特許第6207523号(P6207523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207523カチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン、その酸化ベースを含む染料組成物、その組成物の実施方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207523
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】カチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン、その酸化ベースを含む染料組成物、その組成物の実施方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20170925BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20170925BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C07D471/04 106A
   C07D471/04CSP
   A61K8/49
   A61Q5/10
【請求項の数】10
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2014-546570(P2014-546570)
(86)(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公表番号】特表2015-500322(P2015-500322A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2012075817
(87)【国際公開番号】WO2013087933
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年10月23日
(31)【優先権主張番号】1161841
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】61/593,448
(32)【優先日】2012年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アジズ・ファドリ
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−131626(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/138844(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/00
A61K 8/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式(I)中、:
・R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖型又は分岐型のC〜Cアルキル基、直鎖型又は分岐型のC〜Cヒドロキシアルキル基を表し、
・Zは、NR基を表し、
・Rは、水素原子又は直鎖型のC〜Cアルキル基を表し、
・Rは、トリメチルアンモニウム基もしくはジメチルエチルアンモニウム基で置換される、直鎖型のC〜Cアルキル基を表し、
・ZがNR基を表す場合、
・R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、ピロリジニウム、ピペラジニウム及びジアゼパニウムから選択される飽和の5〜8員環のカチオン性のヘテロ環を形成してよく、このヘテロ環は、C〜Cアルキルから選択される1つ又は複数の基で置換され、あるいは
・R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、カチオン性基で置換される、ピロリジンから選択される飽和の5〜8員環の非カチオン性のヘテロ環を形成てよい
のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン、その光学及び幾何異性体、その付加塩。
【請求項2】
・Rは、トリメチルアンモニウム基で置換される、直鎖型のC〜Cアルキル基を表し、
・ZがNR基を表す場合、
・R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、ピロリジニウム選択される飽和の5〜8員環のカチオン性のヘテロ環を形成し、このヘテロ環は、C〜Cアルキルから選択される1つ又は複数の基で置換され、あるいは
・R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、トリメチルアンモニウム基で置換された、ピロリジンから選択される飽和の5〜8員環の非カチオン性のヘテロ環を形成する、請求項1に記載の式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン。
【請求項3】
・Rは、トリメチルアンモニウム基で置換される、直鎖型のCアルキル基を表し、
・ZがNR基を表す場合、
・R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、2個のメチル基で置換されたピロリジニウム環を形成し、あるいは
・R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、トリメチルアンモニウム基で置換されたピロリジン環を形成する、請求項1に記載の式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン。
【請求項4】
以下の化合物及びこれらの幾何又は光学異性体型、これらの有機又は鉱物の酸塩から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン。
【表1】
【表2】
【表3】
【請求項5】
以下のスキーム:
【化2】
(式中、R、Z、R、R、R、及びRは、式(I)で示されたものと同一の意味を有し、式中、
−工程(i)においては、式(A)のN−アミノピリジニウム誘導体は、極性溶媒中にて、少なくとも2当量の1,1−ビス(メチルチオ)−2−ニトロエチレンと反応し、式(B)の2−メチルスルファニル−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン誘導体を得、
−工程(ii)においては、式(B)の化合物に対して酸化反応が実行され、式(C)のN,N−ジメチル−1−(3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)ピロリジン−3−アミン誘導体を得、
−水素化工程(iii)においては、−S(O)−CH基を−Z基で置換するために、式(C)の化合物は、式RH又はR、M(Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す)の化合物と反応し、式(D)の化合物を得、
−工程(iv)においては、極性溶媒中にて、式(D)の化合物に対して1つ又は複数の還元反応が実行され、式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンを生成する)
による化合物(A)、(B)、(C)、及び(D)を出発とする、請求項1で定義される一般式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンを合成する方法。
【請求項6】
請求項において定義され、且つ、R、Z、R、R、R、及びRが、請求項1により定義される、式(D)の化合物。
【請求項7】
請求項2または3において定義される1つ又は複数の式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンを、適切な染色媒体において含む、ケラチン繊維を染色するための組成物。
【請求項8】
ケラチン繊維を染色するための方法であって、請求項により定義される前記染色組成物は、望まれる着色を得るための十分な時間、1つ又は複数の酸化剤の存在下にて、前記繊維に使用され、その後、得られた繊維は洗い流され、再度洗い流され、乾燥又は放置乾燥される方法。
【請求項9】
ケラチン繊維を染色するための、1つ又は複数の酸化剤の存在下における、請求項2または3により定義される1つ又は複数の式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンの使用。
【請求項10】
請求項により定義される染色組成物を含む第1の区画と、1つ又は複数の酸化剤を含む第2の区画と、を含むことを特徴とする、多区画を有する装置又は染色キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物、又、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトケラチン繊維を染色するためのその使用に関する。
【0002】
又、本発明は、適切な染色媒体において、このカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物を含む、ケラチン繊維を染色するための組成物、又、この組成物を使用する染色方法及び多区画装置に関する。
【0003】
本発明は、ケラチン繊維を染色する分野、より詳細には毛髪染色の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
ケラチン繊維、特にヒトの毛髪を、オルト−又はパラ−フェニレンジアミン、オルト−又はパラ−アミノフェノール、及びヘテロ環式化合物等の、酸化ベースとして一般的に知られている、酸化染料前駆体を含む染料組成物によって染色することは周知の方法である。こうした酸化ベースは、無色、又は薄く着色した化合物であり、酸化物と組み合わされた場合、酸化縮合のプロセスによって着色した化合物を生成することができる。
【0005】
又、酸化ベースによって得られた色合いは、カプラー又は着色改質剤と組み合わされることで変化可能であることが知られており、後者の着色改質剤は、芳香族メタ−ジアミノベンゼン、メタ−アミノフェノール、メタ−ジフェノール、及びインドール化合物等の特定のヘテロ環式化合物からより具体的に選択される。
【0006】
酸化ベース及びカプラーとして使用される分子の多様性は、広範囲の色彩が得られることを可能にする。
こうした酸化染料によって得られた「恒久的な」色彩は、一定数の要求を更に満たさなければならない。その結果、毒性学的な欠陥を有してはならず、色合いは望まれる強度にて得られなければならず、且つ、光、悪天候、洗浄、パーマネントウェーブ、発汗、及び摩擦等の外部因子に対して、良好な堅牢性を示さなければならない。
【0007】
又、染料によって白髪を覆い隠すことができるようにならなければならず、且つ、可能な限り非選択性でなければならず、即ち、その末端と根元の間で、一般的に異なって感作される(即ち、損傷した)、ケラチン繊維の同一の房に沿って起こり得る着色の差を最小にできるようにしなければならない。
【0008】
又、ケラチン繊維、特に毛髪を染色するためにパラ−フェニレンジアミン、パラ−トルエンジアミン、又はパラ−アミノフェノール型の酸化ベースを使用することは周知の方法である。
しかしながら、こうした酸化ベースは、一般的に、外部因子に対して、十分な強度、色度、又は堅牢性を有さず、且つ/又は、過度に選択性である着色を生じさせるという欠陥を有する。更に、こうした酸化ベースは、望まれない無害さを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】英国特許第1026978号明細書
【特許文献2】英国特許第1153196号明細書
【特許文献3】独国特許第2359399号明細書
【特許文献4】特開昭63−169571公報
【特許文献5】特開平05−163124公報
【特許文献6】欧州特許第0770375号明細書
【特許文献7】国際公開第96/15765号パンフレット
【特許文献8】仏国特許出願公開第2750048A号明細書
【特許文献9】独国特許第3843892号明細書
【特許文献10】独国特許第4133957号明細書
【特許文献11】国際公開第94/08969号パンフレット
【特許文献12】国際公開第94/08970号パンフレット
【特許文献13】仏国特許出願公開第2733749A号明細書
【特許文献14】独国特許第19543988号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Heterocycle,Vol.6,No.4,1977
【非特許文献2】Advanced Organic Chemistry,3rd Edition,J.March,1985,Wiley Interscience
【非特許文献3】Reduction in Organic Chemistry,M.Hudlicky,1983,Ellis Horwood Series Chemical Science
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、特に、外部因子に対する、強度、色度、色彩の構築、選択性、及び/又は耐久性に関して、染色特性が向上し、且つ、更に、より広範囲の色彩をもたらすことができ、一方で同時に、酸化染色に使用される酸化ベースの無害さを向上させる、酸化ベースが真に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、本発明により達成され、その1つの主題としては、特に式(I)
【化1】
(式(I)中、:
・R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖型又は分岐型のC〜Cアルキル基、直鎖型又は分岐型のC〜Cヒドロキシアルキル基を表し、
・R及びR、R及びR、又はR及びRは、それ自身が結合する炭素原子とともに、水酸基、アルコキシ基、C〜Cアルキル基、及びC〜Cヒドロキシアルキル基から選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換される、飽和、不飽和、又は芳香族の5〜8員環を形成することができ、
・Zは、酸素原子又はNR基を表し、
・Rは、水素原子、又は、直鎖型又は分岐型のC〜Cアルキル基を表し、
・Rは、
−1つ又は複数の酸素原子及び/又は1つ又は複数のNR基で任意選択により中断され、水酸基、及びC〜Cアルコキシ基又はC〜Cヒドロキシアルキル基から選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換され、カチオン性基で置換及び/又は中断される、直鎖型又は分岐型のC〜C20アルキル基、
−カチオン性基で置換され、且つ、水酸基、及びC〜Cアルコキシ基又はC〜Cヒドロキシアルキル基から選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換される、飽和、不飽和、又は芳香族の5〜8員環又はヘテロ環、を表し、
・ZがNR基を表す場合、
・R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、飽和、不飽和、芳香族、又は非芳香族の5〜8員環のモノ又はポリカチオン性の、好ましくは、モノカチオン性のヘテロ環を形成することができ、このヘテロ環は、C〜Cアルキル、水酸基、C〜Cアルコキシアミノ、(C〜C)アルキルアミノ、(C〜C)ジアルキルアミノ、チオSH、(C〜C)アルキルチオ、カルボキシル、C(O)OH又はC(O)O、M(Mは、化合物(I)のカチオン電荷数に依存して存在する又は不在であることができ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムを表す)、(C−C)アルキルカルボニル、スルホニル−S(O)n−R、−S(O)−O−R、−O−S(O)−R(Rは、水素原子、又はC〜C(ヒドロキシ)アルキル基、n=0、1又は2、p=1又は2を表す)、アミド−C(O)−NRR’又は−N(R)−C(O)−R’、−N(R)−C(O)−NRR’(R及びR’は、同一であっても異なってもよく、水素原子、又は、C〜C(ヒドロキシ)アルキル基、C〜Cヒドロキシアルキルを表す)から選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換され、このヘテロ環は、場合により、窒素及び酸素、好ましくは窒素から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含み、
・R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、飽和又は不飽和の5〜8員環の非カチオン性のヘテロ環を形成することができ、このヘテロ環は、C〜C10アルキル、水酸基OH、C〜Cアルコキシ、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ、(C〜C)ジアルキルアミノ、チオSH、(C〜C)アルキルチオ、カルボキシル、C(O)OH又はC(O)O、M(Mは、化合物(I)のカチオン電荷数に依存して存在する又は不在であることができ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムを表す)、(C〜C)アルキルカルボニル、スルホニル−S(O)n−R、−S(O)−O−R、−O−S(O)−R(Rは、水素原子、又はC〜C(ヒドロキシ)アルキル基、n=0、1又は2、p=1又は2を表す)、アミド−C(O)−NRR’又は−N(R)−C(O)−R’、−N(R)−C(O)−NRR’(R及びR’は、同一であっても異なってもよく、水素原子、又は、C〜C(ヒドロキシ)アルキル基、C〜Cヒドロキシアルキルを表す)から選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換される)
のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン、その光学異性体及び幾何異性体、その付加塩、及び/又はその溶媒和物である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
又、本発明は、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトケラチン繊維を染色するための酸化ベースとして、1つ又は複数の前述で定義される式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンの使用に関する。
【0014】
又、本発明は、適切な染色媒体において、1つ又は複数の前述で定義される式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンを含む、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトケラチン繊維を染色するための組成物に関する。
【0015】
又、具体的には、本発明は、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトケラチン繊維を染色するための前述の組成物の使用に関する。
【0016】
又、本発明は、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトケラチン繊維を染色するための方法に関し、この場合、本発明による前述の染色組成物は、望まれる着色を得るための十分な時間、1つ又は複数の酸化剤の存在下にて前述の繊維に使用され、その後、得られた繊維は洗い流され、任意選択によりシャンプーで洗浄され、再度洗い流され、乾燥又は放置乾燥される。
【0017】
本発明の別の主題は、前述の染色組成物を含む第1の区画と、1つ又は複数の酸化剤を含む第2の区画と、を含む多区画装置又は染色キットに関する。
【0018】
従って、多区画装置は、本発明による染色方法を実行することに適する。
【0019】
従って、本発明によるカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンによって、特に、シャンプー、汗、光、及びパーマネント再成形等の外部因子に対する、強度又は色度、及び/又は選択性、及び/又は耐久性に関して、ケラチン繊維の染色を向上させることが可能になる。
【0020】
又、本発明によるカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンによって、酸化染色に使用される酸化ベースの無害さが向上すると同時に、広範囲の色彩が実現可能になる。
【0021】
更に、本発明によるカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物は、良好な溶解性を示し、且つ、満足のいく色彩の構築を可能にする。
【0022】
本発明の目的においては、ケラチン繊維の色彩の「構築」という用語は、染色していない白髪の房と染色した毛髪の房との間の着色の変化の度合いを意味する。
【0023】
本発明のその他の特性、態様、主題、及び有利性は、以下に続く説明及び実施例を参照することによって更により鮮明になるであろう。
【0024】
I.カチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物
前述で定義される式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物は、その構造におけるカチオン性基の存在のため、カチオン電荷を含む。
【0025】
本発明の内容においては、「式(I)の化合物に存在するカチオン性基」という表現は、4級アンモニウムを含む直鎖型又は分岐型の、又はヘテロ環式の基を意味し、この4級アンモニウムは、−N型(R、R、及びRは、同一であっても異なってもよく、水酸基で置換されることができるC〜Cアルキル基を表す)である。R及びRは、ともに5〜8員のヘテロ環を形成することができ、この場合、R基は、水酸基で置換されることができるC〜Cアルキル基である。
【0026】
好ましくは、R、R、及びRは、同一であっても異なってもよく、任意選択により水酸基で置換されるC〜Cアルキル基、特にメチルを表す。
【0027】
好ましくは、R及びRは、ともに5〜8員のヘテロ環を形成する場合、R基は、水酸基で置換されることができるC〜Cアルキル基を表す。
【0028】
従って、本発明による式(I)のテトラヒドロピラゾロピリジンは、化合物が配合される媒体のpHに依存しない恒久的なカチオン電荷を有する。
【0029】
言及することができるカチオン性基の例としては、
トリメチルアンモニウム基、
トリエチルアンモニウム基、
ジメチルエチルアンモニウム基、
ジエチルメチルアンモニウム基、
ジイソプロピルメチルアンモニウム基、
ジエチルプロピルアンモニウム基、
ヒドロキシエチルジエチルアンモニウム基、
ジ−β−ヒドロキシエチルメチルアンモニウム基、及び
トリ−β−ヒドロキシエチルアンモニウム基が挙げられる。
【0030】
「カチオン性ヘテロ環」という用語は、鎖員の少なくとも1つが前述で定義される4級アンモニウムである5〜8員のヘテロ環を意味する。
【0031】
特に、カチオン性ヘテロ環は、鎖員の少なくとも1つが前述で定義される4級アンモニウムである5〜8員のヘテロ環である。
【0032】
言及することができるカチオン性ヘテロ環の例としては、
イミダゾリウム、
ピリジニウム、
ピペラジニウム、
ピロリジニウム、
モルホリニウム、
ピリミジニウム、
チアゾリウム、
ベンゾイミダゾリウム、
ベンゾチアゾリウム、
オキサゾリウム、
ベンゾトリアゾリウム、
ピラゾリウム、
例えば、
ピロリジン環、
ピペリジン環、
モルホリン環、及び
ピペラジン環、
トリアゾリウム及びベンゾオキサゾリウム
が挙げられる。
【0033】
これらのカチオン性ヘテロ環は、(C〜C)アルキル基及び(C〜C)ヒドロキシアルキル基から選択される1つ又は複数の同一又は異なる基で任意選択により置換される。
【0034】
好ましくは、カチオン性基は、
トリメチルアンモニウム、
トリエチルアンモニウム、
ジメチルエチルアンモニウム、
ジエチルメチルアンモニウム、
ジイソプロピルメチルアンモニウム、
ヒドロキシエチルジエチルアンモニウム、
イミダゾリウム、
ピリジニウム、
ピペラジニウム、
ピロリジニウム、
モルホリニウム、
ピリミジニウム、
チアゾリウム、
及びベンズイミダゾリウムから選択される。
【0035】
より好ましくは、カチオン性基は、
トリメチルアンモニウム基及びカチオン性ヘテロ環、
特に
イミダゾリウム、
ピペラジニウム、
ピロリジニウム、
ピペリジニウム、
及びモルホリニウムから選択される。
【0036】
更により好ましくは、カチオン性基は、トリメチルアンモニウム基及びピロリジニウム基、特にトリメチルアンモニウムから選択される。
【0037】
「飽和又は不飽和の5〜8員の非カチオン性ヘテロ環」という用語は、環員の少なくとも1つが酸素、窒素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子である5〜8員環、例えば、イミダゾール又はピリミジン等を意味する。
【0038】
好ましくは、Rは、直鎖型又は分岐型のC〜C20アルキル基を表す場合、前述の基は、カチオン性基で置換される。
【0039】
好ましい一実施形態によれば、式(I)では、ともに又は別個に、
・R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は、直鎖型又は分岐型のC〜Cアルキル基、好ましくは、水素原子、又は、直鎖型のC〜Cアルキル基、更により好ましくは、水素原子又はメチル基を表し、
・R及びR、R及びR、又はR及びRは、それらを有する炭素原子とともに、飽和、不飽和、又は芳香族の5〜8員環、好ましくは5又は6員環、好ましくは非置換の5又は6員の炭素系環を形成することができ、より好ましくはR及びRは、それらを有する炭素原子とともに、非置換の5又は6員の炭素系環を形成することができ、
・Zは、酸素原子又はNR基を表し、
・Rは、水素原子、又は、直鎖型又は分岐型のC〜Cアルキル基を表し、
・Rは、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基から選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換され、カチオン性基で置換される、直鎖型又は分岐型のC〜Cアルキル基を表し、
又は、
・Rは、カチオン性基で置換される、飽和、不飽和、又は芳香族の5〜8員の非カチオン性環又はヘテロ環を表し、
・ZがNR基を表す場合、
・R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、C〜C10アルキル、水酸基、C〜Cアルコキシ、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、(C〜C)アルキルカルボニル、アミド、及びC〜Cヒドロキシアルキル基から選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換される、飽和又は不飽和のカチオン性の5〜8員のヘテロ環を形成することができ、このヘテロ環は、窒素又は酸素、好ましくは窒素から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含むことが可能であり、
又は、
・R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、カチオン性基で置換され、且つ、C〜C10アルキル、水酸基、C〜Cアルコキシ、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、(C〜C)アルキルカルボニル、アミド、及びC〜Cヒドロキシアルキル基から選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換される、飽和又は不飽和の非カチオン性の5〜8員のヘテロ環を形成することができることである。
【0040】
好ましくは、一方では、R及びRは水素原子を表し、一方においては、R及びRは、水素原子、又はC〜Cアルキル基、特にメチルを表す。
【0041】
より好ましくは、R、R、R、及びRは、水素原子を表す。
【0042】
好ましくは、ZはNR基を表す(Rは場合により水素原子である)。
【0043】
本発明の第1の好ましい変形例によれば、R、R、R、及びRは、水素原子を表し、ZはNH基を表し、且つ、Rは、酸素又はNH基等のヘテロ原子によって任意選択により中断される飽和の直鎖型のC〜Cアルキル基を表し、Rは、トリメチルアンモニウム基、並びに、イミダゾリウム、ピペラジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、又はモルホリニウムのカチオン性ヘテロ環から選択されるカチオン性基で置換される。
【0044】
第1の変形例によれば、Rは、トリメチルアンモニウム基で置換される。
【0045】
本発明の第2の好ましい変形例によれば、R、R、R、及びRは、水素原子を表し、ZはNR基を表し、且つ、R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、好ましくはトリメチルアンモニウム基、ジエチルメチルアンモニウム基、イミダゾリウム基、ピペラジニウム基、ピペリジニウム基、ピロリジニウム基、及びモルホリニウム基から選択されるカチオン性基で置換される、飽和又は不飽和の5〜8員の非カチオン性のヘテロ環を形成する。
【0046】
この第2の変形例によれば、更により好ましくは、非カチオン性のヘテロ環は、ピロリジン、ピペリジン、及びモルホリンから選択され、この環は、トリメチルアンモニウム基及びジエチルメチルアンモニウム基から選択されるカチオン性基で置換される。
【0047】
この変形例によれば、更により好ましくは、非カチオン性のヘテロ環は、ピロリジン、ピペリジン、及びモルホリンから選択され、この環は、トリメチルアンモニウム基及びジエチルメチルアンモニウム基から選択されるカチオン性基で置換される。
【0048】
本発明の第3の好ましい変形例によれば、R、R、R、及びRは、水素原子を表し、ZはNR基を表し、且つ、R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、C〜Cヒドロキシアルキル及びC〜Cアルキルから選択される1つ又は複数の同一又は異なる基で置換されるピペラジニウム、イミダゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、及びモルホリニウムから選択されるカチオン性のヘテロ環、好ましくはC〜Cヒドロキシアルキル及びC〜Cアルキルから選択される1つ又は複数の同一又は異なる基で置換されるピペラジニウム基を形成する。
【0049】
一実施形態によれば、Zは酸素原子を表す。
【0050】
別の実施形態によれば、ZはNR基を表し、この場合、R及びRは、それ自身が結合する窒素原子とともに、C〜Cアルキル基及びC〜Cヒドロキシルキル基から選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換される、飽和又は不飽和の5〜8員のカチオン性のヘテロ環を形成し、このヘテロ環は、NR基に属するもの以外の窒素原子を含む。
【0051】
本発明の内容においては、式(I)の誘導体は、全てのメソメリー型又は異性体型を包含することが理解される。
【0052】
式(I)の化合物の電気的中性は、Anと記される有機又は鉱物の化粧品として許容されるアニオン又はアニオンの混合物によって確実にされる。
【0053】
Anは、例えば、塩化物、臭化物、フッ化物、又はヨウ化物等のハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、硫酸水素塩、硫酸メチル又は硫酸エチルイオン等の直鎖型又は分岐型のアルキル部位がC〜Cを有する硫酸アルキル、炭酸塩、炭酸水素塩、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩等のカルボン酸の塩、メチルスルホン酸イオン等の直鎖型又は分岐型のアルキル部位がC〜Cを有するアルキルスルホン酸塩、アリール部位、好ましくはフェニルが、1つ又は複数のC〜Cアルキル基、例えば、4−トルイルスルホン酸で任意選択により置換されるアリールスルホン酸塩、メシル酸塩等のアルキルスルホン酸塩を示す。
【0054】
一般式(I)の化合物は、遊離の形態、又は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸から好ましくは選択される無機酸、又は、例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、4−トルイルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、パラ−トルエンスルホン酸、ギ酸、及びメタンスルホン酸等の有機酸との付加塩等の塩の形態であることができる。
【0055】
本発明の目的においては、化合物(I)の酸塩に由来するカチオン電荷は、Zによって有されるカチオン性基として見なされることはない。
【0056】
又、一般式(I)の化合物は、溶媒和物の形態、例えば、エタノール又はイソプロパノール等の直鎖型又は分岐型のC〜Cアルコールの水和物又は溶媒和物の形態であることができる。
【0057】
好ましくは、本発明による式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンは、以下の化合物及びこれらの混合物、又、これらの幾何又は光学異性体型、これらの有機又は鉱物の酸塩、又は水和物等のこれらの溶媒和物から選択される。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】
好ましくは、本発明によるカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンは、化合
物1、2、及び3、又、これらの混合物から選択される。
【0068】
Anは、前述で示されたものと同一の意味を有する。
【0069】
II.合成方法
又、本発明は、以下のスキーム:
【化2】
(式中、R、Z、R、R、R、及びRは、式(I)で示されたものと同一の意味を有し、式中、
−工程(i)においては、式(A)のN−アミノピリジニウム誘導体は、好ましくは極性溶媒中にて、少なくとも2当量の1,1−ビス(メチルチオ)−2−ニトロエチレンと反応し、式(B)の2−メチルスルファニル−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン誘導体を得、
−工程(ii)においては、式(B)の化合物の2位における硫黄原子に対して酸化反応が実行され、式(C)のこのスルホニル誘導体を得、
−工程(iii)においては、−S(O)−CH基を−Z基で置換するために、式(C)の化合物は、式RH又はR、M(Mは、リチウム、ナトリウム、又はカリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す)の求核性化合物と反応し、式(D)の化合物を得、
−工程(iv)においては、極性溶媒中にて、式(D)の化合物に対して1つ又は複数の還元反応が実行され、式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンを生成する)による化合物(A)、(B)、(C)、及び(D)を出発とする、前述で定義される一般式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンを合成する方法に関する。
【0070】
式(A)のN−アミノピリジニウム誘導体から式(B)の化合物を得る工程(i)は、Heterocycle,Vol.6,No.4,1977と題される刊行物に記載される条件の下にて実行されることができる。
【0071】
式(D)の化合物におけるR基の性質によって、1つ又は複数の還元反応を実行することが可能である。こうした還元は、連続して、即ち、初めにニトロ官能性をアミノ官能性に還元し、次いでピリジン環を還元することによって、実行されることができる。
【0072】
こうした化合物のニトロ基の還元は、標準条件下、例えば、Pd/C、Pd(II)/C、Ni/Ra等の存在下、不均一触媒の下、水素添加反応を行うことによって、又は、この代わりに、金属を用いて、例えば、亜鉛、鉄、スズ等を用いて還元反応を行うことによって、実行される(Advanced Organic Chemistry,3rd Edition,J.March,1985,Wiley Interscience and Reduction in Organic Chemistry,M.Hudlicky,1983,Ellis Horwood Series Chemical Scienceを参照されたい)。
【0073】
特定の一実施形態によれば、一般式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物(式中、Zは酸素原子に対応し、且つ、Rはカチオン性トリメチルアンモニウム基で置換されたCアルキル基に対応する)は、以下の反応スキーム:
【化3】
(式中、R、Z、R、R、R、及びRは、式(I)で示されたものと同一の意味を有し、且つ、R’は−NR基(R及びRは、同一であっても異なってもよく、水酸基で置換できるC〜Cアルキル基を表す)で置換されたCアルキル基を表し、
式中、
−工程(i)、(ii)、及び(iv)は、前述のものと同一であり、
−工程(iii)1においては、−S(O)−CH基をRN(CHOH又はアルコキシドRN(CH(Mは前述で定義される)等の−ZR’基で置換するために、式(C)の化合物は、式R’H又はR’、M(Mは、リチウム、ナトリウム、又はカリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す)の化合物と反応し、式(D1)の化合物を得、その後、工程(iii)2において、アルキル化工程が式(D1)の化合物に対して実行され、式(D’1)の化合物を得る)
に従って得られることができる。
【0074】
別の実施形態によれば、又、一般式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物(式中、Zは酸素原子に対応し、且つ、Rはカチオン性トリメチルアンモニウム基で置換されたCアルキル基に対応する)は、以下の反応スキーム:
【化4】
(式中、R、Z、R、R、R、及びRは、式(I)で示されたものと同一の意味を有し、且つ、R’’は水酸基で置換されたCアルキル基を表し、
式中、
−工程(i)、(ii)、及び(iv)は、前述のものと同一であり、
−工程(iii)’1においては、−S(O)−CH基を1,2−ジヒドロキシエタン等の−ZR’’基で置換するために、式(C)の化合物は、式R’’H又はR’’、M(Mは、リチウム、ナトリウム、又はカリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す)の求核性化合物と反応し、式(D2)の化合物を得、その後、
−工程(iii)’2においては、置換工程が、(C〜C)アルキルスルホニル、アリールスルホニル、又はベンジルスルホイルRa−S(O)2−O−を用いて、特にメシル又はトシルハロゲン化物等のハロゲン化物化合物を用いて、水酸基に対して実行され、離核性の脱離基Ra−S(O)2−O(Raは、(C〜C)アルキル基、アリール基、又はベンジル基を表す)を含む式(D’2)の化合物を得、
−工程(iii)’3においては、置換工程が、アミン基を用いて、Ra−S(O)−基に対して実行され、式(D1)の化合物を得、その後、式(D1)の化合物をカチオン性にすることに向けた反応、即ち、「カチオン化」を実行し、式(D’1)の化合物を得る)
に従って得られることができる。
【0075】
特に、置換反応(iii)’’1は、例えば、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等の塩基、及び1当量以上のR’’Hの存在下、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)等の双極性溶媒中にて、又はジメチルホルムアミド(DMF)又はN−メチルピロリドン(NMP)中にて、又はエタノール等のアルコール中にて、1〜24時間、20℃から溶媒の還流温度までの温度で実行される。
【0076】
その後、こうして導入された水酸基の官能性は、脱離基(例えば、メシル又はトシルハロゲン化物)を導入するために、例えば、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等の塩基の存在下、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)等の溶媒中にて、又はエタノール等のアルコール中にて、1〜24時間、20℃から溶媒の還流温度までの温度で、ハロゲン化物で置換される。
【0077】
先の工程の際に導入された脱離基の置換は、アミン又はアルコールとの反応によって実行される。
【0078】
カチオン化は、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジオキサン、又は酢酸エチル等の溶媒中にて、15分〜24時間、15℃から溶媒の還流温度までの範囲の温度で、少なくとも1当量のアルキル又はアリールハロゲン化物、硫酸メチル又は炭酸アルキルとの反応によって実行され、カチオン性のニトロ化合物を生成する。
【0079】
従って、合成方法において定義された工程(iii)は、いくつかの工程にて実行されることができる。
【0080】
又、本発明の主題は、前述の合成スキームにおいて定義される式(D)の化合物であり、この場合、R、Z、R、R、R、及びRは、カチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物の式(I)で示されたものと同一の意味を有する。
【0081】
好ましくは、式(D)の化合物は、前述のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物1〜35をもたらす化合物から選択される。
【0082】
好ましくは、式(D)の化合物は、カチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物1、2、及び3をもたらす化合物から選択される。
【0083】
又、本発明は、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトケラチン繊維を染色することを目的としての、1つ又は複数の酸化剤の存在下における、1つ又は複数の前述で定義される式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物の使用に関する。
【0084】
III.染料組成物
又、本発明は、適切な染色媒体において、1つ又は複数の前述で定義される式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物を含む、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトケラチン繊維を染色するための組成物に関する。
【0085】
好ましくは、染料組成物は、化合物1から35、並びにこれらの混合物から選択される1つ又は複数の式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物を含む。
【0086】
より好ましくは、染料組成物は、化合物1、2、及び3、並びにこれらの混合物から選択される1つ又は複数の式(I)のカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジン化合物を含む。
【0087】
前述で定義されるカチオン性テトラヒドロピラゾロピリジンは、染料組成物の総重量に対して、1重量%〜20重量%の範囲の含有量で、好ましくは1重量%〜5重量%の範囲の含有量で、本発明による組成物中に存在することができる。
【0088】
本発明による染料組成物は、ケラチン繊維を染色するために従来使用される1つ又は複数のカプラーを含むことができ、且つ、含むことが好ましい。これらのカプラーの中では、特に、メタ−フェニレンジアミン、メタ−アミノフェノール、メタ−ジフェノール、ナフタレンカプラー、及びヘテロ環式カプラー、並びにこれらの付加塩を挙げることができる。
【0089】
言及することができるカプラーの例としては、
2−メチル−5−アミノフェノール、
5−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ−2−メチルフェノール、
6−クロロ−2−メチル−5−アミノフェノール、
3−アミノフェノール、
2,4−ジクロロ−3−アミノフェノール、
5−アミノ−4−クロロ−o−クレゾール、
1,3−ジヒドロキシベンゼン、
1,3−ジヒドロキシ−2−メチルベンゼン、
4−クロロ−1,3−ジヒドロキシベンゼン、
2,4−ジアミノ−1−(β−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゼン、
2−アミノ−4−(β−ヒドロキシエチルアミノ)−1−メトキシベンゼン、
1,3−ジアミノベンゼン、
1,3−ビス(2,4−ジアミノフェノキシ)プロパン、
3−ウレイドアニリン、
3−ウレイド−1−ジメチルアミノベンゼン、
セサモール、
1−β−ヒドロキシエチルアミノ−3,4−メチレンジオキシベンゼン、
α−ナフトール、
2−メチル−1−ナフトール、
1,5−ジヒドロキシナフタレン、
2,7−ナフタレンジオール、
1−アセトキシ−2−メチルナフタレン、
6−ヒドロキシインドール、
4−ヒドロキシインドール、
4−ヒドロキシ−N−メチルインドール、
2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン、
6−ヒドロキシベンゾモルホリン、
3,5−ジアミノ−2,6−ジメトキシピリジン、
2,6−ジヒドロキシ−3−4−ジメチルピリジン、
3−アミノ−2−メチルアミノ−6−メトキシピリジン、
1−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ−3,4−メチレンジオキシベンゼン、
2,6−ビス(β−ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、及び
3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、
並びに酸とのこれらの付加塩が挙げられる。
【0090】
本発明の染料組成物においては、存在する場合、カプラー(複数可)は、一般的に、組成物の総重量に対して約0.001重量%〜10重量%、好ましくは組成物の総重量に対して0.005重量%〜6重量%の量を表す。
【0091】
本発明の染料組成物は、式(I)の化合物以外に、ケラチン繊維を染色するために従来使用される1つ又は複数の更なる酸化ベースを、任意選択によって含むことができる。
【0092】
例としては、これらの更なる酸化ベースは、式(I)のベース以外のパラ−フェニレンジアミン、ビス(フェニル)アルキレンジアミン、パラ−アミノフェノール、ビス−パラ−アミノフェノール、オルト‐アミノフェノール、及びヘテロ環式塩基、並びにこれらの付加塩から選択される。
【0093】
パラ−フェニレンジアミンの中では、言及することができる例としては、
パラ−フェニレンジアミン、
パラ−トルエンジアミン、
2−クロロ−パラ−フェニレンジアミン、
2,3−ジメチル−パラ−フェニレンジアミン、
2,6−ジメチル−パラ−フェニレンジアミン、
2,6−ジエチル−パラ−フェニレンジアミン、
2,5−ジメチル−パラ−フェニレンジアミン、
N,N−ジメチル−パラ−フェニレンジアミン、
N,N−ジエチル−パラ−フェニレンジアミン、
N,N−ジプロピル−パラ−フェニレンジアミン、
4−アミノ−N,N−ジエチル−3−メチルアニリン、
N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−パラ−フェニレンジアミン、
4−N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)アミノ−2−メチルアニリン、
4−N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)アミノ−2−クロロアニリン、
2−β−ヒドロキシエチル−パラ−フェニレンジアミン、
2−フルオロ−パラ−フェニレンジアミン、
2−イソプロピル−パラ−フェニレンジアミン、
N−(β−ヒドロキシプロピル)−パラ−フェニレンジアミン、
2−ヒドロキシメチル−パラ−フェニレンジアミン、
N,N−ジメチル−3−メチル−パラ−フェニレンジアミン、
N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)−パラ−フェニレンジアミン、
N−(β,γ−ジヒドロキシプロピル)−パラ−フェニレンジアミン、
N−(4’−アミノフェニル)−パラ−フェニレンジアミン、
N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、
2−β−ヒドロキシエチルオキシ−パラ−フェニレンジアミン、
2−β−アセチルアミノエチルオキシ−パラ−フェニレンジアミン、
N−(β−メトキシエチル)−パラ−フェニレンジアミン、
4−アミノフェニルピロリジン、
2−チエニル−パラ−フェニレンジアミン、
2−β−ヒドロキシエチルアミノ−5−アミノトルエン、及び
3−ヒドロキシ−1−(4’−アミノフェニル)ピロリジン、
並びに酸とのこれらの付加塩が挙げられる。
【0094】
前述のパラ−フェニレンジアミンの中では、
パラ−フェニレンジアミン、
パラ−トルエンジアミン、
2−イソプロピル−パラ−フェニレンジアミン、
2−β−ヒドロキシエチル−パラ−フェニレンジアミン、
2−β−ヒドロキシエチルオキシ−パラ−フェニレンジアミン、
2,6−ジメチル−パラ−フェニレンジアミン、
2,6−ジエチル−パラ−フェニレンジアミン、
2,3−ジメチル−パラ−フェニレンジアミン、
N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−パラ−フェニレンジアミン、
2−クロロ−パラ−フェニレンジアミン、及び
2−β−アセチルアミノエチルオキシ−パラ−フェニレンジアミン、
並びに酸とのこれらの付加塩が、特に好ましい。
【0095】
ビス(フェニル)アルキレンジアミンの中では、言及することができる例としては、
N,N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)−N,N’−ビス(4’−アミノフェニル)−1,3−ジアミノプロパノール、
N,N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)−N,N’−ビス(4’−アミノフェニル)エチレンジアミン、
N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テトラメチレンジアミン、
N,N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)−N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テトラメチレンジアミン、
N,N’−ビス(4−メチルアミノフェニル)テトラメチレンジアミン、
N,N’−ビス(エチル)−N,N’−ビス(4’−アミノ−3’−メチルフェニル)エチレンジアミン、及び
1,8−ビス(2,5−ジアミノフェノキシ)−3,6−ジオキサオクタン、
並びに酸とのこれらの付加塩が挙げられる。
【0096】
パラ−アミノフェノールの中では、言及することができる例としては、
パラ−アミノフェノール、
4−アミノ−3−メチル−フェノール、
4−アミノ−3−フルオロフェノール、
4−アミノ−3−ヒドロキシメチルフェノール、
4−アミノ−2−メチル−フェノール、
4−アミノ−2−ヒドロキシメチルフェノール、
4−アミノ−2−メトキシメチルフェノール、
4−アミノ−2−アミノメチルフェノール、
4−アミノ−2−(β−ヒドロキシエチルアミノメチル)フェノール、
4−アミノ−2−フルオロフェノール、
1−ヒドロキシ−4−メチルアミノベンゼン、及び
2,2’−メチレンビス(4−アミノフェノール)、
並びに酸とのこれらの付加塩が挙げられる。
【0097】
オルト−アミノフェノール類の中では、言及することができる例としては、
2−アミノフェノール、
2−アミノ−5−メチル−フェノール、
2−アミノ−6−メチル−フェノール、及び
5−アセトアミド−2−アミノフェノール、
並びに酸とのこれらの付加塩が挙げられる。
【0098】
ヘテロ環式塩基の中では、例としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、及びピラゾール誘導体を挙げることができる。
【0099】
ピリジン誘導体の中では、例えば、英国特許第1026978号明細書及び英国特許第1153196号明細書に記載の化合物、例としては、
2,5−ジアミノピリジン、
2−(4−メトキシフェニル)アミノ−3−アミノピリジン、
2,3−ジアミノ−6−メトキシピリジン、
2−(β−メトキシエチル)アミノ−3−アミノ−6−メトキシピリジン、及び
3,4−ジアミノピリジン、
並びに酸とのこれらの付加塩を挙げることができる。
【0100】
ピリミジン誘導体の中では、例えば、独国特許第2359399号明細書、特開昭63−169571公報、特開平05−163124公報、欧州特許第0770375号明細書、又は国際公開第96/15765号パンフレットに記載の化合物、例としては、
2,4,5,6−テトラアミノピリミジン、
4−ヒドロキシ−2,5,6−トリアミノピリミジン、
2−ヒドロキシ−4,5,6−トリアミノピリミジン、
2,4−ジヒドロキシ−5,6−ジアミノピリミジン、及び
2,5,6−トリアミノピリミジン、
並びに仏国特許出願公開第2750048A号明細書に記載されているもの等のピラゾロピリミジン誘導体を挙げることができ、その中でも、
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3,7−ジアミン、
2,5−ジメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3,7−ジアミン、
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3,5−ジアミン、
2,7−ジメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3,5−ジアミン、
3−アミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−オール
3−アミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−5−オール
2−(3−アミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イルアミノ)エタノール
2−(7−アミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イルアミノ)エタノール
2−[(3−アミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル)(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール,
2−[(7−アミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル)(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール,
5,6−ジメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3,7−ジアミン、
2,6−ジメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3,7−ジアミン、
2,5,N7,N7−テトラメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3,7−ジアミン、及び
3−アミノ−5−メチル−7−イミダゾリルプロピルアミノピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、
並びに酸とのこれらの付加塩、
並びに、互変異性平衡が存在する場合、これらの互変異性型を挙げることができる。
【0101】
ピラゾール誘導体の中では、独国特許第3843892号明細書、独国特許第4133957号明細書、及び国際公開第94/08969号パンフレット、国際公開第94/08970号パンフレット、仏国特許出願公開第2733749A号明細書、及び独国特許第19543988号明細書に記載の化合物、例えば、
4,5−ジアミノ−1−メチルピラゾール、
4,5−ジアミノ−1−(β−ヒドロキシエチル)ピラゾール、
3,4−ジアミノピラゾール
4,5−ジアミノ−1−(4’−クロロベンジル)ピラゾール、
4,5−ジアミノ−1,3−ジメチルピラゾール、
4,5−ジアミノ−3−メチル−1−フェニルピラゾール、
4,5−ジアミノ−1−メチル−3−フェニルピラゾール、
4−アミノ−1,3−ジメチル−5−ヒドラジノピラゾール、
1−ベンジル−4,5−ジアミノ−3−メチルピラゾール、
4,5−ジアミノ−3−tert−ブチル−1−メチルピラゾール、
4,5−ジアミノ−1−tert−ブチル−3−メチルピラゾール、
4,5−ジアミノ−1−(β−ヒドロキシエチル)−3−メチルピラゾール、
4,5−ジアミノ−1−エチル−3−メチルピラゾール、
4,5−ジアミノ−1−エチル−3−(4’−メトキシフェニル)ピラゾール、
4,5−ジアミノ−1−エチル−3−ヒドロキシメチルピラゾール、
4,5−ジアミノ−3−ヒドロキシメチル−1−メチルピラゾール、
4,5−ジアミノ−3−ヒドロキシメチル−1−イソプロピルピラゾール、
4,5−ジアミノ−3−メチル−1−イソプロピルピラゾール、
4−アミノ−5−(2’−アミノエチル)アミノ−1,3−ジメチルピラゾール、
3,4,5−トリアミノピラゾール、
1−メチル−3,4,5−トリアミノピラゾール、
3,5−ジアミノ−1−メチル−4−メチルアミノピラゾール、
3,5−ジアミノ−4−(β−ヒドロキシエチル)アミノ−1−メチルピラゾール、
並びに酸とのこれらの付加塩を挙げることができる。
【0102】
一般的に、本発明の内容に使用できる更なる酸化ベース及びカプラーの付加塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、トシラート、ベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩等の酸との付加塩、並びに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、アミン、又はアルカノールアミン等の塩基との付加塩から、特に選択される。
【0103】
又、本発明による染料組成物は、ニトロベンゼン染料、アゾ直接染料、及びメチン直接染料から特に選択されることができる1つ又は複数の直接染料を含むことができる。これらの直接染料は、非イオン性、アニオン性、又はカチオン性の特質を有することができる。
【0104】
染料支持体としても知られる染色に適切な媒体は、一般的に、水、又は、水と1つ又は複数の有機溶媒(例えば、エタノール及びイソプロパノール等のC〜C低級アルカノール、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、又はグリセリン等の多価アルコール、及び、例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール等)との混合物を含む。
【0105】
溶媒(複数可)は、一般的に、染料組成物の総重量に対して、約1重量%〜40重量%、より好ましくは約3重量%〜30重量%であることができる割合で存在する。
【0106】
又、本発明による染料組成物は、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性、又は双生イオン性の界面活性剤又はこれらの混合物、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性、又は双生イオン性のポリマー又はこれらの混合物、無機又は有機の増粘剤、及び、特に、アニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性の高分子会合性増粘剤、酸化防止剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、香料、緩衝剤、分散剤、例えば、揮発性又は非揮発性の、改質又は非改質のシリコーン等の調整剤、塗膜形成剤、セラミド、保存剤、及び乳白剤等の、毛髪染色組成物に従来使用される様々な補助剤を含むことができる。
【0107】
前述の補助剤は、一般的に、各々について、組成物の重量に対して0.01重量%〜20重量%の量で存在する。
【0108】
言うまでもなく、当業者は、注意して、本発明による酸化染料組成物と本質的に関連する有利性のある特性が、予想される追加(複数可)によって悪影響を受けることがない、又は実質的に受けることがないような、この又はこれらの任意の更なる化合物(複数可)を選択するであろう。
【0109】
本発明による染料組成物のpHは、一般的に、約3〜12、好ましくは約5〜11である。pHは、ケラチン繊維の染色に通常使用される酸性化剤又は塩基性化剤によって、又は、この代わりに、標準緩衝系を使用することによって、望まれる値に調整されることができる。
【0110】
酸性化剤の中では、例としては、例えば、塩酸、オルトリン酸、硫酸等の無機酸又は有機酸、例えば、酢酸、酒石酸、クエン酸、及び乳酸等のカルボン酸、及びスルホン酸等を挙げることができる。
【0111】
言及することができる塩基性化剤の中では、例えば、アンモニア水、アルカリ性炭酸塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン、並びにこれらの誘導体等のアルカノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び以下の式(II):
【化5】
(式中、Wは、水酸基又はC〜Cアルキル基で任意選択により置換されるプロピレン残基であり、且つ、R、R、R、及びRは、同一であっても異なってもよく、水素原子、又は、C〜Cアルキル基又はC〜Cヒドロキシルキル基を表す)の化合物がある。
【0112】
本発明による組成物は、1つ又は複数の酸化剤を含むことができる。
【0113】
酸化剤は、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属臭素酸塩、過ホウ酸塩及び過硫酸塩等の過酸塩、過酸、及びオキシダーゼ酵素等、ケラチン繊維の酸化染色に従来使用されるものであり、中でも、ペルオキシダーゼ、ウリカーゼ等の2−電子オキシドレダクターゼ、及び、例えばラッカーゼ等の4−電子オキシゲナーゼを挙げることができる。特に、過酸化水素が好ましい。
【0114】
本発明による酸化剤を伴う又は伴わない染料組成物は、液体、クリーム、又はゲルの形態、又は、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪を染色するのに適切な任意のその他の形態等の、様々な形態であることができる。
【0115】
使用の際、染料組成物は、いくつかの組成物を混合することにより生成することができる。
【0116】
特に、染料組成物は、少なくとも2つの組成物を混合することにより生成され、1つは、式(I)の化合物又は酸とのこれらの付加塩から選択される1つ又は複数の酸化ベースと、任意選択により式(I)の化合物又はこれらの塩以外の1つ又は複数の更なる酸化ベースと、任意選択により1つ又は複数のカプラーと、を含み、且つ、第2の組成物は、前述の1つ又は複数の酸化剤を含む。
【0117】
特に、又、本発明は、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトケラチン繊維を染色するための前述で定義される染色組成物の使用に関する。
【0118】
又、本発明は、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトケラチン繊維を染色するための方法に関し、この場合、本発明による前述の染色組成物は、望まれる着色を得るための十分な時間、1つ又は複数の酸化剤の存在下にて前述の繊維に使用され、その後、得られた繊維は洗い流され、任意選択によりシャンプーで洗浄され、再度洗い流され、乾燥又は放置乾燥される。
【0119】
色彩は、酸性、中性、又はアルカリ性のpHにて発現することができ、且つ、まさに使用する際に、酸化剤は、本発明の組成物に加えることができ、又は、酸化剤を含む酸化組成物から出発して使用することができ、本発明の組成物に同時に又は連続して使用されることができる。
【0120】
特定の一実施形態においては、本発明による酸化剤を欠如した組成物は、好ましくは使用の際、染色に適する媒体にて、1つ又は複数の酸化剤を含む組成物と混合され、これらの酸化剤は、色彩を発現するために十分な量で存在する。その後、得られた混合物は、ケラチン繊維に使用される。
【0121】
この特定の実施形態によれば、本発明による組成物と1つ又は複数の酸化剤との混合物である、すぐに使用可能な組成物が得られる。
【0122】
約3〜50分、好ましくは約5〜30分の放置時間の後、ケラチン繊維は洗い流され、シャンプーで洗浄され、再度洗い流された後、乾燥される。
【0123】
酸化剤は、前述で示されたものである。
【0124】
又、酸化組成物は、前述で定義され、毛髪を染色するための組成物に従来使用される様々な補助剤を含むことができる。
【0125】
酸化剤を含む酸化組成物のpHは、染料組成物と混合した後、ケラチン繊維に使用され得られた組成物のpHが、好ましくは約3〜12、より好ましくは依然として5〜11で変動するものである。pHは、前述で定義され、ケラチン繊維の染色に通常使用される酸性化剤又は塩基性化剤によって、望まれる値に調整されることができる。
【0126】
ケラチン繊維に最終的に使用されるすぐに使用可能な組成物は、液体、クリーム、又はゲルの形態、又はケラチン繊維、特にヒトの毛髪の染色を実行するのに適する任意のその他の形態等の、様々な形態であることができる。
【0127】
本発明の別の主題は、染色「キット」又は多区画装置であり、この場合、第1の区画は、式(I)の化合物又は酸とのこれらの付加塩から選択される1つ又は複数の酸化ベースを含む、前述で定義される本発明の酸化剤を欠乏した染色組成物を含み、且つ、第2の区画は、1つ又は複数の酸化剤を含む。
【0128】
これらの装置は、本出願人の名義の仏国特許出願公開第2586913A号明細書に記載の装置等の、望まれる混合物を毛髪に散布する手段を備えることができる。
【0129】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、本質的に限定するものではない。
【実施例】
【0130】
合成例:
実施例1:1−(3−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)−N,N,N−トリメチルピロリジン−3−アミニウム塩化物塩酸塩の合成
【化6】
工程1:2−メチルスルファニル−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジンの合成
【化7】
1−N−アミノピリジニウム(0.5モル)111gをDMF(500ml)に溶解した溶液を、機械式攪拌機及び内部温度プローブを備えた2リットルの三つ口フラスコにて調製し、窒素気流下に置く。
【0131】
次いで、炭酸カリウム(207.3g,3当量)を一度に加え、その後、1,1−ビス(メチルチオ)−2−ニトロエチレン(165.2g,2当量)も一度に加える。反応媒体は個体状に向かう傾向がある。反応媒体をより液体状にするためにDMF500mlを加える。
【0132】
室温で48時間撹拌した後、反応媒体を4リットルの氷水に注ぐ。形成した沈殿物を濾別し水(5リットル)でよく洗浄し、次いで真空下80℃で乾燥させた。
【0133】
酢酸エチルにて再びスラリーにすることにより、このように得られた個体から、過剰の1,1−ビス(メチルチオ)−2−ニトロエチレン(H−NMRによって求められる30モル%)を除く。生成物を吸引によって流し出し乾燥させた後、予測される生成物に対応するベージュ色系の黄色い個体72gを得る。
【0134】
NMRスペクトルでは、得られた生成物は予測される生成物に対応することを示す。
【0135】
工程2:2−メタンスルホニル−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジンの合成
【化8】
オキソン(5当量)880g、水2リットル、及び前述で得られた2−メチルスルホニル−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン(0.287当量)60gを、引き続いて機械式攪拌機及び内部温度プローブを備えた4リットルの三つ口フラスコに入れる。混合物を室温で撹拌する。
【0136】
反応を完了するために、オキソン(120g、0.7当量)を加え、室温で4時間撹拌した後、反応は完了する。
【0137】
形成した個体物を吸引によって流し出し、過酸化物をもはや含まない濾液を得るまで、水でよく洗浄する。次いで、五酸化二リンを通して40℃で真空下に置く。
【0138】
予測される生成物59gを、ベージュ色系の黄色い粉体の形態で得る。
【0139】
NMRスペクトルでは、得られた生成物は予測される生成物に対応することを示す。
【0140】
工程3:N,N−ジメチル−1−(3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)ピロリジン−3−アミンの合成
【化9】
NMP(N−メチルピロリドン)5ml、2−(メチルスルホニル)−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン3g、及び3−(ジメチルアミノ)ピロリジン3.77mlを、気泡凝縮器、温度計、及びマグネチックスターラーが備え付けられた100mlの三つ口フラスコに入れ、混合物を1時間、80℃で加熱する。
【0141】
反応媒体を室温まで冷却した後、200gの氷と水の混合物に注ぐ。晶出する黄色い化合物を、No.3のシンター(sinter)にて、吸引によって流し出し、水100mlで2回洗浄し、次いでイソプロピルエーテル100mlで3回洗浄する。12時間、五酸化二リンの存在下にて、真空下35℃で乾燥させた後、予測される化合物に対応する黄色い個体3.26gを回収する。
【0142】
NMR(H 400MHz及び13C 100.61MHz DMSO−d6)及び質量分析法分析では、予測される構造と一致する。
【0143】
予測される分子、C13H17N5O2の擬分子イオン(MH)+、が、主として検出される。
【0144】
工程4:N,N,N−トリメチル−1−(3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)ピロリジン−3−アミニウムメチルスルホン酸の合成
【化10】
THF25ml、N,N−ジメチル−1−(3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)ピロリジン−3−アミン3.26g(0.01モル)、及び、滴下にて、ジメチル硫酸1.89ml(0.02モル)を、気泡凝縮器、温度計、及びマグネチックスターラーが備え付けられた100mlの三つ口フラスコに、50℃で加える。
【0145】
反応をTLC(溶離液:95/5ジクロロメタン/メタノール)にて監視する。
【0146】
媒体を室温まで冷却し、形成した黄色い個体は、No.3のシンターにて、吸引によって流し出し、THF100mlで2回洗浄し、次いでイソプロピルエーテル100mlで3回洗浄する。12時間、五酸化二リンの存在下にて、真空下35℃で乾燥させた後、予測される構造体に対応する黄色い個体3.2gを回収する。
【0147】
NMR(H 400MHz及び13C 100.61MHz DMSO−d6)及び質量分析法分析では、予測される構造と一致する。
【0148】
工程5:1−(3−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)−N,N,N−トリメチルピロリジン−3−アミニウム塩化物塩酸塩の合成
【化11】
エタノール/水(9/1)100ml、N,N,N−トリメチル−1−(3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)ピロリジン−3−アミニウムメチルスルホン酸1g(2.56ミリモル)、及び5%パラジウムの50%水溶液0.3gを、300mlの水添器に入れる。
【0149】
この系を窒素で3回、次いで水素で1回置換し、その後、撹拌しながら、8バールの水素圧にて還元反応を実行する。
【0150】
2時間の反応後、水素の消費は0まで降下する。窒素で洗い流すことによって数回置換した後、窒素下、濾過によって触媒を除く。
【0151】
濾液を6Nの塩化水素イソプロパノールで酸性化させ、真空下、溶媒を蒸発させる。メタノール/石油エーテル混合物にて残渣を取り上げ、その後、予測される化合物に対応する茶色の粉体を得るまで、真空下、蒸発させる。
【0152】
NMR分析(H 400MHz及び13C 100.61MHz DMSO−d6)では、予測される構造と一致する。
【0153】
予測されるカチオン、C1426が、主として検出される。
【0154】
実施例2
N,N−ジメチル−N’−(3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)エタン−1,2−ジアミンメトスルフェートの合成
【化12】
N,N−ジメチル−N’−(3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)エタン−1,2−ジアミン35g(0.140モル)を、THF200mlを含んだ、気泡凝縮器、温度計、及び50mlの滴下ロートを備えた500mlの三つ口フラスコに、マグネチックスターラーで撹拌して入れる。オイルバスを使用して、温度を50℃に上げ、ジメチル硫酸(1.1当量)を滴下により加えて、黄色い沈殿物が形成する。出発物質が消失するまで、反応をTLC(溶離液:98/2ジクロロメタン/メタノール)にて監視する。形成した個体を、吸入によって流し出し、次いでTHFで数回洗浄する。五酸化二リンの存在下にて、真空下、乾燥させた後、黄色い個体50.8gを回収する。
【0155】
NMR分析(H 400MHz及び13C 100.61MHz DMSO−d6)では、予測される構造と一致する。
【0156】
予測されるカチオン、C12H14N5O2+が、ES+におけるm/z=264で主として検出される。
【0157】
[2−(3−アミノピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イルアミノ)エチル]トリメチルアンモニウム塩化物塩酸塩の合成
【化13】
エタノール150ml、水30ml、N,N−ジメチル−N’−(3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)エタン−1,2−ジアミンメトスルフェート8g(21.31ミリモル)、及び5%パラジウムの50%水溶液0.8gを、300mlの水添器に入れる。
【0158】
この系を窒素で3回、次いで水素で1回置換し、撹拌しながら、8バールの水素圧にて還元反応を実行する。
【0159】
2時間の反応後、水素の消費は0まで降下する。窒素で洗い流すことによって数回置換した後、窒素下、濾過によって触媒を除く。
【0160】
濾液を6Nの塩化水素イソプロパノールで酸性化させ、真空下、溶媒を蒸発させる。メタノール/石油エーテル混合物にて残渣を取り上げ、その後、予測される化合物に対応する灰色の粉体を6gの質量で得るまで、真空下、蒸発させる。
【0161】
NMR分析(H 400MHz及び13C 100.61MHz DMSO−d6)では、予測される構造と一致する。
【0162】
質量分析法による分析では、生成物を確認し、予測されるカチオン、[C12H24N5]+が、主としてm/z ESP+=238で検出される。
【0163】
実施例3:
2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン
【化14】
NMP5ml、2−(メチルスルホニル)−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン3g、1−メチルピペラジン3.3mlを、気泡凝縮器、温度計、及びマグネチックスターラーが備え付けられた100mlの三つ口フラスコに入れ、混合物を3時間、80℃で加熱する。
【0164】
媒体を、200gの氷と水の混合物に注ぐ。晶出する黄色い化合物を、No.3のシンターにて、吸引によって流し出し、水100mlで2回洗浄し、次いでイソプロピルエーテル100mlで3回洗浄する。12時間、五酸化二リンの存在下にて、真空下35℃で乾燥させた後、予測される化合物に対応する黄色い個体2.35gを回収する。
【0165】
NMR(H 400MHz及び13C 100.61MHz DMSO−d6)及び質量分析法分析では、予測される構造と一致する。
【0166】
予測される分子、C12H15N5O2の擬分子イオン[M+H]+、[M+H+CH3CN]+、[2M+H]+、及びイオンが、主として検出される。
【0167】
1,1−ジメチル−4−(3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)ピペラジン−1−イウムメチルスルホン酸の合成
【化15】
THF25ml、2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン2.35g(0.01モル)、及び、液滴にて、ジメチル硫酸1.85ml(0.02モル)を、気泡凝縮器、温度計、及びマグネチックスターラーが備え付けられた100mlの三つ口フラスコに、50℃で加える。
【0168】
反応をTLC(溶離液:95/5ジクロロメタン/メタノール)にて監視する。
【0169】
媒体を室温まで冷却し、形成した黄色い個体は、No.3のシンターにて、吸引によって流し出し、THF100mlで2回洗浄し、次いでイソプロピルエーテル100mlで3回洗浄する。12時間、五酸化二リンの存在下にて、真空下35℃で乾燥させた後、予測される構造体に対応する黄色い個体3.2gを回収する。
【0170】
NMR(H 400MHz及び13C 100.61MHz DMSO−d6)及び質量分析法分析では一致する。
【0171】
4−(3−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム塩化物塩酸塩の合成
【化16】
1,1−ジメチル−4−(3−ニトロピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)ピペラジン−1−イウムメチルスルホン酸3gを出発として、実施例1の手順と同一の手順に従い化合物を得る。
【0172】
濾液を6Nの塩化水素イソプロパノールで酸性化させ、真空下、溶媒を蒸発させる。メタノール/石油エーテル混合物にて残渣を取り上げ、その後、真空下、蒸発させ、ベージュ色の粉体の形態で予測される化合物を生成する(得られた質量=1.7g)。
【0173】
質量分析法による分析では、予測されるカチオン[C13H24N5]+を確認する。
【0174】
NMR分析(H 400MHz及び13C 100.61MHz DMSO−d6)では、予測される構造と一致する。
【0175】
染色の例
以下の染色組成物(A)〜(F)を、下記の成分から調整する。
【0176】
【表10】
【0177】
【表11】
【0178】
【表12】
【0179】
pH9.5染料支持体(1)
【0180】
【表13】
【0181】
使用の際、組成物はそれぞれ、20容積等量の過酸化水素水溶液(6重量%)と混合される。9.5の最終pHを得る。
【0182】
得られた混合物はそれぞれ、90%の白髪を含む白髪交じりの房に使用される。30分間、混合物を放置した後、房を洗い流し、標準的なシャンプーで洗浄し、再度洗い流した後、乾燥させて様々な色合いを得る。