変化に追従してY方向に移動する。このため、マグネット411,412がホール素子410に対して相対的に移動するので、ホール素子410は磁束の変化を検出して、プランジャ403の移動距離を、制御部100に対して磁束の変化の信号として送ることができる。
【0045】
図6に示すように、スプリング441の中心軸方向とスプリング407の中心軸方向は一致しており、スプリング441,407が、押圧部材452(453)と先端部406の間に輸液チューブ200を挟むことで、輸液チューブ200の直径方向に沿って輸液チューブ200に対して加圧力を与えることができる。このため、閉塞センサ52,53を形成するプランジャ403の移動距離を検出することにより、輸液チューブ200の閉塞状態を精度よく検出できる。
【0046】
図7(A)は、
図6に示すプランジャ403の基部405に配置されたマグネット411,412と、ホール素子410を示している。基部405に配置されたマグネット411,412は、Y方向に移動可能な移動体であり、ホール素子410は固定体である。このため、輸液チューブ200が閉塞したことで輸液チューブ200の直径寸法が変わると、
図6の先端部406が輸液チューブ200の直径の変化に追従してY方向に移動するので、マグネット411,412がホール素子410に対して相対的にY方向に沿って移動する。このマグネット411,412のY方向への直線移動により、ホール素子410は磁束の変化を検出する。ホール素子410は、制御部100から付与電圧BEが供給されており、ホール素子410がマグネット411,412からの磁束変化を検出することで、ホール素子410の出力電圧PVが、制御部100に送られる。ホール素子410の出力電圧PVは、プランジャ403のY方向への移動距離と比例している。
なお、
図7(B),(C)の出力電圧PVによる傾きが逆(右下がりの勾配)になるようにしてもよい。
【0047】
図7(B)と
図7(C)は、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53のホール素子410の出力電圧PVと、閉塞に伴う輸液チューブ200の外径(3.3mm程度)の膨らみ(拡径Δ=0.2mm程度の外径の増加)に対応したプランジャ403の移動距離DLの関係例を示している。
図7(B)と
図7(C)に示す各例では、ホール素子410の出力電圧PVと、プランジャ403の移動距離DLの関係は、出力電圧PVはほぼ同じであり、直線的(リニア)になっているが、
図7(B)の場合の直線区間FKは、
図7(C)の場合の直線区間FHに比べて、直線区間FK<直線区間FHの関係になっている。すなわち、
図7(B)の場合の直線部分LL1の傾きは、
図7(B)の場合の直線部分LL2の傾きに比べて大きい。
【0048】
そこで、
図6に示す上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53を、輸液ポンプ1に装着する際に、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53のホール素子410の出力電圧PVと、プランジャ403の移動距離DLの関係を、高すぎる感度あるいは低すぎる感度ではなく適切な感度を有する直線関係に設定するために、次のような設定処理を行う。
図8は、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53を、輸液ポンプ1に組み立てて装着する際に、ホール素子410の出力電圧PVと、プランジャ403の移動距離DLの関係を、適切な感度を有する直線関係に設定するための手順を示している。
図9は、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53のホール素子410の出力電圧PVと、プランジャ403の移動距離DLの関係を、適切な感度(適切な直線部分の傾き)を有する直線関係に設定する様子を示している。
【0049】
図8に示すステップST1では、
図6に示すように、組立作業者が上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53を組み立てる際に、ホール素子410が、穴部400内の収容穴部404内の所定の位置に固定される。ホール素子410は制御部100に電気的に接続されるので、
図7(A)に示すように、制御部100はホール素子410に対して付与電圧BEを供給できる状態になる。
図6に示すように、組立作業者は、プランジャ403を、穴部400内の収容穴部404内に挿入し、枠部材401の開口部402には、プランジャ403の先端部406をはめ込む。スプリング407の一端部は基部405に取り付けられ、スプリング407の他端部は収容穴部404内の突起409に取り付けられる。
【0050】
図8のステップST2では、組立作業者は、
図6に示すこのプランジャ403をスプリング407の力に抗して、手動でY方向に移動すると、
図9に例示するように、プランジャ403の移動距離DLを、Y方向に沿って例えば予め定めた4つの移動距離位置D1、D2、D3、D4に順次移動して位置決めする。
図5の制御部100は、付与電圧テーブル900を参照して、付与電圧テーブル900に記憶されている付与電圧BE1からBE16をホール素子410に供給する。すなわち、プランジャ403の移動距離DLが移動距離位置D1に位置決めされた時点で、制御部100は、付与電圧BE1からBE4をホール素子410に供給する。プランジャ403の移動距離DLが移動距離位置D2に位置決めされた時点で、制御部100は、付与電圧BE5からBE8をホール素子410に供給する。プランジャ403の移動距離DLが移動距離位置D3に位置決めされた時点で、制御部100は、付与電圧BE9からBE12をホール素子410に供給する。そして、プランジャ403の移動距離DLが移動距離位置D4に位置決めされた時点で、制御部100は、付与電圧BE13からBE16をホール素子410に供給する。
【0051】
そして、
図8のステップST3では、
図9では、制御部100は、プランジャ403の移動距離DLが移動距離位置D1に位置決めされた時点では、付与電圧BE2を選択することで、ホール素子の出力電圧PV1を得る。プランジャ403の移動距離DLが移動距離位置D2に位置決めされた時点では、付与電圧BE7を選択することで、ホール素子の出力電圧PV2を得る。プランジャ403の移動距離DLが移動距離位置D3に位置決めされた時点では、付与電圧BE10を選択することで、ホール素子の出力電圧PV3を得る。そしてプランジャ403の移動距離DLが移動距離位置D4に位置決めされた時点では、付与電圧BE15を選択することで、ホール素子の出力電圧PV4を得る。これにより、プランジャ403の移動距離DLが移動距離位置D1、D2、D3、D4に対するホール素子の出力電圧PV1、PV2、PV3、PV4の関係から、直線LLで示すように正確な直線性を得ることができる。制御部100は、このようにして得られた直線LLから、プランジャ403の移動距離DLのどの位置においても、その位置に対応するホール素子の出力電圧PVを得ることができる。
【0052】
この場合に、
図7(B)の場合のように、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53により直線性の出力が得られる出力電圧PVに対して移動距離DLが小さいと、プランジャ403が検出に使用できる移動距離DLが短くなってしまって、プランジャ403のY方向の長さを十分に生かすことができないと、輸液チューブ200の膨らみ量(拡径Δ)による閉塞状態を検出しにくくなる。即ち、閉塞検出を正確に行うためのマージンが少ない。このため、本願発明では、
図7(C)のように可能な限りプランジャ403が閉塞検出を正確に行うことができるように、
図7(B)と同様の上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53より直線性の出力が得られる出力電圧PVに対して移動距離DLが2倍程度になるようにしている。なお、プランジャ403が検出に使用できる直線区間FHの距離は、輸液チューブ200の膨らみ量(拡径Δ)の2〜3倍になるようにしている。
2倍より小さいと、
図7(B)のようになり、閉塞状態を検出しにくくなる。また、3倍を越えると、プランジャ403のY方向の寸法が大きくなり好ましくない。
このようにすることで、即ち、閉塞検出の閾値とのマージンを大きくでき、閉塞検出を正確にできるような適切な感度にするだけでなく、閉塞検出の閾値を必要に応じて複数設けることができる。なお、プランジャ403の移動距離DLとして、予め定めた4つの移動距離位置D1、D2、D3、D4を設定しているが、5つ以上の移動距離位置を予め定めて、5つ以上の移動距離位置に対応するホール素子410の5つ以上の出力電圧PVを取得するようにしても良い。
なお、移動距離位置D1より小さいこと及び/または出力電圧が直線領域から外れている場合、輸液チューブ200が送液駆動部60のチューブ装着部50に確実に装着されていない状態か、送液動作中に輸液チューブ200が装着(セット)されるべき所定位置である送液駆動部60のチューブ装着部50から外れた状態を検出し、アラームを発生して、駆動モータを停止したりすることができる。
ステップST3において、制御部100における判断の結果、プランジャ403の移動距離DLの増加とホール素子410の出力電圧PVの増加との関係がリニアであり、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53のホール素子410の出力電圧PVと、プランジャ403の移動距離DLの関係を、高すぎる感度あるいは低すぎる感度ではなく適切な感度を有する直線関係に設定できると、ステップST4に移る。
【0053】
ステップST4では、組立作業者は、プランジャ403とホール素子410の組み立て体を採用して、ステップST5では、
図6に示すに上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53を組み込むことができる。このようにすることで、プランジャ403の設定作業が確実に行えるので、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53を組み込んで設定するための時間が短縮できる。
なお、ステップST3において、制御部100の判断の結果、プランジャ403の移動距離DLの増加とホール素子410の出力電圧PVの増加との関係がリニアでない場合には、このプランジャ403とホール素子410の組み立て体は、不良品として採用しない。例えば別のプランジャ403を用意して、この別に用意したプランジャ403とホール素子410の組み立て体を用いて、
図8のステップST1からステップST3を実行することになる。
【0054】
ところで、輸液チューブ200は、輸液チューブ200内で送液されている薬剤の作用により発生する内圧が一定の場合であっても、輸液チューブ200周辺の温度が変化するのに伴って、その膨らみ量(上流閉塞センサ52側ではしぼみ、下流閉塞センサ53側では膨らむ(拡径する))が変化する。輸液チューブ200はポリブタジエン等の熱可塑性樹脂等で形成され、温度が高くなると軟化し、逆に、温度が低くなると硬化する傾向がある。このため、一定のチューブ内圧が作用していても、輸液ポンプ1の置かれている環境の温度が高くなると輸液チューブ200は膨らみ易くなり、逆に輸液ポンプ1の置かれている環境の温度が低くなる輸液チューブ200は膨らみ難くなる。
【0055】
このため、好ましくは、輸液ポンプ1の使用環境温度を検出するために、
図5に例示するサーミスタ等の温度センサ99を設けている。そして、温度センサ99で検出した使用環境温度を例えば0〜40℃の間で、温度の幅を5℃毎に閉塞圧検知の閾値(閉塞センサ52,53を形成するプランジャ403の移動距離の閾値)を変更することで、輸液チューブ200の閉塞状態を精度よく検出できる。例えば、一定圧の時の20〜25℃の時のプランジャ403の移動距離を1として、15〜20℃の時のプランジャ403の移動距離を0.99、10〜15℃の時のプランジャ403の移動距離を0.98、0〜10℃の時のプランジャ403の移動距離を0.97、25〜30℃の時のプランジャ403の移動距離を1.01、30〜35℃の時のプランジャ403の移動距離の1.02としてROM(読み出し専用メモリ)101に記憶し、閾値を変更する。
【0056】
これにより、輸液チューブ200が膨らみ易くなったり、膨らみ難くなっても、その輸液チューブ200の膨らみや収縮に対応して輸液チューブ200内の閉塞圧をほぼ一定のレベルで検知できる。なお、温度の幅を5℃より大きくして補正してもよいが、この場合、閉塞検知の感度がやや低下する。また、温度の幅を5℃より小さくして補正してもよいが、この場合、ROM(読み出し専用メモリ)101の記憶容量が大きくなる。
【0057】
次に、上述した輸液ポンプ1の使用例を簡単に説明する。
図3に示すように医療従事者が、開閉カバー5を開けてチューブ装着部50に輸液チューブ200を設定する際に、輸液チューブ設定方向表示部150を見て輸液チューブ200のセット方向を目視で確認する。そして、医療従事者は、輸液チューブ200の上流側200Aを本体部1Bおいて向かって右側部分の第1輸液チューブガイド部54側に配置し、輸液チューブ200の下流側200Bを本体部1Bにおいて向かって左側部分の第2輸液チューブガイド部55側に配置する。
【0058】
このようにして、医療従事者は、輸液チューブ200を、第1輸液チューブガイド部54、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52、送液駆動部60、下流閉塞センサ53、チューブクランプ部270、そして第2輸液チューブガイド部55に沿ってT方向にセットできる。その後、
図1と
図2に示すように、開閉カバー5を閉じて、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、そして送液駆動部60と、チューブクランプ部270を覆う。これにより、輸液チューブ200は、正しい方向であるT方向に沿ってセットでき、送液駆動部60を駆動することにより、薬剤は輸液チューブ200を通じてT方向に沿って送液できる。
【0059】
本発明の実施形態の輸液ポンプ1は、輸液チューブを用いて薬剤を患者の血管内に送液するための輸液ポンプであって、薬剤を送液する際に輸液チューブの閉塞を検出する閉塞センサと、閉塞センサの出力電圧が供給される制御部と、を備え、閉塞センサは、複数のマグネットを有し直線移動可能に配置された移動部材と、輸液ポンプの本体側に固定され、輸液チューブの閉塞による輸液チューブの径方向の変化に追従して移動部材が直線移動するのに伴って生じる複数のマグネットの磁束の変化を検出して、輸液チューブの径方向の変化を出力電圧に変えるホール素子と、を有し、制御部は、移動部材を予め定めた複数位置に移動距離を増加させる際に、複数位置の移動距離毎に、ホール素子に対して予め定めた複数の付与電圧を印加して、複数位置の移動距離毎に与えた複数の付与電圧の中から選択することで、複数位置の移動距離に対するホール素子の出力電圧の直線性を得る。
これにより、制御部は、移動部材を予め定めた複数位置に移動距離を増加させる際に、複数位置の移動距離毎に、ホール素子に対して予め定めた複数の付与電圧を印加して、複数位置の移動距離毎に与えた複数の付与電圧の中から選択することで、複数位置の移動距離に対するホール素子の出力電圧の直線性を得るようになっている。これにより、移動部材の移動距離の変化、すなわち輸液チューブの径寸法の変化に対する閉塞センサのホール素子の出力電圧の直線性を正確に得ることができ、輸液チューブの閉塞状態を正確に検出できる。
【0060】
制御部は、複数位置の移動距離毎に予め定めた複数の付与電圧を記憶している付与電圧テーブルを有する。これにより、制御部は、付与電圧テーブルを参照すれば、複数位置の移動距離毎に、ホール素子に対して予め定めた複数の付与電圧を与えることができ、輸液チューブの径寸法の変化に対する閉塞センサのホール素子の出力電圧の直線性を簡単に得ることができる。
【0061】
閉塞センサが輸液チューブの閉塞を検出した場合に、制御部の指令により警告を出す警告手段を有するので、医療従事者は、輸液チューブの閉塞状態を、警告により知ることが出るので、閉塞した場合には直ちに送液動作を停止することができる。
輸液チューブの環境温度を検出する温度センサを有し、制御部は、温度センサからの信号により、環境温度の値に応じて、移動部材の移動距離の閾値を変更するので、環境温度に応じた輸液チューブの径方向の膨らみ状態に応じて輸液チューブの閉塞を検出できる。
【0062】
輸液ポンプの本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が配置され、輸液ポンプの本体の下部分は、薬剤を送液するための輸液チューブを配置する領域である。これにより、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、輸液ポンプによる薬剤の送液作業を行うことができる。そして、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、操作パネル部の操作ボタンを操作することができる。
薬剤の送液の他に血液の送液(輸血),腸管からの栄養剤の送液のために本願発明の輸液ポンプを適用できる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。