(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶媒S1が、酢酸アルキル(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル)、MEK(メチルエチルケトン)、シクロヘキサンおよびジクロロメタンから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記溶媒S2が、ジクロロメタン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ブタノール、Rhodiasolv(登録商標)RPDE(アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチルおよびグルタル酸ジメチルの混合物)、またはこれらの溶媒の混合物から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、溶媒S1中バニリンの溶液は、発酵プロセスに由来する。とりわけ挙げることができる発酵方法は、欧州特許第0761817号明細書に記載された方法である。
【0017】
一実施形態によれば、粗バニリンは、フェルラ酸の発酵およびその発酵の安定化の間に形成される不純物を含有するバニリン溶液である。
【0018】
本発明による方法は、バニリン誘導体、例えば、バニリングリコシド、とりわけ、バニラポッドから抽出された天然起源のバニリングリコシドの精製にも適している。
【0019】
本発明による方法は、連続式操作または回分式操作によって行われる。
【0020】
回分式操作によって行われる場合、本発明による方法、特に前記工程a)、工程b)および工程c)は、同じチャンバーで優先的に行われ、このチャンバーは、有利には少なくとも1つの凝縮器が取り付けられている少なくとも1つの蒸留塔を備えている。
【0021】
工程a)水の存在下での溶媒S1の蒸発
本発明の方法は、初期のバニリン溶液またはバニリン誘導体の溶液中に存在する溶媒S1を蒸発させることによって除去することを含む工程a)を含む。本発明による方法によれば、前記蒸発工程は、水の存在下で行われる。好ましくは、溶媒S1は、100℃未満の沸点を有するか、または100℃未満の沸点を有する、水との共沸混合物を形成する。
【0022】
溶媒S1のうちで、挙げることができる例としては、規則により認められた有機溶媒、例えば、酢酸アルキル(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル)、MEK(メチルエチルケトン)、シクロヘキサンおよびジクロロメタンがある。溶媒S1はまた、水であってもよい。
【0023】
溶媒S1はまた、有機溶媒の混合物、とりわけ、上に挙げられた有機溶媒の混合物、または水と有機溶媒との混合物であってもよい。
【0024】
好ましい実施形態によれば、溶媒S1は酢酸エチルである。
【0025】
好ましくは、初期バニリン溶液中で、バニリンの質量濃度は、前記溶液の全質量に対して10%〜60%、より優先的には10%〜40%、さらにより優先的には10%〜35%である。本発明による工程a)は、溶媒S1を除去して、バニリンの水溶液を得ることにあり、ここで、バニリンの質量濃度は、前記溶液の全質量に対して好ましくは5%〜40%、より好ましくは5%〜35%、さらにより好ましくは5%〜25%である。
【0026】
本発明による方法によれば、蒸発工程a)は、前記蒸発工程の実施の前および/または間に初期バニリン溶液に添加される水の存在下で行われる。
【0027】
好ましい実施形態によれば、工程a)との関連において、粗バニリンの溶媒S1は、水の存在下で、蒸発によって、例えば、蒸留によって、または蒸発器を用いることによって除去され、その結果、バニリンおよび不純物は、最終的には水相中で溶解性または不溶性形態になる。蒸留による蒸発の場合、溶媒S1は、大気圧で、もしくは真空下に、または代替として大気圧で、次いで真空下に蒸留除去され得る。
【0028】
水は、初期バニリン溶液に1回または複数回に分けて添加されてもよい。消費に適する水(例えば、水道の水)を用いることが好ましい。以下に記載されるとおりに、本発明による方法に由来して、消費に適する再生利用水(例えば、洗浄水、または結晶化もしくは沈殿用母液)を用いることも可能である。
【0029】
前記蒸発工程a)の実施の前および/または間に初期バニリン溶液に有利には添加される水の量は、工程a)後に得られる水溶液中のバニリンの質量濃度が、有利には前記溶液の全質量に対して5重量%〜40重量%、非常に有利には5重量%〜35重量%、さらにより有利には5重量%〜25重量%であるような量である。好ましくは、この質量濃度は、10重量%〜15重量%である。前記工程a)後に得られるバニリンの水溶液は、発酵中に形成される不純物、より一般的には蒸発工程にかけられるバニリン溶液中に存在するものを含有する。
【0030】
好ましくは、前記蒸発工程a)は、60〜120℃、非常に優先的には80〜120℃の温度で行われる。
【0031】
工程b)− 液/液抽出
工程a)後、得られたバニリンまたはバニリン誘導体の水溶液は、特定のpH条件下で液/液抽出工程にかけられる。
【0032】
この抽出工程に用いられる溶媒は、以下で溶媒S2と呼ばれる。
【0033】
この工程は、pKa差によってバニリンのある種の不純物を分離するために、制御されたpHで行われる。特に、前記工程b)は、バニリンのpKaよりも高いpKaを有する種によって形成される不純物を抽出するために行われる。これらの種は、例えば、バニリルアルコール、グアイアコール、およびある種の2量体または重質化合物である。前記工程b)による抽出は、全部であっても、一部であってもよい。本発明による方法の前記工程b)によれば、pHは、高収率のバニリンを得るように選択される。したがって、pHは、厳密には8を上回り10未満である。
【0034】
この制御されたpHでの抽出の工程の間に、プロトン化された種が溶媒S2により抽出され、有機層は主に溶媒S2を含む。次いで、バニリンは、バニリン酸塩の形態で水相中に残存する。本発明による方法の残部について、このようにして得られた水相が用いられる、すなわち、前記液−液抽出工程の後の工程は、バニリン酸塩を含む水相を用いて行われる。
【0035】
一実施形態によれば、抽出溶媒S2は、初期バニリン溶液中に存在する溶媒S1と異なる。
【0036】
別の実施形態によれば、溶媒S1と溶媒S2とは同一である。この実施形態は、本発明による方法の前記工程a)によって前記溶媒の単に一部の蒸発を行うこと、および前記液−液抽出工程を行うために非蒸発部分を用いることを特に可能にするので有利である。
【0037】
本発明による方法によれば、溶媒S1および溶媒S2は、優先的には食料品およびその成分の製造に用いられる抽出溶媒に関する指令2009/32/ECおよび指令2010/59/EUに準拠して効力のある規則によって許可された溶媒から選択される。
【0038】
本発明による方法の前記工程b)によれば、抽出溶媒S2は、水中まったくないもしくは非常に低い溶解度から中程度の溶解度を有する。より正確には、前記溶媒S2の水中最大重量含有量は、70g/lに等しい。溶媒S2が有機溶媒であることは言うまでもない。
【0039】
好ましくは、溶媒S2は、水中で低いまたは非常に低い溶解度を有する溶媒であり、すなわち、その水中最大重量含有量は、50g/lに等しく、優先的にはその水中最大重量含有量は、20g/lに等しい。溶媒S2はまた、水不溶性溶媒であってもよい。
【0040】
前記抽出溶媒S2は、有利には200℃未満、優先的には150℃未満の沸点を有する。
【0041】
本発明による方法の前記工程b)の実施に用いられる溶媒S2のうちで、挙げることができる例としては、ジクロロメタン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ブタノール、Rhodiasolv(登録商標)RPDE(アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチルおよびグルタル酸ジメチルの混合物)、またはこれらの溶媒の混合物がある。
【0042】
有利な実施形態によれば、溶媒S2は、消費に適する溶媒から選択される。好ましくは、溶媒S2は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミルおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)、およびこれらの混合物からなる群から選択される。さらにより好ましくは、溶媒S2は、酢酸イソプロピルである。
【0043】
上に記載された特定のpH条件を得るために、一実施形態によれば、本発明による方法の工程b)は、塩基の添加を含み、前記塩基は、恐らくは弱塩基または強塩基のいずれかである。有利には、前記塩基は、鉱物塩基、より詳細には水溶性鉱物塩基から選択される。特に、前記塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、アルカリ金属リン酸水素塩およびアルカリ土類金属リン酸水素塩、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。非常に有利には、前記塩基は、以下の鉱物塩基、すなわち、NaOH、KOHおよびNa
2CO
3から選択される。優先的には、NaOHまたはKOH、より特にはNaOHが、塩基として用いられる。
【0044】
この塩基添加工程は、8を上回り10未満のpHに液−液抽出工程のpHを調整することを可能にする。好ましくは、本発明による方法の工程b)による前記抽出工程は、8.1〜9.5、非常に優先的には8.3〜9.5、さらにより優先的には8.5〜9のpHで行われる。前記工程b)の実施のためのpHの制御は、本発明の方法の実施後に、最適収率を有する高純度バニリンの生成をもたらす。
【0045】
本発明による方法の工程b)によれば、前記塩基のバニリン溶液への添加は、溶媒S2の添加前、または溶媒S2の添加後に行われる。好ましい実施形態によれば、塩基は、バニリン溶液に急速に、好ましくは一度で添加される。
【0046】
本発明の方法の一実施形態によれば、塩基は、溶媒S2を場合によって含有してもよいバニリン溶液に、15℃〜60℃、好ましくは30〜50℃の温度で添加される。
【0047】
本発明の方法の一実施形態によれば、前記工程b)を行うために有利に用いられる塩基は水に希釈され、前記塩基が希釈される前記水溶液に対して5重量%〜30重量%の濃度にされる。
【0048】
本発明による方法によれば、前記工程b)は、有利には0.2〜3、好ましくは0.5〜3、優先的には0.6〜1.2の、溶媒S2の質量とバニリンの質量の質量比で行われる。
【0049】
液−液抽出工程は、好ましくは大気圧、および15〜40℃、優先的には20〜30℃の温度で行われる。好ましくは、前記抽出工程に、冷却工程が先行する。
【0050】
特定の実施形態によれば、塩基は、前記工程a)後に得られるバニリン溶液に15〜60℃、好ましくは30℃〜50℃の温度で添加され、次いで、この温度は、抽出のための溶媒S2を添加する前に優先的には15〜40℃、非常に優先的には20℃〜30℃の温度に低下される。
【0051】
工程b)後、有機相および水相が得られる。
【0052】
有機相は、不純物の一部、とりわけ、グアイアコール、バニリルアルコールおよび2量体、ならびに溶媒S2を含み、一方で水相は、水中バニリン、不純物の残部、例えば、フェルラ酸、バニリン酸、安息香酸および/またはフェルラ酸単位を含む特定の2量体、ならびに残留溶媒S2を含む。優先的には不純物を含まない、有機相に存在する溶媒S2は、有利には前記工程b)の再利用アップストリームである。
【0053】
本発明による方法の回分式操作によれば、次いで、有機相は、優先的には水相を回収するために安定させることによって分離させる。
【0054】
本発明による方法の連続式操作によれば、前記液/液抽出工程は、有利には一連のデカンティングミキサー、または撹拌され、パルス化され、もしくは充填された少なくとも1つの液/液抽出塔を用いることによって行われる。それはまた、静的ミキサー、次いで、有機相と水相とを連続的に分離するための遠心分離機を用いることによって連続的に行われてもよい。
【0055】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、液−液抽出工程後に得られる水相は、残留溶媒S2を除去する工程(「ストリッピング」工程)にかけられて、本発明の方法後に得られるバニリンの品質を向上させる。
【0056】
このようなストリッピング工程は、とりわけ、ガス流体(例えば、水蒸気または二窒素、好ましくは二窒素)を注入し、および/または本発明による方法が行われるチャンバーの真空下に置くことによって、温和な条件下で行われる。
【0057】
優先的には、ストリッピング工程は、真空下に行われる。それは、有利には20℃〜50℃の温度で行われる。前記工程の継続時間は、例えば、40〜120分である。
【0058】
工程c)− 沈殿
工程b)後、バニリンまたはバニリン誘導体は、バニリン酸塩の形態で水溶液中に存在する。
【0059】
この溶液は、粗バニリン中に存在する大部分の不純物、特にそのpKaがバニリンのpKa未満である種を含有する。これらの種は、特にフェルラ酸、バニリン酸、安息香酸、およびフェルラ酸単位を含む特定の2量体である。
【0060】
本発明の方法による工程c)は、バニリン酸塩の形態でバニリンを含有する溶液のpHを低下させるために制御されたpHで行われる。pHを低下させることによって、バニリンは沈殿し、不純物は、母液と呼ばれる溶液中に残存する。
【0061】
本発明による方法の工程c)は、4〜7.5のpHで行われる。これらのバニリン沈殿条件は、沈殿工程後に得られる沈殿物中バニリンの適切な収率、および97%の最小限バニリン力価を得ることを可能にする。沈殿工程中のpHは、優先的には5〜7、非常に優先的には5.7〜6.5、さらにより優先的には5.8〜6.3である。
【0062】
本発明の方法による前記沈殿工程は、弱いまたは強い酸水溶液を用いて行われ、これは、本発明による方法の前記工程b)後に得られる前記水相中に導入される。好ましくは、バニリンと反応しない酸が用いられる。酸のうちで、とりわけ、その形成される塩が水溶性である酸を挙げることができる。好ましい実施形態によれば、上述の沈殿工程は、硫酸の存在下で行われる。
【0063】
本発明による方法の一実施形態によれば、前記工程c)は、好ましくは15℃〜40℃、優先的には25℃〜40℃の温度で行われる。有利には、前記沈殿工程は、大気圧で行われる。本発明による方法の前記実施形態によれば、前記工程c)は、前記工程b)後にデカンテーションによって得られる前記水相中へ、水溶液中に存在する酸を添加し、優先的には続いて、水性媒体を冷却し、それからバニリンが沈殿する工程を含む。冷却は、優先的には、温度が有利には20℃以下、優先的には15℃以下、好ましくは5〜15℃の温度に到達するまで行われる。
【0064】
本発明による方法の別の実施形態によれば、前記工程b)から得られる前記バニリン水相への酸の添加は、優先的には50〜95℃、非常に優先的には50〜70℃の温度、および優先的には0.012〜0.085MPa、非常に優先的には0.012〜0.03MPaの圧力で行われ、0〜5℃の温度までの制御された冷却が続く。前記冷却は、有利には0.006MPa〜0.008MPaの圧力への、制御された圧力の低下を伴う。冷却は、有利には内部交換器を用いて、および/または前記工程c)が行われる反応器が備えられているジャケット内の熱交換流体(特に水)の循環によって行われる。
【0065】
工程d)− バニリンの単離
前記工程c)後に沈殿物の形態で得られるバニリンまたはバニリン誘導体は、本発明による方法の工程d)で単離されて、その精製を向上させる。前記工程d)は、有利にはフィルタまたはスピン乾燥器で固体バニリンを回収する少なくとも1つの工程、続いて水で洗浄する1つまたは複数の工程、優先的には続いて少なくとも1つの乾燥工程からなる。
【0066】
前記沈殿工程c)から得られる固体バニリンは、フィルタまたはスピン乾燥器で回収される。残留不純物、とりわけ、硫酸塩を含む鉱物塩を除去するために、水による1回または複数回の洗浄が必要であり得る。
【0067】
次いで、バニリンは、有利には乾燥されて、その既存形態で販売される。それはまた、既知の方法によって粉砕されてもよく、および/または水もしくは水/アルコール混合物から再結晶されてもよい。
【0068】
本発明との関連において行われる洗浄工程および乾燥工程は、当業者に周知である標準的なプロトコルに従って行われる。
【0069】
したがって、一実施形態によれば、本発明の方法は、工程d)後に、水またはアルコール/水混合物からバニリンを再結晶させる工程を含んでもよい。このようにして得られたバニリンは、白色結晶の形態である。
【0070】
本発明との関連において、1つまたは複数の追加の再生利用工程を行うことによって収率をさらに向上させることが可能である。
【0071】
これらの追加の工程は、本発明の方法の間、例えば、抽出、沈殿または洗浄工程の間に得られる様々な流出物を再生利用することを含む。
【0072】
例えば、洗浄水(すなわち、洗浄工程後に回収される水)を再生利用すること、およびそれらをプロセス水として、すなわち、本発明の方法による前記蒸発工程a)の実施前におよび/または添加された水とともに、使用することが可能である。
【0073】
沈殿工程後に得られる母液中に含まれるバニリンの一部を回収することも可能である。この回収は、pHの調整、続いて、溶媒による抽出、または再濃縮および沈殿、または再濃縮および抽出のいずれかによって行われてもよい。
【0074】
抽出工程後に得られる有機相に含まれるバニリンの一部を、洗浄によって、回収することも可能である。
【0075】
以下の実施例は、本発明をさらに例証するが、決して限定するものではない。
【実施例】
【0076】
実施例1:抽出工程がジクロロメタン(DCM)を用いて行われるバニリン精製方法
19.3重量%のバニリン、1.4重量%のバニリルアルコール、6g(0.4重量%)の安息香酸および18.5g(1.1重量%)の他の不純物(とりわけ、グアイアコール、ジフェニルメタン型の2量体およびフェルラ酸単位を有する2量体、ならびに重質化合物)を含有する、1594gの粗バニリン溶液を、蒸留塔および凝縮器を備えたチャンバーに入れた。この溶液中に存在する溶媒は、酢酸エチルであり、粗バニリン溶液の重量残部に相当した。
【0077】
この溶液に860gの水を添加し、次いで、酢酸エチルからなる溶媒を100℃に等しい温度で、大気圧、次いで真空下で蒸留除去し、塔頂留分(head fraction)として回収した(1404g)。最後に、蒸発後にバニリンを含有する溶液に、1800gの水を添加した。このバニリン溶液に、360gに等しい量の水酸化ナトリウム(水中22重量%)を添加し、次いで、8.9に等しいpHを有する溶液を得た。この溶液を34℃に等しい温度で維持し、次いで、それを24℃に冷却させた。
【0078】
次に、200gのジクロロメタン(DCM)を添加し、次いで、抽出工程を24℃で行った。
【0079】
このようにして得た有機相は、主にジクロロメタンを含んだが、6gのバニリンおよび9gの不純物、特にバニリルアルコール、グアイアコール、ジフェニルメタン型の2量体および他の重質化合物も含んだ。
【0080】
次いで、バニリン酸塩の形態のバニリンおよび残留ジクロロメタンを含む水相を、窒素の注入とともに35℃で真空(150mmHg=0.2バール)下に2時間ストリッピングした。
【0081】
次いで、この水相に硫酸(H
2SO
4、水中50重量%)を添加して、29℃でpH=6.4を有する溶液を得た。温度を20℃に低下させることによって、次いで、沈殿物を得、これをろ別して、バニリンおよび不純物(特に安息香酸およびフェルラ酸単位を含む特定の2量体)を30g含有する、2750gの母液を回収した。
【0082】
最後に、得られた固体を750gの水で2回洗浄した。
【0083】
このようにして得たバニリンは、98.5%の力価を有し、0.1重量%未満のNa
2SO
4を含んだ。
【0084】
ストリームの再循環なしのバニリンの全収率({精製バニリン/粗バニリン溶液中に存在するバニリン}重量比)は85%であった。
【0085】
洗浄水および母液のバニリンの一部の再生利用によって、98%の最終力価とともに、収率は94%であった。
【0086】
実施例2:抽出工程が酢酸イソプロピルを用いて行われるバニリン精製方法
19.4重量%のバニリン、1.4重量%のバニリルアルコール、1重量%の安息香酸および5gの他の不純物(特に、バニリン酸、グアイアコール、ジフェニルメタン型の2量体およびフェルラ酸単位を含む特定の2量体、ならびに重質化合物)を含有する、200gの粗バニリン溶液を、蒸留塔および凝縮器を備えたチャンバー中で用いた。この溶液中に存在する溶媒は、酢酸エチルであり、粗バニリン溶液の重量残部に相当した。
【0087】
この溶液に290gの水を添加し、次いで、酢酸エチルからなる溶媒を100℃に等しい温度で、大気圧において蒸留除去し、塔頂留分として回収した(180g)。このバニリンの水溶液に、40gの水酸化ナトリウム(水中22重量%)を添加し、次いで、8.6に等しいpHの溶液を得た。この溶液を40℃に等しい温度で維持し、次いで、30℃に冷却させた。
【0088】
次に、39gの酢酸イソプロピルを添加し、次いで、抽出工程を30℃で行った。
【0089】
このようにして得た有機相は、主に酢酸イソプロピル含んだが、1.4gのバニリンおよび2gの不純物(特にバニリルアルコール、グアイアコール、2量体および重質化合物)も含んだ。
【0090】
次いで、バニリン酸塩の形態のバニリンおよび残留酢酸イソプロピルを含む水相を、窒素の注入とともに35℃で真空(150mmHg=0.2バール)下に2時間ストリッピングした。次いで、それを約25℃に冷却した。
【0091】
次いで、この水相に硫酸(H
2SO
4、水中50重量%)を添加して、25℃で6に等しいpHを有する溶液を得た。次いで、温度を18℃に低下させることによって、沈殿物を得、これをろ別して、2.5gのバニリンおよび6.4gの不純物(特にバニリン酸、安息香酸およびフェルラ酸単位を含む特定の2量体)を含有する、290gの母液を回収した。
【0092】
最後に、得られた固体を200gの水で2回洗浄した。
【0093】
このようにして得たバニリンは、99%の力価を有し、0.1重量%未満のNa
2SO
4を含んだ。
【0094】
ストリーム再循環なしのバニリンの全収率は80%であった。
【0095】
洗浄水および母液のバニリンの一部の再生利用によって、99%の最終力価とともに、収率は83%であった。
【0096】
例3(比較):抽出工程がpH=10.5で酢酸イソプロピルを用いて行われるバニリン精製方法
19.4重量%のバニリン、1.4重量%のバニリルアルコール、1重量%の安息香酸および5gの他の不純物(特に、バニリン酸、グアイアコール、ジフェニルメタン型の2量体およびフェルラ酸単位を含む特定の2量体、ならびに重質化合物)を含有する、200gの粗バニリン溶液を、蒸留塔および凝縮器を備えたチャンバー中で用いた。この溶液中に存在する溶媒は、酢酸エチルであり、粗バニリン溶液の重量残部に相当した。
【0097】
この溶液に290gの水を添加し、次いで、酢酸エチルからなる溶媒を100℃に等しい温度で、大気圧において蒸留除去し、塔頂留分として回収した(182g)。このバニリンの水溶液に、10.5に等しいpHを有する溶液が得られるまで22%の水酸化ナトリウムを添加した。この暗橙−茶色の溶液を40℃に等しい温度で維持し、次いで、30℃に冷却させた。
【0098】
次に、39gの酢酸イソプロピルを添加し、次いで、抽出工程を30℃で行った。
【0099】
このようにして得た有機相は、主に酢酸イソプロピルおよび少量の不純物(特にバニリルアルコール、グアイアコール、2量体および他の重質化合物)を含んだ。
【0100】
次いで、バニリン酸塩の形態のバニリンおよび残留酢酸イソプロピルを含む水相を、窒素の注入とともに35℃で真空(150mmHg=0.2バール)下に2時間ストリッピングした。次いで、それを約25℃に冷却した。
【0101】
次いで、この水相に硫酸(H
2SO
4、水中50重量%)を添加して、25℃で6に等しいpHを有する溶液を得た。温度を8℃に低下させた後でさえも、沈殿物は得られなかった。バニリン豊富溶液(12.5重量%)の分析は、有機不純物が多く、すなわち、特に、グアイアコール、バニリルアルコール、2量体および他の重質化合物の存在を検出したことを示した。バニリン酸および安息香酸も、得られたバニリン溶液中の不純物のうちに存在した。
【0102】
したがって、酸性化工程は、精製バニリンが単離されることを可能にしなかった。
【0103】
例4(比較):抽出工程がpH=7.5で酢酸イソプロピルを用いて行われるバニリン精製方法
19.4重量%のバニリン、1.4重量%のバニリルアルコール、1重量%の安息香酸および5gの他の不純物(特に、バニリン酸、グアイアコール、ジフェニルメタン型の2量体およびフェルラ酸単位を含む特定の2量体、ならびに重質化合物)を含有する、200gの粗バニリン溶液を、蒸留塔および凝縮器を備えたチャンバー中で用いた。この溶液中に存在する溶媒は、酢酸エチルであり、粗バニリン溶液の重量残部に相当した。
【0104】
この溶液に290gの水を添加し、次いで、酢酸エチルからなる溶媒を100℃に等しい温度で、大気圧において蒸留除去し、塔頂留分として回収した。このバニリンの水溶液に、7.5に等しいpHを有する溶液が得られるまで22%の水酸化ナトリウムを添加した。この溶液を40℃に等しい温度で維持し、次いで、30℃に冷却させた。
【0105】
次に、39gの酢酸イソプロピルを添加し、次いで、抽出工程を30℃で行った。
【0106】
このようにして得た有機相(55g)は、主に酢酸イソプロピルおよび31重量%のバニリン、ならびに不純物(特にバニリルアルコール、グアイアコール、2量体および他の重質化合物)を含んだ。
【0107】
次いで、バニリン酸塩の形態のバニリンおよび残留酢酸イソプロピルを含む水相を、窒素の注入とともに35℃で真空(150mmHg=0.2バール)下に2時間ストリッピングした。次いで、それを約25℃に冷却した。
【0108】
次いで、この水相に硫酸(H
2SO
4、水中50重量%)を添加して、25℃で6に等しいpHを有する溶液を得た。
【0109】
温度を18℃に低下させることによって、次いで、沈殿物を得、これをろ別して、安息香酸、バニリン酸および不純物(とりわけ、フェルラ酸単位を含む特定の2量体)を含有する、242gの母液を回収した。
【0110】
最後に、得られた固体を200gの水で2回洗浄した。
【0111】
このようにして得たバニリン(14g)は、98.7%の力価を有した。
【0112】
ストリーム再循環なしのバニリンの全収率({精製バニリン/粗バニリン溶液中に存在するバニリン}重量比)はわずかに35%であった。